説明

動物用断尾器

【課題】動物の尾の切断に使用される加熱式切断器において、電源コードが無く、軽い把持部を、動き回る動物の尾の所に持って行き、素早く切断すると共に、加熱刃を容易に交換できることを目的とする。
【解決手段】加熱刃4と刃受け部5が鋏状に開閉して、動物の尾が切断し易くし、加熱刃4と電気ヒータ25を一体にして着脱自在とし、加熱刃4が容易に交換でき、蓄電池10を電源にすることにより、作業効率が向上した、動物用断尾器が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の尾などの切断に使用される加熱式切断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動物用断尾器は、電熱ヒーターで挟んで固着した一対の加熱刃を設け、加熱刃先端が閉合できるように加熱刃取付部の長手先端部で回転軸によって固定されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その動物用断尾器について図7および図8を参照しながら説明する。
【0004】
図に示すように、一方に把持部101を、他方に加熱刃取付部102を設け、加熱刃取付部102に加熱刃103と電熱ヒーター104を固着した一対の本体106を、加熱刃取付部102の先端部において回転軸107によって固定し、加熱刃103の間に尾や翼を挟み、閉じると、切断されると共に、その熱によって傷口を止血・消毒している。
【0005】
また、この種の動物用断尾器には、受具に尾を載置し、500℃〜750℃に加熱した切断刃を下方に移動して、尾を切断するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭50−116184号公報
【特許文献2】特開昭54−4771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の動物用断尾器では、回転軸が外側にあるため、動き回る動物の尾を内側から挟まなければならず、すばやく断尾作業ができないという課題があった。
【0007】
また、加熱刃が消耗したときや各種の動物の尾の違いにより加熱刃の形状を変えたいときに、容易に交換できないという課題があった。
【0008】
断尾作業は広範囲でおこなうため、従来の商用電源を用いる方法では、電源コードの長さにより作業範囲が限定されたり、延長ケーブルによりケーブルを引き回さなくてはならないという課題があった。
【0009】
さらに、加熱刃の温度が判り難く使用状態の判断ができなかったり、把持部を握る時、滑って握り難かったり、緊急時に電源を直ぐに切りたいときに電源プラグを抜かなければ電源が切れないという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、動き回る動物の尾を素早く切断することができ、かつ、加熱刃を容易に交換することができる動物用断尾器を提供することを目的としている。
【0011】
また、使用状態が目視で確認でき、広範囲の断尾作業が可能となり、緊急時に電源を直ぐに切ることのできる動物用断尾器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の本発明は、ヒータと、互いに枢支されて鋏状に開閉する第1レバー及び第2レバーと、上記第1レバーの先端に設けられ、鋭利な刃先を有するとともに上記ヒータによって加熱される加熱刃と、上記第2レバーの先端に設けられ、上記加熱刃に略対向して閉動作時に上記加熱刃を受ける刃受け部と、上記第1レバー及び上記第2レバーの基端側にそれぞれ設けられ、これらを開閉させるための第1握り部及び第2握り部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の本発明は、第1握り部は筒状体であり、その内部に筒状の鞘体を備え、加熱刃とヒータとが略直線状に配設された状態で上記鞘体に格納され、上記鞘体は、上記加熱刃と上記ヒータとを格納した状態で、上記第1握り部の基端側からの挿脱によって着脱自在となっていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の本発明は、閉動作時に上記加熱刃を背面から支持するカッターガイドを備え、力のかかる加熱刃を反対側から押さえていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の本発明は、加熱刃とヒータは、コネクタを介して着脱自在となっていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の本発明は、加熱刃近傍に、所定温度に達すると変色し、所定温度以下になると元の色に戻る可逆性サーモラベルを貼り付けたことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の本発明は、第1握り部の一部に、断熱性と摩擦性を有したグリップを被覆したことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の本発明は、ヒータを電気ヒータとし、電源を電池とし、電池と本体とをコネクタにより接続し、電池にクリップを設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の本発明は、電池から電源を供給するコードに入・切スイッチを設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の本発明は、加熱刃の温度を検出する温度検出手段と、加熱刃を所定の温度に制御する加熱刃温度制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば軽く、使い易く、素早く断尾することができるため、女性でも簡単に断尾作業をおこなうことができるという効果がある。
【0022】
また、刃先部を工具なしで容易に交換できるという効果がある。
【0023】
また、電源コードを引き回す必要がないため携帯性が良く、広範囲で断尾作業ができるという効果がある。
【0024】
また、加熱刃の温度が所定温度に到達したかが判り、使用状態を目視で判断することができるという効果がある。
【0025】
また、本発明によれば把持部を握った時、滑り難く、熱くないため、作業効率が向上するという効果がある。
【0026】
また、作業をしない時の電池の消耗を無くし、異常時の安全対策として直ぐに電源をOFFすることができるという効果がある動物用断尾器を提供できる。
【0027】
また、切断時の加熱刃の適切な温度は切断部位により異なるので、加熱刃の温度制御を行うことによって、作業しやすく、適切な温度で切断作業ができる動物用断尾器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の動物用断尾器は上記目的を達成するために、ヒータと、互いに枢支されて鋏状に開閉する第1レバー及び第2レバーと、上記第1レバーの先端に設けられ、鋭利な刃先を有するとともにヒータによって加熱される加熱刃と、上記第2レバーの先端に設けられ、上記加熱刃に略対向して閉動作時に上記加熱刃を受ける刃受け部と、上記第1レバー及び上記第2レバーの基端側にそれぞれ設けられ、これらを開閉させるための第1握り部及び第2握り部とを設けたものである。
【0029】
この手段により、動き回る動物の尾を素早く加熱刃によって切断できるという動物用断尾器が得られる。
【0030】
また、第1握り部は筒状体であり、その内部に筒状の鞘体を備え、加熱刃と電気ヒータとが略直線状に配設された状態で上記鞘体に格納され、上記鞘体は、上記加熱刃と上記電気ヒータとを格納した状態で、上記第1握り部の基端側から挿抜できるようコネクタを設けたものである。
【0031】
この手段により、刃先部が着脱自在となり、工具なしで容易に交換できるという動物用断尾器が得られる。
【0032】
また、閉動作時に上記加熱刃を背面から支持するカッターガイドを備え、上記カッターガイドは、力のかかる加熱刃を反対側から押さえる構成にしたものである。
【0033】
この手段により、把持した力を確実に加熱刃に印加でき、かつ、力を加え過ぎても加熱刃が変形し難いという動物用断尾器が得られる。
【0034】
また、加熱刃近傍に、所定温度に達すると変色し、所定温度以下になると元の色に戻る可逆性サーモラベルを貼り付けたものである。
【0035】
この手段により、加熱刃が所定温度に到達し、作業可能かどうか一目で分るため、作業効率が向上するという動物用断尾器が得られる。
【0036】
また、第1握り部の一部に、断熱性と摩擦性を有したグリップを被覆したものである。
【0037】
この手段により、把持部を握った時、滑り難く、熱くないので、作業効率が向上するという動物用断尾器が得られる。
【0038】
また、電気ヒータに供給する電源を電池とし、電池にはクリップを設けたものである。
【0039】
この手段により、電源コードが不要となり、広範囲で断尾作業ができる動物用断尾器が得られる。
【0040】
また、重い電池はクリップをベルトなどに掛けられるため、把持部は電源が無く軽量となり、作業が簡単で安全におこなえる。
【0041】
また、電池から電源を供給するコードに入・切スイッチを設けたものである。
【0042】
この手段により、作業をしない時の電池の消耗を無くし、異常時の安全対策として緊急に電源をOFFすることができる動物用断尾器が得られる。
【0043】
請求項9記載の本発明は、加熱刃の温度を検出する温度検出手段と、加熱刃を所定の温度に制御する加熱刃温度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0044】
この手段により、切断時の加熱刃の温度を適切な温度に制御することができる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1および図2に示すように、加熱刃4を備えた第1レバー2と、刃受け部5を備えた第2レバー3が軸6を中心にこれらが開閉できる把持部1を構成し、第1レバー2の第1握り部2′と第2レバー3の第2握り部3′はバネ(図示せず)により、通常は開となるように構成されている。第1握り部2′には、グリップ7を被せたものとする。グリップ7は耐熱性および摩擦性を有する素材であり、例えばウレタンゴムなどを使用する。加熱刃4は、電源を供給するコード9と入・切スイッチ8を備えている。また、コード9の先端には電池側コネクタ12が設けられている。
【0047】
一方、クリップ11を設けた蓄電池10の電源側には電池コネクタ受け13を設けておく。クリップ11をバンドなどに掛け、蓄電池10をハンドフリーで保持し、電池側コネクタ12と着脱自在の電池コネクタ受け13に接続する。
【0048】
図3は第1レバー2に挿入する鞘体を示し、コード9を保護するコードブッシング14とコード9に接続されたヒータ側コネクタ受け16を内蔵したヒータカバー17と、ヒータ側コネクタ受け16と着脱自在の刃先部18と、カッターガイド20と、それらを固定するためのキャップ21で構成されている。
【0049】
図4は図3の鞘体を構成する部品を鳥瞰したもので、ヒータカバー17の刃先部18を挿入する側にオネジを設け、ヒータカバー17のオネジ側にヒータカバー17の長手方向に突起22を設け、刃先部18の固定金具24およびカッターガイド20に溝23を設けておき、突起22と各溝23を勘合させて、内径側にメネジを設けた略筒状のキャップ21をヒータカバー17のオネジに捻じ込んで、鞘体を完成させる。
【0050】
図5は刃先部18を示し、電気ヒータ25を圧入したヒータ埋込鞘26と、ヒータ埋込鞘26にかしめられた鋭利な刃先を有する加熱刃4と、ヒータ埋込鞘26にロー付された固定金具24と、電気ヒータ25につながるヒータ線27はヒータ側コネクタ15に接続されており、ヒータ埋込鞘26とヒータ側コネクタ15に露出するヒータ線27を保護するため保護チューブ28を被せておく。
【0051】
上記構成により、本実施形態の動物用断尾器は、加熱刃4を備えた鞘体を第1レバー2に挿入し、固定ねじ29により固定をおこなう。
【0052】
電源を投入すると、加熱刃4内の電気ヒータ25に通電され、加熱刃4の温度が上昇する。このとき、第1レバーの反基端側に貼り付けられたサーモラベル19により、加熱刃4が所定温度以上に到達したことが目視できる。加熱刃4が所定温度以上に到達した時、加熱刃4と刃受け部5の間を、動物の尾の切断箇所に持って行き、第1レバー2の第1握り部2′に被せたグリップ7と第2レバー3の第2握り部3′を把持すると加熱刃4と刃受け部5が閉となり、動物の尾が切断されると共に、加熱刃4の熱で止血・消毒される。
【0053】
図6はカッターガイド20と刃先部18の取付詳細を示す断面図であり、カッターガイド20の先端側上方および下方に刃先部18の加熱刃4及びヒータ埋込鞘26を支持するガイド30を上方が先端側に少し長くなるようにそれぞれ設け、刃先部18を上下方向から支持固定している。そのため、把持した力が確実に加熱刃4に印加され、かつ、力を加え過ぎても加熱刃が変形し難い。
【0054】
また、ヒータ側コネクタ15はヒータカバー17に設けたヒータ側コネクタ受け16と着脱自在に構成されているので、各種の動物の尾の違いに対応した加熱刃4に取り替えたり、幾多の断尾により刃が劣化して加熱刃4を交換したり、電気ヒータ25が断線してしまった時は、この刃先部18を付け替えることができる。
【0055】
なお、加熱刃4は熱の伝導が良く、熱容量も大きくする必要があるため、材質は銅または銅合金とし、高温に曝され酸化したり、血や脂で腐食するのを防止するため、その表面にニッケルメッキ、ニッケルクロムメッキを施したものがよい。
【0056】
また、図3に示すように、鞘体からつながるコードは、把持部1に近い所に入・切スイッチ8を設け、更に伸縮自在のコード9を介して電池側コネクタ12につながる。この入・切スイッチ8により、作業をしない時の電池の消耗を無くし、異常時の安全対策として直ぐに電源をOFFすることができる。
【0057】
また、切断する部位が太い場合などには加熱刃4の温度を高温にする必要があったり、逆に加熱刃4の温度が低くても切断できる場合がある。この場合、加熱刃4の温度を検出する温度検出手段と、加熱刃4の温度を作業者が所望する値に設定できる設定ダイヤルなどを有し供給電源のON/OFFを制御して加熱刃の温度を設定された温度に調整する加熱刃温度制御手段を設けることによって、所望の温度範囲で切断作業ができる。
【0058】
蓄電池10が放電し、充電が必要となった時は、蓄電池10を充電器(図示せず)の近傍に置き、電池コネクタ受け13を充電器に接続して、充電を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
ヒータによって加熱された刃によって切断するので、止血・消毒ができ、動物の尾の切断だけで無く、動物の爪や鳥のくちばしなど他の部位の切断などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1の動物用断尾器を示す全体図
【図2】同把持部側面図
【図3】同鞘体側面図
【図4】同鞘体鳥瞰図
【図5】同刃先部側面図
【図6】同刃先部とカッターガイドの詳細断面図
【図7】従来の動物用断尾器の平面図
【図8】同加熱刃断面図
【符号の説明】
【0061】
1 把持部
2 第1レバー
2′第1握り部
3 第2レバー
3′第2握り部
4 加熱刃
5 刃受け部
6 軸
7 グリップ
8 入・切スイッチ
9 コード
10 蓄電池
11 クリップ
12 電池側コネクタ
13 電池コネクタ受け
14 コードブッシング
15 ヒータ側コネクタ
16 ヒータ側コネクタ受け
17 ヒータカバー
18 刃先部
19 サーモラベル
20 カッターガイド
21 キャップ
22 突起
23 溝
24 固定金具
25 電気ヒータ
26 ヒータ埋込鞘
27 ヒータ線
28 保護チューブ
29 固定ねじ
30 ガイド
101 把持部
102 加熱刃取付部
103 加熱刃
104 電熱ヒーター
106 本体
107 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の尾などを加熱しつつ切断する動物用断尾器であって、ヒータと、互いに枢支されて鋏状に開閉する第1レバー及び第2レバーと、上記第1レバーの先端に設けられ、鋭利な刃先を有するとともに上記ヒータによって加熱される加熱刃と、上記第2レバーの先端に設けられ、上記加熱刃に略対向して閉動作時に上記加熱刃を受ける刃受け部と、上記第1レバー及び上記第2レバーの基端側にそれぞれ設けられ、これらを開閉させるための第1握り部及び第2握り部とを備えたことを特徴とする動物用断尾器。
【請求項2】
第1握り部は筒状体であり、その内部に筒状の鞘体を備え、加熱刃とヒータとが略直線状に配設された状態で上記鞘体に格納され、上記鞘体は、上記加熱刃と上記ヒータとを格納した状態で、上記第1握り部の基端側からの挿脱によって着脱自在となっていることを特徴とする請求項1記載の動物用断尾器。
【請求項3】
閉動作時に上記加熱刃を背面から支持するカッターガイドを備え、力のかかる加熱刃を反対側から押さえていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の動物用断尾器。
【請求項4】
加熱刃とヒータは、コネクタを介して着脱自在となっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の動物用断尾器。
【請求項5】
加熱刃近傍に、所定温度に達すると変色し、所定温度以下になると元の色に戻る可逆性サーモラベルを貼り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の動物用断尾器。
【請求項6】
第1握り部の一部に、断熱性と摩擦性を有したグリップを被覆したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の動物用断尾器。
【請求項7】
ヒータを電気ヒータとし、電源を電池とし、電池と本体とをコネクタにより接続し、電池にクリップを設けたことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の動物用断尾器。
【請求項8】
電池から電源を供給するコードに入・切スイッチを設けたことを特徴とする請求項7記載の動物用断尾器。
【請求項9】
上記加熱刃の温度を検出する温度検出手段と、上記加熱刃を所定の温度に制御する加熱刃温度制御手段を備えた請求項7または請求項8記載の動物用断尾器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−109887(P2006−109887A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297277(P2004−297277)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000006242)松下エコシステムズ株式会社 (36)
【出願人】(000234339)白光株式会社 (19)
【Fターム(参考)】