説明

動物用洗浄組成物

【課題】 使用中の泡立ちが良好で洗い流しやすく、また使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさに優れ、且つ皮膚刺激の低い動物用洗浄組成物を提供する。
【解決手段】 (a)下記一般式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体0.1〜20質量%と、(b)アニオン性界面活性剤2〜30質量%と、(c)両性界面活性剤1〜30質量%と、(d)カチオン性高分子0.1〜2質量%とを含有することを特徴とする動物用洗浄組成物。
Z−{O−[(AO)−(EO)]−R} (I)
(式中、Zはダイマージオール残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、a、bはEO基、AO基の平均付加モル数で、1≦2×a≦150、1≦2×b≦150であり、AO基とEO基の合計に対するEO基の割合は10〜99質量%、Rは炭素数1〜4の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物用洗浄組成物、特に使用時の泡立ち、洗い流し性、使用後の動物の感触(特にドライ後のなめらかさ)、及び皮膚刺激性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫を代表とする動物はペットとして昔から可愛いがられてきたが、近年ますますその傾向は高くなってきている。ペットが快適な生活を送れるよう、以前よりも室内で飼われる場合が多くなり、飼い主と接触する機会が多くなっている。そのため、より清潔に保つ必要性が高まっており、ペット用の洗浄料、特にシャンプーのニーズが高まっている。
【0003】
犬や猫等のペットをシャンプーする場合、いくつか注意すべき課題がある。一つは、ペットは水を嫌うことから出来るだけ短時間で行なわなければならない。そのため優れた洗浄力や泡立ちを有する洗浄組成物が望まれている。
二つ目として、近年特に、シャンプー後の毛の感触が重視されるようになってきている。そのため感触、特にドライ後のなめらかさ、ブラッシングのし易い(毛がからまないこと)洗浄組成物が望まれている。
三つ目として、ペットの中でも特に犬は皮膚疾患にかかりやすいため、洗浄した後でも皮膚が乾燥しないような、マイルドな洗浄組成物が望まれていた。
【0004】
これらの解決手段として、界面活性剤、酵素および微生物などを配合したペット用洗浄剤(例えば、特許文献1)、皮膚疾患の治癒を目的とした薬用シャンプー(例えば、特許文献2)が提案されている。しかしながらそれらの効果は十分満足いくものではなかった。さらにグリセリン脂肪酸エステルなど使用した、ペットにとって安全性の高い洗浄剤も提案されている(例えば、特許文献3)。しかし従来の動物用シャンプーで洗浄した場合、洗浄後皮膚が乾燥し、赤みや痒みが出てくるといった欠点があった。これは一般的に人間よりも動物の方が外気に触れる機会や地面などに擦りつける機会が多いためと考えられる。
【0005】
皮膚刺激性が低く、使用感触も良好な直鎖型ポリアルキレンオキシドジアルキルエーテルを配合した動物用洗浄組成物も提案もされている(例えば、特許文献4)。しかしこれらは使用感触、皮膚に対する刺激性の緩和には優れているものの、泡立ちや洗浄力の点では満足のいくものではなかった。また、若干毛がからむため、ブラッシングしにくい傾向にあり、必ずしも満足のいく効果が得られてはいなかった。
【0006】
また動物用洗浄組成物を調製する場合には、洗浄力向上あるいは基剤の安定性向上の目的で、通常、界面活性剤が配合されている。しかし界面活性剤の相当量の配合によって洗浄力や基剤の安定性を向上効果が得られるものの、使用感触の悪化の一因となる場合があった。これに対して、界面活性剤の配合量を減量すれば、洗浄力や安定性が悪化する傾向にあり、これらの機能と使用感触とを両立させることは、界面活性剤配合時の課題の一つであった。
【0007】
【特許文献1】特開平3−192200号公報
【特許文献2】特開平11−193098号公報
【特許文献3】特開2001−251985号公報
【特許文献4】特開2004−292701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題に鑑みなされたもので、その目的は、使用時の泡立ちが良好で洗い流しやすく、また使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさに優れ、且つ皮膚刺激性の低い動物用洗浄組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン性高分子とともに特定の配合量で用いることにより、使用時の泡立ちが良好で洗い流しやすく、また使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさに優れ、皮膚刺激が低いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる動物用洗浄組成物は、(a)下記一般式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体0.1〜20質量%と、(b)アニオン性界面活性剤2〜30質量%と、(c)両性界面活性剤を1〜30質量%と、(d)カチオン性高分子0.1〜2質量%とを含有していることを特徴とするものである。
Z−{O−[(AO)−(EO)]−R} (I)
(式中、Zは、ダイマージオールから水酸基を除いた残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。a、およびbは、各々前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦2×a≦150、1≦2×b≦150であり、炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10〜99質量%である。Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【0011】
また、前記動物用洗浄組成物において、(a)一般式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のAO基がオキシブチレン基であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の動物用洗浄組成物は、使用時の泡立ちが良好で、洗い流しやすく、使用後の動物の感触、特にドライ後のなめらかさに優れ、ブラッシングがし易くなり、且つ動物に対する皮膚刺激性が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
(a)ブロック型アルキレンオキシド誘導体
本発明にかかる動物用洗浄組成物は、必須成分として(a)下記一般式(I)で示される特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体を含むものである。
Z−{O−[(AO)−(EO)]−R} (I)
式(I)で示される特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Zは、ダイマージオールから水酸基を除いた残基、EOはオキシエチレン基である。AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、例として、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらに好ましくはオキシブチレン基である。これらの付加形態はブロック状である。
【0014】
aおよびbは、各々前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦2×a≦150、1≦2×b≦150である。好ましくは2≦2×a≦70、5≦2×b≦120であり、より好ましくは、2≦2×a≦50、10≦2×b≦100である。2×aが0であると洗浄中の泡立ち、洗い流しやすさ、洗浄効果、洗浄後の毛のなめらかさに劣り、150を越えるとべたつき感が生じる傾向がある。また、2×bが0であると水への溶解が困難になるとともに、洗浄中の泡立ち、洗い流しやすさ、洗浄後の毛のなめらかさが十分に得られず、150を越えるとなめらか感に劣る傾向にある。
【0015】
前記式(I)中のAOとEOの合計に対するEOの割合は10〜99質量%であり、好ましくは20〜70質量%である。10質量%より小さいと保湿効果感に劣る傾向にある。
また、オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の付加形態はブロック状である。ランダム状であると洗浄中の泡立ち、洗い流しやすさ、洗浄効果が不良になる。付加順序はダイマージオールに対して、AO、EOの順で結合しているのが好ましい。
【0016】
Rは、炭素数1〜4の炭化水素基である。べたつきの原因となる末端の水酸基をアルキルエーテル化することで、皮膚とのなじみが向上し、良好な使用感をもたらす。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基およびこれらの混合基などが挙げられる。本発明においてはメチル基、エチル基であることが好ましい。炭素数が5より大きいと、使用感触に劣る傾向にある。
【0017】
式(I)で示される特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体において、Zは、ダイマージオールから水酸基を除いた残基である。ここで、ダイマージオールとは、ダイマー酸を還元して得られるジオールである
本発明に用いられるダイマージオールの原料となるダイマー酸は、例えば、不飽和脂肪酸又はその低級アルコールエステルを重合することによって得られる二量体である。具体的にはオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等の不飽和脂肪酸又はこれらの低級アルコールのエステルをディールス・アルダー反応のような熱重合により反応させる方法又はその他の反応方法によって合成できる。生成したダイマー酸中に本発明の効果を損なわない範囲であれば未反応の脂肪酸が残っていても構わない。
【0018】
ダイマー酸としては、炭素数12〜24の不飽和脂肪酸又はその低級アルコールエステルを二量化したものが好ましい。この場合、Zは炭素数24〜48のダイマージオール残基となる。このような不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレイン酸及びこれらの炭素数1〜3の低級アルコールエステルなどが挙げられるが、好ましくは、炭素数18の不飽和脂肪酸であり、オレイン酸又はリノール酸もしくはその低級アルコールエステルが特に好ましい。また、二量化した後に、残存する不飽和二重結合を水素添加したダイマー酸を用いてもよい。
ダイマージオールは、動物油脂由来及び植物油脂由来のものが流通しているが、本発明では何れも使用できるが、植物油脂由来のものがより好ましい。このようなダイマージオールとしては、コグニス・ジャパン社製Sovermol 908、ユニケマ社製PRIPOL 2033、東亞合成(株)製ぺスポールHP−1000などが例示できる。
【0019】
本発明に用いられる(a)特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体としては、具体的には、例えば、POB(25)POE(34)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(25)POE(35) ジメチルダイマージオールエーテル、POB(4)POE(13)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(25)POE(52)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(41)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(15)POE(44)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(41)ジエチルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(41)ジプロピルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(41)ジブチルダイマージオールエーテル、POB(11)POE(30)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(15)POE(45)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(50)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(21)POE(56)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(12)POE(50)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(18)POE(61)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(3)POE(40)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(6)POE(82)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(40)POE(120)ジメチルダイマージオールエーテル、POB(100)POE(40)ジメチルダイマージオールエーテル、POE(35)POP(30)ジメチルダイマージオールエーテル、POE(52)POP(30)ジメチルダイマージオールエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下、このように略して記載することがある。また、上記POE、POP、POBの付加モル数は、それぞれ分子中の総付加モル数であり、すなわち、2×a,2×bの値として表記している。
【0020】
式(I)で示される特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、ダイマージオールに、炭素数3〜4のアルキレンオキシド、エチレンオキシドを順に付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル反応させることによって得られる。
【0021】
本発明にかかる動物用洗浄組成物において、(a)特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量は、組成物全体に対して0.1〜20質量%である。さらには0.1〜10質量%であることがより好ましい。0.1質量%未満では配合による効果の発現が十分ではない場合があり、また20質量%を超えると使用後の乾燥時になめらか感に劣る場合がある。
【0022】
(b)アニオン性界面活性剤
また、本発明にかかる動物用洗浄組成物は、必須成分として(b)アニオン性界面活性剤を含むものである。本発明に用いられるアニオン性界面活性剤としては、洗浄料において一般的に用いられる界面活性剤であれば特に制限されず、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE−ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE−ラウリル硫酸ナトリウム等);N−アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウリルメチルタウリンナトリウム等);リン酸エステル塩(POE−オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE−ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N−アシルグルタミン酸塩(例えば、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE−アルキルエーテルカルボン酸;POE−アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N−パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。これらアニオン性界面活性剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明にかかる動物用洗浄組成物において、(b)アニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体に対して2〜30質量%である。また、さらに好ましくは5〜15質量%である。2質量%未満では泡立ちが悪くなり、30質量%を越えると、使用後、きしみ若しくはぬめりを感じる場合がある。
【0024】
(c)両性界面活性剤
また、本発明にかかる動物用洗浄組成物は、必須成分として(c)両性界面活性剤を含むものである。本発明に用いられる両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。これら両性界面活性剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明にかかる動物用洗浄組成物において、(c)両性界面活性剤の配合量は、組成物全体に対して1〜30質量%である。また、さらに好ましくは3〜15質量%である。1質量%未満では泡立ちが悪くなり、30質量%を越えると使用後、ぬめりを感じる場合がある。
【0026】
(d)カチオン性高分子
また、本発明にかかる動物用洗浄組成物は、必須成分として(d)カチオン性高分子を含むものである。本発明に用いられるカチオン性高分子としては、例えば、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース−2、ポリクオタニウム−39、ポリクオタニウム−7等が挙げられる。これらカチオン性高分子は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明にかかる動物用洗浄組成物において、(d)カチオン性高分子の配合量は、組成物全体に対して0.1〜2質量%である。0.1質量%未満だと洗浄効果が弱まり、2質量%を超えると、液の粘性が高くなり過ぎて使用しにくくなる。
【0028】
本発明にかかる動物用洗浄組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、一般に動物用洗浄組成物に配合される他の成分、例えば、油分、水等を配合することができ、さらに所望に応じて、無機顔料、体質顔料等の粉末類、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、防腐剤、色素、香料などを適宜配合することができる。
【実施例1】
【0029】
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
最初に、本発明に用いた評価方法について説明する。
【0030】
「評価(1):洗浄中の泡立ち」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄中の泡立ちの有無を専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が洗浄中泡立ち良好と認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
×…専門パネラー3名未満が洗浄中泡立ち良好と認めた。
【0031】
「評価(2):洗い流しやすさ」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄後に水(またはぬるま湯)で洗い流す際の洗い流しやすさを専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が、洗い流しやすいと認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が、洗い流しやすいと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が、洗い流しやすいと認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗い流しやすいと認めた。
【0032】
「評価(3):洗浄効果」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄後の洗浄効果感の有無を専門パネラー10名により判定した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
×…専門パネラー3名未満が、洗浄後臭いがなく、且つ洗浄効果があると認めた。
【0033】
「評価(4):洗浄乾燥後の毛のなめらかさ」
家庭内で飼育されている犬に対して使用し、洗浄乾燥後の毛のなめらかさの有無を専門パネラー10名により判定した。なお自然乾燥後の毛のなめらかさと洗浄前の状態を比較法により評価した。評価基準は以下の通りである。
◎…専門パネラー8名以上が洗浄前よりもなめらかと認めた。
○…専門パネラー6名以上8名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
△…専門パネラー3名以上6名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
×…専門パネラー3名未満が洗浄前よりもなめらかと認めた。
【0034】
「評価(5):皮膚刺激試験」
皮膚炎の症状が認められる犬に対して本発明に係る動物用洗浄組成物を1ヶ月間使用し、その後観察者10名により犬の状態を見て評価し、その平均値を算出した。この評価において平均値が1.5以上の場合は皮膚刺激性が弱いとし、平均値が1.0点以上1.5未満の場合は皮膚刺激性が中程度であるとし、平均値が1.0未満の場合は皮膚刺激性が強いと評価した。
2点:症状が軽減された
1点:症状変化なし
0点:症状が若干悪化した
【0035】
<ブロック型アルキレンオキシド誘導体の合成>
つづいて、本発明に用いたアルキレンオキシド誘導体の合成方法を示す。なお、オキシアルキレン基及びオキシエチレン基の付加モル数については、それぞれ2×a,2×bの値として表記する。
化合物1:POB(18モル)POE(41モル)ジメチルダイマージオールエーテル
Z−{O−[(AO)−(EO)]−R}
(Z;炭素数36のダイマージオール(リノール酸由来)残基、AO;オキシブチレン基、2×a=18、2×b=41、R=メチル基、EO/(AO+EO)=58.2質量%)
ダイマージオール270g(0.50モル、商品名:コグニス・ジャパン(株)製Sovermol 908、リノール酸由来のダイマージオール)と水酸化カリウム6.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃にて触媒を完全に溶解させた。引き続き、120℃、0.2〜0.5MPa(ゲージ圧)にて、滴下装置よりブチレンオキシド650gを滴下させ、3時間撹拌した。続いて120℃、0.2〜0.5MPa(ゲージ圧)にて滴下装置よりオキシエチレン905gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム100gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル60gを温度80〜130℃、0.3MPa(ゲージ圧)にて圧入し6時間反応させた。その後オートクレーブより反応物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を100℃で1時間処理することで除去した。さらに処理後生成した塩を除去するためにろ過を行い、化合物1を得た。
【0036】
以上の合成例に準じて、本発明者らは下記表1に示す化合物1〜5,及び比較化合物1〜6を製造した。
【0037】
【表1】

【0038】
<動物用洗浄料への配合>
つづいて、本発明者らは、以上のようにして製造した化合物1〜5、比較化合物1〜6のアルキレンオキシド誘導体を用い、下記表2及び表3に記載の配合組成からなる各実施例及び比較例の動物用洗浄料を常法により製造し、上記の評価(1)〜(5)について評価試験を行なった。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
表2に示されるように、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体(化合物1〜5)を配合した実施例1〜5は、(1)〜(5)のいずれの評価においても優れているものであった。
これに対して、表3に示されるように、オキシエチレン基のみあるいはオキシブチレン基のみの化合物(比較化合物1,2)を用いた比較例1,2では、洗浄中の泡立ち、洗い流しやすさに劣り、洗浄中の動物にストレスを感じさせるものであり、さらに洗浄乾燥後の毛のなめらかさも十分なものでなかった。また、オキシエチレン基のみの場合では、洗浄効果の点でも劣っていた。
【0042】
両末端が水素の化合物(比較化合物3)を用いた比較例3では、特に洗浄乾燥後の毛のなめらかさが十分ではなく、両末端が炭素数6の炭化水素基の化合物(比較化合物4)を用いた比較例4では、洗浄中の泡立ち、洗浄乾燥後の毛のなめらかさが十分ではなかった。また、アルキレンオキシド/エチレンオキシドの結合形態がランダム型の化合物(比較化合物5)を用いた比較例5では、洗浄中の泡立ち、洗い流しやすさ、洗浄効果のいずれも満足のいくものではなかった。さらに、ダイマージオール骨格を有さない化合物(比較化合物6)を用いた比較例6では、洗浄中の泡立ち及び洗浄効果が十分に得られなかった。
【0043】
つづいて、動物用洗浄剤組成物における特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の好適な配合量の検討結果を下記表4に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
表4に示されるように、特定構造のブロック型アルキレンオキシド誘導体の配合量が1〜10質量%である実施例6及び7では、(1)〜(5)いずれの評価においても優れていた。これに対して、配合量が0.01質量%である比較例7では、洗浄乾燥後の毛のなめらかさが十分に得られなかった。また、30質量%配合した比較例8では、やや洗浄乾燥後の毛のなめらかさが悪くなり、さらに若干皮膚への刺激性が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体0.1〜20質量%と、
(b)アニオン性界面活性剤2〜30質量%と、
(c)両性界面活性剤1〜30質量%と、
(d)カチオン性高分子0.1〜2質量%と
を含有することを特徴とする動物用洗浄組成物。
Z−{O−[(AO)−(EO)]−R} (I)
(式中、Zは、ダイマージオールから水酸基を除いた残基、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、これらの付加形態はブロック状である。a、およびbは、各々前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦2×a≦150、1≦2×b≦150であり、炭素数3〜4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は10〜99質量%である。Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の動物用洗浄組成物において、前記(a)一般式(I)で示されるブロック型アルキレンオキシド誘導体のAO基がオキシブチレン基であることを特徴とする動物用洗浄組成物。

【公開番号】特開2009−227786(P2009−227786A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73736(P2008−73736)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】