説明

動画撮影装置

【課題】動画撮影中に絞り変更を行った場合の露出への影響を最小限に抑制する。
【解決手段】動画撮像中の絞り値の変更指示に従い、絞りの絞り込み量を指示された絞り値に応じた絞り込み量となるまで単位量Δaづつ段階的に変更する。絞り込み量が単位量Δaだけ変更されるごとに、適正露出を維持するための感度ゲインの変更量Δsを演算し、その演算結果に基づいて感度ゲインを制御する。単位量Δaに対応する絞り値の変化量は、絞り値変更指示における絞り値の最小変更幅よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画撮影時に絞り変更が可能な動画撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動画撮影中に絞り込み量の変更を自動で行う撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の撮影装置は、動画撮影中に被写体がある程度以上暗い場合や明るい場合は、絞り変更による露出への影響(露出アンダー、露出オーバー)が大きいため、絞り変更を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−288171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、絞り変更を行った場合の露出への影響を緩和する措置はとっておらず、このため絞り変更が許容される輝度範囲が大きく限定されるだけでなく、絞り変更が許容された場合は、絞り変更による露出の変化が動画観賞者に違和感を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る動画撮影装置は、レンズおよび絞りを介して被写体光束を受光し、動画データを生成する動画撮像手段と、絞り値の変更を指示する指示手段と、動画撮像中の絞り値の変更指示に従い、絞りの絞り込み量を指示された絞り値に応じた絞り込み量となるまで単位量づつ段階的に変更する絞り変更手段と、絞り変更手段により絞り込み量が単位量だけ変更されるごとに、適正露出を維持するための感度ゲインの変更量を演算し、その演算結果に基づいて感度ゲインを制御するゲイン制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、動画撮影中に絞り変更を行った場合の露出への影響を最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態におけるデジタルカメラの背面図。
【図2】上記カメラの制御ブロック図。
【図3】被写体輝度が一定のときの絞り変更と感度ゲイン制御を示すタイムチャート。
【図4】被写体輝度が低下しているときの絞り変更と感度ゲイン制御を示すタイムチャート。
【図5】動画撮影時の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1において、デジタルカメラ(以下、単にカメラ)の背面には液晶モニタ1と、電子ビューファインダ(EVF)2の接眼部2aと、録画ボタン3と、他の複数の操作部材4a〜4eとが設けられ、同上面にはレリーズボタン5が設けられている。
【0009】
図2はカメラのブロック図である。撮影レンズ(交換レンズ)11を透過した被写体光束は、撮像素子12で撮像され、その撮像信号は画像処理部13に入力される。画像処理部13を構成する画像処理回路13aは、入力された撮像信号に種々の処理を施して画像データを生成する。画像データは、表示回路13bによる処理を経て表示装置14(液晶モニタ1およびEVF2)に表示される。
【0010】
撮影モード設定時には、上記撮像が繰り返され、その都度得られる画像データに基づく画像が表示装置14に逐次更新表示される。この逐次更新表示は、ライブビュー表示またはスルー画表示と呼ばれ、撮影者はその表示画像を見ながら構図合わせを行う。レリーズボタン5が押圧操作されると、改めて撮像が行われ、それによって生成された静止画像データは、コンピュータで扱うことが可能な画像ファイルとして、記録/再生回路13cによりメモリカード等の記録媒体15に記録される。
【0011】
録画ボタン3が押圧操作されると、撮像素子12による動画撮影が開始され、録画ボタン3の再度の押圧操作で動画撮影が停止する。この間に得られた撮像信号は、画像処理部13で動画データに変換される。また動画撮影時には、不図示のマイクを介して音声が入力され、音声データが生成される。生成された動画データと音声データは、互いに組み合わされて動画ファイルを構成し、動画ファイルは記録/再生回路13cを介して記録媒体15に記録される。
【0012】
再生モードでは、記録媒体15に記録された静止画像または動画ファイルを記録/再生回路13cにて読み出し、画像処理回路13aおよび表示回路13bによる処理を経て、表示装置14に静止画または動画として再生表示することができる。動画再生時には、動画ファイルを構成する音声データに基づく音声が不図示のスピーカから出力される。
【0013】
CPU16は、操作部17からの入力に応答して上記画像処理部13やAF駆動回路18、絞り駆動回路19、その他の不図示の回路を制御する。操作部17は、上述したレリーズボタン5や録画ボタン3、操作部材4a〜4e、不図示の電源ボタン等を含む。
【0014】
AF駆動回路18は、CPU16の指示に応じてAFモータ20を駆動し、撮影レンズ11を構成する合焦レンズ11aを光軸方向に移動させて自動焦点調節(AF)を行う。本実施形態のカメラは、いわゆるコントラスト方式のAF制御を採用しており、ライブビュー表示時および動画撮影時は、AF制御によるピント合わせが常に行われる。
【0015】
絞り駆動回路19は、CPU16の指示に応じて絞り駆動モータ(ステッピングモータ)21を駆動し、撮影レンズ11の絞り11bを駆動する(絞り開口径を変更する)。
【0016】
次に、絞りの変更を伴う動画撮影について説明する。
なお、「絞りの変更」とは、正しくは絞り11bの絞り込み量、換言すれば絞り開口径の変更を意味する。絞り込み量は「絞り値」に依存し、絞り値が大きいほど絞り込み量は大きい(絞り開口径は小さい)。
【0017】
本実施形態のカメラは、動画撮影中に、撮影者の操作に応じて絞り値を変更でき、CPU16は、絞り値の変更操作に応じて絞りを変更する。絞りの変更によって被写界深度が変化し、映像のボケの状態が変化する。ただし、CPU16はAF制御によってAFエリア内の被写体にピントを合わせ続けるので、撮影者がピントを合わせたい被写体(主要被写体)がぼけることはない。これによれば、主要被写体に対する合焦を維持しつつ、背景や前景のボケ味のみを変化させる効果的な動画撮影が手軽に行える。
【0018】
絞り値の変更操作を行うための操作部材として、コマンドダイアル(図1の4a)や、マルチセレクタ(同4d)が挙げられる。コマンドダイアル4aの場合は、その一方向の回転操作で絞り値を大きく、他方向の回転操作で絞り値を小さくする。絞り値の最小変更幅は、露出段数で1/2段あるいは1/3段とされる。すなわち、コマンドダイアル4aは、単位操作角(微小角度)ごとにクリック感が得られるようになっており、その単位操作角ごとに絞り値が1/2段あるいは1/3段だけ変更される。1/2段と1/3段とを切換可能としてもよい。
【0019】
一方、絞り値変更操作部材としてマルチセレクタ4dを用いる場合は、上部の押圧操作で絞り値を大きく、下部の押圧操作で絞り値を小さくする(左右操作に割り当ててもよい)。1回の押圧操作(単位操作)ごとに上記所定量だけ絞り値が変更されるようにすればよい。その他、レバー式操作部材やスライド式操作部材を絞り値変更操作部材として用いてもよい。
【0020】
上記絞り値変更操作によって絞り値が変更されると、CPU16は、変更後の絞り値に応じた絞り込み量(以下、目標絞り込み量)となるように絞り11bを駆動する。このとき、目標絞り込み量まで一気に絞りを駆動するのではなく、段階的に駆動する。
【0021】
図3(a)は、絞り値変更操作に応じて絞り込み量を段階的に低減する(絞り開口径を段階的に大きくする)様子を示している。
CPU16は、単位時間ΔTごとに単位量Δa分だけ絞り込み量を低減する。このΔaは、露出段数にして1/6段〜1/4段程度とされ、これは、上述した絞り値変更操作の単位操作あたりの絞り値変更量(1/2段あるいは1/3段)と比べて小さい。なお、Δaは1/6段未満の更に細かい制御段数で制御してもよく、細かく制御するほど露出の変化をよりスムーズに制御できるようになる。絞り制御は、CPU16が絞り駆動回路19を介して絞り駆動モータ21に与えるパルスを制御することで達成される。
【0022】
図3(b)は上記絞り変更に伴う感度ゲイン(撮像感度)の変化の様子を示している。
CPU16は、絞り変更による露出への影響を阻止するために、絞り込み量が単位量Δaだけ低減されるのに同期して、感度ゲインを単位量Δsだけ低減させる。Δsは、Δaおよび被写体輝度(図3(c))によって決まる。
【0023】
APEX方式によれば、被写体輝度をBv、感度ゲインをSv、絞り値をAv、シャッタ秒時をTvとしたとき、
Bv+Sv=Av+Tv・・・(1)
が成り立つようにSv、Av、Tvを設定することで、適正露出が得られる。動画撮影では、予め設定されたフレームレートでシャッタ秒時Tvの最適値(例えば、1/60秒)が決まるから、動画撮影中はTvは固定とし、Avの変更に伴ってSvを変更することで適正露出を維持する。CPU16は、上記Δaの変更の都度、直前のライブビュー画像、あるいは専用の測光センサから被写体輝度Bvを取得し、Tv固定のまま(1)式が成り立つようにSv、すなわちΔsを求め、ゲイン調整を行う。
【0024】
図3は絞り変更中に被写体輝度が変化しなかったケースを示し、絞り込み量を低減する分だけ感度ゲインを低下させることで、適正露出が維持される(露出オーバーが防止される)。
【0025】
一方、図4は絞り変更中に被写体輝度が低下したケースを示している。絞り変更については図3(a)と同等であるが、被写体輝度低下の分だけΔsは図3(b)より小さくなり、これにより適正露出が維持される。なお、被写体輝度の変化は、天候の変化や構図の変更等で起こり得る。
【0026】
このように本実施形態では、動画撮影中に絞り値変更操作がなされると、絞りを単位量Δaずつ段階的に変更し、その変更の都度、被写体輝度に基づいて最適なゲイン調整量Δsを求めてゲイン調整を行うようにしたので、絞りが変更された場合でも適正露出を維持することができる。しかも、単位量Δaは微小量(絞り値の最小変更幅に対応する量よりも小さい)ので、絞り変更中に被写体輝度が大きく変化したような場合でも、その変化に追従して適切なゲイン調整を行うことができ、絞り変更による露出への影響を最小限に抑制できる。
【0027】
なお、静止画撮影時の絞り変更は、上述した動画撮影中の絞り変更より高速で行われる。すなわち、静止画撮影操作がなされると、CPU16は、可能な限り高速で絞り駆動を行って設定絞り値に応じた絞り込み量を実現し、しかる後に撮像を行う。
【0028】
図5は動画撮影時におけるCPU16の処理手順を示すフローチャートである。
録画開始操作(例えば、録画ボタン3の操作)に伴ってCPU16がこのプログラムを起動し、ステップS1で動画撮像を開始する。ステップS2では絞り値変更操作がなされたか否かを判定し、否定されるとステップS7に進み、肯定されるとステップS3に進む。
【0029】
ステップS3では、上述した単位量Δaだけ絞り込み量を変更する。変更方向は、現在の絞り値と指示された絞り値との比較によって決まる。ステップS4では、その時点での被写体輝度を取得するとともに、Δaと被写体輝度とに基づいて、感度ゲインの単位変更量Δsを演算する。その詳細は上述した通りである。ステップS5では、ゲインをΔsだけ変更する。なお、ステップS3、S4は順序が逆でもよい。
【0030】
ステップS6では、目標絞り込み量(絞り値変更操作によって指示された絞り値に応じた絞り込み量)に達したか否かを判定し、否定されるとステップS3に戻り、ステップS6が肯定されるまで、ステップS3〜S5の処理を所定周期ΔTで繰り返す。
【0031】
ステップS6が肯定されるとステップS7に進み、録画終了操作(例えば、録画ボタン3の再度の操作)がなされたか否かを判定し、否定されるとステップS2に戻り、肯定されるとステップS8で動画撮影を停止する。ステップS9では、得られた動画ファイルの記録が完了するまで待ち、その後、処理を終了する。
【0032】
なお、感度ゲインの変更には限界があるため、被写体輝度が極端に高い(あるいは低い)ときに絞り変更を行うと、適正露出が維持できない場合がある。この場合は、露出を重視して絞り変更を禁止するという考え方と、撮影者の意志を尊重して絞り変更を敢行するという考え方がある。禁止する場合は、上記ステップS3の前にステップS4の演算を行い、Δsの変更が不能な場合(ゲインの限界を超えてしまう場合)は、Δa、Δsの変更を行わずにステップS7に進むようにすればよい。ただし、この場合においても、絞り変更が許容される輝度範囲が特許文献1のように大きく限定されることはない。
【0033】
上記単位量Δaは可変であってもよい。例えば、絞り変更中に被写体輝度の変化が所定値以上となった場合は、CPU16が自動的にΔaおよびΔTを小さくして、輝度変化に対する追従性を高めるようにしてもよい。あるいは撮影者が予めΔaを設定できるようにしてもよい。
【0034】
また、動画撮影中の絞り値変更操作に応じて絞り変更を行う例を示したが、例えば動画撮影前に絞り値の初期値と最終値とを設定しておき、その設定(絞り値の変更指示に相当)に基づいてCPUが絞り変更を行う場合や、特許文献1に示すような、CPUが動画データに基づいて絞りを変更するような場合も本発明を適用できる。
【0035】
さらに、レンズ交換可能なカメラにて説明したが、動画撮影が可能なものであれば、レンズを固定的に備えたカメラやビデオカメラにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0036】
4a コマンドダイアル
4d マルチセレクタ
11 撮影レンズ
11b 絞り
16 CPU
19 絞り駆動回路
21 絞り駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズおよび絞りを介して被写体光束を受光し、動画データを生成する動画撮像手段と、
絞り値の変更を指示する指示手段と、
動画撮像中の絞り値の変更指示に従い、前記絞りの絞り込み量を前記指示された絞り値に応じた絞り込み量となるまで単位量づつ段階的に変更する絞り変更手段と、
前記絞り変更手段により前記絞り込み量が前記単位量だけ変更されるごとに、適正露出を維持するための感度ゲインの変更量を演算し、その演算結果に基づいて前記感度ゲインを制御するゲイン制御手段とを具備することを特徴とする動画撮影装置。
【請求項2】
前記単位量は、前記指示手段による絞り値の最小変更幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の動画撮影装置。
【請求項3】
前記単位量は可変であることを特徴とする請求項1または2に記載の動画撮影装置。
【請求項4】
前記絞り値の変更指示は、所定の操作部材の操作に伴ってなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の動画撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−98779(P2013−98779A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240342(P2011−240342)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】