説明

動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置

【課題】 超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材を対象に、駆動源として動電型振動発生装置を用いて材料試験片に曲げ疲労負荷を与えて疲労試験を実施する、動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置を提供する。
【解決手段】 動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、励磁コイルによる磁場環境に置かれた可動コイルに任意の周波数からなる電流を通電し、直線的な振動を発生させる動電型振動発生装置12と、この動電型振動発生装置12の上部に配置される可動部14と、この可動部14の上方に配置される磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片16の両側に構成されるリンク機構17を有する試験片加振用治具18とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置に係り、特に、磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド樹脂材料(以下、モールド材と称する)を対象とした動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超電導磁気浮上式鉄道における地上コイルは、雨風にさらされる屋外に配置されるとともに、超電導磁石を搭載した高速列車通過時の電磁加振を受ける環境におかれている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−262542号公報
【特許文献2】特開2008−295240号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Factory Mart Japan ホームページ(http://www.fa−mart.co.jp/instron/03.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、長期の屋外使用が前提となる超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルにとって、その地上コイルを支持すべきモールド材の強度評価は極めて重要であり、実機の機械的・電気的信頼性を如何にして立証するかが当面の重要な課題である。特に、高周波での加振環境は超電導磁気浮上式鉄道に固有であり、粘弾性挙動を示すモールド材としての高分子材料の疲労強度における周波数依存性の検証は、かかる地上コイルの強度設計に不可欠である。
【0006】
一方、現在一般的に用いられている材料疲労試験装置としては、以下のようなものがある。
(1)ボールドウィンタイプ
不平衡振子を等速回転することにより遠心力を発生させ、左右の分力を板バネで拘束し上下力のみを利用した荷重一定平面曲げ疲労試験機である。
【0007】
従来の加振周波数は30Hz固定であり、試験周波数が変えられない。そのため100Hzへの改造が試みられているが、構成部材が共振域の振動加速度に耐えられず、加振周波数を100Hzに変更することはこの種の疲労試験機では実現できる見通しがない。
(2)油圧タイプ
駆動源に油圧を利用した疲労試験機で、比較的大きな荷重が出力できる反面、樹脂片のように弾性率の小さい材料では、高周波での変位が追随しないため、高周波では高い応力が加えられない。
(3)リニアモータ駆動タイプ
駆動源にリニアモータを利用した電動疲労試験機であり、原理上高周波が出力し易いが、樹脂片のように弾性率の小さい材料では、油圧と同様に高周波での変位が追随せず、高い応力を加えることができない(上記非特許文献1参照)。
【0008】
本発明は、上記状況に鑑みて、超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材を対象に、駆動源として動電型振動発生装置を用いて材料試験片に曲げ疲労負荷を与えて疲労試験を実施する、動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、励磁コイルによる磁場環境に置かれた可動コイルに任意の周波数からなる電流を通電し、直線的な振動を発生させる動電型振動発生装置と、この動電型振動発生装置の上部に配置される可動部と、この可動部の上方に配置される磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片の両側に構成されるリンク機構を有する試験片加振用治具とを具備することを特徴とする。
【0010】
〔2〕上記〔1〕記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記試験片には前記リンク機構を有する試験片加振用治具により曲げ疲労負荷を与えることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記可動部に振動加速度計を備えることを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記可動部と前記試験片加振用治具との間に荷重変換器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材の試験片を任意の周波数で加振することができるので、疲労強度における周波数依存性の検証を行い、地上コイルの強度設計に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る動電型振動発生装置の動作原理を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す動電型振動発生装置を用いた磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材の疲労試験装置の模式図である。
【図3】本発明の実施例を示す動電型振動発生装置の設定荷重に対する試験片の発生ひずみの特性図である。
【図4】本発明の動電型振動発生装置を用いた磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材の疲労試験装置を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置は、励磁コイルによる磁場環境に置かれた可動コイルに任意の周波数からなる電流を通電し、直線的な振動を発生させる動電型振動発生装置と、この動電型振動発生装置の上部に配置される可動部と、この可動部の上方に配置される磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片の両側に構成されるリンク機構を有する試験片加振用治具とを具備する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係る動電型振動発生装置の動作原理を示す模式図であり、図1(a)は可動部コイルに印加される電流波形を示し、図1(b)は動電型振動発生装置の電磁力による力の発生原理を示す模式図である。
図1において、1は振動発生装置本体、2は下部励磁コイル、3は上部励磁コイル、4は任意の電流を通電することができる可動部コイル、5は可動部である。
【0016】
図1(a)に示すような波形の電流が可動部コイル4に供給されると、プラス電流の場合は可動部5が上昇し、マイナス電流の場合は可動部5が下降する。つまり、正弦波が供給されると、可動部5は上下方向に直線的に振動することになる。なお、可動部コイル4に供給される周波数は可変にすることができる。
図2は本発明の実施例を示す動電型振動発生装置を用いた磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材の疲労試験装置の模式図である。
【0017】
この図において、11は動電型振動発生装置の固定部、12は振動発生装置本体、13は動電型振動発生装置の固定部11と振動発生装置本体12との間に配置される防振バネ、14は振動発生装置本体12の上部に配置される可動部、15は可動部14に搭載される振動加速度計、16は磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片、18はリンク機構17を有する試験片加振用治具、19は試験片16に貼付けられるひずみゲージであり、事前に加振条件を標定するために使用する。20は可動部14と試験片加振用治具18との連結部に配置される荷重変換器であり、試験片16に加わる荷重を一定に制御するためのものである。
【0018】
動電型振動発生装置の駆動により、可動部14は上下方向に直線的に振動をする。すると、リンク機構17を有する試験片加振用治具18にその振動は伝達され、試験片16に曲げ疲労負荷を与えることができ、材料疲労試験を行うことができる。
図3は本発明の実施例を示す動電型振動発生装置の設定荷重に対する試験片の発生ひずみの特性図であり、図3(a)は30Hz、図3(b)は70Hz、図3(c)は100Hz、図3(d)は140Hzにてそれぞれ駆動させた場合の設定荷重(N)に対する試験片のひずみ(μ)特性図である。
【0019】
これらの図から、各周波数における荷重に対するひずみは線形性を有していることがわかる。つまり、本発明の動電型振動発生装置が周波数可変疲労試験装置として有効に機能することが分かる。
図4は本発明の動電型振動発生装置を用いた磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材の疲労試験装置を示す図面代用写真である。
【0020】
この図において、21は振動発生装置本体、22は可動部、23は可動部22に搭載される振動加速度計、24は荷重変換器、25は磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片である。
このように構成したので、動電型振動発生装置を用いて試験片加振用治具を介して材料試験片に曲げ疲労負荷を与えることができ、疲労強度における周波数依存性の検証を行い、地上コイルの強度設計に役立てることができる。
【0021】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置は、超電導磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材を対象に、疲労試験時の駆動源として動電型振動発生装置を用いてリンク機構を有する試験片加振用治具を介して材料試験片に曲げ疲労負荷を与えることができる疲労試験装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1,12,21 振動発生装置本体
2 下部励磁コイル
3 上部励磁コイル
4 可動部コイル
5,14,22 可動部
11 固定部
13 防振バネ
15,23 振動加速度計
16,25 磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片
17 リンク機構
18 試験片加振用治具
19 ひずみゲージ
20,24 荷重変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)励磁コイルによる磁場環境に置かれた可動コイルに任意の周波数からなる電流を通電し、直線的な振動を発生させる動電型振動発生装置と、
(b)該動電型振動発生装置の上部に配置される可動部と、
(c)該可動部の上方に配置される磁気浮上式鉄道用地上コイルのモールド材からなる試験片の両側に構成されるリンク機構を有する試験片加振用治具とを具備することを特徴とする動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置。
【請求項2】
請求項1記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記試験片には前記リンク機構を有する試験片加振用治具により曲げ疲労負荷を与えることを特徴とする動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置。
【請求項3】
請求項1記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記可動部に振動加速度計を備えることを特徴とする動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置。
【請求項4】
請求項1記載の動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置において、前記可動部と前記試験片加振用治具との間に荷重変換器を備えることを特徴とする動電型振動発生装置を用いた周波数可変疲労試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38817(P2011−38817A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184159(P2009−184159)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】