説明

包丁差しおよびシステムキッチン

【課題】子供のいたずらを防止し、また引き出しの開閉によって包丁が動いてしまうことのない、安全面に優れた包丁差しおよびこれを備えたシステムキッチンを提供する。
【解決手段】 本発明の包丁差し600のは、包丁330を横に向けた状態で、その刃330aを下に向けて収容する1または複数の溝630と、包丁330の柄を収容する柄収容部640と、包丁330と長手方向略平行に配されるレール650と、レール650に嵌合され、溝630および柄収容部640の上方を包丁330の長手方向にスライド自在な規制部材610と、を備え、規制部材610が、包丁330の上方に位置するとき、溝630に嵌入された包丁330の上方への移動を規制することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構を備えた包丁差し、およびこれを備えたシステムキッチンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンで使用される調理器具には、ボールやざる、長手の形状を有する杓子類(レードル)、長箸、ラップ、調味料などの小物類、包丁など、様々なものがある。
【0003】
とりわけ包丁は、収納された場所から取り出すときに動いてしまうと危険であるため、従来、安全面に配慮して、キッチンの前板の裏側に立てた状態で収納されるのが一般的であった(特許文献1、特許文献2)。このように収納しておけば、前板を開閉しても包丁は殆ど動かないからである。
【0004】
他方、特許文献3には、引出の収納領域内に包丁を横向き姿勢で保持可能な包丁差しが記載されている。
【特許文献1】特開2000−210140号公報
【特許文献2】特開2006−204462号公報
【特許文献3】特開2002−119431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年増加している全開放型の対面式オープンキッチンの場合、調理器具を吊るしたり収納棚を設けたりする壁がキッチン使用者の前方になく、収納スペースがより限定的になっている。そのため、とりわけ効率的に調理器具等を収納することが必要とされている。
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載のような包丁を立てた状態で収納する方式に固執していては、効率的な収納を目指す収納方式を考案する自由度を損なってしまう。包丁は従来とは別の収納方式で収納してよいし、キッチン前板の裏側にも、包丁に限られない、様々な調理器具等を収納できる可能性があるからである。
【0007】
一方、特許文献3のような、包丁を横向き姿勢で引出内に保持する方式も存在する。しかし、引出を引き出す際に包丁が動いてしまうことへの対策については言及されていない。
【0008】
また従来の包丁差しは、子供が包丁を取り出してしまうことに対する防御策を備えていなかった。小さな子供はとかく大人の真似をしたがるものであり、大人の目の行き届かないところで包丁を取り出してしまう可能性がある。他方、安全性に配慮して厳重に包丁類を固定収納するあまり、包丁類の出し入れが煩雑になってしまうことは回避しなければならない。すなわち、大人にとっては取り出しやすく、子供にとって容易には取り出せないように包丁を収納する包丁差しが要請されている。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、子供のいたずらを防止し、また引き出しの開閉によって包丁が動いてしまうことのない、安全面に優れた包丁差しおよびこれを備えたシステムキッチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明にかかる包丁差しの代表的な構成は、包丁を横に向けた状態で、その刃を下に向けて収容する1または複数の溝と、包丁の柄を収容する柄収容部と、包丁と長手方向略平行に配されるレールと、レールに嵌合され、溝および柄収容部の上方を包丁の長手方向にスライド自在な規制部材と、を備え、規制部材が、包丁の上方に位置するとき、溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、包丁を横に向けた状態で、当該包丁の刃を下に向けて、溝に収容し、包丁の柄を柄収容部に収容するため、包丁の背部が上面に露出することとなる。つまり、包丁を包丁差しに収容しているときには、刃は隠され、背部は露出することとなるため、刃が手指に触れることはなく、安全性が保たれることとなる。また刃が溝に嵌入しているため、包丁の短手方向への移動が規制される。これにより包丁差しが収納される引き出しを開閉したとしても、包丁が横に著しく動くことがなくなる。また包丁の種類や長さを背部から1本ずつ目視することが可能となるため、使用者の所望する包丁を簡単に見つけることができる。
【0012】
また規制部材は、包丁と長手方向略平行に配されるレールに嵌合され、溝および柄収容部の上方に設置されており、さらに溝に嵌入された包丁の長手方向にレール伝いにスライド自在である。規制部材が包丁の上方に位置するときには、溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制するため、包丁を上方向に移動して取り出すことはできない。一方、規制部材が、包丁の上方に位置しないときには、溝に嵌入された包丁の上方への移動が規制されないため、包丁を上方向に移動して自由に取り出すことが可能となる。
【0013】
また、規制部材の柄収容部側端部に配置された固定部と、当該包丁差しの外枠の柄収容部側端部に配置された固定ロック部とを有し、規制部材は、レールの柄収容部側端部まで移動することにより固定部と固定ロック部とが嵌合して固定されてもよい。
【0014】
換言すれば、規制部材が、レールの包丁の柄の方に配される一方の端縁までスライドしたとき即ち包丁の取り出しを規制する位置にあるときに、固定ロック部と固定部が嵌合することとなる。これにより、規制部材が包丁の取り出しを規制する位置にあるとき、規制部材が、レールに固定される。したがって、規制部材を包丁の取り出しを規制する位置から取り出し可能な位置に移動させる際に、固定ロック部と固定部の嵌合を解除しなければ規制部材を包丁が取り出し可能な位置に移動させることができなくなる。これにより、幼い子ども等が勝手に包丁を取り出したりするのを未然に防ぐことができ、安全性を保つことが可能となる。
【0015】
また、レールは、さらに当該レールの上面を切り欠いたレール切り欠き部を有し、規制部材は、レールからレール切り欠き部を経由して、略鉛直上方向に取り外し可能であってもよい。
【0016】
これにより、規制部材をレール切り欠き部の位置におけば、規制部材を取り外すことが可能となる。したがって、規制部材が汚染されたとしても、規制部材のみを取り外して、洗浄することが可能となる。
【0017】
また、レールは、規制部材と係合するための係合部を有し、規制部材は、当該規制部材が溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制しない位置にあるときに係合部と係合する、規制部材係合部を有してもよい。
【0018】
規制部材が包丁の上方にないとき即ち包丁が出し入れ可能であるときに、係合部と規制部材係合部が係合することにより、包丁差しが収納される引き出しを開閉したとしても、規制部材が引き出しの開閉によって動いてしまうのを防ぐことが可能となる。
【0019】
また規制部材は、当該規制部材が、溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制しない位置にあるときに溝と重畳し、包丁の柄に向かって開口する切り欠きを有していてよい。これにより、規制部材の包丁の長手方向における幅を確保しつつ、規制部材は、包丁の上方から規制部材全体を退避させる必要がなくなり、無駄な空間を省くことができる。
【0020】
また切り欠きの幅は、溝の幅と略等しくてよい。これにより規制部材の開口面積を減らすことができる。また切り欠きが、包丁の刃の上方にあるときには、包丁を自由に出し入れすることができ、包丁の柄の上方にあるときには、より包丁の柄を覆うことができ包丁の取り出しを規制することが可能となる。さらに、視覚的にも、より包丁の柄を隠すことができるため、包丁の取り出しをさらに規制することができる。また規制部材が溝の上方、すなわち包丁の刃の上方を覆う位置にあるとき、溝の深さが規制部材の厚みの分深くなり、より安定して包丁を溝に収容することができる。
【0021】
また柄収容部には、包丁の柄を下方から支持する支持台を設けてよい。これにより、包丁の柄を支持台が下方から支持することとなり、かつ包丁の柄を上方に持ち上げることとなる。従って、包丁の刃先端を下げることができる。換言すれば、包丁の柄を持ち上げることによって、刃先が上方に浮いてしまうのを防ぐことができる。また包丁の柄を上方に持ち上げることにより、当該柄の下方に空間(隙間)ができ、当該空間に手指をいれることが可能となる。上記空間に手指を入れることにより、より簡単かつ安定して包丁を出し入れすることが可能となる。
【0022】
また、溝の一部は、上方向に開放されていなくてもよい。包丁が溝に収容されるとき、包丁の柄は支持台により下方から支持されている。したがって、溝が全開放であると、支持台と柄が当接している点を支点として、包丁の刃の背が溝から鉛直上方向に傾いて出てしまう。溝の一部が上方向に開放されていない構成により、刃の背の一部が溝の一部の上方向に開放されていない部分に当接し、上方向への移動を規制することができる。
【0023】
本発明の他の構成によれば、上記の包丁差しを、キッチン収納庫にスライド収納される引き出しに備えたことを特徴とする。これにより、子供のいたずらを防止し、また引き出しの開閉によって包丁が動いてしまうことのない、安全面に優れた包丁差しを備えたシステムキッチンが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、子供のいたずらを防止し、また引き出しの開閉によって包丁が動いてしまうことのない、安全面に優れた包丁差しおよびこれを備えたシステムキッチンを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明にかかる包丁差しおよびこれを備えたシステムキッチンの実施について、図を用いて説明する。なお、以下の実施形態に示す、寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態である包丁差しが格納される多段収納庫を有するキッチンの外観図であり、図2は図1のキッチンの斜視図である。キッチン100はいわゆる対面式のオープンシステムキッチンであり、調理器具を吊るしたり収納棚を設けたりする壁がキッチン使用者の前方になく、とりわけ効率的に調理器具等を収納することが必要とされている。
【0027】
図2に示すとおり、キッチン100はコンロ110が設置されているコンロキャビネット120と、水栓130およびシンク140が設置されているシンクキャビネット150と、調理スペース160が設けられていて食器洗い機等を収容可能なベースキャビネット170との3つのキャビネットで構成されている。キッチン100はコンロ110、シンク140および調理スペース160が隣接していて無駄なスペースを極力排した構成となっている。
【0028】
後述する包丁差し600(図3参照)が取り付けられる多段収納庫200は、取っ手180が取り付けられた引き出し式の収納庫である。なお多段収納庫200の下には床面にほぼ接する足下収納庫210が配置されている。
【0029】
多段収納庫200は、キッチン100のシンク140の下に配置されている。これはシンク140にて用いられる調理器具や調味料を取り出しやすいからである。しかし、多段収納庫200は他の位置に設けてもよく、例えば調理スペース160を設けたベースキャビネット170内に設けてもよい。
【0030】
(多段収納庫)
図3は図2の多段収納庫を引き出した状態を示す図である。多段収納庫200は、平板状の載置スペースを有する網棚220と、網棚220の下に位置し、引き出される方向に凹部500が形成されたスライドボックス230と、スライドボックス230の下に位置する底板240、および、鉛直方向に延伸する前板250を有する引出300とを含む3重の構成を有する。
【0031】
多段収納庫200は、引出300の前板250の内側に杓子類(レードル)510を立てた状態で固定可能な杓子類固定具、すなわち調理小物ホルダ520をさらに含む。
【0032】
このように、鉛直方向に延伸する前板250を有する引出300(下段)の前板250には、杓子類510の収納が計画されていて、計画性のある収納を実現している。
【0033】
なお本願で言う「杓子類」とは、お玉杓子等のほか、しゃもじ、トング、菜箸など、長手の形状を有するあらゆる調理器具を含めてよい。
【0034】
本実施形態の最も大きな特徴は、多段収納庫200にスライド収納されるスライドボックス230に収容される包丁差し600の規制部材610による包丁移動規制機構にあるが、これについては、図6〜図8を用いて後述する。
【0035】
平板状の載置スペースを有する網棚220(上段)は、典型的にはまな板310や、その他、盆、バット、ケーキクーラなどの平板状の収納物の収納を行う。上述の凹部500が形成された略H型の形状を有する、スライドボックス230(中段)は、中央の小物トレイ340にフォーク350やスプーン360や調味料(図示しない)などの小物を収納し、それらの両側に配置されているもののうち、包丁差し600には包丁330を収納し、ラップトレイ370にはラップ類380を収納する。このように、各収納部がそれぞれ計画性のある効率的な収納を実現している。
【0036】
図4は図2の多段収納庫を引き出した状態を別の角度から見た図である。シンク140およびシンク140との境界をなす天板は、理解を容易にするため、図示を省略して内部構造を明示したものである。
【0037】
また、引出300には、スライドボックス230を載置して、引出300とスライドボックス230とを一体的に引き出させるカバー900が設けられているとよい。さらに、多段収納庫200には、スライドボックス230が、引き出された引出300から独立して多段収納庫200に引き戻される際に載置されるレールがさらに設けられているとよい。
【0038】
このように、スライドボックス230は、引出300と一体的に引き出されて使用頻度の高い収納物をすぐに取り出せ、使い勝手がよい。また、引出300の収納部から物を取り出すときには、スライドボックス230だけを多段収納庫200の中に引き戻すことができる。
【0039】
このようなオールインワンの3重構成により、1箇所の引出300(下段)を開けさえすれば、網棚220(上段)およびスライドボックス230(中段)も出現し、ほとんどすべての収納物が一目瞭然になり、目的の収納物を発見しやすい。
【0040】
また、多段収納庫200は、図4に示すように、網棚220、スライドボックス230および引出300をそれぞれ独立してスライドさせる3組の多段収納庫用レール400、410、420を含むことを特徴とする。なお図4では見えていないため図示していないが、他方の側にも多段収納庫用レール400、410、420が設けられていることはいうまでもない。
【0041】
このように、網棚220、スライドボックス230、引出300から成る3重の収納部は、多段収納庫用レール400、410、420によって、それぞれ独立にスライド可能であるため、網棚220やスライドボックス230を自由にスライドさせることによって、容易に収納物の取り出しを行うことができ、使い勝手がよい。
【0042】
図4に示すように、杓子類固定具520の下方の、引出300の前板250の裏面には、引出と多段収納庫200との衝撃を緩和する緩衝板が設けられている。これにより、引出300の収納時に多段収納庫200と接触する部分の衝撃が緩和されるからである。
【0043】
(スライドボックス)
図5は図4のスライドボックスの三面図であり、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が右側面図である。スライドボックス230は、周囲を側面230Bで形成した容器状となっていて、内部に後述の各種トレイ340、370および包丁差し600を収納可能である。
【0044】
図5(a)に示すように、スライドボックス230は、本実施形態では、H型の形状を有しているが、手前に凹部を有する形状であれば、いかなる形状でもよい。
【0045】
(包丁差し)
図6は図4のようにスライドボックス230に着脱可能な包丁差し600を示す斜視図であり、図6(a)は規制部材610が包丁330の上方への移動を規制していない位置(以下、「開放位置」という。)にある図、図6(b)は規制部材610が包丁330の上方への移動を規制している位置(以下、「規制位置」という。)にある図である。
【0046】
図6(a)に示すように、包丁差し600は、外枠602と、溝630と、柄収容部640と、レール650と、規制部材610と、固定部660と、で構成される。
【0047】
上記外枠602は、断面が矩形の箱型であり、スライドボックス230に着脱可能である。また外枠602は、任意の断面の箱型を好適に用いることができる。なお外枠としては、箱形以外に、面を有しない枠体で構成してもよい。
【0048】
上記溝630は、本実施形態の包丁差し600では4本形成されている。しかし、溝630の数はかかる場合に限らず、占有可能面積や用途に応じて様々な数で形成することができる。溝630は、包丁330の刃330aを収納するためのものである。このため、溝630の断面積は包丁330の刃330aが収容できる最小限の大きさを有すればよい。従って、溝630に包丁330の刃330aを収容するとき、抵抗なく簡単に包丁330の刃330aを収容することができる。
【0049】
図6(a)中の白抜き矢印で示すように、包丁330の刃330aは包丁差し600の溝630に収容される。このため、包丁330の背部330bが上面に露出することとなる。従って、包丁330を包丁差し600に収容しているときには、刃330aは隠され、背部330bは露出することとなるため、刃330aが手指に触れることはなく、安全性が保たれることとなる。
【0050】
また刃330aは、溝630に嵌入している。溝630の断面積は包丁330の刃330aが収容できる最小限の大きさを有しているため、包丁330の短手方向(図6(a)中B方向)への移動が規制される。これにより包丁差し600が収納されるスライドボックス230を開閉したとしても、包丁330の短手方向(図6(a)中B方向)への移動が最小限におさえられる事となる。
【0051】
上記柄収容部640は、一体で形成されており、柄収容部640にはさらに支持台642が設けられている。これにより、支持台642が、包丁330の柄330cを下方から支持することとなり、かつ柄330cを上方に持ち上げることとなる。従って、刃330aの先端を下げることができる。換言すれば、柄330cを持ち上げることによって刃330aの先が上方に浮いてしまうのを防ぐことができる。また柄330cを上方に持ち上げることにより、柄330cの下方に空間(隙間)ができ、空間に手指をいれることが可能となる。上記空間に手指を入れることにより、より簡単かつ安定して包丁330を出し入れすることが可能となる。本実施形態の柄収容部640は一体で形成されているが、包丁330ごとに柄収容部を形成してもよい。
【0052】
溝630と柄収容部640に包丁330を収納することによって、包丁330を背部330bから1本ずつ目視することが可能となる。このため、使用者の所望する包丁330を簡単に見つけることが可能となる。
【0053】
上記レール650は、包丁330の長手方向(図中C方向)に略平行であり、外枠602のC方向両側面の内側の上方に設置されている。レール650には、後述する規制部材610が係合し、規制部材610は、包丁330の長手方向(図6(a)中C方向)にスライド可能である。レール650は、さらにレール切り欠き部652および係合部656を有している。
【0054】
上記レール切り欠き部652は、レール650を構成する鉛直上方向の枠体の一部が切り取られたものであり、後述する規制部材652のレール650と嵌合する部分618よりも横断面積が大きく形成されている。
【0055】
上記係合部656は、半球凸状に形成され、後述する規制部材610に設けられた規制部材係合部614と係合する。
【0056】
上記規制部材610は、レール650に嵌合され、溝630および柄収容部640の上方を包丁330の長手方向(図6(a)中C方向)にスライド可能である。また規制部材610には、切り欠き612と、規制部材係合部614と、固定ロック部616が形成されている。
【0057】
上記切り欠き612は、個々の溝630に対向し、包丁330の柄330cに向かって開口する形状を有している。また切り欠き612の幅は、溝630の幅と略等しく形成されている。
【0058】
図6(a)に示すように、規制部材610に切り欠き612が形成されているため、規制部材610の包丁330の長手方向における幅を確保しつつ包丁330の長手方向の幅を保持しつつ、規制部材610は、包丁330の上方から規制部材610全体を退避させる必要がなくなり、無駄な空間を省くことができる。
【0059】
本実施形態において規制部材610には、くぼみ620が設けられている。これにより、指をくぼみ620に掛けて規制部材610をスライドさせることが可能となる。これにより、簡単かつ迅速に規制部材610をスライドさせることが可能となる。
【0060】
図7は、包丁差し100の上面図であり、図7(a)は、規制部材610が規制位置にある図であり、図7(b)は、規制部材610が開放位置にある図である。なお、図7では、明確化のため、溝630および支持台642は図示を省略している。また、図7(b)中の拡大図は、明確化のためレール650を構成する上枠の図示を省略している。図7(a)に示すように、レール切り欠き部652は、規制部材610が開放位置であるとき(図7(a)中点線で示す)に、規制部材610のレール650と嵌合する部分618と対応する位置にある。
【0061】
上記レール切り欠き部652は、規制部材610のレール650と嵌合する部分618よりも横断面積が大きく形成されているため、規制部材のレールと嵌合する部分618をレール切り欠き部652の位置におけば(図7(b))、規制部材610を取り外すことが可能となる。したがって、規制部材610が汚染されたとしても、規制部材610のみを取り外して、洗浄することが可能となる。
【0062】
図7(b)に示すように、上記規制部材係合部614は、656と係合する凹形状を有している。図8に示すように、規制部材610が開放位置にあるとき、係合部656と規制部材係合部614は係合する。
【0063】
これにより、規制部材610が包丁330の上方にないとき即ち包丁330が出し入れ可能であるときに、係合部656と規制部材係合部614が係合することにより、包丁差し600が収納される引き出しを開閉したとしても、規制部材610が引き出しの開閉によって動いてしまうのを防ぐことが可能となる。
【0064】
本実施形態において、係合部656は凸形状であり、規制部材係合部614は凹形状であるが、これに限定されず、係合部656が凹形状を有し、規制部材係合部614が凸形状を有しても良い。また、係合部656は半球状であるが、これに限定されず、半円柱形状等様々な形状を用いることができる。さらに、本実施形態において、係合部656および規制部材係合部614は外枠602の側面に配されているが、これに限定されず、レールを構成する上枠や下枠等の場所に配置されても良い。
【0065】
また、図6(a)に示す規制部材610が開放位置にあるとき、溝630の深さが規制部材610の厚みの分深くなり、収納時の早い時点から包丁330を溝630に案内し、より安定して包丁330を溝630に収容することができる。
【0066】
図6(b)に示すように、規制部材610が柄330cの覆う位置にあるとき、包丁330の上方への移動が規制される。すなわち、規制部材610が、規制位置にあるとき、包丁330を上方向に移動して取り出すことはできない。
【0067】
また、溝630は、一部632が、上方高に開放されていない。包丁330が溝630に収容されるとき、包丁330の柄330cは支持台642により下方から支持されている。したがって、溝630が全開放であると、支持台642と柄330cが当接している点を支点として、包丁330の刃330aの背部330bが溝630から鉛直上方向に傾いて出てしまう。溝630の一部632が上方向に開放されていない構成により、刃330aの背部330bのが溝630の一部632の上方向に開放されていない部分に当接し、上方向への移動を規制することができる。
【0068】
また上記固定ロック部616は後述する固定部660と嵌合する。
【0069】
上記固定部660は、外枠602の短手方向(図6(a)中B方向)側面であり、柄収容部640を形成する側面の上方に設置されている。図7に示すように、固定部660は下方に向かって鉤状に突出した形状を有する。一方、規制部材610の固定ロック部616は、切り欠き612で区切られた複数の短冊状部位のうち、中央の部位の先端に位置し、下方に凹んだ形状を有する。
【0070】
そして、鉤状の固定部660の下端の高さと、固定ロック部616の凹んだ部分の高さとは実質的に一致している。したがって、規制部材610が、レール650の包丁330の柄の方に配される一方の端縁までスライドさせ、即ち規制位置まで移動させると、固定ロック部616が固定部660の鉤状部位の下にもぐり込んで嵌合する。これにより、規制部材610はレール650に固定される。
【0071】
そして、上記の嵌合は、固定ロック部616が設けられた短冊状部位の先端を押すことによって解除される。したがって短冊状部位を押し下げながら、くぼみ620を奥側に向かって規制部材610をスライドさせれば、再び規制部材を移動させることが可能である。
【0072】
このように、規制部材610を規制位置から開放位置に移動させる際に、固定ロック部614と固定部660の嵌合を解除しなければ規制部材610を開放位置に移動させることができなくなる。これにより、幼い子ども等が勝手に包丁を取り出したりするのを未然に防ぐことができ、安全性を保つことが可能となる。
【0073】
上記構成によれば、規制部材610をスライドさせるだけで、包丁差し600からの包丁330の取り出しを規制したり、包丁差し600から自由に包丁330を取り出したりすることができる。これにより、子供のいたずらを防止し、また引き出しの開閉によって包丁が動いてしまうことのない、安全面に優れた包丁差しおよびこれを備えたシステムキッチンを提供できる。
【0074】
(第二実施形態)
本発明にかかる包丁差しの第二実施形態について説明する。図7は第二実施形態にかかる包丁差し700の斜視図であって、上記した第一実施形態と説明が重複する部分については、同一の符号を付して説明する。
【0075】
上記第一実施形態においては、包丁差し600の規制部材610に溝630と対応する複数の切り欠き612を設け、それぞれの切り欠き612の幅は、溝630の幅と略等しく形成されていると説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、様々な構成の切り欠きを設けることができる。
【0076】
図8に示す包丁差し700に設置される規制部材710の切り欠き720は、1つのみであり、溝630に対向し包丁330の柄330cに向かって開口する形状を有している。切り欠き720の幅は、すべての溝630が上方に露出する広さを有すればよい。これにより、規制部材710が、溝630の上方すなわち包丁330の刃330aの上方を覆う位置にあっても、溝630に嵌入された包丁330の上方への移動を規制しない。従って、規制部材710が、包丁330の刃330aの上方を覆う位置にあっても、溝630に嵌入された包丁330を上方向に移動して取り出すことが可能となる。
【0077】
(第三実施形態)
本発明にかかる包丁差しの第三実施形態について説明する。図9は第三実施形態にかかる包丁差し800の斜視図であって、上記した第一および第二実施形態と説明が重複する部分については、同一の符号を付して説明する。
【0078】
上記第一および第二実施形態においては、包丁差しの規制部材に切り欠きが形成されていると説明した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、切り欠きがない規制部材を設置することができる。
【0079】
図9(a)は、規制部材810が包丁330の上方への移動を規制していない位置(以下、「開放位置」という。)にある図、(b)は規制部材810が包丁330の上方への移動を規制している位置(以下、「規制位置」という。)にある図である。
【0080】
図9(a)に示すように、包丁差し800に設置される規制部材810には切り欠きは設けられていない。規制部材810は、溝630および柄収容部640の上方に設置されており、さらに溝630に嵌入された包丁330の長手方向にスライド自在である。規制部材810が、包丁330の上方を覆わない位置にあるときには、溝630に嵌入された包丁330の上方への移動を規制しない。
【0081】
一方図9(b)に示すように、規制部材810が、包丁330の上方を覆う位置にあるときには、溝630に嵌入された包丁の上方への移動を規制する。
【0082】
すなわち、規制部材810が、包丁330の上方に位置するときには、包丁330を上方向に移動して取り出すことはできず、包丁330の上方に位置しないときには、包丁330を上方向に移動して取り出すことが可能となる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、キッチン収納庫にスライド収納されるスライドボックスに収容される包丁差しに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態である包丁差しが格納される多段収納庫を有するキッチンの外観図である。
【図2】図1のキッチンの斜視図である。
【図3】図2の多段収納庫を開いた状態を示す図である。
【図4】図2の多段収納庫を引き出した状態を別の角度から見た図である。
【図5】図4のスライドボックスの三面図である。
【図6】図4のようにスライドボックスに着脱可能な包丁差しを示す図である。
【図7】包丁差しキッチン100の上面図である。
【図8】第二実施形態にかかる包丁差しの斜視図である。
【図9】第三実施形態にかかる包丁差しの斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
100 …キッチン、110 …コンロ、120 …コンロキャビネット、130 …水栓、140 …シンク、150 …シンクキャビネット、160 …調理スペース、170 …ベースキャビネット、180 …取っ手、200 …多段収納庫、210 …足下収納庫、220 …網棚、230 …スライドボックス、240 …底板、250 …前板、300 …引出、310 …まな板、330 …包丁、330a …刃、330b …背部、330c …柄、340 …小物トレイ、350 …フォーク、360 …スプーン、370 …ラップトレイ、380 …ラップ類、400、410、420 …多段収納庫用レール、500 …凹部、510 …杓子類、520 …調理小物ホルダ、600,700,800 …包丁差し、602、 …外枠、610、710、810 …規制部材、612、712 …切り欠き、614 …規制部材係合部、616 …固定ロック部、618 …規制部材のレールと嵌合する部分、620 …くぼみ、630 …溝、640 …柄収容部、642 …支持台、650 …レール、652 …レール切り欠き部、656 …係合部、660 …固定部、900 …カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包丁を横に向けた状態で、その刃を下に向けて収容する1または複数の溝と、
前記包丁の柄を収容する柄収容部と、
前記包丁と長手方向略平行に配されるレールと、
前記レールに嵌合され、前記溝および柄収容部の上方を前記包丁の長手方向にスライド自在な規制部材と、
を備え、
前記規制部材が、前記包丁の上方に位置するとき、前記溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制することを特徴とする包丁差し。
【請求項2】
前記規制部材の前記柄収容部側端部に配置された固定部と、
当該包丁差しの外枠の柄収容部側端部に配置された固定ロック部とを有し、
前記規制部材は、前記レールの前記柄収容部側端部まで移動することにより前記固定部と前記固定ロック部とが嵌合して固定されることを特徴とする請求項1に記載の包丁差し。
【請求項3】
前記レールは、さらに該レールの上面を切り欠いたレール切り欠き部を有し、
前記規制部材は、前記レールから前記レール切り欠き部を経由して、略鉛直上方向に取り外し可能であることを特徴とする請求項1に記載の包丁差し。
【請求項4】
前記レールは、前記規制部材と係合するための係合部を有し、
前記規制部材は、該規制部材が前記溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制しない位置にあるときに前記係合部と係合する、規制部材係合部を有することを特徴とする請求項1に記載の包丁差し。
【請求項5】
前記規制部材は、該規制部材が、前記溝に嵌入された包丁の上方への移動を規制しない位置にあるときに前記溝と重畳し、前記包丁の柄に向かって開口する切り欠きを有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の包丁差し。
【請求項6】
前記切り欠きの幅は、前記溝の幅と略等しいことを特徴とする請求項5記載の包丁差し。
【請求項7】
前記柄収容部には、
前記包丁の柄を下方から支持する支持台を設けたことを特徴とする請求項1に記載の包丁差し。
【請求項8】
前記溝の一部は、上方向に開放されていないことを特徴とする請求項1の包丁差し。
【請求項9】
前記包丁差しを、キッチン収納庫にスライド収納される引き出しに備えたことを特徴とするシステムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−11403(P2009−11403A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173606(P2007−173606)
【出願日】平成19年6月30日(2007.6.30)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】