説明

包装中華麺類の製造方法および調理方法

【課題】 チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存期間を有するα化処理された包装中華麺で、該麺線のpHが高いにもかかわらずかん焼けしておらず、かつ中華麺的風味の良い包装中華麺を得ることを目的とする。また、該包装中華麺はα化処理済みであることから、電子レンジで、簡単な調理によって喫食できる包装中華麺を得ることも目的とする。
【解決手段】 α化処理した麺を包装体に包装した後、95℃以下で加熱殺菌する包装中華麺類の製造方法であって、麺原料に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムを添加し、さらに食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれか一つ以上を対原料粉合計3重量%以上添加し、好ましくは、加熱殺菌後の麺線のpHが9.5〜11.3とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α化処理した麺を包装体に包装して、加熱殺菌処理するチルド流通タイプの包装中華麺類の製造方法、及び該包装中華麺類の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販されているチルド流通タイプの麺類には大きく分けて、α化処理の施されていない生麺の形態のものと、α化処理の施されたゆで麺又は蒸し麺の形態のものがある。ゆで麺又は蒸し麺の形態のものは、既にα化処理が施されているために、簡単な調理で喫食することが可能で、例えば、麺だけを電子レンジで加熱して、該加熱した麺を別途用意したスープに投入して喫食する等の調理方法も可能である。また、生麺のように麺に打粉が行われていないので、茹でて調理する場合、茹で液を捨てずに該茹で液をスープとして使用して喫食することもできる。
【0003】
このように、チルド流通タイプのα化処理の施されたゆで麺又は蒸し麺は、生麺とは異なる利点を有するものであるが、微生物的保存性付与の観点からは、さらに二つのタイプに分けられる。一つは、麺をα化処理した後そのまま包装体に包装しただけの、保存期間の短いいわゆる日配品のものであり、もう一つは、α化処理後包装体に包装してさらに包装体ごと加熱殺菌を行なったもので、チルド状態で1週間から1ヶ月程度の保存期間を付与したタイプのものである。しかし、後者の、チルド状態で1週間から1ヶ月程度の保存期間を付与したタイプの麺は、うどんやそばについては市場に多くの商品があるが、中華麺においては、本出願人の知る限りでは、蒸し焼きそばを除いて見受けない。蒸し焼きそば以外の中華麺において、このような商品が市場に見受けない理由は、中華麺の場合、麺原料にかんすいを配合するが、かんすいを多く配合すると後工程の包装後の加熱殺菌時に、かん焼けと呼ばれる現象が生じてしまうためである。
【0004】
上記において発生するかん焼けは、中華麺線中の原料成分がかんすいの存在下、高温の状態に比較的長い時間置かれることによって生じると考えられ、(かん焼けによって、)麺は褐色に変色し、特有の異味、異臭が発生する。しかし一方で、かんすいは中華麺において、中華麺的な風味と食感を与える為に必須の成分であるため、炒めて調理するためにかんすいの量をあまり必要としない焼きそばを除いて、かんすいの添加量を落とすことは好ましくない。さらに、微生物的保存性についても、チルド流通で一定の保存性を付与するためには、麺pHが中性の状態は好ましくなく、中華麺の場合、pHを約10以上に上げるのが望ましい。しかし、pHを約10に上げるのに相当する量のかんすいを麺原料に添加すると、麺をα化処理して包装後加熱殺菌した時に、麺がかん焼けを起こしやすいという不都合が生じる(前出の蒸し焼きそばの場合は、pHを高くしない代わりに、プロタミンやアルコール等の保存料を添加して微生物的保存性を付与しているものが多い)。
【0005】
従って、チルド状態で1週間から1ヶ月程度の保存性を持たせた、中華麺風味豊かなゆで麺又は蒸し麺タイプの中華麺を商品化するためには、加熱殺菌に伴うかん焼けを抑制するという課題を解決する必要がある。この課題に対して、本出願人は、かんすいの主成分として用いられている炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムに替えて、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム(いずれもアルカリ性のカルシウム剤で、かんすいの範疇に含まれない)を麺原料に用いることで、麺pHはかんすいを用いた場合と同じでありながら、かん焼けの程度を抑えることができることを知見し、当該技術を特許文献1として公開している。しかし、該特許文献1の技術において、かんすいを酸化カルシウム又は水酸化カルシウムに置き換えると、かんすいを用いた場合のような中華麺特有の風味が乏しくなるという問題点があり、該特許文献1でも、中華麺らしい風味を得るためには、少量のかんすいを併せて添加することが好ましいと記載している。ところが、これらアルカリ性のカルシウム剤を添加した上にかんすいを添加すると、やはりかん焼けが生じ易く、風味豊かな生麺並みの包装中華麺を、かん焼けしていない状態で得ることは困難であった。
【0006】
なお、上記特許文献1以外に、加熱殺菌時の中華麺のかん焼けを防止する技術として、かんすいに着目して発明された技術には、特許文献2、3がある。特許文献2は、レトルト麺において、かんすいとしてリン酸3ナトリウム又はリン酸3カリウムを用いる技術であるが、該文献には、pHが8を超えると褐変を防止する効果が低下すると記載されており、効果は充分ではない。また、特許文献3は、加熱殺菌時の麺を、中性又は酸性の状態とし、加熱殺菌後の麺にアルカリ剤を吸収させることで、加熱殺菌後に麺線をアルカリ性にする技術であるが、この方法の場合、かんすいを原料に添加した場合に比べて、中華麺らしい食感が得られにくく、風味の発現も、アルカリ剤吸着時の温度が高い状態でないと充分でないなど、問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−360197
【特許文献2】特開平6−153836
【特許文献3】特開平8−112070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存期間を有するゆで麺又は蒸し麺タイプの包装中華麺で、包装体中にα化処理された麺が封入され、加熱殺菌処理されているにもかかわらず、該麺がかん焼けしておらず、かつ充分な中華麺的風味を有する包装中華麺を得ることを目的とする。また、該包装中華麺がα化処理済みであることで、電子レンジによる調理も可能で、特にレンジ調理する場合には、鍋などの調理器具を使用せずに電子レンジで麺を加熱し、これを別途用意したスープに投入する等の、簡便な調理方法の可能な商品を提供することも目的とする。また、お湯に麺を入れてレンジ調理する場合や、炊いて調理する場合でも、該調理時の茹で湯を捨てずにスープとして用いることも可能な、いわゆる茹でこぼし不要な包装中華麺を得ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対し、多数のサンプルを作成して検討したところ、麺原料に炭酸ナトリウムと焼成カルシウム(主成分は酸化カルシウム)の双方を添加する条件下において、さらに、従来の生中華麺に用いられている量よりも多くの食塩を配合することで、格段にかん焼けが抑制できることを知見し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、α化した麺を包装体に包装した後、95℃以下で加熱殺菌する包装中華麺類の製造方法であって、
a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上、
b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウム、
c)食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれか一つ以上、
の前記a)、b)及びc)を麺原料に添加し、かつ、c)は少なくとも麺原料粉に対して3重量%添加する、ことを特徴とする包装中華麺類の製造方法、である。
【0011】
この製造方法によれば、麺原料に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムを配合することによって、通常であればpHが高いためにかん焼けして商品価値のなくなるところを、中華麺風味が高く、保存性が良く、それでいてかん焼けしていないもの、又はかん焼けの程度が商品として充分なレベルに抑制されたものとすることができる。また、麺線がα化処理されているために、簡単な調理も可能で、例えば、電子レンジで麺を加熱し、これを別途用意したスープに投入して調理する、あるいは、電子レンジで加熱した麺を流水で冷して冷麺とする、等の調理方法も可能となる。また、生麺のように打粉を行っていないために、茹でて調理した場合でも茹でこぼしを行わないことも可能で、その場合、調理に用いた湯は捨てずにスープ用として使用することもできる。
【0012】
なお、加熱殺菌条件を95℃以下とする理由は、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の微生物的保存性を付与するためであり、メーカーや工場によっても条件が異なるが、一般的には、殺菌庫内温度として、75〜95℃で行われるものである。本発明で規定する加熱殺菌温度、加熱殺菌条件とは、このような蒸気殺菌庫の庫内温度を指し、その温度が95℃以下であり、該条件は、いわゆるレトルト麺や、生タイプ即席麺(LL麺)の殺菌に用いられるような加熱殺菌条件よりも緩やかである。
【0013】
また、上記製造方法によって製造される本発明の包装中華麺類の麺pHは、加熱処理後(本発明では加熱殺菌直後から数日後まで)9.5〜11.3であることが好ましい。すなわち、麺原料に対して、当該pHの範囲に入るように、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムを原料に添加する。ただし、炭酸ナトリウムと炭酸カリウムは多量に添加すると、当該pH範囲でもかん焼けを起こす可能性があるので、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムを0.05〜1重量%の範囲で添加し、その上で前記pHの範囲に含まれるように炭酸ナトリウム及び又は炭酸カリウムを添加することが望ましい。また、食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムの添加については、かん焼け防止効果を得るためには麺原料粉に対して、これらを合計で3重量%以上添加することが望ましいが、味への影響を考慮すれば、その全量を食塩にするか、又は食塩を主体として、これに少量の塩化カリウムや塩化カルシウムを混合するのがよく、その合計量が麺原料粉に対し3重量%以上、特に好ましくは3〜5重量%とすればよい。
【0014】
具体的に各成分の好ましい添加例を例示すれば、食塩(一部を塩化カリウムや塩化カルシウムに置き換えても良い)を対麺原料粉3〜5%と、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上を対麺原料粉合計で0.1〜2.0重量%、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムを対麺原料粉合計で0.5〜1.0重量%添加することが例示でき、この範囲であれば、麺pHは加熱殺菌後で約9.5以上でありながら、かん焼けしない、又はかん焼けが充分に抑制された包装中華麺を得ることができる。特に、加熱殺菌後の麺pHが10以上であることで、保存性がさらに向上し、また、併用される炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又は炭酸水素ナトリウムとの相乗効果によって、中華麺的風味も向上する。なお、本発明で、加熱殺菌後の麺pHを、特に加熱殺菌直後から数日後までと規定しているのは、麺を長期間に渡って保存すると、徐々にpHが低下していくことが多いためで、数週間経たものでは加熱殺菌直後とはpHが異なってしまう可能性があるためである。
【0015】
また、本発明は、上記包装中華麺の製造方法において、前述の加熱殺菌条件が75〜95℃で、85℃の場合を例にすれば、30〜60分に相当する殺菌方法であることが好ましい。当該条件であれば、実際の麺塊の温度負荷は、包装体中の含気量等によって若干異なるが、麺中心品温80℃以上保持時間で10〜40分程度の加熱殺菌条件となる。この加熱殺菌条件によれば、商品にチルド状態で1週間から1ヶ月程度の、いわゆるセミLLと呼ばれるレベルの保存性を付与することができる。
【0016】
また、本発明は、従来のチルド流通タイプの包装中華麺にはなかった、調理方法を提供するものであって、次のような調理方法が可能である。すなわち、本発明は、
a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上、
b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウム、
c)食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれか一つ以上、
の前記a)、b)及びc)が麺原料に添加され、かつ、c)は少なくとも麺原料粉に対して3重量%添加された、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存期間を有するα化処理済みの包装中華麺の調理方法であって、
該包装中華麺の麺塊を電子レンジで加熱し、電子レンジ加熱した麺塊を別途用意したスープに投入して喫食に供するか、又は電子レンジ加熱した麺塊にタレを掛けるかタレに浸けて喫食に供する、もしくは、電子レンジ加熱した麺塊を冷水によって冷し、これにタレを掛けるかタレに浸けて喫食に供する、包装中華麺の調理方法である。
【0017】
このように電子レンジで直接麺を加熱すると、炊いて調理する場合のように、麺線が茹で湯を吸収して水分含量が上昇することはないため、調理時間もある程度ルーズにすることができ、また、よりコシと弾力のある美味しい中華麺とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の包装中華麺類の製造方法は、中華麺において、通常かんすいとして使用される炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム以外に、酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムと、通常中華麺で使用される量よりも多くの食塩(塩化カリウム、塩化カルシウムに置き換え可能)を原料に添加することを特徴とするものである。そして、該特徴を有する本発明の製造方法によれば、α化処理され包装後加熱殺菌処理が施された、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存期間を有する包装中華麺でありながら、かん焼けしていない、又はかん焼けの程度の非常に低い包装中華麺が得られる。しかも、かんすいが添加され、pHも高いために、良好な中華麺的風味と保存性を有する。
【0019】
さらに、該包装中華麺は、α化処理済みであるために、簡単な調理が可能で、電子レンジによる調理も可能である。特にレンジ調理する場合には、鍋などの調理器具を使用せずに電子レンジで加熱調理し、これを別途用意したスープに投入するか、直接タレに浸けて喫食する、又は流水等で冷してこれにタレを掛けるか、タレに浸けて喫食するような、従来の包装中華麺になかった調理方法と、このような調理方法で喫食可能な包装中華麺を提供できる。また、製品の表面に打粉を行っていないことから、麺をお湯に入れてレンジで調理する場合、あるいは炊いて調理した場合でも、調理時の湯を捨てずに、そのままスープとして用いることが可能な、いわゆる茹でこぼし不要な包装中華麺とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、製造工程に従って本発明を具体的に説明する。
本発明では、麺原料粉に対し、a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウム(あるいは、これらを成分とする焼成カルシウム等)、及びc)食塩(塩化カリウム、塩化カルシウムに置き換え可能)を必須成分として添加する。麺原料粉は、小麦粉のみ、又は小麦粉を主原料として澱粉、穀粉等を混合して用いる。本発明において麺原料粉とは、これら小麦粉のみ、又は小麦粉を主原料として澱粉、穀粉を加えたものをいう。
【0021】
当該麺原料粉に対して、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムを好ましくは、合計で対麺原料粉0.1〜2.0重量%、特に好ましくは0.5〜1.5重量%添加する。炭酸ナトリウム、炭酸カリウムは、かんすいの主成分であり、一般に市販されているかんすいを用いてもよい。かんすいは、食品衛生法では、「炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びリン酸塩のカリウム塩又はナトリウム塩」と規定され、市販のかんすいは、炭酸ナトリウム及び又は炭酸カリウムに少量のリン酸塩又は重合リン酸塩が添加されているものが一般的であるが、本発明においては、このような市販のかんすいの場合、炭酸ナトリウム及び又は炭酸カリウムの量が前記の配合量となるように添加すればよい。
【0022】
通常の生中華麺においては、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが合計で、対原料粉1〜2重量%程度添加されているが、1%の添加でドウpHは約10.0、2%の添加でドウpHは10.4程度となり、このレベルの生中華麺を茹で調理すると、充分な中華麺的風味と食感を有する。しかし、この麺をα化処理して包装し、保存性をもたせるために加熱殺菌すると、加熱殺菌条件が85℃、60分程度で、殺菌後麺線pHは約9.5、茹で中華麺としては商品化に問題があるレベルにかん焼けする。なお、本発明者らの実験によると、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム以外のかんすい素材、例えば、リン酸3ナトリウム等を用いた場合、かん焼けについては炭酸ナトリウム同様に発生するが、一方で、リン酸3ナトリウムの場合、本発明のように酸化カルシウム及び食塩を併用しても、本発明の効果はほとんど得られなかった。
【0023】
酸化カルシウム(水と反応して水酸化カルシウムとなる)及び又は水酸化カルシウムは、好ましくは対原料粉0.05〜1.0重量%、特に好ましくは0.5〜0.75%重量添加する。酸化カルシウムは、貝殻や卵殻などを高温で焼成して製造した焼成カルシウム、又は、これにグルテン等の賦型剤を加えた製剤としても市販されており、本発明においても、このような焼成カルシウム又はその製剤が、酸化カルシウムの代替として使用できる。このような焼成カルシウムの製剤を用いる場合、該製剤中に含まれる酸化カルシウムと水酸化カルシウムの量が、麺原料粉に対して前記添加量となればよい。
【0024】
酸化カルシウム及び水酸化カルシウムは、炭酸ナトリウム等に比べてアルカリ性が強く、酸化カルシウムを対麺原料粉0.5重量%添加するだけでドウpHは11.3程度、これをα化して包装し85℃、60分程度加熱した状態でも、麺pHは10.5程度となり、かんすいに比べて少量の添加でpHをより高くすることができる。酸化カルシウム、水酸化カルシウム自身はpHを高くできる割には、中華麺的風味や食感を与える効果は強くない。しかしながら、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムを併用すると、これらの添加量がかなり少ない状況でも、中華麺的な風味の増強が感じられる。なお、生中華麺の市販品は、かんすいだけを添加した商品の他に、pH上昇による保存性の付与を目的に、かんすいを添加した上に少量の焼成カルシウム等カルシウム剤を添加した商品もあるが、これらカルシウム剤を本件のように多量に配合することは一般的には行われない。
【0025】
食塩は、本発明において、対麺原料粉3重量%以上添加する。食味の問題、製麺性の問題から8重量%以下、好ましくは5重量%以下が好ましい。食塩の代わりに塩化カリウム及び又は塩化カルシウムに置き換えることも可能であるが、食味等の問題から、全量を食塩とするか、食塩を主成分として、これに少量の塩化カリウム、塩化カルシウムを添加するのがよく、併用する場合、これらの合計量として対原料粉3重量%以上となれば良い。通常の生中華麺においては、食塩とかんすいは原料粉に両方が併用して添加されることが多いが、中華麺の場合にはかんすいによる添加効果が中心であるため、うどん等の場合より食塩の配合量は少なく、対原料粉0〜1.5重量%程度が一般的である。本発明の効果は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、酸化カルシウム及び又は炭酸カルシウムと、さらに食塩(塩化カリウム、塩化カルシウムに置き換え可能)を併せて添加するものであるが、食塩添加によるかん焼け抑制の効果は、対原料粉3重量%以上から明らかになり、4重量%程度でより明白となる。
【0026】
本発明においては、これら、a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムと、c)食塩(塩化カリウム、塩化カルシウムに置き換え可能)の他、さらに必要に応じて、色素、蛋白素材、増粘類、乳化剤等を、原料粉に粉体のまま添加するか、又は練水に溶かして、できるだけ均一になるように、原料粉とよく混練する。練水の量は原料粉に対し30〜40重量%程度とし、混練から麺線の調製までは、通常の生中華麺の製法と同様に、混練によって作成した麺生地を圧延して、切出すか、又は押出して麺線とする。
【0027】
麺線とした後、商品が生中華麺の場合には打粉をよく麺線にまぶして包装し製品化されるが、本発明の包装中華麺の場合は、調製した生麺線を蒸し又は茹で、好ましくは茹でることによってα化処理する。なお、α化処理後の水分含量が高くなり過ぎると、麺線が湯伸びして腰のない麺となってしまうので、水分含量が高くなりすぎないようにα化するのが好ましく、従って、茹で時間を長くし過ぎないのが好ましい。茹で時間は麺線の太さ等によってかなり異なるが、中華麺線として平均的レベルの切刃20番を用いた麺線の場合、10秒〜3分程度であり、茹で後の水分含量としては50〜70%程度である。
【0028】
このようにして製造したα化処理麺を、加熱殺菌時に破袋しないような包装体に包装して、シールし、包装体ごと蒸気殺菌庫に投入して加熱殺菌する。包装体はレトルトパウチや剛性の容器等であっても良いが、必ずしもレトルトパウチのように密閉性の極めて高いものである必要は無く、破袋しないものであれば、ポリプロピレン製の三方シールの軟包材等で充分である。また、包装体に包装して、シールせずに蒸気殺菌庫で加熱殺菌することもでき、この場合、加熱殺菌後に、無菌的にクリーンブース等にこれを移して、ここで、包装体に封入する。加熱条件は、チルド流通で1週間〜1ヶ月程度の保存性を付与させる条件として、蒸気殺菌庫内温度で概ね75℃以上、85℃の場合を例にすれば30〜60分程度に相当する条件で加熱することが好ましく、またこの条件は、うどんやそばの場合でも行われている一般的な条件である。なお、この庫内温度85℃で30〜60分の加熱条件は、実際の麺塊にかかる負荷温度としては、包装体中の含気量等によって若干異なるが、麺中心品温の80℃以上保持時間が概ね10〜40分程度の加熱殺菌条件となる。
【0029】
なお、本発明のようなチルド流通品の場合、あまり高温で加熱殺菌すると、麺線に対するダメージが大きくなるということや、殺菌時間は短くできるが、パウチ内外部での殺菌状態にバラツキが生じやすい等の問題があり、従って、本発明が求める程度の保存性を付与する場合には、一般に95℃以上の加熱条件は採られない。加熱殺菌後の麺pHとしては、保存性の点、中華麺的風味の点からは、かん焼けの程度が高くならない範囲で高くする方が良く、85℃、60分で加熱殺菌する場合でいえば、加熱殺菌後のpHとしては概ね9.5〜10.5程度が好ましい。
【0030】
加熱殺菌後、包装体ごと冷却し、必要に応じて別添のスープや具材等を添付した上で、さらに軟包材、カップ容器等の外包材で包装して、商品とする。製品形態としては、汁物のラーメンや、つけ麺、冷麺、焼きそば等の形態の各種中華麺製品が可能であり、とくに麺のかん焼けが抑えられ、中華麺風味も高いので、ラーメン、つけ麺、冷麺などに最適である。
【0031】
上記本発明の製造方法によって製造した包装中華麺は、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存性を有するα化処理済みの包装中華麺となり、これを茹でて調理する場合は包装体から麺を出して調理して喫食するが、α化処理がなされているので、調理時間が短い。また、本発明品は電子レンジによる調理も可能であり、特にこの場合、電子レンジで麺塊のみを加熱し、レンジ加熱した麺を別途用意したスープに投入して喫食するか、そのままタレを掛けて又はタレに浸けて喫食する、あるいは、レンジ調理した麺を流水等にて冷却後、タレを掛けて又はタレに浸けて喫食するような、調理の簡便な中華麺を提供することができる。このような電子レンジによる調理を行う場合、麺線は炊いて調理する時と違って茹で湯を吸収しないので、水分含量が上昇することがなく、そのため、調理時間を厳密にする必要がなく、また麺はよりコシが強く、弾力に富んだものとすることができる。
【0032】
以上のような製造工程によって製造された本発明の包装中華麺は、a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上と、b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムと、c)食塩(塩化カリウム及び又は塩化カルシウムに置き換え可能)を麺原料が必須成分として添加されているが、麺原料に添加するこれらa)b)c)の添加剤のうち、いずれか一つが欠けても本願発明の効果を達成することができない。例えば、炭酸ナトリウムを対原料1重量%添加して、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを添加しないで製造すると、食塩の量に関わらずかん焼けが起こる。しかし、さらに酸化カルシウム又は水酸化カルシウムと、食塩3重量%以上を添加して製造すると、pHはさらに上昇するにもかかわらず、かん焼けが抑制される。すなわち、これらの添加剤をすべて添加することによって、かん焼けを防止しつつ、麺線pHをより高くすることができ、保存性、中華麺風味共に向上した、包装中華麺となる。
【実施例】
【0033】
以下、比較実験等を示して本発明について詳述する。
なお、以下の実験においては、酸化カルシウムは取り扱いが危険なため、焼成カルシウムにグルテン、小麦粉などを混合した製剤を用いている。以下、実験例、実施例、表における「酸化カルシウム」の記載は、該混合製剤中の焼成カルシウムの量から計算された酸化カルシウムの量である。
【0034】
また、本発明の麺pHの測定方法は、以下の方法によって測定した。
1)麺1食分を裁断、混合し、所定量をサンプリングする。
2)ブレンダーカップに1)のサンプルを入れ、蒸留水で10倍量に希釈する。
3)ブレンダーで1分間粉砕・混合し、懸濁状のサンプルとする。
4)3)のサンプルの所定量をビーカーに入れ、軽く撹拌しながら、pHメーターでpHを測定する。なお、ドウpHも上記麺pHの測定方法に準じて測定した。
【0035】
また、本発明のかん焼けの判定方法は目視にて実施し、熟練したパネラー5名にて5点満点で評価した。評価は、1点をほとんど褐変のない状態とし、5点をひどく褐変の強い状態、4点はやや褐変しており、茹で調理する中華麺としては商品化が困難なレベル、3点を商品化に充分耐えうる状態とした。
さらに、麺の風味については、予め用意した市販のスープの中に、電子レンジで500Wにて2分30秒間加熱調理した麺を加え、官能評価を行った。
【0036】
[実験例1](併用効果の確認試験)
麺原料粉には小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム0又は5gを粉体で混合した(試験に用いた酸化カルシウムは焼成カルシウムの製剤で、酸化カルシウムとしての含量は50%のものである。以下、各実験例、実施例では、特に示さない限り、該焼成カルシウムの製剤を用い、酸化カルシウムの量に換算して記載している)。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウムを0又は10g、食塩を0又は40g溶解して加え、ミキサーで15分間よく混練して、麺生地を作成し、ドウpHを測定した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.50mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫にて庫内温度85℃で60分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては40分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出して製品としての麺のpHと水分を測定した。製品の水分含量は53〜60%であった。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の通り、対原料粉重量比で、炭酸ナトリウム1%、酸化カルシウム0.5%の場合いずれもかん焼けが見られた。また、これらに食塩を4%(多量に)添加しても、かん焼けの程度は、カルシウムと食塩の併用の場合においてのみ、若干軽減される傾向が見られたが、大きく変わることは無かった。一方、炭酸ナトリウム1%に酸化カルシウム0.5%を併用して添加したものは、かん焼けの程度がさらに進み、風味も焦げ臭を有するものであった。ところが、この配合に、さらに食塩を4%添加したものは、かん焼けの程度が、商品として遜色の無い程度に軽減されていた。
【0039】
[実験例2](低pHでの試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウムを0.5g粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウムを所定量、食塩を0又は40g加えて溶解したものを、製めんミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成し、ドウpHを測定した(酸化カルシウムと炭酸ナトリウムの添加量は、予め予備実験を行って加熱殺菌後の麺pHが約9.5になる量とした)。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で60分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては40分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出してpHを測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果から、対原料粉重量比で、炭酸ナトリウム1%の添加では、加熱殺菌後の麺線pHは約9.5であるが、該pHにおいて既にかん焼けを起こしている。これに対して、麺線pHを変更せずに、炭酸ナトリウムの一部を酸化カルシウムに置き換えても、酸化カルシウム0.05%の添加では、かん焼けはほとんど抑制できなかった。しかし、この配合にさらに食塩を対原料粉4%添加した場合は、かん焼けが抑えられた。この結果から、通常のかんすい(炭酸ナトリウム)のみの添加では、該加熱殺菌条件ではpH9.5以上でかん焼けすること、また、該pHにおいては、食塩を多量に添加する場合、酸化カルシウムの量として0.05%以上を添加すれば、かん焼けを抑制した包装中華麺が製造可能であることが判明した。
【0042】
[実験例3](高pHでの試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム10又は12.5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム0又は5gと、これに食塩を0又は50g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間混練して、麺生地を作成した(酸化カルシウムと炭酸ナトリウムの添加量は、予め予備実験で加熱殺菌後の麺pHが約11.3又は11.5になる量とした)。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては15分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出してpHを測定するとともに、前記所定の調理を行って官能評価した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3の結果から、酸化カルシウムのみの添加でも、殺菌後麺pH11.3でかん焼けは商品化可能なレベルであったが、これに炭酸ナトリウムを混合すると、かん焼けを起こした。しかし、炭酸ナトリウムとともに食塩を添加すると、かん焼けは抑えられ、酸化カルシウムだけの場合より風味的には、中華麺らしい好ましいものであった(酸化カルシウムだけの場合は、中華麺風味というよりは金属臭に近いものを感じた)。そこで、さらに酸化カルシウムの量を増やし、殺菌後麺pHが11.5を超える状態にすると、炭酸ナトリウム、食塩を併用してもかん焼けが進み、味もえぐみが出た。従って、pH11.3程度まで、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、食塩の併用によってかん焼けを抑えた包装中華麺が製造可能であり、その際の酸化カルシウムの添加量としては約1%程度が限度と考えられた。
【0045】
[実験例4](食塩量の比較試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム20gと、食塩を0、10、30又は50g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で45分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては30分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し(効果の差が大きくないものも認められたので本実験例については10段階で評価している)、包装体から取り出してpHを測定した。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
表4の結果から、食塩3%以上添加することで、かん焼けの程度は抑えられた。
【0048】
[実験例5](酸化カルシウム量の比較試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウムを1g、2.5g、5g粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム20g、食塩を0又は50g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成し、ドウpHを測定した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した。(麺中心品温80℃以上保持時間としては15分程度)加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出してpHを測定した。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
表5の結果から、炭酸ナトリウム2%の添加において、酸化カルシウム0.1〜0.5%のいずれの添加においても、食塩5%を添加することで、食塩を添加しない場合に比べて、かん焼けの程度は抑えられた。また、酸化カルシウムの添加量の違いによって、pHはかなり変化するが、かん焼けの度合いは徐々に進む状態で、本実験の条件(酸化カルシウム0.1〜0.5%)下では、いずれの濃度でも食塩との併用によってかん焼け防止の効果が得られると考えられた。
【0051】
[実験例6](炭酸塩の変更試験1)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム10g又は炭酸カリウム13g、食塩を0又は30g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成し、ドウpHを測定した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度95℃で30分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては20分程度、90℃以上保持時間としては15分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出してpHを測定した。結果を表6に示す。
【0052】
【表6】

【0053】
表6の結果から、炭酸ナトリウムの代わりに炭酸カリウムでも同様の効果のあることが確認された。
【0054】
[実験例7](炭酸塩の変更試験2)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸水素ナトリウム1g又は10g、食塩を0又は50g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成し、ドウpHを測定した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては15分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認し、包装体から取り出してpHを測定した。結果を表7に示す。
【0055】
【表7】

【0056】
表6の結果から、炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムでも同様の効果のあることが確認された。
【0057】
[実験例8](酸化カルシウムの変更試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、水酸化カルシウム6.6gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム1g、食塩0又は50g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えてミキサーで15分間よく混練して、麺生地を作成した。麺生地のpHはいずれも11.3〜11.4であった。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては15分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。
【0058】
冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認したところ、食塩を添加していないものは、商品として許容できない程度にかん焼けしていたが、食塩、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウムを併用したものは、ほとんどかん焼けが見られなかった。なお、殺菌後の麺pHは、いずれも10.7程度であった。従って、食塩の代わりに塩化カリウム又は塩化カルシウムでも同様の効果のあることが確認された。
【0059】
[実験例9](食塩の代替試験)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、炭酸ナトリウム10g、食塩30g添加したもの、食塩に代えて塩化カリウム40g添加したもの、塩化カルシウム30g添加したもの(塩化カルシウムは完全には溶解しなかったので懸濁状態で加えた)、及び、食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれも添加していないものを作成し、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えてミキサーで15分間よく混練して、麺生地を作成した。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で、庫内温度95℃で30分間加熱殺菌した(麺中心品温80℃以上保持時間としては20分程度、90℃以上保持時間としては15分程度)。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。
【0060】
冷蔵後の麺は色調(かん焼けの度合い)を確認したところ、食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれも添加していないものは、商品として許容できない程度にかん焼けしていたが、食塩30g、塩化カリウム40g添加のものは、ほとんどかん焼けが見られなかった。また、塩化カルシウム30gのものは、食塩、塩化カリウムのものよりも若干かん焼けする傾向が見られたが、商品として許容できる範囲に抑えられていた。従って、食塩の代わりに塩化カリウム又は塩化カルシウムでも同様の効果のあることが確認された。
【0061】
[実施例1](ラーメンタイプ)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、かんすいとして炭酸ナトリウム10gに、食塩を40g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成した。ドウpHは11.3であった。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.5mmとし、角刃20番で麺線に切出した。この麺線を15秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。
【0062】
冷蔵後の麺はかん焼けが全く見られず良好な色彩を有しており、麺pHは10.56であった。この麺塊を包装体から取り出し、電子レンジ500Wで2分30秒間加熱処理し、加熱処理後の麺を別に用意した丼中の中華麺用スープに投入し喫食した。その結果、中華麺風味が充分感じられる美味しいラーメンであった。なお、このように電子レンジ調理した麺は、炊いて調理した場合に比べて、明らかにコシと弾力に富むものであった。
【0063】
[実施例2](冷麺タイプ)
麺原料粉として小麦粉(準強力粉)1kgを用い、酸化カルシウム5gを粉体で混合した。これに、練水として、水350mlに、かんすいとして炭酸ナトリウム10g、食塩を40g溶解して加え、製めん用ミキサーで撹拌しながら前記粉体混合物に加えて15分間よく混練して、麺生地を作成した。ドウpHは11.3であった。麺生地は、ロール圧延機で圧延し、最終麺帯厚を1.4mmとし、角刃14番で麺線に切出した。この麺線を2分30秒間茹でた後30秒後に水浸漬を60秒間行い、冷却し、一食分として約170gを計量し、17×17cmのポリプロピレン製の袋に投入し熱シールして密封し、蒸気殺菌庫で庫内温度85℃で30分間加熱殺菌した。加熱殺菌後の麺は直ぐに袋ごと冷風にて約1時間冷却した後、5℃で一晩冷蔵した。
【0064】
冷蔵後の麺はかん焼けが全く見られず良好な色彩を有しており、麺pHは10.3であった。この麺塊を包装体から取り出し、電子レンジ500Wで2分30秒間加熱処理し、加熱処理後の麺を水道水の流水で約1分間冷却し、水切りして皿に盛った。これを、つけ麺用のつけダレに漬けて喫食した。その結果、中華麺風味が充分感じられ、コシと弾力の有る美味しい冷麺であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化処理した麺を包装体で包装した後、95℃以下で加熱殺菌する包装中華麺類の製造方法であって、
a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上、
b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウム、
c)食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれか一つ以上、
の前記a)、b)及びc)を麺原料に添加し、かつ、c)は少なくとも麺原料粉に対して3重量%添加する、ことを特徴とする包装中華麺類の製造方法。
【請求項2】
前記加熱殺菌後の麺のpHが9.5〜11.3である請求項1に記載の包装中華麺類の製造方法。
【請求項3】
前記b)の酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウムの添加量が、対麺原料粉0.05〜1.0重量%である、請求項2に記載の包装中華麺類の製造方法。
【請求項4】
前記95℃以下の加熱殺菌が、75〜95℃であり、かつ加熱温度85℃の場合で30〜60分に相当する加熱殺菌条件である、請求項1ないし3のいずれかに記載の包装中華麺類の製造方法。
【請求項5】
a)炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムのいずれか一つ以上、
b)酸化カルシウム及び又は水酸化カルシウム、
c)食塩、塩化カリウム、塩化カルシウムのいずれか一つ以上、
の前記a)、b)及びc)が麺原料に添加され、かつ、c)は少なくとも麺原料粉に対して3重量%添加された、チルド流通で1週間から1ヶ月程度の保存期間を有するα化処理済みの包装中華麺の調理方法であって、
該包装中華麺の麺塊を電子レンジで加熱し、電子レンジ加熱した麺塊を別途用意したスープに投入して喫食に供するか、又は電子レンジ加熱した麺塊にタレを掛けるかタレに浸けて喫食に供する、もしくは、電子レンジ加熱した麺塊を冷水によって冷し、これにタレを掛けるかタレに浸けて喫食に供する、包装中華麺の調理方法。