説明

包装体

【課題】本発明の課題は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制し、かつ、易剥離することができる包装体を提供することである。
【解決手段】本発明に係る包装体100は、底材200と、蓋材300とを備える。底材200には内容物Tが収容される。蓋材300は底材200にシールされる。また、包装体300では、25℃の状態のとき、底材200と蓋材300との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下である。さらに、包装体100では、25℃の状態から90℃の状態にしたとき、底材200と蓋材300との粘着力の変化率が−80%以上0%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品および飲料などを保存する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品および飲料などの内容物を保存するための包装容器として、プラスチック製の包装体が用いられる。この包装体は、内容物が収容される底材と、底材から易剥離するように底材にシールされる蓋材とから構成される。内容物を包装体から取り出すときは、蓋材を底材から剥離した後に、底材から内容物を取り出す。
【0003】
ところで、この易剥離できる包装体を10分〜30分間ボイル殺菌したとき、90℃〜95℃の熱水の熱で底材と蓋材との粘着力が著しく低下して包装体の一部が開封し、ボイル殺菌中に内容物が包装体の外に漏れ出てしまう問題があった。この問題に対して、例えば、特許文献1には、基材層、層間剥離可能な共押出しフィルム層、線状飽和ポリエステル樹脂層を順次積層した蓋材と、ポリエチレンテレフタレート包装体本体またはポリエチレンナフタレート包装体本体とを熱接着した包装体が開示されている。この包装体は、ボイル殺菌中に内容物が包装体の外に漏れ出ることを抑制し、かつ、易剥離することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−26223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の包装体を用いても、ボイル殺菌における熱水の熱で底材と蓋材との粘着力がかなり低下する。このため、ボイル殺菌した際に付着した水滴を落とすことを目的として外力が加えられたとき、例えば、ボイル殺菌後すぐに包装体が振られたとき、または布で包装体を拭いたとき、蓋材が外れて内容物が包装体から出てしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制し、かつ、易剥離することができる包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
本発明に係る包装体は、底材と、蓋材とを備える。底材には内容物が収容される。蓋材は底材にシールされる。また、包装体では、25℃の状態のとき、底材と蓋材との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下である。さらに、包装体では、25℃の状態から90℃の状態にしたとき、底材と蓋材との粘着力の変化率が−80%以上0%以下である。
【0008】
25℃の状態のとき、底材と蓋材との粘着力が上記範囲内の値である。よって、この包装体は、常温で易剥離することができる。また、25℃の状態から90℃の状態にしたとき、底材と蓋材との粘着力の変化率が上記範囲内の値である。よって、この包装体は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制する。したがって、この包装体は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材が外れることを抑制することができる。
【0009】
(2)
上述(1)の包装体では、0℃の状態のとき、底材と蓋材との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下であることが好ましい。
【0010】
0℃の状態のとき、底材と蓋材との粘着力が上記範囲内の値である。よって、この包装体は、冷凍された状態で易剥離することができる。
【0011】
(3)
上述(1)または(2)の包装体では、底材は、蓋材と接する第1接触層を有することが好ましい。この第1接触層は、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンを主成分とする。
【0012】
本願発明者の鋭意検討の結果、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンを主成分とする第1接触層を有する底材を備える包装体は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材が外れることを抑制することができる。
【0013】
(4)
上述(3)の包装体では、エチレン−メタクリル酸共重合体は、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して40重量%以上80重量%以下含まれることが好ましい。
【0014】
本願発明者の鋭意検討の結果、エチレン−メタクリル酸共重合体がエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して40重量%以上80重量%以下含まれる底材を備える包装体は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材が外れることを抑制することができる。
【0015】
(5)
上述(3)または(4)の包装体では、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)は、80/20以上97/3以下であることが好ましい。
【0016】
本願発明者の鋭意検討の結果、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)が80/20以上97/3以下である包装体は、押出加工性と層間接着強度に優れることが明らかとなった。よって、この包装体は、好適な外観を有するとともに、蓋材と底材とのシール強度が好適なものとなる。
【0017】
(6)
上述(3)から(5)のいずれかの包装体では、蓋材は、底材と接する第2接触層を有することが好ましい。この第2接触層は、ポリエチレンを主成分とする。
【0018】
本願発明者の鋭意検討の結果、ポリエチレンを主成分とする第2接触層を有する蓋材を備える包装体は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材が外れることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る包装体は、ボイル殺菌中の底材と蓋材との粘着力の低下を抑制し、かつ、易剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体の断面図である。
【図2】図1に示した包装体のA部分の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態の変形例(A)に係る包装体の断面図である。
【図4】図3に示した包装体のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る包装体100は、図1に示されるように、主に、底材200、および蓋材300から構成される。底材200には、食品および飲料などの内容物Tが収容される。底材200が蓋材300でシールされることで、内容物Tは包装体100に包装される。以下、包装体100の各構成について、それぞれ詳しく説明する。
【0022】
<底材>
図2に示されるように、底材200は、第1外層210、第1の接着層220、第1バリア層230、ナイロン層240、第2の接着層250、ポリエチレン層260、第1接触層270が、この順に積層されて形成される。底材200には、第1外層210が外側で第1接触層270が内側となるように、ポケット280が形成される(図1参照)。
【0023】
第1外層210の材料として、底材200として用いることができる程度の強度を有している材料であればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等が用いられる。
【0024】
第1の接着層220は、隣接する層である第1外層210と、第1バリア層230とを接着する機能を有する。同じように、第2の接着層250は、隣接する層であるナイロン層240と、ポリエチレン層260とを接着する機能を有する。第1の接着層220および第2の接着層250の材料として、公知の接着性のオレフィン系樹脂、例えば、接着性ポリプロピレン系樹脂、接着性ポリエチレン系樹脂などが用いられる。なお、第1の接着層220および第2の接着層250の少なくとも一方は、内容物Tの酸化を防止するために、酸化防止剤を含有していてもよい。第1の接着層220および第2の接着層250の少なくとも一方が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤として、公知の酸化防止剤、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが、単体でまたは2種類以上混合して用いられる。
【0025】
第1バリア層230は、包装体100の外部から侵入する水蒸気、酸素、光などの透過を制限または吸収するバリア機能を有する。このため、包装体100は、内容物Tを長期間保管することができる。水蒸気をバリアする第1バリア層230の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、フッ素、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂が用いられる。酸素をバリアする第1バリア層230の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が用いられる。水蒸気および酸素をバリアする第1バリア層230の材料として、例えば、バリアPET等が用いられる。光である紫外線をバリアする第1バリア層230の材料として、例えば、紫外線吸収剤や顔料を含有する樹脂薄膜などが用いられる。水蒸気、酸素、および光をバリアする第1バリア層230の材料として、例えば、透明樹脂フィルムに、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムまたはそれらの混合物などの無機酸化物からなる蒸着薄膜層が形成されたものが用いられる。なお、必要に応じて、透明樹脂フィルム上に透明プライマー層が形成されてもよいし、または蒸着薄膜層上にガスバリア被膜層が形成されてもよい。
【0026】
ナイロン層240は、底材200のフィルム強度を向上させ、包装体100の耐ピンホール性を改善する。ナイロン層240の材料として、例えば、6ナイロン、6−6ナイロン、6−12ナイロン等のポリアミド系樹脂が好ましく、コストを含めた生産性の観点から6ナイロンがより好ましい。
【0027】
ポリエチレン層260は、底材200にクッション性を付与し、底材200のシール性を向上させる。ポリエチレン層260として、公知のポリエチレン樹脂などが用いられ、加工性の観点から低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましく、特に包装体100の耐ピンホール性の観点からはLLDPEが好ましい。
【0028】
第1接触層270は、接触する蓋材300の第2接触層310とシールされる。この第1接触層270は、包装体100に収容された内容物Tに対して悪影響を及ぼさない。また、第1接触層270は、海部271と島部272とから成る海島構造を形成する。第1接触層270は、海部271を構成するエチレン−メタクリル酸共重合体と、島部272を構成するポリプロピレンとを主成分とする。エチレン−メタクリル酸共重合体は、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して40重量%以上80重量%以下含まれることが好ましく、60重量%以上80重量%以下含まれることがより好ましく、70重量%以上80重量%以下含まれることがより好ましい。
【0029】
底材200の材料の組み合わせは、底材200が酸素バリア機能を有する場合、例えば、第1外層210がポリプロピレン、第1の接着層220が接着性ポリプロピレン系樹脂、第1バリア層230がEVOH、ナイロン層240がナイロン、第2の接着層250が接着性ポリエチレン系樹脂、ポリエチレン層260がポリエチレン、第1接触層270がエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンであることが好ましい(図2参照)。
【0030】
なお、底材200は、第1外層210、第1の接着層220、第1バリア層230、ナイロン層240、第2の接着層250、ポリエチレン層260、および第1接触層270以外の層をさらに備えていてもよい。また、底材200は、第1の接着層220、第1バリア層230、ナイロン層240、第2の接着層250、ポリエチレン層260のうちの少なくとも1層を省略してもよい。
【0031】
<蓋材>
図2に示されるように、蓋材300は、第2外層330、第2バリア層320、第2接触層310が、この順に積層されて形成される。
【0032】
第2接触層310は、接触する底材200の第1接触層270とシールされる。この第2接触層310は、包装体100に収容された内容物Tに対して悪影響を及ぼさない。第2接触層310の材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられ、好ましくはポリエチレンが用いられる。
【0033】
第2バリア層320は、包装体100の外部から侵入する水蒸気、酸素、光などの透過を制限または吸収するバリア機能を有する。第2バリア層320の材料は、上記の第1バリア層230の材料と同様のものが用いられる。
【0034】
第2外層330の材料として、蓋材300として用いることができる程度の強度を有しているものであればよく、例えば、ナイロン、延伸ポリプロピレン等が用いられる。
【0035】
蓋材300の材料の組み合わせは、蓋材300が酸素バリア機能を有する場合、例えば、第2接触層310がポリエチレン、第2バリア層320がEVOH、第2外層330がナイロンであることが好ましい(図2参照)。また、蓋材300の材料の組み合わせは、蓋材300が酸素および水蒸気バリア機能を有する場合、例えば、第2接触層310がポリエチレン、第2バリア層320がバリアPET、第2外層330が延伸ポリプロピレンであることが好ましい。
【0036】
蓋材300は、内容物Tがポケット280に収容された底材200に、ヒートシール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等でシールされる。包装体100では、底材200のポケット280が蓋材300によって密封される(図1参照)。
【0037】
なお、蓋材300は、第2接触層310、第2バリア層320、および第2外層330以外の層をさらに備えてもよい。また、蓋材300は、第2バリア層320、第2外層330のうちの少なくとも1層を省略してもよい。
【0038】
<底材と蓋材との粘着力>
包装体100では、25℃の状態のとき、底材200と蓋材300との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下であることが好ましく、500g/15mm以上700g/15mm以下であることがより好ましく、550g/15mm以上750g/15mm以下であることがさらに好ましい。底材200と蓋材300との粘着力の測定方法は、下記の実施例において詳述する。
【0039】
25℃の状態で底材200と蓋材300との粘着力が400g/15mm以上であるとき、常温の包装体100を保管および搬送する際に、外力によって蓋材300が底材200から外れにくい。このため、常温の包装体100は、保管中または搬送中に内容物Tが包装体100の外に出ることを抑制する。底材200と蓋材300との粘着力が800g/15mm以下であるとき、常温の包装体100について、ユーザは蓋材300を底材200から易剥離することができる。
【0040】
包装体100では、0℃の状態のとき、底材200と蓋材300との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下であることが好ましく、500g/15mm以上700g/15mm以下であることがより好ましく、550g/15mm以上750g/15mm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
0℃の状態で底材200と蓋材300との粘着力が400g/15mm以上であるとき、冷凍された状態の包装体100を保管および搬送する際に、外力によって蓋材300が底材200から外れにくい。このため、冷凍された状態の包装体100は、保管中または搬送中に内容物Tが包装体100の外に出ることを抑制する。底材200と蓋材300との粘着力が800g/15mm以下であるとき、冷凍された状態の包装体100について、ユーザは蓋材300を底材200から易剥離することができる。
【0042】
また、25℃の状態から90℃の状態にしたとき、底材200と蓋材300との粘着力の変化率が−80%以上0%以下であることが好ましく、−70%以上0%以下であることがより好ましく、−60%以上0%以下であることがさらに好ましい。底材200と蓋材300との粘着力の変化率が−80%以上0%以下であるとき、ボイル殺菌中に底材200と蓋材300との粘着力が低下しにくい。
【0043】
<本実施形態における効果>
25℃の状態のとき、底材200と蓋材300との粘着力が上記範囲内の値である。よって、この包装体100は、常温で易剥離することができる。また、25℃の状態から90℃の状態にしたとき、底材200と蓋材300との粘着力の変化率が上記範囲内の値である。よって、この包装体100は、ボイル殺菌中の底材200と蓋材300との粘着力の低下を抑制する。したがって、この包装体100は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材300が外れることを抑制することができる。
【0044】
0℃の状態のとき、底材200と蓋材300との粘着力が上記範囲内の値である。よって、この包装体100は、冷凍された状態で易剥離することができる。
【0045】
本願発明者の鋭意検討の結果、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンを主成分とする第1接触層270を有する底材200を備える包装体100は、ボイル殺菌中の底材200と蓋材300との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体100は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材300が外れることを抑制することができる。
【0046】
本願発明者の鋭意検討の結果、エチレン−メタクリル酸共重合体が、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して40重量%以上80重量%以下含まれる底材200を備える包装体100は、ボイル殺菌中の底材200と蓋材300との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体100は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材300が外れることを抑制することができる。また、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)は、80/20以上97/3以下であることが好ましく、85/15以上97/3以下であることがより好ましく、90/10以上97/3以下であることが最も好ましい。エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比を80/20以上とすることにより、底材200にかかる好適な押出加工性を付与することができ、良好な外観の底材200を得ることができる。また、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比を97/3以下とすることにより、底材200にかかる蓋材300との好適なシール強度を得ることができる。
【0047】
本願発明者の鋭意検討の結果、ポリエチレンを主成分とする第2接触層310を有する蓋材300を備える包装体100は、ボイル殺菌中の底材200と蓋材300との粘着力の低下を抑制することが明らかとなった。よって、この包装体100は、ボイル殺菌後すぐに振られる等の外力が加えられたとき、蓋材300が外れることを抑制することができる。
【0048】
<変形例>
(A)
図3、4に示されるように、包装体100aの蓋材300aは、第2接触層310と第2バリア層320との間に中間層340を形成し、かつ、第2バリア層320と第2外層330との間に中間層341を形成してもよい。この中間層340、341により、包装体100aの耐ピンホール性が改善される。中間層340、341の材料として、例えば、ナイロン等が用いられる。蓋材300aの材料の組み合わせは、蓋材300aが酸素および水蒸気バリア機能を有する場合、例えば、第2接触層310がポリエチレン、第2バリア層320がバリアPET、第2外層330が延伸ポリプロピレン、中間層340、341がナイロンであることが好ましい。なお、蓋材300aでは、中間層340の材料と中間層341の材料とが同じでもよいし、異なっていてもよい。また、蓋材300aは、中間層340および中間層341のいずれか一方を省略してもよい。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の包装体100に係る実施例1〜3と、比較例1、2とについて説明する。なお、実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
<底材用フィルムの作製>
第1外層210を構成する材料としてポリプロピレン(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンFL8115)を準備した。第1の接着層220を構成する材料として接着性ポリプロピレン系樹脂(三井化学株式会社製、品名:アドマーQB550)を準備した。第1バリア層230を構成する材料としてEVOH(株式会社クラレ製、品名:エバールJ171B)を準備した。ナイロン層240を構成する材料としてナイロン(宇部興産株式会社製、品名:宇部ナイロン1030B2)を準備した。第2の接着層250を構成する材料として接着性ポリエチレン系樹脂(三井化学株式会社製、品名:アドマーNF536)を準備した。ポリエチレン層260を構成する材料としてポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、品名:ウルトゼックス2022L)を準備した。第1接触層270を構成する材料として、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)が91/9であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、品名:ニュークレルN0903HC)およびポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンS131)から成り、エチレン−メタクリル酸共重合体をエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して80重量%の割合で混合したものを準備した。
【0051】
第1外層210のポリプロピレンと、第1の接着層220の接着性ポリプロピレン系樹脂と、第1バリア層230のEVOHと、ナイロン層240のナイロンと、第2の接着層250の接着性ポリエチレン系樹脂と、ポリエチレン層260のポリエチレンと、第1接触層270のエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンを混合したものとをこの順で共押出しし、底材用フィルムを作製した。
【0052】
得られた底材用フィルムの第1外層210の厚さは45μm、第1の接着層220の厚さは7μm、第1バリア層230の厚さは9μm、ナイロン層240の厚さは30μm、第2の接着層250の厚さは7μm、ポリエチレン層260の厚さは40μm、第1接触層270の厚さは10μmであった。
【0053】
<蓋材の作製>
第2接触層310を構成する材料としてポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、品名:ウルトゼックス2022L)を準備した。第2バリア層320を構成する材料としてEVOH(株式会社クラレ製、品名:エバールJ171B)を準備した。第2外層330を構成する材料としてナイロン(宇部興産株式会社製、品名:宇部ナイロン1030B2)を準備した。
【0054】
第2外層330のナイロンと、第2バリア層320のEVOHと、第2接触層310のポリエチレンとをこの順で共押出しし、蓋材300を作製した。
【0055】
得られた蓋材300の第2接触層310の厚さは40μm、第2バリア層320の厚さは12μm、第2外層330の厚さは20μmであった。
【0056】
<粘着力の測定>
上述のようにして得られた底材用フィルムを15mm幅に切断した後、その積層フィルム片を、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして蓋材300に貼り付けた。その後、底材用フィルムと蓋材300との粘着力の測定を剥離試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、品名:テンシロン)を用いて行い、この得られた粘着力の測定値を、底材200と蓋材300との粘着力の測定値とした。具体的に、底材200と蓋材300との粘着力の測定は、剥離速度を200mm/秒、環境圧力を常圧にした条件下で、底材用フィルムを蓋材300に対して180°の状態で維持しながら、底材用フィルムを蓋材300から引き剥がすことで行われた。また、底材200と蓋材300との粘着力の測定は、環境温度を0℃、25℃、70℃、80℃、90℃、100℃の各状態においてそれぞれ行った。なお、底材200と蓋材300との粘着力の測定値は、測定により得られた粘着力チャートの平均値とした。
【0057】
さらに、25℃の状態から90℃の状態にしたときの底材200と蓋材300との粘着力の変化率を、(90℃の状態の粘着力−25℃の状態の粘着力)/25℃の状態の粘着力×100という式に基いて算出した。
【0058】
上記の測定を行った結果、本実施例の底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃のとき630g/15mm、25℃のとき620g/15mm、70℃のとき290g/15mm、80℃のとき230g/15mm、90℃のとき220g/15mm、100℃のとき210g/15mmであった。また、25℃の状態から90℃の状態にしたときの粘着力の変化率は、−64.5%であった(下記表1参照)。
【0059】
<底材の作製>
深絞り型全自動真空包装機(大森機械工業株式会社製、型番:FV−6300)を用いて、成形温度95℃、成形時間3秒の条件で、底材用フィルムにポケット280(□130mm×130mm×深さ7mm)を成形し、底材200を作製した。
【0060】
<包装体の作製>
ポケット280に内容物Tとしてスライスハムを45g収容した後に、底材200と蓋材300とを、135℃、1.5秒の条件でヒートシールして密封し、包装体100を作製した。なお、底材200と蓋材300とがヒートシールされた面積は、5200mmであった。
【0061】
<包装体を振る試験>
包装体100を90℃の熱水が入った水槽に30分間浸してボイル殺菌を行う。ボイル殺菌後すぐに、底材200のみを手で握み、包装体100に付着した水滴を落とすようにして包装体100を手で10回振った。包装体100を振った後、底材200から蓋材300が外れているか否かを確認した。この試験を10個のサンプルについて行い、蓋材300が外れたサンプルの個数を数えた。
【0062】
上記の試験を行った結果、蓋材300が外れたサンプルの個数は、10個のサンプル中0個であった(下記表1参照)。
【0063】
(実施例2)
下記以外については実施例1と同様にして、底材用フィルム、蓋材300、および包装体100を得た。第1接触層270を構成する材料として、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)が96/4であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、品名:ニュークレルAN4214C)およびポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンS131)から成り、エチレン−メタクリル酸共重合体をエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して80重量%の割合で混合したものを準備した。この底材用フィルムおよび蓋材300について、実施例1と同様にして底材200と蓋材300との粘着力の測定を行った。また、この包装体100について、実施例1と同様にして包装体を振る試験を行った。
【0064】
その結果、本実施例に係る底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃のとき580g/15mm、25℃のとき550g/15mm、70℃のとき250g/15mm、80℃のとき160g/15mm、90℃のとき120g/15mm、100℃のとき100g/15mmであった。また、25℃の状態から90℃の状態にしたときの粘着力の変化率は、−78.0%であった。また、蓋材300が外れたサンプルの個数は、10個のサンプル中0個であった(下記表1参照)。
【0065】
(実施例3)
下記以外については実施例1と同様にして、底材用フィルム、蓋材300、および包装体100を得た。第1接触層270を構成する材料として、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)が88/12であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、品名:ニュークレルN1525)およびポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンS131)から成り、エチレン−メタクリル酸共重合体をエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して80重量%の割合で混合したものを準備した。この底材用フィルムおよび蓋材300について、実施例1と同様にして底材200と蓋材300との粘着力の測定を行った。また、この包装体100について、実施例1と同様にして包装体を振る試験を行った。
【0066】
その結果、本実施例に係る底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃のとき510g/15mm、25℃のとき500g/15mm、70℃のとき450g/15mm、80℃のとき300g/15mm、90℃のとき200g/15mm、100℃のとき120g/15mmであった。また、25℃の状態から90℃の状態にしたときの粘着力の変化率は、−60.0%であった。また、蓋材300が外れたサンプルの個数は、10個のサンプル中0個であった(下記表1参照)。
【0067】
(比較例1)
下記以外については実施例1と同様にして、底材用フィルム、蓋材300、包装体を得た。第1接触層270を構成する材料としてポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、品名:宇部ポリエチレンF522)およびポリプロピレン(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンFL8115)から成り、ポリエチレンをポリエチレンおよびポリプロピレンの合計重量に対して70重量%の割合で混合したものを準備した。この底材用フィルムおよび蓋材300について、実施例1と同様にして底材200と蓋材300との粘着力の測定を行った。また、この包装体について、実施例1と同様にして包装体を振る試験を行った。
【0068】
その結果、本比較例に係る底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃のとき510g/15mm、25℃のとき500g/15mm、70℃のとき140g/15mm、80℃のとき120g/15mm、90℃のとき70g/15mm、100℃のとき45g/15mmであった。また、25℃の状態から90℃の状態にしたときの粘着力の変化率は、−86.0%であった。本比較例に係る包装体では、蓋材300が外れたサンプルの個数は、10個のサンプル中5個であった(下記表1参照)。
【0069】
(比較例2)
下記以外については実施例1と同様にして、底材用フィルム、蓋材300、包装体を得た。第1接触層270を構成する材料として、エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)が98/2であるエチレン−メタクリル酸共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、品名:ニュークレルN0200H)およびポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製、品名:ノーブレンS131)から成り、エチレン−メタクリル酸共重合体をエチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンの合計重量に対して80重量%の割合で混合したものを準備した。この底材用フィルムおよび蓋材300について、実施例1と同様にして底材200と蓋材300との粘着力の測定を行った。また、この包装体について、実施例1と同様にして包装体を振る試験を行った。
【0070】
その結果、本比較例に係る底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃のとき500g/15mm、25℃のとき450g/15mm、70℃のとき170g/15mm、80℃のとき130g/15mm、90℃のとき80g/15mm、100℃のとき60g/15mmであった。また、25℃の状態から90℃の状態にしたときの粘着力の変化率は、−82.0%であった。本比較例に係る包装体では、蓋材300が外れたサンプルの個数は、10個のサンプル中5個であった(下記表1参照)。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1〜3に係る底材200と蓋材300との粘着力は、環境温度が0℃〜100℃のいずれの状態の場合も、比較例1、2に係る底材200と蓋材300との粘着力と比較して同等以上に高かった。また、実施例1〜3に係る底材200と蓋材300との粘着力は、25℃の状態のとき、500g/15mm以上620g/15mm以下であり、25℃の状態において易剥離性を有していた。さらに、実施例1〜3に係る底材200と蓋材300との粘着力は、0℃の状態のとき、510g/15mm以上630g/15mm以下であり、0℃の状態において易剥離性を有していた。
【0073】
実施例1〜3に係る底材200と蓋材300との粘着力の変化率は、比較例1、2に係る底材200と蓋材300との粘着力の変化率よりも0に近かった。このため、実施例1〜3に係る包装体100は、ボイル殺菌中の底材200と蓋材300との粘着力の低下を抑制することができた。
【0074】
包装体を振る試験において、実施例1〜3に係る包装体100では、蓋材300が外れたサンプルはなかった。これに対して、比較例1、2に係る包装体では、半数のサンプルの蓋材300が外れた。このため、実施例1〜3に係る包装体100は、外力が加えられたとき、蓋材300が外れることを抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る包装体は、熱水中での底材と蓋材との粘着力の低下を抑制するので、ボイル殺菌が必要となる食品および飲料などの包装に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
100、100a 包装体
200 底材
270 第1接触層
300、300a 蓋材
310 第2接触層
T 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される底材と、前記底材にシールされる蓋材とを備える包装体であって、
25℃の状態のとき、前記底材と前記蓋材との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下であり、
25℃の状態から90℃の状態にしたとき、前記底材と前記蓋材との粘着力の変化率が−80%以上0%以下である包装体。
【請求項2】
0℃の状態のとき、前記底材と前記蓋材との粘着力が400g/15mm以上800g/15mm以下である請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記底材は、前記蓋材と接する第1接触層を有し、
前記第1接触層は、エチレン−メタクリル酸共重合体およびポリプロピレンを主成分とする請求項1または2に記載の包装体。
【請求項4】
前記エチレン−メタクリル酸共重合体は、前記エチレン−メタクリル酸共重合体および前記ポリプロピレンの合計重量に対して40重量%以上80重量%以下含まれる請求項3に記載の包装体。
【請求項5】
前記エチレンーメタクリル酸共重合体中の共重合比(エチレン成分の質量/メタクリル酸成分の質量)は、80/20以上97/3以下である請求項3または4に記載の包装体。
【請求項6】
前記蓋材は、前記底材と接する第2接触層を有し、
前記第2接触層は、ポリエチレンを主成分とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121621(P2012−121621A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275732(P2010−275732)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】