説明

包装充填装置及び包装充填方法

【課題】包装容器全体を殺菌して、シール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、細菌が侵入することを予防/低減することができ、内容物製品がタンパク質変性、精油、香料などの変質の悪影響を最小限に押さえることができる包装充填装置及び方法を提供する。
【解決手段】包装充填装置は、プラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含む積層材料1から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する包装充填装置であって、包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、集積された包装容器14を殺菌する熱水槽30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口栄養流動食品、スープ、ソース、豆乳、果汁、乳飲料などの流動食品が充填された容器を殺菌する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スープ、果汁、乳飲料などの流動食品を容器に充填し包装する場合、通常、流動食品を殺菌し、容器を殺菌して各々を殺菌し、無菌環境で包装充填される。
例えば、牛乳であれば、生乳が多くの微生物が混入しており、この微生物にとって生乳は絶好の繁殖源であり、その繁殖を抑制する為に殺菌処理し、冷却、冷蔵することが必要である。
上記牛乳殺菌法は、厚生省「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」で「摂氏62度から摂氏65度までの間30分間加熱殺菌するか、または、これと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。」が定められている。殺菌方法として、低温保持殺菌法、HTST殺菌法、UHT加熱殺菌法等の方法がある。
【0003】
豆乳を充填して豆腐を得る包装充填方法では、豆乳にカルシウム源を添加し、加熱滅菌後冷却し、凝固剤を添加混合し、次いで容器へ充填して無菌密封し、最終的に容器に充填した豆乳を凝固させて豆腐を得る。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特許第2537287号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の包装充填装置及び方法においては、得られた包装容器のシール部分から細菌による汚染が、少ない割合でであるが、発見されることもある。容器のシール時におけるシール条件の不適合によるシール不良、その不良箇所から細菌が侵入する恐れがある。
また、殺菌済みウェブ状包装紙積層材料を筒状に成形して縦シールし、この筒状包装材料内に殺菌済み液体食品を充填して液面下で横シールし、成形フラップを折り畳んで矩形容器に最終成形する包装充填がある。この包装充填では、フラップを折り畳んで成形するので、折り畳み箇所で紙積層材料に伸び/圧縮ストレスが発生し、割れ、微小なクラック、ピンホールが現れることが考えられ、このピンホールなどから細菌が侵入する恐れがある。
【0005】
この発明では、上記の不都合を解消し、容器のシール部分及びフラップの折り畳み部分のみならず、シールされた包装容器全体を殺菌して、予期されないシール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、これらの箇所から細菌が侵入することを予防する若しくは低減することができる。
また、包装容器全体を殺菌(加熱などの処理)することによって、内容物製品がタンパク質変性、精油、香料などの変質などが生じる恐れがあるが、これらの悪影響を最小限に押さえることができる包装充填装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の包装充填装置は、少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含む積層材料から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する包装充填装置であって、
シールされた包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、シールされた包装容器又はシールされ集積された包装容器を殺菌する手段を有することを特徴とする。
【0007】
この発明の好ましい態様の包装充填装置においては、シールされた包装容器を浸漬させ88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間加熱する殺菌手段が熱水槽である。
【0008】
この発明の好ましい態様の包装充填装置においては、殺菌手段が、シールされた包装容器を62〜66℃の雰囲気で30分〜40分間加熱する。
【0009】
この発明の好ましい態様の包装充填装置においては、殺菌手段が、シールされた包装容器を130〜135℃の雰囲気で2秒〜4秒間加熱する。
【0010】
この発明の好ましい態様の包装充填装置においては、殺菌手段が、シールされた包装容器を72〜85℃の雰囲気で15秒〜20秒間加熱する。
【0011】
この発明の好ましい態様の包装充填装置においては、殺菌手段による加熱が、スチーム、ミスト、又はホットエアー、若しくはそれらの組合せである。
【0012】
この発明の包装充填方法においては、少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含む積層材料から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する包装充填方法であって、
シールされた包装容器を、包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、シールされた包装容器又はシールされ集積された包装容器を殺菌する、ことを特徴とする。
【0013】
この発明の好ましい態様の包装充填方法においては、シールされた包装容器を、88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間熱水槽中で、62〜66℃の雰囲気で30分〜40分間、130〜135℃の雰囲気で2秒〜4秒間、又は72〜85℃の雰囲気で15秒〜20秒間、スチーム、ミスト、又はホットエアー、若しくはそれらの組合せで、加熱して殺菌する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有するこの発明は、以下の様に作用機能し、効果を奏する。
この発明の包装充填装置は、少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント最内層を含む積層材料から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する。
積層材料のプラスチック最外層は、防水、防湿、保護層の働きを果たし、紙基材層は、容器に機械的強度を付与する支持材であり、シーラント最内層は、内容物製品を直接接触すると共に、包装材料から容器に成形するための接着性を付与する層である。
上記積層材料からなる包装容器は、流動性食品を充填し包装する最低限の機能を奏する。
【0015】
この発明の特徴では、シールされた包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、シールされた包装容器又はシールされ集積された包装容器を殺菌する手段を有する。
所定温度及び所定時間に関して、包装容器を加熱する温度及び時間は、包装容器を目的に適うように殺菌することができる温度及び時間である。
非加熱/加熱済みなど内容物製品の種類、アルミ箔の有無など包装材料の種類、レンガ型、屋根型など包装容器の形状や成形態様、滅菌/加熱殺菌(パスチャライゼーション)などに応じて、適宜選択変更することができる。
【0016】
高温加熱済みなど内容物製品、例えば、経口栄養流動食品、スープ、ソースなどの流動食品の場合、シールされた包装容器を88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間、熱水槽中に浸漬させ、加熱する。
この態様の包装充填において、容器のシール部分及びフラップの折り畳み部分のみならず、シールされた包装容器の全体が殺菌される。
結果として、予期されないシール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、細菌が侵入することを予防する若しくは低減することができる。
また、スープ、ソースなどの流動食品内容物に含まれるタンパク質の変性、味の変質などの悪影響を最小限に押さえることができる。
【0017】
豆乳、果汁、乳飲料(牛乳を含む)などの熱に影響を受け易い流動食品を包装充填する態様において、シールされた包装容器を62〜66℃の雰囲気で30分〜40分間加熱し、殺菌する。
この態様の包装充填においても、容器のシール部分及びフラップの折り畳み部分のみならず、シールされた包装容器の全体が殺菌される。
結果として、予期されないシール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、細菌が侵入することを予防する若しくは低減することができる。
また、豆乳、果汁、牛乳などの流動食品内容物に含まれるビタミン類の減少、牛乳のホエータンパク質(生理活性物質(免疫グロブリン、ラクトフェリン、オピオイドペプチド等)を含む)の変性、味成分の変質などの悪影響を最小限に押さえることができる。
【0018】
加熱できない柑橘系果汁などの流動食品を包装充填する態様において、高温でかつ短時間で加熱する。例えば、シールされた包装容器を130〜135℃の雰囲気で2秒〜4秒間加熱する。
若しくは、シールされた包装容器を72〜85℃の雰囲気で15秒〜20秒間加熱する。
これら態様の包装充填においても、容器のシール部分及びフラップの折り畳み部分のみならず、シールされた包装容器の全体が殺菌され、結果として、予期されないシール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、細菌が侵入することを予防する若しくは低減することができる。
積層材料が、少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含むので、高温で容器のシール部分、フラップの折り畳み部分を含む容器の全体が殺菌され、内部に熱が伝熱する際に、特に紙基材層が断熱効果を発揮して、高温であっても内容物に悪影響を及ぼさない。
【0019】
好ましい態様の包装充填においては、液体の水、スチーム、ミスト、又はホットエアー、若しくはそれらの組合せで、加熱して殺菌する。
水、スチーム、ミストでは、比熱の高い水を用いるので、効率よく加熱することができる。また、ホットエアーでは、乾燥した雰囲気下で加熱・殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明に使用することができる包装充填装置を示す概略斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、ウェブ状の包装積層材料1は、リールの状態で包装充填装置に収容される。包装積層材料1は、紙基材、及び該紙基材の両面にポリエチレン樹脂最外層とポリエチレンシーラント最内層とが積層された可撓性の積層体から成り、紙基材とポリエチレン樹脂との間にアルミニウム箔から成るバリヤ層が形成され、包装容器14の表面に相当する部分にあらかじめ外装用の印刷が施される。
上記の積層材料に加えて、接着性樹脂層、金属蒸着層、無機酸化物蒸着層などを積層することもできる。
【0022】
繰り出された帯状包装積層材料1は、搬送手段としての送り装置によって連続的に搬送され、ベンディングローラ、ダンパローラ等を経て、シーリングテープ貼着装置3に送られ、シーリングテープ貼着装置によって包装積層材料1の一方の縁部に沿ってシーリングテープ2が貼着される。
帯状包装積層材料1の縁部にシーリングテープ2を接着する際、帯状包装積層材料とシーリングテープ2とを挟んで、一方側に、プレッシャローラを回転自在に配設して圧し、他方に、プレッシャローラによる圧力を受け、それに対向し、押さえ支持するようにカウンタローラを回転自在に配設する。
【0023】
続いて、包装積層材料1は、必要に応じて、プルタブ貼着装置によってプルタブが貼着される。包装積層材料1は、殺菌槽4に送られ、殺菌槽4において過酸化水素等の殺菌液によって殺菌される。包装積層材料1は、エアナイフ5に送られ、エアナイフ5によって乾燥させられた後、無菌室40に送られる。包装積層材料1は、上部成形リング6、その他の成形リングによって徐々に変形させられて筒状の形状にされる。包装積層材料1は、縦シール装置8によって縦方向にシールされる。
縦シール装置8では、予熱装置で縦シール部分が予熱され、プレッシャローラ及びカウンタローラが包装積層材料及びシーリングテープを挟んだ状態で押圧され、縦シール部の合せ面がシールされる。
【0024】
縦シールによって筒状包装積層材料9が形成される。同時に、充填パイプ7を介して供給された経口栄養流動食品、スープ、ソースなどの流動性食品が筒状包装積層材料9内に充填される。
【0025】
筒状包装積層材料9は、ローラによって案内され、横シール装置10に送られ、挟まれて横方向にシールされ、横シールされた包装積層材料12は、ナイフなどで切断されて個々の枕状原型容器13が形成される。原型容器13は、最終成形搬送装置によって搬送されて最終の形状に成形され、流動性食品を収容する包装容器14が製造される。
【0026】
図1に示される態様において、流動性食品を収容する包装容器14は、ベルトコンベアによって搬送され、所定数の容器が集積されて殺菌手段30に収納される。
【0027】
この殺菌手段30では、シールされた包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、集積された包装容器14を殺菌する。
内容物製品の種類、アルミ箔の有無など包装材料の種類、レンガ型、屋根型など包装容器の形状や成形態様、滅菌/加熱殺菌(パスチャライゼーション)などに応じて、適宜選択変更することができる。
【0028】
この態様の内容物製品、例えば、経口栄養流動食品、スープ、ソースなどの流動食品では、シールされた包装容器を88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間、好ましくは30分間、熱水槽30中に浸漬させ加熱する。
この態様において、容器のシール部分及びフラップの折り畳み部分を含む包装容器の全体が殺菌される。
結果として、シール不良、包装材料の割れなどを殺菌し、細菌が侵入することを予防する若しくは低減することができる。
また、スープ、ソースなどの流動食品内容物に含まれるタンパク質の変性、味の変質などの悪影響を最小限に押さえることができる。
【0029】
なお、本発明は該実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、経口栄養流動食品、スープ、ソース、豆乳などを包装充填する液体用包装容器の製造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に使用することができる包装充填装置を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ・・・包装積層材料
4 ・・・殺菌槽
6 ・・・上部成形リング
8 ・・・縦シール装置
9 ・・・筒状包装積層材料
14・・・包装容器
30・・・殺菌手段(熱水槽)
40・・・無菌室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含む積層材料から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する包装充填装置であって、
シールされた該包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、シールされた該包装容器又はシールされ集積された該包装容器を殺菌する手段を有する、
ことを特徴とする包装充填装置。
【請求項2】
シールされた該包装容器を浸漬させ88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間加熱する殺菌手段が熱水槽である、請求項1記載の包装充填装置。
【請求項3】
殺菌手段が、シールされた該包装容器を62〜66℃の雰囲気で30分〜40分間加熱する、請求項1記載の包装充填装置。
【請求項4】
殺菌手段が、シールされた該包装容器を130〜135℃の雰囲気で2秒〜4秒間加熱する、請求項1記載の包装充填装置。
【請求項5】
殺菌手段が、シールされた該包装容器を72〜85℃の雰囲気で15秒〜20秒間加熱する、請求項1記載の包装充填装置。
【請求項6】
殺菌手段による加熱が、スチーム、ミスト、又はホットエアー、若しくはそれらの組合せである、請求項1記載の包装充填装置。
【請求項7】
少なくともプラスチック最外層、紙基材層及びシーラント層を含む積層材料から成形され、流動性食品が充填されてシールされた包装容器を製造する包装充填方法であって、
シールされた該包装容器全体を外側から、所定温度及び所定時間加熱して、シールされた該包装容器又はシールされ集積された該包装容器を殺菌する、
ことを特徴とする包装充填方法。
【請求項8】
シールされた該包装容器を、88〜92℃の雰囲気で30分〜60分間熱水槽中で、62〜66℃の雰囲気で30分〜40分間、130〜135℃の雰囲気で2秒〜4秒間、又は72〜85℃の雰囲気で15秒〜20秒間、スチーム、ミスト、又はホットエアー、若しくはそれらの組合せで、加熱して殺菌する、請求項8記載の包装充填方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−265781(P2008−265781A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108466(P2007−108466)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000229232)日本テトラパック株式会社 (259)
【Fターム(参考)】