説明

包装容器用の切断刃、包装容器及び包装物供給装置

【課題】切断性を損なうことなく切断方法の選択範囲を拡張した包装容器用の切断刃及び該切断刃を備えた包装容器を提供する。
【解決手段】ラップフィルムが巻き回されたロールの軸方向Aに延びるように形成されて、軸方向Aにおける中心位置が頂点になるV字状になるかたちで複数の歯先が配列された中央部21を有して、ロールが収容される包装物供給装置に取り付けられることによりラップフィルムを軸方向Aで切断可能にする包装容器用の切断刃20であって、中央部21における軸方向Aの両端から軸方向Aの外側に延びる直線状になるかたちで複数の歯先が配列された一対の端部22を有し、一対の端部22を構成する歯先の軸方向Aにおける位置が、同歯先に対応する歯における一対の歯底の中間位置から軸方向Aの外側である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器用の切断刃、包装容器及び包装物供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状のラップフィルムが包装された包装容器には、該容器から引出されたラップフィルムを切断するための鋸歯状の切断刃が備えられている。こうした包装容器に適用される切断刃の構造には、ロールの軸方向に延びる直線状をなす構造と、同ロールの軸方向における中央が頂点になるV字状をなす構造とが一般に知られている。上述する包装容器を用いてラップフィルムを切断する方法は、このような切断刃の構造に応じて適宜変更すべきものである。
【0003】
例えば、上記直線状の切断刃を用いてラップフィルムを切断する態様では、まず包装容器から引出されたラップフィルムの上記軸方向における一端を切断刃における同軸方向の一端に押当て、次いで引出されたラップフィルムを切断刃の歯先から歯根に向けて引上げる。こうした切断方法が適用されることによって、切断刃の軸方向における一端の歯がまずラップフィルムに刺し込まれ、そして軸方向における一端から他端に向けてラップフィルムが切り開かれる。
【0004】
一方、上記V字状の切断刃を用いてラップフィルムを切断する態様では、まず包装容器から引出されたラップフィルムの上記軸方向における中心位置を切断刃における同軸方向の中心位置に押当て、次いで上記軸方向に沿った回転軸を中心にして包装容器(切断刃)を回転させる。こうした切断方法が適用されることによって、切断刃の軸方向における中央の歯がまずラップフィルムに刺し込まれ、そして軸方向における中心位置から両端に向けてラップフィルムが切り開かれる。
【0005】
上記直線状の切断刃では、ラップフィルムの切断線が軸方向の一端から他端に向けて形成される。一方、上記V字状の切断刃においては、ラップフィルムにおける切断線が軸方向の中央で二等分されるかたちになる。そのためV字状の切断刃を利用する場合には、直線状の切断刃を利用する場合に比べて、ラップフィルムに付加される張力が均一になり、ラップフィルムの切断を確実かつ容易に実現することができる。またV字状の切断刃においては、その切断性をさらに向上すべく、例えば特許文献1に記載されるように、切断刃の上記軸方向における両端の歯先を同軸方向の中心位置に向ける構造が提案されている。こうした構造によればラップフィルムの切断が終了する直前であれ、ラップフィルムに対する歯の刺し込みが容易となることから、切断する過程の全体にわたり切断性を向上することもできる。
【特許文献1】特開平5−178344
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述するV字状の切断刃においては、ラップフィルムの切断が軸方向の中心位置から両端に向けて実行されることを条件として、その構造が設計されている。そしてV字状の切断刃に対してこうした切断方法が適用されることにより、V字状の切断刃が初めてラップフィルムに対して効果的に刺し込まれて、同ラップフィルムの切断性が確保されることになる。
【0007】
一方、包装容器を利用するにあたっては、こうした切断刃の構造を利用者がその都度認知するとは限らず、しかも切断刃の構造を認知した場合であっても、その構造に適した切
断方法を適切に選択するとも限らない。例えばV字状の切断刃が利用される場合であっても、ラップフィルムの軸方向における一端から他端に向けて切断が開始させる場合さえあり得る。このような場合にあっては、V字状の切断刃の軸方向における一端がラップフィルムの一端に対して刺し込み難いことから、ラップフィルムの切断性を十分に得難くしてしまう。さらには特許文献1に記載のように、切断刃の軸方向における両端の歯先が同軸方向の中央に向く構造にあっては、ラップフィルムへの歯の刺し込みが一層に難しくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであってその目的は、切断性を損なうことなく切断方法の選択範囲を拡張した包装容器用の切断刃及び該切断刃を備えた包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、包装物が巻き回されたロールの軸方向に延びるように形成されて、前記軸方向おける中心位置が頂点になるV字状に配列された複数の歯先からなる中央部を有し、前記ロールが収容される包装容器に取り付けられることにより前記包装物を前記軸方向で切断可能にする包装容器用の切断刃であって、前記中央部の前記軸方向外側には、同中央部の端から屈曲する直線状に配列された複数の歯先からなる一対の端部が設けられており、前記一対の端部を構成する歯先が、該歯先に対応する歯における一対の歯底の中間位置を含んで該中間位置から前記軸方向の外側に位置することを要旨とする。
【0010】
こうした構成からなる包装容器用の切断刃によれば、中央部における歯先の配列がV字状をなすため、軸方向の中央から両端に向けて包装物を切断する態様では、切断刃における軸方向の中心位置から順に、各歯先を包装物へ円滑に刺し込むことができる。これに対して、包装物の軸方向における一端から他端に向けて包装物を切断する態様では、端部における歯先が一対の歯底の中間位置から軸方向の外側にあるため、同端部の歯先が包装物に向くことになり、切断刃における軸方向の端から順に、各歯先を包装物へ円滑に刺し込むことができる。また端部における歯先が中央部の端から屈曲する直線状をなすために、包装物の軸方向における一端から他端に向けて包装物を切断する態様では、V字の頂点における歯先よりも先行するかたちで、端部における歯先が確実に包装物に差し込まれる。それゆえ、包装容器を利用する利用者が切断刃の構造を認知するか否かに拘わらず、同利用者が選択する切断方法に適した切断性を実現することができる。その結果、包装容器用の切断刃の切断性を損なうことなく、その切断方法の選択範囲を拡張することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記中央部は、複数本の第1中央歯と、前記第1中央歯よりも小さい複数本の第2中央歯とを備え、前記第1中央歯の一つの歯先が前記頂点に配置されて、他の前記第1中央歯が前記頂点を挟むように所定の間隔で配置されており、前記第2中央歯が前記第1中央歯の間に配置されており、前記第1中央歯の歯先と前記頂点とを結ぶ第一直線が前記第2中央歯から離間していることを要旨とする。
【0012】
こうした構成によれば、包装物の軸方向における中央から両端に向けて包装物を切断する態様において、相対的に大きいサイズの第1中央歯のみにより初期の刺し込みを実現することができる。それゆえ初期の刺し込みに際して、包装物に刺し込む歯の本数を少なくすることができ、ひいては初期の刺し込みに要求される負荷を小さくすることもできる。また相対的に小さいサイズの第2中央歯が大きいサイズの第1中央歯の間に設けられるために、後続する包装物の切り開きを円滑に進めることもできる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記端部を構成する歯が該歯の内方に凹曲した一対の斜辺を有することを要旨とする。
切断刃を構成する歯のサイズやピッチは、包装物を構成する構成材料や機械的強度、包
装物の切断時に要求される負荷や切断面の平坦性等により制約される。こうしたサイズやピッチが制約される上では、一対の斜辺が歯の内方に凹曲するほど、同斜辺のなす角度が歯先において鋭角的になる。こうした構成からなる包装容器用の切断刃によれば、端部における歯先がさらに鋭角的になることから、同端部を利用した包装物への刺し込みが一層円滑になる。さらに歯の高さである歯高が制約される条件下では、こうした斜辺を有する歯の構造は、歯の斜辺が直線である構造や歯の斜辺が歯の外方に凸曲した構造に比べて、一対の歯底の間の距離を長くすることができる。それゆえ上述する構成からなる包装容器用の切断刃によれば、歯そのものの耐久性を向上させることもできる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記端部における隣接する歯の間に前記軸方向に沿う平坦部を有することを要旨とする。
包装物の切断面においてロールの周方向に延びる箇所がある場合、このような箇所を端にして包装物が同周方向に引裂かれ易くなる。こうした構成からなる包装容器用の切断刃によれば、隣接する歯の間に平坦部がある分だけ、包装物の切断面が軸方向に沿うかたちになり、同包装物における引き裂きが抑えられることになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記軸方向における歯の位置が前記頂点から外側になるほど前記歯先の位置が前記中間位置に対し前記軸方向の外側になることを要旨とする。
軸方向の中央から両端に向けて包装物を切断する態様では、中央部における歯先の位置が頂点に近くなるほど同中央部の歯先が包装物に向くことになり、切断刃における軸方向の中央から順に、各歯先が包装物へ円滑に刺し込まれるかたちとなる。これに対して、軸方向における一端から他端に向けて包装物を切断する態様では、端部における歯先の位置が軸方向の外側になるほど同端部の歯先が包装物に向くことになり、切断刃における軸方向の端から順に、各歯先が包装物へ円滑に刺し込まれるかたちとなる。こうした構成からなる包装容器用の切断刃によれば、歯の位置が軸方向の外側になるほど歯先の位置が軸方向の外側になることから、端部と中央部との境界や中央部の内部においても、利用者が選択する切断方法に適した切断性を円滑に実現することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記切断刃が非金属製であることを要旨とする。
こうした構成によれば、非金属製の切断刃であっても、利用者が選択する切断方法に適した切断性を実現することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、包装物が巻き回されたロールを収容する容器本体が該容器本体から引出された前記包装物を切断する切断刃を具備する包装容器であって、前記切断刃が請求項1〜5のいずれか一項に記載の切断刃であることを要旨とする。
【0018】
こうした構成からなる包装容器によれば、同包装容器を利用する利用者が切断刃の構造を認知するか否かに拘わらず、同利用者が選択する切断方法に適した切断性を実現することができる。その結果、包装容器における切断性を損なうことなく、その切断方法の選択範囲を拡張することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、包装物が巻き回されたロールと、前記ロールが収容された包装容器と、前記包装容器に設けられて該包装容器から引出された前記包装物を切断可能にする切断刃とを具備する包装物供給装置であって、前記包装容器が請求項7に記載の包装容器であることを要旨とする。
こうした構成からなる包装物供給装置によれば、同包装物供給装置を利用する利用者が切断刃の形状を認知するか否かに拘わらず、同利用者が選択する切断方法に適した切断性を実現することができる。その結果、包装容器における切断性を損なうことなく、その切断方法の選択範囲を拡張することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した包装物供給装置の一実施形態を図面に従って説明する。図1は包装物供給装置10の斜視構造を示す斜視図であり、図2は包装物供給装置10の蓋体における断面構造を示す部分断面図である。図3は包装物供給装置10に具備された切断刃20の平面構造を示す平面図である。
【0021】
図1に示されるように、包装物供給装置10における容器本体13は、一方向に延びる箱体がその上部を開放したかたちで形成されており、同容器本体13の上部を開閉可能にする蓋体14が同容器本体13の後側壁における頂縁13aに一体形成されている。包装物供給装置10の内部には、円筒状の紙管11に巻き回されたラップフィルム12が同紙管11の軸方向Aに沿って延びるロールとして収納されている。こうした構成からなる包装物供給装置10においては、上記蓋体14が容器本体13を開けるときに、上記ロールの交換作業やラップフィルム12の取り出し作業が可能になる。また上記蓋体14が容器本体13を閉じるときに、容器本体13の前側へ引出されて切断されたラップフィルム12の先端が同容器本体13の前側壁に仮留めされる。
【0022】
蓋体14における前面壁の先端縁14aは、その軸方向A(図1における一点鎖線方向)における中心位置を頂点にするV字状をなす中央縁と、該中央縁の軸方向Aにおける両端から同軸方向Aに沿って外側へ直線状に延びる一対の端縁とにより構成されている。蓋体14における前面壁の裏面には、前記先端縁14aに沿うかたちに配列された複数の歯先を有する切断刃20が取り付けられている。このような構成からなる容器本体13は、例えば1枚の厚紙により形成することができ、好ましくはコートボール紙により形成することができる。また包装物であるラップフィルム12の構成材料としては、例えばポリ塩化ビニリデンを挙げることができる。以上、本実施形態においては、これら容器本体13、蓋体14及び切断刃20によって包装容器が構成されており、この包装容器がロールを収容するかたちで包装物供給装置10が構成されている。
【0023】
上述する包装物供給装置10を用いてラップフィルム12を軸方向Aの中心位置から切断する場合には、まず一方の手でラップフィルム12の先端部を把持し、他方の手で容器本体13を握る。次いで所定量のラップフィルム12を容器本体13から引出した後に、他方の手の親指を蓋体14の前面壁の中央部に押当て、軸方向Aに沿う回転軸を中心にして容器本体13を捻る。こうした切断方法によれば、切断刃20の中央における各歯がラップフィルム12へ刺し込まれ、容器本体13を更に捻ることによりラップフィルム12が切り開かれる。
【0024】
また、上述する包装物供給装置10を用いてラップフィルム12を軸方向Aの一端から他端に向けて切断する場合には、まず一方の手でラップフィルム12の一端を把持し、他方の手で容器本体13を握る。次いで所定量のラップフィルム12を容器本体13から引出した後に、容器本体13を握っている手で蓋体14の前面壁を固定しながら、ラップフィルム12を上方へ引き上げる。こうした切断方法によれば、切断刃20の端における各歯がラップフィルム12へ差し込まれ、ラップフィルム12を更に引き上げることによりラップフィルム12が切り開かれる。
【0025】
図2に示されるように、蓋体14における前面壁の裏面14bと上記切断刃20との間にはシーラント材15と接着層16とが裏面14bから順に積層されている。上述する切断刃20は、接着層16によりシーラント材15に接着されており、シーラント材15と蓋体14の裏面14bとが超音波接着法で接着されることにより、蓋体14に取り付けられている。シーラント材15の構成材料の一例としては、エチレンメタクリル酸共重合体を主成分とするシーラントを挙げることができ、また接着層16の構成材料の一例としては、ポリウレタン系の接着剤を挙げることができる。こうした構成からなる切断刃20に
よれば、切断刃20と蓋体14との間が十分な接着力の下で固定されることから、切断刃20が蓋体14から剥離し難くなる。
【0026】
図3に示されるように、切断刃20における軸方向Aの中央には、該軸方向Aにおける中心位置が頂点になるV字状になるかたちで複数の歯先が配列されてなる中央部21が設けられている。中央部21は、上記中心位置を通って軸方向Aと直交する方向に延びる中心線CLに対して線対称となるかたちで形成されている。複数の異なる形状からなる歯を有した中央部21は、その構成要素である歯の形状に基づいて3種類の領域に区画されている。具体的には、前記中心線CLを含む第一中央部21Aと、該第一中央部21Aを軸方向Aの両側から挟む一対の第二中央部21Bと、前記中央部21における軸方向Aの両端をなす一対の第三中央部21Cとに区画されている。さらに中央部21における軸方向Aの両端には、前記一対の第三中央部21Cから軸方向Aに沿って外側に延びる直線状になるかたちで複数の歯先が配列されてなる一対の端部22が設けられている。
【0027】
なお、本実施形態における中央部21の中心角θ及び切断刃20の軸方向Aにおける幅である刃幅W20は、それぞれ以下のように形成されている。また第一中央部21A、第二中央部21B、第三中央部21C及び端部22の軸方向Aにおける幅である第一中央部幅Wa、第二中央部幅Wb、第三中央部幅Wc及び端部幅Weは、それぞれ以下のように形成されている。
・中心角θ:172.5°
・刃幅W20:304mm
・第一中央部幅Wa:39.13mm
・第二中央部幅Wb:70.2mm
・第三中央部幅Wc:35.26mm
・端部幅We:26.98mm
こうした構成からなる切断刃20は、非金属製である紙製、バルカナイズドファイバ製、樹脂含浸紙製、樹脂製として具体化することができる。樹脂製においては、例えばPETやポリスチレンを適用することができ、また環境への配慮がなされた生分解性樹脂を適用することができる。生分解性樹脂の代表的なものとしては、ポリ乳酸やポリグリコール酸等を挙げることができ、その中でもポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸したものを好適に用いることができる。このような切断刃20の製造方法としては、ポリ乳酸系の樹脂組成物を2軸延伸して得たシートに対してプレス加工やレーザ切削等を施す方法が挙げられる。なお、上記樹脂以外の成分としては、無機充填剤、さらには熱安定剤、光安定剤、防水材、離型剤、顔料、染料等を含む構成であってもよい。
【0028】
図4〜図7は、それぞれ図3に示す切断刃20の右側半分について第一中央部21A、第二中央部21B、第三中央部21C及び端部22の平面構造を部分的に示す平面図である。
【0029】
図4に示されるように、第一中央部21Aにおける右側には、第1中央歯である3本の大歯31と、第2中央歯である4本の中歯32と、1本の小歯33とが設けられている。上記3本の大歯31は、そのうちの1本の歯先がV字の頂点に配置されており、他の2本が同頂点から第二中央部21Bへ向けて一定の間隔をおいて配置されている。上記4本の中歯32は、V字の頂点の近傍から第二中央部21Bへ向けて一定の間隔をおいて配置されており、V字の頂点に近い側(頂点側)の2本が大歯31の間を補うかたちで配置されている。これら大歯31の歯先と中歯32の歯先とは、大歯31の歯先と頂点とを結ぶ第一直線L1が中歯32から離間するかたちで配置されている。また上記1本の小歯33は、V字の頂点から遠い側(端点側)の2本の中歯32の間を補うかたちで配置されている。このような中歯32及び小歯33は、ラップフィルム12への歯先の刺し込みやラップフィルム12の切り開きを、第一中央部21Aから第二中央部21Bへ円滑に移行させる
ための歯として機能する。
【0030】
上述する大歯31、中歯32及び小歯33における一対の斜辺は、歯の内方に凹曲する円弧状に形成されており、対応する歯先において所定の角度である第一歯先角θaを形成する。こうした第一歯先角θaは、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度の範囲から選択されており、例えばラップフィルム12がポリ塩化ビニリデンからなる場合には30°〜90°が好ましく、さらには40°〜70°がより好ましい。第一歯先角θaが90°よりも大きくなる場合にあっては、ラップフィルム12への刺し込みに多大な負荷が必要となり、反対に第一歯先角θaが30°よりも小さくなる場合にあっては、歯自体の耐久性が損なわれてしまう。
【0031】
上述する大歯31、中歯32及び小歯33においては、それぞれ一対の歯底の間の軸方向Aの距離である大歯幅W1、中歯幅W2及び小歯幅W3が、上記第一歯先角θaと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、大歯幅W1>中歯幅W2>小歯幅W3を満たすかたちで形成されている。また上述する大歯31、中歯32及び小歯33においては、各歯底を結ぶ線と歯先との間における中心線CLに沿う距離である大歯高、中歯高及び小歯高が、それぞれ上記第一歯先角θaと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、大歯高>中歯高>小歯高を満たすかたちで形成されている。なお、本実施形態における第一歯先角θa、大歯幅W1、中歯幅W2、小歯幅W3、大歯高、中歯高及び小歯高は、それぞれ以下のように形成されている。
・第一歯先角θa:45°〜60°
・大歯幅W1:3.25mm
・中歯幅W2:2.49mm
・小歯幅W3:1.32mm
・大歯高:1.7mm
・中歯高:1.2mm
・小歯高:0.8mm
上述する大歯31及び中歯32の一対の斜辺においては、その頂点側の辺(図4の左辺)の曲率半径が、端点側の辺(図4の右辺)の曲率半径よりも短くなるように形成されている。こうした構成によれば、軸方向Aにおける大歯31及び中歯32の歯先の位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から頂点側へ偏倚するかたちになる。
【0032】
詳述すると、軸方向Aにおける大歯31の歯先の位置で前記大歯幅W1が二分されることにより頂点側大歯幅W1c及び端点側大歯幅W1eが得られ、頂点側大歯幅W1c<端点側大歯幅W1eを満たすかたちで大歯31の斜辺が形成されている。また軸方向Aにおける中歯32の歯先の位置で前記中歯幅W2が二分されることにより頂点側中歯幅W2c及び端点側中歯幅W2eが得られ、頂点側中歯幅W3c<端点側中歯幅W3eを満たすかたちで中歯32の斜辺が形成されている。さらに軸方向Aにおける小歯33の歯先の位置で前記小歯幅W3が二分されることにより頂点側小歯幅W3c及び端点側小歯幅W3eが得られ、頂点側小歯幅W3c<端点側小歯幅W3eを満たすかたちで小歯33の斜辺が形成されている。
【0033】
このような構成のもと、軸方向Aの中心位置から両端に向けてラップフィルム12が切断されるとき、第一中央部21Aにおける各歯先がラップフィルム12に向くかたちになり、第一中央部21Aの軸方向Aにおける中心位置から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。この際、相対的に大きいサイズの大歯31のみにより初期の刺し込みが実現される。それゆえ、初期の刺し込みに際して、ラップフィルム12に刺し込む歯の本数を少なくすることができ、ひいては初期の刺し込みに要求される負荷を小さくすることもできる。また相対的に小さいサイズの中歯32が大きいサイズの大
歯31の間に設けられるために、後続するラップフィルム12の切り開きを円滑に進めることもできる。そして、第一中央部21Aの各歯が更に深く刺し込まれることにより、第一中央部21Aの領域においてラップフィルム12が切り開かれる。
【0034】
なお、本実施形態の大歯31における斜辺の曲率半径である大歯左半径R1c及び大歯右半径R1e、中歯32における斜辺の曲率半径である中歯左半径R2c及び中歯右半径R2e、小歯33における斜辺の曲率半径である小歯左半径R3c及び小歯右半径R3eは、それぞれ以下のように形成されている。また上記頂点側大歯幅W1c、端点側大歯幅W1e、頂点側中歯幅W2c、端点側中歯幅W2e、頂点側小歯幅W3c及び端点側小歯幅W3eは、それぞれ以下のように形成されている。
・大歯左半径R1c/大歯右半径R1e:3.19mm/3.42mm
・中歯左半径R2c/中歯右半径R2e:2.08mm/2.31mm
・小歯左半径R3c/小歯右半径R3e:3.2mm/3.2mm
・頂点側大歯幅W1c/端点側大歯幅W1e:1.47mm/1.78mm
・頂点側中歯幅W2c/端点側中歯幅W2e:1.13mm/1.36mm
・頂点側小歯幅W3c/端点側小歯幅W3e:0.61mm/0.71mm
図5に示されるように、前記第二中央部21Bには複数の第二歯34が設けられており、これら複数の第二歯34は、ラップフィルム12への歯先の刺し込みやラップフィルム12の切り開きを、第一中央部21Aと第三中央部22Cとの間で円滑に移行させるための歯として機能する。
【0035】
第二歯34における一対の斜辺は、歯の内方に凹曲する円弧状に形成されており、対応する歯先において所定の角度である第二歯先角θbを形成する。こうした第二歯先角θbは、上記第一歯先角θaと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度の範囲から選択されている。各第二歯34においては、それぞれ一対の歯底の間の軸方向Aの距離である第二歯幅W4が、上記第二歯先角θbと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、中歯幅W2>第二歯幅W4>小歯幅W3を満たすかたちで形成されている。また各第二歯34においては、各歯底を結ぶ線と歯先との間における中心線CLに沿う距離である第二歯高が、上記第二歯先角θbと同じくラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、第二歯高≦中歯高を満たす長さで形成されている。なお、本実施形態における第二歯先角θb、第二歯幅W4及び第二歯高は、それぞれ以下のように形成されている。
・第二歯先角θb:60°
・第二歯幅W4:1.8mm
・第二歯高:1.2mm
上述する第二歯34の一対の斜辺においては、その頂点側の辺(図5の左辺)の曲率半径が、端点側の辺(図5の右辺)の曲率半径よりも短くなるように形成されている。こうした構成によれば、軸方向Aにおける第二歯34の歯先の位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から頂点側へ偏倚するかたちになる。また第二中央部21Bにおけるこうした歯先の偏倚量は、前記第一中央部21Aにおける歯先の偏倚量よりも小さくなるように構成されている。
【0036】
詳述すると、軸方向Aにおける第二歯34の歯先の位置で前記第二歯幅W4が二分されることにより頂点側第二歯幅W4c及び端点側第二歯幅W4eが得られ、頂点側第二歯幅W4c<端点側第二歯幅W4eを満たすかたちで第二歯34の斜辺が形成されている。また頂点側第二歯幅W4cに対する端点側第二歯幅W4eの比率が、頂点側第二歯幅W4c/端点側第二歯幅W4e>頂点側大歯幅W1c/端点側大歯幅W1e、頂点側中歯幅W2c/端点側中歯幅W2e、頂点側小歯幅W3c/端点側小歯幅W3eを満たすかたちで第二歯34の斜辺が形成されている。
【0037】
このような構成のもと、軸方向Aの中心位置から両端に向けてラップフィルム12が切断されるとき、第二中央部21Bにおける各歯先がラップフィルム12に向くかたちになり、第二中央部21Bにおける中心側から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて第二中央部21Bの各歯が更に深く刺し込まれることにより、第二中央部21Bの領域においてラップフィルム12が切り開かれる。
【0038】
これに対して、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12が切断されるときには、上記第一中央部21A及び第二中央部21Bにおける歯先の位置が端点側であるほど、同歯先がラップフィルム12に向くことになる。それゆえ第二中央部21Bの軸方向Aの端から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。
【0039】
なお、本実施形態の第二歯34における斜辺の曲率半径である第二歯左半径R4c及び第二歯右半径R4eはそれぞれ以下のように形成されている。また上記頂点側第二歯幅W4c及び端点側第二歯幅W4eはそれぞれ以下のように形成されている。
・第二歯左半径R4c/第二歯右半径R4e:5.5mm/7.38mm
・頂点側第二歯幅W4c/端点側第二歯幅W4e:0.88mm/0.92mm
図6に示されるように、前記第三中央部21Cには複数の第三歯35が設けられており、これら複数の第三歯35は、ラップフィルム12への歯先の刺し込みやラップフィルム12の切り開きを、第二中央部21Bと端部22との間で円滑に移行させるための歯として機能する。
【0040】
第三歯35における一対の斜辺は、歯の内方に凹曲する円弧状に形成されており、対応する歯先において所定の角度である第三歯先角θcを形成する。こうした第三歯先角θcは、上記第二歯先角θbと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度の範囲から選択されている。各第三歯35においては、それぞれ一対の歯底の間の軸方向Aの距離である第三歯幅W5が、上記第二歯先角θbと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、中歯幅W2>第三歯幅W5>第二歯幅W4を満たすかたちで形成されている。また各第三歯35においては、各歯底を結ぶ線と歯先との間における中心線CLに沿う距離である第三歯高が、上記第二歯先角θbと同じくラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、前記中歯高と同じ長さで形成されている。なお、本実施形態における第三歯先角θc、第三歯幅W5及び第三歯高は、それぞれ以下のように形成されている。
・第三歯先角θc:60°
・第三歯幅W5:1.85mm
・第三歯高:1.2mm
上述する第三歯35の一対の斜辺においては、その頂点側の辺(図6の左辺)の曲率半径が、端点側の辺(図6の右辺)の曲率半径よりも短く形成されている。こうした構成によれば、軸方向Aにおける第三歯35の歯先の位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から頂点側へ偏倚するかたちになる。また第三中央部21Cにおけるこうした歯先の偏倚量は、前記第二中央部21Bにおける歯先の偏倚量と略同じになるように構成されている。
【0041】
詳述すると、軸方向Aにおける第三歯35の歯先の位置で前記第三歯幅W5が二分されることにより頂点側第三歯幅W5c及び端点側第三歯幅W5eが得られ、頂点側第三歯幅W5c<端点側第三歯幅W5eを満たすかたちで第三歯35の斜辺が形成されている。また頂点側第三歯幅W5cに対する端点側第三歯幅W5eの比率が、前記頂点側第二歯幅W4cに対する端点側第二歯幅W4eの比率と略同じになるかたちで第三歯35の斜辺が形成されている。
【0042】
このような構成のもと、軸方向Aの中心位置から両端に向けてラップフィルム12が切
断されるとき、第三中央部21Cにおける各歯先がラップフィルム12に向くかたちになり、軸方向Aの中央から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて第三中央部21Cの各歯が更に深く刺し込まれることにより、第三中央部21Cの領域においてラップフィルム12が切り開かれる。
【0043】
これに対して、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12が切断されるときには、中央部21の全体において歯先の位置が端点側であるほど、同歯先がラップフィルム12に向くことになる。それゆえ中央部21の軸方向Aの端から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。
【0044】
なお、本実施形態の第三歯35における斜辺の曲率半径である第三歯左半径R5c及び第三歯右半径R5eはそれぞれ以下のように形成されている。また上記頂点側第三歯幅W5c及び端点側第三歯幅W5eは、それぞれ以下のように形成されている。
・第三歯左半径R5c/第三歯右半径R5e:5.1mm/6.57mm
・頂点側第三歯幅W5c/端点側第三歯幅W5e:0.9mm/0.95mm
図7に示されるように、前記端部22には複数の端部歯36が設けられており、これら複数の端部歯36は、ラップフィルム12への歯先の刺し込みやラップフィルム12の切り開きを端部22から円滑に開始させるための歯として機能する。
【0045】
端部歯36における一対の斜辺は、歯の内方に凹曲する円弧状に形成されており、対応する歯先において所定の角度である端歯先角θ22を形成する。こうした端歯先角θ22は、上記第一歯先角θaと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度の範囲から選択されている。各端部歯36においては、それぞれ一対の歯底の間の軸方向Aの距離である端歯幅W22が、上記第一歯先角θaと同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、上記第二歯幅W4と同じサイズで形成されている。また各端部歯36においては、各歯底を結ぶ線と歯先との間における中心線CLに沿う距離である端歯高は、上記第一歯先角θaと同じくラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、端歯高≧中歯高を満たす長さで形成されている。なお、本実施形態における端歯先角θ22、端歯幅W22及び端歯高は、それぞれ以下のように形成されている。
・端歯先角θ22:60°
・端歯幅W22:1.8mm
・端歯高:1.2mm
上述する端部歯36の一対の斜辺においては、その頂点側の辺(図7の左辺)の曲率半径が端点側の辺(図7の右辺)の曲率半径よりも長く形成されている。こうした構成によれば、軸方向Aにおける端部歯36の歯先の位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から端点側へ偏倚するかたちになる。
【0046】
詳述すると、軸方向Aにおける端部歯36の歯先の位置で前記端歯幅W22が二分されることにより頂点側端歯幅W22c及び端点側端歯幅W22eが得られ、頂点側端歯幅W22c>端点側端歯幅W22eを満たすかたちで端部歯36の斜辺が形成されている。また頂点側端歯幅W22cに対する端点側端歯幅W22eの比率が、頂点側端歯幅W22c/端点側端歯幅W22e>頂点側第三歯幅W5c/端点側第三歯幅W5eを満たすかたちで端部歯36の斜辺が形成されている。
【0047】
このような構成のもと、軸方向Aの中心位置から両端に向けてラップフィルム12が切断されるとき、端部22における各歯先がラップフィルム12に向いていないものの、しかし先行する上記中央部21の刺し込みによりラップフィルム12が脆弱化しているため、端部22おいて大きな抵抗感を与えることなく切断を進行させることができる。
【0048】
これに対して、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12が切断されるときには、端部22における各歯先がラップフィルム12に向くかたちになり、端部22の軸方向Aの端から順に、低い抵抗感の下で各歯先がラップフィルム12へ刺し込まれる。続いて端部22の各歯が更に深く刺し込まれることにより、端部22の領域においてラップフィルム12が切り開かれる。しかも、V字状の中央部21の両端から屈曲する直線状をなして端部22の歯先が配列されるため、こうした端部22の歯先がV字の延長線上に配列される場合に比べて、V字の頂点である大歯31の歯先よりも先行するかたちで、端部22の歯先がラップフィルム12に刺し込まれる。
【0049】
なお、本実施形態の端部歯36における斜辺の曲率半径である端歯左半径R22c及び端歯右半径R22eはそれぞれ以下のように形成されている。また上記頂点側端歯幅W22c及び端点側端歯幅W22eは、それぞれ以下のように形成されている。
・端歯左半径R22c/端歯右半径R22e:7.38mm/5.5mm
・頂点側端歯幅W22c/端点側端歯幅W22e:1.0mm/0.8mm
以上説明したように、上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0050】
(1)上記実施形態によれば、中央部21における歯先の配列がV字状をなすため、軸方向Aの中央から両端に向けてラップフィルム12が切断されるとき、切断刃20における軸方向Aの中心位置から順に、各歯先をラップフィルム12へ円滑に刺し込むことができる。これに対して、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12が切断されるときには、端部22における歯先が一対の歯底の中間位置から軸方向Aの外側にあるため、同端部22の歯先がラップフィルム12に向くことになり、切断刃20における軸方向Aの端から順に各歯先をラップフィルム12へ円滑に刺し込むことができる。それゆえ、包装物供給装置10を利用する利用者が切断刃20の構造を認知するか否かに拘わらず、同利用者が選択する切断方法に適した切断性を実現することができる。その結果、包装容器用の切断刃20の切断性を損なうことなく、その切断方法の選択範囲を拡張することができる。
【0051】
(2)上記実施形態によれば、端部22における一対の斜辺が歯の内方に凹曲するかたちで形成されるため、同斜辺のなす角度が歯先において鋭角的になり、こうした構成からなる包装容器用の切断刃20であれば、端部22を利用したラップフィルム12への刺し込みが一層円滑になる。
【0052】
(3)上記実施形態によれば、切断刃20における歯の位置が軸方向Aの外側(端点側)になるほど、同歯が有する歯先の位置が軸方向Aの外側になることから、端部22と中央部21との境界や中央部21の内部等、切断刃20の全体において切断性を円滑に実現することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のような態様で実施することもできる。
・上記実施形態においては、端部22における端部歯36が軸方向Aに沿って連続的に配列された構成を説明した。これを変更して、例えば図8に示されるように、端部22において隣接する端部歯36の間に軸方向Aに延びる平坦部37を設ける構成であってもよい。ラップフィルム12の切断面においてロールの周方向に延びる箇所がある場合には、このような箇所を端にしてラップフィルム12が同周方向に引裂かれ易くなる。こうした構成によれば、隣接する端部歯36の間に平坦部37がある分だけ、ラップフィルム12の切断面が軸方向に沿うかたちになり、ラップフィルム12における引き裂きが抑えられることになる。
【0054】
なお、このような平坦部37の領域が過剰に大きくなる場合にあっては、ラップフィルム12の切断時に、ラップフィルム12の引っ掛かり等の抵抗感を端部歯36の間で受け
ることになる。そのため上述する平坦部37は、このような抵抗感を受けない範囲で利用する構成が好ましい。
【0055】
・上記実施形態においては、端部歯36の歯先の軸方向Aにおける位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から端点側へ偏倚する構成を説明した。これを変更して、端部歯36の歯先の軸方向Aにおける位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置と同じ構成であってもよい。こうした構成であれ、ラップフィルム12の軸方向Aにおける一端から他端に向けて切断する態様でれば、端部歯36の歯先がラップフィルム12に向くことになり、切断刃20における軸方向Aの端から順に各歯先をラップフィルム12へ円滑に刺し込むことができる。
【0056】
・上記実施形態においては、端部22における端部歯36の歯幅や歯高を一定にする構成を説明した。これを変更して、中央部21の両端から軸方向Aの外側に延びる直線状になるかたちで端部歯36の歯先が配列されて、同歯先の軸方向Aにおける位置が、この歯先に対応する歯における一対の歯底の中間位置から軸方向Aの外側になる構成であれば、複数の異なる歯幅や歯高からなる端部歯36により端部22を構成してもよい。
【0057】
上述するような端部歯36の一例について図9を参照して以下に示す。図9は、上記実施形態で説明した図7に対応するものであり、この変更例における端部22の平面構造を部分的に示す平面図である。図9に示されるように、端部22は、大きさの異なる大小2種類の端部歯36である端部大歯36Bと端部小歯36Sとが軸方向Aに沿って交互に配列されてなる。端部大歯36B及び端部小歯36Sにおける一対の斜辺は、それぞれ歯の内方に凹曲する円弧状に形成されており、対応する歯先において所定の角度である端部大歯先角θ6b及び端部小歯先角θ6sを形成する。こうした端部大歯先角θ6b及び端部小歯先角θ6sは、上記実施形態と同じく、ラップフィルム12への刺し込みに適した角度の範囲から選択されており、例えばラップフィルム12がポリ塩化ビニリデンからなる場合には30°〜90°が好ましく、さらには40°〜70°がより好ましい。端部大歯36B及び端部小歯36Sにおいては、それぞれ一対の歯底の間の軸方向Aの距離である端部大歯幅W6B及び端部小歯幅W6Sが、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、端部大歯幅W6B>端部小歯幅W6Sを満たすかたちで形成されている。また上述する端部大歯36B及び端部小歯36Sにおいては、各歯底を結ぶ線と歯先との間における中心線CLに沿う距離である端部大歯高及び端部小歯高が、ラップフィルム12への刺し込みに適した範囲から選択されており、端部大歯高>端部小歯高を満たすかたちで形成されている。なお、本変更例における端部大歯先角θ6b、端部小歯先角θ6s、端部大歯幅W6B、端部小歯幅W6S、端部大歯高及び端部小歯高は、それぞれ以下のように形成されている。
・大歯先角θ6b:45°
・小歯先角θ6s:45°
・端部大歯幅W6B:3.26mm
・端部小歯幅W6S:2.5mm
・端部大歯高:1.7mm
・端部小歯高:1.2mm
上述する端部大歯36B及び端部小歯36Sの一対の斜辺においては、その頂点側の辺(図9の左辺)の曲率半径が、端点側の辺(図9の右辺)の曲率半径よりも長くなるように形成されている。こうした構成によって、上記実施形態と同じく、軸方向Aにおける端部大歯36B及び端部小歯36Sの歯先の位置が、同歯先に対応する一対の歯底の中間位置から端点側へ偏倚するかたちになる。
【0058】
詳述すると、軸方向Aにおける端部大歯36Bの歯先の位置で前記端部大歯幅W6Bが二分されることにより頂点側端部大歯幅W6Bc及び端点側端部大歯幅W6Beが得られ
、頂点側端部大歯幅W6Bc>端点側端部小歯幅W6Beを満たすかたちで端部大歯36Bの斜辺が形成されている。また軸方向Aにおける端部小歯36Sの歯先の位置で前記端部小歯幅W6Sが二分されることにより頂点側端部小歯幅W6Sc及び端点側端部小歯幅W6Seが得られ、頂点側端部小歯幅W6Sc>端点側端部小歯幅W6Seを満たすかたちで端部小歯36Sの斜辺が形成されている。
【0059】
なお、本変更例の端部大歯36Bにおける斜辺の曲率半径である端部大歯左半径R6Bc及び端部大歯右半径R6Be、端部小歯36Sにおける斜辺の曲率半径である端部小歯左半径R6Sc及び端部小歯右半径R6Seはそれぞれ以下のように形成されている。また上記頂点側端部大歯幅W6Bc、端点側端部大歯幅W6Be、頂点側端部小歯幅W6Sc、及び端点側端部小歯幅W6Seは、それぞれ以下のように形成されている。
・端部大歯左半径R6Bc:3.42mm
・端部大歯右半径R6Be:3.19mm
・端部小歯左半径R6Sc:2.31mm
・端部小歯右半径R6Se:2.08mm
・頂点側端部大歯幅W6Bc:1.9mm
・端点側端部大歯幅W6Be:1.36mm
・頂点側端部小歯幅W6Bc:1.44mm
・端点側端部小歯幅W6Be:1.05mm
上述するような構成によれば、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12を切断する態様において、相対的に大きいサイズの端部大歯36Bのみにより初期の刺し込みを実現することができる。それゆえ初期の刺し込みに際して、ラップフィルム12に刺し込む歯の本数を少なくすることができ、ひいては初期の刺し込みに要求される負荷を小さくすることもできる。また相対的に小さいサイズの端部小歯36Sが大きいサイズの端部大歯36Bの間に設けられるために、後続するラップフィルム12の切り開きを円滑に進めることもできる。
【0060】
なお、ラップフィルム12に対して歯を刺し込むための負荷は、一度に刺し込む歯の本数が多くなるほど大きくなり、一度に刺し込む歯の本数が少なくなるほど小さくなる。そのため端部22を構成する端部歯36の中に大歯を設けて、一度に刺し込む端部歯36の本数を少なくすることにより刺し込みに必要な負荷を小さくすることもできる。
【0061】
・上記実施形態においては、各歯における一対の斜辺が歯の内方に凹曲した円弧状をなす例を説明した。これを変更して、例えば各歯における斜辺が直線状をなす構成であってもよく、あるいは各歯における斜辺が歯の外方に凸曲した円弧状をなす構成であってもよい。
【0062】
・上記実施形態においては、切断刃20における中央部21が第一中央部21A、第二中央部21B及び第三中央部21Cを具備する構成を説明した。これを変更して、中央部21が第一中央部21Aのみからなる構成であってもよく、また第一中央部21A及び第二中央部21Bからなる構成であってもよい。
【0063】
・上記実施形態においては、包装物をラップフィルム12に具体化したが、これを変更して、包装物をアルミホイルや紙に具体化してもよい。
・上記実施形態においては、切断刃20における端部22の歯先が、中央部21の端から軸方向Aに沿った直線状をなす構成を説明した。これを変更して、中央部21の端を通り軸方向Aに沿って延びる直線を挟んで頂点の側に端部22を設ける構成であってもよい。すなわち切断刃20そのものをW字状に構成してもよい。
【0064】
このような切断刃20の一例について図10を参照して以下に示す。図10は、上記実
施形態にて説明した図3に対応するものであり、この変更例における切断刃20の平面構造を示す平面図である。図10に示されるように、中央部21を軸方向Aで挟む一対の端部22の歯先は、中央部21の両端から屈曲した直線状に配列されている。これら一対の端部22の歯先は、中央部21の両端を通って軸方向Aに延びる直線(一点鎖線:基準線LB)に対し、前記中央部21の頂点の側に延びる直線状に配列されている。これら一対の端部22は、中央部21の頂点を通って軸方向Aに延びる直線(一点鎖線:最大角度線LT)と前記基準線LBとの間に形成されている。端部22の各歯先を通る直線と前記基準線LBとのなす角度である端部傾斜角θeは、例えば8°で形成されている。この端部傾斜角θeは0°以上の角度であって、最も端点に近い端部22の歯先が前記最大角度線LT上にあるときに、その最大角度を構成する。
【0065】
こうした構成によれば、軸方向Aにおける一端から他端に向けてラップフィルム12を切断する際、端部傾斜角θeが大きくなる分だけ、端部22の歯先によるラップフィルム12への刺し込みが、中央部21による刺し込みよりも確実に先行するようになる。また軸方向Aにおける中央からラップフィルム12を切断する際には、端部歯36の歯先が最大角度線LTよりも頂点側へ突出しないため、中央部21の大歯31によるラップフィルム12への刺し込みが、端部22による刺し込みよりも確実に先行するようになる。それゆえ、ラップフィルム12の切断方法に関わらず、初期の刺し込みをより円滑にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態における包装容器の斜視構造を示す斜視図。
【図2】同じく、包装容器の蓋体における断面構造を示す部分断面図。
【図3】同じく、切断刃の平面構造を示す平面図。
【図4】同じく、切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【図5】同じく、切断刃における歯の平面構造を示す平面図
【図6】同じく、切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【図7】同じく、切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【図8】変更例の切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【図9】変更例の切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【図10】変更例の切断刃における歯の平面構造を示す平面図。
【符号の説明】
【0067】
A…軸方向、10…包装物供給装置、11…紙管、12…ラップフィルム、13…容器本体、14…蓋体、14a…先端縁、15…シーラント材、16…接着層、20…切断刃、21…中央部、21A…第一中央部、21B…第二中央部、21C…第三中央部、22…端部、31…大歯、32…中歯、33…小歯、34…第二歯、35…第三歯、36…端部歯、37…平坦部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装物が巻き回されたロールの軸方向に延びるように形成されて、前記軸方向おける中心位置が頂点になるV字状に配列された複数の歯先からなる中央部を有し、前記ロールが収容される包装容器に取り付けられることにより前記包装物を前記軸方向で切断可能にする包装容器用の切断刃であって、
前記中央部の前記軸方向外側には、同中央部の端から屈曲する直線状に配列された複数の歯先からなる一対の端部が設けられており、
前記一対の端部を構成する歯先が、該歯先に対応する歯における一対の歯底の中間位置を含んで該中間位置から前記軸方向の外側に位置することを特徴とする包装容器用の切断刃。
【請求項2】
前記中央部は、複数本の第1中央歯と、前記第1中央歯よりも小さい複数本の第2中央歯とを備え、
前記第1中央歯の一つの歯先が前記頂点に配置されて、他の前記第1中央歯が前記頂点を挟むように所定の間隔で配置されており、
前記第2中央歯が前記第1中央歯の間に配置されており、
前記第1中央歯の歯先と前記頂点とを結ぶ第一直線が前記第2中央歯から離間している
請求項1に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
前記端部を構成する歯が該歯の内方に凹曲した一対の斜辺を有する
請求項1又は2に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
前記端部における隣接する歯の間に前記軸方向に沿う平坦部を有する
請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項5】
前記軸方向における歯の位置が前記頂点から外側になるほど前記歯先の位置が前記中間位置に対し前記軸方向の外側になる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項6】
前記切断刃が非金属製である
請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項7】
包装物が巻き回されたロールを収容するための容器本体が該容器本体から引出された前記包装物を切断する切断刃を具備する包装容器であって、
前記切断刃が請求項1〜6のいずれか一項に記載の切断刃であることを特徴とする包装容器。
【請求項8】
包装物が巻き回されたロールと、
前記ロールが収容された包装容器と、
前記包装容器に設けられて該包装容器から引出された前記包装物を切断可能にする切断刃とを具備する包装物供給装置であって、
前記包装容器が請求項7に記載の包装容器であることを特徴とする包装物供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−120656(P2010−120656A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293836(P2008−293836)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】