説明

包装容器用の切断刃及びそれを有する包装容器

【課題】ラップフィルムを切断刃のV字の頂点部及び切断刃の一方の端部のどちらから切断しても切断性が良好で、切断時のフィーリング及び耐久性に優れた切断刃を提供する。
【解決手段】切断刃24は、V字頂点部を含む中央エリア28、その外側の一対の中間エリア29、その外側の一対の側部エリア30に区分される。中央エリア28は、歯高が最も高い複数の第1歯と、これより歯高が低い複数の第2歯とを有し、第1歯は頂点部に配置されるとともに、これを中心に所定の間隔で配置され、第2歯は第1歯間に配置される。第1歯の歯先を結ぶ第1直線、第2歯の歯先を結ぶ第2直線、第1歯と第2歯との歯元を結ぶ第3直線が平行で、第2直線は第1直線と第3直線との間に位置している。中間エリア29の中間歯の歯先は第2直線上又は第2直線と第3直線との間に位置している。側部エリア30の側部歯の歯先は、第2直線上又は第1直線と第2直線との間に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコアにロール状に巻かれたラップフィルムを収容するための包装容器、及び当該包装容器に用いられる切断刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の形式のラップフィルム用包装容器が知られている。その多くは厚紙製であり、ロール状に巻かれたラップフィルムを収納する容器本体と、この容器本体に一体的に設けられた蓋体とから構成される。そして、容器から引き出されたラップフィルムは、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた鋸歯状の切断刃によって切断される。
【0003】
このような切断刃としては、一般的に、切断性及び耐久性の観点から金属製のものが用いられているが、近年の環境問題及び使用者の安全性への配慮から、紙製や樹脂製の非金属製のものが検討されている。
【0004】
このような非金属製の切断刃は、金属製の切断刃ほどの良好な切断性を発揮することは難しく、特に伸縮性に富んだポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のラップフィルムの切断には大きな力を要するため、切断性を向上することが求められている。
【0005】
かかる要求に応えるため、様々な形状の切断刃が提案されている。例えば、直線状の形状の切断刃において、切断刃の両端部に歯先が外側に向いた歯を設けることによって、歯がラップフィルムに食い込みやすくしたもの(例えば、特許文献1,2)、切断刃の中央部が側部よりも容器の底辺に近づいているV字状の形状の切断刃において、V字の頂点部に大きめの歯を配置することによって切断当初のラップフィルムへの歯の食い込みを容易にしたもの(例えば、特許文献3,4)、当該V字状の形状とは逆に切断刃の側部エリアの方が中央部よりも突出している逆V字状の形状の切断刃において、その両端部に歯先が外側に向いた歯を備えるもの(例えば、特許文献5)等が提案されている。
【0006】
ところで、包装容器に備えられた切断刃によるラップフィルムの切断方法は、通常、切断刃の形状によって異なる。例えば、V字状の切断刃の場合は、包装容器に収容されたラップフィルムを引き出して、包装容器から所望量引き出されたラップフィルムをその中央部において突出した歯にあてがい、包装容器をひねって、ラップフィルムの中央部に歯を食い込ませて切断する。一方、直線状又は逆V字状の形状の切断刃の場合は、包装容器に収容されたラップフィルムを引き出して、包装容器から所望量引き出されたラップフィルムを切断刃の一方の端部にあてがい、ラップフィルムに端部の歯を食い込ませ、その後切断刃の該端部から反対側の端部に向かって切り開くようにラップフィルムを引っ張ることによって切断する。
【特許文献1】実開平6−20224号公報
【特許文献2】実開平11−151号公報
【特許文献3】登録実用新案第2547868号公報
【特許文献4】特開平5−178344号公報
【特許文献5】特開平8−40433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上述の種々の形状を有する切断刃によるラップフィルムの切断性、切れ味及び耐久性について検討した。その結果、特許文献1及び2のような従来の直線状の切断刃は、特許文献3及び4のような従来のV字状の切断刃に比べて、ラップフィルムを食い込ませた後のラップフィルムの切り開きが円滑に進みにくいことから、ラップフィルムの切断性が十分でないことが分かった。また、切断刃の端部に突出した歯を設けた特許文献5のような切断刃も、特許文献3及び4のような従来のV字状の切断刃に比べて、ラップフィルムを食い込ませた後のラップフィルムの切り開きが円滑に進みにくい傾向があり、且つ歯の耐久性に問題があることが分かった。
【0008】
しかしながら、本発明者らがさらに詳細に検討を行ったところ、以下に述べる通り、特許文献3及び4のような従来のV字状の形状の切断刃を用いた場合でも、その切断性が十分でないことが明らかになった。すなわち、ラップフィルムの包装容器には上述のような様々な形状の切断刃が用いられているものの、使用者は逐一切断刃の形状を確認して最適な切断方法を採用するとは限らず、V字状の切断刃を備えていても切断刃の端部から反対側の端部に向かってラップフィルムを切断しようとする場合が少なくない。このように、切断刃の端部から切断する切断方法によってラップフィルムを切断する場合に、上述した特許文献3及び4のような従来のV字状の形状を有する切断刃は、その切断性が十分ではないことが明らかになった。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ラップフィルムの切断を切断刃のV字の頂点部及び切断刃の一方の端部のどちらから行っても切断性が良好であり、且つ切断時のフィーリング及び耐久性に十分優れた切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の切断刃は、ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、当該切断刃は、
(a)V字の頂点部を含む中央エリア、V字の両端部の一つをそれぞれ含む一対の側部エリア、及び該一対の側部エリアと前記中央エリアとにそれぞれ挟まれる一対の中間エリアに区分され、
(b)前記中央エリアは、歯高が最も高く同一歯高である複数の第1歯と、これより歯高が低く同一歯高である複数の第2歯とを有しており、
(c)前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、他の第1歯が前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
(d)前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
(e)前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
(f)前記中間エリアは、複数の中間歯を有し、
(g)前記中間歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線との間に位置しており、
(h)前記側部エリアは、複数の側部歯を有し、
(i)前記側部歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第1直線と前記第2直線との間に位置する
ことを特徴としている。
【0011】
切断刃に上述の歯の構成を有する中央エリアを設けることで、切断刃のV字の頂点部を含む中央エリアからラップフィルムの切断を開始する場合に、媒体であるラップフィルム等の切断が、中央エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の中間エリア及び側部エリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。更には、「突き刺し」段階は、歯高が最も高い第1歯による突き刺し工程と、第1歯より歯高の低い第2歯による突き刺し工程の2工程に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は第1歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。また、第1歯のみでは第1歯間の谷部(歯元)の抵抗によりラップフィルムの突き刺しに力を要することとなるが、第1歯で突き刺した後には第2歯がラップフィルムを貫くことで、ラップフィルムの切断当初における「突き刺し」段階を一層容易にすることができる。その後、中間エリアに設けられる比較的歯高の低い中間歯によって「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を容易にすることができる。その後、側部エリアにおいてもラップフィルムが円滑に切り開かれてラップフィルムが切断される。一方、切断刃の側部エリアからラップフィルムの切断を開始する場合、媒体であるラップフィルム等の切断が、一方の側部エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の他のエリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。側部エリアの側部歯は、中間エリアの中間歯よりも歯高が高く突出しているため、切断当初にラップフィルムに接する歯は、切断刃端部側の数本の側部歯のみである。したがって、切断当初のラップフィルムの突き刺しに要する力は小さくてすむ。その後、一方の中間エリアに設けられる歯高の低い中間歯によって「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を容易にすることができる。続いて、中央エリア、他方の中間エリア及び他方の側部エリアにおいてもラップフィルムが円滑に切り開かれてラップフィルムが切断される。したがって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端部から開始する場合及びラップフィルムの中央部から開始する場合の双方において、ラップフィルムを容易にかつ円滑に切断することができる。なお、各歯の歯高は、隣り合う歯によって形成された谷の底部、すなわち歯元の複数を結ぶ第3直線と、当該歯の歯先との間の最短距離として測定することができる。
【0012】
また、複数の側部歯の少なくとも一つの歯先は、第1歯、第2歯及び中間歯の歯先よりも外側を向いていることが好ましい。すなわち、少なくとも一つの側部歯における切断刃の頂部側の斜辺が、切断刃の端部側の斜辺よりも長いことが好ましい。
【0013】
このように側部エリアにおける側部歯の歯先が第1歯、第2歯及び中間歯の歯先よりも外側を向いていることによって、ラップフィルムの端部すなわち切断刃の側部エリアからラップフィルムの切断を開始した場合に、ラップフィルムの突き刺しを一層容易にすることができる。また、切断刃のV字の頂点部を含む中央エリアからラップフィルムの切断を開始した場合にも、側部エリアで切り開く際にラップフィルムが一層引っ掛かり難くなり、「切り開き」段階におけるラップフィルムの切断を一層円滑にすることができる。
【0014】
また、側部歯の歯高は、第2歯と同じか又は第2歯よりも高く且つ第1歯よりも低いことが好ましい。
【0015】
側部エリアにこのような側部歯を備えることによって、切断刃の側部エリアからラップフィルムの切断を開始した場合に、ラップフィルムの突き刺しをより一層容易にすることができる。
【0016】
また、別の側面では、本発明の切断刃は、ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、当該切断刃は、
(a)V字の頂点部を含む中央エリア、V字の両端部の一つをそれぞれ含む一対の側部エリア、及び該一対の側部エリアと前記中央エリアとにそれぞれ挟まれる一対の中間エリアに区分され、
(b)前記中央エリアは、歯高が最も高く同一歯高である複数の第1歯と、これより歯高が低く同一歯高である複数の第2歯とを有しており、
(c)前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、他の第1歯が前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
(d)前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
(e)前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
(f)前記中間エリアは、複数の中間歯を有し、
(g)前記中間歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線との間に位置しており、
(h)前記側部エリアは、複数の側部歯を有し、
(j)前記側部歯の歯先は、前記複数の側部歯の少なくとも一つの歯先が、前記第1歯、前記第2歯及び前記中間歯の歯先よりも外側を向いていること
を特徴としている。
【0017】
切断刃に上述の歯の構成を有する中央エリアを設けることで、切断刃のV字の頂点部を含む中央エリアからラップフィルムの切断を開始する場合に、媒体であるラップフィルム等の切断が、中央エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の中間エリア及び側部エリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。更には、「突き刺し」段階は、歯高が最も高い第1歯による突き刺し工程と、第1歯より歯高の低い第2歯による突き刺し工程の2工程に分割される。切断当初、ラップフィルムに接する歯は第1歯のみであるため、突き刺しに要する力は小さくてすむ。また、第1歯のみでは第1歯間の谷部(歯元)の抵抗によりラップフィルムの突き刺しに力を要することとなるが、第1歯で突き刺した後には第2歯がラップフィルムを貫くことで、ラップフィルムの切断当初における「突き刺し」段階を一層容易にすることができる。その後、中間エリアに設けられる比較的歯高の低い中間歯によって「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を容易にすることができる。その後、側部エリアにおいてもラップフィルムが円滑に切り開かれてラップフィルムが切断される。側部エリアにおける側部歯の少なくとも一つの歯先は他の歯先よりも外側を向いているため、側部エリアで切り開く際にラップフィルムが一層引っ掛かり難くなり、「切り開き」段階におけるラップフィルムの切断を一層円滑にすることができる。一方、切断刃の側部エリアからラップフィルムの切断を開始する場合、媒体であるラップフィルム等の切断が、一方の側部エリアによる切断当初の「突き刺し」段階と、その後の他のエリアによる「切り開き」段階の2段階に分割される。側部エリアには、第1歯、第2歯及び中間歯の歯先よりも外側を向いている側部歯が備えられているため、切断当初のラップフィルムの突き刺しに要する力は小さくてすむ。その後、一方の中間エリアに設けられる歯高の低い中間歯によって「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行を容易にすることができる。続いて、中央エリア、他方の中間エリア及び他方の側部エリアにおいてもラップフィルムが円滑に切り開かれてラップフィルムが切断される。したがって、ラップフィルムの切断をラップフィルムの端部から開始する場合及びラップフィルムの中央部から開始する場合の双方において、ラップフィルムを容易にかつ円滑に切断することができる。なお、各歯の歯高は、隣り合う歯によって形成された谷の底部、すなわち歯元の複数を結ぶ第3直線と、当該歯の歯先との間の最短距離として測定することができる。
【0018】
また、中間エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の中間歯を有することが好ましい。
【0019】
中間エリアにこのような中間歯を設けることによって、ラップフィルムの切断における「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行時及び「切り開き」段階において、同時にラップフィルムと接する中間歯の本数を少なくすることができる。したがって、歯高が同一の複数の中間歯を備える場合よりも「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行がより円滑化されるとともに、より小さい力でラップフィルムを切り開き切断することが可能となる。
【0020】
また、中間歯の歯高は、第2歯と同じか又は第2歯よりも低いことが好ましい。
【0021】
中間エリアにこのような中間歯を設けることによって、ラップフィルム切断における「切り開き」段階において、一層優れたフィーリングでラップフィルムを切断することができる。
【0022】
また、第1歯、第2歯、中間歯及び側部歯の少なくとも一つにおける斜辺が内側に凹んだ円弧状となっていること、すなわち歯の形状をいわゆる銀杏の葉の形状とすることが好適である。
【0023】
かかる形状にすれば、切断性を確保するため歯先角度を鋭角にしつつ、歯間ピッチを広げることが可能となる。これにより、切断刃の長手方向における一定の長さ範囲に属する歯の本数を増やさずに済み、ラップフィルムの突き刺しに要する力が大きくなるのを抑制することができる。また、末端ほど幅が広くなるため、歯の耐久性向上の効果も得られる。
【0024】
本発明の切断刃は、これを包装容器に接着すれば、切断性に優れた包装容器を提供できる。なお、本発明の切断刃は、変性ポリエチレン樹脂を介して包装容器の前面壁の裏面に取り付けられることが好ましい。これによって、切断刃を十分な強度で包装容器に確実に固定することができる。変性ポリエチレン樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン樹脂を主成分とするアイオノマー等が挙げられる。これらのうち、特にエチレンメタクリル酸共重合体が好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ラップフィルムの切断を切断刃のV字の頂点部及び切断刃の一方の端部のどちらから行っても切断性が良好であり、且つ切断時のフィーリング及び耐久性に十分優れた切断刃、及びかかる切断刃を備える包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第一の実施形態]
図1は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。この包装容器10は、1枚の厚紙、好ましくはコートボール紙から作られている。図1に示すように、包装容器10は、円筒状の紙管12にロール状に巻き付けられたラップフィルム14を収納するための容器本体16と、この容器本体16に一体的に設けられた蓋体18とから構成されている。閉蓋時、この包装容器10の全体形状は略直方体形状をなす。なお、本実施形態では、ラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとする。
【0027】
容器本体16の上部は、ラップフィルム14を引き出すための開口部として開放されている。また、蓋体18は、容器本体16の後面壁の頂縁20から連続して延びている。従って、蓋体18は容器本体16に対して回動可能であり、容器本体16の開口部を覆うことができるよう構成されている。
【0028】
蓋体18の前面壁22の先端縁はV字状をなし、その形状に合わせて切断刃24もV字状のものが用いられている。本実施形態に係る切断刃24は、V字の頂点部を含む中央エリア28と、その両側にそれぞれ配置される一対の中間エリア29と、その中間エリア29の中央エリア28側とは反対側にそれぞれ配置される一対の側部エリア30との五つのエリアに区分されている。以下に、本実施形態に係る切断刃24について更に詳細に説明する。
【0029】
図2は、本発明の第一の実施形態にかかる切断刃の中央部の一部拡大図である。本実施形態に係る切断刃24は、V字の頂点を通る中心線(図2の符号CL)を中心として左右対称となっており、中央エリア28と、その両側に配置される中間エリア29とを備える。
【0030】
本実施形態に係る中央エリア28は、図2に明示するように、15本の歯35,36,38から構成される。中央エリア28における歯は、小さい歯高の歯(以下、「小歯」と称する)35、小歯35よりも歯高の高い歯(第2歯:以下「中歯」と称する)36、及び、中歯36よりも更に歯高の高い歯(第1歯:以下「大歯」と称する)38の3種類となっている。なお、以下の説明では、中歯及び大歯の参照符号36,38に、適宜、アルファベットの添え字を付す。なお、歯の歯高は、歯元を結ぶ直線(第3直線)L3と当該歯の頂点との最短距離として計測することができる。
【0031】
大歯38の1本(38a)は、切断刃24のV字の頂点部(中央エリア28の長手方向中心)に位置し、他の大歯38b,38cは中央の大歯38aを中心にして左右に2本ずつ、一定の間隔で配置されている。中央の第1番目の大歯38aの歯先と、左右各側にある第2番目と第3番目の大歯38b,38cの歯先とは、直線で結ぶことができ、左右各側のこの直線(第1直線)L1は、中央エリア28の左右各側にある中歯36の歯先よりも前側(図1の蓋体前面壁22の先端縁から離れる側)に位置している。すなわち、中歯36の歯先は、歯元を結ぶ直線(第3直線)L3と直線L1との間に位置している。
【0032】
また、中央エリア28における中歯36は、左右各側に4本ずつ、計8本、配置されている。中央側の4本の中歯36a,36bは大歯38a,38b,38c間に一定の間隔で配置されており、同間隔で他の4本の中歯36c,36dが第3番目の大歯38cの外側に配置されている。左右各側の中歯36a、36b、36c及び36dの歯先は直線(第2直線)L2で結ぶことができ、左右各側のこの直線L2は、前記直線L1と実質的に平行であり、且つ、前記直線L1よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L2は、直線L1と直線L3との間に位置している。
【0033】
中間エリア29には、切断刃24の長手方向に歯高の異なる大小2種の中間歯31,32が交互に設けられている。中間歯32より歯高の低い中間歯(以下、「中間第1歯」と称する。)31は、中央エリア28における小歯35と同じ歯高であり、中間第1歯31より歯高の高い中間歯(以下、「中間第2歯」と称する。)32は中央エリア28における中歯36と同じ歯高である。そして、中央エリア28の中歯36の歯先を結ぶ直線L2が、中間エリア29の中間第2歯32の歯先を通っている。また、中央エリア28の小歯35の歯先と中間エリア29の中間第1歯31の歯先とを結ぶ直線(第4直線)L4は、中央エリア28の大歯38の歯先を結ぶ直線L1及び前記直線L2と実質的に平行であり、且つ、前記直線L2よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L4は、直線L2と直線L3との間に位置している。このように、中間エリア29の中間歯31,32の歯先を、それぞれ直線L1及びL2と同一直線上又は平行な直線上に配置することによって、ラップフィルムの切り開きを一層円滑にすることができる。
【0034】
図3は、本発明の第一の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。本実施形態に係る切断刃24は、中間エリア29の中央エリア28側とは反対側に側部エリア30を備える。図3には、切断刃24の端部を明示していないが、切断歯24は、その端部まで図3同様に歯39が形成されている。なお、本実施形態の切断刃24は、他方の側部エリア30にも図3と同様の歯を備える。
【0035】
側部エリア30には、歯先が外側に向いた側部歯39が設けられている。側部歯39の歯先は直線(第5直線)L5で結ぶことができ、左右各側のこの直線L5は中間エリア29の中間第2歯32の歯先を結ぶ直線L2及び中間第1歯31の頂点を結ぶ直線L4と実質的に平行であり、且つ前記直線L2及びL4よりも前側(図1の蓋体前面壁22の先端縁から離れる側)に位置している。また、側部歯39の歯先を結ぶ直線L5は、中央エリア28の大歯38の歯先を結ぶ直線L1よりも後側(蓋体前面壁22の先端縁に近い側)に位置している。すなわち、直線L5は、直線L1と直線L2との間に位置している。なお、側部歯39の歯先は、直線L2上に位置していてもよい。このように、側部エリア30の側部歯39の歯先を、直線L2及びL4と平行な直線上に配置することによって、ラップフィルムの切り開きを一層円滑にすることができる。
【0036】
各歯の歯先の向きは、歯の両側における歯元間の中点と当該歯の歯先とを結ぶ直線の向きを基準として求めることができる。側部歯39における当該直線(K1)は、切断刃24前方(突出方向)において、中間歯31,32の当該直線(K2)よりも切断刃の中心線CL(図2)から離れる方向に伸びているため、側部歯39の歯先は中間第1歯31及び中間第2歯32の歯先よりも外側に向いている。
【0037】
本実施形態にかかる切断刃24において、小歯35、中歯36、大歯38、中間第1歯31及び中間第2歯32のそれぞれの歯先角度α(図2及び図3)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜38自体の耐久性を損なう傾向があるからである。一方、側部歯39の歯先角度βも、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度βは20°〜60°の範囲が好ましく、20°〜40°がより好ましい。60°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、20°よりも小さいと、側部歯39自体の耐久性を損なう傾向があるからである。
【0038】
なお、側部歯39では、切断刃24の中心線CL(図2)に平行で側部歯39の外側(切断刃の端部側)の歯元を通る直線と、側部歯39の外側(切断刃の端部側)の斜辺とのなす角度γ(図3)が2〜20°であることが好ましい。これによって、側部歯39がラップフィルムの突き刺しに用いられる場合と、ラップフィルムの切り開きに用いられる場合の双方における切断性をより高水準で両立させることが可能となる。
【0039】
また、小歯35、中歯36、大歯38、中間第1歯31及び中間第2歯32それぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。また、側部歯39の形状は、三角形の斜辺が直線であってもよいが、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度α及びβを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、斜辺を直線状とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0040】
次に、本実施形態にかかる切断刃24を有する包装容器10を用いてラップフィルム14を切断する方法について、図面を参照しながら説明する。ラップフィルム14を切断する方法としては、図1及び図4に示す二つの切断方法が挙げられる。図1及び図4は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。図1及び図4に示す包装容器10は、双方ともに図2及び図3に示す歯の構成を有する切断刃24を具備する。
【0041】
一方の切断方法(図1に示す方法)は、切断刃24のV字の頂点部を含む中央エリア28でまずラップフィルム14を突き刺して、その後、両側の中間エリア29及び両側の側部エリア30の順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法1」という。)である。他方の切断方法(図4に示す方法)は、切断刃24の一方の側部エリア30aでまずラップフィルム14を突き刺して、その後、該側部エリア30aに隣接する一方の中間エリア29a、中央エリア28、他方の中間エリア29b及び他方の側部エリア30bの順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法2」という。)である。
【0042】
切断方法1では、まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端中央部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0043】
この際、最初に切断刃24の頂点部にある第1番目の大歯38aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す(図2)。また、ほぼ同時に、第2番目の大歯38b、更には第3番目の大歯38cがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチが大きく歯高の最も高い5本の大歯38のみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各大歯38がラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の概略5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。従来の如く、歯先角度を小さくし、歯間ピッチを小さくしたものでは、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなり、使用のフィーリングも損なうものであったが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0044】
続いて、ラップフィルム14には中歯36が接し、これらの中歯36によりラップフィルム14が貫かれる。ここで、仮に中歯36がないと仮定すると、大歯38間のピッチが広いため、歯38間の谷部(歯間)が抵抗となってラップフィルム14の切り開きに大きな力を要することになる。しかしながら、本実施形態では、大歯38によるラップフィルム14の突き刺しに引き続いて中歯36が大歯38間のラップフィルム14を貫くことになるため、ラップフィルム14の突き刺しが円滑化される。なお、ラップフィルム14に同時に接する中歯36の数は最大8本であるが、実際に同時にラップフィルム14に接する中歯36の数は8本よりも少なく、また大歯38によってもラップフィルム14の突き刺しが行われて周辺部が脆弱化しているため、中歯36による突き刺しに要する力は大歯38による突き刺し時に比して更に小さなものとなる。このようにして、大歯38による第1段階の切断から中歯による第2段階の切断も、使用者に抵抗感を与えることなく、円滑に行われることとなる。
【0045】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、中央エリア28の小歯35が、第3番目と第4番目の中歯36c,36d間のラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが中間エリア29へと進んでいく。ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア29及び側部歯39からなる側部エリア30においても(図3)円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0046】
切断方法2では、まず、図4に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の側部側の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手で容器を固定しつつ、他方の手でラップフィルム14を上方向、すなわち矢印B方向に引き上げて、ラップフィルム14の一方の端部を切断刃24の一方の側部エリア30aに押し当てる。
【0047】
更にラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、側部エリア30aに属し、切断刃24の端部に設けられる数本の側部歯39がラップフィルム14を突き刺す(図3)。これとほぼ同時に側部エリア30aの中間エリア29a側に設けられる数本の側部歯39にラップフィルム14が接する。更に、ラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、これらの側部歯39によりラップフィルム14が貫かれる。なお、矢印B方向にラップフィルム14を引き上げる際、通常は若干手前側(使用者側)にラップフィルム14は引っ張られることとなるが、側部歯39の歯先は、他の歯31〜38よりも外側に向いているため、ラップフィルム14の引張り方向と歯先方向とを一致させることが可能となり、一層容易にラップフィルム14を突き刺すことができる。
【0048】
更に、ラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、ラップフィルム14の切断は「突き刺し」段階から「切り開き」段階に移行する。すなわち、側部歯39によって十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、側部歯39よりも歯高の低い中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア29によって、円滑にラップフィルム14が切り開かれる。続いて、中央エリア28、中間エリア29b及び側部エリア30bにおいても円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0049】
本実施形態にかかる切断刃24を用いれば、ラップフィルム14を切断する際、格別に大きな力は必要なく、これは、各歯31,32,35,36,38の歯先角度α及び側部歯39の歯先角度βを過度に小さくする必要性を減らすものであり、ひいては各歯31,32,35,36,38,39の耐久性を向上させることにもなる。
【0050】
切断刃24に備えられる各歯の本数は、切断刃24の長手方向の長さと歯間ピッチに応じて適宜調整することが可能である。ただし、切断方法1において、ラップフィルムの突き刺しを一層容易にする観点から、中央エリア28に属する歯の総数は5〜31本とすることが好ましく、7〜25本とすることがより好ましく、9〜19本とすることがさらに好ましい。また、切断方法1及び2において、ラップフィルムの切り開きを一層円滑にする観点から、一方の中間エリア29に属する歯の総数は10〜100本とすることが好ましく、20〜90本とすることがより好ましく、40〜60本とすることがさらに好ましい。また、切断方法2において、ラップフィルムへの歯の突き刺しを一層容易にする観点から、一方の側部エリア30に属する歯の総数は1〜150本とすることが好ましく、5〜100本とすることがより好ましく、10〜50本とすることがさらに好ましい。側部エリア30に属する歯の総数が過剰になると、結果として切断刃24における側部エリア30の領域が相対的に大きくなり、切断方法1によってラップフィルムを切断する際の良好な切断性が損なわれる傾向がある。
【0051】
なお、大歯38及び中歯36又は側部歯39の歯高(突出量)を過度に大きくした場合、切断刃24の固定部からの距離、すなわち蓋体前面壁22の先端縁からの距離が長くなり、耐久性が損なわれる恐れがある。また、歯高が大きければ、包装容器10を使用する者の手を傷つける恐れもある。このため、切断性、耐久性及び安全性の面から、例えば、中央エリア28の大歯38の歯高H1は、好ましくは1.0〜4.0mm、より好ましくは1.2〜3.5mm、さらに好ましくは1.2〜2.5mm、中歯36の歯高H2は、好ましくは0.8〜2.0mm、より好ましくは0.9〜1.5mm、小歯35の歯高H3は、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mmとするのがよい。
【0052】
また、中央エリア28の歯間ピッチは、大歯38間が好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは3.5〜7.0mm、さらに好ましくは4.0〜6.0mm、中歯36間も好ましくは3.0〜9.0mm、より好ましくは3.5〜7.0mm、さらに好ましくは4.0〜6.0mmとするのがよい。歯間ピッチが9.0mmを超えた場合には、切断方法1におけるラップフィルム14の「突き刺し」段階において大歯38間の谷部(歯元)にフィルム14が引っかかって切断に支障が生じる傾向がある。一方、歯間ピッチが3.0mmよりも狭い場合には、中央エリア28に設けられる歯の本数が増加し、その結果、突き刺しに必要な力が大きくなって、良好な切断性が損なわれる傾向がある。
【0053】
中間エリア29の中間第2歯32の歯高H2は、好ましくは0.8〜2.0mm、より好ましくは0.9〜1.5mmとするのがよい。中間エリア29の中間第1歯31の歯高H3は、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mmとするのがよい。また、中間第1歯31間の歯間ピッチ及び中間第2歯32間の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.5mm、より好ましくは1.5〜3.0mmとするのがよい。
【0054】
側部エリア30の側部歯39の歯高H4は、好ましくは0.8〜3.5mm、より好ましくは0.9〜2.0mm、さらに好ましくは1.0〜1.5mmとするのがよい。また、側部歯39の歯間ピッチは、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは0.7〜2.5mmとするのがよい。
【0055】
[第二の実施形態]
図5は、本発明の第二の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。図5の切断刃24aは、側部エリア30に側部歯33及び34を備える点で、上記実施形態の切断刃24と異なっている。すなわち、切断刃24aは中央エリア(図示しない)及び中間エリア29に上記実施形態の切断刃24と同様の歯の構成を備える(図2)。なお、切断刃24aは他方の側部エリア及び中間エリアにも図5と同様の歯の構成を備える。
【0056】
本実施形態の切断刃24aの側部エリア30には、中間エリア29の中間第1歯31と形状及び歯高が同一の側部小歯33と、歯先が外側に向いた側部大歯34が交互に設けられている。側部大歯34の歯先は、中央エリア28の中歯36の歯先及び中間エリア29の中間第2歯32の歯先を結ぶ直線L2上に位置している。また、側部小歯33の歯先は、中間エリア29の中間第1歯31の歯先を結ぶ直線L4上に位置している。
【0057】
側部小歯33は、中間第1歯31及び中間第2歯32の歯先角度αと同等の歯先角度を有する。側部小歯33の形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状とすることが好適である。これによって、歯先角度αを、ある程度鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させることができる。また、かかる形状とした場合、斜辺を直線状とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0058】
各歯の歯先の向きは、歯の両側における歯元間の中点と当該歯の歯先とを結ぶ直線の向きを基準として求めることができる。側部大歯34における当該直線(K3)は、切断刃24a前方(突出方向)において、中間歯31,32の当該直線(K2)よりも切断刃の中心線CL(図2)から離れる方向に伸びているため、側部大歯34の歯先は、中間歯31,32及び側部小歯33の歯先よりも外側に向いている。
【0059】
本実施形態にかかる切断刃24aにおいて、小歯35、中歯36、大歯38、中間第1歯31及び中間第2歯32のそれぞれの歯先角度α(図2及び図5)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜38自体の耐久性を損なう傾向があるからである。一方、側部大歯34の歯先角度βも、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度βは20°〜60°の範囲が好ましく、20°〜40°がより好ましい。60°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、20°よりも小さいと、側部大歯34自体の耐久性を損なう傾向があるからである。
【0060】
なお、側部大歯34では、切断刃の中心線CL(図2)に平行で側部大歯34の外側(切断刃の端部側)の歯元を通る直線と、側部歯39の外側(切断刃の端部側)の斜辺とのなす角度γ(図5)が2〜20°であることが好ましい。これによって、側部大歯34がラップフィルムの突き刺しに用いられる場合と、ラップフィルムの切り開きに用いられる場合の双方における切断性をより高水準で両立させることが可能となる。
【0061】
側部大歯34の形状は、三角形の各辺が直線状のものよりも、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度βを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、斜辺を直線状とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0062】
次に、本実施形態にかかる切断刃24aを有する包装容器を用いてラップフィルム14を切断する方法について、図面を参照しながら説明する。ラップフィルム14を切断する方法としては、図1及び図4に示す二つの切断方法が挙げられる。図1及び図4は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。図1及び図4に示す包装容器10は、双方ともに図2及び図5に示す歯の構成を有する切断刃24aを具備する。
【0063】
一方の切断方法(図1に示す方法)は、切断刃24aのV字の頂点部を含む中央エリア28でまずラップフィルム14を突き刺して、その後、両側の中間エリア29及び両側の側部エリア30の順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法1」という。)である。他方の切断方法(図4に示す方法)は、切断刃24aの一方の側部エリア30aでまずラップフィルム14を突き刺して、その後、該側部エリア30aに隣接する一方の中間エリア29a、中央エリア28、他方の中間エリア29b及び他方の側部エリア30bの順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法2」という。)である。
【0064】
切断方法1では、まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端中央部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0065】
この際、最初に切断刃24aの頂点部にある第1番目の大歯38aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す(図2)。また、ほぼ同時に、第2番目の大歯38b、更には第3番目の大歯38cがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチが大きく歯高の最も高い5本の大歯38のみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各大歯38がラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の概略5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。従来の如く、歯先角度を小さくし、歯間ピッチを小さくしたものでは、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなり、使用のフィーリングも損なうものであったが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0066】
続いて、ラップフィルム14には中歯36が接し、これらの中歯36によりラップフィルム14が貫かれる。ここで、仮に中歯36がないと仮定すると、大歯38間のピッチが広いため、歯38間の谷部(歯間)が抵抗となってラップフィルム14の切り開きに大きな力を要することになる。しかしながら、本実施形態では、大歯38によるラップフィルム14の突き刺しに引き続いて中歯36が大歯38間のラップフィルム14を貫くことになるため、ラップフィルム14の突き刺しが円滑化される。なお、ラップフィルム14に同時に接する中歯36の数は最大8本であるが、実際に同時にラップフィルム14に接する中歯36の数は8本よりも少なく、また大歯38によってもラップフィルム14の突き刺しが行われて周辺部が脆弱化しているため、中歯36による突き刺しに要する力は大歯38による突き刺し時に比して更に小さなものとなる。このようにして、大歯38による第1段階の切断から中歯による第2段階の切断も、使用者に抵抗感を与えることなく、円滑に行われることとなる。
【0067】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、中央エリア28の小歯35が、第3番目と第4番目の中歯36c,36d間のラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが中間エリア29へと進んでいく。ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア29及び側部歯33,34からなる側部エリア30においても(図5)円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0068】
切断方法2では、図4に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の側部側の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手で容器を固定しつつ、他方の手でラップフィルム14を上方向、すなわち矢印B方向に引き上げて、ラップフィルム14の一方の端部を切断刃24aの一方の側部エリア30aに押し当てる。
【0069】
この切断方法2において、切断当初にラップフィルム14に接触するのは、切断刃24aの端部に備えられる複数の側部大歯34のみである。このように、側部エリアに同一歯高のみを有する切断刃に比べて、切断当初にラップフィルムに接する歯の本数を少なくすることができ、ラップフィルムを容易に突き刺すことが可能となる。
【0070】
更にラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、側部エリア30に属し、切断刃24aの端部に設けられる歯高の高い数本の側部大歯34がラップフィルム14を突き刺す(図5)。側部大歯34の歯先は、他の歯31〜38よりも外側に向いているため、ラップフィルム14の引張り方向と歯先方向とを一致させることが可能となり、一層容易にラップフィルム14を突き刺すことができる。更にラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、図4の中間エリア29a側に設けられる数本の側部大歯34がラップフィルム14に接し、ラップフィルム14を突き刺す。これによって、十分な大きさの初期突き出し部が形成される。
【0071】
更に、ラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、ラップフィルム14の切断は「突き刺し」段階から「切り開き」段階に移行する。すなわち、側部大歯34によって十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア24によって、円滑にラップフィルム14が切り開かれる。続いて、中央エリア28、中間エリア29b及び側部エリア30bにおいても円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0072】
すなわち、切断刃24aの場合、切断刃24aのV字の頂点部及び切断刃24aの一方の端部のいずれからでも、ラップフィルムを容易に切断することができ、切断時のフィーリングも良好である。
【0073】
切断刃24aの中央エリア28、中間エリア29aにおける好適な歯の総数、歯の歯高及び歯間ピッチは上記第一実施形態と同じである。一方の側部エリア30aに属する歯の総数は1〜150本とすることが好ましく、5〜100本とすることがより好ましく、10〜50本とすることがさらに好ましい。側部エリア30aに属する歯の総数が過剰になると、結果として切断刃24aにおける側部エリア30aの領域が大きくなり、切断方法1によってラップフィルムを切断する際の良好な切断性が損なわれる傾向がある。
【0074】
側部エリア30aの側部大歯34の歯高H2は、好ましくは0.8〜2.0mm、より好ましくは0.9〜1.5mm、側部小歯33の歯高H3は、好ましくは0.4〜1.5mm、より好ましくは0.5〜1.0mmとするのがよい。また、側部大歯34間の歯間ピッチ及び側部小歯33間の歯間ピッチは、好ましくは1.0〜3.5mm、より好ましくは1.5〜3.0mmとするのがよい。
【0075】
[第三の実施形態]
図6は、本発明の第三の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。図6の切断刃24bは、側部エリア30に側部歯40を備える点で、第一の実施形態の切断刃24と異なっている。すなわち、切断刃24bは中央エリア(図示しない)及び中間エリア29に上記実施形態の切断刃24と同様の歯の構成を備える。なお、切断刃24aは他方の側部エリア及び中間エリアにも図6と同様の歯の構成を備える。
【0076】
本実施形態の切断刃24bの側部エリア30に備えられる側部歯40は、中間エリア29に属する中間第1歯31及び中間第2歯32と同様の形状を有している。側部歯40の歯先を結ぶ直線L5は、中央エリアの大歯を結ぶ直線L1と中央エリアの中歯を結ぶ直線L2との間に位置している。このような側部歯40を備えていても、本発明の効果を得ることが可能である。すなわち、切断刃24bのV字の頂点部及び切断刃24bの一方の端部のいずれからでも、ラップフィルムを容易に切断することができ、切断時のフィーリングも良好である。また、側部歯40を備える切断刃24bは一層耐久性に優れる。
【0077】
側部歯40は、中間第1歯31及び中間第2歯32の歯先角度αと同等の歯先角度を有する。側部歯40の形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状とすることが好適である。これによって、歯先角度αを、ある程度鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させることができる。また、かかる形状とした場合、斜辺を直線状とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0078】
本実施形態にかかる切断刃24bにおいて、小歯35、中歯36、大歯38、中間第1歯31、中間第2歯32及び側部歯40のそれぞれの歯先角度α(図2及び図6)は、ラップフィルム14の突き刺しに適した角度とされている。ラップフィルム14がポリ塩化ビニリデンからなる本実施形態では、歯先角度αは30°〜90°の範囲が好ましく、40°〜70°がより好ましい。90°よりも大きいと、ラップフィルム14を突き刺すのに多大な力が必要となり、30°よりも小さいと、歯31〜40自体の耐久性を損なう傾向があるからである。
【0079】
また、小歯35、中歯36、大歯38、中間第1歯31及び中間第2歯32、並びに側部歯40のそれぞれの形状は、単純な二等辺三角形状であってもよいが、本実施形態では、斜辺の少なくとも一つが内側に凹んだ円弧状になっている末広がり形状ないしは銀杏の葉の形状とすることが好適である。歯先角度αを、前述の鋭角に保持しつつ、耐久性を向上させるためである。また、かかる形状とした場合、斜辺を直線状とした場合よりも、同一長さ範囲内では、歯の本数を少なくすることができ、切断に要する力の軽減に寄与している。
【0080】
次に、本実施形態にかかる切断刃24bを有する包装容器を用いてラップフィルム14を切断する方法について、図面を参照しながら説明する。ラップフィルム14を切断する方法としては、図1及び図4に示す二つの切断方法が挙げられる。図1及び図4は、本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。図1及び図4に示す包装容器10は、双方ともに図2及び図6に示す歯の構成を有する切断刃24bを具備する。
【0081】
一方の切断方法(図1に示す方法)は、切断刃24bのV字の頂点部を含む中央エリア28でまずラップフィルム14を突き刺して、その後、両側の中間エリア29及び両側の側部エリア30の順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法1」という。)である。他方の切断方法(図4に示す方法)は、切断刃24bの一方の側部エリア30aでまずラップフィルム14を突き刺して、その後、該側部エリア30aに隣接する一方の中間エリア29a、中央エリア28、他方の中間エリア29b及び他方の側部エリア30bの順で、突き刺したラップフィルム14を切り開く方法(以下、便宜的に「切断方法2」という。)である。
【0082】
切断方法1では、まず、図1に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の先端中央部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手の親指を蓋体前面壁22の中央部にあてがい、包装容器10を前側、すなわち矢印Aの方向にひねる。
【0083】
この際、最初に切断刃24bの頂点部にある第1番目の大歯38aがラップフィルム14に接触し、これを突き刺す(図2)。また、ほぼ同時に、第2番目の大歯38b、更には第3番目の大歯38cがラップフィルム14に接し、これを突き刺す。このように、最初にラップフィルム14に接するのは、歯間ピッチが大きく歯高の最も高い5本の大歯38のみであるため、切断当初に包装容器10をひねる力は小さなものですむ。すなわち、各大歯38がラップフィルム14を突き刺すために必要な最小限の力は一定であるため、その力の概略5倍のみの力が包装容器10をひねる最小の力となる。従来の如く、歯先角度を小さくし、歯間ピッチを小さくしたものでは、ラップフィルム14に接する歯の本数が多数となるため、包装容器10に加える力は必然的に大きなものとなり、使用のフィーリングも損なうものであったが、本実施形態ではそのような問題はない。
【0084】
続いて、ラップフィルム14には中歯36が接し、これらの中歯36によりラップフィルム14が貫かれる。ここで、仮に中歯36がないと仮定すると、大歯38間のピッチが広いため、歯38間の谷部(歯間)が抵抗となってラップフィルム14の切り開きに大きな力を要することになる。しかしながら、本実施形態では、大歯38によるラップフィルム14の突き刺しに引き続いて中歯36が大歯38間のラップフィルム14を貫くことになるため、ラップフィルム14の突き刺しが円滑化される。なお、ラップフィルム14に同時に接する中歯36の数は最大8本であるが、実際に同時にラップフィルム14に接する中歯36の数は8本よりも少なく、また大歯38によってもラップフィルム14の突き刺しが行われて周辺部が脆弱化しているため、中歯36による突き刺しに要する力は大歯38による突き刺し時に比して更に小さなものとなる。このようにして、大歯38による第1段階の切断から中歯による第2段階の切断も、使用者に抵抗感を与えることなく、円滑に行われることとなる。
【0085】
更に、包装容器10を矢印A方向にひねると、中央エリア28の小歯35が、第3番目と第4番目の中歯36c,36d間のラップフィルム14を突き刺し、ラップフィルム14の切り開きが中間エリア29へと進んでいく。ラップフィルム14に十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア29及び側部歯40からなる側部エリア30においても(図6)円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0086】
切断方法2では、図4に示すように、一方の手で包装容器10を握り、他方の手でラップフィルム14の側部側の先端部を把持し、所望量だけ引き出す。そして、包装容器10を握っている手で容器を固定しつつ、他方の手でラップフィルム14を上方向、すなわち矢印B方向に引き上げて、ラップフィルム14の一方の端部を切断刃24bの一方の側部エリア30bに押し当てる。
【0087】
この切断方法2において、切断当初にラップフィルムに接触するのは、切断刃24bの端部に備えられる複数の側部歯40のみである。このため、ラップフィルムを容易に突き刺すことが可能となる。
【0088】
更にラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、側部エリア30に属し、切断刃24bの端部に設けられる数本の側部歯40がラップフィルム14を突き刺す(図6)。更にラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、中間エリア29b側に設けられる数本の側部歯40がラップフィルム14に接し、ラップフィルム14を突き刺す。これによって、十分な大きさの初期突き出し部が形成される。
【0089】
更に、ラップフィルム14を矢印B方向に引き上げると、ラップフィルム14の切断は「突き刺し」段階から「切り開き」段階に移行する。すなわち、側部歯40によって十分な大きさの初期突き刺し部が形成されたならば、以降はラップフィルム14を切断するのに特に大きな力は不要であり、側部歯40よりも歯高の低い中間第1歯31及び中間第2歯32からなる中間エリア24bによって、円滑にラップフィルム14が切り開かれる。続いて、中央エリア28、中間エリア29b及び側部エリア30bにおいても円滑にラップフィルム14は切り開かれ切断されていく。
【0090】
すなわち、切断刃24bの場合、切断刃24bのV字の頂点部及び切断刃24bの一方の端部のいずれからでも、ラップフィルムを容易に切断することができ、切断時のフィーリングも良好である。
【0091】
切断刃24bにおいて、一方の側部エリア30に設けられる側部歯40の本数は、5〜100本であることが好ましく、10〜50本であることがより好ましく、20〜45本であることがさらに好ましい。一方の側部歯30に設けられる側部歯40の本数が20本未満の場合、切断刃24bの一方の側部エリア30からラップフィルムの切断を開始する切断方法において、ラップフィルムの初期突き刺し部の形成範囲が狭くなり、「突き刺し」段階から「切り開き」段階への移行の円滑性が損なわれる傾向がある。一方の側部歯30に設けられる側部歯40の本数が100本を超える場合、切断刃24bの中央エリアから切断を開始する切断方法において、ラップフィルムの切断時における「切り開き」段階での良好なフィーリングが損なわれる傾向がある。
【0092】
側部エリア30の側部歯40の歯高H4は、好ましくは0.8〜3.5mm、より好ましくは0.9〜2.0mm、さらに好ましくは1.0〜1.5mmとするのがよい。また、側部歯40の歯間ピッチは、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは0.7〜2.5mmとするのがよい。
【0093】
[第一、第二、第三の実施形態の変形例]
図7は、本発明の第一、第二、第三の実施形態の変形例にかかる切断刃の中央部の一部拡大図である。図7の切断刃24cは、中間エリア29に側部歯31のみを備える点で、上記実施形態の切断刃24と異なっている。すなわち、切断刃24cは、中央エリア28及び側部エリア(図示しない)に、第一の実施形態に係る切断刃24と同様の歯の構成を有する。側部歯31の歯先を結ぶ直線L4は、中央エリア28における中歯36の歯先を結ぶ直線L2と複数の歯元を結ぶ直線L3との間に位置している。切断刃24cのように、中間エリア29が同一歯高の側部歯31のみから構成される場合であっても、本発明の効果を得ることが可能であり、ラップフィルムの切り開きを容易に行うことができる。
【0094】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0095】
なお、上記の各実施形態ではラップフィルムはポリ塩化ビニリデンからなるものとしているが、他の樹脂からなるラップフィルムであっても本発明を適用することができる。かかる場合、歯高、歯間ピッチ、歯先角度等は上記寸法から適宜変更され得る。
【0096】
更に、ロール状包装物はラップフィルムのみならず、アルミフォイルや紙であってもよい。
【0097】
また、上記各実施形態の切断刃の材質としては、バルカナイズドファイバーや樹脂含浸紙、樹脂製のものがあげられるが、その中でも強度に優れる樹脂製のものが好ましい。使用される樹脂の例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂)、PES(ポリエーテルサルフォン樹脂)等が挙げられる。このうち、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0098】
樹脂の中でも環境に優しい生分解性樹脂を用いることも可能である。生分解性樹脂とは、使用中は従来の樹脂と同程度の機能を保ちながら、使用後廃棄されたとき、自然界に存在する微生物の働きによって低分子化合物に分解され、最終的には炭酸ガスと水に完全分解される高分子素材であり、このような機能を有することから、より環境に配慮した切断刃を提供することができる。生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸樹脂が挙げられる。
【0099】
上記各実施形態にかかる切断刃は、上述した樹脂材料の1種を単独で用いるか、又は2種以上を混合したものを用いて形成することができる。また、単独の樹脂材料、又は2種以上を混合した樹脂材料に、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、タルク等の無機粉体を、切断刃の材料全体に対して5〜70質量%添加して形成することもできる。無機粉体を添加することにより、機械的強度を向上することができる。
【0100】
切断刃は、これらの材料を、厚さ0.05〜0.5mm、好ましくは厚さ0.1〜0.3mm、より好ましくは厚さ0.20〜0.28mmのシート状とした後に、金型による打ち抜き加工により形成することができる。なお、切断刃の厚さが0.5mmを超えると十分良好な切断性が得られない傾向があり、切断刃の厚みが0.05mm未満であると良好な切れ味が損なわれる傾向がある。
【0101】
図8は、本発明の一実施形態に係る切断刃が、樹脂であるシーラント材を介して、蓋体の前面壁の裏面に取り付けられた包装容器の積層部の模式断面図である。包装容器の積層部50では、蓋体の前面壁22の裏面22a上に、シーラント材54、接着層52、切断刃24がこの順で積層されている。ポリウレタン系の接着剤(接着層52)によって、エチレンメタクリル酸共重合体を主成分とするシーラント材54と接着された切断刃24は、該シーラント材54と包装容器蓋体の前面壁の裏面22aとを超音波接着法で接着することにより、包装容器の前面壁の裏面22aに取り付けられる。このようにシーラント材54を介して包装容器蓋体の前面壁の裏面22aに取り付けられた切断刃24は、十分な接着力によって包装容器蓋体に固定されるため、包装容器蓋体から容易に剥離しない。
【0102】
包装容器蓋体の前面壁の裏面に切断刃を取り付ける方法としては、公知のコールドグルー法、又は感圧接着剤法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態にかかる切断刃の中央部の一部拡大図である。
【図3】本発明の第一の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。
【図4】本発明が適用された包装容器10の形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。
【図6】本発明の第三の実施形態にかかる切断刃における一方の側部の一部拡大図である。
【図7】本発明の第一、第二、第三の実施形態の変形例にかかる切断刃の中央部の一部拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る切断刃が樹脂であるシーラント材を介して蓋体の前面壁の裏面に取り付けられている包装容器の積層部の模式断面図である。
【符号の説明】
【0104】
10…包装容器、12…紙管、14…ラップフィルム、16…容器本体、18…蓋体、20…容器本体の後面壁の頂縁、22…蓋体の前面壁、22a…裏面、24,24a,24b,24c…切断刃、26…容器本体の前面壁の底辺、28…中央エリア、29,29a…中間エリア、30,30a,30b…側部エリア、31…中間第1歯(中間歯),32…中間第2歯(中間歯)、33…側部小歯(側部歯)、34…側部大歯(側部歯)、35…小歯、36…中歯(第2歯)、38…大歯(第1歯)、39,40…側部歯、50…積層部、52…接着層、54…シーラント材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、
V字の頂点部を含む中央エリア、V字の両端部の一つをそれぞれ含む一対の側部エリア、及び該一対の側部エリアと前記中央エリアとにそれぞれ挟まれる一対の中間エリアに区分され、
前記中央エリアは、
歯高が最も高く同一歯高である複数の第1歯と、これより歯高が低く同一歯高である複数の第2歯とを有しており、
前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、他の第1歯が前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
前記中間エリアは、
複数の中間歯を有し、前記中間歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線との間に位置しており、
前記側部エリアは、
複数の側部歯を有し、前記側部歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第1直線と前記第2直線との間に位置することを特徴とする、包装容器用の切断刃。
【請求項2】
前記複数の側部歯の少なくとも一つの歯先が、前記第1歯、前記第2歯及び前記中間歯の歯先よりも外側を向いていることを特徴とする、請求項1記載の包装容器用の切断刃。
【請求項3】
前記側部歯の歯高が、前記第2歯と同じか又は前記第2歯よりも高く且つ前記第1歯よりも低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項4】
ロール状包装物を収容する包装容器に取り付けられて前記ロール状包装物を切断する、複数の歯を備える非金属製のV字状の切断刃において、
V字の頂点部を含む中央エリア、V字の両端部の一つをそれぞれ含む一対の側部エリア、及び該一対の側部エリアと前記中央エリアとにそれぞれ挟まれる一対の中間エリアに区分され、
前記中央エリアは、
歯高が最も高く同一歯高である複数の第1歯と、これより歯高が低く同一歯高である複数の第2歯とを有しており、
前記第1歯の一つが前記頂点部に配置されると共に、他の第1歯が前記頂点部の第1歯を中心に所定の間隔で配置されており、
前記第2歯が前記第1歯間に配置されており、
前記第1歯の歯先を結ぶ第1直線、前記第2歯の歯先を結ぶ第2直線、及び前記第1歯及び前記第2歯の歯元を結ぶ第3直線が互いに平行で、前記第2直線は前記第1直線と前記第3直線との間に位置しており、
前記中間エリアは、
複数の中間歯を有し、前記中間歯の歯先は、前記第2直線上又は前記第2直線と前記第3直線との間に位置しており、
前記側部エリアは、
複数の側部歯を有し、前記複数の側部歯の少なくとも一つの歯先が、前記第1歯、前記第2歯及び前記中間歯の歯先よりも外側を向いていることを特徴とする、包装容器用の切断刃。
【請求項5】
前記中間エリアは、交互に配置された歯高の異なる大小2種の前記中間歯を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項6】
前記中間歯の歯高が、前記第2歯と同じか又は前記第2歯よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項7】
前記第1歯、前記第2歯、前記中間歯及び前記側部歯の少なくとも一つにおける斜辺が内側に凹んだ円弧状となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装容器用の切断刃。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された切断刃を、蓋体の前面壁の裏面に具備する包装容器。
【請求項9】
前記切断刃が、変性ポリエチレン樹脂を介して前記蓋体の前面壁の裏面に取り付けられている請求項8記載の包装容器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−83917(P2009−83917A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257957(P2007−257957)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】