説明

包装材料

【課題】相対湿度が80%以上のような高湿度条件での酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有するポリカルボン酸系重合体層を含み、ポリオレフィン層をヒートシール面として製袋される包装材料で酸性食品を保存すると、当該包装材料に液泡や白色物質が発生するという問題を解決する。
【解決手段】包装材料を、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)の順に、(A)〜(C)層が積層されている積層体からなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸に代表されるポリカルボン酸系重合体がコーティングされた酸素ガスバリヤー層を含有する積層体からなる包装材料に関する。本発明の包装材料は、酸素ガスバリヤー層に由来する高湿度条件での酸素ガスバリヤー性と耐水性(水や沸騰水に対する不溶性)を有する。また、本発明の包装材料は、他の層に由来する耐酸性食品性(酸性食品を包装することに伴う液泡や白色物質の発生が防止される性質)、防湿性及びヒートシール性を有する。従って、本発明の包装材料は、酸化等の酸素による品質の劣化を受けやすい食品、特にpH5.0以下の酸性食品の包装に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
酸化劣化しやすい食品の包装材料には、優れた酸素ガスバリヤー性が求められる。更に、レトルト処理やボイル処理される食品の包装材料には、耐水性が求められる。酸素ガスバリヤー性が優れる包装材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルムが例示される。しかしながら、PVAフィルムは、乾燥状態での酸素ガスバリヤー性が優れているが、高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性が著しく低下し、沸騰水に溶解するものである。また、PVDCフィルムの酸素ガスバリヤー性は十分高くない。
そこで、PVAフィルム及びPVDCフィルムに代わり、高湿度条件下で酸素ガスバリヤー性を示し、かつ耐水性を有するポリカルボン酸系重合体が注目された。ポリカルボン酸系重合体層を含む積層体からなる食品包装材料として、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に接着剤、ポリアクリル酸と溶剤の混合物、酸化亜鉛含有塗料の順に塗工し、塗膜を乾燥して積層体を得、積層体の酸化亜鉛含有塗料面に接着剤を介して未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして得られるラミネートフィルム(例えば、特許文献1、実施例33参照)が検討された。
【0003】
上記ラミネートフィルムの未延伸ポリプロピレンフィルム面をヒートシールし、製袋して得られる包装材料にトマトケチャップを充填し、高温多湿条件でトマトケチャップを数日間保存すると、未延伸ポリプロピレンフィルム側の接着剤と酸化亜鉛含有塗料の間に液泡と白色物質が発生した。当該液泡と白色物質の発生機構を検討した結果、トマトケチャップ中の酢酸と酸化亜鉛含有塗料中の酸化亜鉛が化学反応して酢酸亜鉛(白色物質)と水(液泡)が発生していることがわかった。そこで、当該化学反応を防止するため、(1)未延伸ポリプロピレンフィルムを厚くする、(2)酢酸が吸着されやすい、極性が大きいモノマー成分が重合されている樹脂からなるフィルム、具体的にはポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルムを酸化亜鉛含有塗料と未延伸ポリプロピレンフィルムの間に設けることを試みたが、上記化学反応を防止することはできなかった。
【特許文献1】国際公開第03/091317号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、相対湿度が80%以上のような高湿度条件での酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有するポリカルボン酸系重合体層を含み、ポリオレフィン層をヒートシール面として製袋される包装材料で酸性食品を保存すると、当該包装材料に液泡や白色物質が発生するという問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、包装材料であって、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)の順に、(A)〜(C)層が積層されている積層体からなる包装材料である。
本発明は、上記包装材料であって、酸素ガスバリヤー層(A)が、基材フィルム上に接着剤層、ポリカルボン酸系重合体層、多価金属化合物含有層の順に積層されているものであり、多価金属化合物含有層とポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)が接着されている包装材料である。
本発明は、上記包装材料であって、酸素ガスバリヤー層(A)とポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む接着剤により接着されている包装材料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の包装材料は、ポリカルボン酸系樹脂層を含み、相対湿度80%以上のような高湿度条件でも優れた酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有するものである。更に、本発明の包装材料のポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)をヒートシールして作製した袋に酸性食品を保存した時、酸性食品に含まれている酢酸は、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)に浸透しても、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)には浸透しないから、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)の外側にある酸素ガスバリヤー層(A)の多価金属化合物と反応することはない。従って、本発明の包装材料は、酸性食品の保存に使用されたとき、液泡や白色物質の発生が抑制される性質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明に使用される酸素ガスバリヤー層(A)は、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層されることにより得られる。
【0008】
基材フィルムは、特に限定されない。金属類、紙類、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)が基材フィルムとして例示される。熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)が基材フィルムとして好ましく使用される。熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体などのポリアミド;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸塩共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイドなどが例示できる。熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン6、ポリプロピレンが好ましく使用される。これらの樹脂の未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムが基材フィルムとして用いることができる。また、基材フィルムの厚さは特に限定されないが、0.001〜1000μmの範囲が好ましい。基材フィルムの厚さは、更に好ましくは0.01〜200μm、最も好ましくは0.1〜50μmの範囲である。また、基材フィルムの少なくとも片方の面にはコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的処理が施されていてもよい。
【0009】
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体のことである。ポリカルボン酸系重合体として、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、少なくとも2種類のα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体の共重合体、更にアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合体は、それぞれ単独で、又は少なくとも2種を混合して用いることができる。
【0010】
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸が例示できる。
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレンが例示できる。
ポリカルボン酸系重合体が、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体の場合には、さらにケン化することにより、飽和カルボン酸ビニルエステル部分をビニルアルコールに変換して使用することができる。
ポリカルボン酸系重合体が、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、ガスバリアー性、耐水性の観点から、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合割合は60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
ポリカルボン酸系重合体が、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、当該重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる。当該重合体は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合によって得られる。当該重合体は、より好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸及び/又はそれらの混合物の重合によって得られる。
ポリカルボン酸系重合体が酸性多糖類の場合には、モノマー成分としてアルギン酸が好ましく用いられる。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、コーティング性の観点から2,000〜10,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることが更に好ましい。ポリカルボン酸系重合体には、本発明の包装材料のガスバリヤー性と耐水性を損なわない範囲で、他の重合体を混合することが可能である。
【0011】
本発明では、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層が、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類の混合物からなるものであってもよい。
本発明で用いるポリアルコール類は、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物からアルコール系重合体までを含む。本発明で用いるポリアルコール類は、ポリビニルアルコール(PVA)、糖類および澱粉類を含む。前記分子内に2個以上の水酸基を有する低分子量化合物としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを例示できる。また、PVAのケン化度は5%以上、好ましくは98%以上であり、PVAの平均重合度は300〜1500である。また、ポリカルボン酸系重合体との相溶性の観点から、ポリアルコール類として、ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコール−ポリ(メタ)アクリル酸共重合体を用いることもできる。糖類としては、単糖類、オリゴ糖類および多糖類を使用する。これらの糖類には、特開平7−165942号公報に記載のソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール等の糖アルコールや各種置換体・誘導体なども含まれる。これらの糖類は、水、アルコール、あるいは水とアルコールの混合溶剤に溶解性のものが好ましい。澱粉類は、前記多糖類に含まれる。本発明で使用される澱粉類としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉がある。加工澱粉としては、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉などが挙げられる。これらの澱粉類の中でも、馬鈴薯澱粉を酸で加水分解した水に可溶性の加工澱粉、澱粉の末端基(アルデヒド基)を水酸基に置換することにより得られる糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これらの澱粉類は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類との混合比(質量比)は、高湿度条件下でも優れた酸素ガスバリヤー性を有する成形物を得るという観点から、好ましくは99:1〜20:80、さらに好ましくは95:5〜40:60、最も好ましくは95:5〜50:50である。
【0013】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1、又は、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール類と溶媒を含むコーティング液2を基材フィルム上にコーティングし、次いで、溶媒を蒸発乾燥させる。上記工程により、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層を形成することができる。ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1を基材フィルム上にコーティングする方法には、単量体を含むコーティング液を基材フィルム上にコーティングして紫外線又は電子線を照射して重合しポリカルボン酸系重合体を含む層を形成する方法、単量体を基材上に蒸着すると同時に電子線を照射して重合しポリカルボン酸系重合体を含む層を形成する方法が含まれる。
【0014】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1は、ポリカルボン酸系重合体を溶媒に溶解又は分散させることにより調製することができる。溶媒はポリカルボン酸系重合体を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドが例示される。溶媒としては、非水系溶媒又は非水系溶媒と水の混合物が好ましく使用される。当該コーティング液中のポリカルボン酸系重合体の好ましい濃度は0.1〜50質量%である。
【0015】
ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール類と溶媒を含むコーティング液2を得る方法は特に限定されないが、各成分を溶媒に溶解させる方法、各成分の溶液を混合する方法、ポリアルコール類溶液中でカルボキシル基を含有するモノマーを重合させる方法、その場合、所望により重合後アルカリで中和する方法などが採用される。溶媒としては、水、アルコール、水とアルコールの混合物等が挙げられる。当該コーティング液中の固形分濃度は1〜30質量%であることが好ましい。
【0016】
上記コーティング液1及び2には、本発明の食品包装材のガスバリヤー性を損なわない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤(分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物は除く)、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、モンモリロナイト等の無機層状化合物等が適宜添加されてもよい。
また、コーティング液1には、本発明の包装材料のガスバリヤー性及び耐水性の観点から、1価及び/又は2価の金属を含む化合物を添加することができる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物としては、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅を含む化合物が例示できる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物として、具体的には、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウムが例示できる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物の好ましい添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の0〜50モル%の範囲である。1価及び/又は2価の金属を含む化合物の更に好ましい添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の0〜30モル%の範囲である。
【0017】
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類を含む樹脂層の耐水性とガスバリヤー性を向上させるため、基材フィルム上にコーティングされたコーティング液2を乾燥して得られた被膜は熱処理される場合がある。熱処理条件を緩和するために、コーティング液2調製の際に、水に可溶な、アルカリ金属化合物や無機酸または有機酸の金属塩を適宜添加することができる。金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が例示される。無機酸または有機酸の金属塩としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウムが例示される。これらの例示された金属塩の中で、好ましくは、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスフィン酸カルシウム(次亜リン酸カルシウム)等のホスフィン酸金属塩(次亜リン酸金属塩)が使用される。無機酸および有機酸の金属塩の添加量は、コーティング液中の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部である。また、アルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることができる。アルカリ金属化合物の添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の0〜30モル%の範囲内である。
【0018】
コーティング液1又は2は、基材フィルム上に、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター、スプレー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いてコーティングされる。次いで、コーティング液1又は2に含まれている溶媒が、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤーなどの装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いた熱風の吹き付けや赤外線照射、自然乾燥、オーブン中での乾燥などにより蒸発させられる。その結果、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体からなる皮膜が形成される。
【0019】
本発明では、コーティング液1又は2から得られたポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層に隣接して多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)を設けることができる。多価金属イオンにより、ポリカルボン酸系重合体は架橋される。
本発明で用いる多価金属化合物は、金属イオンの価数が2以上の多価金属原子単体及びその化合物である。多価金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属;アルミニウムが例示される。多価金属化合物としては、前記多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩、アンモニウム錯体、2〜4級アミン錯体、錯体の炭酸塩、錯体の有機酸塩、アルキルアルコキシドが例示される。前記多価金属の有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩が例示される。前記多価金属の無機酸塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩が例示される。こられの多価金属化合物は、それぞれ単独で、また少なくとも2種の多価金属化合物を混合して用いられる。多価金属化合物の中でも、2価の金属化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、(a)アルカリ土類金属、コバルト、ニッケル、銅又は亜鉛の酸化物、水酸化物又は炭酸塩、(b)コバルト、ニッケル、銅、亜鉛のアンモニウム錯体又はアンモニウム錯体炭酸塩が用いられる。最も好ましくは、(c)マグネシウム、カルシウム、銅又は亜鉛の酸化物、水酸化物又は炭酸塩、(d)銅又は亜鉛のアンモニウム錯体又はアンモニウム錯体炭酸塩が用いられる。
【0020】
多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)は、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層上に、多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3をコーティングした後、溶媒を乾燥させる方法により形成することができる。また、多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)は、基材フィルム上に上記コーティング液3をコーティングする方法、あるいは蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の気相コーティング法により多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)を形成してから、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層をコーティングして形成することもできる。
【0021】
多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3は、多価金属化合物を溶媒に溶解又は分散させることにより調製することができる。溶媒は、多価金属化合物を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、これらの混合物が例示される。好ましい溶媒は、非水系溶媒、非水系溶媒と水の混合溶媒である。
【0022】
多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3には、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤等を適宜添加することができる。多価金属化合物の分散性、コーティング性を向上させるため、コーティング液3は、好ましくは、溶媒に可溶な樹脂を混合した樹脂組成物(多価金属化合物含有樹脂組成物)として使用する。樹脂としては、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の塗料に用いる樹脂が例示される。コーティング液3中の多価金属化合物と樹脂の構成比は特に限定されない。コーティング液3中の多価金属化合物、樹脂、その他の添加剤の総量は、コーティング性の観点から、好ましくは、1〜50質量%の範囲である。
【0023】
コーティング液3は、コーティング液1及び2のコーティング方法と乾燥方法により、コーティングされ乾燥される。
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類を含む樹脂層に隣接して多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)が設けられる場合、コーティング液2を乾燥して得られる被膜にコーティング液3をコーティングして熱処理してもよいし、当該被膜を熱処理した後コーティング液3をコーティングしてもよい。
【0024】
基材フィルム上にコーティング液1、2又は3をコーティングする際、基材フィルムとポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層又は多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)との接着性を向上させるため、予め接着剤を基材フィルム上にコーティングすることができる。接着剤は特に限定されない。接着剤としては、ドライラミネート、アンカーコート、プライマーとして用いられている、溶媒に可溶なアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含む接着剤が例示される。
【0025】
ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層の厚みは10μm以下であり、好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
酸素ガスバリヤー層(A)上にはポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)が積層される。ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)上にはポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)が積層される。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)は、防湿性及びヒートシール性を有する。本発明の包装材料のポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)がヒートシールされ、袋が作製される。当該袋に酸性食品が充填され、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)と酸性食品が接触する。時間の経過と共に、酸性食品に含まれる酢酸が、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)に浸透してくる。
【0027】
本発明の発明者は、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)に浸透する酸性食品由来の酢酸が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層には浸透しないことを見出した。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)を構成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸塩共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレンープロピレン共重合体が例示される。
【0029】
酸素ガスバリヤー層(A)上に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)を積層する方法は2つある。1つめは、酸素ガスバリヤー層(A)上に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム(B’)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂フィルム(C’)を順次接着する方法(積層方法a)である。他の方法は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)とポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)を共押出して複合フィルムを作製し、次いで、酸素ガスバリヤー層(A)と当該複合フィルムのポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)を接着する方法(積層方法b)である。
【0030】
(積層方法aについて)
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム(B’)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂フィルム(C’)は、未延伸、一軸延伸、二軸延伸又は他の形態で使用される。フィルム(B’)及び(C’)の少なくとも片面には、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的処理が施されていてもよい。酸素ガスバリヤー層(A)とフィルム(B’)を接着する接着剤、フィルム(B’)とフィルム(C’)を接着する接着剤は特に限定されない。これらの接着剤の具体例は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含む接着剤である。樹脂を含む接着剤の中で、ウレタン樹脂又はポリエステル樹脂を含む接着剤が好ましく使用される。
接着剤は、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター、スプレー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いてコーティングされる。
【0031】
(積層方法bについて)
ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)とポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)の間には、接着剤層が設けられていてもよい。接着剤は特に限定されない。接着剤の具体例は、無水マレイン酸又はマレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を含む接着剤である。酸素ガスバリヤー層(A)とポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)を接着する接着剤 は特に限定されない。これらの接着剤の具体例は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含む接着剤である。樹脂を含む接着剤の中で、ウレタン樹脂又はポリエステル樹脂を含む接着剤が好ましく使用される。
【0032】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)とポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)の厚みは特に限定されない。層(B)及び層(C)の好ましい厚みは0.001〜1000μmであり、更に好ましい範囲は0.01〜200μmであり、最も好ましい範囲は0.1〜100μmである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。レトルト処理後の包装材料の酸素ガス透過度(OTR)は以下のようにして測定された。
Modern Control社製酸素透過試験器OXTRANTM2/20を用いて、20℃、80%RHの条件で、ASTM F1927−98(2004)の規定に従って測定した。測定値は、単位cm3(STP)/m2・day・MPaで表記した。ここで(STP)は酸素の体積を規定するための標準状態(0℃、1気圧)を意味する。
【0034】
(実施例1)
(酸素ガスバリヤー層の作製)
まず、下記構成の塗液1、2、3を調製した。塗液1は、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリカルボン酸系重合体層との接着性を向上させるためのアンカーコート(AC)塗液である。塗液2は、ポリカルボン酸系重合体として用いたポリアクリル酸塗液、塗液3は、ポリアクリル酸層上に多価金属化合物含有層を配するための酸化亜鉛含有樹脂組成物塗液である。
【0035】
塗液1:三井化学ポリウレタン(株)製接着剤溶液
主剤:タケラックA−525(内 ウレタン樹脂の前駆体50質量%、酢酸エチル50質量%)/硬化剤:タケネートA−52(内 ウレタン樹脂の硬化剤55質量%、酢酸エチル45質量%)/溶媒:酢酸エチル
(配合)A−525 9質量部
A−52 1質量部
酢酸エチル 165質量部
合計 175質量部(固形分濃度3質量%)
塗液2:東亜合成(株)製ポリアクリル酸(PAA)水溶液
ポリアクリル酸:アロンTMA−10H(数平均分子量20万、25質量%水溶液)/中和剤:NaOH/溶剤:水、イソプロピルアルコール(IPA)
(配合)アロンTMA−10H 10質量部
NaOH 0.03質量部
水 66質量部
IPA 7質量部
合計 83質量部(固形分濃度15質量%)
塗液3:住友大阪セメント(株)製酸化亜鉛含有樹脂組成物(ZnO)溶液
酸化亜鉛含有樹脂組成物:K035A(内 酸化亜鉛16.6質量%、ウレタン樹脂の前駆体1.74質量%、分散剤1.66質量%、トルエン72質量%、メチルエチルケトン8質量%)/硬化剤:C−320(内 ウレタン樹脂の硬化剤75質量%、酢酸エチル25質量%)/溶媒:トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、IPA
(配合)K035A 100質量部
C−320 3質量部
トルエン 24質量部
MEK 3質量部
IPA 3質量部
合計 133質量部(固形分濃度15質量%)
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーTMP60、厚さ12μm、片面コロナ処理)を基材とし、上記塗液1、2、3をこの順番でグラビアコーターを用いて基材のコロナ処理面に塗工、乾燥することにより、PET/AC(0.1g/m2)/PAA(0.5g/m2、0.4μm)/ZnO(ZnOとして0.5g/m2)からなる酸素ガスバリヤー層を得た。( )内に各層の乾燥塗布量を示した。
【0036】
(ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム及びポリプロピレンフィルムの接着)
酸素ガスバリヤー層の酸化亜鉛含有樹脂組成物(ZnO)側に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムをドライラミネートにより接着し、次いで、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに、ポリプロピレンフィルムをドライラミネートによる接着した。その結果、酸素ガスバリヤー層/接着剤/PET(12μm)/接着剤/CPP(60μm)からなる包装材料が作製された。接着剤の塗布は、ヒラノテクシード(株)製マルチコーターTM−MCを使用して行われた。接着に使用された接着剤は、東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用ポリエステル系接着剤TM−250HV(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)である。PETは、東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのルミラーP60である。CPPは、昭和電工プラスチックプロダクツ(株)未延伸ポリプリピレンフィルムのアロマーET20である。( )内の数字は各層の厚みである。
【0037】
(製袋、食品充填及びボイル処理)
得られた包装材料のCPP側がインパルスシーラーで貼り合わされ、50mm×150mmのパウチを作製された。当該パウチにトマトケチャップ(カゴメ(株)製トマトケチャップ、酢酸濃度1.4質量%)25gが充填された。トマトケチャップが充填されたパウチは、日阪製作所(株)貯湯式レトルト釜RCS−60/10TGにて90℃で30分間ボイル処理された後、37℃、100%RHの条件で2日間保存された。その後、包装材料の酸素ガス透過度が測定され、パウチの外観が観察された。
【0038】
本発明で得られた包装材料の、上記操作後の酸素透過度は0〜1000cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、好ましくは0〜500cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、更に好ましくは0〜100cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、最も好ましくは0〜50cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲である。
【0039】
(実施例2)
実施例1におけるCPPに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン未延伸フィルム(東セロ(株)製TUX−TCS)を使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0040】
(実施例3)
実施例1におけるポリエステル系接着剤TM−250HV(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)に代えて、東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用ポリウレタン系接着剤AD817(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)を使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0041】
(実施例4)
(複合フィルムの共押出しによる作製)
5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて、PET(12μm)/接着剤(5μm)/PP(60μm)からなる複合フィルムを得た。PETはカネボウ合繊(株)製ポリエチレンテレフタレートのベルペットIFG8L、接着剤は三井化学(株)製ポリプロピレン系接着剤のアドマーQF500、PPは日本ポリプロ(株)製ポリプロピレンのノバテックFB3HATである。( )内の数字は各層の厚みである。
(酸素ガスバリヤー層と複合フィルムのドライラミネートによる接着)
得られた複合フィルムのPET(12μm)の濡れ性を向上させるため、(株)西村製作所製高周波電源AGI−040にて、コロナ強度23W/m2・minで、PET(12μm)の表面にコロナ処理を実施した。その後、実施例1における酸素ガスバリヤー層の酸化亜鉛含有樹脂組成物(ZnO)側に、複合フィルムのPET側をドライラミネートにより接着した。接着剤の塗布は、ヒラノテクシード(株)製マルチコーターTM−MCを使用して行われた。接着に使用された接着剤は、東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用ポリエステル系接着剤TM−250HV(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)である。
【0042】
(実施例5)
実施例1における酸素ガスバリヤー層の作製に使用される塗液2に酸化亜鉛を加えてポリアクリル酸のカルボキシル基の15モル%を中和した塗液を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0043】
(比較例1)
実施例1におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのドライラミネートによる接着を行わない以外は実施例1と同じ操作を行った。その結果、酸素ガスバリヤー層/接着剤/CPP(60μm)からなる包装材料が作製された。( )内の数字は層の厚みである。
【0044】
(比較例2)
実施例1におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに代えて、ナイロンフィルムを使用する以外は実施例1と同じ操作を行った。その結果、酸素ガスバリヤー層/接着剤/Ny(15μm)/接着剤/CPP(60μm)からなる包装材料が作製された。Nyは(株)興人製ナイロンフィルムのボニールQCである。( )内の数字は各層の厚みである。
【0045】
(比較例3)
実施例1における塗液1〜3を使用しない以外は実施例1と同じ操作を行った。その結果、PET(12μm)/接着剤/PET(12μm)/接着剤/CPP(60μm)からなる包装材料が作製された。( )内の数字は各層の厚みである。
【0046】
実施例1〜5及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例1〜5の包装材料には、トマトケチャップの保存により液泡や白色物質が観察されなかった。従って、トマトケチャップに含まれている酢酸は、トマトケチャップと接しているポリプロピレン層に浸透しても、ポリプロピレン層の外側に設けられているポリエチレンテレフタレート層には浸透せず、酸素ガスバリヤー層中の酸化亜鉛と酢酸の反応が起きなかったと考えられる。一方、比較例1及び2の包装材料には、トマトケチャップの保存により液泡や白色物質が観察された。従って、トマトケチャップに含まれている酢酸は、比較例1の包装材料のポリプロピレン層、 比較例2の包装材料のポリプロピレン層及びナイロン層に浸透し、酸素ガスバリヤー層中の酸化亜鉛と酢酸の反応が起きたと考えられる。また、ポリカルボン酸系重合体層が設けられていない比較例3の包装材料の酸素透過度は、非常に大きい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、以下の(1)〜(3)の特性を有する包装材料を提供する。
(1)相対湿度80%以上のような高湿度条件での優れた酸素ガスバリヤー性
(2)優れた耐水性
(3)酸性食品の保存に使用されたとき、液泡や白色物質の発生が抑制される 本発明の包装材料は、酸素により劣化を受けやすい食品、飲料、薬品、電子部品等の包装に適し、特に酸性食品の包装に好ましく使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(C)の順に、(A)〜(C)層が積層されている積層体からなる包装材料。
【請求項2】
酸素ガスバリヤー層(A)が、基材フィルム上に接着剤層、ポリカルボン酸系重合体層、多価金属化合物含有層の順に積層されているものであり、多価金属化合物含有層とポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)が接着されている請求項1に記載された包装材料。
【請求項3】
酸素ガスバリヤー層(A)とポリエチレンテレフタレート系樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む接着剤により接着されている請求項1又は2に記載された包装材料。

【公開番号】特開2008−81136(P2008−81136A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260897(P2006−260897)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】