説明

包装構造体

【課題】局所的な応力によって平版印刷版の表面が損傷することを防止でき、品質故障を効果的に防止できる包装構造体を提供する。
【解決手段】包装構造体10は、パレット20と、パレット20上に平版印刷版11を厚み方向に積層した平版印刷版束14が1個または複数個積層された平版印刷版束群12と、平版印刷版束群12の上に積層された板状の発泡ブロック28と、発泡ブロック28の上に配置された天板30と、天板30の上面の略中央部に設けられたブロック34と、パレット20と天板30とで平版印刷版束群12を挟み込むように巻き付けて拘束する布ベルト32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装構造体に係り、特に、輸送時や荷役時の振動や衝撃でシートに品質故障を生じさせることのない包装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製版法(電子写真製版法を含む)では、製版工程の自動化を容易にすべく、感光性印刷版や感熱性印刷版等の平版印刷版が広く用いられている。平版印刷版は、一般にシート状又はコイル状のアルミニウム板等の支持体に、例えば、砂目立て、陽極酸化、シリケート処理、その他化成処理等の表面処理を単独又は適宜組み合わせて行い、次いで、感光層又は感熱層の塗布、乾燥処理を行った後に所望のサイズに切断されることにより製造される。製造後の平版印刷版は、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされる。そして、印刷機にセットされた平版印刷版にインクが塗布され、これが転写されることにより紙面に文字、画像等が印刷される。
【0003】
平版印刷版を荷扱いする際、多数枚の平版印刷版を厚さ方向に積層して平版印刷版束を構成し、その平版印刷版束を必要に応じてアルミクラフト紙などの遮光梱包材で梱包してパレットやスキッドなどの積載部材に積載し、梱包することが一般的に行なわれている。このような包装構造体を採用することによって、荷扱いの回数を減らして運搬や保管を低コストで行うことができるとともに、運搬や保管中の平版印刷版の変形や損傷を防止することができる。
【0004】
特許文献1の図12には、複数の平版印刷版の包装体を底板と天板との間に水平に積層した包装構造体が記載されている。この包装構造体では、底板と天板とが複数の支柱部材によって連結されており、底板と天板とによって平版印刷版の包装体が挟圧されて固定されている。
【特許文献1】特開2002−234272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、底板と天板との締付力を大きくした際に、天板に反りが発生し、平版印刷版の包装体を周縁部分のみで固定することになるという問題があった。このように、平版印刷版が局所的に強く押圧された場合、感光面や感熱面が損傷しやすくなり、特に近年広く使用されるレーザ露光型の平版印刷版の場合は、それまでの平版印刷版に比較して製版面が弱いので、輸送時や荷役時の振動や衝撃で製版面が損傷を受けやすく、改善が求められていた。
【0006】
また、従来の包装構造体では、平版印刷版の包装体を複数積層した際に、包装材の折り重なり部分で応力集中が発生し、平版印刷版の表面が損傷しやすいという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、局所的な応力によって平版印刷版の表面が損傷することを防止でき、品質故障を効果的に防止できる包装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、積載台と、該積層台の上に、シート状物を厚み方向に積層したシート束が1個または複数個積層されたシート束積層体と、前記シート束積層体の上に積層された板状の発泡ブロックと、前記発泡ブロックの上に配置された天板と、前記天板の上面の略中央部に設けられ、該天板よりも狭い幅で形成された当てブロックと、前記積載台と前記天板とで前記シート束積層体を挟み込むように巻き付けて拘束するベルトと、を備えたことを特徴とする包装構造体。
【0009】
請求項1の発明によれば、天板の上にブロックを設けたので、ブロックによって天板の中央部を押圧することができ、シート束積層体の周縁部に応力が集中することを防止することができる。また、請求項1の発明によれば、天板とシート束積層体との間に板状の発泡ブロックが設けられているので、応力を均等に分散させることができる。これにより、応力の局所集中によってシート状物が損傷することを防止することができる。なお、本発明において発泡ブロックとは、発泡スチロールのほか、ポリプロピレンやポリエチレンを用いた発泡ブロックや、生分解性樹脂から成る発泡ブロックも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天板の上にブロックを設けて天板の中央部を押圧するようにし、さらに、天板とシート束積層体との間に板状の発泡ブロックを設けたので、応力を分散させることができ、応力の局所集中によってシート状物が損傷することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る包装構造体の好ましい実施の形態について説明する。
【0012】
図1は本実施の形態における包装構造体を示す斜視図であり、図2はその分解図である。また、図3は平版印刷版束を示す斜視図であり、図4はその分解図である。
【0013】
図1、図2に示す包装構造体10は、多数枚の平版印刷版11(図4参照:シート状物に相当)を平版印刷版束群(シート束積層体に相当)12として搬送する際の包装形態である。平版印刷版束群12は、平版印刷版束(シート束に相当)14を厚み方向に所定束数(たとえば4束)積層することによって構成される。なお、平版印刷版束群12は、包装材で包装するようにしてもよい。
【0014】
各平版印刷版束14は、図4に示すように、複数枚の平版印刷版11を積層し、その積層物を遮光・防湿性の内装材16で包装したものであり、包装後は図3に示すようにテープ18によって止められている。なお、平版印刷版11は、感光型、感熱型、レーザ露光型のいずれであってもよく、平版印刷版11同士の間には合紙(不図示)を積層することが好ましい。また、内装材16としては、黒色ポリエチレンフィルムや、クラフト紙にアルミニウム箔やポリエチレンフィルムをラミネートしたものなどが使用される。
【0015】
図2に示すように、平版印刷版束群12は、パレット(積載台に相当)20に載置される。パレット20は、略長方形状の積載板22と、積載板22の下面に取り付けられた複数の脚部24、24…とで構成されている。脚部24はブロック状に形成され、所定の隙間をもって配置されており、脚部24と脚部24の間には、フォークリフトやハンドリフトのフォークを挿入するための空間が形成されている。なお、脚部24の下に、積載板22と平行な底板を取り付ける形態も可能である。
【0016】
前述した平版印刷版束群12は、パレット20の積載板22の上に載置される。その際、各平版印刷版束14が積載板22と平行に(すなわち略水平に)積層される。平版印刷版束群12の上には、緩衝材保護用厚紙として(以下、当てボール)26を積層してもよい。当てボール26は、平版印刷版束群12の上面と同じ大きさの板状に形成されている。なお、当てボール26の大きさは、平版印刷版束群12よりも大きいものを用いてもよく、その場合には後述の天板30よりも小さいものが好ましい。
【0017】
当てボール26の上には、発泡ブロック28が積層される。発泡ブロック28は、平版印刷版束群12の上面と同じ大きさ、または平版印刷版束群12の上面よりも若干大きく形成されており、その厚さは後述の布ベルト32を締めた際に押圧力を均等に分散できるように設定されている。発泡ブロック28としては、発泡スチロールのほか、ポリプロピレンやポリエチレンを用いたものや、生分解性樹脂から成る発泡ブロックが使用される。たとえば、JSP製 発泡ポリエチレン「エルブロック」発泡倍率20倍、厚み30mm、幅寸法W−10mm、が用いられる。なお、発泡ブロック28の大きさは、(平版印刷版束群12の寸法+20mm)以上で、且つ(パレット20の積載板22の寸法)以下が好ましい。また、発泡ブロック28の厚みは、搬送性と緩衝能力の面で、25mm以上35mm以下が好ましい。
【0018】
発泡ブロック28の上には、天板30が積層される。天板30は、木材等によって矩形の板状に形成されており、その幅寸法は、平版印刷版束群12の幅寸法と同じか、あるいは若干大きく形成されている。したがって、包装構造体10とした際に、平版印刷版束群12の上縁は天板30によって覆われて保護されるので、平版印刷版束群12の損傷を防止することができる。
【0019】
天板30にはブロック(当てブロックに相当)34、34が取りつけられている。ブロック34、34は木材等によって直方体状に形成されており、布ベルト32、32の巻き付け位置に取り付けられている。布ベルト32、32…は、図1に示すように、パレット20の脚部24、24間を通すように四カ所で巻き付けるようになっており、そのうちの中央の二カ所の巻き付け位置に、前述のブロック34、34が配設されている。なお、ブロック34は天板30に固定してもよいし、着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0020】
図5に示すように、ブロック34は、その幅寸法Cが、天板30の幅寸法L及び平版印刷版束群12の幅寸法Wよりも小さく形成される。また、ブロック34は、天板30の幅方向の中央部に取り付けられる。したがって、天板30は、ブロック34に対して両側に突出しており、その突出量E=(L−C)/2である。本実施の形態において、突出量Eは、160mm以上350mm以下に設定される。突出量Eが160mm未満の場合や350mmを超える場合には、輸送時に平版印刷版11にズレが生じて品質故障が発生する。具体的には、平版印刷版11がPS版の場合、現像時に白く抜ける欠陥(膜ベリ)が生じる。なお、突出量Eは、100mm以上450mm以下が好ましく、150mm以上350mm以下がより好ましい。
【0021】
また、ブロック34は、布ベルト32を巻き付けて張設した際の布ベルト32と天板30との角度をθとした際、角度θが15°以上40°以下になるように設定される。角度θが11.8°未満になると、ブロック34による天板30の中央部の押圧力が低下し、平版印刷版11のずれが生じるためである。また、角度θが大き過ぎると、ブロック34が大きくなって嵩張るとともに、バランスが悪くなるためである。なお、角度θは、15°以上40°以下が好ましく、18°以上40°以下がさらに好ましい。
【0022】
次に包装構造体10の作製手順について以下に説明する。
【0023】
まず、図4に示すように、平版印刷版11を所定枚数たとえば20〜30枚ずつ厚さ方向に積層した後、内装材16で包装することによって平版印刷版束14を作製する。作製した平版印刷版束14を、図2に示すように、パレット20の積載板22の上に、厚さ方向に所定束数(たとえば4束)重ねて載置する。これにより、平版印刷版束群12が形成される。次いで、平版印刷版束群12の上に当てボール26を積層し、その当てボール26の上に発泡ブロック28を積み重ねる。さらに、発泡ブロック28の上に天板30を重ねた後、布ベルト34、34を巻き付ける。布ベルト34、34は、パレット20と天板30とを少なくとも一周させ、所定の張力で緊張させた状態にする。これにより、天板30がパレット20に向けて押圧されるので、平版印刷版束群12を天板30とパレット20とで挟持することができる。布ベルト32、32…の張力は、大き過ぎると天板30の変形を誘発し、小さ過ぎると平版印刷版束群12の固定が不十分になるので、3400N以上4400N以下が好ましく、3700N以上3900N以下がさらに好ましい。なお、布ベルト32、32の張力調整手段は特に限定するものではないが、たとえば張力の調整機能を有する金具に布ベルト32を通すことによって布ベルト32の張力を所望の値に制御する。
【0024】
次の上記の如く構成された包装構造体の作用について説明する。
【0025】
図3、図4に示すように内装材16を折り返して平版印刷版11を包装した場合、その平版印刷版束14は、部分的に内装材16の重なり枚数が異なる。すなわち、内装材16が全く重ならない部分では、平版印刷版11の積層物の上面と下面に内装材16が配置されて二枚分の厚みが加わるのに対して、内装材16が最も重なった部分では、折り返された内装材16とテープ18とで約六枚分の厚みが加わる。このため、包装後の平版印刷版束14は、その厚みが局所的に変化することになる。したがって、平版印刷版束14を積層した平版印刷版束群12を布ベルト32で締めて押圧すると、内装材16の重なり枚数が多い部分では強く押圧されることになり、内装材16の重なり枚数が少ない部分では押圧力が弱くなる。このように平版印刷版束群12が局所的に強く押圧されると、その部分では、表面の感光面や感熱面が損傷しやすくなる。特にレーザ露光型の平版印刷版の場合は、製版面が弱いので損傷を受けやすいという問題がある。
【0026】
これに対して、本実施の形態では、平版印刷版束群12と天板30との間に発泡ブロック28が介在されるので、発泡ブロック28が緩衝材として作用し、布ベルト32を締めた際の押圧力が分散されて平版印刷版束群12に押圧力が略均等に加わる。よって、内部の平版印刷版11に局所的な押圧力が加わることを防止することができ、平版印刷版11が損傷することを防止することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、天板30の幅方向の中央部にブロック34が設けられ、このブロック34に布ベルト32が巻き付けられる。したがって、平版印刷版束群12の幅方向の中央部はブロック34によって押圧される。よって、平版印刷版束群12の縁部分に局所的な押圧力が加わることを防止することができ、平版印刷版11の面状故障の発生を防止することができる。特に本実施の形態では、突出量Eが160〜350mm、角度θが15°以上になるようなブロック34を設けたので、中央部で十分な押圧力を得ることができ、面状故障の発生を確実に防止することができる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、直方体状のブロック34を設けたが、ブロック34の形状はこれに限定するものではなく、たとえばブロック34に孔を形成して軽量化を図るようにしてもよい。その際、布ベルト32の巻き付け方向と直交するように、孔を形成することが強度的に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施の形態における包装構造体を示す斜視図
【図2】図1の包装構造体の分解図
【図3】平版印刷版束を示す斜視図
【図4】図3の平版印刷版の分解図
【図5】図1の包装構造体の側面図
【符号の説明】
【0030】
10…包装構造体、12…平版印刷版束群、14…平版印刷版束、16…内装材、18…テープ、20…パレット、22…積層板、24…脚部、26…当てボール、28…発泡ブロック、30…天板、32…布ベルト、34…ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載台と、
該積層台の上に、シート状物を厚み方向に積層したシート束が1個または複数個積層されたシート束積層体と、
前記シート束積層体の上に積層された板状の発泡ブロックと、
前記発泡ブロックの上に配置された天板と、
前記天板の上面の略中央部に設けられ、該天板よりも狭い幅で形成された当てブロックと、
前記積載台と前記天板とで前記シート束積層体を挟み込むように巻き付けて拘束するベルトと、
を備えたことを特徴とする包装構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−195434(P2008−195434A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33777(P2007−33777)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】