説明

包装機におけるフィルム制動装置

【課題】簡易な構成で、製造コストが低く、メンテナンス性が良好で、フィルムロールの巻径に応じたブレーキ圧の制御を行える包装機のフィルムロールの制動装置を提供する。
【解決手段】巻径計測装置20からのパルス信号23を受けた制御装置30がフィルムロールFrの巻径を算出し、巻径に比例したエア圧指令信号18を電空レギュレータ16におくり、電空レギュレータ16が指令に基づくエア圧をエアシリンダ14に供給することで、エアシリンダ14が皮ベルト11を引張する力が変化し、巻取り軸に対する制動力がフィルムロールFrの巻径に応じた適正な値を常に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装機におけるフィルム制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状包装材Fwを製筒器により筒状にして筒状包装材Ftに成形し、重合部にセンタシールを施し、被包装品を筒状包装材内部に供給し、被包装品Pの前後にエンドシールを施すとともに切断することで、内部に被包装品が入った袋包装体Bpを製造する製袋充填包装機、あるいは、帯状包装材Fwを一定寸法に裁断して被包装品Pの周囲を包み込むようにして上包み包装体Wpを製造する上包み包装機において、使用する帯状包装材Fwは、巻き取られてロール状の状態の包材ロールFrとして供給される。包装機は、この包材ロールFrを巻取り軸に装着し、該フィルムロールFrから帯状包装材Fwを紙送り機構により引き出して使用する。
【0003】
製袋充填包装機は、包装材Fwの搬送を停止することなく連続して行う連続動作型と1袋ごとに包装材の搬送を行う間欠動作型がある。また、上包み包装機は、被包装品1つごとに使用する包装材を裁断して行う間欠動作型である。
【0004】
連続動作型の製袋充填包装機の場合、帯状包装材Fwを連続して引き出すようにしていると、フィルムロールFrはその帯状包装材Fwの引き出しに追従して回転するため、一定の慣性力が生じている。そして、その慣性力にともなう回転速度と、フィルムロールFrの引き出し速度との間で差が出ると、帯状包装材Fwに弛みが生じるおそれがある。そして、このように帯状包装材Fwが弛むと、例えば包装装置の製筒器を通過して製袋される際に、帯状包装材Fwが蛇行してしまい、所望の場所にセンタシール部位が形成されず、その結果、最終的な包装体が不良品となるおそれがある。
【0005】
間欠動作型の製袋充填包装機、あるいは、上包み包装機の場合、紙送り装置が一定寸法の帯状包装材Fwを引き出して停止した際に、フィルムロールFrは慣性力により惰性で回転するため帯状包装材Fwに弛みが生じるおそれがある。
したがって、フィルムロールFrにこの回転を制動する制動装置を設けて、その包材ロールFrの回転を制動することによって帯状包装材Fwに張力を付与し、上記弛みの発生を防止するようにしている。
【0006】
この種の制動装置で最もシンプルなものは、フィルムロールFrの装着された巻取り軸に皮ベルトを巻き付けたもので、一方の端部を固定し、もう一方の端部はスプリングを介して固定するものである(例えば特許文献1の第2頁左欄の従来技術及び図5参照のこと)。この方法により、おおよその解決が図れており、構造も簡易で、メンテナンス性も良好である。しかしながら、この方式では、包装材の消費に伴って包材ロールFrのロール径が徐々に小さくなって包装材の重量が減少して行くと、フィルムロールFrの回転方向への慣性も小さくなり、それに伴って軸に対するバンドのブレーキ力が大きくなる。この結果フィルムに働くテンションでフィルムが伸びたり、またフィルムの供給に遅れが生じたりする欠点があった。
【0007】
これに対する解決策として、フィルムロールFrの巻径を計測し、その巻径に応じた制動力を付与する提案が、特許文献1、特許文献2、特許文献3などで提案されている。
【0008】
特許文献1に示される方法は、フィルムロールFrの装着された巻取り軸に、フィルムロールFrはその帯状包装材Fwの引き出しに追従して回転するのとは逆方向に回転するトルクモータを装着するとともに巻取り軸のスピードと比例的な電圧を発生する電圧発生装置を装着し、電圧発生装置とトルクモータとを抵抗変換器を介して電気的に接続し、巻取り軸のスピードが上昇するとトルクモータの出力トルクが減少するように抵抗変換器が電気抵抗を制御するように構成したものである(特許文献1の第2頁左欄第27行目から第2頁右欄第3行目参照のこと)。
特許文献2に示される方法は、巻取り軸に設けるモータを駆動源とする摩擦ブレーキ装置のブレーキ調整をフィルムロールFrの巻径に応じて行うものである。使用する包装材の種類を指示する入力データに基づき、フィルムロールFrの最大径のときの必要な最大ブレーキ力及び最小径のときの必要な最小ブレーキ力となるようにデータ記憶し、最大ブレーキ力と最小ブレーキ力との間のブレーキ力の制御は、フィルムロールFrの巻径を演算し、その径に比例したブレーキ力となるように摩擦ブレーキ装置のモータを制御するものである(特許文献2段落5参照のこと)。
【0009】
特許文献3に示される方法は、フィルムロールFrの装着された巻取り軸に電磁パウダ−ブレーキやヒステリシス式ブレーキ等からなる制動機構を設け、帯状包装材Fwの張力を計測するテンションセンサにより得られる張力が一定となるように制動力を制御するものである(特許文献3の段落6から段落7参照のこと)。
【0010】
これらの制動力制御方法により一定程度の解決は得られるが、いずれの方法も、機構が複雑であり、コストも高くなるという難点がある。また制動手段は基本的に消耗品であり、一定の時間が経過したら交換しなければならないが、これらのブレーキ装置の交換は大掛かりなものとなりメンテナンス性がよくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平7−76017号公報
【特許文献2】特開平5−213319号公報
【特許文献3】特開平8−198206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
簡易な構成で、製造コストが低く、メンテナンス性が良好で、フィルムロールの巻径に応じたブレーキ圧の制御を行える包装機のフィルムロールの制動装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、フィルムロールから帯状包装材を引き出して、被包装品の包装に用いる包装機において、
前記フィルムロールを装着する巻取り軸に制動圧可変式のブレーキ機構と、
フィルムロールの巻径計測装置と
前記巻径計測装置により得られたフィルムロールの巻径に応じて前記ブレーキ機構の制動圧を制御する制御装置とを備え、
前記制動圧可変式のブレーキ機構が、前記巻取り軸に巻き付けられた皮ベルトと、
皮ベルトを引張するエアシリンダと、
エアシリンダに供給する空気圧を前記制御装置からの指令により可変する電空レギュレータとから構成され、
前記フィルムロールの巻径計測装置が、放射状の切欠きを備え前記巻取り軸に固定された円板と切欠きを探知するセンサから構成されていることを特徴とする包装機におけるフィルム制動装置である。
【0014】
請求項1の発明によれば、巻径測定装置とエアシリンダと電空レギュレータを付加することにより、皮ベルトを用いた簡易な構成でもフィルムロールの巻径に応じた最適なブレーキ圧を制御することができることができる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明に係わるもので、前記制御装置が、前記フィルムロールの巻径が最大のときに前記制動圧可変式のブレーキ機構を最大のブレーキ圧に制御し、
前記フィルムロールの巻径が最小のときに最小のブレーキ圧に制御し、中間部においては、前記フィルムロールの巻径計測装置により計測された巻径に比例したブレーキ圧に制御することを特徴とした包装機におけるフィルム制動装置である。
【0016】
請求項2の発明によれば、記制御装置は、慣性力が最も大きいフィルムロールの巻径が最大の時にブレーキ圧が最大となり、慣性力が最も小さいフィルムロールの巻径が最小のときに最小のブレーキ圧にとなるよう制御し、中間部においては、前記フィルムロールの巻径計測装置により計測された巻径に比例したブレーキ圧に制御することで、フィルムロールの巻径がどのような状態でも最適なブレーキ圧を保つように制御を行うことができる。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の発明に係わるもので、前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始時には、前記制動圧可変式のブレーキ機構を一時的に最小のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした包装機におけるフィルム制動装置である。
【0018】
請求項3の発明によれば、前記制御装置が、帯状包装材の搬送開始時に、一時的に最小のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うので、帯状包装材の搬送開始時の停止慣性に対応できる。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明に係わるもので、前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送停止時には、前記制動圧可変式のブレーキ機構を一時的に最大のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした包装機におけるフィルム制動装置である。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記制御装置が、帯状包装材の搬送停止時に、一時的に最大のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うので、帯状包装材の搬送停止時の回転慣性に対応できる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1の発明に係わるもので、前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始時に巻径に比例したブレーキ圧とし一定時間経過後に最小のブレーキ圧に可変し、前記帯状包装材の搬送開始時に再び巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした包装機におけるフィルム制動装置である。
【0022】
請求項5の発明によれば、制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始時に巻径に比例したブレーキ圧とし一定時間経過後に最小のブレーキ圧に可変し、前記帯状包装材の搬送開始時に再び巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことができるので、機械回転数や袋長さなどの包装条件に余裕があり帯状包装材の搬送中のフィルムロールの回転慣性の影響が少ない場合、該制御を実施することでブレーキ機構の消耗を最小限に抑えることができる。
【0023】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5の発明の係わるもので、前記フィルムロールの巻径の最大値、前記フィルムロールの巻径が最大のときに最大のブレーキ圧、前記フィルムロールの巻径が最小のときに最小のブレーキ圧が操作部により制御装置に製品ごとに設定可能であることを特徴とした包装機におけるフィルム制動装置である。
【0024】
請求項6の発明によれば、使用するフィルムロールの最大直径、フィルムロールの最大直径のときの最大ブレーキ圧、フィルムロールの最小直径のときの最小ブレーキ圧が操作部より制御装置に製品アイテムごとに設定可能であるので、どのような種類の包材にも対応可能で兼用も可能である。
【0025】
請求項7発明は、請求項1の発明に係わるもので、前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始に先立って、テスト的に一定量前記帯状包装材の搬送を行い、その間に前記フィルムロールの巻径を計測し記憶する巻径計測モードを備えていることを特徴とした請求項1に記載の包装機におけるフィルム制動装置である。
【0026】
請求項7の発明によれば、搬送開始に先立って、テスト的に一定量前記帯状包装材の搬送を行い、その間に前記フィルムロールの巻径を計測し記憶する巻径計測モードを備えているので、適正なブレーキ圧で帯状包装材の搬送を開始することができる。
【0027】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係わるもので、前記包装機が前記フィルムロールから引き出した帯状包装材を製筒器により筒状包装材に成形し、被包装品を筒内に供給し、筒の重合部にセンタシールを施し、前記筒状包装材の前記被包装品の前後の位置にエンドシールを施したのち切断し、前記被包装品を内蔵した袋包装体を製造する横型あるいは縦型の製袋充填包装機であることすることができる。
【0028】
請求項9の発明は、請求項1請求項1から請求項7のいずれかの発明に係わるもので、前記包装機が前記フィルムロールから引き出した帯状包装材を一定寸法に裁断して前記被包装品の周囲を包み込むようにして上包み包装体を製造する上包み包装機であるとすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の包装機のフィルムの制動装置は、制動機構が皮ベルトを用いた機構なので、簡易な構成で、製造コストが低く、メンテナンス性も良好である。制動の制御もモータなどを用いていないためコストが低いが、モータなどを用いた場合と同様にフィルムロールの巻径に応じたブレーキ圧の制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用される横型製袋充填包装機の概略図である。
【図2】制動装置及び巻径計測装置の外観の斜視図である。
【図3】制動装置と巻径計測装置と制御装置の関係を説明する図である。
【図4】電空レギュレータの動作を説明する図である。
【図5】操作部(タッチパネル表示器)のフィルムロール制動装置の設定画面の図である。
【図6】製品アイテムごとの制動圧の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の横型製袋充填包装機への実施例について図を用いて説明する。図1は本発明の適用された横型製袋充填包装機の概略図である。巻取り軸1に装着されたフィルムロールFrから引き出された帯状包装材Fwは、紙送りローラ2によって下流に搬送され、製筒器3により湾曲され長手方向の縁部を重合され、筒状包装材Ftが成形される。筒状包装材Ftは、被包装品Pが図示しない供給コンベヤにより筒内に搬送されるとともに筒状包装材Ftの重合部を挟持する一対のロールから構成された紙引きローラ4が回転することにより、さらに下流へと搬送される。紙引きローラ4の下流にあるセンタシール装置5は、筒状包装材Ftの重合面にセンタシールを施す。その後、被包装品Pを内蔵した筒状包装材Ftは、エンドシール装置6により筒状包装材Ft内部の被包装品Pを挟む前後に夫々エンドシール・切断を施して、ピロー包装体Bpを製造する。エンドシール装置は内部に図示しないカッタを内蔵しており、これにより切断を行う。
【0032】
巻取り軸1は図示しない本体フレームに片持ちに取り付けられ、回転自在であり、帯状包装材Fwが引き出される動きに従動して回転する。巻取り軸1の本体フレーム側の端部には、制動装置10と巻径計測装置20が取り付けられている。制動装置10は、帯状包装材Fwの引き出しに追従して回転することにより発生する慣性力を制動する制動し帯状包装材Fwに一定の張力を付与し、帯状包装材Fwに弛みや過度の伸びが発生するのを防止している。巻径計測装置20は、巻取り軸の回転量からフィルムロールFwの径を測定する装置である。
【0033】
制動装置10と巻径計測装置20の構成について、図2及び図3を用いて説明する。制動装置10は、巻取り軸1の本体フレーム側の端部に設けられ、巻取り軸1に巻き掛けられた皮ベルト11、皮ベルト11の一方の端部を本体フレームに固定する皮ベルト固定部12、皮ベルト11の他方の端部をエアシリンダ14と連結する連結部13、皮ベルト11を引張するエアシリンダ14、エアシリンダ14と電空レギュレータ16を結ぶエア配管である変圧エア供給管15、制御装置30からのエア圧指令信号18に基づく圧力のエアをエアシリンダ14に供給する電空レギュレータ16、電空レギュレータ16にエア圧指令信号を伝達する指令信号線19、電空レギュレータ16にエア源からの定圧エアを供給するエア供給管17、制動装置10を含む機械全体を制御する制御装置30、制御装置30の操作部32から構成される。
巻径計測装置20は、巻取り軸1の本体フレーム側の端部に設けられ、周縁に放射状の切欠きを設けた円板である探知板21と、探知版21の切欠きを探知し、パルス信号23を制御装置30へ送るセンサ22、パルス信号23を制御装置30へと伝達するパルス信号線24から構成される。本実施例において、センサ22は光学式のセンサを使用しているが、磁気式のセンサでもよい。
【0034】
次に、制動装置10と巻径計測装置20及び制御装置30の動作について図3を用いて説明する。本発明の包装機におけるフィルム制動装置は、巻径計測装置20からのパルス信号23を受けた制御装置30がフィルムロールFrの巻径を算出し、巻径に比例したエア圧指令信号18を電空レギュレータ16におくり、電空レギュレータ16が指令に基づくエア圧をエアシリンダ14に供給することで、エアシリンダ14が皮ベルト11を引張する力が変化し、巻取り軸に対する制動力がフィルムロールFrの巻径に応じた適正な値を常に保つというものである。それぞれの詳細についていかに説明する。
【0035】
まず、フィルムロールFrの巻径の計測についてであるが、探知板21は巻取り軸1の端部に同軸に取り付けられているので、帯状包装材Fwの引き出しに追従してフィルムロールFrが回転すると、巻取り軸1も回転するので、探知板21も回転する。これにより、センサ22は、切欠き部とそうでない部分を交互に探知することとなり、パルス信号23が得られる。制御装置30は、このパルス信号からフィルムロールFrの巻径を算出する。探知板21に設けられた切欠きの数は既知であるから、巻取り軸1が1回転すると得られるパルスの数も既知である。このパルスを袋一体分の長さの帯状包装材Fwを送る間にこのパルスをカウントすればフィルムロールFrの巻径が求められる。即ち、袋一体分の長さの帯状包装材Fwを送る間に得られたパルス数と巻取り軸1が1回転すると得られるパルスの数から巻取り軸1が何回転したかを求めれば、その数値と袋一体分の長さからフィルムロールの円周が求めることができ、円周からフィルムロールの直径を算出することができる。フィルムロールFrの巻径が小さければ、円周も短いので、袋一体分の長さの帯状包装材Fwを送る間にカウントされるパルスは多く得られ、フィルムロールFrの巻径が大きければ、円周も長いので、袋一体分の長さの帯状包装材Fwを送る間にカウントされるパルスは少なく得られることを利用したものである。
なお、この巻径計測装置20からのパルス信号23を利用してフィルムロールのフィルム終端検出を行うことも可能である。
【0036】
次に、制御装置30からのエア圧指令信号18を受けて、エアシリンダ14に供給するエア圧を可変する電空レギュレータ16についてであるが、電空レギュレータ16は前述したように指令信号に応じた圧力のエアを供給する装置である。本実施例で使用する電空レギュレータ16は図4に示すように、0V−5V指令電圧40に基づき出力エア圧45を可変する形式のもので、初期設定として最小指令電圧42が0V時の最小エア圧43(例えば0.1メガパスカル)と最大電圧指令41が5V時の最大エア圧44(例えば0.5メガパスカル)を設定しておけば、0Vの指令信号のときは0.1MPa、5Vの指令信号のときは0.5MPaのエア圧が出力され、0Vから5Vの間の指令のときは、0V/0.1MPaと5V/0.5MPaの座標を結ぶ直線上の指令に比例したエア圧が出力される。
【0037】
次に、制御装置30であるが、制御装置30はエア圧指令信号18として0V−5Vを0.1V単位に50段階に可変可能な電圧出力を備えている。また、製造する製品ごとにフィルムロール径最大時のブレーキ力の設定値51、フィルムロール径最小時のブレーキ力の設定値52、使用するフィルムロールの最大径の設定値50が設定記憶できるように構成されている。これは、製品ごとに使用するフィルムロールの最大時の巻径、フィルムの幅が異なる可能性があり、機械回転数や一袋あたりの袋長さなどの包装条件も異なるため最適な制動圧を付加するために必要だからである。これらの設定値は図3に示すように制御装置30に接続されている操作部32より設定され、制御装置が製品アイテムごとに記憶する。本実施例においては、エア圧指令信号18の0V−5Vを0.1V単位に50段階の分解能としているが、分解能を低くして、おおよその制御とすることも、分解能を高くして精密な制御とすることも可能である。
【0038】
本実施例の操作部はタッチパネル表示器である。図5に本実施例の操作部の画面を示す。フィルムロールの最大径の設定値50は、最大時の巻径すなわち使用してない新規の状態のフィルムロールの巻径を設定するものである。これは、最小の巻径即ち紙管の径は90mmで規格化され固定されているが、最大巻径は、ユーザーの指定により変化する可能性があるからである。また、本発明は巻径に応じて制動圧、即ち制御部から出力されるエア圧指令信号18が変化するものであるから、最大巻径が変われば、単位電圧(本実施例の場合0.1V)に対する巻径の減少量の単位が異なってくる。例えば、フィルムロールの最大径の設定値50の値が400mmであれば最小の巻が90mmであるから巻径の変化量は310mmとなり、これを50段階に分割すると6.2mmごとに0.1Vの電圧を変化させることになる。また、フィルムロールの最大径の設定値50の値が800mmであれば最小の巻が90mmであるから巻径の変化量は710mmとなり、これを50段階に分割すると14.2mmごとに0.1Vの電圧を変化させることになる。
【0039】
次にフィルムロール径最大時のブレーキ力の設定値51、フィルムロール径最小時のブレーキ力の設定値52の設定であるが、これは、最大巻径のとき、最小巻径のときにそれぞれどの程度の制動圧が必要かによって異なるため設けてある。前述のように、フィルム幅や機械回転数や一袋あたりの袋長さなどの包装条件により、帯状包装材Fwの引き出しに追従してフィルムロールFrが回転することにより発生する慣性力は異なるためである。 例えば、幅の広いフィルムを使用する製品アイテム01と、幅が狭いフィルムを使用する製品アイテム02があった場合、幅の広いフィルムを使用する製品アイテム01は幅が広いので重量が多いので慣性力も大きくブレーキ力を強くする必要があり、幅が狭いフィルムを使用する製品アイテム02は製品アイテム01よりブレーキ力を弱くする必要がある。この場合、図6に示すようにブレーキ力を強くする必要がある製品アイテム01の場合、製品アイテム01の最大ブレーキ力60を最大の指令電圧5V=エア圧0.5MPaに設定し、製品アイテム01の最小ブレーキ力61を指令電圧1V=0.18MPaに設定しておき、製品アイテム01よりブレーキ力を弱くする必要がある製品アイテム02の場合、製品アイテム02の最大ブレーキ力62を最大の指令電圧4V=エア圧0.42MPaに設定し、製品アイテム02の最小ブレーキ力63を指令電圧0.5V=0.14MPaに設定しておけば、それぞれ適正なブレーキ力を得ることができる。
【0040】
フィルムロール径測定値のモニタ53は、制御装置が測定した現在の巻径を表示したものである。フィルムロール測定値のリセットボタン54は、巻径の計測値を初期状態に戻すボタンである。初期状態とは制御装置30が巻径を把握できない状態を指す。例えば機械の電源投入直後や、フィルムが終了してフィルムロールを交換したとき、製品アイテムが切り換えられたときなど、そのとき装着されたフィルムロールFrが使用してない新規の状態のフィルムロールなのか使いかけのフィルムロールなのかは、帯状包装材Fwの搬送が開始され巻径計測が行われないと制御装置30は把握できないので、そのような状態においてはフィルムロール径最大時のブレーキ力の設定値51、フィルムロール径最小時のブレーキ力の設定値52の中間のエア圧指令信号18を仮に設定し、巻径計測が行われたら適正なエア圧指令信号18に可変させる処理を行う。制御装置30がフィルムロールFrが交換されたのを把握できない場合に備えて、フィルムロール測定値のリセットボタン54を設けてある。本実施例では操作部32のタッチパネル表示器にボタンを設けてあるが、別にスイッチを設けてもよい。
【0041】
本実施例では、制御装置30が巻径を把握できない初期状態においては、フィルムロール径最大時のブレーキ力の設定値51、フィルムロール径最小時のブレーキ力の設定値52の中間のエア圧指令信号18を仮に設定する方式に構成したが、テスト的に一定量の包材搬送を行いその間にフィルムロールFrの巻径を計測する巻径計測モードを設け、通常運転前に自動あるいは手動によって巻径計測を行っておくように構成することもできる。
【0042】
また、本実施例の横型製袋充填包装機においては、帯状包装材Fwの搬送開始時と搬送停止時において、それぞれ制動圧を巻径に応じた適正値から変化させる制御を実施している。これは、帯状包装材Fwの搬送開始時においては、停止慣性に対応するため制動圧を下げ過度の伸びを防ぐためであり、帯状包装材Fwの搬送停止時には、回転慣性に対応するため制動圧を上げ過度のたるみを防ぐためである。また、この帯状包装材Fwの搬送開始時と搬送停止時の制動圧の可変機能は製品アイテムごとに「使用する・使用しない」の設定を設けることも可能である。さらに、そのときの制動圧の値を製品アイテムごとに設定できるようにすることも可能である。
【0043】
さらに、機械回転数や袋長さなどの包装条件に余裕があり帯状包装材の搬送中のフィルムロールの回転慣性の影響が少ない場合、帯状包装材Fwの搬送開始時に巻径に比例したブレーキ圧とし一定時間経過してフィルムロールFrの回転慣性が安定したら最小のブレーキ圧に可変し、前記帯状包装材の搬送開始時に再び巻径に比例したブレーキ圧に戻して停止慣性に対応する制御を行うこともできる
【0044】
以上、本発明である包装機におけるフィルム制動装置の横型製袋充填機への実施例を説明したが、本発明は縦型製袋充填包装機や上包み包装機にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 巻取り軸 2 紙送りローラ
3 製筒器 4 紙引きローラ
5 センタシール装置 6 エンドシール装置
10 制動装置 11 皮ベルト
12 皮ベルト固定部 13 連結部
14 エアシリンダ 15 変圧エア供給管
16 電空レギュレータ 17 エア供給管
18 エア圧指令信号 19 指令信号線
20 巻径計測装置 21 探知板
22 センサ 23 パルス信号
24 パルス信号線 30 制御装置
31 包材搬送状態信号 32 操作部
40 指令電圧 41 最大指令電圧
42 最小指令電圧 43 最小エア圧
44 最大エア圧 45 出力エア圧
50 使用するフィルムロールの最大径の設定値
51 フィルムロール径最大時のブレーキ力の設定値
52 フィルムロール径最小時のブレーキ力の設定値
53 フィルムロール径測定値のモニタ
54 フィルムロール測定値のリセットボタン
60 製品アイテム01の最大ブレーキ力
61 製品アイテム01の最小ブレーキ力
62 製品アイテム02の最大ブレーキ力
63 製品アイテム02の最小ブレーキ力



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムロールから帯状包装材を引き出して、被包装品の包装に用いる包装機において、
前記フィルムロールを装着する巻取り軸に制動圧可変式のブレーキ機構と、
フィルムロールの巻径計測装置と
前記巻径計測装置により得られたフィルムロールの巻径に応じて前記ブレーキ機構の制動圧を制御する制御装置とを備え、
前記制動圧可変式のブレーキ機構が、前記巻取り軸に巻き付けられた皮ベルトと、
皮ベルトを引張するエアシリンダと、
エアシリンダに供給する空気圧を前記制御装置からの指令により可変する電空レギュレータとから構成され、
前記フィルムロールの巻径計測装置が、放射状の切欠きを備え前記巻取り軸に固定された円板と切欠きを探知するセンサから構成されていることを特徴とする包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項2】
前記制御装置が、
前記フィルムロールの巻径が最大のときに前記制動圧可変式のブレーキ機構を最大のブレーキ圧に制御し、
前記フィルムロールの巻径が最小のときに最小のブレーキ圧に制御し、
中間部においては、前記フィルムロールの巻径計測装置により計測された巻径に比例したブレーキ圧に制御することを特徴とした請求項1に記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項3】
前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始時には、前記制動圧可変式のブレーキ機構を一時的に最小のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした請求項1に記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項4】
前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送停止時には、前記制動圧可変式のブレーキ機構を一時的に最大のブレーキ圧に可変し、その後、巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした請求項1に記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項5】
前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始時に巻径に比例したブレーキ圧とし一定時間経過後に最小のブレーキ圧に可変し、前記帯状包装材の搬送開始時に再び巻径に比例したブレーキ圧に戻す制御を行うことを特徴とした請求項1に記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項6】
前記フィルムロールの巻径の最大値、前記フィルムロールの巻径が最大のときに最大のブレーキ圧、前記フィルムロールの巻径が最小のときに最小のブレーキ圧が操作部により制御装置に製品アイテムごとに設定可能であることを特徴とした請求項1から請求項5のいずれかに記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項7】
前記制御装置が、前記帯状包装材の搬送開始に先立って、テスト的に一定量前記帯状包装材の搬送を行い、その間に前記フィルムロールの巻径を計測し記憶する巻径計測モードを備えていることを特徴とした請求項1から請求項5のいずれかに記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項8】
前記包装機が前記フィルムロールから引き出した帯状包装材を製筒器により筒状包装材に成形し、被包装品を筒内に供給し、筒の重合部にセンタシールを施し、前記筒状包装材の前記被包装品の前後の位置にエンドシールを施したのち切断し、前記被包装品を内蔵した袋包装体を製造する製袋充填包装機であることを特徴とした請求項1から請求項7のいずれかに記載の包装機におけるフィルム制動装置。
【請求項9】
前記包装機が前記フィルムロールから引き出した帯状包装材を一定寸法に裁断して前記被包装品の周囲を包み込むようにして上包み包装体を製造する上包み包装機であることを特徴とした請求項1から請求項7のいずれかに記載の包装機におけるフィルム制動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206790(P2012−206790A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71737(P2011−71737)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000148162)株式会社川島製作所 (90)
【Fターム(参考)】