説明

包装用樹脂組成物および包装用フィルム

【課題】酸素存在下に置かれてから比較的短い期間で十分な酸素吸収性能を発揮し、しかも、酸素吸収に伴う臭気の発生が抑制され、さらには、透明性および機械的強度にも優れる包装用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂に、共役ジエン重合体環化物を含有してなる酸素吸収性樹脂組成物が分散されてなる包装用樹脂組成物。酸素吸収性樹脂組成物としては、さらに軟化剤を含有してなる、ガラス転移温度が−30℃〜+30℃のものが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用樹脂組成物、およびその組成物を用いてなる包装用フィルムに関し、さらに詳しくは、特に酸素吸収性および低臭気性に優れ、食品、飲料、医薬品などの酸素の存在により劣化する内容物を包装するための包装材料を構成するために好適に用いられる包装用樹脂組成物および包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品などは、酸素と接触するにより品質の劣化が起こるため、極力酸素と接触しないように貯蔵することが要求される。そのため、食品、飲料、医薬品などを貯蔵する容器または包装内に窒素などの不活性ガスを充填することも行なわれている。しかし、この方法には、製造時にコストアップになる問題や、一旦開封すると外部から空気が流入し、それ以後の品質劣化を防止することができなくなる問題が存在する。そのため、容器または包装内に残存する酸素を除去する手法について種々の検討が行なわれている。
【0003】
近年、酸素を除去する手法として、酸素吸収性を有する樹脂組成物を用いて容器または包装を構成し、その容器または包装自体に酸素を吸収させる手法が注目されている。酸素吸収性を有する樹脂組成物を構成するための材料としては、種々の材料が検討されているが、その1つとして、酸素バリア性や透明性に優れ、さらには機械的強度にも優れるポリアミド樹脂の使用が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリアミド樹脂自体が酸素と反応することにより酸素を吸収する組成物として、ポリアミド樹脂と遷移金属系触媒とを含有する酸素吸収性樹脂組成物が提案されている。この酸素吸収性樹脂組成物では、末端アミノ基濃度が10〜50eq/10gのポリアミド樹脂を用いることにより、ポリアミド樹脂による酸素吸収の速度が一定値以上に保持できるとされている。しかしながら、特許文献1に記載された樹脂組成物では、ポリアミド樹脂自体が酸素と反応するために、ポリアミド樹脂の酸素バリア性や機械的強度が劣化してしまうという問題が存在する。
【0005】
この特許文献1に記載された樹脂組成物の欠点を改良し得る技術として、特許文献2において、ポリアミド樹脂と、酸化性有機成分と、遷移金属系触媒とを含有してなる酸素吸収性樹脂組成物が提案されている。この特許文献2に記載された組成物は、ポリアミド樹脂自体には酸素との反応を行わせないことにより、ポリアミド樹脂の劣化を防止して、酸素バリア性や機械的強度を維持しつつ、他の酸化性有機成分(マレイン酸変性ポリブタジエンに遷移金属系触媒を添加したものなど)を酸素と反応させることによって酸素吸収を行うことを特徴とするものである。この特許文献2では、ポリアミド樹脂自体の酸素による劣化を防止する観点から、末端アミノ基濃度が40eq/10g以上のポリアミド樹脂を用いることが好ましいとされている。
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載された組成物は、遷移金属系触媒を必須の成分として、ポリアミド樹脂または酸化性有機成分と酸素との反応を促進させることにより、優れた酸素吸収性を発揮するものである。しかし、遷移金属系触媒を含有する酸素吸収性組成物では、酸素の吸収に伴って、強い臭気が発生し易いという問題が存在する。酸素吸収性を有する樹脂組成物は、食品、飲料、医薬品などの容器や包装として用いられるものであるので、臭気の発生は、重大な問題となるものである。
【0007】
そこで、本発明者は、遷移金属系触媒を含有しなくとも、優れた酸素吸収性を発揮できる樹脂組成物として、共役ジエン重合体環化物を酸素吸収性樹脂として用いた樹脂組成物を提案している。例えば、本発明者は、特許文献3において、酸素吸収性と低臭気性に優れる酸素吸収性樹脂組成物として、共役ジエン重合体環化物などの酸素吸収性樹脂と軟化剤とを含有する樹脂組成物を、ポリアミド樹脂などの酸素透過度が低い樹脂中に分散してなる酸素吸収性樹脂組成物を提案している。この特許文献3には、具体例として、特定のポリアミド樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバミッド1030」、末端アミノ基濃度33eq/10gのポリアミド6)に共役ジエン重合体環化物と軟化剤からなる樹脂組成物が分散されてなる酸素吸収性樹脂組成物が記載されているが、この酸素吸収性樹脂組成物は、常温下で酸素吸収性能を発揮させるためには、10日間程度の比較的長い期間、酸素存在下に置いておく必要があり、常温下での酸素吸収性の観点において更なる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−11308号公報
【特許文献2】特開2002−241608号公報
【特許文献3】国際公開第2008/102701号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、遷移金属系触媒などの酸化触媒を含有しなくとも、酸素存在下に置かれてから比較的短い期間で十分な酸素吸収性能を発揮し、しかも、酸素吸収に伴う臭気の発生が抑制され、さらには、透明性および機械的強度にも優れる包装用樹脂組成物と、それを用いてなる包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、末端アミノ基濃度が特定の範囲にあるポリアミド樹脂中に、共役ジエン重合体環化物を含有してなる酸素吸収性樹脂組成物を分散させると、酸化触媒を含有せず、しかも、酸素存在下に置かれてから比較的短い期間しか経過していなくとも、十分な酸素吸収性能を発揮する組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0011】
かくして、本発明によれば、末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂に、共役ジエン重合体環化物を含有してなる酸素吸収性樹脂組成物が分散されてなる包装用樹脂組成物が提供される。
【0012】
上記の包装用樹脂組成物では、酸素吸収性樹脂組成物がさらに軟化剤を含有してなり、酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度が−30℃〜+30℃であることが好ましく、用いる軟化剤としては、流動パラフィンおよび炭素数18以上の高級脂肪酸から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記の包装用樹脂組成物を用いてなる包装用フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、酸化触媒を含有しなくとも、酸素存在下に置かれてから比較的短い期間で十分な酸素吸収性能を発揮し、しかも、酸素吸収に伴う臭気の発生が抑制され、さらには、透明性および機械的強度にも優れる包装用樹脂組成物と、それを用いてなる包装用フィルムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の包装用樹脂組成物は、末端アミノ基濃度が特定の範囲内であるポリアミド樹脂中に特定の酸素吸収性樹脂組成物を分散させることにより得られるものである。本発明で用いる酸素吸収性樹脂組成物は、共役ジエン重合体環化物と、必要に応じて添加される他の成分とからなる樹脂組成物であって、共役ジエン重合体環化物が酸化されることによって、酸素吸収性を発揮することができる樹脂組成物である。
【0016】
本発明において、酸素吸収性樹脂組成物を構成する樹脂として用いられる共役ジエン重合体環化物は、共役ジエン重合体を酸触媒の存在下に環化反応させて得られるものであり、その分子中に環構造を有し、環構造中に少なくとも1つの二重結合を有するものである。
【0017】
共役ジエン重合体環化物を得るために用いられる共役ジエン重合体としては、共役ジエン単量体の単独重合体、2種以上の共役ジエン単量体の共重合体、および共役ジエン単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体を使用することができる。共役ジエン単量体は、特に限定されず、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンが挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの鎖状オレフィン単量体、シクロペンテン、2−ノルボルネンなどの環状オレフィン単量体、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、共重合様式も特に限定されず、例えば、ブロック共重合体であっても良いし、ランダム共重合体であっても良い。
【0019】
共役ジエン重合体の具体例としては、天然ゴム(NR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン−イソプレンブロック重合体、スチレン−ブタジエンブロック重合体を挙げることができる。これらのなかでも、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレンブロック重合体が好ましく用いられ、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレンブロック重合体がより好ましく用いられ、ポリイソプレンゴムが最も好ましく用いられる。これらの共役ジエン重合体は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0020】
共役ジエン重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、通常40モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。共役ジエン重合体の製造方法は常法に従えばよく、例えば、チーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒、ラジカル重合触媒などの適切な触媒を用いて、溶液重合法や乳化重合法により共役ジエン単量体を重合することにより、共役ジエン重合体を得ることができる。また、チーグラー系重合触媒で重合した後、ルテニウムやタングステンなどの触媒を用いてメタセシス分解した共役ジエン重合体も用いることもできる。
【0021】
共役ジエン重合体環化物は、上述したような共役ジエン重合体を酸触媒の存在下に環化反応させることにより得ることができる。環化反応に用いる酸触媒としては、公知のものを使用することができる。その具体例としては、硫酸;フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、これらの無水物およびアルキルエステルなどの有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアンモニウムクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、塩化鉄などのルイス酸;が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、助触媒として、ターシャルブチルクロライド、トリクロロ酢酸を併用してもよい。これらの中でも、有機スルホン酸化合物が好ましく用いられ、p−トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸がより好ましく用いられる。酸触媒の使用量は、共役ジエン重合体100重量部当たり、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
【0022】
環化反応は、通常、共役ジエン重合体を溶媒中に溶解して行なう。溶媒としては、環化反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などの炭化水素溶媒が好ましく用いられる。これらの炭化水素溶媒の沸点は、70℃以上であることが好ましい。共役ジエン重合体の重合反応に用いる溶媒と環化反応に用いる溶媒とは、同一種であってもよい。この場合は、重合反応が終了した重合反応液に環化反応用の酸触媒を添加して、重合反応に引き続いて環化反応を行なうことができる。炭化水素溶媒の使用量は、共役ジエン重合体の固形分濃度が、通常5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%となる範囲である。
【0023】
環化反応は、加圧、減圧及び大気圧のいずれの圧力下でも行なうことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行なうことが望ましい。環化反応を、乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行なうと水分によって引き起こされる副反応を抑えることができる。環化反応における反応温度や反応時間は、特に限定されない。反応温度は、通常50〜150℃、好ましくは70〜110℃であり、反応時間は、通常0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。環化反応を行なった後、常法により、酸触媒を不活性化し、酸触媒残渣を除去し、次いで炭化水素溶媒を除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物を得ることができる。
【0024】
酸素吸収性樹脂組成物を構成するために用いる共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、特に限定されるものではないが、56%以上であることが好ましく、59〜80%であることがより好ましく、62〜75%であることが特に好ましい。不飽和結合減少率がこのような範囲にある共役ジエン重合体環化物を用いることにより、酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収に伴う臭気の発生をさらに抑制することができる。なお、共役ジエン重合体環化物として、不飽和結合減少率の異なる共役ジエン重合体環化物を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0025】
共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、不飽和結合が環化反応によって減少した程度を表す指標であり、以下のようにして求められる数値である。即ち、プロトンNMR分析により、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、全プロトンのピーク面積に対する二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積の比率を、環化反応前後について、それぞれ求め、その減少率を計算する。具体的には、次に述べるようにして、共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率を求めることができる。すなわち、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、環化反応前の全プロトンピーク面積をSBT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSBU、環化反応後の全プロトンピーク面積をSAT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSAUとすると、環化反応前の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SB)は、式:SB=SBU/SBTで表され、環化反応後の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SA)は、式:SA=SAU/SATで表される。そして、不飽和結合減少率は、式:不飽和結合減少率(%)=100×(SB−SA)/SBで求められる。
【0026】
共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、共役ジエン重合体の環化反応における酸触媒の量、反応温度、反応時間などを適宜選択して調節することができる。
【0027】
共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィで測定される標準ポリスチレン換算値として、通常1000〜1,000,000、好ましくは50,000〜500,000、より好ましくは80,000〜300,000である。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、環化に供する共役ジエン重合体の重量平均分子量を適宜選択して調節することができる。なお、共役ジエン重合体環化物が共役ジエン/芳香族ビニル単量体共重合体環化物である場合においては、芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量は、1000〜300,000であることが好ましい。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量を適切に設定することにより、環化反応の際の溶液粘度が適切なものとなると共に、得られる包装用樹脂組成物の加工性や機械的強度が良好となる。
【0028】
共役ジエン重合体環化物におけるゲルの含有量は、トルエン不溶分の含有量として、通常10重量%以下であり、5重量%以下であることが好ましく、実質的にゲルを含有しないことが特に好ましい。ゲルの含有量が多いと、得られる包装用樹脂組成物の加工性が悪くなる場合がある。
【0029】
酸素吸収性樹脂組成物を構成するために用いる共役ジエン重合体環化物のガラス転移温度は特に限定されるものではないが、通常40℃以上であり、50℃以上であることが好ましく、55℃〜80℃であることがより好ましい。共役ジエン重合体環化物のガラス転移温度は、共役ジエン重合体環化物を得るために用いられる共役ジエン重合体の種類に応じて、共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率を調節することなどにより調節することができる。
【0030】
本発明で用いる酸素吸収性樹脂組成物は、共役ジエン重合体環化物のみで構成することもできるが、さらに他の成分を含有していてもよく、なかでも、軟化剤を含有する酸素吸収性樹脂組成物を用いることが好ましい。酸素吸収性樹脂組成物に軟化剤を含有させることにより、酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度を調節することができる。そして、酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度を、−30℃〜+30℃の範囲に調節することにより、特に酸素吸収性能に優れる包装用樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
軟化剤としては、それ自体のガラス転移温度が−30℃以下である液状物が好適に用いられる。また、軟化剤は、共役ジエン重合体環化物と相溶性を有することが好ましく、また、ポリアミド樹脂とは相溶しないものであることが好ましい。軟化剤の具体例としては、イソパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、流動パラフィンなどの炭化水素オイル;ポリブテン、ポリイソブチレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)など)などのオレフィン重合体(低分子量のもの);ポリイソプレンやポリブタジエンなどの共役ジエン重合体の水素化物(低分子量のもの);スチレン−共役ジエン重合体の水素化物(低分子量のもの);オレイン酸やエルカ酸などの炭素数18以上の高級脂肪酸;脂肪酸エステルが挙げられる。これらの軟化剤は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。本発明で用いる酸素吸収性樹脂組成物としては、流動パラフィンおよび炭素数18以上の高級脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の軟化剤を含有するものが特に好適である。
【0032】
軟化剤の配合量は、酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度を目的の範囲にすることができるように、酸素吸収性樹脂組成物の各成分の種類や配合比に応じて決定されるが、酸素吸収性樹脂組成物全体に対して、通常0〜30重量%であり、好ましくは1〜20重量%であり、より好ましくは3〜15重量%である。
【0033】
酸素吸収性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を配合しても良い。樹脂に酸化防止剤を配合することにより、酸素吸収性樹脂組成物の安定性が向上し、加工時などにおける取り扱いが容易になる。酸素吸収性樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、通常5000重量ppm以下、好ましくは3000重量ppm以下、より好ましく2000重量ppm以下、特に好ましくは500重量ppm以下である。酸化防止剤の含有量が多すぎると、酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収を阻害するおそれがある。
【0034】
酸化防止剤は、樹脂材料やゴム材料の分野において通常使用されるものであれば、特に制限されない。このような酸化防止剤の代表的なものとしては、ヒンダードフェノール系、リン系およびラクトン系の酸化防止剤を挙げることができる。これらの酸化防止剤は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらのなかでも、リン系酸化防止剤を用いることが好ましい。なお、これらの酸化防止剤に加えて、さらに、アミン系光安定化剤(HALS)を添加してもよい。
【0035】
酸素吸収性樹脂組成物には、共役ジエン重合体環化物に加えて、他の樹脂を配合しても良い。例えば、ポリα−オレフィン樹脂を配合すると、得られる組成物の機械的強度を改良することができる。ポリα−オレフィン樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体、α−オレフィンとα−オレフィン以外の単量体との共重合体の何れであってもよく、また、これらの(共)重合体を変性したものであってもよい。ポリα−オレフィン樹脂の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体を挙げることができる。ポリα−オレフィン樹脂は、1種を単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0036】
また、酸素吸収性樹脂組成物には、共役ジエン重合体環化物の酸化反応を促進させる酸化触媒と添加しても良い。酸化触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ロジウム、ルテニウムなどの遷移金属の塩(遷移金属系触媒)を代表例として挙げることができる。遷移金属塩の形態の例としては、塩化物、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、2−エチルヘキサン酸エチル、ネオデカン酸塩、ナフトエ酸塩が挙げられる。ただし、本発明において酸素吸収性樹脂組成物を構成するために用いられる共役ジエン重合体環化物は、酸化触媒の非存在下であっても十分な酸素吸収性を発揮する樹脂であるから、酸化触媒の添加は必ずしも必要ではなく、酸素吸収に伴う臭気の発生を抑制する観点からは、酸素吸収性樹脂組成物中に酸化触媒(遷移金属系触媒)が実質的に含有されないことが好ましい。
【0037】
酸素吸収性樹脂組成物には、必要に応じてさらに他の成分を配合しても良い。配合されうる他の成分の具体例としては、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタンなどの充填剤;粘着性付与剤(水添石油樹脂、水添テルペン樹脂、ひまし油誘導体、ソルビタン高級脂肪酸エステル、低分子量ポリブテン);界面活性剤;レベリング剤;紫外線吸収剤;光安定剤;脱水剤;ポットライフ延長剤(アセチルアセトン、メタノール、オルト酢酸メチルなど);ハジキ改良剤;を挙げることができる。
【0038】
本発明の包装用樹脂組成物を構成するために用いる酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収速度は特に限定されるものではないが、30℃における酸素吸収速度が、0.01cc/100cm・日以上のものであることが好ましい。ここで、本発明において、酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収速度は、対象とする酸素吸収性樹脂組成物を厚さ20μmのフィルムとし、そのフィルムを、30℃、大気圧の下、一定容量の乾燥空気中に置いた場合に、そのフィルムが単位面積(100cm)当り1日(24時間)で吸収する酸素の容量(単位:cc)で表すものとする。酸素吸収速度が小さすぎる酸素吸収性樹脂組成物を用いると、得られる包装用樹脂組成物の酸素吸収能力が不十分となる。
【0039】
本発明の包装用樹脂組成物は、上述したような酸素吸収性樹脂組成物が、末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂に分散されてなるものである。本発明で用いるポリアミド樹脂は、重合体主鎖中にアミド結合を含有し、末端アミノ基濃度が30eq/10g以下である樹脂であれば特に限定されないが、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導される脂肪族、脂環族もしくは半芳香族ポリアミド、アミノカルボン酸もしくはそのラクタムから誘導されるポリアミド、これらのコポリアミドもしくはブレンド物が好適に用いられる。
【0040】
ポリアミド樹脂を合成するためのジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などの炭素数4ないし15の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、ジアミン成分としては、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの炭素数4〜25の、特に6〜18の、直鎖状または分岐鎖状アルキレンジアミンや、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミンおよび/またはp−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが挙げられる。アミノカルボン酸成分としては、α,β,ω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などの脂肪族アミノカルボン酸;p−アミノメチル安息香酸、p−アミノフェニル酢酸などの芳香族アミノカルボン酸;などを挙げることができる。
【0041】
ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリε−カプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12共重合体)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ポリアミド6/66共重合体)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12共重合体)が挙げられる。これらのポリアミド樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66共重合体、またはポリアミド6/66/12共重合体が好適に用いられる。これらのポリアミド樹脂は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0042】
本発明で用いるポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が、30eq/10g以下である必要があり、25eq/10g以下であることが好ましく、10〜23eq/10gであることがより好ましい。このような末端アミノ基濃度を有するポリアミド樹脂を用いることによって、得られる包装用樹脂組成物が、酸素存在下に置かれてから比較的短い期間で十分な酸素吸収性能を発揮するものとなる。一方、末端アミノ基濃度が高すぎるポリアミド樹脂を用いると、得られる包装用樹脂組成物は、酸素吸収性能が不十分なものとなるか、酸素存在下に置かれてから十分な酸素吸収性能を発揮するまで長い期間を必要とするものとなる。
【0043】
末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂は、公知の手法にしたがって得ることができる。その具体例としては、固相重合法によって末端アミノ基濃度が30eq/10g以下であるポリアミド樹脂を直接合成する手法や、溶融重合法や固相重合法などによって末端アミノ基濃度が30eq/10gを超えるポリアミド樹脂を得た後、これに末端アミノ基濃度を低下させる処理を行う方法が挙げられる。また、末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂は、市販品として入手することも可能である。
【0044】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度を低下させる処理は、特に限定されないが、アシル化剤を用いてポリアミド樹脂の末端アミノ基をアシル化する方法が好適である。用いるアシル化剤も、特に限定されないが、例えば、アジピン酸やトルエンスルホン酸などの酸、無水酢酸などの酸無水物、塩化アセチルや塩化ベンゾイルなどの酸ハライドなどを用いることができる。
【0045】
ポリアミド樹脂の粘度数は、特に限定されないが、160〜320ml/gの範囲で選定することが好ましい。
【0046】
ポリアミド樹脂には、他の成分を配合しても良い。配合されうる他の成分の具体例としては、熱安定剤;紫外線吸収剤;着色剤;顔料;中和剤;フタル酸エステル、グリコールエステルなどの可塑剤;炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタンなどの充填剤;粘着性付与剤(水添石油樹脂、水添テルペン樹脂、ひまし油誘導体、ソルビタン高級脂肪酸エステル、低分子量ポリブテン);界面活性剤;レベリング剤;紫外線吸収剤;光安定剤;脱水剤;ポットライフ延長剤(アセチルアセトン、メタノール、オルト酢酸メチルなど);ハジキ改良剤;を挙げることができる。
【0047】
ポリアミド樹脂中に酸素吸収性樹脂組成物を分散させる方法は特に限定されず、公知の手法を採用すれば良いが、工程の簡便さやコストの観点から、溶融混練法が好適に使用される。なお、ポリアミド樹脂中に酸素吸収性樹脂組成物を分散させる際に、それぞれの各成分を予め混合しておく必要はなく、個々の成分を一括で、または任意の順で混合して、ポリアミド樹脂中に酸素吸収性樹脂組成物が分散した状態とすれば良い。
【0048】
本発明の包装用樹脂組成物において、酸素吸収性樹脂組成物とポリアミド樹脂との配合比は特に限定されないが、酸素吸収性樹脂組成物/ポリアミド樹脂の重量比が、5/95〜50/50であることが好ましく、20/80〜40/60であることがより好ましい。酸素吸収性樹脂組成物/ポリアミド樹脂の重量比がこの範囲にあると、得られる包装用樹脂組成物の酸素吸収能力と臭気発生の抑制度合いとのバランスが特に良好なものとなる。
【0049】
本発明の包装用樹脂組成物には、相溶化剤や分散安定化剤を配合しても良い。相溶化剤・分散安定化剤の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリエチレンやスチレン−ジエン系ブロック共重合体(スチレン−イソプレン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体など)、その水添物などのスチレン系重合体を変性して得られる、極性基を含有する炭化水素系重合体などを示すことができる。また、本発明の包装用樹脂組成物には、必要に応じて、ブロッキング防止剤、防曇剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、滑剤、帯電防止剤、補強剤、難燃剤、カップリング剤、発泡剤、離型剤などの他の成分を添加することができる。
【0050】
ポリアミド樹脂中に酸素吸収性樹脂組成物を分散させる際に、溶融混練法を採用する場合に用いる装置は、特に限定されないが、例えば、連続式インテンシブミキサー、(同方向または異方向)ニーディングタイプ二軸押出機、ミキシングロール、コニーダーなどの連続型混練機;高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機;KCK社製のKCK混練押出機などの、石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置;一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTMなど)を設けたもの;リボンブレンダー、ブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機を挙げることができる。本発明のポリアミド樹脂を用いて、後述するような包装用フィルムを得る場合には、二軸押出機を用いることが好適である。混練温度は、通常50〜300℃の範囲であり、好ましくは170〜240℃の範囲である。
【0051】
以上のようにして得られる本発明の包装用樹脂組成物は、食品、飲料、医薬品などの内容物を包装するための包装材の材料として用いられるものである。本発明の包装用樹脂組成物は、酸素存在下に置かれてから比較的短い期間で十分な酸素吸収性能を発揮し、しかも、酸素吸収に伴う臭気の発生が抑制されたものであるので、酸素と接触するにより品質の劣化し、臭気が嫌われる、食品、飲料、医薬品などの包装材の材料として好適に用いることができる。
【0052】
本発明の包装用樹脂組成物は、種々の形態に成形して包装材として用いることが可能であり、例えば、フィルムの形態に成形して、包装用フィルムとすることができる。なお、「フィルム」と「シート」とを厚さで区別する場合があるが、本発明では、「フィルム」は、「フィルム」および「シート」の双方を包含する概念である。
【0053】
本発明の包装用樹脂組成物を用いてなる本発明の包装用フィルムは、本発明の包装用樹脂組成物から、公知の方法で製造することができる。例えば、包装用樹脂組成物を溶媒に溶かした後、概ね平坦な面上に溶液を塗布・乾燥する溶液キャスト法によりフィルムが得られる。また、例えば、包装用樹脂組成物を押出し機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ(リングダイ)などを通して所定の形状に押出すことにより、T−ダイ法フィルム、ブローンフィルムなどが得られる。押出し機としては、一軸押出し機、二軸押出し機、バンバリーミキサーなどの混練機を使用することができる。Tダイフィルムはこれを二軸延伸することにより、二軸延伸フィルムとすることができる。また、インフレーション(吹き上げ)成型でフィルムにすることもできる。
【0054】
本発明の包装用フィルムは、本発明の包装用樹脂組成物を用いてなる層(以下、「酸素吸収性層」ということがある。)以外の層を有するものであってもよく、例えば、多層フィルム(以下、「酸素吸収性多層フィルム」ということがある。)とすることができる。包装用樹脂組成物を用いてなる層以外の層は、特に限定されないが、ガスバリアー材層、密封材層、保護層、接着剤層などを例示することができる。
【0055】
本発明の包装用フィルムにおいて、酸素吸収性層は、ガスバリアー材層を透過してくる外部からの酸素を吸収する。また、酸素吸収性多層フィルムからなる包装材料を用いて、例えば、袋状の包装容器を構成したときに、酸素透過性層(密封材層)を介して包装容器内部の酸素を吸収する機能を有する層となる。
【0056】
ガスバリアー材層は、外部からの気体の透過を阻止するために設けられる層である。ガスバリアー材層は、酸素吸収性多層フィルムを用いて、例えば、袋状の包装材料を構成したときに、外層となる。ガスバリアー材層の酸素透過度は加工性やコストが許す限りできるだけ小さくすることが好ましく、その膜厚に関係なく100cc/m・atm・day(25℃、90%RH)未満であることが必要であり、より好ましくは50cc/m・atm・day(25℃、90%RH)以下である。
【0057】
ガスバリアー材層を構成するための材料は、酸素、水蒸気等の気体透過性の低いものであれば、特に限定されず、金属、無機材料、樹脂などが用いられる。金属としては、一般に気体透過性の低いアルミニウムが用いられる。金属は、箔としてこれを樹脂フィルムなどに積層してもよく、蒸着によって樹脂フィルムなどの表面に薄膜を形成してもよい。無機材料としては、シリカやアルミナなどの金属酸化物が用いられ、これらの金属酸化物を単独で使用しまたは併用して、樹脂フィルムなどに蒸着して用いられる。樹脂は、ガスバリアー性では金属や無機材料に及ばないものの、機械的性質、熱的性質、耐薬品性、光学的性質、製造方法などの観点において多用な選択肢があり、これらの利点からガスバリアー材として好ましく使用されている。ガスバリアー材層に使用される樹脂は特に限定されず、良好なガスバリアー性を有する樹脂であればいずれも使用することができるが、塩素を含まない樹脂を使用すると焼却処分時に有害ガスを発生することがないので好ましい。これらのうち、樹脂フィルムに無機酸化物を蒸着した透明蒸着フィルムが好ましく用いられる。
【0058】
ガスバリアー材層として用いられる樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;MXDナイロン(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル樹脂;ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。これらのガスバリアー材層に酸化アルミニウムや酸化シリコンなどの無機酸化物の蒸着を行なうこともできる。これらの樹脂は、ガスバリアー性、強度や靭性や剛性などの機械的特性、耐熱性、印刷性、透明性、接着性など、所望の要求特性を勘案して、多層フィルムとする目的に応じて適宜選択することができる。これらの樹脂は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0059】
ガスバリアー材層として用いる樹脂には、熱安定剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;着色剤;顔料;中和剤;フタル酸エステル、グリコールエステル等の可塑剤;充填剤;界面活性剤;レベリング剤;光安定剤;アルカリ土類金属酸化物などの脱水剤;活性炭やゼオライト等の脱臭剤;粘着性付与剤(ひまし油誘導体、ソルビタン高級脂肪酸エステル、低分子量ポリブテン);ポットライフ延長剤(アセチルアセトン、メタノール、オルト酢酸メチル等);ハジキ改良剤;他の樹脂(ポリα−オレフィン等);などを配合することもできる。また、必要に応じて、ブロッキング防止剤、防曇剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、滑剤、帯電防止剤、補強剤、難燃剤、カップリング剤、発泡剤、離型剤などを添加することができる。
【0060】
ガスバリアー材層の外側に、耐熱性付与などの目的で、保護層を形成することができる。保護層に用いる樹脂としては、高密度ポリエチレンなどのエチレン重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のプロピレン重合体;ポリアミド6、ポリアミド66などのポリアミド;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;などを挙げることができる。これらのうち、ポリアミドおよびポリエステルが好ましい。なお、ガスバリアー材層として、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、無機酸化物蒸着フィルム、塩化ビニリデン被覆フィルムなどを使用した場合は、これらのガスバリアー材層が同時に保護層としても機能する。
【0061】
酸素吸収性多層フィルムにおいて、密封材層は、熱によって溶融して相互に接着する(ヒートシールされる)ことによって、包装容器に包装容器外部と遮断された空間を形成する機能を有し、かつ、包装容器内部において酸素吸収性層と被包装物との直接接触を防ぎつつ酸素を透過させて酸素吸収性層に吸収させる層である。密封材層の形成に用いられるヒートシール性樹脂の具体例としては、エチレンの単独重合体およびプロピレンなどのα−オレフィンの単独重合体、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン;エチレンとα−オレフィンとの共重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体;α−オレフィンを主体とする、α−オレフィンと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどとの共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのポリα−オレフィン樹脂;ポリエチレンやポリプロピレンなどのα−オレフィン(共)重合体をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリα−オレフィン樹脂;エチレンとメタクリル酸との共重合体などにNaイオンやZnイオンを作用させたアイオノマー樹脂;これらの混合物;などが挙げられる。
【0062】
ヒートシール性樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤;粘着性付与剤(水添石油樹脂、水添テルペン樹脂、ひまし油誘導体、ソルビタン高級脂肪酸エステル、低分子量ポリブテン等);帯電防止剤;充填剤;可塑剤(フタル酸エステル、グリコールエステルなど);界面活性剤;レベリング剤;耐熱安定剤;耐候性安定剤;紫外線吸収剤;光安定剤;脱水剤;ポットライフ延長剤(アセチルアセトン、メタノール、オルト酢酸メチルなど);ハジキ改良剤;ブロッキング防止剤;防曇剤;滑剤;補強剤;難燃剤;カップリング剤;発泡剤;離型剤;着色剤;顔料;などを添加することができる。
【0063】
酸化防止剤としては、共役ジエン重合体環化物に添加しうるものと同様のものを挙げることができる。ブロッキング防止剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、ゼオライト、でんぷんなどを示すことができる。ブロッキング防止剤は、樹脂に練り込んでもよく、樹脂の表面に付着させてもよい。防曇剤としては、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンジラウレート、トリグリセリンモノオレエートなどの高級脂肪酸グリセリド;ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールパルミテート、ポリエチレングリコールステアレートなどのポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸アルキルエーテル;などを挙げることができる。
【0064】
滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;高級脂肪酸エステル;ワックス;などを挙げることができる。帯電防止剤としては、高級脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどを挙げることができる。補強剤としては、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等を挙げることができる。
【0065】
難燃剤としては、リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、ハロゲン化物などを挙げることができる。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、クロム系、アルミニウム系カップリング剤を挙げることができる。着色剤ないし顔料としては、フタロシアニン系、インジゴ系、キナクリドン系、金属錯塩系などの各種アゾ系顔料;塩基性および酸性の水溶性染料;アゾ系、アントラキノン系およびペリレン系の油溶性染料;酸化チタン系、酸化鉄系、複合酸化物系などの金属酸化物;クロム酸塩系、硫化物系、ケイ酸塩系、炭酸塩系などのその他の無機顔料を挙げることができる。発泡剤としては、塩化メチレン、ブタン、アゾビスイソブチロニトリルなどを挙げることができる。離型剤としては、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、長鎖カルボン酸、長鎖カルボン酸金属塩などを挙げることができる。
【0066】
酸素吸収性多層フィルムは、好ましくは、ガスバリアー材層、酸素吸収性層および密封材層がこの順に積層されてなるが、上述した外部保護層のほか、各層の間に、所望により、例えばポリウレタンから構成される接着剤層を設けたり、熱可塑性樹脂層を設けたりしてもよい。
【0067】
多層フィルムの全体厚さは、800μm未満、好ましくは50〜400μmである。全体の厚さを上記範囲とすることにより、透明性に優れた多層フィルムとすることができる。酸素吸収性層の厚さは、通常、1〜50μm程度であり、好ましくは、5〜30μm程度である。ガスバリアー材層の厚さは、通常、5〜50μm程度であり、好ましくは、10〜50μm程度である。密封材層の厚さは、通常、10〜700μm程度、好ましくは、20〜400μm程度である。各層の厚さが薄すぎると、厚さが不均一となったり、剛性や機械的強度が不足したりするおそれがある。また、ヒートシール性樹脂の場合には、厚すぎても薄すぎてもヒートシール性が発揮されないおそれがある。
【0068】
酸素吸収性多層フィルムの製造方法は特に限定されず、多層フィルムを構成する各層の単層フィルムを得て、これらを積層してもよく、多層フィルムを直接成形してもよい。単層フィルムは、公知の方法で製造することができる。例えば、各層を構成する樹脂組成物などを溶媒に溶解して得た溶液を概ね平坦な面上に塗布・乾燥する溶液キャスト法によってフィルムを得ることができる。また、例えば、各層を構成する樹脂組成物などを押出し機で溶融混練した後、T−ダイ、サーキュラーダイ(リングダイ)などを通して所定の形状に押出すことにより、T−ダイ法フィルム、ブローンフィルム等が得られる。押出し機としては、一軸押出し機、二軸押出し機、バンバリーミキサーなどの混練機を使用することができる。Tダイフィルムはこれを二軸延伸することにより、二軸延伸フィルムとすることができる。以上のようにして得られた単層フィルムから、押出しコート法や、サンドイッチラミネーション、ドライラミネーションなどによって多層フィルムを製造することができる。
【0069】
多層押出しフィルムの製造には、公知の共押出成形法を用いることができ、例えば樹脂の種類に応じた数の押出し機を用いて、多層多重ダイを用いる以外は上記と同様にして押出成形を行なえばよい。共押出成形法としては、共押出ラミネーション法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法などを挙げることができる。一例を示せば、水冷式又は空冷式インフレーション法により、ガスバリアー材層、酸素吸収性層および密封材層を、それぞれ、構成する各樹脂を、数台の押出機によりそれぞれ溶融加熱し、多層環状ダイから、例えば、190〜210℃の押出温度で押出し、直ちに冷却水等の液状冷媒により急冷固化させることによってチューブ状原反とすることができる。
【0070】
多層フィルムの製造に当たっては、包装用樹脂組成物の各フィルム層を構成する成分の温度を160〜250℃とすることが好ましい。160℃未満では厚みむらやフィルム切れを生じ、250℃を超えるとフィルム切れを引き起こす場合がある。より好ましくは、170〜230℃である。多層フィルム製造時のフィルム巻取り速度は、通常、2〜200m/分、好ましくは50〜100m/分である。巻取り速度が低すぎると生産効率が悪くなるおそれがあり、速すぎるとフィルムの冷却を十分に行なうことができず、巻取り時に融着する場合がある。
【0071】
ガスバリアー材層フィルムが延伸可能な材料からなり、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのように、延伸することによってフィルム特性が向上する場合は、共押出によって得られた多層フィルムを更に一軸または二軸延伸することができる。必要であれば、更にヒートセットすることもできる。 延伸倍率は、特に限定されないが、通常、縦方向(MD)および横方向(TD)に、それぞれ、1〜5倍、好ましくは、縦横方向に、それぞれ、2.5〜4.5倍である。延伸は、テンター延伸方式、インフレーション延伸方式、ロール延伸方式などの公知の方法で行なうことができる。延伸の順序は縦横いずれが先でも構わないが、同時が好ましく、チューブラー同時二軸延伸法を採用してもよい。 また、ガスバリアー材層フィルムには、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様などの所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷または裏刷り印刷等することができる。
【0072】
酸素吸収性多層フィルムの形状は、特に限定されず、フラットフィルム、エンボス加工フィルムなどのいずれであってもよい。この酸素吸収性多層フィルムからなる包装材料は、各種形状の包装容器に成形して使用することが可能である。装容器の形態としては、ケーシング、袋状物などを示すことができる。多層フィルムから得られる包装材料の形態としては、三方または四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋などが挙げられる。多層フィルムがフラットフィルムである場合は、通常の方法により成形して所望の形態の包装材料とすればよく、チューブ状原反の場合は、そのまま、ケーシングや袋状物とすればよい。
【0073】
酸素吸収性多層フィルムを用いてなる包装材料は、これを構成する樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形などの熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、またはインフレーション延伸法などにより、一軸または二軸延伸することによって、延伸された成形品とすることができる。
【0074】
本発明の包装用フィルムから得られる包装材料は、酸素による内容物の劣化を防止し、シェルフライフを向上させるために有効である。充填できる内容物は、特に限定されないが、例えば、餅、ラーメン、果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー(豆・粉)、食用油、ソース類、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング類、佃煮類、乳製品類、和洋菓子類などの食品;ビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ドリンクなどの飲料;医薬品;化粧品;電子材料;医療器材;銀または鉄製部品用の包装材;接着剤、粘着剤などの化学品;ケミカルカイロなどの雑貨品;などが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0076】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0077】
〔共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量(Mw)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算分子量として求めた。なお、溶出溶剤としては、テトラヒドロフランを使用した。
【0078】
〔共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率〕
(i) M.A.Golub and J.Heller,Can.J.Chem.,第41巻,937(1963).および(ii) Y.Tanaka and H.Sato,J.Polym.Sci:Poly.Chem.Ed.,第17巻,3027(1979).の文献に記載された方法を参考にして、プロトンNMR測定により求めた。なお、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、環化反応前の全プロトンピーク面積をSBT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSBU、環化反応後の全プロトンピーク面積をSAT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSAUとすると、環化反応前の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SB)は、式:SB=SBU/SBTで表され、環化反応後の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SA)は、式:SA=SAU/SATで表される。従って、不飽和結合減少率は、式:不飽和結合減少率(%)=100×(SB−SA)/SBにより求められる。
【0079】
〔ガラス転移温度〕
示差走査熱量計(セイコーインスツル社製、「EXSTAR6000 DSC」)を用いて、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定した。
【0080】
〔ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度〕
100mlの三角フラスコに試料2.0gをメタクレゾール80mlに溶解させた後、電位差滴定装置(京都電子工業社製「AT−500N」、電極として複合ガラス電極を使用)を用いて、0.055モル/リットル過塩素酸メタノール溶液で攪拌下に滴定を行った。また、試料を加えずに同様の操作を行い、ブランク測定とした。これらの滴定量から、以下の式を用いて末端アミノ基濃度(AEG)を求めた。
AEG(eq/10g)=[{(V−V)×f×0.055}/S]×10
:本試験で要した0.055モル/リットル過塩素酸メタノール溶液の量(ml)
:ブランク滴定で要した0.055モル/リットル過塩素酸メタノール溶液の量(ml)
f:0.055モル/リットル過塩素酸メタノール溶液のファクター
S:採取試料の重量(g)
【0081】
〔酸素濃度〕
パウチ内部の酸素濃度は、注射器によりパウチ内部の気体の一部を抜き取って、酸素濃度計(セラマテック社製、「フードチェッカー HS−750」)を用いて測定した。
【0082】
〔臭気レベル〕
臭気は、官能試験により試験者5名が下記の基準に基づいて評価を行い、その平均点を臭気レベルとした。
全く臭いが感じられない・・・・・評価点 1
僅かに臭いが感じられる・・・・・評価点 2
少し酸臭が感じられる・・・・・・評価点 3
酸臭が強い・・・・・・・・・・・評価点 4
酸臭がかなり強い・・・・・・・・評価点 5
【0083】
〔製造例1〕
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた耐圧反応器に、10mm角に裁断したポリイソプレン(シス−1,4単位73%、トランス−1,4単位22%、3,4−単位5%、重量平均分子量243,100)100部を、シクロヘキサン374部とともに仕込んだ。反応器内を窒素置換した後、75℃に加温して攪拌下でポリイソプレンをシクロヘキサンに完全に溶解した後、p−トルエンスルホン酸(トルエン中で、水分量が150ppm以下になるように、還流脱水したもの)0.95部を、15%のトルエン溶液として添加し、温度が80℃を超えないように制御しながら環化反応を行った。7時間反応させた後、炭酸ナトリウム0.59部を含む25%炭酸ナトリウム水溶液を添加して反応を停止した。80℃で、共沸還流脱水により水を除去した後、孔径2μmのガラス繊維フィルターにて系中の触媒残渣を除去した。得られた溶液からシクロヘキサンを留去して、さらに、真空乾燥によってトルエンを除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物を得た。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は190,800であり、不飽和結合減少率は64.6%であり、ガラス転移温度は60℃であった。
【0084】
得られた固形状の共役ジエン重合体環化物は、単軸混練押出機(40φ、L/D=25、ダイス径3mm×1穴、池貝社製)を用いて、シリンダー1:140℃、シリンダー2:150℃、シリンダー3:160℃、シリンダー4:170℃、ダイス温度170℃、回転数25rpmの混練条件で混練し、ペレット化した。
【0085】
〔製造例2〕
末端アミノ基濃度が49eq/10gであるポリアミド6/66共重合体(宇部興産社製「UBEナイロン 5023B」)90部およびアジピン酸10部を、同方向回転二軸混練押出機(25φ、L/D=41、パーカーコーポレーション社製「HK25D」)を用いて、シリンダー1:58℃、シリンダー2:220℃、シリンダー3〜7:230℃、ダイス温度230℃、回転数100rpm、フィード量3.0kg/hrの混練条件で混練することにより反応させて、得られた反応物(以下、末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂Aと称する)をペレット化した。得られたペレットは、洗浄水のpHが6.5以上になるまで温水で洗浄して、未反応のアジピン酸を除去した。この洗浄後のペレットを試料として末端アミノ基濃度を測定したところ、18eq/10gであった。
【0086】
〔製造例3〕
ポリアミド6/66共重合体の使用量を85部に変更し、アジピン酸の使用量を15部に変更したこと以外は、製造例2と同様にして、反応および洗浄を行い、末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂Bのペレットを得た。このペレットを試料として末端アミノ基濃度を測定したところ、13eq/10gであった。
【0087】
〔実施例1〕
製造例1で得た共役ジエン重合体環化物のペレット23.9部、流動パラフィン(カネダ社製「ハイコール K−350」)6.1部、および製造例2で得た末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂A70.0部を混合し、得られた混合物を、二軸混練押出機(43φ、L/D=33.5、ベルストルフ社製「ZE40A」)を用いて、シリンダー1:150℃、シリンダー2:200℃、シリンダー3:200℃、シリンダー4:200℃、ダイス温度200℃、回転数150rpmの混練条件で混練し、ペレット化することにより、実施例1の包装用樹脂組成物のペレットを得た。この実施例1の包装用樹脂組成物は、末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂A中に、共役ジエン重合体環化物および流動パラフィンからなる酸素吸収性樹脂組成物が分散した構成を有していた。実施例1の包装用樹脂組成物を試料としてガラス転移温度を測定したところ、包装用樹脂組成物に含まれる酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は15℃であった。実施例1の包装用樹脂組成物における、各成分の配合量および酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は、表1に示した。
【0088】
次いで、Tダイおよび二軸延伸試験装置を接続したラボプラストミル単軸押出機をシリンダー1:150℃、シリンダー2:200℃、シリンダー3:210℃、ダイス温度210℃、回転数10rpmの混練条件で用いて、実施例1の包装用樹脂組成物のペレットを混練し、引き取り速度2.0m/min、巻き取りロール温度40℃の条件で、幅100mm、厚さ20μmのフィルムに成形することにより、実施例1の包装用フィルムを得た。得られた実施例1の包装用フィルムについては100mmの長さに裁断して、次のように、酸素吸収試験に供した。すなわち、裁断したフィルムを300mm×400mmのアルミパウチに入れ、アルミパウチ内の空気を完全に追い出した後に、50ccの空気を注入して、アルミパウチを密封した。この直後にアルミパウチ内の酸素濃度を測定し、その後、アルミパウチを25℃で3日間静置した。3日間静置後、アルミパウチ内の酸素濃度を測定し、最後に、アルミパウチを開封してアルミパウチ内部の臭気レベルの評価を行った。これらの測定結果は表1に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
〔実施例2〕
混合する材料を、製造例1で得た共役ジエン重合体環化物のペレット22.1部、流動パラフィン(カネダ社製「ハイコール K−350」)0.9部、エルカ酸(日油社製)7.0部、および製造例3で得た末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂B70.0部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の包装用樹脂組成物のペレットを得た。この実施例2の包装用樹脂組成物は、末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂B中に、共役ジエン重合体環化物、流動パラフィン、およびエルカ酸からなる酸素吸収性樹脂組成物が分散した構成を有していた。実施例2の包装用樹脂組成物を試料としてガラス転移温度を測定したところ、包装用樹脂組成物に含まれる酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は15℃であった。実施例2の包装用樹脂組成物における、各成分の配合量および酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は、表1に示した。また、実施例2の包装用樹脂組成物を実施例1と同様に成形することにより、実施例2の包装用フィルムを得て、このフィルムを実施例1と同様の酸素吸収試験に供した。酸素吸収試験における、3日間静置前後のアルミパウチ内の酸素濃度と臭気レベル評価の測定結果は表1に示した。
【0091】
〔実施例3〕
混合する材料を、製造例1で得た共役ジエン重合体環化物のペレット22.1部、流動パラフィン(カネダ社製「ハイコール K−350」)0.9部、エルカ酸(日油社製)7.0部、および末端アミノ基濃度が22eq/10gであるポリアミド6(三菱エンジニアリングプラスチック社製「ノバミッド 1015C」)70.0部に変更し、二軸混練押出機の混練条件を、シリンダー1:150℃、シリンダー2:220℃、シリンダー3:230℃、シリンダー4:230℃、ダイス温度220℃、回転数150rpmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の包装用樹脂組成物のペレットを得た。この実施例3の包装用樹脂組成物は、ポリアミド6中に、共役ジエン重合体環化物、流動パラフィン、およびエルカ酸からなる酸素吸収性樹脂組成物が分散した構成を有していた。実施例3の包装用樹脂組成物を試料としてガラス転移温度を測定したところ、包装用樹脂組成物に含まれる酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は15℃であった。実施例3の包装用樹脂組成物における、各成分の配合量および酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は、表1に示した。また、実施例3の包装用樹脂組成物を実施例1と同様に成形することにより、実施例3の包装用フィルムを得て、このフィルムを実施例1と同様の酸素吸収試験に供した。酸素吸収試験における、3日間静置前後のアルミパウチ内の酸素濃度と臭気レベル評価の測定結果は表1に示した。
【0092】
〔比較例〕
末端アミノ基濃度低減化ポリアミド樹脂A70.0部に代えて、末端アミノ基濃度が49eq/10gであるポリアミド6/66共重合体(宇部興産社製「UBEナイロン 5023B」)70.0部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例の包装用樹脂組成物のペレットを得た。この比較例の包装用樹脂組成物は、ポリアミド6/66共重合体中に、共役ジエン重合体環化物、および流動パラフィンからなる酸素吸収性樹脂組成物が分散した構成を有していた。比較例の包装用樹脂組成物を試料としてガラス転移温度を測定したところ、包装用樹脂組成物に含まれる酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は15℃であった。比較例の包装用樹脂組成物における、各成分の配合量および酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度は、表1に示した。また、比較例の包装用樹脂組成物を実施例1と同様に成形することにより、比較例の包装用フィルムを得て、このフィルムを実施例1と同様の酸素吸収試験に供した。酸素吸収試験における、3日間静置前後のアルミパウチ内の酸素濃度と臭気レベル評価の測定結果は表1に示した。
【0093】
以上の結果から分かるように、比較例の包装用樹脂組成物を用いた包装用フィルムは、25℃の条件下では3日間経過しても酸素吸収性能を殆ど発揮しないものであった。一方、実施例1〜3の包装用樹脂組成物を用いた包装用フィルムは、25℃という比較的低い温度条件下であっても、3日間で十分な酸素吸収性能を発揮する酸素吸収性に優れるものであった。しかも、実施例1〜3の包装用樹脂組成物を用いた包装用フィルムは、酸素吸収を行ったにも関わらず、低い臭気レベルを維持したことから、酸素吸収に伴う臭気の発生が抑制された低臭気性に優れたものであるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端アミノ基濃度が30eq/10g以下のポリアミド樹脂に、共役ジエン重合体環化物を含有してなる酸素吸収性樹脂組成物が分散されてなる包装用樹脂組成物。
【請求項2】
酸素吸収性樹脂組成物がさらに軟化剤を含有してなり、酸素吸収性樹脂組成物のガラス転移温度が−30℃〜+30℃である請求項1に記載の包装用樹脂組成物。
【請求項3】
軟化剤が、流動パラフィンおよび炭素数18以上の高級脂肪酸から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の包装用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装用樹脂組成物を用いてなる包装用フィルム。

【公開番号】特開2011−184477(P2011−184477A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47725(P2010−47725)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】