説明

包装用箱

【課題】収容物全体を囲む構造を有し、収容物を外から視認することができ、開封も容易且つきれいに行うことができる包装用箱を提供する。
【解決手段】ブランクシートから打ち抜かれた箱体形成片12から成り、互いに連接された側面16,18,20,22と、この連接方向に対して側方に位置する一対の端面部材を備える。側面18から側面16,20に跨る透孔90を備える、少なくとも透孔90がある面の表側の面に、透孔90を塞ぐ透明な樹脂フィルム14が接着されている。透孔90の周縁部90aを囲むフィルム開封部102が、樹脂フィルム14を切断し箱体形成片12の途中までの深さに達する半切り線100により区切られている。箱体形成片12を組み立てた状態で、フィルム開封部102を周縁部90aから引き剥がすことによって、透孔90が開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中の収容物を視認可能な透孔を備えた包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、一枚の箱体形成片を組み立てて形成され、箱体の正面板に視認用の窓孔が穿設され、窓孔を塞ぐように正面板の内側の面に透明フィルムが接着され、窓孔を避けて連続する破断用切込線が、右側板、正面板及び左側板に設けられ、破断用切込線を破断して箱体を本体側と蓋側とに分離させることによって開封する包装用箱がある。この包装用箱は、市場に流通する過程で商品等の収容物に傷を付けないよう収容物全体を囲い、店頭に陳列する際も未開封のまま中の収容物を見ることができるものである。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、表面に透明フィルムを積層した厚紙から成る箱体形成片を組み立てて形成され、前板に厚紙部分のみを打ち抜いた視認用の窓孔が設けられ、互いに連接された前板、天板、後板及び底板で筒状体を形成し、天板部分に所定の吊り下げ機構が設けられ、後板から延設された側板の先端にある折り込み部を筒状体から抜くことによって側板を開放し、中の収容物を取り出すハンガー付き包装箱がある。
【0004】
一方、特許文献3に開示されているように、一枚の箱体形成片を組み立てて形成され、互いに連接された複数の側面で筒状体を形成し、一側面に所定の表半切線及び裏半切線で区切った切離帯部が設けられ、切離帯部の端部を摘んで上記表半切線及び裏半切線を切断して開封すると、裏半切線により形成された装飾パターンが残され、あるいは切離帯部が剥離して残った正面板の剥離面に装飾模様が凹凸状に現れる開封機能付包装箱も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3084274号公報
【特許文献2】特開平8−133271号公報
【特許文献3】特開2010−149927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の包装用箱の場合、消費者が収容物(商品)に触れる等するためには、破断用切込線を破断して完全に開封しなければならず、実際に使用する時まで収容物の状態を確認することができないものであった。また、特許文献2のハンガー付き包装箱の場合、消費者が収容物(商品)に触れるためには、箱体の側板を開放して収容物を外に取り出さなければならず、しかも、実際に使用する時までの保管のため収容物をもう一度入れ直す必要があり、取り扱いが面倒であった。また、特許文献3の開封機能付包装箱の場合も、上記の特許文献1の包装用箱と同様に、消費者が中の収容物を確認しにくいという問題があった。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、収容物全体を囲む構造を有し、収容物を外から視認することができ、開封も容易且つきれいに行うことができる包装用箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、前記箱体形成片には、互いに連接された複数の側面と、この連接方向に対して側方に位置する所定の端部に一対の端面部材が延設され、前記側面若しくは前記端面部材、又は前記側面と前記端面部材とを跨ぐように透孔が設けられ、少なくとも前記透孔が設けられた面に前記透孔を塞ぐ透明な樹脂フィルムが貼りつけられ、前記箱体形成片を組み立てた状態で、前記複数の側面で筒状体を形成し、その筒状体の両側端部を前記端面部材で閉鎖し、中の収容物を前記透孔の部分から視認可能な包装用箱であって、前記樹脂フィルムは、前記箱体形成片の表側の面に接着剤によって貼りつけられ、前記透孔の周縁部を囲むフィルム開封部が、前記樹脂フィルムを切断し前記箱体形成片の途中までの深さに達する半切り線によって区切られ、前記箱体形成片を組み立てた状態で、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすことによって前記透孔を開放可能に形成されている包装用箱である。
【0009】
また、前記箱体形成片を組み立てた状態で、折罫線で互いに折り曲げられた筒状体を形成し、一対の側面の一方には、前記透孔及び前記フィルム開封部が設けられ、他方の側面には前記側面の連接方向に折曲線が設けられ、前記一対の側面に交差する一対の側面には、組み立て状態で前記透孔の両端から前記折曲線まで連続する第一破断線が設けられ、前記フィルム開封部が前記第一破断線を含む領域に設けられ、開封に際して、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がして前記透孔を開放し、さらに前記第一破断線を破断することにより前記筒状体が上下に分離し、内部の収容物が取り出し可能になるものである。前記一方の側面に設けられた前記透孔は、その側面に交差する側面の範囲に連続しているものでも良い。
【0010】
また、前記箱体形成片の前記透孔が設けられた面の端部に、開封時に指で持って操作可能な摘み片が第二破断線で区切られて延設され、前記フィルム開封部が、前記摘み片を含む領域に設けられ、前記箱体形成片を組み立てた状態から開封するとき、前記摘み片を前記第二破断線で分離させ、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすことによって前記透孔が開放されるようにしてもよい。
【0011】
また、前記箱体形成片の前記透孔の前記周縁部に、前記接着剤の接着強さを制限する剥離剤層が設けられ、前記フィルム開封部が前記剥離剤層の上面に剥離可能に接着されている。
【0012】
また、前記箱体形成片の前記透孔の前記周縁部に、所定の文字又は絵柄を表したインク剥離剤層と、前記インク剥離剤層を含む前記周縁部の上面を覆うインク層と、前記インク層の前記インク剥離剤層と重ならない領域の上面を覆い前記接着剤の接着強さを制限する剥離剤層とが設けられ、前記フィルム開封部が前記インク層及び前記剥離剤層の上面に剥離可能に接着され、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすと、前記インク層の前記剥離剤層に覆われていない部分が前記フィルム開封部と一体に除去され、残った前記インク層の部分が形成する文字又は絵柄が視認可能に現れる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の包装用箱は、市場に流通する過程で商品等の収容物に傷を付けないよう収容物全体を囲う構造であり、店頭に陳列する際も未開封のまま中の収容物を見ることができる。さらに消費者は、フィルム開封部を引き剥がすことによって容易に透孔を開放することができる。また、透孔が開放されたまま保管されても、通常の生活環境であれば収容物の保護に支障はない。
【0014】
包装用箱を開封するときは、フィルム開封部を引き剥がし第一破断線を破断させることによって、筒状体の三つの側面が上下に分離して開放可能になるので、収容物を容易に取り出すことができる。
【0015】
また、包装用箱の開封に際して、箱体形成片の透孔の周縁部の剥離剤層で樹脂フィルムと箱体形成片とが剥離されるようにすることによって、消費者がフィルム開封部を引き剥がしたとき、周縁部の表面できれいに剥離することができる。さらに、上記の剥離剤層に、文字や絵柄を表するためのインク剥離剤層及びインク層を組み合わせることによって、フィルム開封部を引き剥がした周縁部の表面に装飾模様や注意書きが現れるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第一実施形態の包装用箱を左上方から見た斜視図(a)と右上方から見た斜視図(b)である。
【図2】この実施形態の包装用箱を展開した箱体形成片を表側からみた平面図である。
【図3】図2の箱体形成片の製造方法を説明する模式図(a)〜(d)、フィルム開封部を引き剥がした後の状態を示す模式図(e)である。
【図4】この実施形態の包装用箱において、フィルム開封部を引き剥がす様子を示す斜視図である。
【図5】この実施形態の包装用箱において、フィルム開封部を取り除き、第一破断線を破断して開封した状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の第二実施形態の包装用箱の製造方法を説明する模式図(a)〜(e)、フィルム開封部を引き剥がした後の状態を示す模式図(f)である。
【図7】この発明の第三実施形態の包装用箱の製造方法を説明する模式図(a)〜(f)、フィルム開封部を引き剥がした後の状態を示す模式図(g)である。
【図8】この発明の第三実施形態の包装用箱において、フィルム開封部を引き剥がす様子を示す斜視図である。
【図9】この発明の第四実施形態の包装用箱に係る箱体形成片を表側の面からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の包装用箱の実施形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明の第一実施形態の包装用箱10を示すもので、例えば、紙製のブランクシートを打ち抜いて形成された箱体形成片12を組み立てて形成されている。また、箱体形成片12の表側の全面に、透明な樹脂フィルム14が貼りつけられている。
【0018】
箱体形成片12は、図2に示すように、側面16,18,20,22が、互いに平行に連接されている。側面16,18,20,22は、連接の幅方向が同じ長さであり、連接方向の長さは側面18,22が長くて互いにほぼ等しく、側面16,20は短くて互いにほぼ等しい。側面22の上記連接方向の端部には、包装用箱10の組み立て状態で側面16の裏面に糊付けされる糊付片24が設けられている。側面16,18,20,22、糊付片24は、各々折罫線26,28,30,32で区切られている。
【0019】
側面16の、側面どうしの連接方向に対して直角な方向の一端部には、略矩形の先端角部が深く切り欠かれたL字状のフラップ34が、折罫線36で区切られて延設されている。折罫線36と反対側の端部には、台形状のフラップ38が折罫線40で区切られて延設されている。また、上記連接方向の端部のややフラップ34寄りの位置に、先端が円弧状になった小さな摘み片42が、第二破断線44で区切られて延設されている。
【0020】
側面18の、側面16の折罫線36に隣接する端部には、矩形の外側上蓋片46が折罫線48で区切られて延設されており、その延設方向長さは、側面16又は側面20の上記連接方向の長さとほぼ等しい。さらに、外側上蓋片46の先端中央部に、後述する側面22の切り込み50に差し込み可能な台形状の差込片52が、折り曲げ補助用のミシン線54で区切られて延設されている。
【0021】
側面18の、折罫線48と反対側の端部には、組み立て状態で底蓋となる第一底蓋片56が、折罫線58で区切られて延設されている。第一底蓋片56の折罫線58から折罫線58に対して平行な端部56aまでの長さは、側面16,20の上記連接方向長さの1/2である。そして、端部56aの中心からフラップ38と反対側の部分は、端部56aよりも外側に幅広に形成された差込片60となる。また第一底蓋片56のフラップ38近傍には、三角形の糊付片62が折罫線64で区切られて延設され、折罫線64は折罫線58に対して鋭角に交差する方向に設けられている。
【0022】
側面20の、側面18の折罫線48に隣接する端部には、側面16のフラップ34と対称形のL字状のフラップ66が、折罫線68で区切られて延設されている。折罫線68と反対側の端部には、側面16のフラップ38と同様の台形状のフラップ70が、折罫線72で区切られて延設されている。
【0023】
側面22の、側面20の折罫線68に隣接する端部には、矩形の内側上蓋片76が折罫線78で区切られて延設されており、その延設方向長さは、側面16又は側面20の上記連接方向長さの約2/3である。また、折罫線78の中央部分と重なるように、外側上蓋片46の差込片52を差し込み可能な切り込み50が設けられている。
【0024】
側面22の、折罫線78と反対側の端部には、組み立て状態で底蓋となる第二底蓋片80が、折罫線82で区切られて延設されている。第二底蓋片80の折罫線82から折罫線82に対して平行な端部80aまでの長さは、側面16,20の上記連接方向長さの1/2である。そして、端部80aの中心からフラップ70と反対側の部分は、端部80aよりも外側に幅広に形成された差込片84となる。また第二底蓋片80のフラップ70近傍には、三角形の糊付片86が折罫線88で区切られて延設され、折罫線88は折罫線88に対して鋭角に交差する方向に設けられている。
【0025】
側面18のやや外側上蓋片46寄りの位置には、上記連接方向に細長く両端が円弧状に開口する透孔90が設けられ、透孔90の両端は、隣接する側面16及び側面18の領域まで連続している。側面22のやや内側上蓋片50寄りの位置には、開封時の折り曲げ補助用の切り込み線である折曲線92が、上記連接方向と平行に設けられている。そして、側面20には、折曲線92の一端と透孔90の一端とを結ぶ位置に第一破断線94が設けられ、糊付片24には、折曲線92の他の一端を延長する第一破断線96が設けられ、側面16には、透孔90の他の一端と摘み片42の第二破断線44の中央部とを結ぶ位置に第一破断線98が設けられている。従って、組み立てた状態で、折曲線92、第一破断線94,96,98、及び透孔90が連続し、側面16,18,20,22で成す筒状体の側壁を一周する。
【0026】
箱体形成片12は、上述したように、表側の全面に透明な樹脂フィルム14が貼りつけられ、透孔90が樹脂フィルムで塞がれている。樹脂フィルム14は、少なくとも透孔90と摘み片42を含む範囲を覆う大きさであればよいが、ここでは、包装用箱10全体の耐汚れ性や耐水性等を向上させるため、箱体形成片12の全面を覆っている。樹脂フィルム14は、透孔90の周縁部分と摘み片42及び第一破断線94,98を含む範囲である周縁部90aを囲む半切り線100によって区切られ、半切り線100の内側がフィルム開封部102になる。半切り線100は、樹脂フィルム14を切断するとともに、箱体形成片12を切断せずその厚みの途中まで切り込みが形成されたものである。
【0027】
樹脂フィルム14を貼りつけた箱体形成片12は、例えば、図3に示す方法で製造することができる。まず、図3(a)に示すように、紙製のブランクシート104の所定の位置に、商品名、企業名、デザイン画等を表するインク層106を印刷する。次に、図3(b)に示すように、抜き刃108を用いて透孔90を打ち抜く。同時に、図示しない第二破断線44、切り込み50、ミシン線54、折曲線92、第一破断線94,96,98も形成する。
【0028】
次に、図3(c)に示すように、ブランクシート104のインク層106が形成された側に接着剤を塗布して接着剤層110を形成し、その表面に大きな樹脂フィルム14を貼り付けて接着する。樹脂フィルム14の基材は、例えばポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が好適であり、包装用箱10の中の収容物を視認できる程度に透明であれば着色されていてもよい。また、接着剤層110も、インク層106が透けて見える程度に透明に近いものが好ましい。
【0029】
そして、図3(d)に示すように、切り刃112を用いて透孔90の周縁部90aを囲む半切り線100を形成する。半切り線100は、樹脂フィルム14を切断してブランクシート104の途中までの深さに達するものである。このとき同時に、抜き刃114を用いて箱体形成片12の外形を打ち抜く。このような製造方法を用いれば、箱体形成片12を容易に大量生産することができる。
【0030】
次に、樹脂フィルム14が貼りつけられた箱体形成片12の組み立て方法について説明する。ここで、図2は箱体形成片12を表側の面から見たものであり、以下、箱体形成片12の表側の面が凸になる折り方を正折り、そして裏側の面が凸になる折り方を逆折りと称する。
【0031】
まず、折罫線40,58,72,82を正折りし、さらに、糊付片62の折罫線64と糊付片86の折罫線88をそれぞれ逆折りする。そして、糊付片62の裏側の面に糊を塗布し、折罫線26を正折りする。これにより、糊付片62の裏側の面がフラップ38の表側の面に糊付される。同様に、糊付片86の裏側の面に糊を塗布し、折罫線30を正折りする。これにより、糊付片86の裏側の面がフラップ70の表側の面に糊付される。次に、糊付片24の表側の面に糊を塗布し、側面14の裏側の面を糊付片24の表側の面に合わせて糊付けする。そして、この折り畳まれた状態で、箱体形成片12の製造工場から出荷される。
【0032】
次に、商品等の収容物を収容して包装する工場等において、折罫線26,28,30,32を90°に正折りして四角形の筒状体にする。すると、第一底蓋片56は側面18からフラップ38とともに引き起こされて折罫線58で直角に正折りされ、同時に第二底蓋片80は側面22からフラップ70と共に引き起こされて折罫線82で直角に正折りされる。さらに第一底蓋片60の差込片60が第二底蓋片80の端部80aの裏側に差し込まれ、第二底蓋片80の差込片84が第一底蓋片56の端部56aの裏側に差し込まれ、互いに確実に係止される。このようにして、側面16,18,20,22で成る筒状体の一方の端部を閉鎖する端面部材である底蓋が形成される。また、摘み片42は、側面22の折罫線32を越えて側面16の延長上に突出する。
【0033】
この状態で、筒状体内に収容物を収容した後、折罫線36,68でフラップ34,66を90°に正折りし、折罫線78で内側上蓋片76を90°に正折りする。そして、ミシン線54で差込片52を90°に正折りした後、折罫線78の位置にある切り込み50に差込片52を差し込みながら、折罫線48で外側上蓋片46を90°に正折りする。このようにして、側面16,18,20,22で成る筒状体の一方の端部を閉鎖する端面部材である上蓋が形成される。
【0034】
このように組み立てられた包装用箱10は図1(a),(b)に示す状態になり、透孔90を塞ぐ透明な樹脂フィルム14を通して中の収容物を視認することができる。
【0035】
次に、包装用箱10の使用方法について説明する。消費者が中の収容物に触る等するため、樹脂フィルム14で塞がっている透孔90を開放したいときは、摘み片42をフィルム開封部102の端部と共に摘み、第二破断線44を破断して摘み片42を側面16から分離させ、図4に示すように、フィルム開封部102を周縁部90aから引き剥がす。フィルム開封部102が引き剥がされた周縁部90aは、図3(e)に示すように、紙板の表層部分がフィルム開封部102の接着剤層110と一体に剥離し、下層部分だけが残る。また、フィルム開封部102を除く樹脂フィルム14部分は、半切り線100によってフィルム開封部102から分離しているので、フィルム開封部102を引き剥がしても影響を受けない。フィルム開封部102を最後まで引き剥がすと、透孔90が開放され、第一破断線94,96,98も露出する。
【0036】
さらに、包装用箱10を開封して中の収容物を取り出すときは、図5に示すように、第一破断線94,96,98を破断して筒状体を分離させ、折曲線92を逆折りしながら筒状体の上蓋側部分を倒し、中から収容物を取り出す。
【0037】
以上説明したように、包装用箱10は、市場に流通する過程で商品等の収容物に傷を付けないよう収容物全体を囲う構造であり、店頭に陳列する際も未開封のまま中の収容物を見ることができる。さらに消費者は、摘み片42を持ってフィルム開封部102を引き剥がすことによって容易に透孔90を開放することができ、中の収容物を直接見たり触ったりすることができる。また、消費者が透孔90を開放した後も、包装用箱10内に収容物を保管しておくことも可能である。
【0038】
特に、包装用箱10を開封するときは、フィルム開封部102を引き剥がして露出した第一破断線84,96,98を破断させることによって、筒状体の三つの側面16,18,20が上下に分離して開放可能になるので、収容物を容易に取り出すことができる。
【0039】
次に、この発明の包装用箱の第二実施形態について、図6を基にして説明する。この実施形態の包装用箱は、上記包装用箱10において、透孔90の周縁部90aのフィルム開封部102の構造を変更したものである。ここで、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
この実施形態に係る箱体形成片116は、透孔90の周縁部90aに、接着剤110の接着強さを制限する剥離剤層118が設けられ、フィルム開封部102が剥離剤層118の上面に剥離可能に接着されている。その他の構成は、上記箱体形成片12と同様である。
【0041】
箱体形成片116は、例えば、図6に示す方法で製造することができる。まず、図6(a)に示すように、紙製のブランクシート104の周縁部90aに相当する領域を覆うように、印刷等の方法で剥離剤層118を設ける。次に、図6(b)に示すように、ブランクシート104の周縁部90a以外の位置に、商品名、企業名、デザイン画等を表するインク層106を印刷する。この図6(a)(b)の順は逆でも良い。次に、図6(c)に示すように、抜き刃108を用いて透孔90を打ち抜く。同時に、図示しない第二破断線44、切り込み50、ミシン線54、折曲線92、第一破断線94,96,98も形成する。次に、図6(d)に示すように、ブランクシート104のインク層106が形成された側に接着剤を塗布して接着剤層110を形成し、その表面に大きな樹脂フィルム14を貼り付けて接着する。そして、図6(e)に示すように、切り刃112を用いて透孔90の周縁部90aを囲む半切り線100を形成する。半切り線100は、樹脂フィルム14を切断してブランクシート104の途中までの深さに達している。同時に、抜き刃114を用いて箱体形成片116の外形を打ち抜く。
【0042】
箱体形成片116で構成した包装用箱10の使用方法は、上記の箱体形成片12で構成した場合と同様である。すなわち、樹脂フィルム14で塞がっている透孔90を開放するときは、摘み片42をフィルム開封部102の端部と共に摘み、第二破断線44を破断して摘み片42を側面16から分離させ、図4に示す操作と同様に、フィルム開封部102を周縁部90aから引き剥がす。このとき、接着剤110が剥離剤層118との界面できれいに剥離するので、フィルム開封部102が引き剥がされた周縁部90aは、紙板の表層部分に破り傷などが発生せず、図6(f)に示すように、滑らかな表面の剥離剤層118が現れる。
【0043】
次に、この発明の包装用箱の第三実施形態について、図7、図8を基にして説明する。この実施形態の包装用箱も、上記包装用箱10において、透孔90の周縁部90aのフィルム開封部102の構造を変更したものである。ここで、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
この実施形態の箱体形成片120は、透孔90の周縁部90aに、所定の文字又は絵柄のネガ形状を表したインク剥離剤層122と、インク剥離剤層122を含む周縁部90a全体の上面を覆うインク層124と、インク層124のインク剥離剤層122と重ならない領域の上面を覆い接着剤110の接着強さを制限する剥離剤層126とが設けられ、フィルム開封部102がインク層124及び剥離剤層126の上面に剥離可能に接着されている。その他の構成は、上記実施形態の箱体形成片12と同様である。
【0045】
箱体形成片120は、例えば、図7に示す方法で製造することができる。まず、図7(a)に示すように、紙製のブランクシート104の周縁部90a内に、所定の文字又は絵柄を表したインク剥離剤層122を印刷等の方法で設ける。例えば、装飾用の図形や、「開封後はお早めにご使用ください」等の注意書き等である。インク剥離剤層122は、ブランクシート104に強固に接着するが、インク層124との接着が弱い剥離剤が選択されている。次に、図7(b)に示すように、インク剥離剤層122を含む周縁部90aを覆うインク層124、及びブランクシート104の所定の位置に商品名、企業名、デザイン画等を表するインク層124を印刷する。次に、図7(c)に示すように、周縁部90aに設けたインク層124のインク剥離剤層122と重ならない領域の上面を覆って接着剤110の接着強さを制限する剥離剤層126を、印刷等の方法で設ける。剥離剤層126は、飾用の図形や注意書き等のポジ形状を呈する。次に、図7(d)に示すように、抜き刃108を用いて透孔90を打ち抜く。同時に、図示しない第二破断線44、切り込み50、ミシン線54、折曲線92、第一破断線94,96,98も形成する。次に、図7(e)に示すように、ブランクシート104のインク層124が形成された側に接着剤を塗布して接着剤層110を形成し、その表面に大きな樹脂フィルム14を貼り付けて接着する。接着剤層110は、ブランクシート104及びインク層124にしっかり接着する材料であって、インク層124が透けて見える程度に透明に近いものが選択されている。そして、図7(f)に示すように、切り刃112を用いて透孔90の周縁部90aを囲む半切り線100を形成する。半切り線100は、樹脂フィルム14を切断してブランクシート104の途中までの深さに達している。同時に、抜き刃114を用いて箱体形成片120の外形を打ち抜く。
【0046】
箱体形成片120で構成した包装用箱10の使用方法は、上記の箱体形成片12で構成した場合と同様である。すなわち、消費者が中の収容物に触る等するため、樹脂フィルム14で塞がっている透孔90を開放したいときは、摘み片42をフィルム開封部102の端部と共に摘み、第二破断線44を破断して摘み片42を側面16から分離させ、図4に示す操作と同様に、フィルム開封部102を周縁部90aから引き剥がす。このとき、接着剤110が剥離剤層126との界面で剥離し、インク層124がインク剥離剤層122との界面で剥離するので、フィルム開封部102が引き剥がされた周縁部90aには、図7(g)に示すようにインク剥離剤層122のない部分のインク層124が残り、図8に示すように、所定の絵柄が現れる。
【0047】
この実施形態の箱体形成片120を使用すれば、フィルム開封部102を引き剥がされた周縁部90aの見栄えをよくし、さらに、注意書きなどの情報を表示させることも可能である。
【0048】
次に、この発明の包装用箱の第四実施形態について、図9を基にして説明する。この実施形態の包装用箱は、上記包装用箱10において、中の収容物を取り出す方法を変更するため、透孔90を設ける位置とその大きさ等を変更したものである。ここで、上記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
この実施形態の箱体形成片128は、図9に示すように、上記箱体形成片12の透孔90及び周縁部90aに代えて、側面18の広い範囲と外側上蓋片46の一部の範囲に連続する透孔130及び周縁部130aが新たに設けられている。また、上記箱体形成片12に設けられていた摘み片42、折曲線92及び第一破断線94,96,98が省略されている。その他の構成は同様である。
【0050】
箱体形成片128の組み立て方法は、上記箱体形成片12の場合と同様のため省略する。樹脂フィルム14で塞がっている透孔130を開放する方法についてもほぼ同じであるが、ここでは、省略された摘み片42に代えて、フィルム剥離部102の端部に設けた摘み部102aを持って引き剥がす動作を行う。包装用箱10の中の収容物を取り出すときは、比較的大きく開放した透孔130から取り出す。例えば、多数の飴玉やキャラメル等が収容してあれば、透孔130に指を入れて1〜2個ずつ取り出すことができる。また、上記の第三実施形態の構造を適用し、透孔103の周縁部130aに「美味しいからって食べ過ぎないでね」などの注意書きが現れるようにしてもよい。
【0051】
なお、この発明の包装用箱は上記実施形態に限定されるものではなく、透孔及びフィルム開封部を区切る半切り線の形状や設ける位置は、自由に設定可能であり、不規則な波形や一方向に傾斜した波、連続する三角形や半円形等、何でも良い。また、直方体や立方体の箱体に限らず、他の多角形の包装用箱や異形の立体形状の包装用箱でも良く、筒状体を上下に分割する第一破断線を設ける場合は、直線以外の波形等にしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 包装用箱
12,116,120 箱体形成片
14 樹脂フィルム
16,18,20,22 側面
42 摘み片
44 第二破断線
90 透孔
92 折曲線
94,96,98 第一破断線
100 半切り線
102 フィルム開封部
106,124 インク層
110 接着剤層
118,126 剥離剤層
122 インク剥離剤層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、
前記箱体形成片には、互いに連接された複数の側面と、この連接方向に対して側方に位置する所定の端部に一対の端面部材が延設され、前記側面若しくは前記端面部材、又は前記側面と前記端面部材とを跨ぐように透孔が設けられ、少なくとも前記透孔が設けられた面に前記透孔を塞ぐ透明な樹脂フィルムが貼りつけられ、
前記箱体形成片を組み立てた状態で、前記複数の側面で筒状体を形成し、その筒状体の両側端部を前記端面部材で閉鎖し、中の収容物を前記透孔の部分から視認可能な包装用箱において、
前記樹脂フィルムは、前記箱体形成片の表側の面に接着剤によって貼りつけられ、
前記透孔の周縁部を囲むフィルム開封部が、前記樹脂フィルムを切断し前記箱体形成片の途中までの深さに達する半切り線によって区切られ、
前記箱体形成片を組み立てた状態で、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすことによって前記透孔を開放可能に形成されていることを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
前記箱体形成片を組み立てた状態で、
折罫線で互いに折り曲げられた筒状体を形成し、
一対の側面の一方には、前記透孔及び前記フィルム開封部が設けられ、他方の側面には前記側面の連接方向に折曲線が設けられ、
前記一対の側面に交差する一対の側面には、組み立て状態で前記透孔の両端から前記折曲線まで連続する第一破断線が設けられ、
前記フィルム開封部が前記第一破断線を含む領域に設けられ、
開封に際して、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がして前記透孔を開放し、さらに前記第一破断線を破断することにより前記筒状体が上下に分離し、内部の収容物が取り出し可能になる請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
前記一方の側面に設けられた前記透孔は、その側面に交差する側面の範囲に連続している請求項2記載の包装用箱。
【請求項4】
前記箱体形成片の前記透孔が設けられた面の端部に、開封時に指で持って操作可能な摘み片が第二破断線で区切られて延設され、
前記フィルム開封部が、前記摘み片を含む領域に設けられ、
前記箱体形成片を組み立てた状態から開封するとき、前記摘み片を前記第二破断線で分離させ、前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすことによって前記透孔が開放される請求項1乃至3のいずれか記載の包装用箱。
【請求項5】
前記箱体形成片の前記透孔の前記周縁部に、前記接着剤の接着強さを制限する剥離剤層が設けられ、前記フィルム開封部が前記剥離剤層の上面に剥離可能に接着されている請求項1乃至4のいずれか記載の包装用箱。
【請求項6】
前記箱体形成片の前記透孔の前記周縁部に、所定の文字又は絵柄を表したインク剥離剤層と、前記インク剥離剤層を含む前記周縁部の上面を覆うインク層と、前記インク層の前記インク剥離剤層と重ならない領域の上面を覆い前記接着剤の接着強さを制限する剥離剤層とが設けられ、前記フィルム開封部が前記インク層及び前記剥離剤層の上面に剥離可能に接着され、
前記フィルム開封部を前記透孔の前記周縁部から引き剥がすと、前記インク層の前記剥離剤層に覆われていない部分が前記フィルム開封部と一体に除去され、残った前記インク層の部分が形成する文字又は絵柄が視認可能に現れる請求項1又乃至4のいずれか記載の包装用箱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180094(P2012−180094A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42248(P2011−42248)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【Fターム(参考)】