化合物および病気に関連する遺伝子の特異的かつ同時阻害のための化合物の使用、および関連薬物
式:
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時にかつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
CはトポイソメラーゼIポイズンである]
の化合物の、遺伝子の発現によってもたらさせる病気の治療用の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子は安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される、使用である。
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時にかつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
CはトポイソメラーゼIポイズンである]
の化合物の、遺伝子の発現によってもたらさせる病気の治療用の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子は安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される、使用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成物、それらの調製工程、それらの使用方法、およびいくつかの遺伝子に対する不可逆的病巣を誘導することによって病理学に関与するこれらの遺伝子の発現を同時に阻害することを可能とするそれを含む組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、選択された配列を選択的に標的化し、与えられた病理学につき関係のある幾つかの遺伝子によって共有された共通する配列を同時に阻害する方法および生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド(TFO)は、ある種の遺伝子の発現に特異的に干渉することを目的として、Museum National d’Histoire Naturelle USM 0503 Unit INSERM UR565、CNRS UMR 5153の生物物理研究所で開発された。これらのTFOは他の適用、例えば、プラスミドの精製または標的配列の化学的修飾で用いられてきた。1997年に、インビトロ研究は、カンプトテシンの誘導体、トポイソメラーゼI阻害剤または、より正確には、ポイズンの、三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドへの化学的カップリングは、トポイソメラーゼIによるDNAの切断を、三重ラセンオリゴヌクレオチドによって標的化されたオリゴピリミジン−オリゴプリン配列に特異的に向けることを示した(Matteucci et al.,J.Am.Chem.Soc.119(1997)pp6939−6940)。
【0003】
本発明者らの刊行物、特に本発明者らの公表において既に記載されているように(Arimondo et al.1999,2000,2001a,b,2002)、特異的DNAリガンドにカップリングしたトポイソメラーゼI阻害剤は、DNAリガンドの結合部位に対して特異的となる。本発明との関係では、前記DNAリガンドに共有結合した生成物トポイソメラーゼIポイズンは以後複合体ともいう。このアプローチは、その作用メカニズムが腫瘍状態に関与する単一遺伝子の選択的変調に基づく抗腫瘍剤の開発を可能とする(図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カンプトテシン(略してCPT)の2つの誘導体のようなある種のトポイソメラーゼI阻害剤が臨床的実践で用いられているが、恐らくは、その低い配列特異性に関係してかなりの毒性レベルを有する。
【0005】
抗腫瘍薬物の選択性の問題もまた、抗生物質のような他のタイプの化学療法薬物に存在する。
【0006】
薬物の標的化は現代の療法において一般的問題としてとらえることができ、それは、代謝異常および自己免疫疾患も含む。
【0007】
今回、リンカーアームによって結合された、トポイソメラーゼIポイズンおよびDNA配列−特異的リガンドを含む特異的複合体が、その発現が病気、特に腫瘍または感染症に関連する、注目すべき遺伝子に対して、トポイソメラーゼIポイズンの作用を特異的に向けることができることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先行技術で言及された問題および欠点は本発明によって解決され、本発明の主な主題は以下の通りである。
【0009】
まず、本発明は、式:
A−B−C
[式中、Aは病理学的に注目される遺伝子に共通した配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;CはトポイソメラーゼIポイズンである]の化合物の、遺伝子の発現によってもたられる病気の治療の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子が安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される使用に関する。
【0010】
本発明の開発においては、本発明者らは、本発明の特定の目的である式A−B−Cの新しい化合物も見出した。
【0011】
本発明は、前記化合物の調製工程、それらを含む組成物、新しい薬物の開発において、および薬理学的テストにおいて前記化合物を用いる方法にも関する。
【0012】
本発明のさらなる目的は、特に腫瘍の発生および維持に関与する病理学的に注目されるタンパク質、またはウイルスおよび病原体タンパク質、または代謝異常または自己免疫タンパク質に関与するタンパク質につきコードするいくつかの標的遺伝子の発現を同時に阻害する方法であって、
(i)少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤において前記複合体による前記遺伝子に特異的な部位に向けられる少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに向け、
(ii)ゲノム中の前記遺伝子を前記複合体の前記リガンドによって認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得、
(iii)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害する;
工程を含む前記方法である。
【0013】
本発明によると、この方法は特にインビトロおよびインビボで行うことができる。
【0014】
前記構成を用いることによって、トポイソメラーゼI阻害剤(類)の効果をDNA−特異的部位に向け、トポイソメラーゼIによるこれらの部位における破壊を選択的に誘導することが可能である。DNA−特異的リガンドにカップリングした阻害剤(類)は、DNAリガンド固定部位に対してそれら自体が特異的となる。有利には、標的化されたDNA配列は、病理学の種類に依存して選択することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によると、前記遺伝子は、その発現が細胞の腫瘍状態の発生および維持を制御するものから選択される。特に好ましい実施形態において、遺伝子はIGF−1、IGF−1R、VEGF、BCL2からなる群より選択される。
【0016】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によると、前記遺伝子は、感染性微生物またはウイルスの中から選択される。特に好ましい実施形態において、遺伝子はHIVまたはHCVウイルスからなる群より選択される病原体のものである。
【0017】
本発明のなおさらに好ましい実施形態によると、前記遺伝子は代謝異常病に関与するものから選択される。
【0018】
本発明のなおさらなる好ましい実施形態によると、前記遺伝子は自己免疫疾患に関与するものから選択される。
【0019】
本発明によると、トポイソメラーゼI阻害剤、またはより正確にはポイズンは、トポイソメラーゼIの触媒作用によって媒介されるDNA/トポI開裂複合体を安定化する分子である。前記ポイズンは、有利には、インドロカルバゾールおよびその誘導体のような挿入剤、カンプトテシンおよびその誘導体のような非挿入剤、ベンズイミダゾールおよびその誘導体のような副溝リガンドからなる群より選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によると、前記ポイズンはカンプトテシン、より好ましくはカンプトテシン誘導体である。
【0021】
好ましいカンプトテシン誘導体は式(I):
[式中、R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、nは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖または分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり;あるいはR4は、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基、特に、−(CH2)m−NR12−(CH2)p−NR13−(CH2)q−NH2であり、mおよびpは2〜6の整数であり、qは0〜6の整数であり、両端は含まれ、R12およびR13は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル基、例えば、N−(4−アミノブチル)−2−アミノエチル、N−(3−アミノプロピル)−4−アミノブチル、N−[N−3−アミノプロピル)−N−(4−アミノブチル)]−3−アミノプロピルであり;あるいはR4はグリコシル残基、例えば、6−D−ガラクトシルまたは6−D−グルコシルであり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖のC1−C8アルコキシである]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である。
【0022】
式(I)の化合物の好ましい例は、nが1であり、R4が2−アミノエチルまたは3−アミノプロピルであり、R2およびR3が水素である化合物である(これらの化合物は、各々、本明細書中ではST1578およびST2541ともいう)。
【0023】
これらの化合物は、WO 00/53607に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0024】
もう1つの好ましいカンプトテシン誘導体は式(II):
[式中、Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり;nおよびmが1に等しい場合、YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置でC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C1−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいはもしnおよびmが共に0であるならば;Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり;R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリール−アルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、ここで同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である。
【0025】
式(II)の化合物の好ましい例は、pが1であり、R4がtert−ブチルである化合物であり、特に好ましい化合物はスクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ここではST2677という)である。
【0026】
これらの化合物はWO 03/101996に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0027】
もう1つの好ましいカンプトテシン誘導体は式(III)または(IV):
[式中、R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリール−アルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C10アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり;n=1または2であり、Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルから選択される]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩である。
【0028】
これらの化合物はWO 03/101995に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0029】
もう1つの好ましいカンプトテシンはArimondo P.B.et al.,Nucleic Acid Research,2003,Vol.31,No.14;4031−4040に開示されたもの、特に、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンである。さらにもう1つの好ましい化合物は10−ヒドロキシカンプトテシンである。
【0030】
前記リガンドはリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2’O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNA(リボース立体配座につきブロックされたRNA(Petersen and Wengel 2003)は、それが三重ラセンを形成する場合はTFOと呼ばれ、それが副溝に結合する場合はMGBと呼ばれる)からなる群より選択される。後者はN−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチル−3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンから選択される。
【0031】
また、本発明の目的物は式I:
A−B−C
[式中、Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;Cは前記式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体である]の化合物である。
【0032】
本発明の一般的な教示においては、前記した化合物のエレメントAおよびCはポイズン分子の異なる位置を通じてリンカーアームによって結合させることができ、但し、この位置はリガンドに結合すべき適当な官能基を有するものとする。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、カンプトテシン誘導体を用い、リガンドAは好ましくは位置7、10または20においてカンプトテシン分子に結合することができる。
【0034】
適当なリンカーアームは、1〜50、好ましくは20〜30の長さの、NまたはOを含む基において選択される炭素およびヘテロ原子の連続;およびホスホルアミドまたはアミド結合、またはチオエステルを与えるように反応することができる末端部位を含む。
【0035】
そのようなリンカーアームの例は、nが1〜12の整数である−NH−(CH2)n−NH−のようなジアミノアルキル;nが2〜6の整数であって、mが2〜3である−NH−(CH2)n−CO―、グリコール−(CH2)mO)n−である。
【0036】
前記実施形態による複合体の例はTFO−L3−SCPT、および(3+3)−CPT、(4+4)−CPT、TFO−18−L6−10CPT、TFO−18−L4−10CPT、TFO 16−L6−10CPT、およびTFO16−L4−10CPT、TFO16−L6−7CPT、TFO18−L6−7CPT、SCPT−Ln―TFO、TFO−L4−cCPT、TFO−L6−cCPTからなる群より選択され、TFOは三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドであり、LはCH2基の数であり、CPTはカンプトテシン誘導体である。(3+3)および(4+4)はヘアピンポリアミドである。
【0037】
他の複合体はレベッカマイシン;特にポイズンとしてのレベッカマイシンのインドロカルバゾール誘導体を含む。
【0038】
そのような複合体の例はTFO−Ln−RBC(Ln=−O(CH2)2O)n−、n=2;3または6)である。
【0039】
本発明のもう1つの実施形態によると、前記複合体は、前記したようなリガンド、前記トポイソメラーゼI阻害剤の誘導体よりなり、前記リンカーアームが阻害剤の置換基に組み入れられていることを特徴とする二元複合体である。前記置換基は、ホスフェートまたはホスホチオエート基と反応することができる末端部位を含む。そのような複合体の例はTFO−ST1578およびTFO−ST2541ならびに式(I)〜(IV)の関連化合物である。
【0040】
複合体の第三の群は、それがリガンド、前記リンカーの一部の役割を果たす基によって置換された前記トポイソメラーゼIポイズンの誘導体および、さらに、リンカーアームよりなることを特徴とする。その例はnが2および6の間の整数であるTFO−(CH2)n―cCPT;TFO−(CH2)3−SCPT、SCT−TFO、TFO−ST2677である。
【0041】
上述したように、本発明の複合体は、位置2および30の間に多数のプリンを含有する前記標的遺伝子の各オリゴピリミジン・オリゴプリン配列の近傍にトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を起こす。DNA/トポI開裂複合体の幾何学のため、切断部位は標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側となるべきである。
【0042】
この化学化合物は、トポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された前記開裂部位がリガンド結合部位の末端から1〜10ヌクレオチドに位置することも特徴とする。
【0043】
置換基の例はnが2〜6の整数であるH2N(CH2)n−O−N=CH−のような、所望により不飽和を持つジアミノアルキル、および式(I)〜(IV)の化合物のR4基に認識可能な基を含む。他の置換基は−CO−NH−基−を含むジカルボン酸鎖を含む。
【0044】
そのような基は、例えば、
[式中、RはC1−C4直鎖もしくは分岐鎖アルキルであり、n’は1〜6の整数である]である。
【0045】
本発明の複合体においては、阻害剤は例えばカンプトテシンであって、置換基はその位置20を占める。
【0046】
本発明のさらにもう1つの実施形態によると、複合体は、上記定義されたようなリンカーアームを介して阻害剤の置換基に連結されたリガンドを含む。
【0047】
また、本発明は前記複合体の製法に関する。ホスホルアミド結合はGrimm et al.2000に記載されているように4−ジメチルアミノピリジンの存在下でのトリフェニルホスフィンおよびジピリジルジスルフィドとの反応によって得られ;他方、アミド結合はこの方法によって、酸機能のカルボジイミド活性化によって、またはHATUの使用に際しての修飾されたペプチド合成手法によってのいずれかによって形成される。
【0048】
前記複合体は、有利には、細胞増殖抑制分子と比較して、新しいメカニズムを介して有効である。例によって示されたように、前記複合体は細胞に貫入し、その標的に結合する。
【0049】
従って、本発明の新しいアプローチは、副作用を減少させつつ、最適な抗腫瘍効果を維持することを目的とする。
【0050】
例えば、トポイソメラーゼI阻害剤の使用は、ほぼ15%の場合において、今回よく特徴付けられた遺伝子の逆移動によって特徴付けられる二次白血病の出現と関連することが確立される。ある種の選択された遺伝子にこれらの阻害剤を向けることは、治療効果の良好な選択性を可能とすることによってその白血病形成力を低下させることができる。
【0051】
また、本発明は、注目すべき遺伝子、またはいくつかの遺伝子の同時発現を特異的に阻害する方法における前記複合体の使用に関し、この遺伝子またはこれらの遺伝子は、例えば、1以上のウイルスまたは病原体タンパク質、または細胞の腫瘍状態の発生および維持に関与するタンパク質をコードする。
【0052】
有利には、単一オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体は、現在の臨床で用いられる抗腫瘍薬物の組合せと類似の効果を有することができると判断されるであろう。複合体によって標的とされる部位の数は、単独で用いる場合のCPTと比較してかなり低下する。
【0053】
従って、本発明は、医薬的に不活性な溶剤と組み合わせた有効量の少なくとも1つの上記定義された複合体を含むことを特徴とする医薬組成物にも関する。
【0054】
これらの組成物は、有利には、注射またはスプレーによるその投与を可能とする形態である。単位および日用量は病理学のタイプ、特に、治療すべき癌によって当業者によって測定されるであろう。この関連で、最先端技術水準で開示された複合体のいくつかはインビトロ、無細胞システムでおいてのみテストされた。本発明者らは、前記化合物を細胞に投与するのは不可能でないとしても非常に困難であることを見出した。従って、新しい化合物の態様および公知の化合物の使用の態様双方における本発明の化合物は、無細胞システムにてトランスフェクションベクターを共に投与されるべきである。トランスフェクションベクターの例はナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質、およびカチオン性ポリマーである。
【0055】
全く驚くべきことには、Cが式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体、特に、コードST1578およびST2677で確認されるカンプトテシン誘導体である化合物は、細胞に投与されるのにいずれのトランスセクションベクターも必要としない。というのは、それはエキソ・ビボで細胞膜を貫通するからである。従って、Cが式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体、特に、コードST1578およびST2677で確認されるカンプトテシン誘導体である化合物A−B−Cを含む組成物および薬物は、有利には、補充的トランスフェクションベクターを必要とせず、従って、その生物学的適用をより簡単なものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明の他の特徴および利点は、化学文献ならびに添付の図面を参照して、以下の実施例によって与えられる。
【0057】
図1は、特異的部位におけるトポイソメラーゼIによるDNAの開裂/切断を標的化する原理を示すダイヤグラムである。
図2Aは、公知の研究システム:標的オリゴプリン・オリゴピリミジン配列および対応する三重鎖形成性オリゴヌクレオチド(TFO)の配列を含む324−bp二重鎖を示す。
(例えば、5−メチル−デオキシシトシン(M)および5−プロピニル−デオキシウラシル(P)を用いることによって)三重ラセンを形成するオリゴヌクレオチド(TFO16、TFO18、TFO20、TFO23)を修飾して複合体の安定性を増加させた。TFOを20S−10−カルボキシカンプトテシン(10CPT)、20S−7−アミノエチルカンプトテシン(7CPT)、20S−7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン酢酸(SCPT)、20S−7−アミノエチルイミノメチルカンプトテシン(ST1578)、20S−7−アミノプロピルイミノメチルカンプトテシン(ST2541)に、およびスクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ST2677)にカップリングさせた。
(3+3)および(4+4)ヘアピンポリアミドタイプの2つの副溝リガンドを10−カルボキシカンプトテシン(10CPT)にカップリングさせた。
TFO16の、および2つの副溝リガンドの結合部位は四角によって示す。オリゴヌクレオチドはオリゴプリン・オリゴピリミジン配列に結合し、ワトソンークリック塩基対のプリンとでHoogsteen−タイプの水素結合を形成する。副溝リガンド(3+3)および(4+4)は結合し、副溝と相互作用する。複合体の化学式は図面の下方の部分で示され、リンカーアームはイタリック体で表す。オリゴヌクレオチドはEurogentec社(ベルギー国)から入手し、Grimm et al.,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 19(2000)pp.1943−1965に記載された方法に従って、HATUの使用に基づく適合されたペプチド合成手法によって阻害剤とカップリングさせる。副溝リガンドはArimondo et al.,Angewandte Chem.Int. Ed.40(2001)pp.3045−3048に記載されたように合成した。
【0058】
図2Bは、カンプトテシン誘導体ST1578、ST2541およびST2677、ならびに複合体TFO−ST1578、TFO−ST2541,TFO−L4−ST2677およびTFO−L4−10CPTの式を表す。
【0059】
図3Aは、トポイソメラーゼI開裂部位を表す。オリゴピリミジン鎖(ウェル1)上の位置3’における放射性標識324−bp二重鎖を、三種のカンプトテシン誘導体(ウェル2〜4、10CPT、7CPT、SCPT)の、TFO16と複合体したこれらの三種の誘導体(ウェル5〜7、TFO16−L4−10CPT、TFO16−L6−CPT、TFO16−L3−SCPT)の存在下で、トポイソメラーゼIと共にインキュベートした。開裂部位は文字によって示し、複合体の結合部位は図式によって示す。L3=ジアミノプロピニル;L4=ジアミノブチル、L6=ジアミノベキシル;インキュベーションの後、SDS/プロテナーゼでの処理によってタンパク質を消化し、開裂産物を変性ゲルで分析する。
【0060】
図3Bは、本発明による他の複合体で得られた結果を表し、DNAは、単独、あるいは5μMの10CPT、ST1578、ST2677またはST2541、または1μMの非複合体TFOと共にトポイソメラーゼの存在下で対照として用いる。1μMにおいては、全ての複合体は、オリゴヌクレオチドの結合部位の3’側のみにおいてヒトトポイソメラーゼによるDNAの開裂を指令し、阻害剤は三重ラセンの形成による位置である(部位b)。nTFOは未修飾シチジンおよびチミジンを担う。
対照的に、阻害剤単独は数個の部位(部位a、b、cおよびd)において開裂を刺激する。
複合体TFO−ST1578およびTFO−ST2541は複合体TFO−L4−10CPTよりも3倍効果的である。
複合体TFO−L4−ST2677は複合体TFO−L4−10CPTに匹敵する。
また、もう1つの化学的に修飾されたTFO、すなわち、配列+CP+CP+CP+CP+CP+TP+TP+TP(ここで、CはLNAシチジンを示し、+T=LNAチミジンである)を有するLNA(ロックされた核酸)についても結果を掲げる。
LNAを一工程合成にてST1578に結合させて、LNA−ST1678複合体を得た。部位bにおける開裂を指令する効果を評価した。前記複合体はTTFO−ST1578アナログよりも2倍効果は低かった。
DNA/トポI開裂複合体の分子拘束は三元複合体の幾何学を支配し、結合した三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドの存在下でDNA開裂を指令する。
【0061】
図4は、これは好ましい部位であるか否かを問わず、標的のオリゴプリン鎖上の三重ラセンの5’側の開裂およびオリゴピリミジン鎖上の3’側の開裂を誘導することを示す。位置3’におけるオリゴヌクレオチド上の阻害剤の存在は、シグナルを増幅する効果を有する。
【0062】
図5Aは、実験構築を表す:用いたプラスミドは、SV40プロモーターの制御下にあるPyralis ルシフェラーゼ遺伝子を含む、pGL3プロモーターベクター(Promega)の転写されたおよび非翻訳領域においてHind III/Nco I部位で54−bp二重鎖をクローニングすることによって得られた。TFO結合の配列、およびその近傍におけるカンプトテシンに感受性の部位を、Pyralisのルシフェラーゼ遺伝子(LUC)の上流の転写体領域に置く。インビトロの実験で用いる無傷三重ラセン配列(Pwt);3部位で突然変異した三重ラセン配列(pMUT);三重ラセン配列および3’側の、カンプトテシンによって刺激された公知の開裂部位(pTID)、およびTFOのいずれかのアンチセンス効果を回避するための対向鎖に挿入された無傷三重ラセン配列を含んだ54−bpのインサート。
【0063】
図5Bは、標的二重鎖、TFOおよび対照オリゴヌクレオチド配列を与え:TFO−L4−10CPTを複合体および、対照としての、ホスフェート(化合物TFOF)によって、または10CPT、NH2−(CH2)4−NH2(化合物TFO−NH2)のカップリングで用いるリンカーアームによって3’で保護されたオリゴヌクレオチドとして用いた。前記アームをジフェニル酢酸(化合物TFO−NPh2)に連結した。最後の対照として、同一の修正された塩基を含有するオリゴヌクレオチドを用いたが、異なる配列でもって、3’におけるホスフェート(16HIVUP)、10CPTのいずれかに、リンカーアームNH2−(CH2)6−NH2(化合物16HIV−CPT)を介して連結した。次いで、複合体TFO−ST1578をTFO−L4−10CPTと比較した。
【0064】
図6Aは、最初に、これらの分子につき、HeLa細胞におけるPyralisルシフェラーゼ遺伝子の転写の阻害を説明する。ヒト接着HeLa細胞を、37℃および10%CO2において、FCS10%を補足したDMEM(Invitrogen)中で培養した。細胞を、125μL/ウェルにて96ウェルプレートに接種した(110000細胞/mL)。24時間後、培地を、112.5μLの新鮮な培地および12.5μLのトランスフェクション混合物と交換する。前記トランスフェクション混合物は、1μgのpGL3Prまたは修飾されたもので;0.5μgのpRL−TK、種々の濃度のオリゴヌクレオチドおよび3μLのSuperfect(商標)(QIAGEN)を無血清倍地中に含有する。混合物は二連または三連で調製した。24時間後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ発現を評価した。デュアル−ルシフェラーゼ(商標)レポーターアッセイシステム(Promega)を用いて、同一細胞溶解物での双方のレポーター(PyralisおよびRenilla)の活性を測定し;96−ウェルプレートの各ウェルを30μLの受動的溶解緩衝液中で溶解させ、15μLを自動装置(Victor/Wallac)にて「Dual−luciferase(商標)Reporter Assay System(デュアル−ルシフェラーゼ(商標)レポーターアッセイシステム)」で分析した。双方の活性(PyralisおよびRenilla)の間の比率を用いて、効果の選択性を測定した。異なるオリゴヌクレオチドの存在下における双方の活性の間の比率の全ての値を、複合体(DNA)の不存在下におけるプラスミドの発現に対して正規化した。対照オリゴヌクレオチドは、Pyralisルシフェラーゼの発現に対して効果を有さなかった。複合体TFO−L4−10CPTのみが、無傷三重ラセン配列(pTIDおよびpWT)を含有する双方の標的に対して、0.5μMにおいて約40〜50%からその発現を阻害する。
インサートを有さない市販のプラスミドpGL3Prについては、複合体は効果を有さず、突然変異した三重ラセン(pMUT)を有するものについては大いに低下する。
【0065】
図6Bは、逆鎖でのプラスミド構築を用いる場合に得られた結果に関する。
図7Aおよび7Bは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、しかしながら、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す。
図8は、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を与え:細胞中の複合体の形成に続いて、イムノブロットを行った。
図9は、本発明の方法で有用なある種の複合体/複合体の(阻害剤単独と比較した開裂強度、および与えられた部位a、b、cおよびdの点における)有効性を示す。
【0066】
DNA配列を特異的に認識することができるオリゴヌクレオチドにトポイソメラーゼ阻害剤を複合体させることによって、選択された遺伝子に共通する標的配列での特異的三重ラセン複合体の形成のため、選択された遺伝子の群に対して阻害剤を標的化することが可能である。従って、これらの遺伝子についての不可逆的病巣を選択的に誘導し、その発現を阻害するのが可能となる。
【0067】
これは、特に、トポイソメラーゼI阻害剤の、オリゴヌクレオチドのような配列−特異的DNAリガンド、または副溝リガンドのような非核酸リガンド(N−メチルピロールおよびイミダゾールよりなるポリアミド)、または亜鉛フィンガーペプチドとの共有結合カップリングを用い、本来公知の方法で達成することができる。
【0068】
事実、そのようなリガンドは、各々、二重ラセンの主溝および副溝における結合によって、ある種のDNA配列を特異的に認識することができる。トポイソメラーゼI阻害剤のこれらのDNAリガンドへの化学的カップリングは、阻害剤を、リガンドの結合部位の近傍に選択的に位置させ、従って、トポイソメラーゼIによって誘導される破壊をこの部位に選択的に向ける。
【0069】
本発明者らは、従って、細胞の腫瘍状態の増殖および維持へのその関与につき選択された遺伝子または遺伝子の群へトポイソメラーゼ阻害剤を標的化することに基づいて新しい概念を開発した。これらの遺伝子は、例えば、細胞周期および分裂、増殖を制御する遺伝子から、および抗アポトーシス遺伝子から選択される。また、ウイルス遺伝子はこの戦略で標的化することもできる。
【0070】
選択されたオリゴヌクレオチドの長さに応じて、選択性を変調して、単一遺伝子のみにおいて狙うか、あるいは緩和して、次いで、遺伝子の群を阻害することができる。
【0071】
抗腫瘍化学療法におけるこの革新的戦略は、数個の遺伝子/機能の同時阻害を明らかに治療的重要な他の病理学まで拡大することができる。
【0072】
後に記載する薬理化学のアプローチの有用性は、本質的には、1つは標的のDNAを認識し、他方はトポイソメラーゼを動員する2つのヘッドを有する複合体での新しい「双頭」方法論の定義にある。
【0073】
これらの化合物の設計は、目的とする配列に適合させなければならず、かつ
上記した特徴を有さなければならない。
【0074】
ファルマコゲニックアプローチは、癌性腫瘍の細胞増殖および維持に関与する、特異的遺伝子に向けられたトポイソメラーゼIポイズンの標的化に基づいた新しい治療戦略の開発を含む。
【0075】
前記アプローチは、特に、細胞増殖に関与する遺伝子に対するおよび/または抗アポトーシス遺伝子に対する安定した三重ラセンの形成、血管形成によって選択的に結合することができる修飾されたまたは未修飾のオリゴヌクレオチドへトポイソメラーゼI阻害剤を化学的にカップリングさせることよりなる(図2:オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体によるトポイソメラーゼI−媒介DNA配列の標的化)。
【0076】
DNAリガンドアプローチは、いくつかの遺伝子の発現に対して同時に作用し、これらの遺伝子に共通する標的配列を選択する可能性を与える。
【0077】
癌のような多重遺伝子病理学を効果的に処理するためには、事実、遺伝子ファミリー、より正確には、細胞の通常の増殖回路を改変する遺伝子の群を同時に制御することが必須である。
【0078】
従って、かなり有利には、単一オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体は、臨床で現在用いられる抗腫瘍薬物の組合せに類似の効果を有し得る。
【0079】
このアプローチは、ある種の副作用を低下させつつ、この最適な抗腫瘍効果を維持するのを可能とすることができる。例えば、トポイソメラーゼII阻害剤の使用は、症例のほぼ15%において、今日よく特徴付けられている逆遺伝子トランスローケーションによって特徴付けられる二次性白血病の出現と関連するというのは確立された事実である。ある種の選択された遺伝子に対してこれらの阻害剤を向けることは、治療効果の良好な選択性を可能とすることによって、その白血病形成力を低下させることができる。
【0080】
また、その特に必須の態様の1つにおいて、本発明は、トポイソメラーゼI阻害剤の作用をDNA−特異的部位に向けて、この部位において、トポイソメラーゼIによる開裂を選択的に誘導するのを可能とする方法にも関する。
【0081】
癌の発生および維持に関与する遺伝子の2つの群、(1)成長因子IGF−1(インスリン−様−成長因子−1)がその受容体(IGF−1R)に結合する場合に確立されたもののような生存経路の遺伝子、および(2)IAPのようなアポトーシスを阻害する遺伝子、およびBcl−2ファミリーの抗アポトーシス遺伝子を考慮し、説明によって、以後純粋に、かつ非限定的にこの新しい概念を詳細に説明する。これらの遺伝子はある種の癌で過剰発現され、それをブロッキングすると抗腫瘍効果が得られる。
【0082】
本発明者らは、三重ラセンを形成することができ、かつ標的化すべき注目すべき遺伝子の群に共通する配列につきサーチを行った。このサーチは、GCGソフトウェア Unix findpatterns program(Genetic Computer Group,Infobiogen,Villejuif)を用いて行った。
【0083】
予備的サーチにおいて、本発明者らは、IGF−1、IGF−1RおよびAKT/PBK遺伝子に共通する12塩基対(bps)、およびbcl−2、bcl−XLおよびsurvivine抗アポトーシス遺伝子に共通する10−bp配列を含むオリゴピリミジン配列を同定した。
【0084】
さらに、図2に記載されたTFO配列は、表1に報告する遺伝子のリストに結合する。遊離CPT誘導体はゲノム(および、従って、多くの部位)においてほとんど特異性なく開裂を誘導するのに対し、図2に示す塩基配列を持つTFO−ポイズン複合体はこれらの遺伝子および、とりわけ、特に、腫瘍の増殖および維持に関与するIGF1RおよびVEGFに対してのみ開裂を誘導する。サーチは、UCSCにおいて公に入手可能なバイオインフォーマティクス源を用いて行った。
【0085】
既に述べたように、副溝リガンド(N−メチルピロールおよびN−メチルイミダゾールよりなるポリアミド)のような配列−特異的DNAの非核酸リガンドを用いて、与えられた部位に向けてのトポイソメラーゼ阻害剤の作用を指令することもできる。
【0086】
これらの使用は、安定した三重ラセンの形成によって課されるオリゴピリミジン・オリゴプリン標的配列拘束を無くすることが可能なはずである。
【0087】
カンプトテシンとカップリングした副溝リガンドでの結果を以下に示す。
【0088】
標的遺伝子の群に共通する配列についてのこのサーチは、専ら、または主として選択された遺伝子の群の一部を形成するように選択された最適な標的配列を規定するのを可能とするはずである。
【0089】
三重ラセンオリゴヌクレオチドの使用の場合には、複合体による開裂は、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位と共に、2〜100、好ましくは10〜30の多数のプリンを含む各オリゴピリミジンオリゴプリン標的配列に向けられる。
【0090】
さらに、阻害剤によって誘導され、かつ有利には三重ラセン末端およびリンカーアームから1〜10ヌクレオチドに位置する開裂部位は、開裂部位、用いられる阻害剤、および阻害剤のオリゴヌクレオチドへの付着点に従って適合される。
【0091】
オリゴヌクレオチド−トポイソメラーゼ阻害剤複合体に関しては、本発明者らは、カンプトテシン誘導体へのトポイソメラーゼ阻害剤のカップリングを行った。予備的試験では、本発明者らは、トポイソメラーゼI阻害剤であるカンプトテシンおよびレベッカマイシン誘導体の、オリゴヌクレオチド16ヌクレオチド長への共有結合カップリングが、インビトロにて、阻害剤が三重ラセンの形成によって位置する部位に対してトポイソメラーゼIによって特異的に開裂を向けることを示した(Arimondo et al.,1999,2000a)。
【0092】
同一の工程を、同様にして、すなわち、共有結合様式にてDNA−特異的リガンドの末端に付着させることができるトポイソメラーゼポイズンである他のタイプの阻害剤で行うことができる。
【0093】
リガンド部分および阻害剤部分を統合するリンカーアームの最適化は非常に重要であり、リガンド結合部位に関して用いられる阻害剤の切断部位の位置、および阻害剤のオリゴヌクレオチドへの付着点に従って適合させなければならない(Arimondo et al. 2002)。
【0094】
オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体の合成の後であって、その細胞活性の評価の前に、ゲルシフト実験および熱解離実験によって、三重ラセンを形成するその能力を分析すべきである。例えば、図2に記載された組成のTFOは結合し、インビトロにてトポI−媒介DNA開裂を、同一標的配列を共有する、テストされた2つの遺伝子におけるリガンド認識部位に特異的に向ける。
【0095】
選択された阻害剤の細胞活性
トポイソメラーゼI複合体のオリゴヌクレオチド−阻害剤の活性に関して、分子および細胞系は、IGF−1およびその受容体に関連する遺伝子のカスケードに対する異なる複合体の効果を研究することを可能とする(Hamel et al.,1999)。特に、開裂活性は、ゲノムDNAの直接的分析、トランスクリプトーム(DNAチップおよびノーザンブロット)およびプロテオーム(二次元ゲルおよびウェスタンブロット)分析による作用特異性によって評価することができる。IGF−1およびIGF−1R遺伝子は膠芽細胞腫、肝細胞癌および前立腺の腫瘍の増殖に関与するので、アンチセンス構築体によるその阻害は動物に移植された腫瘍の増殖をブロックする(Lafarge−Frayssinet et al.,1977)。培養中の腫瘍細胞についてのテストは、最も効果的なオリゴヌクレオチド複合体を選択し、(例えば、ヌードマウスに注入された膠芽細胞腫、または同質遺伝子ラットにおける肝細胞癌を持つ)動物モデルを用いるのを可能とするであろう。
【0096】
また、複合体の薬物動態学も標準的な手法で評価することができる。
【0097】
最も効果的な複合体に関しては、癌性細胞の増殖を阻害するその能力は、部分的には、異なる腫瘍細胞系を用いることによって、従って、インビトロでのほとんどの細胞傷害性分子では、マウスに異種移植されたヒト腫瘍からの、インビボモデルに対して評価することができる。
【0098】
本発明のある態様および目的の産業的適用の例
抗癌剤としてのトポイソメラーゼI阻害剤とカップリングさせたDNAリガンドの評価
癌と同程度に重要な病理学における新しい治療経路が関連するので、経済的関心はかなりのものである。
【0099】
従って、病理学における脱調節遺伝子の同定は新しい薬理遺伝学的製品の基礎を形成することができる。
【0100】
薬理遺伝学的成功は、
副作用の減少および治療有効性の増加
医薬開発に関連するコストの減少
患者に適する非常に多数の治療的解決の開発
公の健康出費の大幅な減少
について重要な結果を有するであろうことは明白である。
【0101】
この経済的インパクトは、あいにくと低い個々の有効性のレベルを伴う多数の治療プロトコルの間に選択がある癌の分野において非常に実質的であろう。
【0102】
実施形態
略語:
CPT=カンプトテシン;P=5−プロピニル−2’−デオキシウリジン;M=5−メチル−2’−デオキシシチジン;R=二重鎖のオリゴプリン鎖、Y=二重鎖のオリゴピリミジン鎖
=ワトソン−クリック塩基対合
トポ=トポイソメラーゼ
【0103】
材料および方法
阻害剤
全ての阻害剤はジメチルスルホキシドに溶解させ、次いで、水に希釈する。ジメチルスルホキシドの最終濃度は全てのテストにおいて決して0.3%(v/v)を超えない。阻害剤は図2において既に記載したようにTFOの3’または5’末端に結合している。
【0104】
カンプトテシン誘導体はArimondo et al.(2002)およびVillemin et al.(1996)に記載された技術に従って合成される。
【0105】
オリゴヌクレオチドおよびDNA断片
オリゴヌクレオチドはEurogentecによって市販されており、「クイックスピン」カラムおよび微細なSephadex G−25(Boehringer,Mannheim)で精製される。濃度は、最も近いモデル(Cantor et al.,1970)から計算された260nmにおけるモル消光係数を用いて25℃にて分光学的に測定される。
【0106】
CTP複合体の合成
僅かに修飾したGrimm et al.,Nucleosides,Nucleotides (2000)に記載された技術に従い、および、アミド結合形成については、オリゴヌクレオチドに適合させたHATUを用いるペプチド合成手法に従い、カンプトテシンCPTの誘導体は異なるリンカーアームを介してオリゴヌクレオチドの3’または5’末端のリン酸に、または副溝リガンド、N,N−ジメチル−N’{1−メチル−4−[1−メチル−4−[1−メチル−4−[4−{[1−メチル−4−[1−メチル−4[1−メチル−4−(4−アミノブチリル)アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]}アミノブチリル]アミノピロール−2カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル}プロピレンジアミン(3+3)に複合体される。Arimondo et al.(2001)Angewandte Chem.,前記Arimondo(2002)に記載されているように、リンカーアームは、アミノ−末端の反応によって、N−メチルイミダゾール、ジピリジルジスルフィドおよびトリフェニルホスフィンでの処理によって活性化された3’または5’末端におけるリン酸化オリゴヌクレオチドに結合される。複合体はUV分光測定および質量分光測定によって特徴付けられる。
【0107】
ST1578およびST2541におけるようにリンカーアームを用いない場合、CPT誘導体上のアミノ基は、Grimm et al.2000に記載された技術に従ってオリゴヌクレオチドの末端リン酸に直接結合される。
【0108】
(DNA)標的遺伝子の調製
pBSK(+/−)プラスミドはPromega(USA)によって市販されており、77−bp標的二重鎖がBamHIおよびEcoRI部位の間に挿入される。PvuIIおよびEcoRIによるプラスミドの消化により、クレノウポリメラーゼ(Ozume,GB)およびα[32P]dATP(Amersham,U.S.A)によって、3’末端における標識に適した324−量体断片を生じる。この二重鎖DNAの単離、精製および標識のための技術の詳細は(Arimondo 2002)に記載されている。2つの59−bp二重鎖は、ターミナルトランスフェラーゼ(Ozyme,GB)およびα[32P]dbATP(Amersham,U.S.A)による鎖の標識、続いての、90℃における5分間の非標識相補的鎖とのハイブリダイゼーション、および雰囲気温度までのゆっくりとした冷却によって得られる。放射性標識断片は、従前に記載されているようにゲルクロマトグラフィーによって精製される(Arimondo 2002)。鎖の命名法は以下の通りである:Rはオリゴプリンを表し、Yはオリゴピリミジン鎖を表す。
【0109】
トポイソメラーゼ開裂テスト
記載した濃度にて(合計反応用量10μL)、TFOまたはMGBの存在下で、50mMトリス−HCl、pH−7.5、60mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTAおよび30μg/μLのBSA中にて、放射性標識二重鎖(50nM)を30℃にて1時間インキュベートする。トポI DNA開裂生成物を分析するために、10単位の酵素(Invitrogen Inc)を加え、前述したように、リガンドおよび/または阻害剤と共にインキュベートし、続いて、30℃にて20分間インキュベーションする。トポI−DNA複合体はSDS(最終濃度0.25%)の添加によって解離させる。エタノール沈殿の後、全ての試料を6μlのホルムアミドに再懸濁させ、90℃まで4分間で加熱し、再度、氷上で4分間冷却し、その後、1×TBE緩衝液(50mMトリス−HCl、55mMのホウ酸、1mMのEDTA)中に7.5m尿素を含有する各々、長いおよび短い標的につき、8%および10%変性ポリアクリルアミドゲル[19/1アクリルアミド:ビスアクリルアミド]上に沈積させる。開裂強度を定量化するために、ゲルをDynamics 445SIホスホルイメージャーでスキャンする。開裂速度を測定するために、合計沈積に対する標準化を行う。
【0110】
20S−(7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)酢酸(SCPT)、位置10において前記酸に結合したTFO−SCPTおよびSCPT−TFO複合体、ならびに例えばTFO−10CPT、およびTFO−7CPT、(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPTのような位置10または位置7いずれかに付着した他の複合体の調製で用いられる新しいCPT誘導体の化学式は図2Aに掲げる。リンカーアームの役割を果たす置換基を有するカンプトテシン誘導体ST1578およびST2677は図2Bに掲げる。
【0111】
本発明者らは、現在抗腫瘍剤として臨床試験を受けている分子と同様な3つのレベッカマイシン誘導体、およびTFO(三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド)を持つ6つのカンプトテシン誘導体、および2つの副溝リガンド(MCB、副溝バインダー)を持つ10−カルボキシカンプトテシン誘導体を化学的にカップリングさせることによってアプローチを確認した(図2)。
【0112】
本発明者らは、阻害剤誘導体に存在しない場合、あるいは十分に長くない場合、阻害剤を適当なリンカーアームを介してオリゴヌクレオチドの1つの末端または副溝リガンドに共有結合させた。複合体はUV分光測定および質量分光測定(Q−STAR I)によって特徴付けした。複合体の開裂特異性は、標準トポイソメラーゼI開裂テストによってインビトロにて測定した。開裂指標は、DNAリガンドとカップリングした阻害剤の存在下における開裂強度と、非結合阻害剤の存在下におけるそれとの間の関係として計算される。標的化の例を図3に示す。3つの非カップリングカンプトテシン誘導体(ウェル2、3、4)はいくつかの部位(部位a〜i)における開裂を刺激する。誘導体が適当なアームを持つTFOの3’末端に共有結合する場合、三重ラセンが形成され(ウェル5、6、7)、複合体は三重ラセン(部位「b」)の3’側のみに開裂を誘導する。これは、複合体のオリゴヌクレオチド部分のその標的への結合による、三重ラセン部位の3’側に対する阻害剤の特異的位置決めによる。オリゴヌクレオチドの場合には負に荷電されたリガンドの存在は、三重ラセンの、またはこの部位からかなりの距離をもって位置した他の部位の5’側に位置する部位「a」の消失によって明らかに示されるように、複合体された阻害剤の他の部位への結合を妨げる。
【0113】
本発明者らは、異なる長さ(16、18、20および23ヌクレオチド)のTFO(図9参照)に対する、および異なるレベッカマイシンおよびカンプトテシン誘導体に対するDNAリガンドの結合部位の近傍におけるトポイソメラーゼIによるトポイソメラーゼ1媒介DNA開裂のこの標的化を示した。同一のアプローチは、DNAの副溝に特異的に結合するN−メチルピロールヘアピンポリアミドのような他の配列−特異的DNAリガンドまで拡大された(図2:(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPT複合体)。また、本発明者らは、それをもう1つの標的:HIV−1ウイルスのPPT(ポリプリントラクト)(5’AAAAGAAAAGGGGGGA 3/TTTTCTTTTCCCCCCT5’)まで、およびIGF−1のプロモーター1に存在する22−量体配列(5’ GAAGAGGGAGAGAGAGAGAAGG 3’/TCTTCTCCCTCTCTCTCTCTTCC 5’)まで拡大した。さらに、図2に記載されたTFOはIGF1Rのイントロン2に結合することが示された(表1)。
【0114】
従って、前記アプローチは、特に、2つのクラスの配列−特異的DNAリガンド(TFOおよびMGB)で、異なるクラスのトポイソメラーゼI阻害剤で、および異なる標的で有効である。
【0115】
本発明の主題は、有利には、用いられるリガンドがオリゴヌクレオチドのような配列−特異的DNAリガンド、または副溝リガンドのような非核酸リガンド(N−メチルピロールおよびN−メチルイミダゾールよりなるヘアピンポリアミド、特に、(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPT複合体)、または亜鉛フィンガーペプチドからなる群より選択される上記定義された方法でもある。
【0116】
また、本発明者らは、リガンドの結合部位においてかく刺激されたトポイソメラーゼI開裂有効性は、一方において、阻害剤およびリガンドの間のリンカーアームのサイズ、および他方において、阻害剤の固有の有効性に依存することも示した。さらに、本発明者らは、リガンドの結合による抗腫瘍剤のポジショニングは、標的化部位におけるこの分子の局所的濃度をインビトロで増加させる効果を有することを観察した;事実、複合体は1〜10nMの濃度においてトポイソメラーゼIによる開裂を刺激する。さらに、DNA/トポイソメラーゼ/阻害剤開裂複合体は、阻害剤がTFOに複合体し、三重ラセンが形成された場合にかなり安定である。高濃度の塩(>600mM NaCl)がそれを解離させるのに必要である。
【0117】
その配列がリガンド−阻害剤複合体のDNAリガンドの結合によって認識される、これらの抗腫瘍剤の作用が前記部位に選択的に向けられるこのアプローチは、新しい抗腫瘍薬物の開発においてかなり新しいアプローチを可能とする。
【0118】
現在、三元トポイソメラーゼI/DNA/阻害剤複合体の構造は完全にはまだ説明されていないのを考え、本発明者らは、三元DNA/トポイソメラーゼ/阻害剤複合体の構造解析のために前記複合体を用いた。阻害剤のTFOへの付着点を変化させると、三元複合体における阻害剤の向き、従って、前記酵素による開裂の有効性を修飾する(図4および9参照)。従って、本発明者らは、2つのカンプトテシン誘導体、10−カルボキシカンプトテシンおよび7−アミノエチルカンプトテシンを異なる長さのTFOに共有結合させた。三元複合体の近傍における位置および開裂強度の研究は、従って、三元複合体を記載する現在のモデルが適当ではなく、他の立体配座を考慮しなければならないことを示した。三元複合体の立体配座柔軟性のもう1つの表示は、開裂有効性が、10−カルボキシカンプトテシンが主溝リガンド(TFO)または副溝リガンド(MGB)に連結されるかを問わず匹敵するという事実に由来する。
【0119】
予期せぬことに、三重ラセンそれ自体の存在は、単独で、トポI−媒介DNA開裂のある種の標的化を誘導する。本発明者らは、複合体が以下に記載する特徴を有する場合に開裂が起こることを示した;
【0120】
また、本発明の主題は、まず、特に、腫瘍の発生および維持に関与するタンパク質をコードするいくつかの標的遺伝子の発現を同時に阻害する方法であって:
(iv)前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ選択的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに複合体させることによって、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(v)ゲノム中の前記遺伝子の前記複合体を前記リガンドによって認識し、前記標的への前記リガンドの結合を得ることと、
(vi)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害することと;
を含むことを特徴とする前記方法である。
【0121】
接合段階は、前記遺伝子およびトポイソメラーゼを含有する生物学的試料にてインビトロで、培養からの細胞にてエキソ・ビボで行われる。
【0122】
トポイソメラーゼ阻害剤の存在は、有利には、トポイソメラーゼIによって媒介されるDNA開裂の標的化の効果を増幅する。三重鎖によって誘導されるこの開裂は正確な幾何学に依存し:オリゴヌクレオチドのその標的への結合は、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重ラセンの3’側、および標的のオリゴプリン鎖上の5’側のみに対する開裂を刺激する(図4)。
【0123】
また、本発明は、少なくとも1つのリガンドの複合体、特に、標的のオリゴプリン鎖上の5’側、および標的遺伝子のオリゴピリミジン鎖上の3’側のトポイソメラーゼIによる開裂を誘導するオリゴヌクレオチドで形成された三重ラセンの複合体(「TFO」)に関する。
【0124】
さらに、本発明は、三重ラセンを形成し、位置3’において、三重ラセンの3’側の酵素の選択的かつ強力な開裂を刺激するトポイソメラーゼI阻害剤にカップリングしたピリミジンオリゴヌクレオチドに関する。
【0125】
三重鎖の3’側は、水素結合の形成によりTFOによって認識されるオリゴプリン配列の3’側と定義される。開裂のこの向きは、開裂部位におけるDNAへのトポイソメラーゼIの結合が対称ではなく、前記酵素が開裂された鎖の3’リン酸とでホスホロチロシル結合を形成し、5’OH末端を脱離させるという事実にリンクされる。従って、三重ラセンは、酵素に対する立体的障害無くして、標的上の開裂部位の3’側に存在し得る。トポイソメラーゼIの好ましい部位が三重ラセンの存在によって誘導されるのみならず、部位が三重ラセンの存在においてのみ検出できることが強調されなければならない。これは、三重鎖の存在にリンクされたDNAの立体配座の局所的変化によるものと考えることができる。事実、開裂有効性は三重ラセンの5’側および3’側で同一ではなく、三重ラセンの2つの末端は等しくないことが知られていることに注意しなければならない。一方、酵素の進歩は、酵素を「休止させ」、それにこの近傍で開裂する時間を与える三重鎖構造による物理的ブロッキングによって停止される。2つの仮説は相互に排他的なものではない。
【0126】
本発明の主題は、
(vii)前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに複合体させることによって、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤を前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(viii)ゲノム中の前記遺伝子の前記複合体を前記リガンドによって認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得ることと、
(ix)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害することと;
を含む上記定義された方法でもある。
【0127】
本発明の方法の好ましい実施形態によると、標的化配列は、オリゴヌクレオチドの場合には、2〜100、好ましくは2〜30塩基対の多数のプリンを含む各オリゴピリミジン・オリゴプリン標的配列であるリガンドによって認識される部位を含む。なおより好ましくは、前記標的化配列は、より大きな有効性を得るためにその近傍にトポイソメラーゼ阻害剤の部位も含む。阻害剤によって誘導された開裂部位は、三重ラセンの末端から1〜10ヌクレオチドに位置しなければならない。リンカーアームは、開裂部位、用いられる阻害剤、阻害剤のオリゴヌクレオチドへの結合点に従って適合させなければならない。
【0128】
次いで、本発明者らは、細胞における前記アプローチの有効性を初めて示した。
【0129】
インビトロ実験は、核バリアー、クロマチンの構造、および核中の複合体の特異性を考慮することができないので、本発明者らは、細胞系において複合体をテストした。前記複合体は細胞において特異的な効果を誘導し、これは、三重ラセンの形成、およびオリゴヌクレオチドにカップリングした阻害剤の存在に依存する。
【0130】
より正確には、本発明者らは、HeLa細胞にトランスフェクトされたプラスミド発現ベクターを用い、TFOの結合配列、およびその近傍におけるカンプトテシンに対して感受性の部位のそれを、Pyralisルシフェラーゼ遺伝子(luc)の上流の転写された領域に入れる。プラスミドは、Hind IIIおよびNco I部位の間のベクターpGL3プロモーター(Promega)への、図5に記載された配列を含む54塩基対を持つ断片のクローニングの後に得られた。Renillaルシフェラーゼ遺伝子をコードするpRL−TK(Promega)をトランスフェクション対照として用いる。
【0131】
HeLaヒト接着性細胞を、37℃および10%CO2にて、10%FCSを補足したDMEM培地(Invitrogen)中で培養する。細胞を、ウェル当たり125μLにて、96−ウェルプレートに接種(Ml当たり110,000細胞)。24時間後、細胞の培地を、112.5μLの血清を含む新鮮な培地および12.5μLのトランスフェクション混合物によって置き換える。トランスフェクション混合物は無血清培地中に、1μgのpWTまたはpMTUCまたはpMUTまたはpIWT;0.5μgのpRL−TX、変化させた濃度のオリゴヌクレオチド、および3μLのSuperfect(商標)(Qiagen)を含有する。混合物は二連または三連で調製する。24時間後、細胞をルシフェラーゼ発現アッセイのために溶解する。
【0132】
「dual−Luciferase(商標)Reporter Assay System」 (Promega)を、同一細胞溶解物につき2つのレポーター(PyralisおよびRenilla)の活性の測定のために用いた:96−ウェルプレートの各ウェルを30μLの「受動溶解緩衝液」に溶解させ、自動装置(Victor/Wallac)を用いて、「dual−Luchiferase(商標)Reporter Assay System」キットで15μLを分析した。
【0133】
2つの活性の比率(Pyralis/Renilla)を用いて、効果の選択性を測定する。図6は、複合体の不存在下におけるプラスミドの発現と比較して標準化された、異なるオリゴヌクレオチドの存在下での2つの活性の間の比率を示す。3つのプラスミドpWT、pMTUCおよびpMUTは、オリゴヌクレオチド部分の長さ、アームの長さ、および結合したカンプトテシン誘導体が異なる4つの複合体として同様に表される。位置3’において(CH2)4−NH2(オリゴ−NH2)アームに結合したオリゴヌクレオチドTFO16を対照として用いる。このオリゴヌクレオチドは非常に安定した三重ラセンを形成する。
【0134】
三重ラセンを形成する対照オリゴヌクレオチドオリゴ−NH2の1μMにおける存在は、ほぼ30%だけルシフェラーゼ遺伝子の発現を阻害する。カンプトテシンへのカップリングは阻害効果を増加させる(複合体に従って45%および60%阻害の間)。阻害におけるこの増加は、インビトロで観察されたように、三重ラセンの形成によって位置されたカンプトテシンの存在下においてトポイソメラーゼによって誘導された三重ラセンの近傍におけるDNAの開裂によって説明することができる。複合体はその有効性が異なり;10−カルボキシカンプトテシンの誘導体TFO16、TFO16−L6−10CPTおよびTFO16−L4−10CPTが最も効果的である(ほぼ60%阻害)(図9参照)。結合アームの長さは阻害の有効性に大きく影響しない。インビトロ実験は、これらの複合体が、三重ラセンの3’末端から4bpsの部位「b」において開裂を効果的に刺激することを示す(前記、図3参照)。インビトロにおいて同等に効果的であるが、16−量体よりも特異性は低いTFO18−L6−10CPT複合体は、ルシフェラーゼ遺伝子発現の45%を阻害するに過ぎない。7−アミノエチルカンプトテシンを含むTFO16−L6−7CPT複合体は、対応するTFO16−L6−10CPT複合体よりも効率は低く、ほぼ50%阻害である。これは、阻害剤の開裂有効性についてのインビトロ結果と合致し:10−カルボキシカンプトテシンは、7−アミノエチル−カンプトテシンよりも効果的にトポイソメラーゼ1によるDNAの開裂を刺激する。観察された効果は、複合体のオリゴヌクレオチド部分による標的での三重ラセンの形成に確実によるものである。これは、2つの(pMTUC)または3つの(pMUT)部位での三重ラセン配列における突然変異した標的での測定によって確認される。2つのプリン突然変異の存在は阻害の有効性を低下させ、三重ラセンは依然として形成されているが、事実上は少ない:オリゴ−NH2は30%阻害〜ほぼ15%通過し、TFO16−L6−10CPTは60%〜45%複合体する。結合部位における3つのピリミジン突然変異の存在は阻害の全くの喪失を意味する。図7Aおよび7B参照。
【0135】
合成されたRNA(pIWT)に対する複合体のアンチセンス効果を回避するために、逆鎖を持つプラスミド構築体を用いた。結果を図6Bに示す。対照はルシフェラーゼPyralisの発現を阻害せず、複合体TFO−L4−CPTは0.5μMにおいてその発現を40〜50%阻害する。複合体TFO−ST1578は依然としてより効率的であり、0.5μMにおいて50〜60%の阻害が測定される。前記複合体は、三重ラセン部位を有さないプラスミドpGL3Pr構築体に対して不活性であった。
【0136】
図8に対応する実験において、HeLa核細胞(5000000)を調製し、種々の濃度(図8では5μM)にて、遊離(CPTまたはST1578)、またはオリゴヌクレオチドにカップリングした(TFO−L4−10CPTまたはTFO−ST1578またはLNA−ST1578)トポイソメラーゼIポイズンと共に、または対照オリゴヌクレオチド(TFO−NH2またはTFO−NPh2)と共に37℃にて3時間インキュベートした。サルコシルを添加した後、溶解物をCsClの勾配にて16時間超遠心した。12の画分を回収し、ウェスタンスロットブロットによって分析して、トポイソメラーゼIを含有する画分が示された(未処理対照(モック)ではI−4)。
【0137】
前記DNAを含有する画分は、260nmにおいて吸光度を測定することによって同定された(画分8〜10)。トポイソメラーゼIは、阻害剤(CPTまたはST1578)または複合体TFO−L4−10CPT、TFO−ST1578またはLNA−ST1578の存在下でDNAを含有する画分のみで観察され、これはDNA/トポI開裂複合体の安定化を示唆する。対照TFO(TFO−NH2、TFO−NPh2)の使用に際して、トポイソメラーゼIは、未処理細胞(モック)では最初の画分にのみ存在した。
【0138】
このアプローチでは、本発明者らは、複合体が、細胞システムで選択された部位にトポイソメラーゼによる特異的破壊を誘導することができることを示した。異なるトポイソメラーゼI阻害剤を用いることができ、阻害は阻害剤の固有の有効性に依存する。なぜなら、本発明者らは、6つのカンプトテシン誘導体およびインドロカルバゾール誘導体で観察したからである。
【0139】
阻害剤の効果を増加させるために、例えば、PNA、ペプチド核酸、2’OAIkylリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNA(リボースの立体配座についてブロックされたRNA)のような化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0140】
複合体は以下のものを目的とすることができる。
例えば、特定の(単一)遺伝子の発現に依存する病理学のためのヒトゲノムに、またはウイルスプロゲノム(例えば、ある種のウイルスHIVおよびHSVの発生を担う遺伝子)、または寄生虫のゲノムに存在する単一配列いずれか。次いで、複合体は遺伝子の選択的不活化を可能とする。
または病理の維持および発生に関与するいくつかの遺伝子に共通する標的配列(例えば、オンコジーン、成長因子、抗アポトーシス遺伝子、腫瘍細胞で観察される障害に参加する細胞周期および分裂を制御する遺伝子)。次いで、複合体は幾つかの遺伝子の同時制御を可能とする。
【0141】
事実、複合体のリガンド部分につき選択された結合部位の長さおよび配列によると、複合体の選択性は、単一遺伝子においてのみ目的とするために厳格であるか、あるいは遺伝子の群を標的とするために緩やかとすることができる。
【0142】
第一の場合において、統合されたウイルスのゲノムを標的化し、このゲノムにおいてのみ存在する配列に対して向けられた複合体によって特異的に開裂させることができる。本出願の範囲内では、本発明者らは、アプローチをHIV−ウイルスのPPIを含むように拡大した。
【0143】
第二の場合において、ある種の腫瘍病理に関与するいくつかの遺伝子は、トポイソメラーゼIによって特異的かつ同時に開裂させることができ、共通の標的配列を選択することができる。
【0144】
癌性特徴の獲得および維持に関連した遺伝子の同時阻害は、腫瘍細胞の悪性特性に対して特異的な必須の生化学的プロセスを標的化するのを可能とする。本発明者らは、成長シグナルの伝達、およびアポトーシスの阻害に関与する2つの群の遺伝子を選択した。最初の場合には、成長因子IGF−1(インスリン−様成長因子−1)、その受容体IGF−1R、および対応するシグナル化カスケードにおいて下流に位置する遺伝子を選択した。これらの遺伝子は細胞の生存経路を活性化し、膠芽細胞腫、肝細胞癌および前立腺腫瘍の増殖に関与する。アンチセンス構築体によるIGF−1またはIGF−1R遺伝子の阻害は、動物に移植された腫瘍の増幅をブロックする。第二の場合、目的は、癌性細胞にアポトーシスを誘導し、アポトーシス−抑制遺伝子(例えば、C−IAP1/2、XIAP、survivine、bcl−2、bcl−W、bcl−XL、Mcl−1)に共通する配列を標的化することである。アポトーシスまたはプログラムされた細胞の死滅は、カスパーゼによって実行される細胞の制御された断片化である。前記プロセスは、アポトーシスを誘導するタンパク質とそれを阻害するタンパク質との間の平衡によって制御される。アポトーシス−阻害遺伝子は、細胞の寿命を延長することによって、細胞の悪性トランスフォーメーションに導く遺伝子事象の確立を増加させ;それらは、しばしば、癌細胞において過剰発現される。
【0145】
本発明者らは標的化することを望む遺伝子の群に共通する三重ラセンを形成することができる配列につきサーチするために、後者はGCG Unixソフトウエアファインドパターンプログラム(Infobiogen、VillejuifによるGenetics Computer Group,Wisconsin package version 8.1)を用い、また、UCSCヒトゲノムデータベースを用いた。
【0146】
IGF−1、IGF−1RおよびAKT/PKB遺伝子に共通する12塩基対(bps(GGAGGAGGAGGG)のオリゴピリミジン−オリゴプリン、および抗アポトーシスbcl−2、bcl−XLおよびsurvivine遺伝子に共通する10−bp配列(GAAGAAGAGG)についての予備的サーチは、アプローチの可能性を示した。オリゴピリミジン・オリゴプリン配列の選択はアプローチを制限するものではない。というのは、これらの配列はヒトゲノムで過剰発現され、全遺伝子(調節領域、コーディングおよび非コーディング領域)は、三重ラセンを形成するオリゴヌクレオチドについての潜在的標的であるからである。さらに、図2に示されたオリゴヌクレオチドは、いくつかの遺伝子(表1)に存在する共通配列、例えば、癌性特性の獲得および維持に関与するIGF1RおよびVEGFを認識する。
【0147】
さらに、トポイソメラーゼ阻害剤は、通常は、開裂部位の周りのジヌクレオチドに制限されるある配列特異性を有することを忘れてはならない。事実、本発明者らは、複合体の三重ラセン部位への結合が強力な開裂を誘導するのに十分ではなく、三重ラセン部位の近傍における阻害剤に対して特異的な部位の存在は、トポイソメラーゼによる開裂の動員および誘導に対して大いに好ましいことが観察された。本発明者らは、これより、標的化配列は、好ましくは、オリゴヌクレオチドによって認識される部位のみならず、その近傍におけるトポイソメラーゼI阻害剤の部位を含み、従って、複合体の選択性を増大させると推定した。
【0148】
最後に、本発明者らは、オリゴヌクレオチドならびにN−メチルーピロールおよびN−メチルイミダゾールのポリアミドのようなDNAリガンドに対するアプローチを確認したが、原理は、例えば、亜鉛フィンガーペプチドのような他のクラスのリガンドまで拡大することができる。
【0149】
本発明の主題は、
さらに、(特に、TFO(三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド)−トポイソメラーゼ阻害剤を含む)複合体による開裂が、より効果的には、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位と共に、2〜100、好ましくは2〜30の多数のプリンを含む前記オリゴピリミジン・オリゴプリン標的遺伝子の各配列に向けられることを特徴とする上記定義された方法、
さらに、トポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された前記切断部位が、三重ラセンの末端から1〜10ヌクレオチドに位置することを特徴とする上記定義された方法、
さらに、前記標的遺伝子の配列が、病理学に関与する遺伝子上のヒトゲノムに存在する単一標的配列、またはウイルスまたは寄生性遺伝子のみに存在し、ヒトゲノムでは存在しない標的、または病理の維持または発生に関与する遺伝子の群に存在する配列いずれかであることを特徴とする上記定義された方法;
でもある。
【0150】
本発明者らは、さらに:
本発明による方法で有用な複合体は、細胞増殖、成長因子またはホルモン受容体シグナル伝達、および抗アポトーシス剤の群に作用することができる新しい効果的な抗腫瘍剤を構成するはずであり、
トポイソメラーゼI阻害剤にカップリングした前記副溝リガンドは、酵素による直接的開裂をリガンドの結合部位に選択的に向け、オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体と同一の適応を有する;
ことを提案しおよび/または示した。
【0151】
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【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】図1は、特異的部位におけるトポイソメラーゼIによるDNAの開裂/切断を標的化する原理を示すダイヤグラムである。
【図2.A】図2.Aは、公知の研究システム:標的オリゴプリン・オリゴピリミジン配列および対応する三重鎖形成性オリゴヌクレオチド(TFO)の配列を含む324−bp二重鎖を示す説明図である。
【図2.B】図2.Bは、カンプトテシン誘導体ST1578、ST2541およびST2677、ならびに複合体TFO−ST1578、TFO−ST2541,TFO−L4−ST2677およびTFO−L4−10CPTの式を表す説明図である。
【図3.A】図3.Aは、トポイソメラーゼI開裂部位を表す説明図である。
【図3.B】図3.Bは、本発明による他の複合体で得られた結果を表す説明図である。
【図4】図4は、標的のオリゴプリン鎖上の三重ラセンの5’側の開裂およびオリゴピリミジン鎖上の3’側の開裂を誘導することを示す説明図である。
【図5.A】図5.Aは、実験構築を表す説明図である。
【図5.B】図5.Bは、標的二重鎖、TFOおよび対照オリゴヌクレオチド配列などを示す説明図である。
【図6.A】図6.Aは、HeLa細胞におけるPyralisルシフェラーゼ遺伝子の転写の阻害を説明する説明図である。
【図6.B】図6.Bは、逆鎖でのプラスミド構築を用いる場合に得られた結果に関する説明図である。
【図7.A】図7.Aは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す説明図である。
【図7.B】図7.Bは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す説明図である。
【図8.A】図8.Aは、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を示す説明図である。
【図8.B】図8.Bは、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の方法で有用なある種の複合体/複合体の(阻害剤単独と比較した開裂強度、および与えられた部位a、b、cおよびdの点における)有効性を示す説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生成物、それらの調製工程、それらの使用方法、およびいくつかの遺伝子に対する不可逆的病巣を誘導することによって病理学に関与するこれらの遺伝子の発現を同時に阻害することを可能とするそれを含む組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、選択された配列を選択的に標的化し、与えられた病理学につき関係のある幾つかの遺伝子によって共有された共通する配列を同時に阻害する方法および生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド(TFO)は、ある種の遺伝子の発現に特異的に干渉することを目的として、Museum National d’Histoire Naturelle USM 0503 Unit INSERM UR565、CNRS UMR 5153の生物物理研究所で開発された。これらのTFOは他の適用、例えば、プラスミドの精製または標的配列の化学的修飾で用いられてきた。1997年に、インビトロ研究は、カンプトテシンの誘導体、トポイソメラーゼI阻害剤または、より正確には、ポイズンの、三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドへの化学的カップリングは、トポイソメラーゼIによるDNAの切断を、三重ラセンオリゴヌクレオチドによって標的化されたオリゴピリミジン−オリゴプリン配列に特異的に向けることを示した(Matteucci et al.,J.Am.Chem.Soc.119(1997)pp6939−6940)。
【0003】
本発明者らの刊行物、特に本発明者らの公表において既に記載されているように(Arimondo et al.1999,2000,2001a,b,2002)、特異的DNAリガンドにカップリングしたトポイソメラーゼI阻害剤は、DNAリガンドの結合部位に対して特異的となる。本発明との関係では、前記DNAリガンドに共有結合した生成物トポイソメラーゼIポイズンは以後複合体ともいう。このアプローチは、その作用メカニズムが腫瘍状態に関与する単一遺伝子の選択的変調に基づく抗腫瘍剤の開発を可能とする(図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カンプトテシン(略してCPT)の2つの誘導体のようなある種のトポイソメラーゼI阻害剤が臨床的実践で用いられているが、恐らくは、その低い配列特異性に関係してかなりの毒性レベルを有する。
【0005】
抗腫瘍薬物の選択性の問題もまた、抗生物質のような他のタイプの化学療法薬物に存在する。
【0006】
薬物の標的化は現代の療法において一般的問題としてとらえることができ、それは、代謝異常および自己免疫疾患も含む。
【0007】
今回、リンカーアームによって結合された、トポイソメラーゼIポイズンおよびDNA配列−特異的リガンドを含む特異的複合体が、その発現が病気、特に腫瘍または感染症に関連する、注目すべき遺伝子に対して、トポイソメラーゼIポイズンの作用を特異的に向けることができることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
先行技術で言及された問題および欠点は本発明によって解決され、本発明の主な主題は以下の通りである。
【0009】
まず、本発明は、式:
A−B−C
[式中、Aは病理学的に注目される遺伝子に共通した配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;CはトポイソメラーゼIポイズンである]の化合物の、遺伝子の発現によってもたられる病気の治療の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子が安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される使用に関する。
【0010】
本発明の開発においては、本発明者らは、本発明の特定の目的である式A−B−Cの新しい化合物も見出した。
【0011】
本発明は、前記化合物の調製工程、それらを含む組成物、新しい薬物の開発において、および薬理学的テストにおいて前記化合物を用いる方法にも関する。
【0012】
本発明のさらなる目的は、特に腫瘍の発生および維持に関与する病理学的に注目されるタンパク質、またはウイルスおよび病原体タンパク質、または代謝異常または自己免疫タンパク質に関与するタンパク質につきコードするいくつかの標的遺伝子の発現を同時に阻害する方法であって、
(i)少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤において前記複合体による前記遺伝子に特異的な部位に向けられる少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに向け、
(ii)ゲノム中の前記遺伝子を前記複合体の前記リガンドによって認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得、
(iii)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害する;
工程を含む前記方法である。
【0013】
本発明によると、この方法は特にインビトロおよびインビボで行うことができる。
【0014】
前記構成を用いることによって、トポイソメラーゼI阻害剤(類)の効果をDNA−特異的部位に向け、トポイソメラーゼIによるこれらの部位における破壊を選択的に誘導することが可能である。DNA−特異的リガンドにカップリングした阻害剤(類)は、DNAリガンド固定部位に対してそれら自体が特異的となる。有利には、標的化されたDNA配列は、病理学の種類に依存して選択することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によると、前記遺伝子は、その発現が細胞の腫瘍状態の発生および維持を制御するものから選択される。特に好ましい実施形態において、遺伝子はIGF−1、IGF−1R、VEGF、BCL2からなる群より選択される。
【0016】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によると、前記遺伝子は、感染性微生物またはウイルスの中から選択される。特に好ましい実施形態において、遺伝子はHIVまたはHCVウイルスからなる群より選択される病原体のものである。
【0017】
本発明のなおさらに好ましい実施形態によると、前記遺伝子は代謝異常病に関与するものから選択される。
【0018】
本発明のなおさらなる好ましい実施形態によると、前記遺伝子は自己免疫疾患に関与するものから選択される。
【0019】
本発明によると、トポイソメラーゼI阻害剤、またはより正確にはポイズンは、トポイソメラーゼIの触媒作用によって媒介されるDNA/トポI開裂複合体を安定化する分子である。前記ポイズンは、有利には、インドロカルバゾールおよびその誘導体のような挿入剤、カンプトテシンおよびその誘導体のような非挿入剤、ベンズイミダゾールおよびその誘導体のような副溝リガンドからなる群より選択される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態によると、前記ポイズンはカンプトテシン、より好ましくはカンプトテシン誘導体である。
【0021】
好ましいカンプトテシン誘導体は式(I):
[式中、R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、nは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖または分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり;あるいはR4は、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基、特に、−(CH2)m−NR12−(CH2)p−NR13−(CH2)q−NH2であり、mおよびpは2〜6の整数であり、qは0〜6の整数であり、両端は含まれ、R12およびR13は直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル基、例えば、N−(4−アミノブチル)−2−アミノエチル、N−(3−アミノプロピル)−4−アミノブチル、N−[N−3−アミノプロピル)−N−(4−アミノブチル)]−3−アミノプロピルであり;あるいはR4はグリコシル残基、例えば、6−D−ガラクトシルまたは6−D−グルコシルであり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖または分岐鎖のC1−C8アルコキシである]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である。
【0022】
式(I)の化合物の好ましい例は、nが1であり、R4が2−アミノエチルまたは3−アミノプロピルであり、R2およびR3が水素である化合物である(これらの化合物は、各々、本明細書中ではST1578およびST2541ともいう)。
【0023】
これらの化合物は、WO 00/53607に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0024】
もう1つの好ましいカンプトテシン誘導体は式(II):
[式中、Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり;nおよびmが1に等しい場合、YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置でC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C1−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいはもしnおよびmが共に0であるならば;Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり;R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリール−アルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、ここで同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である。
【0025】
式(II)の化合物の好ましい例は、pが1であり、R4がtert−ブチルである化合物であり、特に好ましい化合物はスクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ここではST2677という)である。
【0026】
これらの化合物はWO 03/101996に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0027】
もう1つの好ましいカンプトテシン誘導体は式(III)または(IV):
[式中、R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリール−アルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アリールまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C10アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり;n=1または2であり、Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルから選択される]の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩である。
【0028】
これらの化合物はWO 03/101995に十分に開示されており、技量のあるリーザーはそれを参照する。
【0029】
もう1つの好ましいカンプトテシンはArimondo P.B.et al.,Nucleic Acid Research,2003,Vol.31,No.14;4031−4040に開示されたもの、特に、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンである。さらにもう1つの好ましい化合物は10−ヒドロキシカンプトテシンである。
【0030】
前記リガンドはリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2’O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNA(リボース立体配座につきブロックされたRNA(Petersen and Wengel 2003)は、それが三重ラセンを形成する場合はTFOと呼ばれ、それが副溝に結合する場合はMGBと呼ばれる)からなる群より選択される。後者はN−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチル−3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンから選択される。
【0031】
また、本発明の目的物は式I:
A−B−C
[式中、Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;Cは前記式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体である]の化合物である。
【0032】
本発明の一般的な教示においては、前記した化合物のエレメントAおよびCはポイズン分子の異なる位置を通じてリンカーアームによって結合させることができ、但し、この位置はリガンドに結合すべき適当な官能基を有するものとする。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、カンプトテシン誘導体を用い、リガンドAは好ましくは位置7、10または20においてカンプトテシン分子に結合することができる。
【0034】
適当なリンカーアームは、1〜50、好ましくは20〜30の長さの、NまたはOを含む基において選択される炭素およびヘテロ原子の連続;およびホスホルアミドまたはアミド結合、またはチオエステルを与えるように反応することができる末端部位を含む。
【0035】
そのようなリンカーアームの例は、nが1〜12の整数である−NH−(CH2)n−NH−のようなジアミノアルキル;nが2〜6の整数であって、mが2〜3である−NH−(CH2)n−CO―、グリコール−(CH2)mO)n−である。
【0036】
前記実施形態による複合体の例はTFO−L3−SCPT、および(3+3)−CPT、(4+4)−CPT、TFO−18−L6−10CPT、TFO−18−L4−10CPT、TFO 16−L6−10CPT、およびTFO16−L4−10CPT、TFO16−L6−7CPT、TFO18−L6−7CPT、SCPT−Ln―TFO、TFO−L4−cCPT、TFO−L6−cCPTからなる群より選択され、TFOは三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドであり、LはCH2基の数であり、CPTはカンプトテシン誘導体である。(3+3)および(4+4)はヘアピンポリアミドである。
【0037】
他の複合体はレベッカマイシン;特にポイズンとしてのレベッカマイシンのインドロカルバゾール誘導体を含む。
【0038】
そのような複合体の例はTFO−Ln−RBC(Ln=−O(CH2)2O)n−、n=2;3または6)である。
【0039】
本発明のもう1つの実施形態によると、前記複合体は、前記したようなリガンド、前記トポイソメラーゼI阻害剤の誘導体よりなり、前記リンカーアームが阻害剤の置換基に組み入れられていることを特徴とする二元複合体である。前記置換基は、ホスフェートまたはホスホチオエート基と反応することができる末端部位を含む。そのような複合体の例はTFO−ST1578およびTFO−ST2541ならびに式(I)〜(IV)の関連化合物である。
【0040】
複合体の第三の群は、それがリガンド、前記リンカーの一部の役割を果たす基によって置換された前記トポイソメラーゼIポイズンの誘導体および、さらに、リンカーアームよりなることを特徴とする。その例はnが2および6の間の整数であるTFO−(CH2)n―cCPT;TFO−(CH2)3−SCPT、SCT−TFO、TFO−ST2677である。
【0041】
上述したように、本発明の複合体は、位置2および30の間に多数のプリンを含有する前記標的遺伝子の各オリゴピリミジン・オリゴプリン配列の近傍にトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を起こす。DNA/トポI開裂複合体の幾何学のため、切断部位は標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側となるべきである。
【0042】
この化学化合物は、トポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された前記開裂部位がリガンド結合部位の末端から1〜10ヌクレオチドに位置することも特徴とする。
【0043】
置換基の例はnが2〜6の整数であるH2N(CH2)n−O−N=CH−のような、所望により不飽和を持つジアミノアルキル、および式(I)〜(IV)の化合物のR4基に認識可能な基を含む。他の置換基は−CO−NH−基−を含むジカルボン酸鎖を含む。
【0044】
そのような基は、例えば、
[式中、RはC1−C4直鎖もしくは分岐鎖アルキルであり、n’は1〜6の整数である]である。
【0045】
本発明の複合体においては、阻害剤は例えばカンプトテシンであって、置換基はその位置20を占める。
【0046】
本発明のさらにもう1つの実施形態によると、複合体は、上記定義されたようなリンカーアームを介して阻害剤の置換基に連結されたリガンドを含む。
【0047】
また、本発明は前記複合体の製法に関する。ホスホルアミド結合はGrimm et al.2000に記載されているように4−ジメチルアミノピリジンの存在下でのトリフェニルホスフィンおよびジピリジルジスルフィドとの反応によって得られ;他方、アミド結合はこの方法によって、酸機能のカルボジイミド活性化によって、またはHATUの使用に際しての修飾されたペプチド合成手法によってのいずれかによって形成される。
【0048】
前記複合体は、有利には、細胞増殖抑制分子と比較して、新しいメカニズムを介して有効である。例によって示されたように、前記複合体は細胞に貫入し、その標的に結合する。
【0049】
従って、本発明の新しいアプローチは、副作用を減少させつつ、最適な抗腫瘍効果を維持することを目的とする。
【0050】
例えば、トポイソメラーゼI阻害剤の使用は、ほぼ15%の場合において、今回よく特徴付けられた遺伝子の逆移動によって特徴付けられる二次白血病の出現と関連することが確立される。ある種の選択された遺伝子にこれらの阻害剤を向けることは、治療効果の良好な選択性を可能とすることによってその白血病形成力を低下させることができる。
【0051】
また、本発明は、注目すべき遺伝子、またはいくつかの遺伝子の同時発現を特異的に阻害する方法における前記複合体の使用に関し、この遺伝子またはこれらの遺伝子は、例えば、1以上のウイルスまたは病原体タンパク質、または細胞の腫瘍状態の発生および維持に関与するタンパク質をコードする。
【0052】
有利には、単一オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体は、現在の臨床で用いられる抗腫瘍薬物の組合せと類似の効果を有することができると判断されるであろう。複合体によって標的とされる部位の数は、単独で用いる場合のCPTと比較してかなり低下する。
【0053】
従って、本発明は、医薬的に不活性な溶剤と組み合わせた有効量の少なくとも1つの上記定義された複合体を含むことを特徴とする医薬組成物にも関する。
【0054】
これらの組成物は、有利には、注射またはスプレーによるその投与を可能とする形態である。単位および日用量は病理学のタイプ、特に、治療すべき癌によって当業者によって測定されるであろう。この関連で、最先端技術水準で開示された複合体のいくつかはインビトロ、無細胞システムでおいてのみテストされた。本発明者らは、前記化合物を細胞に投与するのは不可能でないとしても非常に困難であることを見出した。従って、新しい化合物の態様および公知の化合物の使用の態様双方における本発明の化合物は、無細胞システムにてトランスフェクションベクターを共に投与されるべきである。トランスフェクションベクターの例はナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質、およびカチオン性ポリマーである。
【0055】
全く驚くべきことには、Cが式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体、特に、コードST1578およびST2677で確認されるカンプトテシン誘導体である化合物は、細胞に投与されるのにいずれのトランスセクションベクターも必要としない。というのは、それはエキソ・ビボで細胞膜を貫通するからである。従って、Cが式(I)〜(IV)のカンプトテシン誘導体、特に、コードST1578およびST2677で確認されるカンプトテシン誘導体である化合物A−B−Cを含む組成物および薬物は、有利には、補充的トランスフェクションベクターを必要とせず、従って、その生物学的適用をより簡単なものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明の他の特徴および利点は、化学文献ならびに添付の図面を参照して、以下の実施例によって与えられる。
【0057】
図1は、特異的部位におけるトポイソメラーゼIによるDNAの開裂/切断を標的化する原理を示すダイヤグラムである。
図2Aは、公知の研究システム:標的オリゴプリン・オリゴピリミジン配列および対応する三重鎖形成性オリゴヌクレオチド(TFO)の配列を含む324−bp二重鎖を示す。
(例えば、5−メチル−デオキシシトシン(M)および5−プロピニル−デオキシウラシル(P)を用いることによって)三重ラセンを形成するオリゴヌクレオチド(TFO16、TFO18、TFO20、TFO23)を修飾して複合体の安定性を増加させた。TFOを20S−10−カルボキシカンプトテシン(10CPT)、20S−7−アミノエチルカンプトテシン(7CPT)、20S−7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン酢酸(SCPT)、20S−7−アミノエチルイミノメチルカンプトテシン(ST1578)、20S−7−アミノプロピルイミノメチルカンプトテシン(ST2541)に、およびスクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ST2677)にカップリングさせた。
(3+3)および(4+4)ヘアピンポリアミドタイプの2つの副溝リガンドを10−カルボキシカンプトテシン(10CPT)にカップリングさせた。
TFO16の、および2つの副溝リガンドの結合部位は四角によって示す。オリゴヌクレオチドはオリゴプリン・オリゴピリミジン配列に結合し、ワトソンークリック塩基対のプリンとでHoogsteen−タイプの水素結合を形成する。副溝リガンド(3+3)および(4+4)は結合し、副溝と相互作用する。複合体の化学式は図面の下方の部分で示され、リンカーアームはイタリック体で表す。オリゴヌクレオチドはEurogentec社(ベルギー国)から入手し、Grimm et al.,Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 19(2000)pp.1943−1965に記載された方法に従って、HATUの使用に基づく適合されたペプチド合成手法によって阻害剤とカップリングさせる。副溝リガンドはArimondo et al.,Angewandte Chem.Int. Ed.40(2001)pp.3045−3048に記載されたように合成した。
【0058】
図2Bは、カンプトテシン誘導体ST1578、ST2541およびST2677、ならびに複合体TFO−ST1578、TFO−ST2541,TFO−L4−ST2677およびTFO−L4−10CPTの式を表す。
【0059】
図3Aは、トポイソメラーゼI開裂部位を表す。オリゴピリミジン鎖(ウェル1)上の位置3’における放射性標識324−bp二重鎖を、三種のカンプトテシン誘導体(ウェル2〜4、10CPT、7CPT、SCPT)の、TFO16と複合体したこれらの三種の誘導体(ウェル5〜7、TFO16−L4−10CPT、TFO16−L6−CPT、TFO16−L3−SCPT)の存在下で、トポイソメラーゼIと共にインキュベートした。開裂部位は文字によって示し、複合体の結合部位は図式によって示す。L3=ジアミノプロピニル;L4=ジアミノブチル、L6=ジアミノベキシル;インキュベーションの後、SDS/プロテナーゼでの処理によってタンパク質を消化し、開裂産物を変性ゲルで分析する。
【0060】
図3Bは、本発明による他の複合体で得られた結果を表し、DNAは、単独、あるいは5μMの10CPT、ST1578、ST2677またはST2541、または1μMの非複合体TFOと共にトポイソメラーゼの存在下で対照として用いる。1μMにおいては、全ての複合体は、オリゴヌクレオチドの結合部位の3’側のみにおいてヒトトポイソメラーゼによるDNAの開裂を指令し、阻害剤は三重ラセンの形成による位置である(部位b)。nTFOは未修飾シチジンおよびチミジンを担う。
対照的に、阻害剤単独は数個の部位(部位a、b、cおよびd)において開裂を刺激する。
複合体TFO−ST1578およびTFO−ST2541は複合体TFO−L4−10CPTよりも3倍効果的である。
複合体TFO−L4−ST2677は複合体TFO−L4−10CPTに匹敵する。
また、もう1つの化学的に修飾されたTFO、すなわち、配列+CP+CP+CP+CP+CP+TP+TP+TP(ここで、CはLNAシチジンを示し、+T=LNAチミジンである)を有するLNA(ロックされた核酸)についても結果を掲げる。
LNAを一工程合成にてST1578に結合させて、LNA−ST1678複合体を得た。部位bにおける開裂を指令する効果を評価した。前記複合体はTTFO−ST1578アナログよりも2倍効果は低かった。
DNA/トポI開裂複合体の分子拘束は三元複合体の幾何学を支配し、結合した三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドの存在下でDNA開裂を指令する。
【0061】
図4は、これは好ましい部位であるか否かを問わず、標的のオリゴプリン鎖上の三重ラセンの5’側の開裂およびオリゴピリミジン鎖上の3’側の開裂を誘導することを示す。位置3’におけるオリゴヌクレオチド上の阻害剤の存在は、シグナルを増幅する効果を有する。
【0062】
図5Aは、実験構築を表す:用いたプラスミドは、SV40プロモーターの制御下にあるPyralis ルシフェラーゼ遺伝子を含む、pGL3プロモーターベクター(Promega)の転写されたおよび非翻訳領域においてHind III/Nco I部位で54−bp二重鎖をクローニングすることによって得られた。TFO結合の配列、およびその近傍におけるカンプトテシンに感受性の部位を、Pyralisのルシフェラーゼ遺伝子(LUC)の上流の転写体領域に置く。インビトロの実験で用いる無傷三重ラセン配列(Pwt);3部位で突然変異した三重ラセン配列(pMUT);三重ラセン配列および3’側の、カンプトテシンによって刺激された公知の開裂部位(pTID)、およびTFOのいずれかのアンチセンス効果を回避するための対向鎖に挿入された無傷三重ラセン配列を含んだ54−bpのインサート。
【0063】
図5Bは、標的二重鎖、TFOおよび対照オリゴヌクレオチド配列を与え:TFO−L4−10CPTを複合体および、対照としての、ホスフェート(化合物TFOF)によって、または10CPT、NH2−(CH2)4−NH2(化合物TFO−NH2)のカップリングで用いるリンカーアームによって3’で保護されたオリゴヌクレオチドとして用いた。前記アームをジフェニル酢酸(化合物TFO−NPh2)に連結した。最後の対照として、同一の修正された塩基を含有するオリゴヌクレオチドを用いたが、異なる配列でもって、3’におけるホスフェート(16HIVUP)、10CPTのいずれかに、リンカーアームNH2−(CH2)6−NH2(化合物16HIV−CPT)を介して連結した。次いで、複合体TFO−ST1578をTFO−L4−10CPTと比較した。
【0064】
図6Aは、最初に、これらの分子につき、HeLa細胞におけるPyralisルシフェラーゼ遺伝子の転写の阻害を説明する。ヒト接着HeLa細胞を、37℃および10%CO2において、FCS10%を補足したDMEM(Invitrogen)中で培養した。細胞を、125μL/ウェルにて96ウェルプレートに接種した(110000細胞/mL)。24時間後、培地を、112.5μLの新鮮な培地および12.5μLのトランスフェクション混合物と交換する。前記トランスフェクション混合物は、1μgのpGL3Prまたは修飾されたもので;0.5μgのpRL−TK、種々の濃度のオリゴヌクレオチドおよび3μLのSuperfect(商標)(QIAGEN)を無血清倍地中に含有する。混合物は二連または三連で調製した。24時間後、細胞を溶解させ、ルシフェラーゼ発現を評価した。デュアル−ルシフェラーゼ(商標)レポーターアッセイシステム(Promega)を用いて、同一細胞溶解物での双方のレポーター(PyralisおよびRenilla)の活性を測定し;96−ウェルプレートの各ウェルを30μLの受動的溶解緩衝液中で溶解させ、15μLを自動装置(Victor/Wallac)にて「Dual−luciferase(商標)Reporter Assay System(デュアル−ルシフェラーゼ(商標)レポーターアッセイシステム)」で分析した。双方の活性(PyralisおよびRenilla)の間の比率を用いて、効果の選択性を測定した。異なるオリゴヌクレオチドの存在下における双方の活性の間の比率の全ての値を、複合体(DNA)の不存在下におけるプラスミドの発現に対して正規化した。対照オリゴヌクレオチドは、Pyralisルシフェラーゼの発現に対して効果を有さなかった。複合体TFO−L4−10CPTのみが、無傷三重ラセン配列(pTIDおよびpWT)を含有する双方の標的に対して、0.5μMにおいて約40〜50%からその発現を阻害する。
インサートを有さない市販のプラスミドpGL3Prについては、複合体は効果を有さず、突然変異した三重ラセン(pMUT)を有するものについては大いに低下する。
【0065】
図6Bは、逆鎖でのプラスミド構築を用いる場合に得られた結果に関する。
図7Aおよび7Bは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、しかしながら、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す。
図8は、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を与え:細胞中の複合体の形成に続いて、イムノブロットを行った。
図9は、本発明の方法で有用なある種の複合体/複合体の(阻害剤単独と比較した開裂強度、および与えられた部位a、b、cおよびdの点における)有効性を示す。
【0066】
DNA配列を特異的に認識することができるオリゴヌクレオチドにトポイソメラーゼ阻害剤を複合体させることによって、選択された遺伝子に共通する標的配列での特異的三重ラセン複合体の形成のため、選択された遺伝子の群に対して阻害剤を標的化することが可能である。従って、これらの遺伝子についての不可逆的病巣を選択的に誘導し、その発現を阻害するのが可能となる。
【0067】
これは、特に、トポイソメラーゼI阻害剤の、オリゴヌクレオチドのような配列−特異的DNAリガンド、または副溝リガンドのような非核酸リガンド(N−メチルピロールおよびイミダゾールよりなるポリアミド)、または亜鉛フィンガーペプチドとの共有結合カップリングを用い、本来公知の方法で達成することができる。
【0068】
事実、そのようなリガンドは、各々、二重ラセンの主溝および副溝における結合によって、ある種のDNA配列を特異的に認識することができる。トポイソメラーゼI阻害剤のこれらのDNAリガンドへの化学的カップリングは、阻害剤を、リガンドの結合部位の近傍に選択的に位置させ、従って、トポイソメラーゼIによって誘導される破壊をこの部位に選択的に向ける。
【0069】
本発明者らは、従って、細胞の腫瘍状態の増殖および維持へのその関与につき選択された遺伝子または遺伝子の群へトポイソメラーゼ阻害剤を標的化することに基づいて新しい概念を開発した。これらの遺伝子は、例えば、細胞周期および分裂、増殖を制御する遺伝子から、および抗アポトーシス遺伝子から選択される。また、ウイルス遺伝子はこの戦略で標的化することもできる。
【0070】
選択されたオリゴヌクレオチドの長さに応じて、選択性を変調して、単一遺伝子のみにおいて狙うか、あるいは緩和して、次いで、遺伝子の群を阻害することができる。
【0071】
抗腫瘍化学療法におけるこの革新的戦略は、数個の遺伝子/機能の同時阻害を明らかに治療的重要な他の病理学まで拡大することができる。
【0072】
後に記載する薬理化学のアプローチの有用性は、本質的には、1つは標的のDNAを認識し、他方はトポイソメラーゼを動員する2つのヘッドを有する複合体での新しい「双頭」方法論の定義にある。
【0073】
これらの化合物の設計は、目的とする配列に適合させなければならず、かつ
上記した特徴を有さなければならない。
【0074】
ファルマコゲニックアプローチは、癌性腫瘍の細胞増殖および維持に関与する、特異的遺伝子に向けられたトポイソメラーゼIポイズンの標的化に基づいた新しい治療戦略の開発を含む。
【0075】
前記アプローチは、特に、細胞増殖に関与する遺伝子に対するおよび/または抗アポトーシス遺伝子に対する安定した三重ラセンの形成、血管形成によって選択的に結合することができる修飾されたまたは未修飾のオリゴヌクレオチドへトポイソメラーゼI阻害剤を化学的にカップリングさせることよりなる(図2:オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体によるトポイソメラーゼI−媒介DNA配列の標的化)。
【0076】
DNAリガンドアプローチは、いくつかの遺伝子の発現に対して同時に作用し、これらの遺伝子に共通する標的配列を選択する可能性を与える。
【0077】
癌のような多重遺伝子病理学を効果的に処理するためには、事実、遺伝子ファミリー、より正確には、細胞の通常の増殖回路を改変する遺伝子の群を同時に制御することが必須である。
【0078】
従って、かなり有利には、単一オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体は、臨床で現在用いられる抗腫瘍薬物の組合せに類似の効果を有し得る。
【0079】
このアプローチは、ある種の副作用を低下させつつ、この最適な抗腫瘍効果を維持するのを可能とすることができる。例えば、トポイソメラーゼII阻害剤の使用は、症例のほぼ15%において、今日よく特徴付けられている逆遺伝子トランスローケーションによって特徴付けられる二次性白血病の出現と関連するというのは確立された事実である。ある種の選択された遺伝子に対してこれらの阻害剤を向けることは、治療効果の良好な選択性を可能とすることによって、その白血病形成力を低下させることができる。
【0080】
また、その特に必須の態様の1つにおいて、本発明は、トポイソメラーゼI阻害剤の作用をDNA−特異的部位に向けて、この部位において、トポイソメラーゼIによる開裂を選択的に誘導するのを可能とする方法にも関する。
【0081】
癌の発生および維持に関与する遺伝子の2つの群、(1)成長因子IGF−1(インスリン−様−成長因子−1)がその受容体(IGF−1R)に結合する場合に確立されたもののような生存経路の遺伝子、および(2)IAPのようなアポトーシスを阻害する遺伝子、およびBcl−2ファミリーの抗アポトーシス遺伝子を考慮し、説明によって、以後純粋に、かつ非限定的にこの新しい概念を詳細に説明する。これらの遺伝子はある種の癌で過剰発現され、それをブロッキングすると抗腫瘍効果が得られる。
【0082】
本発明者らは、三重ラセンを形成することができ、かつ標的化すべき注目すべき遺伝子の群に共通する配列につきサーチを行った。このサーチは、GCGソフトウェア Unix findpatterns program(Genetic Computer Group,Infobiogen,Villejuif)を用いて行った。
【0083】
予備的サーチにおいて、本発明者らは、IGF−1、IGF−1RおよびAKT/PBK遺伝子に共通する12塩基対(bps)、およびbcl−2、bcl−XLおよびsurvivine抗アポトーシス遺伝子に共通する10−bp配列を含むオリゴピリミジン配列を同定した。
【0084】
さらに、図2に記載されたTFO配列は、表1に報告する遺伝子のリストに結合する。遊離CPT誘導体はゲノム(および、従って、多くの部位)においてほとんど特異性なく開裂を誘導するのに対し、図2に示す塩基配列を持つTFO−ポイズン複合体はこれらの遺伝子および、とりわけ、特に、腫瘍の増殖および維持に関与するIGF1RおよびVEGFに対してのみ開裂を誘導する。サーチは、UCSCにおいて公に入手可能なバイオインフォーマティクス源を用いて行った。
【0085】
既に述べたように、副溝リガンド(N−メチルピロールおよびN−メチルイミダゾールよりなるポリアミド)のような配列−特異的DNAの非核酸リガンドを用いて、与えられた部位に向けてのトポイソメラーゼ阻害剤の作用を指令することもできる。
【0086】
これらの使用は、安定した三重ラセンの形成によって課されるオリゴピリミジン・オリゴプリン標的配列拘束を無くすることが可能なはずである。
【0087】
カンプトテシンとカップリングした副溝リガンドでの結果を以下に示す。
【0088】
標的遺伝子の群に共通する配列についてのこのサーチは、専ら、または主として選択された遺伝子の群の一部を形成するように選択された最適な標的配列を規定するのを可能とするはずである。
【0089】
三重ラセンオリゴヌクレオチドの使用の場合には、複合体による開裂は、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位と共に、2〜100、好ましくは10〜30の多数のプリンを含む各オリゴピリミジンオリゴプリン標的配列に向けられる。
【0090】
さらに、阻害剤によって誘導され、かつ有利には三重ラセン末端およびリンカーアームから1〜10ヌクレオチドに位置する開裂部位は、開裂部位、用いられる阻害剤、および阻害剤のオリゴヌクレオチドへの付着点に従って適合される。
【0091】
オリゴヌクレオチド−トポイソメラーゼ阻害剤複合体に関しては、本発明者らは、カンプトテシン誘導体へのトポイソメラーゼ阻害剤のカップリングを行った。予備的試験では、本発明者らは、トポイソメラーゼI阻害剤であるカンプトテシンおよびレベッカマイシン誘導体の、オリゴヌクレオチド16ヌクレオチド長への共有結合カップリングが、インビトロにて、阻害剤が三重ラセンの形成によって位置する部位に対してトポイソメラーゼIによって特異的に開裂を向けることを示した(Arimondo et al.,1999,2000a)。
【0092】
同一の工程を、同様にして、すなわち、共有結合様式にてDNA−特異的リガンドの末端に付着させることができるトポイソメラーゼポイズンである他のタイプの阻害剤で行うことができる。
【0093】
リガンド部分および阻害剤部分を統合するリンカーアームの最適化は非常に重要であり、リガンド結合部位に関して用いられる阻害剤の切断部位の位置、および阻害剤のオリゴヌクレオチドへの付着点に従って適合させなければならない(Arimondo et al. 2002)。
【0094】
オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体の合成の後であって、その細胞活性の評価の前に、ゲルシフト実験および熱解離実験によって、三重ラセンを形成するその能力を分析すべきである。例えば、図2に記載された組成のTFOは結合し、インビトロにてトポI−媒介DNA開裂を、同一標的配列を共有する、テストされた2つの遺伝子におけるリガンド認識部位に特異的に向ける。
【0095】
選択された阻害剤の細胞活性
トポイソメラーゼI複合体のオリゴヌクレオチド−阻害剤の活性に関して、分子および細胞系は、IGF−1およびその受容体に関連する遺伝子のカスケードに対する異なる複合体の効果を研究することを可能とする(Hamel et al.,1999)。特に、開裂活性は、ゲノムDNAの直接的分析、トランスクリプトーム(DNAチップおよびノーザンブロット)およびプロテオーム(二次元ゲルおよびウェスタンブロット)分析による作用特異性によって評価することができる。IGF−1およびIGF−1R遺伝子は膠芽細胞腫、肝細胞癌および前立腺の腫瘍の増殖に関与するので、アンチセンス構築体によるその阻害は動物に移植された腫瘍の増殖をブロックする(Lafarge−Frayssinet et al.,1977)。培養中の腫瘍細胞についてのテストは、最も効果的なオリゴヌクレオチド複合体を選択し、(例えば、ヌードマウスに注入された膠芽細胞腫、または同質遺伝子ラットにおける肝細胞癌を持つ)動物モデルを用いるのを可能とするであろう。
【0096】
また、複合体の薬物動態学も標準的な手法で評価することができる。
【0097】
最も効果的な複合体に関しては、癌性細胞の増殖を阻害するその能力は、部分的には、異なる腫瘍細胞系を用いることによって、従って、インビトロでのほとんどの細胞傷害性分子では、マウスに異種移植されたヒト腫瘍からの、インビボモデルに対して評価することができる。
【0098】
本発明のある態様および目的の産業的適用の例
抗癌剤としてのトポイソメラーゼI阻害剤とカップリングさせたDNAリガンドの評価
癌と同程度に重要な病理学における新しい治療経路が関連するので、経済的関心はかなりのものである。
【0099】
従って、病理学における脱調節遺伝子の同定は新しい薬理遺伝学的製品の基礎を形成することができる。
【0100】
薬理遺伝学的成功は、
副作用の減少および治療有効性の増加
医薬開発に関連するコストの減少
患者に適する非常に多数の治療的解決の開発
公の健康出費の大幅な減少
について重要な結果を有するであろうことは明白である。
【0101】
この経済的インパクトは、あいにくと低い個々の有効性のレベルを伴う多数の治療プロトコルの間に選択がある癌の分野において非常に実質的であろう。
【0102】
実施形態
略語:
CPT=カンプトテシン;P=5−プロピニル−2’−デオキシウリジン;M=5−メチル−2’−デオキシシチジン;R=二重鎖のオリゴプリン鎖、Y=二重鎖のオリゴピリミジン鎖
=ワトソン−クリック塩基対合
トポ=トポイソメラーゼ
【0103】
材料および方法
阻害剤
全ての阻害剤はジメチルスルホキシドに溶解させ、次いで、水に希釈する。ジメチルスルホキシドの最終濃度は全てのテストにおいて決して0.3%(v/v)を超えない。阻害剤は図2において既に記載したようにTFOの3’または5’末端に結合している。
【0104】
カンプトテシン誘導体はArimondo et al.(2002)およびVillemin et al.(1996)に記載された技術に従って合成される。
【0105】
オリゴヌクレオチドおよびDNA断片
オリゴヌクレオチドはEurogentecによって市販されており、「クイックスピン」カラムおよび微細なSephadex G−25(Boehringer,Mannheim)で精製される。濃度は、最も近いモデル(Cantor et al.,1970)から計算された260nmにおけるモル消光係数を用いて25℃にて分光学的に測定される。
【0106】
CTP複合体の合成
僅かに修飾したGrimm et al.,Nucleosides,Nucleotides (2000)に記載された技術に従い、および、アミド結合形成については、オリゴヌクレオチドに適合させたHATUを用いるペプチド合成手法に従い、カンプトテシンCPTの誘導体は異なるリンカーアームを介してオリゴヌクレオチドの3’または5’末端のリン酸に、または副溝リガンド、N,N−ジメチル−N’{1−メチル−4−[1−メチル−4−[1−メチル−4−[4−{[1−メチル−4−[1−メチル−4[1−メチル−4−(4−アミノブチリル)アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]}アミノブチリル]アミノピロール−2カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル]アミノピロール−2−カルボニル}プロピレンジアミン(3+3)に複合体される。Arimondo et al.(2001)Angewandte Chem.,前記Arimondo(2002)に記載されているように、リンカーアームは、アミノ−末端の反応によって、N−メチルイミダゾール、ジピリジルジスルフィドおよびトリフェニルホスフィンでの処理によって活性化された3’または5’末端におけるリン酸化オリゴヌクレオチドに結合される。複合体はUV分光測定および質量分光測定によって特徴付けられる。
【0107】
ST1578およびST2541におけるようにリンカーアームを用いない場合、CPT誘導体上のアミノ基は、Grimm et al.2000に記載された技術に従ってオリゴヌクレオチドの末端リン酸に直接結合される。
【0108】
(DNA)標的遺伝子の調製
pBSK(+/−)プラスミドはPromega(USA)によって市販されており、77−bp標的二重鎖がBamHIおよびEcoRI部位の間に挿入される。PvuIIおよびEcoRIによるプラスミドの消化により、クレノウポリメラーゼ(Ozume,GB)およびα[32P]dATP(Amersham,U.S.A)によって、3’末端における標識に適した324−量体断片を生じる。この二重鎖DNAの単離、精製および標識のための技術の詳細は(Arimondo 2002)に記載されている。2つの59−bp二重鎖は、ターミナルトランスフェラーゼ(Ozyme,GB)およびα[32P]dbATP(Amersham,U.S.A)による鎖の標識、続いての、90℃における5分間の非標識相補的鎖とのハイブリダイゼーション、および雰囲気温度までのゆっくりとした冷却によって得られる。放射性標識断片は、従前に記載されているようにゲルクロマトグラフィーによって精製される(Arimondo 2002)。鎖の命名法は以下の通りである:Rはオリゴプリンを表し、Yはオリゴピリミジン鎖を表す。
【0109】
トポイソメラーゼ開裂テスト
記載した濃度にて(合計反応用量10μL)、TFOまたはMGBの存在下で、50mMトリス−HCl、pH−7.5、60mMのKCl、10mMのMgCl2、0.5mMのDTT、0.1mMのEDTAおよび30μg/μLのBSA中にて、放射性標識二重鎖(50nM)を30℃にて1時間インキュベートする。トポI DNA開裂生成物を分析するために、10単位の酵素(Invitrogen Inc)を加え、前述したように、リガンドおよび/または阻害剤と共にインキュベートし、続いて、30℃にて20分間インキュベーションする。トポI−DNA複合体はSDS(最終濃度0.25%)の添加によって解離させる。エタノール沈殿の後、全ての試料を6μlのホルムアミドに再懸濁させ、90℃まで4分間で加熱し、再度、氷上で4分間冷却し、その後、1×TBE緩衝液(50mMトリス−HCl、55mMのホウ酸、1mMのEDTA)中に7.5m尿素を含有する各々、長いおよび短い標的につき、8%および10%変性ポリアクリルアミドゲル[19/1アクリルアミド:ビスアクリルアミド]上に沈積させる。開裂強度を定量化するために、ゲルをDynamics 445SIホスホルイメージャーでスキャンする。開裂速度を測定するために、合計沈積に対する標準化を行う。
【0110】
20S−(7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)酢酸(SCPT)、位置10において前記酸に結合したTFO−SCPTおよびSCPT−TFO複合体、ならびに例えばTFO−10CPT、およびTFO−7CPT、(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPTのような位置10または位置7いずれかに付着した他の複合体の調製で用いられる新しいCPT誘導体の化学式は図2Aに掲げる。リンカーアームの役割を果たす置換基を有するカンプトテシン誘導体ST1578およびST2677は図2Bに掲げる。
【0111】
本発明者らは、現在抗腫瘍剤として臨床試験を受けている分子と同様な3つのレベッカマイシン誘導体、およびTFO(三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド)を持つ6つのカンプトテシン誘導体、および2つの副溝リガンド(MCB、副溝バインダー)を持つ10−カルボキシカンプトテシン誘導体を化学的にカップリングさせることによってアプローチを確認した(図2)。
【0112】
本発明者らは、阻害剤誘導体に存在しない場合、あるいは十分に長くない場合、阻害剤を適当なリンカーアームを介してオリゴヌクレオチドの1つの末端または副溝リガンドに共有結合させた。複合体はUV分光測定および質量分光測定(Q−STAR I)によって特徴付けした。複合体の開裂特異性は、標準トポイソメラーゼI開裂テストによってインビトロにて測定した。開裂指標は、DNAリガンドとカップリングした阻害剤の存在下における開裂強度と、非結合阻害剤の存在下におけるそれとの間の関係として計算される。標的化の例を図3に示す。3つの非カップリングカンプトテシン誘導体(ウェル2、3、4)はいくつかの部位(部位a〜i)における開裂を刺激する。誘導体が適当なアームを持つTFOの3’末端に共有結合する場合、三重ラセンが形成され(ウェル5、6、7)、複合体は三重ラセン(部位「b」)の3’側のみに開裂を誘導する。これは、複合体のオリゴヌクレオチド部分のその標的への結合による、三重ラセン部位の3’側に対する阻害剤の特異的位置決めによる。オリゴヌクレオチドの場合には負に荷電されたリガンドの存在は、三重ラセンの、またはこの部位からかなりの距離をもって位置した他の部位の5’側に位置する部位「a」の消失によって明らかに示されるように、複合体された阻害剤の他の部位への結合を妨げる。
【0113】
本発明者らは、異なる長さ(16、18、20および23ヌクレオチド)のTFO(図9参照)に対する、および異なるレベッカマイシンおよびカンプトテシン誘導体に対するDNAリガンドの結合部位の近傍におけるトポイソメラーゼIによるトポイソメラーゼ1媒介DNA開裂のこの標的化を示した。同一のアプローチは、DNAの副溝に特異的に結合するN−メチルピロールヘアピンポリアミドのような他の配列−特異的DNAリガンドまで拡大された(図2:(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPT複合体)。また、本発明者らは、それをもう1つの標的:HIV−1ウイルスのPPT(ポリプリントラクト)(5’AAAAGAAAAGGGGGGA 3/TTTTCTTTTCCCCCCT5’)まで、およびIGF−1のプロモーター1に存在する22−量体配列(5’ GAAGAGGGAGAGAGAGAGAAGG 3’/TCTTCTCCCTCTCTCTCTCTTCC 5’)まで拡大した。さらに、図2に記載されたTFOはIGF1Rのイントロン2に結合することが示された(表1)。
【0114】
従って、前記アプローチは、特に、2つのクラスの配列−特異的DNAリガンド(TFOおよびMGB)で、異なるクラスのトポイソメラーゼI阻害剤で、および異なる標的で有効である。
【0115】
本発明の主題は、有利には、用いられるリガンドがオリゴヌクレオチドのような配列−特異的DNAリガンド、または副溝リガンドのような非核酸リガンド(N−メチルピロールおよびN−メチルイミダゾールよりなるヘアピンポリアミド、特に、(3+3)−CPTおよび(4+4)−CPT複合体)、または亜鉛フィンガーペプチドからなる群より選択される上記定義された方法でもある。
【0116】
また、本発明者らは、リガンドの結合部位においてかく刺激されたトポイソメラーゼI開裂有効性は、一方において、阻害剤およびリガンドの間のリンカーアームのサイズ、および他方において、阻害剤の固有の有効性に依存することも示した。さらに、本発明者らは、リガンドの結合による抗腫瘍剤のポジショニングは、標的化部位におけるこの分子の局所的濃度をインビトロで増加させる効果を有することを観察した;事実、複合体は1〜10nMの濃度においてトポイソメラーゼIによる開裂を刺激する。さらに、DNA/トポイソメラーゼ/阻害剤開裂複合体は、阻害剤がTFOに複合体し、三重ラセンが形成された場合にかなり安定である。高濃度の塩(>600mM NaCl)がそれを解離させるのに必要である。
【0117】
その配列がリガンド−阻害剤複合体のDNAリガンドの結合によって認識される、これらの抗腫瘍剤の作用が前記部位に選択的に向けられるこのアプローチは、新しい抗腫瘍薬物の開発においてかなり新しいアプローチを可能とする。
【0118】
現在、三元トポイソメラーゼI/DNA/阻害剤複合体の構造は完全にはまだ説明されていないのを考え、本発明者らは、三元DNA/トポイソメラーゼ/阻害剤複合体の構造解析のために前記複合体を用いた。阻害剤のTFOへの付着点を変化させると、三元複合体における阻害剤の向き、従って、前記酵素による開裂の有効性を修飾する(図4および9参照)。従って、本発明者らは、2つのカンプトテシン誘導体、10−カルボキシカンプトテシンおよび7−アミノエチルカンプトテシンを異なる長さのTFOに共有結合させた。三元複合体の近傍における位置および開裂強度の研究は、従って、三元複合体を記載する現在のモデルが適当ではなく、他の立体配座を考慮しなければならないことを示した。三元複合体の立体配座柔軟性のもう1つの表示は、開裂有効性が、10−カルボキシカンプトテシンが主溝リガンド(TFO)または副溝リガンド(MGB)に連結されるかを問わず匹敵するという事実に由来する。
【0119】
予期せぬことに、三重ラセンそれ自体の存在は、単独で、トポI−媒介DNA開裂のある種の標的化を誘導する。本発明者らは、複合体が以下に記載する特徴を有する場合に開裂が起こることを示した;
【0120】
また、本発明の主題は、まず、特に、腫瘍の発生および維持に関与するタンパク質をコードするいくつかの標的遺伝子の発現を同時に阻害する方法であって:
(iv)前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ選択的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに複合体させることによって、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(v)ゲノム中の前記遺伝子の前記複合体を前記リガンドによって認識し、前記標的への前記リガンドの結合を得ることと、
(vi)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害することと;
を含むことを特徴とする前記方法である。
【0121】
接合段階は、前記遺伝子およびトポイソメラーゼを含有する生物学的試料にてインビトロで、培養からの細胞にてエキソ・ビボで行われる。
【0122】
トポイソメラーゼ阻害剤の存在は、有利には、トポイソメラーゼIによって媒介されるDNA開裂の標的化の効果を増幅する。三重鎖によって誘導されるこの開裂は正確な幾何学に依存し:オリゴヌクレオチドのその標的への結合は、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重ラセンの3’側、および標的のオリゴプリン鎖上の5’側のみに対する開裂を刺激する(図4)。
【0123】
また、本発明は、少なくとも1つのリガンドの複合体、特に、標的のオリゴプリン鎖上の5’側、および標的遺伝子のオリゴピリミジン鎖上の3’側のトポイソメラーゼIによる開裂を誘導するオリゴヌクレオチドで形成された三重ラセンの複合体(「TFO」)に関する。
【0124】
さらに、本発明は、三重ラセンを形成し、位置3’において、三重ラセンの3’側の酵素の選択的かつ強力な開裂を刺激するトポイソメラーゼI阻害剤にカップリングしたピリミジンオリゴヌクレオチドに関する。
【0125】
三重鎖の3’側は、水素結合の形成によりTFOによって認識されるオリゴプリン配列の3’側と定義される。開裂のこの向きは、開裂部位におけるDNAへのトポイソメラーゼIの結合が対称ではなく、前記酵素が開裂された鎖の3’リン酸とでホスホロチロシル結合を形成し、5’OH末端を脱離させるという事実にリンクされる。従って、三重ラセンは、酵素に対する立体的障害無くして、標的上の開裂部位の3’側に存在し得る。トポイソメラーゼIの好ましい部位が三重ラセンの存在によって誘導されるのみならず、部位が三重ラセンの存在においてのみ検出できることが強調されなければならない。これは、三重鎖の存在にリンクされたDNAの立体配座の局所的変化によるものと考えることができる。事実、開裂有効性は三重ラセンの5’側および3’側で同一ではなく、三重ラセンの2つの末端は等しくないことが知られていることに注意しなければならない。一方、酵素の進歩は、酵素を「休止させ」、それにこの近傍で開裂する時間を与える三重鎖構造による物理的ブロッキングによって停止される。2つの仮説は相互に排他的なものではない。
【0126】
本発明の主題は、
(vii)前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤を、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに複合体させることによって、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤を前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(viii)ゲノム中の前記遺伝子の前記複合体を前記リガンドによって認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得ることと、
(ix)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害することと;
を含む上記定義された方法でもある。
【0127】
本発明の方法の好ましい実施形態によると、標的化配列は、オリゴヌクレオチドの場合には、2〜100、好ましくは2〜30塩基対の多数のプリンを含む各オリゴピリミジン・オリゴプリン標的配列であるリガンドによって認識される部位を含む。なおより好ましくは、前記標的化配列は、より大きな有効性を得るためにその近傍にトポイソメラーゼ阻害剤の部位も含む。阻害剤によって誘導された開裂部位は、三重ラセンの末端から1〜10ヌクレオチドに位置しなければならない。リンカーアームは、開裂部位、用いられる阻害剤、阻害剤のオリゴヌクレオチドへの結合点に従って適合させなければならない。
【0128】
次いで、本発明者らは、細胞における前記アプローチの有効性を初めて示した。
【0129】
インビトロ実験は、核バリアー、クロマチンの構造、および核中の複合体の特異性を考慮することができないので、本発明者らは、細胞系において複合体をテストした。前記複合体は細胞において特異的な効果を誘導し、これは、三重ラセンの形成、およびオリゴヌクレオチドにカップリングした阻害剤の存在に依存する。
【0130】
より正確には、本発明者らは、HeLa細胞にトランスフェクトされたプラスミド発現ベクターを用い、TFOの結合配列、およびその近傍におけるカンプトテシンに対して感受性の部位のそれを、Pyralisルシフェラーゼ遺伝子(luc)の上流の転写された領域に入れる。プラスミドは、Hind IIIおよびNco I部位の間のベクターpGL3プロモーター(Promega)への、図5に記載された配列を含む54塩基対を持つ断片のクローニングの後に得られた。Renillaルシフェラーゼ遺伝子をコードするpRL−TK(Promega)をトランスフェクション対照として用いる。
【0131】
HeLaヒト接着性細胞を、37℃および10%CO2にて、10%FCSを補足したDMEM培地(Invitrogen)中で培養する。細胞を、ウェル当たり125μLにて、96−ウェルプレートに接種(Ml当たり110,000細胞)。24時間後、細胞の培地を、112.5μLの血清を含む新鮮な培地および12.5μLのトランスフェクション混合物によって置き換える。トランスフェクション混合物は無血清培地中に、1μgのpWTまたはpMTUCまたはpMUTまたはpIWT;0.5μgのpRL−TX、変化させた濃度のオリゴヌクレオチド、および3μLのSuperfect(商標)(Qiagen)を含有する。混合物は二連または三連で調製する。24時間後、細胞をルシフェラーゼ発現アッセイのために溶解する。
【0132】
「dual−Luciferase(商標)Reporter Assay System」 (Promega)を、同一細胞溶解物につき2つのレポーター(PyralisおよびRenilla)の活性の測定のために用いた:96−ウェルプレートの各ウェルを30μLの「受動溶解緩衝液」に溶解させ、自動装置(Victor/Wallac)を用いて、「dual−Luchiferase(商標)Reporter Assay System」キットで15μLを分析した。
【0133】
2つの活性の比率(Pyralis/Renilla)を用いて、効果の選択性を測定する。図6は、複合体の不存在下におけるプラスミドの発現と比較して標準化された、異なるオリゴヌクレオチドの存在下での2つの活性の間の比率を示す。3つのプラスミドpWT、pMTUCおよびpMUTは、オリゴヌクレオチド部分の長さ、アームの長さ、および結合したカンプトテシン誘導体が異なる4つの複合体として同様に表される。位置3’において(CH2)4−NH2(オリゴ−NH2)アームに結合したオリゴヌクレオチドTFO16を対照として用いる。このオリゴヌクレオチドは非常に安定した三重ラセンを形成する。
【0134】
三重ラセンを形成する対照オリゴヌクレオチドオリゴ−NH2の1μMにおける存在は、ほぼ30%だけルシフェラーゼ遺伝子の発現を阻害する。カンプトテシンへのカップリングは阻害効果を増加させる(複合体に従って45%および60%阻害の間)。阻害におけるこの増加は、インビトロで観察されたように、三重ラセンの形成によって位置されたカンプトテシンの存在下においてトポイソメラーゼによって誘導された三重ラセンの近傍におけるDNAの開裂によって説明することができる。複合体はその有効性が異なり;10−カルボキシカンプトテシンの誘導体TFO16、TFO16−L6−10CPTおよびTFO16−L4−10CPTが最も効果的である(ほぼ60%阻害)(図9参照)。結合アームの長さは阻害の有効性に大きく影響しない。インビトロ実験は、これらの複合体が、三重ラセンの3’末端から4bpsの部位「b」において開裂を効果的に刺激することを示す(前記、図3参照)。インビトロにおいて同等に効果的であるが、16−量体よりも特異性は低いTFO18−L6−10CPT複合体は、ルシフェラーゼ遺伝子発現の45%を阻害するに過ぎない。7−アミノエチルカンプトテシンを含むTFO16−L6−7CPT複合体は、対応するTFO16−L6−10CPT複合体よりも効率は低く、ほぼ50%阻害である。これは、阻害剤の開裂有効性についてのインビトロ結果と合致し:10−カルボキシカンプトテシンは、7−アミノエチル−カンプトテシンよりも効果的にトポイソメラーゼ1によるDNAの開裂を刺激する。観察された効果は、複合体のオリゴヌクレオチド部分による標的での三重ラセンの形成に確実によるものである。これは、2つの(pMTUC)または3つの(pMUT)部位での三重ラセン配列における突然変異した標的での測定によって確認される。2つのプリン突然変異の存在は阻害の有効性を低下させ、三重ラセンは依然として形成されているが、事実上は少ない:オリゴ−NH2は30%阻害〜ほぼ15%通過し、TFO16−L6−10CPTは60%〜45%複合体する。結合部位における3つのピリミジン突然変異の存在は阻害の全くの喪失を意味する。図7Aおよび7B参照。
【0135】
合成されたRNA(pIWT)に対する複合体のアンチセンス効果を回避するために、逆鎖を持つプラスミド構築体を用いた。結果を図6Bに示す。対照はルシフェラーゼPyralisの発現を阻害せず、複合体TFO−L4−CPTは0.5μMにおいてその発現を40〜50%阻害する。複合体TFO−ST1578は依然としてより効率的であり、0.5μMにおいて50〜60%の阻害が測定される。前記複合体は、三重ラセン部位を有さないプラスミドpGL3Pr構築体に対して不活性であった。
【0136】
図8に対応する実験において、HeLa核細胞(5000000)を調製し、種々の濃度(図8では5μM)にて、遊離(CPTまたはST1578)、またはオリゴヌクレオチドにカップリングした(TFO−L4−10CPTまたはTFO−ST1578またはLNA−ST1578)トポイソメラーゼIポイズンと共に、または対照オリゴヌクレオチド(TFO−NH2またはTFO−NPh2)と共に37℃にて3時間インキュベートした。サルコシルを添加した後、溶解物をCsClの勾配にて16時間超遠心した。12の画分を回収し、ウェスタンスロットブロットによって分析して、トポイソメラーゼIを含有する画分が示された(未処理対照(モック)ではI−4)。
【0137】
前記DNAを含有する画分は、260nmにおいて吸光度を測定することによって同定された(画分8〜10)。トポイソメラーゼIは、阻害剤(CPTまたはST1578)または複合体TFO−L4−10CPT、TFO−ST1578またはLNA−ST1578の存在下でDNAを含有する画分のみで観察され、これはDNA/トポI開裂複合体の安定化を示唆する。対照TFO(TFO−NH2、TFO−NPh2)の使用に際して、トポイソメラーゼIは、未処理細胞(モック)では最初の画分にのみ存在した。
【0138】
このアプローチでは、本発明者らは、複合体が、細胞システムで選択された部位にトポイソメラーゼによる特異的破壊を誘導することができることを示した。異なるトポイソメラーゼI阻害剤を用いることができ、阻害は阻害剤の固有の有効性に依存する。なぜなら、本発明者らは、6つのカンプトテシン誘導体およびインドロカルバゾール誘導体で観察したからである。
【0139】
阻害剤の効果を増加させるために、例えば、PNA、ペプチド核酸、2’OAIkylリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNA(リボースの立体配座についてブロックされたRNA)のような化学的に修飾されたオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0140】
複合体は以下のものを目的とすることができる。
例えば、特定の(単一)遺伝子の発現に依存する病理学のためのヒトゲノムに、またはウイルスプロゲノム(例えば、ある種のウイルスHIVおよびHSVの発生を担う遺伝子)、または寄生虫のゲノムに存在する単一配列いずれか。次いで、複合体は遺伝子の選択的不活化を可能とする。
または病理の維持および発生に関与するいくつかの遺伝子に共通する標的配列(例えば、オンコジーン、成長因子、抗アポトーシス遺伝子、腫瘍細胞で観察される障害に参加する細胞周期および分裂を制御する遺伝子)。次いで、複合体は幾つかの遺伝子の同時制御を可能とする。
【0141】
事実、複合体のリガンド部分につき選択された結合部位の長さおよび配列によると、複合体の選択性は、単一遺伝子においてのみ目的とするために厳格であるか、あるいは遺伝子の群を標的とするために緩やかとすることができる。
【0142】
第一の場合において、統合されたウイルスのゲノムを標的化し、このゲノムにおいてのみ存在する配列に対して向けられた複合体によって特異的に開裂させることができる。本出願の範囲内では、本発明者らは、アプローチをHIV−ウイルスのPPIを含むように拡大した。
【0143】
第二の場合において、ある種の腫瘍病理に関与するいくつかの遺伝子は、トポイソメラーゼIによって特異的かつ同時に開裂させることができ、共通の標的配列を選択することができる。
【0144】
癌性特徴の獲得および維持に関連した遺伝子の同時阻害は、腫瘍細胞の悪性特性に対して特異的な必須の生化学的プロセスを標的化するのを可能とする。本発明者らは、成長シグナルの伝達、およびアポトーシスの阻害に関与する2つの群の遺伝子を選択した。最初の場合には、成長因子IGF−1(インスリン−様成長因子−1)、その受容体IGF−1R、および対応するシグナル化カスケードにおいて下流に位置する遺伝子を選択した。これらの遺伝子は細胞の生存経路を活性化し、膠芽細胞腫、肝細胞癌および前立腺腫瘍の増殖に関与する。アンチセンス構築体によるIGF−1またはIGF−1R遺伝子の阻害は、動物に移植された腫瘍の増幅をブロックする。第二の場合、目的は、癌性細胞にアポトーシスを誘導し、アポトーシス−抑制遺伝子(例えば、C−IAP1/2、XIAP、survivine、bcl−2、bcl−W、bcl−XL、Mcl−1)に共通する配列を標的化することである。アポトーシスまたはプログラムされた細胞の死滅は、カスパーゼによって実行される細胞の制御された断片化である。前記プロセスは、アポトーシスを誘導するタンパク質とそれを阻害するタンパク質との間の平衡によって制御される。アポトーシス−阻害遺伝子は、細胞の寿命を延長することによって、細胞の悪性トランスフォーメーションに導く遺伝子事象の確立を増加させ;それらは、しばしば、癌細胞において過剰発現される。
【0145】
本発明者らは標的化することを望む遺伝子の群に共通する三重ラセンを形成することができる配列につきサーチするために、後者はGCG Unixソフトウエアファインドパターンプログラム(Infobiogen、VillejuifによるGenetics Computer Group,Wisconsin package version 8.1)を用い、また、UCSCヒトゲノムデータベースを用いた。
【0146】
IGF−1、IGF−1RおよびAKT/PKB遺伝子に共通する12塩基対(bps(GGAGGAGGAGGG)のオリゴピリミジン−オリゴプリン、および抗アポトーシスbcl−2、bcl−XLおよびsurvivine遺伝子に共通する10−bp配列(GAAGAAGAGG)についての予備的サーチは、アプローチの可能性を示した。オリゴピリミジン・オリゴプリン配列の選択はアプローチを制限するものではない。というのは、これらの配列はヒトゲノムで過剰発現され、全遺伝子(調節領域、コーディングおよび非コーディング領域)は、三重ラセンを形成するオリゴヌクレオチドについての潜在的標的であるからである。さらに、図2に示されたオリゴヌクレオチドは、いくつかの遺伝子(表1)に存在する共通配列、例えば、癌性特性の獲得および維持に関与するIGF1RおよびVEGFを認識する。
【0147】
さらに、トポイソメラーゼ阻害剤は、通常は、開裂部位の周りのジヌクレオチドに制限されるある配列特異性を有することを忘れてはならない。事実、本発明者らは、複合体の三重ラセン部位への結合が強力な開裂を誘導するのに十分ではなく、三重ラセン部位の近傍における阻害剤に対して特異的な部位の存在は、トポイソメラーゼによる開裂の動員および誘導に対して大いに好ましいことが観察された。本発明者らは、これより、標的化配列は、好ましくは、オリゴヌクレオチドによって認識される部位のみならず、その近傍におけるトポイソメラーゼI阻害剤の部位を含み、従って、複合体の選択性を増大させると推定した。
【0148】
最後に、本発明者らは、オリゴヌクレオチドならびにN−メチルーピロールおよびN−メチルイミダゾールのポリアミドのようなDNAリガンドに対するアプローチを確認したが、原理は、例えば、亜鉛フィンガーペプチドのような他のクラスのリガンドまで拡大することができる。
【0149】
本発明の主題は、
さらに、(特に、TFO(三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド)−トポイソメラーゼ阻害剤を含む)複合体による開裂が、より効果的には、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位と共に、2〜100、好ましくは2〜30の多数のプリンを含む前記オリゴピリミジン・オリゴプリン標的遺伝子の各配列に向けられることを特徴とする上記定義された方法、
さらに、トポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された前記切断部位が、三重ラセンの末端から1〜10ヌクレオチドに位置することを特徴とする上記定義された方法、
さらに、前記標的遺伝子の配列が、病理学に関与する遺伝子上のヒトゲノムに存在する単一標的配列、またはウイルスまたは寄生性遺伝子のみに存在し、ヒトゲノムでは存在しない標的、または病理の維持または発生に関与する遺伝子の群に存在する配列いずれかであることを特徴とする上記定義された方法;
でもある。
【0150】
本発明者らは、さらに:
本発明による方法で有用な複合体は、細胞増殖、成長因子またはホルモン受容体シグナル伝達、および抗アポトーシス剤の群に作用することができる新しい効果的な抗腫瘍剤を構成するはずであり、
トポイソメラーゼI阻害剤にカップリングした前記副溝リガンドは、酵素による直接的開裂をリガンドの結合部位に選択的に向け、オリゴヌクレオチド−阻害剤複合体と同一の適応を有する;
ことを提案しおよび/または示した。
【0151】
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【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】図1は、特異的部位におけるトポイソメラーゼIによるDNAの開裂/切断を標的化する原理を示すダイヤグラムである。
【図2.A】図2.Aは、公知の研究システム:標的オリゴプリン・オリゴピリミジン配列および対応する三重鎖形成性オリゴヌクレオチド(TFO)の配列を含む324−bp二重鎖を示す説明図である。
【図2.B】図2.Bは、カンプトテシン誘導体ST1578、ST2541およびST2677、ならびに複合体TFO−ST1578、TFO−ST2541,TFO−L4−ST2677およびTFO−L4−10CPTの式を表す説明図である。
【図3.A】図3.Aは、トポイソメラーゼI開裂部位を表す説明図である。
【図3.B】図3.Bは、本発明による他の複合体で得られた結果を表す説明図である。
【図4】図4は、標的のオリゴプリン鎖上の三重ラセンの5’側の開裂およびオリゴピリミジン鎖上の3’側の開裂を誘導することを示す説明図である。
【図5.A】図5.Aは、実験構築を表す説明図である。
【図5.B】図5.Bは、標的二重鎖、TFOおよび対照オリゴヌクレオチド配列などを示す説明図である。
【図6.A】図6.Aは、HeLa細胞におけるPyralisルシフェラーゼ遺伝子の転写の阻害を説明する説明図である。
【図6.B】図6.Bは、逆鎖でのプラスミド構築を用いる場合に得られた結果に関する説明図である。
【図7.A】図7.Aは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す説明図である。
【図7.B】図7.Bは、複合体の存在下における三重鎖の形成および強力な特異的破壊の存在(実施例A)および、対照的に、三重ラセン部位での突然変異の場合における三重鎖の形成の、およびDNAの特異的開裂の不存在(実施例B)および開裂部位bおよびcにおける突然変異した二重鎖の場合における、三重鎖の形成、三重鎖部位の3’末端におけるトポI−媒介DNA開裂部位の不存在(実施例C)を示す説明図である。
【図8.A】図8.Aは、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を示す説明図である。
【図8.B】図8.Bは、DNA/トポ I/CPT複合体の形成に伴う生物学的効果の相関結果を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の方法で有用なある種の複合体/複合体の(阻害剤単独と比較した開裂強度、および与えられた部位a、b、cおよびdの点における)有効性を示す説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時にかつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
CはトポイソメラーゼIポイズンである]
の化合物の、遺伝子の発現によってもたらさせる病気の治療用の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子は安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される、使用。
【請求項2】
前記遺伝子が、その発現が細胞の腫瘍状態の発生および維持を制御する遺伝子である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記遺伝子が、IGF−1、IGF−1R、VEGF、BCL2からなる群より選択される遺伝子である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記遺伝子が、感染性微生物またはウイルスの遺伝子である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記遺伝子が、HIVまたはHCVウイルスのものである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記遺伝子が、代謝異常病に関与する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記遺伝子が自己免疫疾患に関与する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記トポイソメラーゼIポイズンがカンプトテシン、レベッカマイシン、副溝リガンドおよびベンズイミダゾールからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記トポイソメラーゼポイズンがカンプトテシンである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記カンプトテシンが7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンおよび10−ヒドロキシカンプトテシンからなる群より選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記カンプトテシンが式(I):
[式中、
R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は所望により(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいはR1は−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり:あるいはR4はグリコシル残基であり:R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記カンプトテシンが式(II):
[式中、
Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり:
nおよびmが1に等しい場合:YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置でC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいは
もしnおよびmが共に0であれば:Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり:
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC1−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル基であり:あるいはR4はグリコシル残基であり:R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマ−、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記カンプトテシンが式(III)または(IV):
[式中、
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換された窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり:
あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり:あるいは
R4はグリコシル残基であり:
R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:
同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり:
n=1または2であり、
Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルから選択される]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記カンプトテシンが7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンまたは10−ヒドロキシカンプトテシンである、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
前記リガンドが三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド(TFO)である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記TFOがリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2´O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNAからなる群より選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記DNA配列−特異的リガンドが副溝バインダー(MGB)である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記MGBがN−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチル−3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンからなる群より選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記リンカーアームが、1〜50、好ましくは2〜30の、炭素原子、およびNまたはOからなる群より選択されるヘテロ原子の連続:およびホスホルアミドもしくはアミド結合、またはチオエステルを与えるように反応することができる末端部位によって形成される請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記リンカーアームが、ジアミノアルキルおよびグリコールからなる群より選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記医薬品が、局所注射によって病気の部位に投与される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記病気が腫瘍または感染病である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬品が全身経路によって投与され、前記化合物がトランスフェクションベクターによって、または単独で運ばれる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記トランスフェクションベクターがナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーからなる群より選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が全身経路によって投与され、前記化合物Cが7−(2−アミノエトキシイミノメチル)カンプトテシンおよび7−(3−アミノプロポキシイミノメチル)カンプトテシンからなる群より選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
式I:
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり:
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており:
Cは式I:
(式中、
R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C10)アリール(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のシアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩。
【請求項27】
R1が2−アミノエトキシイミノメチルおよび3−アミノプロポキシイミノメチルからなる群より選択され、R2およびR3が水素である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
式I:
A−B−C
[式中、
Aは病理学上重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ選択的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3´末端に結合しており;
Cは式(II):
(式中、
Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり;
nおよびmが1に等しい場合、YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置がC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C1−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいは
もしnおよびmが共に0であるならば;Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり;
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC1−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子、および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩。
【請求項29】
式:
A−B−C
[式中、
Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
Cは式(III)または(IV):
(式中、
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、またはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または、酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいは
R4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり;あるいは
R4はポリアミノアルキル残基であり;あるいは
R4はグリコシル残基であり;
R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;
同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり;
n=1または2であり;
Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルから選択される)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩。
【請求項30】
式:
A−B−C
[式中、
Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
Cは7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンならびに10−ヒドロキシカンプトテシン、スクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ST2677)、20S−7−アミノエチルイミノメチルカンプトテシン(ST1578)、20S−7−アミノプロピルイミノメチルカンプトテシン(ST2541)からなる群より選択される、カンプトテシン誘導体である]
の化合物。
【請求項31】
少なくとも一種の医薬上許容される溶剤および/または賦形剤と混合した、請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項32】
注射に適した請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
さらにトランスフェクションベクターを含む、請求項31または32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記トランスフェクションベクターがナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーからなる群より選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
特に腫瘍の発生および維持に関与する病理学的に注目されるタンパク質、またはウイルスおよび病原体タンパク質、または代謝異常または自己免疫タンパク質に関与するタンパク質をコードする数個の標的遺伝子発現を同時に阻害するインビトロ方法であって、
(i)少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤が、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに結合した前記複合体により、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を、前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(ii)前記複合体の前記リガンドによってゲノム中の前記遺伝子を認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得ることと、
(iii)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害すること;
を含む、方法。
【請求項36】
前記標的遺伝子の配列がその近傍にトポイソメラーゼ阻害剤の部位を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤がインドロカルバゾールおよびその誘導体のような挿入剤、カンプトテシンおよびその誘導体のような非挿入剤、ベンズイミダゾールおよびその誘導体のような副溝リガンドからなる群より選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのリガンドがリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2’O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNAからなる群より選択され、それが三重ラセンを形成する場合にはTFOに、それが副溝に結合する場合にはMGBに対応し、次いで、N−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチルー3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンから選択される、請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドトポイソメラーゼ阻害剤を含む複合体による開裂が、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位を持つ2および100の間、好ましくは10〜30の多数のプリンを含む前記標的遺伝子の各オリゴピリミジン・オリゴプリン配列に向けられる、請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
トポイソメラーゼ阻害剤によって誘導された前記開裂部位が、三重ラセンの末端から3〜8ヌクレオチドに位置する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記標的遺伝子の配列が、遺伝子、特に、アポトーシス成長および/または阻害シグナルの伝達に関与する遺伝子の群に存在する、請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
式:
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時にかつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
CはトポイソメラーゼIポイズンである]
の化合物の、遺伝子の発現によってもたらさせる病気の治療用の医薬品の調製のための使用であって、前記遺伝子は安定化されたトポイソメラーゼI−媒介DNA開裂によって阻害される、使用。
【請求項2】
前記遺伝子が、その発現が細胞の腫瘍状態の発生および維持を制御する遺伝子である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記遺伝子が、IGF−1、IGF−1R、VEGF、BCL2からなる群より選択される遺伝子である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記遺伝子が、感染性微生物またはウイルスの遺伝子である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記遺伝子が、HIVまたはHCVウイルスのものである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記遺伝子が、代謝異常病に関与する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記遺伝子が自己免疫疾患に関与する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記トポイソメラーゼIポイズンがカンプトテシン、レベッカマイシン、副溝リガンドおよびベンズイミダゾールからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記トポイソメラーゼポイズンがカンプトテシンである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記カンプトテシンが7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンおよび10−ヒドロキシカンプトテシンからなる群より選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記カンプトテシンが式(I):
[式中、
R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は所望により(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいはR1は−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり:あるいはR4はグリコシル残基であり:R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記カンプトテシンが式(II):
[式中、
Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり:
nおよびmが1に等しい場合:YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置でC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいは
もしnおよびmが共に0であれば:Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり:
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC1−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル基であり:あるいはR4はグリコシル残基であり:R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマ−、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記カンプトテシンが式(III)または(IV):
[式中、
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換された窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み:前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基またはその医薬上許容されるエステルの1つであり:あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり:あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり:
あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり:あるいは
R4はグリコシル残基であり:
R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキルであり:
同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり:
n=1または2であり、
Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルから選択される]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記カンプトテシンが7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンまたは10−ヒドロキシカンプトテシンである、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
前記リガンドが三重ラセン形成性オリゴヌクレオチド(TFO)である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記TFOがリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2´O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNAからなる群より選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記DNA配列−特異的リガンドが副溝バインダー(MGB)である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記MGBがN−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチル−3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンからなる群より選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記リンカーアームが、1〜50、好ましくは2〜30の、炭素原子、およびNまたはOからなる群より選択されるヘテロ原子の連続:およびホスホルアミドもしくはアミド結合、またはチオエステルを与えるように反応することができる末端部位によって形成される請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記リンカーアームが、ジアミノアルキルおよびグリコールからなる群より選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記医薬品が、局所注射によって病気の部位に投与される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記病気が腫瘍または感染病である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬品が全身経路によって投与され、前記化合物がトランスフェクションベクターによって、または単独で運ばれる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記トランスフェクションベクターがナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーからなる群より選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が全身経路によって投与され、前記化合物Cが7−(2−アミノエトキシイミノメチル)カンプトテシンおよび7−(3−アミノプロポキシイミノメチル)カンプトテシンからなる群より選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
式I:
A−B−C
[式中、
Aは、病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり:
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており:
Cは式I:
(式中、
R1は−C(R5)=N−(O)n−R4基であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、フェニルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり:あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C10)アリール(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のシアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩。
【請求項27】
R1が2−アミノエトキシイミノメチルおよび3−アミノプロポキシイミノメチルからなる群より選択され、R2およびR3が水素である、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
式I:
A−B−C
[式中、
Aは病理学上重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ選択的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3´末端に結合しており;
Cは式(II):
(式中、
Aは飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC3−C10シクロアルキル−C1−C8アルキルであり;
nおよびmが1に等しい場合、YはNR12R13またはN+R12R13R14で置換された飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり、同一または異なっていてもよいR12、R13およびR14は水素、または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルであり、あるいはYはBCOOXであり、Bはアミノ酸の残基であり、XはH、利用可能な位置がC1−C4アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、C1−C4アルキルから選択される少なくとも1つの基で置換された直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキル、ベンジルまたはフェニルであり、あるいは
もしnおよびmが共に0であるならば;Yは内部塩の形態、および医薬上許容される酸のアニオンとの塩の形態の双方である4−トリメチルアンモニウム−3−ヒドロキシブタノイルであり、あるいはYは上記定義されたN+R12R13R14であり;
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルまたはC1−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または酸素の原子、および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR6R7から選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいはR4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されていてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキルであり;あるいはR4はポリアミノアルキル残基であり;あるいはR4はグリコシル残基であり;R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシである)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、およびその医薬上許容される塩。
【請求項29】
式:
A−B−C
[式中、
Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
Cは式(III)または(IV):
(式中、
R1は水素または−C(R5)=N−(O)p−R4基であり、pは整数0または1であり、R4は水素または直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、またはC2−C8アルケニル基、またはC3−C10シクロアルキル基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C5)アルキル基、またはC6−C14アリール基、または直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキル基、または複素環基または直鎖もしくは分岐鎖のヘテロシクロ−(C1−C8)アルキル基であり、前記複素環基は、所望により、(C1−C8)アルキル基で置換されていてもよい窒素の原子、および/または、酸素の原子および/または硫黄の原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み;前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、複素環またはヘテロシクロ−アルキル基は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−C8アルキル、C1−C9アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、および−NR6R7からなる群より選択される1以上の基で置換されていてもよく、同一または異なっていてもよいR6およびR7は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキル、−COOH基、またはその医薬上許容されるエステルの1つであり;あるいは−CONR8R9基であり、同一または異なっていてもよいR8およびR9は水素、直鎖もしくは分岐鎖の(C1−C8)アルキルであり;あるいは
R4は、所望により、ハロゲン、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシ、フェニル、シアノ、ニトロ、−NR10R11から選択される1以上の基で置換されてもよい(C6−C10)アロイルまたは(C6−C10)アリールスルホニル残基であり、同一または異なっていてもよいR10およびR11は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C9アルキルであり;あるいは
R4はポリアミノアルキル残基であり;あるいは
R4はグリコシル残基であり;
R5は水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルキル、直鎖もしくは分岐鎖のC2−C8アルケニル、C3−C10シクロアルキル、直鎖もしくは分岐鎖の(C3−C10)シクロアルキル−(C1−C8)アルキル、C6−C14アリール、直鎖もしくは分岐鎖の(C6−C14)アリール−(C1−C8)アルキルであり;
同一または異なっていてもよいR2およびR3は水素、ヒドロキシ、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C8アルコキシであり;
n=1または2であり;
Zは水素、直鎖もしくは分岐鎖のC1−C4アルキルから選択される)
のカンプトテシン誘導体である]
の化合物、N1−オキシド、ラセミ混合物、その個々のエナンチオマー、その個々のジアステレオマー、その混合物、および医薬上許容される塩。
【請求項30】
式:
A−B−C
[式中、
Aは病理学的に重要な遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができるDNA配列−特異的リガンドであり;
Bはリンカーアームであり、前記リンカーアームはAの3’末端に結合しており;
Cは7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンならびに10−ヒドロキシカンプトテシン、スクシニル−バリル−20−O−(7−テルブトキシイミノメチルカンプトテシン)(ST2677)、20S−7−アミノエチルイミノメチルカンプトテシン(ST1578)、20S−7−アミノプロピルイミノメチルカンプトテシン(ST2541)からなる群より選択される、カンプトテシン誘導体である]
の化合物。
【請求項31】
少なくとも一種の医薬上許容される溶剤および/または賦形剤と混合した、請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項32】
注射に適した請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
さらにトランスフェクションベクターを含む、請求項31または32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記トランスフェクションベクターがナノ粒子、リポソーム、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーからなる群より選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
特に腫瘍の発生および維持に関与する病理学的に注目されるタンパク質、またはウイルスおよび病原体タンパク質、または代謝異常または自己免疫タンパク質に関与するタンパク質をコードする数個の標的遺伝子発現を同時に阻害するインビトロ方法であって、
(i)少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤が、前記標的遺伝子に共通する配列を同時かつ特異的に認識することができる少なくとも1つのDNA配列−特異的リガンドに結合した前記複合体により、少なくとも1つのトポイソメラーゼI阻害剤の作用を、前記遺伝子に特異的な部位に向けることと、
(ii)前記複合体の前記リガンドによってゲノム中の前記遺伝子を認識し、前記リガンドの前記標的への結合を得ることと、
(iii)トポイソメラーゼI−媒介DNA開裂を誘導し、前記遺伝子の発現を阻害すること;
を含む、方法。
【請求項36】
前記標的遺伝子の配列がその近傍にトポイソメラーゼ阻害剤の部位を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのトポイソメラーゼ阻害剤がインドロカルバゾールおよびその誘導体のような挿入剤、カンプトテシンおよびその誘導体のような非挿入剤、ベンズイミダゾールおよびその誘導体のような副溝リガンドからなる群より選択される、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つのリガンドがリボ核酸、デオキシリボ核酸、PNA、ペプチド核酸、2’O−アルキルリボ核酸、オリゴホスホルアミデート、LNAからなる群より選択され、それが三重ラセンを形成する場合にはTFOに、それが副溝に結合する場合にはMGBに対応し、次いで、N−メチルピロール、N−メチルイミダゾールおよびN−メチルー3−ヒドロキシピロールのポリアミド、ならびにβ−アラニンから選択される、請求項35〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
三重ラセン形成性オリゴヌクレオチドトポイソメラーゼ阻害剤を含む複合体による開裂が、標的のオリゴピリミジン鎖上の三重鎖の3’側のトポイソメラーゼI阻害剤によって誘導された開裂部位を持つ2および100の間、好ましくは10〜30の多数のプリンを含む前記標的遺伝子の各オリゴピリミジン・オリゴプリン配列に向けられる、請求項35〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
トポイソメラーゼ阻害剤によって誘導された前記開裂部位が、三重ラセンの末端から3〜8ヌクレオチドに位置する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記標的遺伝子の配列が、遺伝子、特に、アポトーシス成長および/または阻害シグナルの伝達に関与する遺伝子の群に存在する、請求項35〜40のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2.A】
【図2.B】
【図3.A】
【図3.B】
【図4】
【図5.A】
【図5.B】
【図6.A】
【図6.B】
【図7.A】
【図7.B】
【図8.A】
【図8.B】
【図9】
【図2.A】
【図2.B】
【図3.A】
【図3.B】
【図4】
【図5.A】
【図5.B】
【図6.A】
【図6.B】
【図7.A】
【図7.B】
【図8.A】
【図8.B】
【図9】
【公表番号】特表2006−523646(P2006−523646A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505154(P2006−505154)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004022
【国際公開番号】WO2004/083365
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505353803)アンセルム(アンスティテュ ナシオナル デ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル) (1)
【出願人】(502071218)サーントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シャーンティフィク(セーエンヌエールエス) (8)
【出願人】(505353799)ミュゼウム ナシオナル ディストワール ナチュレール (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004022
【国際公開番号】WO2004/083365
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505353803)アンセルム(アンスティテュ ナシオナル デ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル) (1)
【出願人】(502071218)サーントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シャーンティフィク(セーエンヌエールエス) (8)
【出願人】(505353799)ミュゼウム ナシオナル ディストワール ナチュレール (1)
【Fターム(参考)】
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