化学物質検出装置
【課題】 建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することのできる化学物質検出装置を提供する。
【解決手段】 検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置（１００）において、前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シート（２）と、前記検出シート（２）を、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段（１、３）と、前記検出シート（２）に光を照射する照射手段（２４）と、前記検出シート（２）からの反射光を検出する受光手段（２５）と、前記受光手段の検出結果により前記検出シート（２）が所定の色彩に変化したことを判定する判定手段（２６）と、前記判定手段の判定結果を表示する表示手段（２７、２８、２９、３０）とを備える。
【解決手段】 検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置（１００）において、前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シート（２）と、前記検出シート（２）を、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段（１、３）と、前記検出シート（２）に光を照射する照射手段（２４）と、前記検出シート（２）からの反射光を検出する受光手段（２５）と、前記受光手段の検出結果により前記検出シート（２）が所定の色彩に変化したことを判定する判定手段（２６）と、前記判定手段の判定結果を表示する表示手段（２７、２８、２９、３０）とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建造物やその中で使用される什器備品、家具類、内装材等から発生される揮発性化学物質の発生源を特定するための化学物質検出装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、建造物やその室内において発生する揮発性化学物質（以下、単に化学物質と呼ぶ）の人体への悪影響が問題視されている。即ち、建材や内装材、接着剤、塗料、家具、什器備品に含まれるホルムアルデヒド等の化学物質が空気中に放散され、それに対して人体がアレルギー反応を起こすと考えられている。
この問題を回避するには、建造物の施工時、または家具、什器備品の設置時に、それら化学物質を含有する部材を使用しないことである。しかしながら、すでに存在する建造物や家具等に関しては、前記化学物質の含有部材を特定し、適切な対策を施す必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
従来から、建造物内や室内の空気中に放散された化学物質（の濃度）を検出するには、ガラス検知器やクロマトグラフ等の測定手段が用いられる。その場合、検出結果は、建造物内や室内空間全体の平均的な濃度として検出される。これは、流体の平衡拡散則により、濃度が均一化される方向に行くためである。
【０００４】
前記測定手段を用いて、前記化学物質の含有部材を特定するためには、壁、天井、または家具表面等を直接的に検査する必要があるが、その場合、所要時間やコストがかかり、効率的ではなかった。
すなわち、従来は、主たる化学物質の発生源を具体的に、且つ容易に特定することが困難であり、化学物質の含有部材に対する対策を効率的に講じることができなかった。
【０００５】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することのできる化学物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記課題を解決するためになされた、本発明にかかる化学物質検出装置は、検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置において、前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シートと、前記検出シートを、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段と、前記検出シートに光を照射する照射手段と、前記検出シートからの反射光を検出する受光手段と、前記受光手段の検出結果により前記検出シートが所定の色彩に変化したことを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることに特徴を有する。
このように前記設置手段を備えることにより、検出シートを検出対象に対し空隙を介して容易に設置することができ、また、検出シートの色彩変化の結果を表示手段に表示するため、容易に検出結果を判断することができる。
また、一般に検査対象表面には、他箇所から放散された化学物質が付着しているが、検出シートが検査対象表面に直接的に接触しないため、その付着した化学物質までも検出することなく、検査対象から放散される化学物質のみを純粋に検出することができる。
【０００７】
また、前記照射手段は、電気的に発光する発光素子であり、且つ、前記受光手段は、受光した光を電気信号に変換する光受光素子であることが望ましい。
このような構成であれば、例えば、照射手段に発光ダイオード、受光手段にフォトトランジスタ（またはフォトダイオード等）を用いることで、低電力の回路を構成することができ、また、かかるコストを低く抑えることができる。
【０００８】
また、前記表示手段は、前記判定手段の判定結果として、検出シートの色彩の変化を示す経過時間、及び／または、前記経過時間に比例したガス濃度の変化を表示することが望ましい。
このように構成すれば、検出シートの変化を目視により常に監視する必要がない。即ち、表示手段に表示された結果を確認するのみで、検出シートにおける色彩変化までの経過時間や、その時間に対応した濃度変化を知ることができる。したがって、例えば、室内において複数の化学物質検出装置を設置すれば、時間経過により変化するガス濃度の状態を比較することができ、その室内において放散される化学物質の状態を全体的に把握することができる。
【０００９】
また、前記設置手段は、所定の厚さを有するスペーサと、前記スペーサ上に載置された前記検出シートを上方から押圧し固定する押さえ板とを備え、前記スペーサと押さえ板には、開口部が形成され、前記開口部の所定領域を塞ぐように前記検出シートが設けられることが望ましい。
このように設置手段を構成すれば、スペーサの厚さによって、検査対象から検出シートに対して所定の空隙を形成することができる。また、このような構成によって、検出シートの交換を容易に行うことができる。さらには、簡単な構造であるため、設置手段を安価に形成することができる。
【００１０】
また、前記検出シートの平面寸法は、前記開口部の平面寸法よりも小さく形成され、前記開口部は前記検出シートにより完全に塞がれないことが望ましい。
このように、前記開口部が完全に塞がれなければ、検出シートの下において放散された化学物質のガスが累積することがないため、異常濃度の化学物質を検出することもなく、自然に放散される濃度の化学物質を検出することができる。
【００１１】
また、前記検出シートは、前記揮発性化学物質に化学反応する反応液及び試薬が乾燥した状態で含まれる紙、または不織布により形成され、前記揮発性化学物質に化学反応することにより色彩を変化させることが好ましい。
このようにすれば、放散される化学物質に応じて検出シートの色彩を変化させることができる。また、安価に検出シートを形成することができる。
尚、前記スペーサは、紙または高分子材料により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することのできる化学物質検出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図１は、本発明に係る化学物質検出装置の全体を示す斜視図である。図１の化学物質検出装置１００は、例えば、建造物内や室内において、壁や家具等から空気中に放散される化学物質を検出シートにより検出し、その発生源を特定するためのものである。また、この化学物質検出装置１００は、壁や家具表面等の検査対象に直接取り付けられる検出シート保持部１０と、化学物質の検出結果を時間やガス濃度で表示する検出結果表示部２０とで構成される。
【００１４】
前記検出シート保持部１０は、図２に示すように、壁や家具表面等の検査対象への接触部となる板状のスペーサ１と、このスペーサ１上に載置される検出シート２と、検出シート２を前記スペーサ１との間で押圧し固定する押さえ板３とを備える。即ち、前記スペーサ１と押さえ板３とで検出シート２の設置手段が構成されている。
前記スペーサ１は、所定の厚さ寸法を有する板状の紙または高分子材料等により形成され、図示するように、その略中央部に方形状の開口部１ａが形成されている。また、前記開口部１ａの前後には、突起部１ｂ、１ｃが形成されている。
【００１５】
前記検出シート２は、検査対象から放散される化学物質に反応して、その色彩が変化するように、反応液、試薬等を含浸または吹きつけて乾燥させた紙（濾紙等）、あるいは不織布等により形成されている。尚、前記反応液、試薬としては、例えば、塩化ヒドロキシルアミン溶液に、メチルオレンジ試薬を入れ、苛性ソーダ水溶液でｐＨを調整しながらｐＨ値を６．８程度に調整したものが好ましい。
【００１６】
また、検出シート２の形状は前記開口部１ａと同様に方形状に形成されるが、その平面寸法のうち、少なくとも一方向の寸法が開口部１ａの一辺（平面寸法）よりも短く形成される。すなわち、検出シート２は、前記開口部１ａを塞ぐように載置されるが、開口部１ａを完全に塞ぐことなく、必ず図１に示すように所定幅（例えば３ｍｍ）の隙間５が形成されるようになされている。
【００１７】
また、前記押さえ板３は、スペーサ１の開口部１ａと寸法および形状が同じに形成された開口部３ａを有し、その前後には貫通孔３ｂ、３ｃが形成されている。そして、押さえ板３をスペーサ１の上部に重ねる際には、スペーサ１に形成された突起部１ｂ、１ｃを、押さえ板３の貫通孔３ｂ、３ｃに夫々強固に嵌合し、押さえ板３により検出シート２を押さえつけ固定するようになされている。尚、そのとき、開口部３ａとスペーサ１の開口部１ａの位置が一致するように構成されている。
また、前記検出シート２は、一度、化学反応により色彩が変化すると再使用ができないため、一検査箇所での使用ごとに新たな未使用のシートに取り替える必要があるが、その際は、押さえ板３を手で引き上げることによりスペーサ１と押さえ板３とが分離され、容易に取替え作業ができるように構成されている。
【００１８】
尚、検査対象が空間に対して開かれた場所にあれば、平均拡散則により、その周辺の気体濃度は平均化される方向に移動する。すなわち、検査対象から離れた位置に（例えば１０ｃｍの距離を介して）、前記検出シート２を設置するならば、その検出シート２が検出する化学物質は、室内全体で平均化された濃度のものとなる。したがって、その場合には、検査対象から放散される化学物質の発生量について、他の箇所からの発生量との比較を明確に判定することができない。
また、一般に検査対象表面には、他箇所から放散された化学物質が付着しているが、検出シート２を検査対象表面に直接的に接触させて設置すると、その付着した化学物質までも検出する虞がある。即ち、その場合には、検査対象から放散される化学物質のみを純粋に検出することができず、検出結果に誤差を生じ易い。
【００１９】
このため、前記のように構成された検出シート保持部１０は、スペーサ１の下面側を検査対象の表面に対して接触させて取り付けられる。その取り付け方法は、容易に着脱可能な程度の接着力を有する両面テープ４や、吸盤（図示せず）等による貼りつけにより行われる。
すなわち、検出シート２は、スペーサ１の厚さ寸法と略同じ距離（例えば３ｍｍの空隙）を介して、検査対象に対して設置される。したがって、そのように設置された検出シート２により、検査対象から放散された化学物質を、そのガス濃度が平均化される前に検出することができ、また、検査対象表面に付着した化学物質（即ち他箇所を発生源とする化学物質）を検出することなく、検査対象から放散される化学物質のみを精度よく検出することができる。
【００２０】
また、前記したように、検出シート２をスペーサ１に載置した際には、適切な幅の隙間５が設けられるが、この隙間５によって検出シート２と検査対象表面との間の空間が密閉されることがないため、検査対象表面からの放散が、より自然放散に近い状態になされる。
すなわち、検出シート２と検査対象表面との間の空間が密閉されると放散ガスが累積し検出濃度が異常に高濃度になるが、前記隙間５が設けられることにより放散ガスが累積しないため、より自然な状態での濃度を検出することができる。
また、その逆に、隙間５の幅寸法が大きすぎると、放散した化学物質が拡散するため、適切な所定幅（例えば３ｍｍ）に設定されている。
【００２１】
一方、前記検出結果表示部２０は、前記検出シート保持部１０の上方に、図示しない設置手段により設けられる。この検出結果表示部２０は図１に示すように、リチウムバッテリー等の小型の電源２１と、この電源２１からの電圧印加をオン／オフするスイッチ２２と、回路全体の制御を行う制御回路２３と、発光して前記検出シート２の上面に照射する発光ダイオード２４（照射手段）とを備える。
【００２２】
また、前記発光ダイオード２４から照射され検出シート２に反射した光を検出するフォトトランジスタ２５（受光手段）と、フォトトランジスタ２５で受光した光から所定の色彩か否かを判定する判定手段としての比較素子２６とを備える。
更に、この検出結果表示部２０は表示手段として、前記比較素子２６の出力が変化するまでの経過時間をカウントするタイマー回路２７と、前記経過時間と化学物質ガス濃度との対応関係を予め記憶したメモリ２８と、前記経過時間及び／またはガス濃度を表示するための表示駆動回路２９、ディスプレイ手段３０を備える。
【００２３】
このように構成された検出結果表示部２０においては、スイッチ２２がオン状態になされると、回路全体に電圧印加され作動開始する。また、回路が作動開始すると同時に、発光ダイオード２４が発光して検出シート２にその光を照射し、タイマー回路２７がカウントを開始する。
一方、フォトトランジスタ２５においては、検出シート２からの反射光を検出し、その結果が比較素子２６において、所定の値と一致するか否かが判定される。即ち、フォトトランジスタ２５及び比較素子２６により、検出シート２の色彩が所定の色彩に変化するか否かが判定される。
【００２４】
ここで、検出シート２が、放散された化学物質に反応し、所定の色彩にまで変化すると、比較素子２６は、その検出情報をタイマー回路２７に出力する。そして、タイマー回路２７は、それに応じてカウント動作を停止する。
この検出結果表示部２０においては、電源投入後からの経過時間等の情報が、ディスプレイ手段３０に表示されるようになされる。即ち、タイマー回路２７によりカウントされる時間情報がリアルタイムに表示駆動回路２９に出力され、その情報がディスプレイ手段３０に表示される。また、タイマー回路２７からの出力は、メモリ２８に出力され、メモリ２８からは経過時間に対応したガス濃度の情報が表示駆動回路２９に出力される。したがって、ディスプレイ手段には、経過時間と共に、放散された化学物質のガス濃度の情報が経過時間に対応して表示される。
【００２５】
以上のように、本発明に係る実施形態によれば、検出シート保持部１０の構造が簡単であるため、設置が容易であり、専門的技能を要せずに、検査対象から放散される化学物質を検出することができる。
また、複数の箇所について検査する場合には、検出シート２のみを交換すればよいため、安価で済み、交換作業も容易であるため効率的に検査を行うことができる。
さらには、検査対象表面から適切な空隙を介して検出シート２が設置され、且つ、スペーサ１及び押さえ板３の開口部１ａ、３ａに適切な隙間５が設けられるため、検査対象から自然に放散される化学物質について、精度よく検出することができる。
また、検出結果表示部２０を設けたことにより、検出シート２の変化を目視により常に監視する必要がない。即ち、ディスプレイ手段３０に表示された結果を確認するのみで、検出シート２における色彩変化までの経過時間や、その時間に対応した濃度変化を知ることができる。したがって、例えば、室内において複数の化学物質検出装置１００を設置すれば、時間経過により変化するガス濃度の状態を比較することができ、その室内において放散される化学物質の状態を全体的に把握することができる。
【００２６】
尚、前記の実施の形態においては、図１、図２に示すようにスペーサ１と押さえ板３とが分離した構成を示したが、この構成に限らず図３、図４に示すようにスペーサと押さえ板が一体形成されてもよい。
その場合、例えば検出シート保持部１０に替えて図３に完成状態が示される検出シート保持部１１は、図２に示すようにスペーサ６と押さえ板７とがそれぞれの端部６ｂ、７ｂにおいて一体的に形成される。押さえ板７は、スペーサ６に対して端部６ｂ、７ｂを軸に回動可能になされている。
【００２７】
また、スペーサ６において、端部６ｂと反対側の端部には鉤状突起６ｃが形成されており、検出シート２を挟んでスペーサ６と押さえ板７とを重ねた際に、図３に示すように、押さえ板７の端部７ｃが前記鉤状突起６ｃに係止するように構成されている。
また、検出シート２を交換する際には、鉤状突起６ｃを手で外側方向に引っ張り、押さえ板７の端部７ｃを上方に持ち上げることにより、再び図４に示すような状態とすることができ、この状態で交換作業を行うようになされている。
【００２８】
尚、図３、図４に示したスペーサ６及び押さえ板７の開口部６ａ、７ａの形状は、図１、図２に示したスペーサ１及び押さえ板３の開口部１ａ、３ａと同じ形状に形成されており、図１に示した場合と同様に、検出シート２を設置した際に、隙間５が形成されるようになされている。
したがって、図３、図４に示す構成によっても、図１、図２に示した構成と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【００２９】
続いて、本発明に係る化学物質検出装置について、実施例に基づきさらに説明する。
【００３０】
［実施例１］
本発明に係る化学物質検出装置について検討するため、先ず、本発明に係る化学物質検出装置が有する検出シートの実用性について検討した。本実験においては、検出シートを試作するにあたり、塩化ヒドロキシルアミン溶液に、メチルオレンジ試薬を入れ、苛性ソーダ水溶液でｐＨを調整しながらｐＨ値を６．８程度に調整し、濾紙に含浸させて、その後乾燥させた。
【００３１】
尚、塩化ヒドロキシルアミンは、ホルムアルデヒドと反応すると、塩酸が分離し、ホルムアルドキシムと水とに分解することが知られている。また、リン酸ヒドロキシルアミンも同様である。メチルオレンジは、ｐＨ４．４〜６．６の間でオレンジ色に発色する。
【００３２】
このため、前記検出シートにホルムアルデヒドを反応させると、分離した塩酸が全体のｐＨ値を酸性方向に下げ、ｐＨ値が６．６以下になるとオレンジが発色して検出シートの色が変化するはずである。
【００３３】
本実験においては、実際に、ホルムアルデヒド雰囲気中に前記検出シートを入れて、その変化を観察した。その結果、０．２ｐｐｍ雰囲気中では投入後３０分、０．１ｐｐｍ雰囲気中では１．５時間、０．０５ｐｐｍ雰囲気中では４時間でオレンジ色に変色した。
本実験の結果、検出シートが変化する時間から、実際の使用においても、試作した検出シートは実用的であることを確認した。
【００３４】
［実施例２］
続いて、検出シート表面に発光ダイオードにより照射して、その反射光をフォトトランジスタにより検出し、Ｒ（赤）、Ｇ（緑）、Ｂ（青）の三色と、Ｈ（色相）の変化について、検出シートに対する目視、及びフォトトランジスタの出力結果（検出レベル）により観察した。検査対象としては、ホルムアルデヒドを放散する部材を用いた。図５のグラフに、フォトトランジスタの出力結果を経過時間と共に示す。
本実験の結果、目視によれば、検査開始後、約１時間で色が変化した。また、このグラフから、約１時間で色相変化が大きく生じていることが確認でき、目視による観察と一致することを確認した。
【００３５】
［比較例１］
前記実施例２における検査対象を、ホルムアルデヒドを放散しない部材に替え、同様に観察した。図６のグラフに、フォトトランジスタの出力結果を経過時間と共に示す。
本実験の結果、目視においても、また、グラフに示すように、フォトトランジスタの検出結果においても、色相あるいはＲ，Ｇ，Ｂのいずれのレベルも大きく変化することはなかった。
以上の実施例の結果から、検出シートの実用性が確認され、また、電気信号により、検出シートの色彩変化を判定できることを確認することができた。したがって、本発明に係る化学物質検出装置によれば、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明にかかる化学物質検出装置は、建造物内や室内において放散されるホルムアルデヒド等の化学物質の発生源を特定する用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】図１は、本発明に係る化学物質検出装置の全体を示す斜視図である。
【図２】図２は、図１の化学物質検出装置の構成を示す分解図である。
【図３】図１は、本発明に係る化学物質検出装置の他の形態の全体を示す斜視図である。
【図４】図４は、図３の化学物質検出装置の構成を示す分解図である。
【図５】図５は、実施例２の実験結果を示すグラフである。
【図６】図６は、比較例１の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【００３８】
１ スペーサ
１ａ 開口部
１ｂ 突起部
１ｃ 突起部
２ 検出シート
３ 押さえ板
３ａ 開口部
３ｂ 貫通孔
３ｃ 貫通孔
４ 両面テープ
５ 隙間
６ スペーサ
６ａ 開口部
６ｂ 端部
６ｃ 鉤状突起
７ 押さえ板
７ａ 開口部
１０ 検出シート保持部
１１ 検出シート保持部
２０ 検出結果表示部
２１ 電源
２２ スイッチ
２３ 制御回路
２４ 発光ダイオード
２５ フォトトランジスタ
２６ 比較素子
２７ タイマー回路
２８ メモリ
２９ 表示駆動回路
３０ ディスプレイ手段
１００ 化学物質検出装置
【技術分野】
【０００１】
本発明は、建造物やその中で使用される什器備品、家具類、内装材等から発生される揮発性化学物質の発生源を特定するための化学物質検出装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、建造物やその室内において発生する揮発性化学物質（以下、単に化学物質と呼ぶ）の人体への悪影響が問題視されている。即ち、建材や内装材、接着剤、塗料、家具、什器備品に含まれるホルムアルデヒド等の化学物質が空気中に放散され、それに対して人体がアレルギー反応を起こすと考えられている。
この問題を回避するには、建造物の施工時、または家具、什器備品の設置時に、それら化学物質を含有する部材を使用しないことである。しかしながら、すでに存在する建造物や家具等に関しては、前記化学物質の含有部材を特定し、適切な対策を施す必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
従来から、建造物内や室内の空気中に放散された化学物質（の濃度）を検出するには、ガラス検知器やクロマトグラフ等の測定手段が用いられる。その場合、検出結果は、建造物内や室内空間全体の平均的な濃度として検出される。これは、流体の平衡拡散則により、濃度が均一化される方向に行くためである。
【０００４】
前記測定手段を用いて、前記化学物質の含有部材を特定するためには、壁、天井、または家具表面等を直接的に検査する必要があるが、その場合、所要時間やコストがかかり、効率的ではなかった。
すなわち、従来は、主たる化学物質の発生源を具体的に、且つ容易に特定することが困難であり、化学物質の含有部材に対する対策を効率的に講じることができなかった。
【０００５】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することのできる化学物質検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記課題を解決するためになされた、本発明にかかる化学物質検出装置は、検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置において、前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シートと、前記検出シートを、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段と、前記検出シートに光を照射する照射手段と、前記検出シートからの反射光を検出する受光手段と、前記受光手段の検出結果により前記検出シートが所定の色彩に変化したことを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることに特徴を有する。
このように前記設置手段を備えることにより、検出シートを検出対象に対し空隙を介して容易に設置することができ、また、検出シートの色彩変化の結果を表示手段に表示するため、容易に検出結果を判断することができる。
また、一般に検査対象表面には、他箇所から放散された化学物質が付着しているが、検出シートが検査対象表面に直接的に接触しないため、その付着した化学物質までも検出することなく、検査対象から放散される化学物質のみを純粋に検出することができる。
【０００７】
また、前記照射手段は、電気的に発光する発光素子であり、且つ、前記受光手段は、受光した光を電気信号に変換する光受光素子であることが望ましい。
このような構成であれば、例えば、照射手段に発光ダイオード、受光手段にフォトトランジスタ（またはフォトダイオード等）を用いることで、低電力の回路を構成することができ、また、かかるコストを低く抑えることができる。
【０００８】
また、前記表示手段は、前記判定手段の判定結果として、検出シートの色彩の変化を示す経過時間、及び／または、前記経過時間に比例したガス濃度の変化を表示することが望ましい。
このように構成すれば、検出シートの変化を目視により常に監視する必要がない。即ち、表示手段に表示された結果を確認するのみで、検出シートにおける色彩変化までの経過時間や、その時間に対応した濃度変化を知ることができる。したがって、例えば、室内において複数の化学物質検出装置を設置すれば、時間経過により変化するガス濃度の状態を比較することができ、その室内において放散される化学物質の状態を全体的に把握することができる。
【０００９】
また、前記設置手段は、所定の厚さを有するスペーサと、前記スペーサ上に載置された前記検出シートを上方から押圧し固定する押さえ板とを備え、前記スペーサと押さえ板には、開口部が形成され、前記開口部の所定領域を塞ぐように前記検出シートが設けられることが望ましい。
このように設置手段を構成すれば、スペーサの厚さによって、検査対象から検出シートに対して所定の空隙を形成することができる。また、このような構成によって、検出シートの交換を容易に行うことができる。さらには、簡単な構造であるため、設置手段を安価に形成することができる。
【００１０】
また、前記検出シートの平面寸法は、前記開口部の平面寸法よりも小さく形成され、前記開口部は前記検出シートにより完全に塞がれないことが望ましい。
このように、前記開口部が完全に塞がれなければ、検出シートの下において放散された化学物質のガスが累積することがないため、異常濃度の化学物質を検出することもなく、自然に放散される濃度の化学物質を検出することができる。
【００１１】
また、前記検出シートは、前記揮発性化学物質に化学反応する反応液及び試薬が乾燥した状態で含まれる紙、または不織布により形成され、前記揮発性化学物質に化学反応することにより色彩を変化させることが好ましい。
このようにすれば、放散される化学物質に応じて検出シートの色彩を変化させることができる。また、安価に検出シートを形成することができる。
尚、前記スペーサは、紙または高分子材料により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【００１２】
本発明によれば、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することのできる化学物質検出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図１は、本発明に係る化学物質検出装置の全体を示す斜視図である。図１の化学物質検出装置１００は、例えば、建造物内や室内において、壁や家具等から空気中に放散される化学物質を検出シートにより検出し、その発生源を特定するためのものである。また、この化学物質検出装置１００は、壁や家具表面等の検査対象に直接取り付けられる検出シート保持部１０と、化学物質の検出結果を時間やガス濃度で表示する検出結果表示部２０とで構成される。
【００１４】
前記検出シート保持部１０は、図２に示すように、壁や家具表面等の検査対象への接触部となる板状のスペーサ１と、このスペーサ１上に載置される検出シート２と、検出シート２を前記スペーサ１との間で押圧し固定する押さえ板３とを備える。即ち、前記スペーサ１と押さえ板３とで検出シート２の設置手段が構成されている。
前記スペーサ１は、所定の厚さ寸法を有する板状の紙または高分子材料等により形成され、図示するように、その略中央部に方形状の開口部１ａが形成されている。また、前記開口部１ａの前後には、突起部１ｂ、１ｃが形成されている。
【００１５】
前記検出シート２は、検査対象から放散される化学物質に反応して、その色彩が変化するように、反応液、試薬等を含浸または吹きつけて乾燥させた紙（濾紙等）、あるいは不織布等により形成されている。尚、前記反応液、試薬としては、例えば、塩化ヒドロキシルアミン溶液に、メチルオレンジ試薬を入れ、苛性ソーダ水溶液でｐＨを調整しながらｐＨ値を６．８程度に調整したものが好ましい。
【００１６】
また、検出シート２の形状は前記開口部１ａと同様に方形状に形成されるが、その平面寸法のうち、少なくとも一方向の寸法が開口部１ａの一辺（平面寸法）よりも短く形成される。すなわち、検出シート２は、前記開口部１ａを塞ぐように載置されるが、開口部１ａを完全に塞ぐことなく、必ず図１に示すように所定幅（例えば３ｍｍ）の隙間５が形成されるようになされている。
【００１７】
また、前記押さえ板３は、スペーサ１の開口部１ａと寸法および形状が同じに形成された開口部３ａを有し、その前後には貫通孔３ｂ、３ｃが形成されている。そして、押さえ板３をスペーサ１の上部に重ねる際には、スペーサ１に形成された突起部１ｂ、１ｃを、押さえ板３の貫通孔３ｂ、３ｃに夫々強固に嵌合し、押さえ板３により検出シート２を押さえつけ固定するようになされている。尚、そのとき、開口部３ａとスペーサ１の開口部１ａの位置が一致するように構成されている。
また、前記検出シート２は、一度、化学反応により色彩が変化すると再使用ができないため、一検査箇所での使用ごとに新たな未使用のシートに取り替える必要があるが、その際は、押さえ板３を手で引き上げることによりスペーサ１と押さえ板３とが分離され、容易に取替え作業ができるように構成されている。
【００１８】
尚、検査対象が空間に対して開かれた場所にあれば、平均拡散則により、その周辺の気体濃度は平均化される方向に移動する。すなわち、検査対象から離れた位置に（例えば１０ｃｍの距離を介して）、前記検出シート２を設置するならば、その検出シート２が検出する化学物質は、室内全体で平均化された濃度のものとなる。したがって、その場合には、検査対象から放散される化学物質の発生量について、他の箇所からの発生量との比較を明確に判定することができない。
また、一般に検査対象表面には、他箇所から放散された化学物質が付着しているが、検出シート２を検査対象表面に直接的に接触させて設置すると、その付着した化学物質までも検出する虞がある。即ち、その場合には、検査対象から放散される化学物質のみを純粋に検出することができず、検出結果に誤差を生じ易い。
【００１９】
このため、前記のように構成された検出シート保持部１０は、スペーサ１の下面側を検査対象の表面に対して接触させて取り付けられる。その取り付け方法は、容易に着脱可能な程度の接着力を有する両面テープ４や、吸盤（図示せず）等による貼りつけにより行われる。
すなわち、検出シート２は、スペーサ１の厚さ寸法と略同じ距離（例えば３ｍｍの空隙）を介して、検査対象に対して設置される。したがって、そのように設置された検出シート２により、検査対象から放散された化学物質を、そのガス濃度が平均化される前に検出することができ、また、検査対象表面に付着した化学物質（即ち他箇所を発生源とする化学物質）を検出することなく、検査対象から放散される化学物質のみを精度よく検出することができる。
【００２０】
また、前記したように、検出シート２をスペーサ１に載置した際には、適切な幅の隙間５が設けられるが、この隙間５によって検出シート２と検査対象表面との間の空間が密閉されることがないため、検査対象表面からの放散が、より自然放散に近い状態になされる。
すなわち、検出シート２と検査対象表面との間の空間が密閉されると放散ガスが累積し検出濃度が異常に高濃度になるが、前記隙間５が設けられることにより放散ガスが累積しないため、より自然な状態での濃度を検出することができる。
また、その逆に、隙間５の幅寸法が大きすぎると、放散した化学物質が拡散するため、適切な所定幅（例えば３ｍｍ）に設定されている。
【００２１】
一方、前記検出結果表示部２０は、前記検出シート保持部１０の上方に、図示しない設置手段により設けられる。この検出結果表示部２０は図１に示すように、リチウムバッテリー等の小型の電源２１と、この電源２１からの電圧印加をオン／オフするスイッチ２２と、回路全体の制御を行う制御回路２３と、発光して前記検出シート２の上面に照射する発光ダイオード２４（照射手段）とを備える。
【００２２】
また、前記発光ダイオード２４から照射され検出シート２に反射した光を検出するフォトトランジスタ２５（受光手段）と、フォトトランジスタ２５で受光した光から所定の色彩か否かを判定する判定手段としての比較素子２６とを備える。
更に、この検出結果表示部２０は表示手段として、前記比較素子２６の出力が変化するまでの経過時間をカウントするタイマー回路２７と、前記経過時間と化学物質ガス濃度との対応関係を予め記憶したメモリ２８と、前記経過時間及び／またはガス濃度を表示するための表示駆動回路２９、ディスプレイ手段３０を備える。
【００２３】
このように構成された検出結果表示部２０においては、スイッチ２２がオン状態になされると、回路全体に電圧印加され作動開始する。また、回路が作動開始すると同時に、発光ダイオード２４が発光して検出シート２にその光を照射し、タイマー回路２７がカウントを開始する。
一方、フォトトランジスタ２５においては、検出シート２からの反射光を検出し、その結果が比較素子２６において、所定の値と一致するか否かが判定される。即ち、フォトトランジスタ２５及び比較素子２６により、検出シート２の色彩が所定の色彩に変化するか否かが判定される。
【００２４】
ここで、検出シート２が、放散された化学物質に反応し、所定の色彩にまで変化すると、比較素子２６は、その検出情報をタイマー回路２７に出力する。そして、タイマー回路２７は、それに応じてカウント動作を停止する。
この検出結果表示部２０においては、電源投入後からの経過時間等の情報が、ディスプレイ手段３０に表示されるようになされる。即ち、タイマー回路２７によりカウントされる時間情報がリアルタイムに表示駆動回路２９に出力され、その情報がディスプレイ手段３０に表示される。また、タイマー回路２７からの出力は、メモリ２８に出力され、メモリ２８からは経過時間に対応したガス濃度の情報が表示駆動回路２９に出力される。したがって、ディスプレイ手段には、経過時間と共に、放散された化学物質のガス濃度の情報が経過時間に対応して表示される。
【００２５】
以上のように、本発明に係る実施形態によれば、検出シート保持部１０の構造が簡単であるため、設置が容易であり、専門的技能を要せずに、検査対象から放散される化学物質を検出することができる。
また、複数の箇所について検査する場合には、検出シート２のみを交換すればよいため、安価で済み、交換作業も容易であるため効率的に検査を行うことができる。
さらには、検査対象表面から適切な空隙を介して検出シート２が設置され、且つ、スペーサ１及び押さえ板３の開口部１ａ、３ａに適切な隙間５が設けられるため、検査対象から自然に放散される化学物質について、精度よく検出することができる。
また、検出結果表示部２０を設けたことにより、検出シート２の変化を目視により常に監視する必要がない。即ち、ディスプレイ手段３０に表示された結果を確認するのみで、検出シート２における色彩変化までの経過時間や、その時間に対応した濃度変化を知ることができる。したがって、例えば、室内において複数の化学物質検出装置１００を設置すれば、時間経過により変化するガス濃度の状態を比較することができ、その室内において放散される化学物質の状態を全体的に把握することができる。
【００２６】
尚、前記の実施の形態においては、図１、図２に示すようにスペーサ１と押さえ板３とが分離した構成を示したが、この構成に限らず図３、図４に示すようにスペーサと押さえ板が一体形成されてもよい。
その場合、例えば検出シート保持部１０に替えて図３に完成状態が示される検出シート保持部１１は、図２に示すようにスペーサ６と押さえ板７とがそれぞれの端部６ｂ、７ｂにおいて一体的に形成される。押さえ板７は、スペーサ６に対して端部６ｂ、７ｂを軸に回動可能になされている。
【００２７】
また、スペーサ６において、端部６ｂと反対側の端部には鉤状突起６ｃが形成されており、検出シート２を挟んでスペーサ６と押さえ板７とを重ねた際に、図３に示すように、押さえ板７の端部７ｃが前記鉤状突起６ｃに係止するように構成されている。
また、検出シート２を交換する際には、鉤状突起６ｃを手で外側方向に引っ張り、押さえ板７の端部７ｃを上方に持ち上げることにより、再び図４に示すような状態とすることができ、この状態で交換作業を行うようになされている。
【００２８】
尚、図３、図４に示したスペーサ６及び押さえ板７の開口部６ａ、７ａの形状は、図１、図２に示したスペーサ１及び押さえ板３の開口部１ａ、３ａと同じ形状に形成されており、図１に示した場合と同様に、検出シート２を設置した際に、隙間５が形成されるようになされている。
したがって、図３、図４に示す構成によっても、図１、図２に示した構成と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【００２９】
続いて、本発明に係る化学物質検出装置について、実施例に基づきさらに説明する。
【００３０】
［実施例１］
本発明に係る化学物質検出装置について検討するため、先ず、本発明に係る化学物質検出装置が有する検出シートの実用性について検討した。本実験においては、検出シートを試作するにあたり、塩化ヒドロキシルアミン溶液に、メチルオレンジ試薬を入れ、苛性ソーダ水溶液でｐＨを調整しながらｐＨ値を６．８程度に調整し、濾紙に含浸させて、その後乾燥させた。
【００３１】
尚、塩化ヒドロキシルアミンは、ホルムアルデヒドと反応すると、塩酸が分離し、ホルムアルドキシムと水とに分解することが知られている。また、リン酸ヒドロキシルアミンも同様である。メチルオレンジは、ｐＨ４．４〜６．６の間でオレンジ色に発色する。
【００３２】
このため、前記検出シートにホルムアルデヒドを反応させると、分離した塩酸が全体のｐＨ値を酸性方向に下げ、ｐＨ値が６．６以下になるとオレンジが発色して検出シートの色が変化するはずである。
【００３３】
本実験においては、実際に、ホルムアルデヒド雰囲気中に前記検出シートを入れて、その変化を観察した。その結果、０．２ｐｐｍ雰囲気中では投入後３０分、０．１ｐｐｍ雰囲気中では１．５時間、０．０５ｐｐｍ雰囲気中では４時間でオレンジ色に変色した。
本実験の結果、検出シートが変化する時間から、実際の使用においても、試作した検出シートは実用的であることを確認した。
【００３４】
［実施例２］
続いて、検出シート表面に発光ダイオードにより照射して、その反射光をフォトトランジスタにより検出し、Ｒ（赤）、Ｇ（緑）、Ｂ（青）の三色と、Ｈ（色相）の変化について、検出シートに対する目視、及びフォトトランジスタの出力結果（検出レベル）により観察した。検査対象としては、ホルムアルデヒドを放散する部材を用いた。図５のグラフに、フォトトランジスタの出力結果を経過時間と共に示す。
本実験の結果、目視によれば、検査開始後、約１時間で色が変化した。また、このグラフから、約１時間で色相変化が大きく生じていることが確認でき、目視による観察と一致することを確認した。
【００３５】
［比較例１］
前記実施例２における検査対象を、ホルムアルデヒドを放散しない部材に替え、同様に観察した。図６のグラフに、フォトトランジスタの出力結果を経過時間と共に示す。
本実験の結果、目視においても、また、グラフに示すように、フォトトランジスタの検出結果においても、色相あるいはＲ，Ｇ，Ｂのいずれのレベルも大きく変化することはなかった。
以上の実施例の結果から、検出シートの実用性が確認され、また、電気信号により、検出シートの色彩変化を判定できることを確認することができた。したがって、本発明に係る化学物質検出装置によれば、建造物内や室内に放散する揮発性有機化合物の発生源を容易且つ安価に特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明にかかる化学物質検出装置は、建造物内や室内において放散されるホルムアルデヒド等の化学物質の発生源を特定する用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【００３７】
【図１】図１は、本発明に係る化学物質検出装置の全体を示す斜視図である。
【図２】図２は、図１の化学物質検出装置の構成を示す分解図である。
【図３】図１は、本発明に係る化学物質検出装置の他の形態の全体を示す斜視図である。
【図４】図４は、図３の化学物質検出装置の構成を示す分解図である。
【図５】図５は、実施例２の実験結果を示すグラフである。
【図６】図６は、比較例１の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【００３８】
１ スペーサ
１ａ 開口部
１ｂ 突起部
１ｃ 突起部
２ 検出シート
３ 押さえ板
３ａ 開口部
３ｂ 貫通孔
３ｃ 貫通孔
４ 両面テープ
５ 隙間
６ スペーサ
６ａ 開口部
６ｂ 端部
６ｃ 鉤状突起
７ 押さえ板
７ａ 開口部
１０ 検出シート保持部
１１ 検出シート保持部
２０ 検出結果表示部
２１ 電源
２２ スイッチ
２３ 制御回路
２４ 発光ダイオード
２５ フォトトランジスタ
２６ 比較素子
２７ タイマー回路
２８ メモリ
２９ 表示駆動回路
３０ ディスプレイ手段
１００ 化学物質検出装置
【特許請求の範囲】
【請求項１】
検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置において、
前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シートと、
前記検出シートを、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段と、
前記検出シートに光を照射する照射手段と、
前記検出シートからの反射光を検出する受光手段と、
前記受光手段の検出結果により前記検出シートが所定の色彩に変化したことを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とする化学物質検出装置。
【請求項２】
前記照射手段は、電気的に発光する発光素子であり、且つ、前記受光手段は、受光した光を電気信号に変換する光受光素子であることを特徴とする請求項１に記載された化学物質検出装置。
【請求項３】
前記表示手段は、前記判定手段の判定結果として、検出シートの色彩の変化を示す経過時間、及び／または、前記経過時間に比例したガス濃度の変化を表示することを特徴とする請求項１または請求項２に記載された化学物質検出装置。
【請求項４】
前記設置手段は、所定の厚さを有するスペーサと、前記スペーサ上に載置された前記検出シートを上方から押圧し固定する押さえ板とを備え、
前記スペーサと押さえ板には、開口部が形成され、前記開口部の所定領域を塞ぐように前記検出シートが設けられることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれかに記載された化学物質検出装置。
【請求項５】
前記検出シートの平面寸法は、前記開口部の平面寸法よりも小さく形成され、前記開口部は前記検出シートにより完全に塞がれないことを特徴とする請求項４に記載された化学物質検出装置。
【請求項６】
前記検出シートは、前記揮発性化学物質に化学反応する反応液及び試薬が乾燥した状態で含まれる紙、または不織布により形成され、
前記揮発性化学物質に化学反応することにより色彩を変化させることを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれかに記載された化学物質検出装置。
【請求項１】
検査対象から放散される揮発性化学物質の気体を検出する化学物質検出装置において、
前記揮発性化学物質に化学反応し、色彩を変化させる検出シートと、
前記検出シートを、前記検査対象から所定の空隙を介して設置する設置手段と、
前記検出シートに光を照射する照射手段と、
前記検出シートからの反射光を検出する受光手段と、
前記受光手段の検出結果により前記検出シートが所定の色彩に変化したことを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を表示する表示手段とを備えることを特徴とする化学物質検出装置。
【請求項２】
前記照射手段は、電気的に発光する発光素子であり、且つ、前記受光手段は、受光した光を電気信号に変換する光受光素子であることを特徴とする請求項１に記載された化学物質検出装置。
【請求項３】
前記表示手段は、前記判定手段の判定結果として、検出シートの色彩の変化を示す経過時間、及び／または、前記経過時間に比例したガス濃度の変化を表示することを特徴とする請求項１または請求項２に記載された化学物質検出装置。
【請求項４】
前記設置手段は、所定の厚さを有するスペーサと、前記スペーサ上に載置された前記検出シートを上方から押圧し固定する押さえ板とを備え、
前記スペーサと押さえ板には、開口部が形成され、前記開口部の所定領域を塞ぐように前記検出シートが設けられることを特徴とする請求項１乃至請求項３のいずれかに記載された化学物質検出装置。
【請求項５】
前記検出シートの平面寸法は、前記開口部の平面寸法よりも小さく形成され、前記開口部は前記検出シートにより完全に塞がれないことを特徴とする請求項４に記載された化学物質検出装置。
【請求項６】
前記検出シートは、前記揮発性化学物質に化学反応する反応液及び試薬が乾燥した状態で含まれる紙、または不織布により形成され、
前記揮発性化学物質に化学反応することにより色彩を変化させることを特徴とする請求項１乃至請求項５のいずれかに記載された化学物質検出装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００６−４７１３９（Ｐ２００６−４７１３９Ａ）
【公開日】平成１８年２月１６日（２００６．２．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２２９５１５（Ｐ２００４−２２９５１５）
【出願日】平成１６年８月５日（２００４．８．５）
【出願人】（５９２０１００５８）財団法人 総合科学研究機構 (2)
【出願人】（０００２０１４７８）前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】（３０１０７１０２２）
【出願人】（５０１２６７３５７）独立行政法人建築研究所 (28)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年２月１６日（２００６．２．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年８月５日（２００４．８．５）
【出願人】（５９２０１００５８）財団法人 総合科学研究機構 (2)
【出願人】（０００２０１４７８）前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】（３０１０７１０２２）
【出願人】（５０１２６７３５７）独立行政法人建築研究所 (28)
【Ｆターム（参考）】
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