説明

化学的作用基を導入しセラミック粉末及びスラリーを安定化させる方法

【課題】別途のミーリング工程なしでセラミック粉末粒子を満遍なく分散させセラミック粉末らを満遍なく分散させるために必要な多くの工程を画期的に改善することができ、セラミックスラリー製造において粉砕工程が要らなくなるので、セラミック粉末の結晶性に損傷なしに、セラミック粉末粒子を均一に分散させることができ、高品質のセラミックスラリーを製造することができる。
【解決手段】洗浄されたセラミック粉末表面に親核性作用基を形成させる段階、及び上記親核性作用基が形成されたセラミック粉末表面にアジリジン同等体を連鎖重合反応させ末端にアミン基を有するポリマー層でコーティングする段階、とを含むことを特徴とするセラミック粉末コーティング方法、上記セラミック粉末を分散溶媒に酸と一緒に添加して正電荷を形成させ分散性を向上させる方法、上記方法により製造されたセラミック粉末及びセラミックスラリーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高密度のアミン基含有ポリマー層が形成されたセラミック粉末の製造方法、上記方法によって製造されたセラミック粉末が分散溶媒下で安定して高分散されたスラリーの製造方法、および、上記各方法によって製造されたセラミック粉末及びスラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、セラミック粉末を溶液上で安定するよう高分散させるための様々な方案が提示されたが、主に物理的な方法で達成しようとした。例えば、特許文献1には、セラミック粉末粒子の結晶性に過度な損傷を与えないながら、セラミック粉末粒子を均一に分散させたスラリーを製造するスラリー高圧分散方法に関することが開示されている。しかし、上記特許文献1はボール、ビードなどの分散媒体を利用する媒体型分散法を適用したが、高圧条件下で分散させざるを得ない不便が伴う。
【0003】
また、特許文献2にはビニル系単量体を重合反応させ水及び有機溶剤上でセラミック粉末をスラリーに作る方法に関する技術が記載されているが、ここでも粉末の分散のためにセラミック粉末と溶媒をボール-ミル装備で長期間の間混合研磨して分散スラリーを得る不便な作業を含んでいる。
【0004】
さらに、特許文献3には化学的方法として、反応性で、水可溶性のセラミック懸濁液に少なくとも一つの水酸基及びカルボキシル基のような官能基を有する有機化合物を添加するセラミック懸濁液の安定化方法が記載されているが、上記方法はセラミック懸濁液に特定物質を添加してコロイド状のセラミック粒子を安定化するものであって、セラミック粒子を特定処理することについては記載されていない。
【0005】
近年行われているナノ技術の発展でナノメーターレベルでセラミック粒子の大きさが制御できる生産が可能になったが、ミクロメーター及びナノメーターレベルの大きさの粒子粉末を分散媒質全体に満遍なく分散させることは容易でなく多様な製品の生産工程に応用するのは難しい。
【特許文献1】米国特許第6579394号明細書
【特許文献2】特開1997−11212号公報
【特許文献3】特開1996−47917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1目的はセラミック粉末表面にアミン基がコーティングされたセラミック粉末をコーティングする方法を提供することである。
【0007】
本発明の第2目的は上記アミン基がコーティングされたセラミック粉末に正電荷を形成して分散溶媒でセラミック粒子の分散性を向上させる方法を提供することである。
【0008】
本発明の第3目的は上記各方法で製造されたセラミック粉末及びスラリーを提供することである。
【0009】
さらに、本発明の第4目的は上記セラミックスラリー組成物を用いたセラミックスラリーグリーンシート及び多層セラミック電子部品を提供することである。
【0010】
より具体的には、ナノメーターレベルのセラミック粒子の均一な分散液を得る過程においてミーリング工程のような機械的混合/研磨工程なしでセラミックナノ粒子粉末を分散媒質に均一に分散させることが可能な方法を提供することを目的とするものであって、ナノメーター大きさのセラミック粒子表面に化学的作用基を導入した後溶媒の化学的環境を変化させ生成させた高密度の表面電荷量を有する粒子らを相互間の静電気的斥力を利用して溶液上に安定的に分散させる方法に関する。また、分散媒質として水を用いて有機溶媒の使用を減らすことができ、親環境的な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1具現例として、洗浄されたセラミック粉末表面に親核性作用基を形成させる段階、及び上記親核性作用基が形成されたセラミック粉末表面にアジリジン同等体を連鎖重合反応させアミン基をコーティングする段階、とを含むことを特徴とするセラミック粉末コーティング方法が提供される。
【0012】
本発明の第2具現例として、第1具現例によって形成されたアミン基がコーティングされたセラミック粉末表面を極性溶媒下で酸触媒を添加し正電荷を形成することを特徴とするセラミック粉末スラリーの安定化方法が提供される。
【0013】
本発明の第3具現例として、親核性作用基を有するセラミック粒子表面がポリエチレンイミンポリマー層でコーティングされたセラミック粉末が提供される。
【0014】
本発明の第4具現例として、ポリエチレンイミンポリマー層でコーティングされたセラミック粒子をコーティングするポリエチレンイミンポリマー末端のアミン基に正電荷が形成されたセラミックスラリーが提供される。
【0015】
本発明の第5具現例として、上記セラミック粉末スラリー組成物を利用したセラミックスラリーグリーンシート及びこれを用いた多層セラミック電子部品が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セラミック粒子を満遍なく分散させるための別途のミーリング工程が不要になり、セラミックスラリーを製造するにあたってセラミック粉末の結晶性に損傷を与えず、セラミック粉末粒子を均一に分散させることができ、これにより高品質のセラミックスラリーが製造できる優れた効果を得ることができる。
【0017】
また、分散媒質として水を用いることにより有機溶媒の使用を減らすことができるので環境親和的な効果を得ることができる。
【0018】
さらに、セラミック粉末が高分散されたスラリーが利用できるようになり、高品質のセラミックスラリーグリーンシート及び多層セラミック電子部品が製造できる優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態をより詳しく説明する。
【0020】
本発明の一の実施形態として、洗浄されたセラミック粉末表面に親核性作用基を形成し、上記親核性作用基が形成されたセラミック粉末表面にアジリジン同等体を連鎖重合反応させることによりセラミック粉末表面をアミン基でコーティングすることができる。
【0021】
本実施形態で用いられるセラミック粉末は酸素原子が含有されたものであれば特別な制限なしに用いることができる。例えば、これに限定するわけではないが、チタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系またはチタン酸鉛系などの誘電体セラミック粉末、アルミナまたはシリカなどの絶縁体セラミック粉末、フェライト系などの磁性体セラミック粉末または圧電体セラミック粉末などを用いることができる。
【0022】
本実施形態において、セラミック粒子の平均粒径は特別に制限しない。通常、セラミック電子部品の製造に用いられるセラミック粉末の平均粒径(電子顕微鏡で測定した平均の一次粒径)は0.001−1.0μmの範囲内であるものが好ましいが、本実施形態は平均粒径が0.001−1.0μmの範囲を外れない場合にも適用することができる。
【0023】
本実施形態においてセラミック粉末に対する機械的処理工程(ミーリング工程など)は要しない。しかし、セラミック粉末が初期から巨大に凝集されている場合には簡単な機械的処理ができる。
【0024】
本具現例の一見地として、上記セラミック粉末表面に親核性作用基を形成する段階はセラミック粉末表面を有機溶媒及び/又は酸性溶液を用いて洗浄した後乾燥することにより親核性作用基を形成することができる。
【0025】
上記洗浄液として有機溶媒には例えば、これに限定するわけではないが、ケトン基を含むアセトン、ヒドロキシル基を含むエタノールまたはメタノールなどの酸素原子を含む有機溶媒であれば制限なしに用いることができる。また、上記酸性溶液には塩酸、窒酸、硫酸などの無機酸または酢酸、酪酸、パルミチン酸、蓚酸、酒石酸などの有機酸(カルボキシ酸)を用いることができ、酸性を示す溶液であればpHに関係なく広範囲で用いることができる。本実施形態において洗浄液には酸性溶液がより好ましく用いることができる。
【0026】
このような有機溶媒または酸性溶液を用いて酸素原子を有するセラミック粉末を洗浄した後乾燥することで、図1に示すように上記セラミック粉末表面に親核性作用基が活性化される。この際、上記親核性作用基にはヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)及びアミン基(-NH2)から構成された群より選択される作用基を挙げることができ、本実施形態においてより適するように用いることが可能な親核性作用基にはヒドロキシル基(-OH)が挙げられる。
【0027】
上記のような洗浄及び乾燥段階によって表面に親核性作用基が形成されたセラミック粉末はアジリジン同等体と反応溶媒下で連鎖重合反応してその粒子表面がアミン基でコーティングされる。この際、上記反応を促進するために酸触媒を添加することができる。
【0028】
上記アジリジン同等体は下記化学式[化1]に表示されるアジリジンまたは下記化学式[化2]に表示されるハロエチルアミンなどを挙げることができる。ここで、下記化学式[化2]においてXはCl、BrあるいはIである。
【化1】

【化2】

【0029】
上記親核性作用基とアジリジン同等体との重合反応に用いられる反応溶媒にはジクロルメタン、クロロホルム、ヘキセン及びトルエンなどから構成された群より選択された溶液を用いることができ、より好ましくはジクロルメタンを反応溶媒として用いることができる。上記のような反応溶媒下でセラミック粉末粒子表面に形成された親核性作用基とアジリジン同等体の窒素原子が反応するようになり、以後アジリジン同等体は開環重合反応によって連鎖的に反応するようになる。このような重合反応が起こることでセラミック粉末表面に分枝鎖が形成される。特に上記分枝は窒素原子で連鎖的に反応が起こり、高分枝状態のポリマー、すなわち、末端にアミン基を有するポリエチルイミンを形成するようになる。
【0030】
上記のような重合反応を促進するために添加される酸触媒には塩酸、窒酸、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸、酪酸、パルミチン酸、蓚酸、酒石酸などの有機酸を挙げることができ、これに限定されるわけではない。
【0031】
上記重合反応の条件として、洗浄乾燥されたセラミック粉末粒子をアジリジン及び選択的に酸触媒を反応溶媒に混合した後、不活性気体雰囲気下で加熱する。上記不活性気体にはヘリウム、窒素、ネオン、アルゴンなどを挙げることができる。
【0032】
この際、温度50−100℃範囲内で10分〜30時間程加熱することができる。より好ましくは65−75℃範囲内で30分〜10時間程加熱することができる。加熱温度が50℃未満の場合には反応性が悪く、100℃を超過する場合にはコーティング性が落ちるので、上記温図範囲内で反応するのが好ましい。また、加熱時間においても、上記範囲を外れない場合同じ問題が生じ、好ましくない。
【0033】
上記表面にアミン基を有するポリエチレンイミンでコーティングされたセラミック粒子を乾燥して、重合体層でコーティングされたセラミック粉末を得ることができる。この際、室温で乾燥するのが好ましく、乾燥方法には本実施形態が属する分野において通常行われる方法を用いて乾燥することができ、より好ましくは真空乾燥方法を用いることができる。
【0034】
一級アミンの表面密度を測定すれば、分枝発生可否を判断することができる。一級アミンの生成可否を確認する方法は、4-ニトロベンズアルデヒドと一級アミンとの反応による4-ニトロベンズアルジイミンの生成による。生成されたイミンの284nmにおける吸光度変化を調査して一級アミンの生成可否を確認することができる。すなわち、イミン化合物を形成し、高いアミン密度を有するのはアジリジンの開環反応後分枝が形成されていることを表す。この際、本実施形態によるセラミック粉末粒子表面の場合4-ニトロベンズアルジイミンの284nmにおける吸光度は0.4−0.7の範囲を有する。これを以って、本実施形態によってセラミック粉末表面にはアミン基を含むポリエチレンイミンが高密度で存在することが判る。
【0035】
こうすることにより、セラミック粉末表面をアミン基を含むポリエチレンイミンの重合体層でコーティングすることができる。このような重合体層でコーティングされたセラミック粉末を用いることで分散溶媒内で酸触媒添加によって分散性を向上させるという本実施形態の他の一目的を達成することが可能になる。
【0036】
本実施形態の他の一具現例として、上記表面に高密度のアミン基を有する分子層が形成されたセラミック粉末を極性溶媒下で酸触媒を添加することにより、分子層末端に正電荷が形成された安定した高分散性セラミックスラリーを得ることができる。
【0037】
上記セラミックスラリーにおいて、本実施形態によって製造されたものとして高密度のアミン基を有する分子層が形成されたセラミック粉末を用い、上記セラミック粉末は30−50重量%の範囲で含むことができる。
【0038】
上記セラミックスラリーにおいて、上記極性溶媒には化学的作用基で表面コーティングされたセラミック粒子が分散されやすい極性溶媒であれば特別に制限されない。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール類、エーテル類、ケトン類及びこれらの混合物から構成された群より選択された溶媒を用いることができる。上記極性溶媒中で好ましくは水または水と上記極性溶媒の混合溶媒を用いることができる。溶媒として、水を単独または一緒に用いることで有機溶媒の使用を減らすことができるので親環境的な効果を得ることができる。上記極性溶媒は50−70重量%の範囲で含むことができる。
【0039】
上記酸触媒は塩酸、窒酸、硫酸などの無機酸または酢酸、酪酸、パルミチン酸、蓚酸、酒石酸などの有機酸を用いることができる。好ましくは無機酸を用いることができ、特に好ましくは塩酸を用いることができる。上記酸触媒はセラミックスラリー100重量%に対して0.01−1.0重量%の範囲内で添加することができ、より好ましくは0.05−0.5重量%、特に好ましくは0.07−0.3重量%の範囲内で添加することができる。
【0040】
上記のように、化学的にコーティングさせたセラミック粉末を分散溶媒下で酸触媒を添加すると、図1に示すようにセラミック粒子表面をコーティングするポリエチレンイミン末端のアミン基は正電荷を示すようになる。図2に示すように溶媒上で電荷を示すようになったセラミック粒子は粒子間の強い静電気的反発力によって分散溶媒上で安定するように分散される。
【0041】
上記分散溶媒にはバインダーを添加することができる。上記バインダー成分には本実施形態が属する技術分野において通常用いる成分を添加することができる。より具体的にはポリビニルブチラル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、ビニルアセタート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが一般的に用いられている。一般的に、これらバインダーと上記分散溶媒を混合、撹拌することにより作製されたバインダー溶液が用いられる。
【0042】
上記バインダーを添加するタイミングは特別に制限されない。すなわち、上記バインダーを分散溶媒に予め混合しても良いし、セラミック粉末を分散溶媒に分散させる際混合しても良い。
【0043】
図4は、表面をコーティングしたシリカ粉末(a)と表面をコーティングしていない粉末(b)を水溶液上で分散させた後乾燥した粒子の凝集状態を示すSEM写真である。本実施形態では、セラミック粉末表面に形成された正電荷によってセラミック粒子間に斥力が作用して分散溶媒で均一に分散されるので、バインダーを添加した状態での粉砕工程を要しない。従って、図4(a)のように、セラミック粉末粒子に損傷を与えないながらセラミック粉末を均一に分散させることが可能になり、高品質のセラミックスラリーを製造することができる。また、本実施形態において、分散溶媒は酸以外の分散剤を要しない。しかし、必要によっては上記酸以外の他の分散制を含むことができる。この際、添加可能な分散剤の種類と量は特別に限定せず、目標とするセラミックグリーンシートの種類によって本実施形態が属する分野において通常用いる分散剤を適切に選択して添加することができる。
【0044】
本実施形態のセラミックスラリーは可塑剤を添加することができる。上記可塑剤には、本実施形態が属する分野において通常用いる可塑剤を添加することができ、具体的にはポリエチレングリコール、フタル酸エステル(phthalic ester) 及びアルキド樹脂(alkyd resin)を挙げることができるが、これらに制限されるわけではない。可塑剤の種類と量は目標とするセラミックグリーンシートの種類によって選択するのが好ましい。
【0045】
本実施形態のセラミックスラリーは帯電防止剤をさらに含んでも良い。本実施形態に用いられる帯電防止剤は一般的にセラミックスラリーに用いられるものの中のいずれになることもあり得る。
【0046】
さらに、本実施形態のセラミックスラリーには上記分散剤、可塑剤、帯電防止剤以外にその他添加剤を添加することができる。
【0047】
本実施形態の一具現例として、上記セラミック粉末が均一に分散された安定したセラミックスラリーを用いて高品質のセラミックスラリーグリーンシートを製造することができる。本実施形態のグリーンシートを製造する方法には上記セラミックスラリーを用いる限り、特別に制限されず、通常行われる方法を用いて製造することができる。
【0048】
本実施形態の他の一具現例として、上記セラミックスラリーグリーンシートを用いたセラミック電子部品を得ることができる。
[実施例]
【0049】
以下、本実施形態について実施例を通じて具体的に説明する。下記実施例は本実施形態の一例に過ぎないものであって、本実施形態をこれに以って限定するわけではない。
【実施例1】
【0050】
10gのシリカ粉末をpH2の塩酸水溶液できれいに洗浄してから水で洗った後に乾燥した。上記セラミック粉末を2mlのアジリジン、触媒量(混合溶液総重量を期準に0.1重量%)の酢酸及びジクロルメタン100mlの混合物に添加した後、上記混合物を撹拌しながら、窒素雰囲気下でシールドチューブ(sealed tube)を用いて20時間の間70℃で加熱した。
【0051】
アジリジンと表面反応させたセラミック粉末をジクロルメタン及びメタノールを用いて洗浄した後、室温で真空乾燥し、粒子表面に高密度のポリエチレンイミン層が形成されることによりコーティングされたセラミック粉末を得た。
【実施例2】
【0052】
シリカ粉末代わりにチタン酸バリウム粉末を用いたことを除いては実施例1と同じ方法で行った。
【実施例3】
【0053】
[開環重合反応による高密度のアミン基含有分子層の生成確認試験]
実施例1によるシリカ粉末を無水エタノールに添加し微量の酢酸を触媒として用いて4-ニトロベンズアルデヒドと反応させセラミック粒子の表面上にイミンを形成した。以後、イミンを形成した基質をエタノールから取り出してきれいに洗浄して真空乾燥した後、これを再び蒸溜水に浸して、60℃で6時間放置し4-ニトロベンズアルジイミンを形成した。こうして準備した水溶液を紫外線分光器を利用して、生成された4-ニトロベンズイミンの284nmにおける吸光度変化を調査してその結果を図3に表した。図3に示すように284nmで明らかな吸光度変化が表された。
【0054】
上記結果から一次アミンの存在を確認することができ、また吸光度の強さからアミンの密度を換算することで高いアミン密度を有することが判る。これは実施例1のシリカ粉末表面でアジリジンが開環重合反応によって高密度のアミン基含有ポリエチレンイミン分子層が生成されたことを表す。
【0055】
これは実施例3のチタン酸バリウム粉末に対してもこれと類似する結果が得られることが判る。
【実施例4】
【0056】
実施例1において表面処理したシリカを脱イオン水(pH5) に加え、分散させた。
【実施例5】
【0057】
実施例1において表面処理したシリカを脱イオン水に塩酸を添加した水溶液(pH2)に加え、分散させた。
【実施例6】
【0058】
[粒子の運動性測定]
pH5(実施例4)及びpH2(実施例5)において分散されたシリカ粉末に対して光散乱測定法を利用して粒子の運動性を測定した。その結果を図5及び表1に表した。
【0059】
図5は、pH2とpH5において時間による相関関数を表し、表1はpH2及びpH5における平均粒子分布を表す。pH5において相関強さ(correlation Intensity)は0−2秒範囲内で1.0−2.3程度を表し、平均粒子大きさは750nmである一方、pH2においては相関強さが0−1秒範囲で1.05−1.5程度であり、平均粒径は238nmを表す。これから低いpHにおいて粒子の安全性が向上され分散性が向上されることが判る。以下の表1および表2に分布分析(Distribution analysis)を示す。
【表1】

【表2】

【0060】
上記結果のように化学的作用基を導入して安定化させたセラミック粉末及びスラリーは分散性が優れることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】親核性作用基の形成、ポリエチレンイミンのコーティング及びアミン基末端に正電荷が形成される順に従ったセラミック粒子表面を概略的に示す図面である。
【図2】粒子表面の正電荷によってセラミック粒子間に作用する斥力を概略的に示す図面である。
【図3】開環重合反応によるアミン基含有分子層の生成確認のための284nmにおける吸光度変化を表したグラフである。
【図4】表面をコーティングしたシリカ粉末(a)と表面をコーティングしていない粉末(b)を水溶液上で分散させた後乾燥した粒子の凝集状態を示すSEM写真である。
【図5】表面コーティングしたシリカ粉末をpH2及びpH5で分散させ光散乱測定法を利用して得た粒子の運動性を時間による相関関数で表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄されたセラミック粉末表面に親核性作用基を形成させる段階、及び
上記親核性作用基が形成されたセラミック粉末表面にアジリジン同等体を連鎖重合反応させ末端にアミン基を有するポリマー層でコーティングする段階、と
を含むことを特徴とするセラミック粉末コーティング方法。
【請求項2】
上記セラミック粉末は酸素原子を含むことを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項3】
上記セラミック粉末はチタン酸バリウム系、チタン酸ストロンチウム系、チタン酸鉛系などの誘電体セラミック粉末、フェライト系などの磁性体セラミック粉末、圧電セラミック粉末、あるいはアルミナ、シリカなどの絶縁体セラミック粉末であることを特徴とする請求項2に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項4】
上記親核性作用基はセラミック粉末表面を有機溶媒及び/又は酸を添加した水を用いて洗浄した後乾燥することにより形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項5】
上記親核性作用基はヒドロキシル基(-OH)、チオール基(-SH)またはアミン基(-NH)であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項6】
上記アジリジン同等体はアジリジンまたはハロエチルアミンであることを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項7】
上記アミン基を有するポリマー層はセラミック粒子表面の親核性作用基にアジリジン同等体が開環重合反応して形成されたポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項8】
上記開環重合反応時、反応溶媒はジクロルメタン、クロロホルム、へキセン、あるいはトルエン溶液であることを特徴とする請求項7に記載のセラミック粉末コーティング方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項の方法によってコーティングされたセラミック粉末及び酸触媒を極性溶媒に添加して正電荷を形成させることを特徴とするセラミックスラリーの安定化方法。
【請求項10】
上記極性溶媒は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール類、エーテル類、あるいはケトン類であることを特徴とする請求項9に記載のセラミックスラリーの安定化方法。
【請求項11】
上記酸触媒は塩酸、窒酸、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸、酪酸、パルミチン酸、蓚酸、酒石酸などの有機酸であることを特徴とする請求項9に記載のセラミックスラリーの安定化方法。
【請求項12】
上記酸触媒の含量は0.01ないし1重量%の含量であることを特徴とする請求項9に記載のセラミックスラリーの安定化方法。
【請求項13】
親核性作用基が形成されたセラミック粒子表面がポリエチレンイミンのポリマー層でコーティングされたことを特徴とするセラミック粉末。
【請求項14】
上記ポリエチレンイミン分子でコーティングされたセラミック粉末を4-ニトロベンズアルデヒドと反応させ生成された4-ニトロベンズアルジイミン(4−Nitrobenz aldiimine)の284nm波長における吸光度が0.4−0.7であることを特徴とする請求項13に記載のセラミック粉末。
【請求項15】
ポリエチレンイミンポリマー層で表面コーティングされたセラミック粉末30-50重量%及び分散溶媒50-70重量%を含む溶液100重量%に対して酸触媒0.01−1.0重量%を含むことを特徴とするセラミックスラリー。
【請求項16】
上記セラミック粉末は粒子表面に正電荷が形成されたことを特徴とする請求項15に記載のセラミックスラリー。
【請求項17】
請求項15又は請求項16によるセラミックスラリーを用いたセラミックスラリーグリーンシート。
【請求項18】
請求項17によるセラミックスラリーグリーンシートを用いた多層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−184864(P2010−184864A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100349(P2010−100349)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【分割の表示】特願2006−117242(P2006−117242)の分割
【原出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】