説明

化学的耐性を有する建築用化学製品の製造のための無機バインダー系

少なくとも1つの潜在水硬性バインダー、少なくとも1つの非晶質シリカ、場合により、少なくとも1つの反応性充填剤、及び少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩を有する新規のバインダー系が提供される。驚くべきことに、本発明におけるバインダー系は、耐酸性、耐水性及び耐アルカリ性のハイブリッドマトリックスの形態で硬化することが見出された。バインダー系は、水硬性のモルタルの製造において使用可能であり、硬化、7日間の硬化に続く、酸、塩基及び/又は水中における3日間の貯蔵後、DIN EN 13888に従って測定された、15Nmm−2を上回る、好ましくは20Nmm−2を上回る、特に、25Nmm−2を上回る圧縮強度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無機バインダー系、水硬性モルタルの製造のための前記バインダー系の使用、及びこのバインダー系を含むモルタルに関する。
【0002】
ポルトランドセメントは、英国特許BP5022で最初に言及され、それ以降さらなる発展を続けている。近年のポルトランドセメントは、約70質量%のCaO+MgO、約20質量%のSiO並びに約10質量%のAl+Feを含んでいる。その高いCaO含有量により、ポルトランドセメントは水硬性である。硬化されたポルトランドセメントは、耐アルカリ性を有するものの、耐酸性は有していない。
【0003】
潜在水硬性バインダーとして、金属加工からのある一定のスラッグは、例えば、水ガラスのような強アルカリを用いて活性化させることができ、又はポルトランドセメントに対する混和剤として使用できる。充填剤(ケイ砂又は対応する粒度を有する骨材)及び添加剤との混合により、それらはモルタル又はコンクリートとして使用できる。典型的な潜在水硬性バインダーである高炉スラグは、原則として、約30〜45質量%のCaO、約4〜17質量%のMgO、約30〜45質量%のSiO及び約5〜15質量%のAlを有し、典型的には、約40質量%のCaO、約10質量%のMgO、約35質量%のSiO及び約12質量%のAlを有している。硬化した製造物は、一般的に水硬した系の特性を有している。
【0004】
水性アルカリ媒体中で硬化する、AlとSiOとの組み合わせをベースとする、反応性のある水不溶性の酸化物に基づく無機バインダー系は、一般的に公知である。そのようなバインダー系は、ジオポリマーとしても呼ばれており、例えば、US4349386、WO85/03699及びUS4472199に記載されている。そのような系は、原則として、50〜60質量%のSiO、20〜25質量%のAl、CaO不含及び15〜30質量%のMO(M=Na、K)を有している。
【0005】
メタカオリン、スラッグ、フライアッシュ、活性白土又はそれらの混合物は、反応性酸化物の混合物として使用し得る。バインダーを活性化するためのアルカリ媒体は、通常、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属フッ化物、アルカリ金属水酸化物及び/又は溶解性水ガラスの水溶液からなる。硬化されたバインダーは、高い機械的安定度を有する。セメントと比較して、硬化されたバインダーは、より経済的でより耐性があり、より有利なCO排出バランスを有し得る。そのような系は、原則として、耐酸性の見込みはより高く、耐アルカリ性の見込みはより低い。
【0006】
WO08/012438には、クラスFの低−CaOフライアッシュ、高炉スラグ及び1.28より大きい、好ましくは1.45より大きいSiO:MOの比の値を有する水性アルカリ金属ケイ酸塩を基礎とする更なるジオポリマーセメントが記載されている。実施例において無水酸化物に基づいて計算すると、約45〜50質量%のSiO、20〜26質量%のAl、約9〜10質量%のCaO及び3〜4質量%のKOが存在する。
【0007】
本発明者らは、上述の従来技術の少なくともいくつかの欠点の本質的な回避を課題として設定した。特に、本発明の課題は、硬化された状態で、高い機械的強度を有しかつ耐水性、耐酸性及び耐アルカリ性を有する無機バインダー系を提供することであった。特に、硬化された系は、これらの特性を、比較的早い段階、特に、ほんの7日後でさえも有するべきであり、かつ室温で、好ましくは10度と同じくらい低い温度でさえも硬化するべきである。
【0008】
EP1236702には、化学物質に対して耐性があるモルタルの製造用の、潜在水硬性バインダー、水ガラス及び調節剤としての金属塩をベースとする水ガラス含有の建築材料混合物が記載されている。スラグ砂もまた、潜在水硬性成分として使用できる。アルカリ金属塩、特に、リチウム塩が述べられており、かつ金属塩として使用されている。
【0009】
EP1081114には、化学物質に対して耐性のあるモルタルの製造のための水ガラス粉末及び少なくとも1つの水ガラス硬化剤を含有している建築材料混合物が記載されている。さらに、少なくとも1つの潜在水硬性バインダーは、10質量%を上回って存在し、かつ建築材料混合物は、少なくとも1つの無機充填剤を有している。
【0010】
EP0457516において、アルカリ金属ケイ酸塩、金属酸化物及び金属炭酸塩、及び場合により、とりわけ、マイクロシリカを含んだ耐火性、防水性、耐酸性バインダーが記載されている。これらの系において、金属酸化物は、硬化促進剤として使用されている。
【0011】
上述の課題は、独立請求項に記載した特徴によって達成される。従属請求項は、有利な実施形態に関する。
【0012】
驚くべきことに、本発明による無機バインダー系は、耐酸性、耐水性及び耐アルカリ性のハイブリッドマトリックスの形態で硬化することが見出された。
【0013】
本発明は、少なくとも1つの潜在水硬性バインダー、少なくとも1つの非晶質シリカ、場合により、少なくとも1つの反応性充填剤及び少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩を含む無機バインダー系を提供する。
【0014】
本発明の無機バインダー系は、好ましくは、10〜30質量%の潜在水硬性バインダー、5〜22質量%の非晶質シリカ、0〜15質量%の反応性充填剤及び3〜20質量%のアルカリ金属ケイ酸塩を有する。
【0015】
より好ましくは、本発明の無機バインダー系は、10〜30質量%の潜在水硬性バインダー、5〜20質量%の非晶質シリカ、0〜15質量%の反応性充填剤及び3〜20質量%のアルカリ金属ケイ酸塩を有する。
【0016】
特に好ましくは、本発明の無機バインダー系は、15〜25質量%の潜在水硬性バインダー、5〜17質量%の非晶質シリカ、0〜10質量%の反応性充填剤及び4〜15質量%のアルカリ金属ケイ酸塩を有する。
【0017】
本発明の文脈上、潜在水硬性バインダーは、好ましくは、(CaO+MgO):SiOのモル比の値が0.8〜2.5の間、特に好ましくは、1.0〜2.0の間のバインダーを意味するものとして理解される。特に、潜在水硬性バインダーは、高炉スラグ、スラグ砂、粉砕高炉スラグ、電熱式燐スラグ及び鉄鋼スラグから選択される。
【0018】
高炉スラグは、高炉プロセスの廃棄物である。スラグ砂は粗砕された高炉スラグであり、粉砕高炉スラグは微粉化された高炉スラグである。粉砕高炉スラグは、その粉砕精細度及び粒度分布の点で、起源及び製造形態に応じて変化し、前記粉砕精細度は反応性に影響する。200〜1000mkg−1、好ましくは、300〜500mkg−1の規模のオーダーが典型的である、いわゆる、ブレーン値が、粉砕の精細度の指標として使用されている。高炉スラグの典型的な組成は、上述の通りである。
【0019】
電熱式燐スラグは、電熱式燐製造物の廃棄物である。電熱式燐スラグは、高炉スラグより反応性は劣り、約45〜50質量%のCaO、約0.5〜3質量%のMgO、約38〜43質量%のSiO、約2〜5質量%のAl及び約0.2〜3質量%のFe並びにフッ化物及びリン酸塩を含有している。鉄鋼スラグは、様々な鉄鋼の製造工程の廃棄物であり、組成は大きく異なっている(Caijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali-Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pages 42-51参照)。
【0020】
非晶質シリカは、好ましくは、X線−非晶質シリカ、すなわち、粉末回折法において結晶性を示さないシリカである。特に、非晶質シリカは、沈降シリカ、熱分解法シリカ及びマイクロシリカ、並びに、本発明の文脈上、非晶質シリカとして考慮されているものと同様のガラス粉末から選択される。
【0021】
本発明による非晶質シリカは、好適には、少なくとも80質量%、好ましくは、少なくとも90質量%のSiOの含有量を有している。沈降シリカは、水ガラスから出発した沈殿工程を介して工業的に得られる。沈降シリカは、製造工程に依存して、シリカゲルとも呼ばれる。熱分解法シリカは、酸水素炎中で、例えば、四塩化珪素のようなクロロシランの反応によって生成される。熱分解法シリカは、5〜50nmの粒径及び50〜600m−1の比表面積を有する非晶質SiO粉末である。
【0022】
マイクロシリカ(シリカヒュームとも呼ばれる)は、シリコン又はフェロシリコン製造の副産物であり、その上、大部分は非晶質のSiO粉末を有している。粒子は0.1μm規模のオーダーの粒径を有している。比表面積は、20〜25m−1規模のオーダーである(Caijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali-Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pages 60-61参照)。一方、商業上、入手可能なケイ砂は結晶質であり、比較的大きい粒子及び比較的小さい比表面積を有する。本発明においては、単に、不活性の骨材として供給される。
【0023】
反応性充填剤は、任意成分である。反応性充填剤は、好適には、ポゾラン活性を有する物質である。ポゾラン活性のための試験は、DIN EN 196 part5に基づいて実施し得る。本発明において適切なポゾランの概要は、Caijun Shi, Pavel V. Krivenko, Della Roy, Alkali-Activated Cements and Concretes, Taylor & Francis, London & New York, 2006, pages 51-60及びpages 61-63において見出せる。好ましくは、反応性充填剤は、渇炭フライアッシュ、石炭フライアッシュ、メタカオリン、火山灰、凝灰岩、火山土、ポゾラン及びゼオライトから選択される。メタカオリン並びにクラスCのフライアッシュ(渇炭フライアッシュ)及びクラスFのフライアッシュ(石炭フライアッシュ)が特に好ましい。
【0024】
メタカオリンは、カオリンの脱水において形成される。カオリンは、100〜200℃で水との物理的な結合が切り離される一方で、脱水が、格子構造の崩壊及びメタカオリン(AlSi)の形成とともに500〜800℃で生じる。したがって、純粋なメタカオリンは、約54質量%のSiO及び約46質量%のAlを含有している。フライアッシュは、とりわけ、発電所での石炭の燃焼において形成される。WO08/012438において、クラスCのフライアッシュは、約10質量%のCaOを含有し、一方、クラスFのフライアッシュは、8質量%未満、好ましくは、4質量%未満、典型的には、約2質量%のCaOを含有している。ここで、WO08/012438の教示は、この範囲で参照をもって開示されたものとする。
【0025】
適切なハイブリッドマトリックスの確立において、特に、原材料の選択及びそれらの質量割合は重要である。適切な選択として、本発明における無機バインダー系は、原則的に、固体ベースに計算した以下の組成を有する:
30〜70質量%のSiO
2〜30質量%のAl
5〜30質量%のCaO、及び
5〜30質量%のMO、
好ましくは、
30〜65質量%、好ましくは45〜60質量%のSiO
5〜30質量%、好ましくは5〜15質量%のAl
5〜30質量%、好ましくは12〜28質量%のCaO、及び
5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%のM
である。
【0026】
最も良い結果は、12〜25質量%のCaOを含む場合に得られる。
【0027】
硬化のために必要な水の量は、(無水)無機バインダー系の全質量に対して、好適には、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量である。すなわち、硬化のために必要な水の量は、無機バインダー系の構成成分としてみなされない。
【0028】
アルカリ金属ケイ酸塩は、実験式mSiO・nMOを有する化合物又はその混合物から選択され、その際、MはLi、Na、K又はNH、好ましくは、Na又はKである。
【0029】
m:nのモル比の値は、好適には、3.6以下、好ましくは3.0以下、特に2.0以下である。より好ましくは、m:nのモル比の値は、1.70以下、特に、1.20以下である。
【0030】
アルカリ金属ケイ酸塩は、好ましくは水ガラス、特に好ましくは、液体の水ガラスで、特に、ナトリウム又はカリウムの水ガラスである。しかしながら、リチウム又はアンモニウムの水ガラス及びその混合物も使用してもよい。液体の水ガラスの場合、上述した質量部は、これらの水ガラスの固体含量をベースとして計算され、原則として、20質量%〜60質量%の、好ましくは30〜50質量%の固体である。
【0031】
上述したm:nの比の値(モジュラスとも呼ばれる)を、好ましくは上回るべきではなく、さもないと、成分の完全な活性化はもはや期待できない。著しく低いモデュライ(moduli)、例えば、約0.2のようなモデュライも使用してもよい。より高いモデュライを有する水ガラスは、使用する前に適切な水性アルカリ金属水酸化物で調整するべきである。カリウムの水ガラスは、強い吸湿性のため、適切なモジュラス範囲においては、商業上、大部分は水溶液として入手可能であり、ナトリウムの水ガラスは、適切なモジュラス範囲においては、商業上、固体としても入手可能である。
【0032】
アルカリ金属ケイ酸塩又は水ガラスが固体の場合、無機バインダー系は、1成分系として適切に配合させることが可能で、その後、水の添加により硬化させることができる。この場合、潜在水硬性バインダー、非晶質シリカ、任意の反応性充填剤、及びアルカリ金属ケイ酸塩は、1成分として一緒に存在している。
【0033】
しかしながら、水ガラスは、水溶液の形態で使用することもできる。この場合、無機バインダー系は、2成分系として適切に配合され、通常、潜在水硬性バインダー、非晶質シリカ、任意の反応性充填剤は、第1の成分として存在し、少なくとも硬化のために必要な水の量を含んだ水ガラス溶液は、第2の成分として存在している。少なくともカリウムの水ガラスの場合、この実施形態が好ましい。
【0034】
不活性充填剤及び/又はさらなる添加剤が、本発明における無機バインダー系において付加的に存在してもよい。これらの任意の成分は、モルタル又はコンクリートの製造においてのみ、代替的に付加させることもできる。
【0035】
好ましくは、0〜80質量%、特に好ましくは、30〜70質量%の不活性充填剤及び/又は0〜15質量%の添加剤が存在してもよく、あるいはモルタル又はコンクリートの製造中に添加してもよい。これらの質量データは、(無水)無機バインダー系の固体の全質量をベースとしている。すなわち、不活性充填剤及び/又はさらなる添加剤は、無機バインダー系の構成成分とはみなされない。
【0036】
一般的に知られている、例えば、石英、石灰岩、重晶石又は粘土をベースとする砂利、砂及び/又は粉末、特に、ケイ砂は、不活性充填剤としてふさわしい。パーライト、キーゼルグール(ケイ藻土)、剥離させた雲母(バーミキュライト)及びフォームドサンド(foamed sand)のような軽量充填剤も使用し得る。
【0037】
適切な添加剤は、例えば、一般的に知られている流動剤、消泡剤、保水剤、可塑剤、顔料、繊維、分散粉末、湿潤剤、遅延剤、促進剤、錯化剤、水性分散液及びレオロジー改質剤である。
【0038】
セメントは、付加的な(水硬性)添加剤として、モルタル又はコンクリートの製造中に存在していてもよく、あるいは添加されてもよい。セメントの割合は、(無水)無機バインダー系の固体の全質量をベースとして、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。セメントは、好ましくはポルトランドセメント及び/又は高アルミナセメントであってよい。
【0039】
本発明は、さらに、本発明の無機バインダー系を、建築材料配合物及び/又は建築製品、例えば、コンクリート、完成したコンクリート部品、コンクリート製品、コンクリートブロック及び現場コンクリート、吹付けコンクリート、生コンクリート、建築用接着剤及び保温複合システム接着剤、コンクリート補修系、1成分及び2成分封止スラリー、スクリード、へら付充填剤及びセルフレベリング組成物、タイル接着剤、プラスター及び土居塗り材料、接着剤及びシーリング剤、塗装系、特に、トンネル、排水路、噴霧保護及び復水管路のための塗装系、かた練りモルタル、継目グラウト、ドレナージモルタル及び/又は補修モルタルの構成成分として用いる使用を提供する。
【0040】
この目的のために、本発明の無機バインダー系は、しばしば、さらなる成分、例えば、充填剤、水硬性の物質及び添加剤と混合される。当該成分を水と混合させる前に、粉末状でのアルカリ金属ケイ酸塩の添加を行うことが好ましい。その他にも、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を他の粉末成分に添加することもできる。
【0041】
本発明は、さらに、本発明の無機バインダー系を含有するモルタル、特に、かた練りモルタル又は継目グラウトを提供する。
【0042】
凝結、7日間の硬化に続く、酸、塩基及び/又は水中における3日間の貯蔵後、このモルタルは、DIN EN 13888の規格に基づいて測定された、15Nmm−2を上回る、好ましくは20Nmm−2を上回る、特に、25Nmm−2を上回る圧縮強度を有する。
【0043】
本発明を、以下の実施例において、より詳細に示す。
実施例
原材料:
− 約56質量%のSiO、41質量%のAl、並びにそれぞれの場合において1質量%未満のCaO及びアルカリ金属酸化物を有するメタカオリン;10000mkg−1より大きいBET表面積;
− 90質量%より多いSiO、並びにそれぞれの場合において1質量%未満のAl、CaO及びアルカリ金属酸化物を有するマイクロシリカ;15000mkg−1より大きいBET表面積;
− 約34質量%のSiO、12質量%のAl、43質量%のCaO及び1質量%未満のアルカリ金属酸化物を有する粉末高炉スラグ;380mkg−1より大きいブレーン値;
− 1.5又は1.0のSiO:KOのモル比の値、並びにそれぞれ50質量%又は40質量%の固体含量を有する水性のカリウムの水ガラス;
− 商業上入手可能なケイ砂。
【0044】
比較例M1、M2及びM3、並びに実施例M4及びM5:
はじめに、全ての粉末状の物質を均質化し、その後、液体成分と混合する。水性のカリウムの水ガラスは互いに別個に添加されるため、好適には、全ての実施例は、2成分系である。直径25±1mm及び高さ25±1mmの円筒試験片を作成した。DIN EN 13888に従って、すなわち、標準的な気候条件の下、試験片を7日間予め貯蔵した後、試験片を試験媒体中で貯蔵し、試験片の化学的耐性を試験する。混合物の分類のため、圧縮強度を、貯蔵前及び貯蔵後の両方で測定する。試験した配合物を、表1において質量部表記によって示す。無水バインダー系の酸化物組成は、表2において、質量%表記によって示す。表3は、試験媒体中での貯蔵前及び貯蔵後の試験片の圧縮強度を示しており、標準的な気候条件とは、23℃で50%の相対湿度を意味するものとして解される。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表3には、標準的な気候条件の下、7日間の短い硬化期間の後、DIN EN 13888において要求されている15Nmm−2の最小圧縮強度は、M2〜M5において達成されることが示されている。しかしながら、M1〜M3の参照系では、酸、水及び/又はアルカリ処理の後は、低い圧縮強度が示され、一方、本発明におけるM4及びM5においては、様々な試験媒体中での貯蔵後でさえも、非常に高い圧縮強度を測定できる。したがって、本発明における系は、酸、水及びアルカリに対する耐性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの潜在水硬性バインダー、
少なくとも1つの非晶質シリカ、
場合により、少なくとも1つの反応性充填剤、及び
少なくとも1つのアルカリ金属ケイ酸塩を有する無機バインダー系。
【請求項2】
10〜30質量%の潜在水硬性バインダー、
5〜22質量%の非晶質シリカ、
0〜15質量%の反応性充填剤、及び
3〜20質量%のアルカリ金属ケイ酸塩を有する、請求項1記載のバインダー系。
【請求項3】
10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%の潜在水硬性バインダー、
5〜20質量%、好ましくは5〜17質量%の非晶質シリカ、
0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%の反応性充填剤、及び
3〜20質量%、好ましくは4〜15質量%のアルカリ金属ケイ酸塩を有する、請求項1記載のバインダー系。
【請求項4】
潜在水硬性バインダーは、高炉スラグ、スラグ砂、粉砕高炉スラグ、電熱式燐スラグ及び鉄鋼スラグから選択され、
非晶質シリカは、沈降シリカ、熱分解法シリカ、マイクロシリカ及びガラス粉末から選択され、及び/又は、
反応性充填剤は、渇炭フライアッシュ、石炭フライアッシュ、メタカオリン、火山灰、凝灰岩、火山土、ポゾラン及びゼオライトから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項5】
以下の酸化物組成:
30〜70質量%のSiO
2〜30質量%のAl
5〜30質量%のCaO、及び
5〜30質量%のM
によって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項6】
以下の酸化物組成:
30〜65質量%、好ましくは45〜60質量%のSiO
5〜30質量%、好ましくは5〜15質量%のAl
5〜30質量%、好ましくは12〜28質量%のCaO、及び
5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%のM
によって特徴づけられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項7】
12〜25質量%のCaOを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項8】
硬化のために、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%の水を必要とすることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項9】
アルカリ金属ケイ酸塩は、実験式mSiO・nMOを有する化合物又はその混合物から選択され、その際、MはLi、Na、K又はNH、好ましくは、Na又はKであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項10】
m:nのモル比の値は、3.6以下、好ましくは3.0以下、特に2.0以下であることを特徴とする、請求項9記載のバインダー系。
【請求項11】
m:nのモル比の値は、1.7以下、好ましくは1.20以下であることを特徴とする、請求項9記載のバインダー系。
【請求項12】
潜在水硬性バインダー、非晶質シリカ、任意の反応性充填剤、及びアルカリ金属ケイ酸塩は、1つの成分として一緒に存在していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項13】
潜在水硬性バインダー、非晶質シリカ及び任意の反応性充填剤は、第1の成分として存在し、アルカリ金属ケイ酸塩は、少なくとも、硬化のために必要とされる水の量と一緒に、第2の成分として存在していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項14】
不活性充填剤及び/又はさらなる添加剤が任意で存在する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項15】
20質量%以下、好ましくは10質量%以下のセメントが存在する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のバインダー系。
【請求項16】
建築材料配合物及び/又は建築製品、例えば、コンクリート、完成したコンクリート部品、コンクリート製品、コンクリートブロック及び現場コンクリート、吹付けコンクリート、生コンクリート、建築用接着剤及び保温複合システム接着剤、コンクリート補修系、1成分及び2成分封止スラリー、スクリード、へら付充填剤及びセルフレベリング組成物、タイル接着剤、プラスター及び土居塗り材料、接着剤及びシーリング材、塗装系、特に、トンネル、排水路、噴霧保護及び復水管路のための塗装系、かた練りモルタル、継目グラウト、ドレナージモルタル及び/又は補修モルタルの構成成分としての請求項1〜15のいずれか1項に定義されたバインダー系の使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に定義されたバインダー系を含有するモルタル、特に、かた練りモルタル又は継目グラウト。
【請求項18】
凝結、7日間の硬化に続く、酸、塩基及び/又は水中における3日間の貯蔵後、DIN EN 13888に従って測定された、15Nmm−2を上回る、好ましくは20Nmm−2を上回る、特に、25Nmm−2を上回る圧縮強度を有することを特徴とする、請求項17記載のモルタル。

【公表番号】特表2013−512168(P2013−512168A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540331(P2012−540331)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063386
【国際公開番号】WO2011/064005
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】