説明

化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法

【課題】 干渉色の抑制を適切に判定できる化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法を提供する。
【解決手段】 表面粗さが、算術平均粗さRaで0.4μm以上であることをもって干渉色が抑制されていると判定する。本発明によれば、化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の干渉色による外観品質の悪化程度を適切に評価、判定することができる。本発明法の評価方法を利用することで、耐食性その他の品質特性を損なうことなく干渉色による外観品質の劣化が抑制された化成処理溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電、建材等の用途分野に使用される化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法、より具体的には外観品質の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家電、建材等の用途分野には、従来から亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的でクロム酸、重クロム酸またはその塩類を主成分とする処理液で処理した、所謂、クロメート処理鋼板が幅広く用いられている。クロメート処理は耐食性の改善効果に優れ、比較的簡便に行える経済的な処理である。
【0003】
クロメート処理は公害規制物質である6価Crを使用するものであるが、工業的には密閉系で行われるため、6価Crが処理工程で自然界に放出されることはない。また、製品においても有機皮膜シーリングなどの工夫によって、クロメート皮膜中からの6価Cr溶出は殆ど無視できるレベルまで抑制されている。したがって、実際にはクロメート処理によって環境や人体が汚染される危険性は極めて低い。しかしながら、最近の地球環境問題から、6価Crを含めた重金属の使用を自主的に削減する動きや、廃棄製品のシュレッダーダストを投棄した場合にも環境を汚染しないよう、製品中の重金属の量を規制しようとする動きが強まっている。
【0004】
このような背景から、亜鉛系めっき鋼板の耐食性の向上、特に、亜鉛めっきの白錆の発生を抑制するため、クロメート処理に依存しない化成処理技術、所謂、クロメートフリー化成処理技術が注目されている。この種の技術としては、例えば、無機化合物、有機化合物、有機高分子材料、あるいは、これらを組み合わせた溶液を用い、浸漬、塗布、電解処理などの方法によって薄膜を生成させる方法などが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【特許文献1】特開2002−105668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来用いられてきたクロメート処理では、その皮膜厚さは極薄く、数nm〜数十nmの膜厚で十分な耐食性を発現する。一方、クロメートフリー化成処理では、その皮膜厚みは数μm程度のものもあり、溶融亜鉛めっき鋼板のように表面が平滑で光沢のあるめっき上にこのような厚さの皮膜を成膜すると、干渉色により外観品質が著しく悪化する。
【0006】
従来、このような干渉色による外観品質の劣化程度を適切に評価、判定できる手法が存在しないため、干渉色による外観品質の劣化を効果的に防止できなかった。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、干渉色の抑制を適切に判定できる化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の手段は、表面粗さが、算術平均粗さRaで0.4μm以上であることをもって干渉色が抑制されていると判定することを特徴とする化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法である。
【0009】
ここで、算出平均粗さRaは、JIS B0601−1994で規定されるものであり、評価長さ:4mm、カットオフ値:0.8mmで測定、算出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の干渉色による外観品質の悪化程度を適切に評価、判定することができる。本発明法を利用することで、耐食性その他の品質特性を損なうことなく干渉色による外観品質の劣化が抑制された化成処理溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細とその限定理由について説明する。
【0012】
溶融めっき法による亜鉛めっき鋼板には、溶融亜鉛めっき後めっき皮膜を冷却凝固させたものと、溶融亜鉛めっき後めっき皮膜を加熱して合金化処理したものがある。本明細書では、溶融亜鉛めっき後めっき皮膜を冷却凝固させたものを溶融亜鉛めっき鋼板と記載し、めっき皮膜を加熱して合金化処理したものを合金化溶融亜鉛めっき鋼板と記載することで両者を区別する。化成処理溶融亜鉛めっき鋼板とは、めっき表面に化成処理皮膜が形成された溶融亜鉛めっき鋼板のことである。
【0013】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき皮膜表面に合金化処理によって生成した微細な凹凸が存在する。これに対して、溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき皮膜は溶融状態の亜鉛が凝固して形成されるため表面が平滑である。溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき皮膜が凝固する際にスパングルと称する華模様が生成するが、スパングルを微細化したミニマムスパングルは、表面の平滑度がより優れる。
【0014】
化成処理溶融亜鉛めっき鋼板における干渉色は、めっき表面と化成処理皮膜表面で正反射する成分が干渉することによって生じる。溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき表面が平滑であることから、干渉色による外観品質の悪化が特に顕著に発生する。
【0015】
本発明者らは、ミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板のクロムフリー化成処理皮膜の干渉色に影響を与える因子について種々検討した。その結果、皮膜厚さが0.08〜2.0μmの範囲で干渉色の発生が認められた。皮膜厚さが0.08μm未満または2.0μm超では、干渉色の発生は殆ど無くなった。一方、表面粗さを、算術平均粗さRaで評価することで、干渉色が抑制されているか否かを適切に評価、判定できることが明らかになった。本発明はこの知見に基づくものである。
【0016】
そして、本発明では、化成処理溶融亜鉛めっき鋼板表面粗さが、算術平均粗さRaで0.4μm以上であることをもって干渉色が抑制されていると判定する。これは、算術平均粗さRaが0.4μm以上であると、干渉色が発生しても極軽微であり、干渉色が抑制されていると判断できるためである。
【0017】
化成処理皮膜の膜厚が0.08〜2.0μmの範囲内にあると干渉色が発生しやすい。したがって、本発明は、膜厚が0.08〜2.0μmの範囲内にある化成処理溶融亜鉛めっき鋼板について干渉色の抑制有無を判定する方法として好適である。
【0018】
前記したように、クロメートフリー皮膜を有する溶融亜鉛めっき鋼板で干渉色が問題になっている。したがって、本発明は、クロメートフリー皮膜を有する溶融亜鉛めっき鋼板の干渉色の抑制有無を判定する方法として好適である。
【0019】
以上、クロメートフリー皮膜を有する溶融亜鉛めっき鋼板について説明したが、本発明はこれに限定されない。ベースとなるめっき鋼板は、めっき皮膜が溶融金属の凝固によって形成される溶融めっき鋼板を対象とする。このようなめっき鋼板としては、溶融亜鉛系めっき鋼板(Znめっき鋼板(めっき後合金化処理されていないもの)、所謂5%Al−Zn合金めっき鋼板、所謂55%Al−Zn合金めっき鋼板等)、アルミめっき鋼板等が例示される。
【実施例】
【0020】
処理原板として、付着量:片面あたり60g/mのミニマムスパングルでブライト調圧を行った溶融亜鉛めっき鋼板を準備した。化成処理用組成物として、水分散性のエマルジョン樹脂、または水溶性樹脂を準備した。処理原板を湯洗、乾燥させた後、その表面に準備した水分散性樹脂、または水溶性樹脂をバーコーターで塗布し、インダクションヒータを用いて、板温が室温から3秒間で100〜140℃になるように加熱乾燥させた。表面粗度の調整は、エマルジョン樹脂の粒径を変化させること、および乾燥温度の調整によっておこなった。本実験では、エマルジョン樹脂の粒径が大きいほど、また乾燥温度が低いほど、算術平均粗さRaは大きくなる。このようにして作成した樹脂被覆溶融亜鉛めっき鋼板の算術平均粗さRaと外観の関係を表1に示す。外観の評価は、著しい干渉色が認められる試料は×、干渉色が抑制されて軽度な試料は△、干渉色が抑制されて極軽微な試料は○とした。
【0021】
【表1】

【0022】
算術平均粗さRaが0.4μm未満は干渉色の評価が×、0.4μm以上0.7μm未満は干渉色の評価が△、0.7μm以上で干渉色の評価が○である。このことから、算術平均粗さRaによって干渉色の抑制程度が適切に評価できること、また算術平均粗さRaで0.4μm以上であると干渉色が抑制されていると判定できることが判る。
【0023】
前述の例は、有機樹脂のみを含有する処理液を用いて皮膜を形成した例であるが、本発明は、無機成分が添加された処理液を用いて皮膜を形成した場合も同様の効果が奏される。
【0024】
本発明法を利用することで、耐食性その他の品質特性を損なうことなく干渉色による外観品質の劣化が抑制された化成処理溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、家電、建材等の用途分野に使用される化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の干渉色の抑制を判定する方法として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さが、算術平均粗さRaで0.4μm以上であることをもって干渉色が抑制されていると判定することを特徴とする化成処理溶融亜鉛めっき鋼板の品質判定方法。

【公開番号】特開2006−257489(P2006−257489A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76257(P2005−76257)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】