説明

化粧シート

【課題】透明性及び耐傷付き性のバランスに優れ、さらにVカットなどの折り曲げ加工による白化がほとんどない化粧シートを提供する。
【解決手段】メタロセン触媒系を用いて重合され、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10minであり、DSCにより測定した融点が155℃以上であり、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1モル%以下であるプロピレン単独重合体(A)を含有する層1を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び耐傷付き性のバランスに優れた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建材・家電製品・自動車の内装材等の用途に使用される化粧シートとしては、耐傷つき性、折り曲げ時の耐白化性、透明性等のバランスに優れる塩化ビニル樹脂を主成分とする化粧シートが利用されてきた。しかしながら、環境への意識の高まりから、塩化ビニル樹脂に代わるものとしてポリオレフィン系材料を使用した化粧シートが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ポリプロピレン系フィルムを主な構成層とする化粧シートが開示されている。
特許文献2にはオレフィン系熱可塑性エラストマーを主な構成層とする化粧シートが提案されている。
【0004】
特許文献1で提案のポリプロピレン系フィルムを構成層とする化粧シートの場合、ポリプロピレンの結晶化度や融点が高いため、柔軟性が低下し、またVカットなどの折り曲げ加工をした場合、折り曲げ面に亀裂が入ったり、白化が発生したりするなどの問題点があった。
【0005】
また、特許文献2で提案のオレフィン系熱可塑性エラストマーを構成層とする化粧シートの場合、柔軟性に優れ、折り曲げ面の亀裂や白化は起りにくいが、透明性や機械的強度が不十分となるなどの問題点があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、特許文献3には、特定の非晶性ポリオレフィンと結晶性ポリプロピレンとを特定割合で含有する樹脂組成物からなる層を使用した化粧シートが提案されている。
【0007】
しかしながらこの化粧シートは折り曲げ面の亀裂や白化は改良できているものの、十分な機械強度および耐傷つき性、耐熱性を備えているとはいえない。
また、折り曲げ加工時の白化対策としてエラストマーなどを添加して低剛性化したポリプロピレンからなる層を使用した化粧シートや(特許文献4および特許文献5)、逆に高結晶型ポリプロピレンからなる、高剛性化した層を使用した化粧シート(特許文献6および特許文献7)が提案されているが、低剛性化ポリプロピレンを使用した化粧シートは耐傷付き性が悪く、高剛性化ポリプロピレンを使用した化粧シートは割れや二次加工時の熱により透明性が低下するなどの問題がある。すなわち、従来の技術では、透明性及び耐傷付き性のバランスに優れた化粧シートを得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−198830号公報
【特許文献2】特開平6−16832号公報
【特許文献3】特開2000−281807号公報
【特許文献4】特開平11−221888号公報
【特許文献5】特開2000−326443号公報
【特許文献6】特開2001−270054号公報
【特許文献7】特開2001−181985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明性及び耐傷付き性のバランスに優れ、さらにVカットなどの折り曲げ加工による白化がほとんどない化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のプロピレン単独重合体を含有する層を有する化粧シートが、透明性及び耐傷付き性のバランスに優れ、さらにVカットなどの折り曲げ加工によってはほとんど白化しないことを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0011】
すなわち本発明は、メタロセン触媒系を用いて重合され、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10minであり、DSCにより測定した融点が155℃以上であり、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1モル%以下であるプロピレン単独重合体(A)を含有する層を有することを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性及び耐傷付き性のバランスに優れ、さらにVカットなどの折り曲げ加工による白化がほとんどない化粧シートが提供される。なお、本明細書において透明性及び耐傷付き性に優れるとは、後述するプロピレン単独重合体(A)を含有する層の透明性及び耐傷付き性が優れていることを指す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の化粧シートの実施形態の一例を示す。なお、図1は被着体に接着剤層を介して本発明の化粧シートが接着している構成を示す図である。
【図2】図2は、基材層(3)が絵柄層あるいは印刷層を含む場合の本発明の化粧シートの構成の例を示す。なお、図2は被着体に接着剤層を介して本発明の化粧シートが接着している構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の化粧シートは、メタロセン触媒系を用いて重合され、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10minであり、DSCにより測定した融点が155℃以上であり、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1モル%以下であるプロピレン単独重合体(A)を含有する層を有することを特徴としている。
【0015】
[プロピレン単独重合体(A)]
本発明の化粧シートに使用されるプロピレン単独重合体(A)は、メタロセン触媒系を用いて重合され、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10minであり、DSCにより測定した融点が155℃以上であり、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1モル%以下である。以下、これら各物性について説明する。
【0016】
<メルトフローレート>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)は、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10min、好ましくは5〜20g/10minの範囲にある。MFRは、重合温度を変更したり、連鎖移動剤としての水素を用いることによって調節することができる。
プロピレン単独重合体(A)のMFRが前記範囲にあると、透明性と耐折り曲げ白化性ならびに耐傷付き性のバランスに優れるため好ましい。
【0017】
<融点>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)は、DSCによって測定された融点が155℃以上、好ましくは156〜167℃、さらに好ましくは156〜163℃の範囲にある。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、融点が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することにより融点の異なる重合体を製造することができる。
プロピレン単独重合体(A)のDSCによって測定された融点が155℃未満であると、化粧シートの耐傷付き性が劣るため好ましくない。
【0018】
<プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)は、13C−NMRスペクトルから求められる、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1mol%以下、好ましくは0.05mol%以下である。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、異種結合の割合の和が前記範囲内にある重合体を得ることができる。
【0019】
プロピレン単独重合体(A)の2,1−挿入に基づく異種結合の割合および1,3−挿入に基づく異種結合の割合の和が前記範囲にあると、透明性と耐折曲げ白化性ならびに耐傷付き性のバランスに優れた化粧シートが得られるため好ましい。
以下、プロピレン単独重合体(A)のその他の物性について説明する。
【0020】
<Mw/Mn>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)は、GPCによって測定された分子量分布指標(Mw/Mn)が通常3.5以下、好ましくは2〜3の範囲にある。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、Mw/Mnが前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することによりMw/Mnの異なる重合体を製造することができる。
【0021】
プロピレン単独重合体(A)のMw/Mnが前記範囲にあると、低分子量成分が少ないためブリードアウトが少なく、得られる化粧シートは透明性、耐ブロッキング性に優れる。
【0022】
<CFC法により測定した90℃までの溶出積分量>
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)は、クロスクロマト分別(CFC)法により測定した90℃までの溶出積分量が通常1%以下、好ましくは0.5%以下である。触媒として後述するメタロセン触媒系を用いることにより、溶出積分量が前記範囲内にある重合体を得ることができる。また、用いるメタロセン化合物を変更することにより溶出積分量の異なる重合体を製造することができる。
【0023】
プロピレン単独重合体(A)の、CFC法により測定した0℃から90℃までの溶出積分量が前記範囲にあると、プロピレン単独重合体(A)に低分子量成分が少ないためブリードアウトが少なく、得られる化粧シートは透明性、耐ブロッキング性に優れる。
【0024】
化粧シートを構成する層に前記プロピレン単独重合体(A)を含有させることにより、透明性及び耐傷付き性に優れた化粧シートを得ることができる。
より具体的に説明すると、後述する、化粧シートを製造する際の熱成形時の熱により、プロピレン単独重合体(A)を含有する層の透明性が低下せず、耐傷付き性に優れた化粧シートが得られる。
【0025】
<プロピレン単独重合体(A)の製造方法>
以下、プロピレン単独重合体(A)の製造方法を説明する。
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の製造方法は、該プロピレン単独重合体(A)がメタロセン触媒系を用いて重合され、前記メルトフローレート、DSCによって測定された融点およびプロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和、好ましくはさらに他の物性を満たす限りにおいて何ら限定されるものではないが、通常はシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を分子内に持つメタロセン化合物を含む重合触媒の存在下でプロピレンを単独重合することによって製造される。
【0026】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を分子内に持つメタロセン化合物としては、その化学構造から下記一般式[I]で表される非架橋型メタロセン化合物および下記一般式[II]で表される架橋型メタロセン化合物の二種類を例示することができる。これらの中では、一般式[II]で表される架橋型メタロセン化合物が好ましい。
【0027】
【化1】

前記一般式[I]および[II]において、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、
Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれ、
jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよく、
Cp1およびCp2は、互いに同一か又は異なっていてもよく、Mと共にサンドイッチ構造を形成することができるシクロペンタジエニル基または置換シクロペンタジエニル基である。ここで、置換シクロペンタジエニル基は、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基およびこれらが一つ以上の炭化水素基で置換された基も包含し、インデニル基、フルオレニル基、アズレニル基の場合はシクロペンタジエニル基に縮合する不飽和環の二重結合の一部ないし全部は水添されていてもよい。
【0028】
一般式[II]においてYは、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn-、-NRa-、-P(Ra)-、-P(O)(Ra)-、-BRa-または-AlRa-を示す(但し、Raは、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子または窒素原子に炭素原子数1〜20の炭化水素基が1個または2個結合した窒素化合物残基である。)。
【0029】
本発明において好んで用いられる重合触媒は、本願出願人の出願に係る国際公開(WO01/27124号)に開示されている下記一般式[III]で表される架橋型メタロセン化合物と、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒である。
【0030】
【化2】

前記一般式[III]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0031】
炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、tert-ブチル基、アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基;ベンジル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基などの環状不飽和炭化水素基で置換された飽和炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、フリル基、N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N-フェニルアミノ基、ピリル基、チエニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基等を挙げることができる。
【0032】
ケイ素含有基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基などを挙げることができる。
【0033】
また、R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。このような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル基などを挙げることができる。
【0034】
前記一般式[III]においては、シクロペンタジエニル環に置換するR1、R2、R3、R4は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、R2とR4が炭素原子数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、R1とR3が水素原子であり、R2とR4が炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキル基であることが特に好ましい。
【0035】
また、前記一般式[III]において、フルオレニル環に置換する、R5からR12は水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、前述の炭化水素基を例示することができる。R5からR12の隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。好ましい態様は、R6、R7、R10およびR11が同時に水素原子ではないフルオレニル環である。
【0036】
前記一般式[III]においては、シクロペンタジエニル環とフルオレニル環を架橋するYが第14族元素であることが好ましく、炭素、ケイ素、ゲルマニウムがより好ましく、炭素原子がさらに好ましい。
【0037】
また、Yに置換するR13、R14は相互に同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基または炭素原子数6〜20のアリール基から選ばれる。このような置換基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基などが好ましい。なお、R13、R14はR5からR12の任意の置換基(但し、通常はR5またはR12である。)またはR1からR4の任意の置換基(但し、通常はR1またはR4である。)と互いに結合して環を形成してもよい。
【0038】
前記一般式[III]において、Mは好ましくは第4族遷移金属であり、さらに好ましくはチタン原子、ジルコニウム原子、またはハフニウム原子である。
また、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれる。
【0039】
jは1〜4の整数であり、jが2以上の時は、Qは互いに同一でも異なっていてもよい。
ハロゲンの具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭化水素基の具体例としては前述と同様のものなどが挙げられる。
【0040】
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert-ブトキシ、フェノキシなどのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基等が挙げられる。
【0041】
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル類等が挙げられる。
【0042】
Qは少なくとも1つがハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
前記の好ましい架橋メタロセン化合物としては、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、1-フェニルエチリデン(4-tert-ブチル-2-メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、[3-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレニル)(1,1,3-トリメチル-5-tert-ブチル-1,2,3,3a-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド等を例示することができる。
【0043】
なお、プロピレン単独重合体(A)の製造に用いられるメタロセン触媒において、前記一般式[III]で表わされるメタロセン化合物とともに用いられる、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(共触媒)、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体については、本願出願人による前記公報(WO01/27124)や特開平11−315109号公報中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0044】
プロピレン単独重合体(A)は、一つの反応器または一つ以上の反応器を直列に連結した重合装置を用い、前記メタロセン触媒および共触媒等の存在下、例えば重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧の重合条件で、プロピレンを単独重合させることにより製造することができる。
【0045】
[化粧シート]
本発明の化粧シートは、前述のように特定の要件を満たすプロピレン単独重合体(A)を含有する層(透明ポリプロピレン層(1))を有することを特徴としており、その実施形態の一例を図1に示す。
【0046】
化粧シートは一般的に、合板やアルミ板などの被着体(5)に接着剤層(4)を介し、基材層(3)、透明ポリプロピレン層(1)および透明保護層(2)を積層した構成からなる。なお、(2)−(1)−(3)の層間には、使用する材料に応じて接着剤層(4)を設けてもよい。また、基材層(3)は、印刷層または絵柄層を含む層としてもよい。
【0047】
被着体(5)は、木材単板、合板等の木質材、鉄、アルミニウム等の金属材、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の樹脂材等であり、平板、曲面板、立体形状物等の板材やシートのような各種形状をもつものである。
【0048】
接着剤層(4)は、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の接着剤あるいはゴム系接着剤(スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、天然ゴム等)などの種々の公知のものが各層との接着性を考慮して使用され、その厚みは、通常2〜20μmである。また、接着剤の基材層(3)への塗布方法にも特に制限はない。
【0049】
基材層(3)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等が一般的に着色されて使用され、厚みは通常30〜200μmである。基材層(3)には、プロピレン単独重合体(A)を用いることもできる。前記着色に使用される着色剤は、群青、チタンホワイト、カーボンブラック等の無機顔料、キナクリドン、フタロシアニンブルー等の有機顔料等である。
【0050】
透明ポリプロピレン層(1)は、本発明のプロピレン単独重合体(A)を含有する層で、厚みは通常10〜150μmである。また層(1)には、低温衝撃強度向上の目的で種々公知のプロピレン系エラストマー(プロピレン−エチレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体等)やポリエチレン(LLDPE、LDPE)を20wt%以下の添加量で別々にあるいは組み合わせて含有させてもよい。
【0051】
透明保護層(2)は、透明ポリプロピレン層(1)の性能をさらに向上させるために該層(1)上に形成されるものである。透明保護層(2)としては、ポリウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系等の種々公知のハードコート剤が使用され、その厚みは、通常1〜5μmである。ハードコート剤の層(1)への塗布方法には特に制限はない。
【0052】
層(1)〜(4)には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて耐候安定剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、無機充填剤などの添加剤を含有させることができる。
【0053】
本発明の化粧シートの製造方法は特に制限されないが、たとえば、プロピレン単独重合体(A)またはプロピレン単独重合体(A)および前記添加剤などを含むプロピレン系樹脂組成物から、フィルムあるいはシート成形が可能な成形方法を用いて層(1)を形成し、層(1)に基材層(3)を積層し、基材層(3)の層(1)と接している面とは反対の面上に絵柄層あるいは印刷層を積層する。なお、前述のように基材層(3)は絵柄層あるいは印刷層を含む層であってもよいが、その場合は、層(1)に基材層(3)を積層する。さらに層(1)の基材層(3)と接している面とは反対の面上に透明保護層(2)を積層することにより、本発明の化粧シートを製造することができる。基材層(3)が絵柄層あるいは印刷層を含む場合の化粧シートの構成の例を図2に示す。なお、層(1)は、プロピレン単独重合体(A)を含む層と他のポリプロピレン樹脂あるいは他樹脂等からなる層との多層構成にしてもよい。ただし、その場合には、層(1)の透明保護層(2)に接している部分がプロピレン単独重合体(A)を含む層でなければならない。
【0054】
基材層(3)への印刷層あるいは絵柄層の積層は、たとえば直接グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、インクジェット印刷、ドライラミネーションなどにより行うことができる。
【0055】
基材層(3)への透明ポリプロピレン層(1)の積層は、ドライラミネーションや押出ラミネーションなどにより行うことができる。
透明ポリプロピレン層(1)への透明保護層(2)の積層は、一般的な塗布により行うことができる。
【0056】
本発明の化粧シートは、必須の層として透明ポリプロピレン層(1)、基材層(3)を有する。化粧シートの厚みは特に限定されるものではないが、通常50〜300μmである。
【0057】
また、各層の厚みの比は、特に限定されるものではないが、性能バランスの観点から基材層(3)/層(1)/透明保護層(2)が3〜40/1〜30/1〜2となる比が好ましい。
【0058】
このような本発明の化粧シートは、プロピレン単独重合体(A)を有する層(1)が透明性及び耐傷付き性のバランスに優れ、さらにVカットなどの折り曲げ加工による白化がほとんどない。
【0059】
さらに、曲面板、立体形状物等の樹脂シートに化粧シートを貼り付ける場合、化粧シートを貼り付けた樹脂シートを熱成形して立体形状化することがあるが、本発明の化粧シートは、この熱成形が行われた際の熱による透明ポリプロピレン層(1)の透明性の低下が少ないという特徴を有している。
【0060】
本発明の化粧シートは様々な用途に使用可能であるが、たとえばテレビキャビネット、ステレオスピーカーボックス、ビデオキャビネット、各種収納家具、ユニット家具などの家電製品や家具製品、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠などの住宅部材、厨房、収納家具扉などの家具部材、床材、天井材、壁紙などの建材商品、自動車内装材、家電品、文具、オフィス用品等の用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0061】
次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、本発明において採用した分析方法は以下の通りである。
【0062】
Mw/Mn測定
プロピレン単独重合体のMw/Mn(ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)の測定はウォーターズ社製GPC-150C Plusを用い以下の様にして行った。分離カラムは、TSKgel GMH6-HT及びTSK gel GMH6-HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(和光純薬工業)0.025重量%を用い、1.0 ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用い、汎用較正法を用いてポリプロピレンに換算した。なお、ポリスチレン、ポリプロピレンのMark-Houwink係数はそれぞれ、文献(J. Polym. Sci., Part A-2, 8, 1803 (1970)、Makromol. Chem., 177, 213 (1976))に記載の値を用いた。
【0063】
融点(Tm)
プロピレン単独重合体の融点(Tm)は示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて測定した。ここで、第3stepにおける吸熱ピークを融点(Tm)と定義した。
【0064】
<サンプル作成条件>
成形方法 :プレス成形
金型 : 厚さ0.2mm(サンプルをアルミホイルで挟み、金型を用いてプレス成形)
成形温度 : 240℃
プレス圧力: 300kg/cm2、プレス時間:1分
プレス成形後、シートを氷水で冷却し、下記測定容器に約0.4gのシートを封入。
測定容器 : DSC PANS 10μl BO―14−3015
DSC COVER BO14−3003。
【0065】
(測定条件)
第1step : 10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step : 10℃/minで60℃まで降温する。
第3step : 10℃/minで240℃まで昇温する。
【0066】
〔MFR(メルトフローレート)〕
プロピレン単独重合体のMFRは、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従って測定した。
【0067】
クロスクロマト分別測定(CFC)
プロピレン単独重合体の90℃までのo-ジクロロベンゼンに可溶な成分量の測定は、クロスクロマト分別測定(CFC)により行った。
各温度でのオルトジクロロベンゼンに可溶な成分の分析は、クロスクロマト分別測定(CFC)で行った。CFCは組成分別を行う温度上昇溶離分別(TREF)部と、分子量分別を行うGPC部とを備えた下記装置を用いて、下記条件で行い、各温度でのオルトジクロロベンゼンに可溶な成分の量を算出した。
測定装置 : CFC T-150A型、三菱油化(株)製
カラム : Shodex AT-806MS(×3本)
溶解液 : o-ジクロロベンゼン
流速 : 1.0 ml/min
試料濃度 : 0.3 wt%/vol%(0.1% BHT入り)
注入量 : 0.5 ml
溶解性 : 完全溶解
検出器 : 赤外吸光検出法、3.42μ(2924 cm-1)、NaCl板
溶出温度 : 0〜135℃、28フラクション(0、10、20、30、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、94、97、100、103、106、109、112、115、118、121、124、127、135 (℃))。
【0068】
測定の詳細について以下に説明する。試料を145℃で2時間加熱して溶解してから、135℃で保持した後、0℃まで10℃/hrで降温、さらに0℃で60分保持して試料をカラムにコーティングさせた。昇温溶出カラム容量は0.83 ml、配管容量は0.07 mlである。検出器はFOXBORO社製赤外分光器MIRAN 1A CVF型(CaF2セル)を用い、応答時間10秒の吸光度モードの設定で、波長3.42μm(2924cm-1)の赤外光を検知した。溶出温度は0℃〜135℃までを28フラクションに分けた。
【0069】
温度表示は全て整数であり、例えば94℃の溶出画分とは、91〜94℃で溶出した成分のことを示す。0℃でもコーティングされなかった成分および各温度で溶出したフラクションの分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、ポリプロピレン換算分子量を求めた。データ処理は、装置付属の解析プログラム「CFCデータ処理(バージョン1.50)」で実施(データサンプリング時間は0.50秒)した。
【0070】
2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量の測定
13C−NMRを用いて、特開平7-145212号公報に記載された方法に従って、プロピレンの2,1-挿入結合量、1,3-挿入結合量を測定した。
【0071】
シートの折り曲げ白化
実施例および比較例で製造した化粧シートを一辺が10cmの正方形に切り取り、長さ5cmの部分で180°に折り曲げ、折り曲げ部の白化有無を目視確認した。
【0072】
シートの耐傷つき性試験
JIS K5600に準拠して、実施例および比較例で製造した化粧シート表面の鉛筆硬度を測定した。
【0073】
シートの透明性(ヘイズ(HAZE))
ASTM D-1003に準拠して熱成形前後のヘイズを測定した。
熱成形条件:浅野製作所製真空圧空成形機にサンプル(30cm×30cmの化粧シート)を取り付け、ヒーター温度300℃で化粧シートを加熱し、縦10cm×横10cm×深さ0.5cmのトレイを真空圧空成形後、トレイ底部のヘイズを測定。
【0074】
[製造例1]
(1) 固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO2(AGCエスアイテック製サンスフェアH121)300gをサンプリングし、トルエン800mLを入れ、スラリー化した。次に5L4つ口フラスコへ移液をし、トルエン260mLを加えた。メチルアルミノキサン(以下、MAO)−トルエン溶液(10wt%溶液)を2830mL導入した。室温のままで、30分間攪拌した。1時間で110℃に昇温し、4時間反応を行った。反応終了後、室温まで冷却した。冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで、置換率が95%になるまで、置換を行った。
【0075】
(2) 固体触媒の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L4つ口フラスコにイソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3、6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを1.0g秤取った。フラスコを外へ出し、トルエン0.5Lと(1)で調製したMAO/SiO2/トルエンスラリー2.0L(固体成分として100g)を窒素下で加え、30分間攪拌し担持を行った。得られたイソプロピル(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(3、6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO2/トルエンスラリーはn-ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5リットルとした。この操作は、室温で行った。
【0076】
(3) 前重合触媒の製造
前記の(2)で調製した固体触媒成分101g、トリエチルアルミニウム111mL、ヘプタン80Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちエチレンを303g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この前重合触媒は固体触媒成分1g当りポリエチレンを3g含んでいた。
【0077】
(4) 本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を5NL/時間、(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として2.4g/時間、トリエチルアルミニウム1.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0078】
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.21mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0079】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.21mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0080】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを12kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.21mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0081】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを13kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.21mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0082】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(P-1)を得た。得られたプロピレン単独重合体(P-1)を、80℃で真空乾燥させた。得られたプロピレン単独重合体(P-1)の特性を表1に示す。
【0083】
[製造例2]
本重合の方法を以下の様に変えた以外は、製造例1と同様の方法で行った。
<本重合>
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを30kg/時間、水素を5NL/時間、(3)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として1.7g/時間、トリエチルアルミニウム1.0ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は30℃であり、圧力は3.1MPa/Gであった。
【0084】
得られたスラリーは内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを50kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.40mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
【0085】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.40mol%になるように供給した。重合温度69℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0086】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを12kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.40mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0087】
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを13kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.40mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.9MPa/Gで重合を行った。
【0088】
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体(P-2)を得た。得られたプロピレン単独重合体(P-2)を、80℃で真空乾燥させた。得られたプロピレン単独重合体(P-2)の特性を表1に示す。またチーグラー触媒を用いて製造された市販のポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製 Y−2000GP)の特性も併せて表1に示す。
【0089】
【表1】

[実施例1]
製造例1で製造されたプロピレン単独重合体(P−1)100質量部に対して、熱安定剤IRGANOX1010(チバ・ジャパン(株)商標)0.1質量部、熱安定剤IRGAFOS168(チバ・ジャパン(株)商標)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部,光安定剤 CHIMASSORB 119(チバ・ジャパン(株)商標)0.5質量部、光安定剤 TINUVIN 234(チバ・ジャパン(株)商標)0.5質量部をタンブラーにて混合後、ナカタニ機械(株)製二軸押出機(同方向2軸混練機)を用いて230℃にて溶融混練してペレット状のポリプロピレン樹脂組成物(A−1)を調製し、東芝機械(株)製65mmφTダイフィルム成形機(ダイ幅600mm,リップギャップ1mm)にて、押出温度230℃,チルロール温度40℃の条件で厚み80μmの単層フィルム(透明ポリプロピレン層(1))と厚み150μmの単層フィルム(基材層(3))を製造した。
【0090】
次に得られたフィルムを切り出し(10×20cm)、接着面にコロナ処理(フィルム濡れ指数 40Dyn)を施し、ドライラミ用接着剤(三井化学ポリウレタン製 タケラックA310)で透明ポリプロピレン層(1)と基材層(3)のコロナ処理面を手貼り(接着層厚み約4μm)し、化粧シートを作製後、80℃のオーブンで1時間乾燥し、HAZE(熱成形前後)、耐傷付き性(鉛筆硬度)、折り曲げ白化を評価した。結果を表2に示す。なお、透明ポリプロピレン層(1)の耐傷付き性ならびに熱成形後透明性を確認するため、透明保護層(2)は積層せず、基材層(3)も未着色とした。
【0091】
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂組成物(A−1)を用いて、実施例1と同様に厚み150μmの単層フィルム(基材層(3))を製造した。このフィルムにポリプロピレン樹脂組成物(A−1)を用いた透明ポリプロピレン層(1)を住友重機製ラミネーター(65mmφ)により、樹脂温度250℃、チルロール温度30℃にて押出ラミネート(厚み80μm)し、化粧シートを作製した。化粧シートの物性(HAZE(熱成形前後)、耐傷付き性(鉛筆硬度)、折り曲げ白化)を評価した。結果を表2に示す。なお、透明ポリプロピレン層(1)の耐傷付き性ならびに熱成形後透明性を確認するため、透明保護層(2)は積層せず、基材層(3)も未着色とした。
【0092】
[実施例3]
製造例2で製造されたプロピレン単独重合体(P−2)をP−1の代わりに用いた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0093】
[比較例1]
実施例1においてプロピレン樹脂組成物(A−1)を市販されているPP樹脂((株)プライムポリマー製 Y−2000GP:MFR=18g/10min,Tm=161℃)に変えた以外は同様に行った。結果を表2に示す。
【0094】
[比較例2]
比較例1で使用したY−2000GPに核剤((株)アデカ アデカスタブ NA−21)を1000ppm添加した以外は、比較例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の化粧シートは、透明性と耐折り曲げ白化性ならびに耐傷付き性のバランスに優れることから、様々な化粧シート用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン触媒系を用いて重合され、MFR(ASTM D 1238 230℃、荷重2.16kg)が0.1〜30g/10minであり、DSCにより測定した融点が155℃以上であり、プロピレンの2,1-挿入結合量と1,3-挿入結合量との和が0.1モル%以下であるプロピレン単独重合体(A)を含有する層を有することを特徴とする化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−167581(P2010−167581A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9774(P2009−9774)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】