説明

化粧シート

【課題】優れた耐候性、耐傷性、及び加工性を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】材上に、少なくとも、柄印刷層、透明樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有する化粧シートであって、基材がポリオレフィン系樹脂からなり、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体及びアクリルポリオールからなり、該ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80であり、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層のJIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が10%以上である化粧シートである。
測定条件;厚さ50μm、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度30mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度23℃の条件で破断するまでの引張伸度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、建具等の建材の表面装飾材料として効果的な、絵柄が施された化粧シート及び当該化粧シートが積層された化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは、鋼板や木質板等の被着材の表面保護、装飾等を目的とするものであって、これを被着材の表面に貼着することにより使用される。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
化粧シートの装飾模様としては、木目、節目、文字、記号等さまざまなものがある。これらの意匠は、主として化粧シート中の柄印刷層によって表現される。
【0003】
そして、立体感のある意匠を得る目的や所望の材質感等を得る目的で、化粧シートの最表面である表面保護層又は化粧シートの中間に位置する透明性樹脂層に凹凸を施した化粧シートが提案されている(特許文献1参照)。
さらには、その凹凸を利用して化粧シート表面の表面保護層又は透明性樹脂層の凹部を着色して着色樹脂層を形成させ、絵柄層にある模様と当該着色樹脂層の模様を組み合わせた化粧シートが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
従来技術における化粧シートの表面保護層は2液硬化型ウレタン樹脂であるが、擦り傷等が付きやすく、また、これを防ぐために表面保護層を硬くすると、化粧シートを折り曲げたり、衝撃を受けた際にひび割れや白化が生じやすい。一方、表面保護層を柔らかくすると溶剤に簡単に溶けてしまうおそれがある。また、屋外用途では耐候性能も不十分という問題点があった。
一方、木目、節目等の自然物を模様柄とした場合はより実物に見えれば見えるほど、商品価値が上がる。ところが、従来の化粧シートでは、この点においてもなお改善の余地があった。
【0005】
そこで、上記問題点を解決する方法として、少なくとも基材シート、絵柄層、透明樹脂層及び表面保護層をこの順に有し、表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂を含む組成物から形成されており、透明樹脂層が凹凸を有し、透明樹脂層の凹凸の凹部に着色樹脂層が形成されており、着色樹脂層の樹脂成分としてアクリル−ウレタン共重合体を含む化粧シートが提案されている(特許文献3参照)。該化粧シートは各層の密着性が良好であり、耐傷性及び耐溶剤性能が高く、優れた意匠性を有するものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平08−244193号公報
【特許文献2】特開平08―127109号公報
【特許文献3】特開2006−95992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、玄関ドアなどの外装材においては、さらなる耐候性が要求され、また、化粧シートが鋼板に貼着されて使用される場合などは、曲げ加工した際に表面の意匠に割れや白化が発生しないなどのさらなる要求がある。
本発明は、このような課題に対して、優れた耐候性、耐傷性、及び加工性を有する化粧シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材上に、柄印刷層、透明樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有する化粧シートであって、基材がポリオレフィン系樹脂からなり、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなり、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80であり、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、表面保護層の引張伸度が10%以上である化粧シートが上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に、少なくとも、柄印刷層、透明樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有する化粧シートであって、基材がポリオレフィン系樹脂からなり、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体及びアクリルポリオールからなり、該ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80であり、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層のJIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が10〜50%である化粧シート、
測定条件;;厚さ50μm、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度30mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度23℃の条件で破断するまでの引張伸度を測定する、
(2)前記プライマー層を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のウレタン成分とアクリル成分との質量比が80:20〜20:80である上記(1)に記載の化粧シート、
(3)前記透明樹脂層の表面保護層側に凹部を有し、該凹部にはワイピング加工が施され、該ワイピング加工に用いられるインキ組成物が着色剤及びポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなるバインダーにより構成される上記(1)又は(2)に記載の化粧シート、
(4)ワイピング加工に用いられるインキ組成物を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のウレタン成分とアクリル成分との質量比が80:20〜20:80である上記(3)に記載の化粧シート、
(5)ワイピング加工に用いられるインキ組成物を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80である上記(3)又は(4)に記載の化粧シート、
(6)前記表面保護層が凹部を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化粧シート、
(7)表面保護層及び/又はプライマー層中に紫外線吸収剤を0.5〜20質量%及び光安定剤を1〜8質量%含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シート、
(8)柄印刷層と透明樹脂層の間に接着剤層を有する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の化粧シート、
(9)基材の裏面に裏面プライマー層を有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化粧シート、
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の化粧シートの表面保護層が最表面層となるように当該シートが被着材に積層されてなる化粧板、及び
(11)前記被着材が鋼板である上記(10)に記載の化粧板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた耐候性、耐傷性、及び加工性を有する外装材に特に適する化粧シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に柄印刷層3、透明樹脂層4、プライマー層5及び表面保護層6がこの順に積層されたものである。また、図1においては、基材2の裏面に裏面プライマー層7が設けられ、また柄印刷層3と透明樹脂層4の間に接着剤層8が設けられている。さらには、透明樹脂層4はプライマー層側表面に凹部を有し、該凹部に対してワイピングが施された着色樹脂層9が設けられている。以下、各層について詳細に説明する。
【0012】
本発明の化粧シートは、基材2として、ポリオレフィン系樹脂を用いることを特徴とする。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられ、これらのうち加工性等を考慮するとポリプロピレンが好ましい。
【0013】
また、化粧シートの加工性を向上させるために、上記ポリオレフィン系樹脂に、熱可塑性エラストマーを配合することも好適である。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、(a)数平均分子量:Mnが25000以上で、重量平均分子量:Mwと数平均分子量:Mnとの比が、Mw/Mn≦7である沸騰ヘプタン可溶ポリプロピレン10〜90質量%と、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性ポリプロピレン90〜10質量%との混合物(特公平6−23278号公報に記載の軟質ポリプロピレン)、(b)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン系重合体(結晶性高分子)をハードセグメントとし、これに部分架橋したエチレン/プロピレン/非共役ジエン三元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムをソフトセグメントとし、これらを質量比でソフトセグメント/ハードセグメント=50/50〜90/10の割合で均一に配合し混合してなるオレフィン系エラストマー(特公昭53−21021号公報に記載のオレフィン系エラストマー)、(c)未架橋モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)と、オレフィン共重合体(結晶性のハードセグメント)とを、質量比でソフトセグメント/ハードセグメント=60/40〜80/20の割合で混合したものに架橋剤を混合して加熱し、剪断応力を加えつつ動的に部分架橋させてなるオレフィン系エラストマー(特公昭53−34210号公報に記載のオレフィン系エラストマー)、(d)アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/ブテン−1共重合体等の、ペルオキシドと混合加熱することにより分子量が減じ、流動性が増す特性を有するペルオキシド分解型オレフィン系重合体(ハードセグメント)90〜40質量部と、エチレン/プロピレン共重合体ゴム、エチレン/プロピレン/非共役ジエン三元共重合体ゴム等の、ペルオキシドと混合加熱することで架橋して流動性が減じるペルオキシド架橋型モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)10〜60質量部と、ポリイソブチレン、ブチルゴム等の、ペルオキシドと混合加熱しても架橋せず流動性が不変のペルオキシド非架橋型炭化水素ゴム(ソフトセグメント兼流動性改質成分)5〜100質量部、及びパラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油系軟化剤5〜100質量部とを混合し、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理してなるオレフィン系エラストマー(特公昭56−15741号公報に記載のオレフィン系エラストマー)、(e)エチレン/スチレン/ブチレン共重合体からなるオレフィン系エラストマー(特開平2−139232号公報に記載のオレフィン系エラストマー)等が挙げられる。
【0014】
また熱可塑性エラストマーとして、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム等も用いることができるが、なかでも水素添加ジエン系ゴムが好ましい。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、オレフィン樹脂の結晶化を抑え、柔軟性、透明性を向上させる役割がある。一般にポリオレフィン系樹脂にジエン系ゴムを添加するとジエン系ゴムの二重結合の為、耐候性、耐熱性はジエン系ゴム無添加のポリオレフィン系樹脂より低下するが、ジエン系ゴムの二重結合を水素で飽和させることにより、ポリオレフィン系樹脂の耐候性、耐熱性に低下をきたすおそれがなくなる。
上記ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等がある。
【0015】
上記熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィン系樹脂中に10〜60質量%の範囲で含有することが好ましい。10質量%以上であると柔軟性が高くなり、より優れた加工性が得られる。一方、60質量%以下であると十分な耐傷性が得られる。以上の点から、熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリオレフィン系樹脂に対して30〜60質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0016】
また基材2の熱寸法収縮率は、100℃雰囲気中で30分間加熱した後の寸法収縮率(加熱前を基準として)が、基材の長手方向(長尺に押出成形された基材の長手方向)で−2〜+7%、基材の幅方向(長手方向と直行する方向)で−7〜+2%の範囲のものが好ましい。寸法収縮率がこの範囲内であると、Vカット加工時などに亀裂を生じることがない。また、基材2は無延伸であっても、2軸延伸していてもよい。
【0017】
基材2の厚さについては特に制限はないが、加工性、柔軟性、強度等の観点から、50〜150μmの範囲であることが好ましく、50〜120μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0018】
また、基材2は各種の被着材との接着性を向上させる目的で裏面にプライマー層7を設けてもよい。裏面プライマー層7の形成に用いられる材料としては特に限定されず、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。なお、裏面プライマー層7に用いられる材料は被着材によって、適宜選択される。
【0019】
次に、図1に示される柄印刷層3は本発明の化粧シートに装飾性を付与するものであり、通常、絵柄層3a及び着色層3bからなる。なお、後に詳述するように、基材2の色彩等をそのまま利用し、隠蔽する必要がないような場合には、絵柄層3aのみを施してもよいし、一方、柄を必要としない場合には、着色層3bのみを施してもよい。
柄印刷層の形成は、通常はインキを用い、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の公知の印刷法等で形成できる。
【0020】
絵柄層3aは基材2に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0021】
絵柄層3aに用いる絵柄インキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。
バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の公知のバインダーの中から、要求される物性、印刷適性等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂のほか、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いることができる。
これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
【0023】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、1種単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0024】
さらに、絵柄インキには架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、シラノール基含有化合物等が挙げられるが、イソシアネート基含有化合物が好ましい。
【0025】
着色層3bは、通常基材2を全面にわたって被覆する一様均一な層であり、本発明の化粧シートの意匠性を高める目的で所望により設けられる層である。隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものであって、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。また、基材2が白色であることを活かす場合や、基材2自身が適切に着色されている場合には着色層3bの形成を行う必要はない。
着色層3bに用いるインキとしては、絵柄層3aで用いたのと同様のものを用いることができる。
【0026】
次に、図1に示される透明樹脂層4は本発明の化粧シートにおいて、柄印刷層3を保護し、かつ、本発明の化粧シートに耐候性を付与するものである。本発明の透明樹脂層4は、透明性のものであれば限定されず、無色透明、着色透明、及び半透明のいずれも含む。
【0027】
透明樹脂層4としては、例えば熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を挙げることができる。本発明では、特に透明樹脂層4として、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0028】
透明樹脂層4は、必要に応じて着色されていてもよい。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、公知又は市販の顔料又は染料を適宜使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができ、また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
さらに、透明樹脂層4には、耐候性改善剤として紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤(UVA)は、有害な紫外線を吸収し、本発明の化粧シートの長期耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤(HALS)は、自身は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線エネルギーによって生じる有害なフリーラジカルを効率よく捕捉することにより安定化するものである。
【0030】
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなど、及びトリアジン系、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリ[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]などが挙げられる。また、その他、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系等の各紫外線吸収剤を挙げることができる。
本発明においては、紫外線吸収能が高く、また紫外線等の高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
【0031】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。
また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0032】
透明樹脂層4における紫外線吸収剤の含有量は、通常0.1〜1質量%の範囲であり、好ましくは0.3〜0.8質量%の範囲である。0.1質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、1質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。
また、透明樹脂層4における光安定剤の含有量は、通常0.05〜0.8質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜0.5質量%の範囲である。0.05質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、0.8質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。
【0033】
また、透明樹脂層4には、必要に応じて充填剤、艶消し剤(マット剤)、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
難燃剤は、耐燃性を付与するために添加される。例えば、塩化パラフィン、トリクレジルホスフェート、塩素化油、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモプロピルホスフェート、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、酸化アンチモン、含水アルミナ、ホウ酸バリウム等を好適に用いることができる。
酸化防止剤は、酸化分解を抑制ないしは防止するために添加される。例えば、アルキルフェノール類、アミン類、キノン類等が好適である。
【0034】
透明樹脂層4の形成方法については特に制限されず、種々の方法を用いることができる。例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、透明樹脂層4を形成し得る樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法等のいずれも採用することができる。
本発明では、特に溶融押出により透明樹脂層4を形成することが好ましい。とりわけ、透明樹脂層4は、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって塗工することが望ましい。具体的には、柄印刷層3上に予め接着剤層8を形成し、当該接着剤層8上にポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを溶融押出して塗工することにより透明樹脂層4を好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイ等を用いる公知の方法に従って実施すればよい。
なお、透明樹脂層4の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般的には20〜250μm、特に50〜200μm程度とすることが好ましい。
【0035】
上記接着剤層8は柄印刷層3による凹凸をならし、基材2と透明樹脂層4の接着性を向上させる機能があり、透明の樹脂層からなる。
接着剤層8の形成に用いられるインキとしては、バインダーに必要に応じて、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、紫外線吸収剤、光安定剤及び硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、アクリル/ポリウレタン系共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、又は2種以上の混合物として使用することができる。また、これらのうち、特にアクリル/ポリウレタン系共重合体が、柔軟性、強靭性及び弾性を兼ね備えており好ましい。なお、環境を考慮した場合には、塩素を含有する樹脂系は使用しないことが好ましい。
【0036】
また、接着剤層8の塗布量は、2〜25g/m2の範囲であることが好ましい。2g/m2以上であれば、基材2と透明樹脂層4の十分な接着性が得られ、25g/m2以下であると経済的に好ましい。以上の点から、該インキの塗布量は、基材4の種類にもよるが、通常、3〜20g/m2の範囲がさらに好ましい。
また、接着剤層8の厚さとしては、通常2〜25μmの範囲であり、3〜20μmの範囲が好ましい。
【0037】
本発明の化粧シート1における透明樹脂層4は、図1に示すように凹部を有していてもよい。このように透明性樹脂層に凹部を施す方法については特に制限はなく、例えばエンボス加工により施される。
エンボス加工は、化粧シートに木材板表面等所望のテクスチャーを付与するために行われる。例えば、加熱ドラム上で透明樹脂層4を構成する樹脂を加熱軟化させた後、さらに赤外線輻射ヒーターで140〜180℃に加熱し、所望の形の凹凸模様を設けたエンボス板で加圧、賦形し、冷却固定して形成する。これは、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用すればよい。
または、柄印刷層3上に透明樹脂層4を積層する工程で同時にエンボス加工を行う方法(いわゆるダブリングエンボス法)を用いてもよい。
【0038】
凹凸模様としては、例えば木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられ、これらの中から所望の模様を適宜選択することができる。
【0039】
なお、透明樹脂層4の表面(おもて面)及び/又は裏面には、隣接する層との接着性を高めるために、必要に応じてコロナ放電処理を行うこともできる。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従えばよい。
【0040】
上記、透明樹脂層4に設けられた凹部にはワイピング加工を施し、着色樹脂層9を形成することが意匠性及び耐候性を向上させる点で好ましい。
ワイピング加工とは、エンボス加工で設けた凹部にドクターブレードで表面をかきながら着色インキ組成物を充填する加工をいう。
【0041】
着色インキ組成物としては、公知の着色剤(染料又は顔料)を後に詳述するアクリルウレタン共重合体とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる。着色インキ組成物に含まれる着色剤、溶媒等は、柄印刷層で上述した着色剤、溶媒等と同様のものが使用できる。
【0042】
上記着色インキ組成物に用いられるバインダーは、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなることが好ましい。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤として使用して、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂であって、柔軟性に富み表面保護層6や接着剤の硬化収縮に追従し易いとともに耐候性が高い。
【0043】
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o又はp−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、及びこれらの付加体、多量体などを、単独使用又は2種以上使用する。これらの中でも、良好な耐候密着性を与える点で、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、或いはイソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートが好ましい。
【0044】
アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を併用することができる。
【0045】
また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のアクリル成分とウレタン成分の質量比は、特に制限されないが、耐候性、耐溶剤性の点で、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を80:20〜20:80の範囲とすることが好ましく、70:30〜30:70の範囲とすることがより好ましい。なお、アクリル及びウレタン成分の含有量が上記の範囲内であると過度に硬い塗膜となることがなく、十分な加工適性が得られ、折り曲げ加工時に樹脂表面上に白い筋(白化)が生じるといった問題が生じない。
【0046】
また、該バインダーはアクリルポリオールを含有することが好ましい。アクリルポリオールは、上述したアクリルモノマーにヒドロキシル基が導入されたものである。例えば、上記アクリルモノマーに(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等のヒドロキシル基含有のアクリルモノマーを共重合させて合成することができる。これらのアクリルポリオールは架橋剤としての機能を果たす。
前記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体と該アクリルポリオールの質量比は80:20〜20:80の範囲が好ましい。この範囲であると、イソシアネートとの2液架橋により硬くなり、耐溶剤性が向上する上、十分な柔軟性が得られる。なお、ウレタンアクリル共重合体のみであると、柔らかく、十分な耐溶剤性が得られない場合がある。以上の点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比は70:30〜30:70の範囲がより好ましい。
【0047】
上記ワイピング加工に用いられるインキ組成物のバインダーを構成する樹脂のガラス転移温度は、室温(25℃)以上であることが好ましく、40〜100℃がより好ましい。ガラス転移温度を上記範囲に設定することにより、該樹脂の柔軟性(粘性)が低下し、樹脂流動性がより向上する。すなわち、ワイピング加工時における着色樹脂の掻き取り性、透明性樹脂層の凹部への入り込み性等がより向上する。
なお、着色インキ中のバインダーの含有量としては本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、通常は15〜25質量%である。
【0048】
本発明の化粧シートにおいては、さらに意匠効果を向上させるため、着色樹脂層9の入射角60℃における光沢度が30以下であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。なお、上記の光沢度の測定は、JIS Z 8741に準拠するものである。
このような光沢度に設定する方法は限定されないが、例えば樹脂にマット剤等を含有させる方法がある。
【0049】
マット剤は、着色樹脂層9の表面をマット化できるものであればよく、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)等の無機粒子;架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ナイロン等の有機材料パウダーないしビーズ等が挙げられる。この中でも、特にシリカを好適に用いることができる。
マット剤の粒径については特に制限はなく、用途等に応じて適宜決定することができる。一般的には、粒径2μm〜6μmの範囲であり、特に粒径3μm〜5μmの範囲とすることがより好ましい。マット剤の粒径が上記の範囲内である場合、塗工面の荒れが生じにくい。また、マット剤の含有量についても特に制限はなく、高度にマット化するには添加量は0.5〜5質量%とすればよく、さらに好ましくは2〜4質量%である。
【0050】
また、ワイピング加工に用いられるインキ組成物中には、本発明の化粧シートの耐候性を高める目的で、耐候性改善剤として紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることができる。耐候性改善剤としては、透明樹脂層4で用いたのと同様のものを用いることができる。
【0051】
着色樹脂層9は、上述のように透明樹脂層4の凹部にインキ組成物を導入することで形成される。このような凹部に形成される着色樹脂層9と前記柄印刷層3との相乗効果によって、意匠効果が向上する。特に、木目導管溝凹凸の凹部に着色樹脂層を形成させることによって、より実際の木目に近い意匠を表現することができ、これにより、商品価値を高めることができる。また、上述のようにワイピング加工に用いられるインキ組成物中に紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることによって、着色樹脂層9に耐候性を付与することができる。
【0052】
次に、本発明の化粧シートは、透明樹脂層4の上にプライマー層5が積層されることを特徴とする。
プライマー層5は上記ワイピング加工に用いられるインキ組成物で使用するバインダー樹脂と同様のものを用いる。すなわち、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなる樹脂を用いる。これらの樹脂を用いることで、極めて高い耐候性を本発明の化粧シート1に付与することができる。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のアクリル成分とウレタン成分の質量比は、特に制限されないが、耐候性を向上させるとの観点から、前記と同様にウレタン成分:アクリル成分の質量比を80:20〜20:80の範囲とすることが好ましく、70:30〜30:70の範囲とすることがより好ましい。
また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比は80:20〜20:80である。この範囲であると、イソシアネートとの2液架橋により硬くなり、耐溶剤性が向上する上、十分な柔軟性が得られる。なお、ウレタンアクリル共重合体のみであると、柔らかく、十分な耐溶剤性が得られない。以上の点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比は70:30〜30:70の範囲がより好ましい。
【0053】
上記プライマー層5には、耐候性をさらに向上させるため、透明樹脂層4で用いたのと同様の、耐候性改善剤を含有することが好ましく、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることが好ましい。
【0054】
プライマー層5の厚さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、十分な耐候性及び曲げ加工性を得るとの観点から、0.5〜10μmの範囲が好ましく、さらには1〜5μmの範囲が好ましい。
また、プライマー層の形成は、上記樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態で用い、公知の印刷方法、塗布方法等によって行うことができる。
【0055】
次に、本発明の化粧シート1は最表面に表面保護層6を有することを特徴とする。表面保護層6は電子線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成される。ここで、電子線硬化性樹脂組成物とは、電子線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電子線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0056】
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0059】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0060】
また、本発明の化粧シートは表面保護層6には、耐傷性及び艶消し効果を付与するために、シリカを含有することが好ましい。シリカとしては特に限定されることはなく、湿式シリカ、乾式シリカのいずれをも用いることもできる。該シリカは耐傷性を向上させるとの観点から、表面処理されていることが好ましい。表面処理としては、例えば、未処理シリカの一部をシランカップリング剤、グリコール系処理剤、その他炭化水素系処理剤をシリカ表面に吸着させる方法等がある。
【0061】
上記シリカの平均粒径は、表面保護層6の厚さとの関係で決定することが好ましい。表面保護層の層厚よりも極端に小さいと艶消し効果が乏しくなり、シリカによる表面の艶の制御が困難となる。一方、表面保護層の層厚よりも極端に大きいと、シリカ粒子が表面保護層の上部に露出し、表面がざらつくことにより意匠性が損なわれる場合がある。本発明における表面保護層の層厚は通常5〜6μm程度であることが多く、シリカの平均粒径は1〜6μmの範囲が好ましく、3〜5μmの範囲がより好ましい。
なお、平均粒径の測定方法としては特に制限はなく、レーザー回折法、コールカウンター法、沈澱法等の公知の方法により測定できる。
【0062】
また、上記シリカは1種のものを単独で、又は複数種のものを組み合わせて使用することができ、その含有量は、電子線硬化性樹脂100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。20質量部以下であると、表面保護層を塗工する際にチキソ性が高くなりすぎることがなく、塗工性が良好となる。一方、下限値については特に制限はないが、十分な艶消し効果を得るためには1質量部以上であることが好ましく、特に5〜15質量部の範囲であることが好ましい。
【0063】
また本発明における電子線硬化性樹脂組成物には、耐候性を向上させるため、透明樹脂層4で用いたのと同様の、耐候性改善剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)を含有させることが好ましい。
【0064】
本発明の化粧シートは、上述のように、表面保護層又はプライマー層のいずれかに、又はその両方に、紫外線吸収剤(UVA)及び光安定剤(HALS)を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤(UVA)の含有量は、表面保護層及び/又はプライマー層中に0.5〜20質量%の範囲であることが好ましい。0.5質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、20質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。以上の観点から、表面保護層及び/又はプライマー層中の紫外線吸収剤(UVA)の含有量は0.5〜15質量%の範囲がさらに好ましい。
また、光安定剤(HALS)の含有量は、表面保護層及び/又はプライマー層中に1〜8質量%の範囲であることが好ましい。1質量%以上であると本発明の化粧シートに十分な耐候性を付与することができ、8質量%以下であると、ブリードアウトすることがない。以上の観点から、表面保護層及び/又はプライマー層中の光安定剤(HALS)の含有量は1〜5質量%の範囲がさらに好ましい。
【0065】
また、本発明における電子線硬化性樹脂組成物には、上記耐候性改善剤の他に、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、分散剤などが挙げられる。
【0066】
耐摩耗性向上剤としては、上述の耐傷性を付与するためのシリカの他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を添加することができ、例えば無機物ではα−アルミナ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0067】
本発明においては、前記の電子線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー、シリカ及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電子線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。
【0068】
上述のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy、好ましくは10〜100kGy、さらには30〜70kGyの範囲で選定される。
【0069】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0070】
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0071】
本発明の化粧シートは、図2に示すように、表面保護層に凹部を有していてもよい。該凹部を形成する方法としては、エンボス加工など、図1における透明樹脂層4に凹部を設けるのと同様の方法を用いることができる。
【0072】
本発明の化粧シートはJIS K 7127に準拠した引張試験において、表面保護層6が破断する引張伸度が10%以上であることを特徴とする。
引張伸度が10%以上であると、本発明の化粧シートを、例えば鋼板に貼付し、90度程度の曲げ加工を行っても、表面に割れ、白化が目立たない。また、硬化時に大きなストレスが層内に残留することがなく、経時により層が脆化し、後にクラックが発生することもない。
一方、引張伸度の上限については特に制限はないが、引張伸度が10〜350%の範囲が好ましく、耐溶剤性・耐薬品性・耐汚染性を考慮すると、引張伸度は10〜50%の範囲がさらに好ましい。
【0073】
[引張伸度の測定]
引張伸度の測定は、JIS K 7127に準拠したもので、PET基材上に厚さ50μmの表面保護層を形成し、これを剥離して、裁断することで幅25mm、長さ120mmの試験片を得る。この試験片を用いて、引張速度30mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度23℃の条件で行い、該試験片が破断するまでの引張伸度を測定する。
【0074】
本発明は上記化粧シートの表面保護層が最表面層となるように当該シートが被着材上に積層されてなる化粧板をも包含するものである。
本発明の化粧シートが適用される被着材は、特に制限されるものではなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、本発明化粧シートは、鋼板などの金属材料、木質材に好適に使用することができる。鋼板としては、具体的には、溶融亜鉛メッキ鋼板等が挙げられ、木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0075】
本発明の化粧シートの各種被着材への積層方法としては特に限定されるものではなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
なお、接着剤で本発明の化粧シートを各種被着材に接着するに際し、裏面プライマー層7を設けることが接着性を高めることができ好ましい。
【0076】
このようにして製造された化粧板は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧板、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、玄関ドア等の外装材として好ましく用いることができる。特に、本発明の化粧板は耐候性に優れ、加工適性が高いため、鋼板等に貼付され、玄関等の外装材として用いることが好適である。
【実施例】
【0077】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)表面保護層の引張伸度
明細書本文中に記載する方法により行った。
【0078】
(2)耐候性
アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製)を用いて、800時間まで測定し、シート表面にクラックや白化などの外観変化が生じる時間で評価した。
【0079】
(3)耐溶剤性(ラビング試験)
300g/cm2のオモリに、ガーゼを輪ゴムで取り付け、エタノールを染み込ませる。各実施例及び比較例にて製造した化粧シートの表面をエンボス導管に対し垂直に50往復し、化粧シートの表面を目視により、またガーゼの着色状態を目視により評価した。また、エタノールに代えて、メチルエチルケトンを染みこませたガーゼを用いて、上記と同様の試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
5.ガーゼの着色が見られず、かつ、化粧シート表面の変化が見られなかった。
4.ガーゼの着色及びシート表面の変化がごく僅かに見られた。
3.ガーゼの着色及びシート表面の変化が少し見られた。
2.ガーゼの着色及び変化が明らかに見られた。
1.ガーゼの着色及びシート表面の変化が顕著に見られた。
【0080】
(4)加工適性
各実施例及び比較例にて製造した化粧シートを鋼板に貼付して、90度の折り曲げ加工を行い、その際にクラックが生じるか否かを目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;良好
△;軽微な割れ又は白化が認められるが、実用的には違和感がない程度である。
×;割れ又は白化が認められる。
【0081】
(5)耐傷性
各実施例及び比較例にて製造した化粧シートについて、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;外観にほとんど変化なし。
△;外観に軽微な傷つきや艶変化がある。
×;外観に傷つきがあり、艶変化がある。
【0082】
(6)意匠性の評価
各実施例及び比較例にて製造した化粧シートについて、パネラーが実施例1と比較例1との意匠性(どちらがより実物の木目に似ているか否か)を比較した。パネラー50人中、38人が実施例1の意匠性の優位性を支持した。
【0083】
実施例1
基材2として、着色ポリプロピレン樹脂(厚さ80μm)からなる樹脂シートを用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面に木目柄をグラビア印刷により形成し、柄印刷層3を得た。一方、裏面には、ウレタン系樹脂をバインダーとした裏面プライマー層7(厚さ2μm)をグラビア印刷により形成した。
次いで、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融して得た透明樹脂層4(厚さ80μm)を形成し、2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着剤層8(乾燥状態での厚さ15μm)を形成した上に、透明樹脂層4をドライラミネート法により積層させた。
次に、透明樹脂層4の表面を赤外線非接触方式のヒーターで加熱し、透明樹脂層4の表面を柔らかくした。その後、直ちに基材2と反対側の透明樹脂層4の表面に対し熱圧によるエンボス加工を行い、木目導管溝模様の凹凸模様を賦形した。
【0084】
次いで、透明樹脂層4の表面にコロナ放電処理を施した後、ワイピング加工を実施した。ワイピング加工に用いるインキ組成物は、バインダーとしてウレタン成分とアクリル成分の質量比が70/30であるポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体(以下「PC系ウレタンアクリル」という。)とアクリルポリオールを、PC系ウレタンアクリルとアクリルポリオールの質量比が50/50となるように混合したものを用いた。これに、着色剤(カーボンブラック、イソインドリノン及びキナクリドンを含む。)を5質量%、シリカ粒子(未処理シリカ「市販品」平均粒径3μm)15質量%、トリアジン系紫外線吸収剤15質量%、及びヒンダードアミン系光安定剤3質量%を含有し、インキ組成物とした。
このインキ組成物とヘキサンメチレンジイソシアネート(硬化剤)とを100対5の質量割合で混合し、該混合物を上記透明樹脂層4に塗布してワイピング加工することにより、上記透明樹脂層4の凹部に着色樹脂層9を形成した。なお、塗布量は1.5g/m2であった。
【0085】
次に、第1表に示す配合比のポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体及びアクリルポリオールからなる樹脂組成物を塗工し、プライマー層5(2.5g/m2)を形成した。すなわち、該樹脂組成物は、ウレタン成分とアクリル成分の質量比が70/30であるPC系ウレタンアクリルとアクリルポリオールを50/50の質量比で混合したものであり、これにトリアジン系紫外線吸収剤15質量%、及びヒンダードアミン系光安定剤3質量%を含有するものである。
この樹脂組成物とヘキサンメチレンジイソシアネート(硬化剤)とを100対5の質量割合で混合し、該混合物を透明樹脂層4及び着色樹脂層9上に塗布してプライマー層5を形成した。
【0086】
次に、電離放射線硬化型多官能ウレタンオリゴマー35質量部及び2官能オリゴマー65質量部の合計100質量部(平均分子量1,200、平均官能基数3、以下「ウレタンアクリレート樹脂」という。)に対し、平均粒径5μmのシリカ10質量部(吸油量:200〜300ml/100g、見かけ比重:0.08〜0.16g/cm3)、平均粒径4μmのシリカ5質量部(吸油量0〜50ml/100g、見かけ比重:0.45〜0.85g/cm3)、ワックス5質量部(脂肪族系ワックス、融点110〜200℃)を添加した。これに、さらにトリアジン系紫外線吸収剤1質量%、及びヒンダードアミン系光安定剤2質量%を加えた組成物を用いて、グラビアコートにて塗膜を形成した。その後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(5g/m2)を形成させて化粧シートを得た。なお、表面保護層の厚さは5μmであった。
【0087】
実施例2〜5及び比較例1〜4
プライマー層に用いる樹脂、表面保護層に用いる樹脂、着色樹脂層に用いる樹脂及び紫外線吸収剤を第1表に記載するものとすること以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
*1 PC系ウレタンアクリル/アクリルポリオール;ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの混合物
*2 HMDI;ヘキサメチレンジイソシアネート
*3 ポリエステル系ウレタンアクリル;ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体
*4 ポリエステル系ウレタンアクリル/アクリルポリオール;ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの混合物
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、優れた耐候性、耐傷性、及び加工性を有する化粧シートを提供することができる。本発明の化粧シートは、家具、建具等の建材の表面装飾材料として有効であり、特に鋼板に貼付し、屋外で使用される玄関ドア等の外装材に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧シートの断面の別の態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0093】
1.化粧シート
2.基材
3.柄印刷層
3a.絵柄層
3b.着色層
4.透明樹脂層
5.プライマー層
6.表面保護層
7.裏面プライマー層
8.接着剤層
9.着色樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも、柄印刷層、透明樹脂層、プライマー層及び表面保護層を有する化粧シートであって、基材がポリオレフィン系樹脂からなり、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体及びアクリルポリオールからなり、該ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80であり、表面保護層が電子線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、かつ、該表面保護層のJIS K 7127に準拠した以下の測定条件で測定した引張試験における引張伸度が10〜50%である化粧シート。
測定条件;厚さ50μm、幅25mm、長さ120mmの試験片を用い、引張速度30mm/分、チャック間距離80mm、標線間距離50mm、温度23℃の条件で破断するまでの引張伸度を測定する。
【請求項2】
前記プライマー層を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のウレタン成分とアクリル成分との質量比が80:20〜20:80である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明樹脂層の表面保護層側に凹部を有し、該凹部にはワイピング加工が施され、該ワイピング加工に用いられるインキ組成物が着色剤及びポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールからなるバインダーにより構成される請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
ワイピング加工に用いられるインキ組成物を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のウレタン成分とアクリル成分との質量比が80:20〜20:80である請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
ワイピング加工に用いられるインキ組成物を構成するポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体とアクリルポリオールの質量比が80:20〜20:80である請求項3又は4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記表面保護層が凹部を有する請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
表面保護層及び/又はプライマー層中に紫外線吸収剤を0.5〜20質量%及び光安定剤を1〜8質量%含有する請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項8】
柄印刷層と透明樹脂層の間に接着剤層を有する請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
基材の裏面に裏面プライマー層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化粧シートの表面保護層が最表面層となるように当該シートが被着材に積層されてなる化粧板。
【請求項11】
前記被着材が鋼板である請求項10に記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201323(P2011−201323A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155703(P2011−155703)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【分割の表示】特願2007−78707(P2007−78707)の分割
【原出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】