説明

化粧品

【課題】通常の使用環境下における変色特性に優れ、装飾性を一層向上させることができる化粧品を提供する。
【解決手段】本発明による化粧品は、希土類元素の原子、+三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む化合物、換言すれば、下記式(1)又は式(2);
RTO3 …(1)、
2QO5 …(2)、
で表される化合物(Rは希土類元素を示し、Tは+三価の電子配置をとり得る元素を示し、Qは+四価の電子配置をとり得る元素を示す。)を含有して成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
自然光や室内光等の光下で発色する装飾材料を含む化粧品として、例えば、特許文献1には、一般式:RVO4(式中、Rは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,又はLuを示す。なお、V及びOは、それぞれバナジウム及び酸素を示す。)で表される化合物の単結晶粉末が配合されたファンデーション、アイシャドー、フェイスカラー等が記載されている。
【特許文献1】特開2005−35871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の化粧品は、可視光、紫外光、及び赤外光下でそれぞれ異なる発色を呈するRVO4化合物の単結晶粉末を含むものであり、そのようなRVO4化合物の発色特性により装飾性が高められている。
【0004】
しかし、化粧品の通常の使用環境としては、戸外での自然光(太陽光)下と室内での電灯下が主であることから、化粧品の発色特性としては、紫外光や赤外光が照射されたときの色変化よりは、自然光と電灯(特に蛍光灯)からの光が照射されたときの色変化が重要視される。これに対し、本発明者らが詳細に検討したところ、上記従来のRVO4化合物を化粧品の一成分として用いる場合、上述したような通常の使用環境下では、未だ十分な色変化が得られ難いことが判明した。
【0005】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、通常の使用環境下における変色性に優れ、装飾性を一層向上させることができる化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による化粧品は、希土類元素の原子、+(プラス)三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む化合物(以下、「特定化合物」という)を含有して成る。換言すれば、本発明の化粧品は、特定化合物が、下記式(1)又は式(2);
RTO3 …(1)、
2QO5 …(2)、
で表されるものである。なお、式(1)及び式(2)中、Rは希土類元素を示し、Tは+三価の電子配置をとり得る元素を示し、Qは+四価の電子配置をとり得る元素を示す。
【0007】
かかる構成の化粧品に用いられる特定化合物は、それ自体、自然光下と蛍光灯下での各発色波長スペクトルが有意に異なり、それにより、化粧品の通常の使用環境下における変色性が向上される。
【0008】
また、本発明の化粧品に配合される特定化合物は、その化学組成として一種の希土類元素を含むものであり、さらに他種の元素(例えば他の希土類元素)を含む化合物すなわち四種以上の元素を含む化合物に比して、化粧品に配合したときのその化粧品の発色性及び変色性、化合物単結晶の製造における簡便性、及び品質管理の観点から有用である。
【0009】
換言すれば、特に複数の希土類元素を含む化合物では、各元素に起因する発色波長の相違によって、各元素に固有の発色が混じりあって互いに弱められてしまうおそれがある。こうなると、化粧品に配合せしめたときに、通常の使用環境下での十分な発色性及び変色性が得られ難くなってしまう。これに対し、一種の希土類元素を含む特定化合物を成分とする本発明の化粧品では、十分な発色が得られるとともに、変色性がより高められる。
【0010】
また、複数の希土類元素を含む化合物では、所望の発色特性を有する結晶を得るために、結晶の育成雰囲気を適正かつ厳密に制御して希土類元素間の組成比を一定にすることが重要である場合が多い。これに対し、本発明に用いられる特定化合物では、複数の希土類元素間の組成比つまりストイキオメトリーを調節する必要がないので、結晶成長における雰囲気制御が簡便であり、ひいては、化合物結晶の組成を安定させ易くなる。よって、そのような特定化合物の品質を一定に保ち易く、ひいては化粧品としての品質が高められる。
【0011】
具体的には、希土類元素がネオジム又はホルミウムであると、化粧品の通常の使用環境下での変色性が一層向上され、また、同様に、+三価の電子配置をとり得る元素がアルミニウムであり、又は、+四価の電子配置をとり得る元素がケイ素であると好適である。つまり、本発明による化粧品は、特定化合物としてNdAlO3、Nd2SiO5、HoAlO3、又はHo2SiO5を含むものであると一層有用である。
【0012】
さらに、化粧品が、主として一種の特定化合物を含むもの、すなわち一種の特定化合物のみで複数種の特定化合物を含まないものであると好ましい。
【0013】
すなわち、複数種の特定化合物を組み合わせて一種の化粧品に配合することも考えられるが、この場合、上述した四種以上の元素を含む化合物の場合と同様に、各特定化合物に含まれるそれぞれの希土類元素に起因する発色波長の相違によって、各元素固有の発色が互いに弱められてしまうおそれがある。こうなると、通常の使用環境下での十分な発色性及び変色性が得られ難くなってしまう。よって、一種の化粧品が主として一種の特定化合物を含有することにより、それに含まれる希土類元素に特有な発色性及び変色性が減弱されることなく化粧品に付与される。
【0014】
またさらに、特に発色性の観点から、特定化合物としては、単結晶として成長した形態に由来するものを用いることが好ましい。より具体的には、分散性の観点から、その単結晶を破砕して粉体化したもの(粉末)が好適である。この場合、その粉体の粒度(直径;なお、後述するように体積基準のメジアン径である。以下同様。)が0.5〜100μmであると好ましく、0.1〜20μmであるとより好ましく、1〜10μmであると特に好ましい。
【0015】
この粒度が0.5μm未満であると、化粧品中の特定化合物の配合量にも依るが、化粧品においてその特定化合物に特有な変色性が十分に得られ難い傾向にある。一方、この粒度が100μmを超えると、化粧品が例えば皮膚に直接塗布又は塗擦されるものの場合、過度のざらつき感が生じてしまったり、特定化合物の粉体がスクラブ剤のように機能してしまったりといった不都合が生じ得る。また、粉体の粒度が100μmを超えると、化粧品に含まれる他の成分にも依るが、化粧品中に十分に分散させ難くなる場合があり、こうなると化粧品が塗布された部位において、発色が部分的に異なって(偏って)しまい易くなる傾向にある。
【0016】
なお、本発明における「化粧品」とは、薬事法第2条第3項本文に規定される如く、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされているもので、人体に対する作用が緩和なもの」をいう。ただし、これらの使用目的のほかに、薬事法第1項第2号又は同第3号に規定する用途に使用されることをも目的とされているもの、及び同法第2条第2項に規定される医薬部外品も含むものとする。また、一般に‘化粧料’と呼ばれるものも含む。
【0017】
さらに、本発明における「希土類元素」とは、スカンジウム(Sc),イットリウム(Y),ランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),エルビウム(Er),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb),又はルテチウム(Lu)をいう。またさらに、本発明における「粒度」とは、体積基準のメジアン径をいう。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化粧品によれば、希土類元素の原子、+三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む特定化合物を含有するので、通常の使用環境下における変色性が格段に向上され、装飾性を一層高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明による化粧品は、希土類元素の原子、+三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む特定化合物を含有して成るものである。すなわち、特定化合物として下記式(1)又は式(2);
RTO3 …(1)、
2QO5 …(2)、
で表される化合物を成分の一つとして含むものである。なお、式(1)及び式(2)中、Rは希土類元素を示し、Tは+三価の電子配置をとり得る元素を示し、Qは+四価の電子配置をとり得る元素を示す。
【0021】
この特定化合物は、種々の波長スペクトルを有する照射光に対する発光特性が希土類元素の種類によって異なり、各特定化合物に特有な発色を呈し、殊に化粧品に用いる場合、希土類元素のなかでも、ランタノイド元素がより好ましく、特に、ネオジム(Nd)又はホルミウム(Ho)が好適である。ネオジム及びホルミウムは、希土類元素のなかでも、自然光(太陽光)及び蛍光灯からの光のそれぞれの照射波長領域に対し、吸収スペクトルにおいて極めて狭い吸収波長帯を有するため、それら照射光の種類に依存して色合いが劇的に変化し易いものと推定される。但し、作用機序はこれに限定されない。
【0022】
また、+三価の電子配置をとり得る元素としてはアルミニウム(Al)が好ましく、+四価の電子配置をとり得る元素としてはホルミウム(Ho)が好適である。
【0023】
すなわち、化粧品が、特定化合物として、NdAlO3、Nd2SiO5、HoAlO3、又はHo2SiO5を含むものであると一層有用である。これらの発色特性は、それぞれ単結晶の形態において、自然光(太陽光)下では、NdAlO3が赤色、Nd2SiO5が青色、HoAlO3が黄色、Ho2SiO5が赤色を呈する。また、これらの単結晶を破砕して粉体化したものは、全体としてそれぞれの単結晶が発する色の度合いがやや淡くなり、化粧品への配合成分として好適である。
【0024】
このような特定化合物の単結晶の製造方法は、特に制限されないが、一般に用いられている単結晶育成方法によって得ることが可能である。具体的には、NdAlO3を例にとると、原料としてNd23粉末とAl23粉末の適量を混合し、焼成した後、その焼成物を融解させ、固化させることで得られる。製造時の環境は、大気雰囲気、酸素ガス雰囲気、不活性ガスと酸素ガスの混合雰囲気といった酸化性雰囲気とされる。また、得られた単結晶は、必要に応じてアニール処理が施される。これにより、結晶歪みや結晶欠陥、屈折率の不均一性が改善される。これら一連の製造プロセスにおける各種条件は、目的の特定化合物に応じて適宜設定することができる。
【0025】
こうして得られた特定化合物の単結晶は、ブロック状、単結晶片状、微結晶状、粗粉末状、微粉末状等に適宜機械加工することができ、化粧品へ配合する際には、上述のごとく、粉体化されたものを用いることが望ましい。
【0026】
この場合、その粉体の粒度としては、0.5〜100μmであることが好ましく、0.1〜20μmであると一層好ましく、1〜10μmであると特に好ましい。かかる粉体の粒度の測定方法としては、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定を例示できる。
【0027】
このように粉体化された特定化合物を他の化粧品成分(基剤、各種添加剤等)とともに混合することにより、本発明の化粧品を得ることができる。なお、化粧品の剤型は、特に限定されるものではなく、例えば、クリーム、乳液、ローション、パック、リップスティック、ファンデーション、ネイルカラー、フェイスカラー、アイシャドー、マスカラ、ゼリー、軟膏、皮膜、パウダー、等の通常の化粧品に用いられる任意の剤型が挙げられる。
【0028】
基剤原料としては、例えば、動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の公知の原料が挙げられる。
【0029】
また、各種添加剤としては、例えば、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、増粘剤、界面活性剤、血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤、その他光沢材といった装飾材、等の通常の化粧品に用いられる添加成分が挙げられる。
【0030】
さらに、化粧品には、主として一種の特定化合物を単独で配合することが好ましい。つまり、化粧品組成物が、一種の特定化合物のみ(例えば、NdAlO3のみ、Nd2SiO5のみ、HoAlO3のみ、又はHo2SiO5のみ)を含み、複数種の特定化合物(例えば、NdAlO3とHo2SiO5、又はNd2SiO5とHoAlO3)を含まないものであると好ましい。
【0031】
またさらに、本発明の化粧品における特定化合物の含有量としては、化粧品全量に対して、好ましくは5〜70質量%の範囲内で適宜調節することが望ましい。
【0032】
このように構成された本発明の化粧品によれば、特定化合物の発色波長スペクトルが、自然光下と蛍光灯下で有意に異なり、それにより、化粧品の通常の使用環境下における変色性が向上され、その結果、化粧品としての装飾性をこれまで以上に高めることができる。
【0033】
また、特定化合物が、化学組成として一種の希土類元素を含むので、例えば複数の希土類元素を含む化合物を用いる場合に生じ得るような各希土類元素に特有の色の混ざり合いや干渉が防止される。よって、本発明による化粧品では、複数の希土類元素を含むような化合物を含む化粧品に比して、目的とする発色の色純度が高められ、その結果、自然光、及び蛍光灯の光が照射されたときの色変化をより際立たせることができる。
【0034】
さらに、複数の希土類元素を含む化合物では、安定した一定の発色特性を有する結晶を得るべく、希土類元素間の組成比を一定にすること、つまりストイキオメトリーの確実な制御が望まれ、そのために結晶の育成雰囲気を適正かつ厳密に制御する必要性が高い。これに対し、本発明の化粧品に配合される特定化合物では、そのような手間が不要或いは少ないので、結晶成長における雰囲気制御が比較的簡便となる。よって、化合物結晶の品質を一定に保ち易く、別の側面から見れば、それにより製造歩留まりが高められるので、化粧品の品質向上及び経済性の点において有利となる。
【0035】
またさらに、本発明の化粧品に、主として一種の特定化合物を単独で配合するようにすれば、一種の化粧品に複数種の特定化合物を組み合わせて配合する場合に比して、上述した四種以上の元素を含む化合物に対する優位性と同様に、発色性及び変色性が高められる。したがって、化粧品としての装飾性を一層向上させることができる。
【0036】
さらにまた、粉体として化粧品に配合する特定化合物の粒度を0.5μm以上とすれば、化粧品においてその特定化合物に特有な十分な発色性と変色性を得易くなる利点がある。また、その粒度を100μm以下とすれば、化粧品が例えば皮膚に直接塗布又は塗擦されるものであっても、ざらつき感等の違和感を生じ難くなる傾向にあるので好ましい。さらに、粒度を100μm以下とすれば、化粧品中に均一に分散させ易くなり、化粧品が塗布された部位において、均一な発色を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の化粧品によれば、希土類元素の原子、+三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む化合物(特定化合物)を含有し、通常の使用環境下における変色性が高められ、これにより装飾性を向上させることができるので、化粧品全般に広く利用することが可能である。
【実施例】
【0038】
〈調製例1〉
原料として、Nd23粉末とSiO2粉末を用い、上述した単結晶育成方法によりNd2SiO5の単結晶を作製した。このときの条件を以下に示す。
・Nd23:SiO2=1:1(モル比)
・雰囲気:大気
・焼成温度/時間:1500℃/4hr
【0039】
次に、このNd2SiO5単結晶をジェットミルで粉砕・微粉化してNd2SiO5の単結晶粉体を得た。この粉体を自然光(太陽光)下及び室内の蛍光灯下で目視観察したこところ、それぞれ淡紫色(スミレ色)及び淡青色を呈することが確認された。
【0040】
〈調製例2〉
原料として、Ho23粉末とAl23粉末を用いたこと以外は、調製例1と同様にしてHoAlO3の単結晶を作製し、これをジェットミルで粉砕・微粉化してHoAlO3の単結晶粉体を得た。この粉体を自然光(太陽光)下及び室内蛍光灯下で目視観察したこところ、それぞれ淡黄色(ベージュ色)及び淡赤色(ピンク色)を呈することが確認された。
【0041】
〈粒度測定〉
調製例1及び2でそれぞれ得られたNd2SiO5の単結晶粉体及びHoAlO3の単結晶粉体の粒度(体積基準のメジアン径)を、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて測定した。
【0042】
具体的な手順としては、Nd2SiO5の単結晶粉体及びHoAlO3の単結晶粉体の各試料の一部をビーカーに分取し、これに分散媒として純水40mlを加えたものを母液とした。次いで、予め分散媒液(純水)で満たし且つ循環ポンプを始動させておいたサンプラー部の中に、上記母液の一部を適正濃度になるまで添加し、母液を循環させながらフローセルにレーザー光を照射し、粒度測定を行った。なお、母液に対して超音波振動を印加しない状態で測定を実施した。
【0043】
それらの粒度の測定結果を以下に示す。
・Nd2SiO5:1.794μm
・HoAlO3 :2.756μm
【0044】
〈実施例1〉
以下の処方で本発明の化粧品としてのネイルカラー(マニキュア、エナメル)を調製した。なお、以下の百分率は質量基準である。
・調製例1で得たNd2SiO5の単結晶粉体:10%、
・酢酸エチル:37%、
・酢酸ブチル:25%、
・ニトロセルロース:10%、
・クエン酸アセチルトリエチル:5%、
・安息香酸スクロース:5%、
・イソプロパノール:5%、
・アクリル酸アルキルコポリマー:3%
【0045】
〈実施例2〉
調製例1で得たNd2SiO5の単結晶粉体の代わりに、調製例2で得たHoAlO3の単結晶粉体を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてネイルカラーを調製した。
【0046】
〈評価〉
まず、実施例1及び2で得たネイルカラーのそれぞれを透明ガラス板の一方面に略均一に塗布した。次いで、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製CM−2600d)を用いて、それらのネイルカラー塗布サンプルの分光測定を行った。測定においては、塗布されたネイルカラーに対して透明ガラス板の他方面(裏面)から光源(キセノンランプ)光を照射し、その分光測定値に基づいて、D65光源(太陽光に相当)、及びF10光源(三波長昼色蛍光灯に相当)からの光を照射した場合の測色値を解析した。JIS Z 8729に規定されているL*、a*、及びb*の測定結果、並びに下記式(3)で算出されるΔE値の計算結果をまとめて表1に示す。なお、「Δ」は、二値間の差を示す。
ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*21/2 …(3)
【表1】

【0047】
次に、実施例1及び2で得たネイルカラーのそれぞれを手の爪に塗布し、乾燥させた後、人工太陽照明灯(セリック株式会社製XC−100形)、及び蛍光灯(三波長昼色灯)からの光を個別に照射し、目視観察を行った。
【0048】
その結果、実施例1で得られたネイルカラー(Nd2SiO5の単結晶粉体入り)を塗布した部位は、人工太陽照明灯下で鮮やかな淡紫色を帯び、一方、蛍光灯下では鮮やかな淡青色に変化することが確認された。また、実施例2で得られたネイルカラー(HoAlO3の単結晶粉体入り)を塗布した部位は、人工太陽照明灯下で鮮やかな淡黄色を帯び、一方、蛍光灯下では鮮やかな淡赤色に変化することが確認された。
【0049】
なお、参考までに発色状況を撮影した写真を図1から図4に示す(別途、これらの図面の原図であるカラー写真の写しを物件提出する予定である)。図1及び2は、それぞれ、実施例1で得られたネイルカラーを塗布した爪の人工太陽照明灯下及び蛍光灯下における状態を示す写真であり、図3及び4は、それぞれ、実施例2で得られたネイルカラーを塗布した爪の人工太陽照明灯下及び蛍光灯下における状態を示す写真である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1で得られたネイルカラーを塗布した爪の太陽光下における状態を示す写真である。
【図2】実施例1で得られたネイルカラーを塗布した爪の蛍光灯下における状態を示す写真である。
【図3】実施例2で得られたネイルカラーを塗布した爪の太陽光下における状態を示す写真である。
【図4】実施例2で得られたネイルカラーを塗布した爪の蛍光灯下における状態を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素の原子、+三価又は+四価の電子配置をとり得る元素の原子、及び酸素原子を含む化合物を含有して成る化粧品。
【請求項2】
前記化合物は、下記式(1)又は式(2);
RTO3 …(1)、
2QO5 …(2)、
(式(1)及び式(2)中、Rは希土類元素を示し、Tは+三価の電子配置をとり得る元素を示し、Qは+四価の電子配置をとり得る元素を示す。)、
で表される請求項1記載の化粧品。
【請求項3】
主として一種の前記化合物を含む、請求項1又は2記載の化粧品。
【請求項4】
前記希土類元素がネオジム又はホルミウムである、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧品。
【請求項5】
前記+三価の電子配置をとり得る元素がアルミニウムであり、又は、前記+四価の電子配置をとり得る元素がケイ素である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧品。
【請求項6】
前記化合物は、粒度が直径0.5〜100μmの粉体である、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−91675(P2007−91675A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285815(P2005−285815)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(304040474)株式会社シャネル化粧品技術開発研究所 (7)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】