説明

化粧料の製造方法および化粧料

【課題】 安全性が高く、安定性に優れ、かつ、透明性の高い化粧料の製造方法および化粧料を提供すること。
【解決手段】 本発明の化粧料の製造方法は、少なくとも、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールとを含む混合液を、高い圧力で加速して衝突させることにより、前記油脂成分を水系溶媒中に微分散させる分散工程を有することを特徴とする。前記混合液同士を、高い圧力で加速して衝突させる。前記圧力は、21MPa以上である。前記分散工程を複数回繰り返す。前記分散工程の前に、少なくとも、前記レシチンンと、前記油脂成分と、前記多価アルコールとを混合する混合工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の製造方法および化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧水等の高い透明性が求められる化粧料に、油溶性物質を配合する場合、油溶性物質が乳化・白濁し、見た目が悪くなる。このため、通常、油溶性物質とともに、界面活性剤を配合し、油溶性物質を水に可溶化させることが行われている。
【0003】
近年、安全性の観点から、界面活性剤として、天然由来のものを用いることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、天然由来の界面活性剤を用いた場合、十分な透明性および安定性が得られないという問題があった。また、十分な透明性および安定性を得るには、別途、界面活性剤(天然由来ではない界面活性剤)を添加しなければならなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−161017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安全性が高く、安定性に優れ、かつ、透明性の高い化粧料の製造方法および化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1) 少なくとも、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールとを含む混合液を、高い圧力で加速して衝突させることにより、前記油脂成分を水系溶媒中に微分散させる分散工程を有することを特徴とする化粧料の製造方法。
【0008】
(2) 前記混合液同士を、高い圧力で加速して衝突させる上記(1)に記載の化粧料の製造方法。
【0009】
(3) 前記圧力は、21MPa以上である上記(1)または(2)に記載の化粧料の製造方法。
【0010】
(4) 前記分散工程を複数回繰り返す上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0011】
(5) 前記分散工程の前に、少なくとも、前記レシチンと、前記油脂成分と、前記多価アルコールとを混合する混合工程を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0012】
(6) 前記混合工程において得られる混合液中の、主として前記油脂成分と前記レシチンとで構成される粒子の平均粒子径は、400nm以下である上記(5)に記載の化粧料の製造方法。
【0013】
(7) 前記化粧料中における、前記レシチンの含有量が、0.01〜1.0wt%である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0014】
(8) 前記化粧料中における、前記レシチンの含有量をA[wt%]、前記油脂成分の含有量をB[wt%]としたとき、0.01≦B/A≦1.0の関係を満足する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0015】
(9) 前記レシチンは、ホスファチジルコリンを含むものであり、
前記レシチン中における前記ホスファチジルコリンの含有量は、50〜90wt%である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0016】
(10) 前記化粧料中における、前記油脂成分の含有量が、0.01〜1.0wt%である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0017】
(11) 前記油脂成分は、ビタミン類および/またはその誘導体である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0018】
(12) 前記化粧料中における、前記多価アルコールの含有量が、1〜20wt%である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0019】
(13) 前記多価アルコールの1分子中における水酸基の数が、3個以上である上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0020】
(14) 前記多価アルコールの炭素鎖が、直鎖である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0021】
(15) 前記化粧料中における、主として前記油脂成分と前記レシチンとで構成される粒子の平均粒子径は、250nm以下である上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【0022】
(16) 上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の方法により製造された化粧料であって、
光の透過率が、80%以上であることを特徴とする化粧料。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安全性が高く、かつ、透明性の高い化粧料の製造方法および化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の化粧料の製造方法および化粧料の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
なお、本明細書中における化粧料は、皮膚化粧料および頭髪化粧料を含み、具体的には、クリーム、乳液、化粧水、パック、シャンプー、リンス、洗顔料、ボディソープ、整髪料、ヘアトニック等を含むものである。
【0026】
まず、本発明の化粧料について説明する。
本発明の化粧料は、主として、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールとを含み、後述する方法により、油脂成分を水系溶媒中に微分散(可溶化)したものである。
【0027】
レシチンは、ホスファチジルコリン等のリン脂質を主成分とする脂質の一種である。
このレシチンは、大豆や卵黄等に比較的多く含まれており、界面活性剤としての機能を有している。レシチンは、一般の合成界面活性剤と比較して、皮膚への安全性が高く、また、皮膚との親和性に優れている。
【0028】
レシチンとしては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、水素添加大豆リン脂質、水素添加大豆リゾリン脂質、水素添加卵黄リン脂質、水素添加卵黄リゾリン脂質等が挙げられ、中でも、酸化されにくいという観点から、水素添加大豆リン脂質を用いるのが好ましい。
【0029】
化粧料中におけるレシチンの含有量は、0.01〜1.0wt%であるのが好ましく、0.05〜0.5wt%であるのがより好ましい。これにより、透明性をより高いものとすることができる。これに対し、レシチンの含有量が前記下限値未満であると、十分な保存安定性が得られない場合がある。一方、レシチンの含有量が前記上限値を超えると、含有量に見合うだけの十分な効果が得られない場合がある。また、レシチンの含有量が多すぎると、化粧料の透明性が低下する場合がある。
【0030】
レシチン中に含まれるホスファチジルコリンは、レシチンの界面活性剤としての機能を担う主たる成分で、1分子のグリセロールに、2分子の脂肪酸と、1分子の燐酸と塩基との化合物とが、結合した構造を有している。
【0031】
レシチン中のホスファチジルコリンの含有量は、50〜90wt%であるのが好ましく、60〜80wt%であるのがより好ましい。これにより、透明性をより高いものとすることができ、また、化粧料の保存安定性を向上させることができる。
【0032】
配合される油脂成分としては、特に限定されず、例えば、豚脂、牛脂、鶏油、鯨脂、マグロ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、カツオ油、ニシン油、肝油、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、カカオ油、落花生油、ヤシ油、月見草油、ボラージ油、ミンク油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、中鎖脂肪酸ジグリセリドやトリグリセリド等の合成グリセリド、トリグリセリドやスクワランなどの炭化水素類、ロウ類、各種エステル類、シリコーン油、脂肪酸、高級アルコール等の保湿剤、ビタミン類(A、B、C、D、E、K)およびその誘導体等の脂溶性ビタミン類、ミックストコフェロール、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、γ−オリザノール、コエンザイムQ10等の酸化防止剤、β−カロチン、脂溶性色素等の着色剤、柑橘系オイル、メントール、香料、精油等の着香料、デヒドロ酢酸、イソプロピルメチルフェノール等の保存料(殺菌剤)、グリチルレチン酸ステアリル、油溶性甘草、油溶性植物抽出物等の各種添加剤等が挙げられ、これらの内、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上述した油脂成分の中でも、化粧水等の化粧料中に含まれるビタミン類および/またはその誘導体は、皮膚を介して吸収されることにより、その効果を発揮するものであるから、本発明のように微分散(可溶化)することにより、皮膚を介しての吸収性(経皮吸収性)をより高いものとすることができ、その結果、より高い効果を発揮するものとなる。
【0034】
このような油脂成分の含有量は、0.01〜1.0wt%であるのが好ましく、0.05〜0.5wt%であるのがより好ましい。これにより、より効率よく油脂成分を微分散することができ、油脂成分自体の諸機能を十分に発揮させることができる。また、化粧料の透明性をより高いものとすることができる。これに対して、油脂成分の含有量が前記下限値未満であると、油脂成分の種類等によっては、油脂成分自身の諸機能が十分に発揮されない場合がある。一方、油脂成分の含有量が前記上限値を超えると、油脂成分の種類やレシチンの含有量等によっては、油脂成分を微分散するのが困難となり、油脂成分の吸収効率等が低下し、油脂成分の諸機能を十分に発揮させることができない場合がある。また、製剤としての十分な安定性を保つのが困難となる場合がある。
【0035】
レシチンの含有量をA[wt%]、油脂成分の含有量をB[wt%]としたとき、0.01≦B/A≦1.0の関係を満足するのが好ましい。これにより、より効率よく油脂成分を微分散することができ、油脂成分自体の諸機能を十分に発揮させることができる。また、化粧料の透明性をより高いものとすることができる。
【0036】
化粧料中において、少なくとも油脂成分とレシチンとは微粒子を構成している。すなわち、本発明の化粧料中には、主として油脂成分とレシチンとで構成された微粒子が存在する。
【0037】
主として油脂成分とレシチンとで構成される微粒子の平均粒径は、250nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましく、150nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、より高い透明性が得られる。また、経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0038】
多価アルコールは、保湿機能や粘度調整機能等を有している。また、多価アルコールは、水と油脂成分との界面張力を低下させ、界面を広がりやすくし、微細で、かつ、安定な微粒子を形成しやすくする機能も有している。
【0039】
多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、マルチトール、還元水あめ、ラクチトール、パラチニット、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、キシロース、グルコース、ラクトース、マンノース、マルトース、フルクトース、イノシトール、ペンタエリスリトール、マルトトリオース、澱粉分解糖、澱粉分解糖還元アルコール等が挙げられ、これらの内、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上述した多価アルコールの中でも、その炭素鎖が直鎖であるものを用いるが好ましい。これにより、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成することができる。その結果、化粧料の透明性の向上を図りつつ、保存安定性をより向上させることができる。また、経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0041】
また、多価アルコールとしては、その1分子中における水酸基の数が、3個以上であるものを用いるのが好ましい。これにより、水系溶媒と油脂成分との界面張力をより効果的に低下させることができ、より微細で、かつ、安定な微粒子を形成させることができる。その結果、化粧料の透明性の向上を図りつつ、保存安定性をより向上させることができる。また、経皮吸収性をより高いものとすることができる。
【0042】
上述したような条件を満足する多価アルコールの中でも、特に、グリセリンを用いた場合、より高い透明性を得ることができる。また、保存安定性をより向上させることができる。また、得られる化粧料は、より高い経皮吸収性を有するものとなる。
【0043】
このような多価アルコールの含有量は、1〜20wt%であるのが好ましく、3〜10wt%であるのがより好ましい。多価アルコールの含有量が前記下限値未満であると、油脂成分の種類や含有量等によっては、十分な保存安定性が得られない場合がある。一方、多価アルコールの含有量が前記上限値を超えると、さらなる効果が得られない場合がある。
上述したような各成分は、後に詳述する方法により、水系溶媒中に微分散される。
【0044】
水系溶媒は、主として水で構成されたものであれば、特に限定されず、水以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、水系溶媒中の水の含有量が、50wt%以上であるのが好ましく、75wt%以上であるのがより好ましく、90wt%以上であるのがさらに好ましい。
【0045】
本発明の化粧料は、波長550nmの光の透過率が80%以上のものであるのが好ましく、85%以上のものであるのがより好ましく、90%以上のものであるのがさらに好ましい。これにより、例えば、本発明の化粧料が着色剤を含む場合、発色の度合いを調整しやくなる。また、透明容器等に入れて用いる場合、清潔感があり、ディスプレイ効果も期待できる。
【0046】
なお、本発明の化粧料は、必要に応じて、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。本発明の化粧料は、例えば、界面活性剤、乳化剤、分散剤、可溶化剤、溶剤、起泡剤、可塑剤、粉体類、高分子類、顔料、着色剤、樹脂類、アミノ酸類、蛋白類、増粘剤、感触改良剤、噴射剤、美白剤、抗シワ剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、細胞賦活剤、抗酸化剤、保湿剤、肌荒れ防止剤、血流促進剤、毛髪保護剤、抗炎症剤、エモリエント剤、角質溶解剤、帯電防止剤、収斂剤、腋臭防止剤、制汗剤、柔軟剤、消臭剤、抗脂漏剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、殺菌剤、植物エキス、パーマネントウェーブ剤、染毛剤等を含んでいてもよい。
【0047】
次に、本発明の化粧料の製造方法について説明する。
まず、本発明の化粧料の製造方法に用いられる装置について説明する。
【0048】
図1は、本発明の化粧料の製造方法に用いられる乳化装置の一例を模式的に示した図である。
【0049】
図1に示すように、乳化装置1は、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールと、水系溶媒とで構成された混合液を供給する混合液供給部11と、供給された混合液に圧力をかけて送液する加圧部12と、圧力により送液された混合液を2つの流れに分ける分岐部13と、分けられた混合液同士を衝突させる合流部14と、化粧料を回収する回収部15とを有している。
【0050】
混合液供給部11には、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールと、水系溶媒とを含む混合液が蓄えられており、混合液は加圧部12に送り込まれる。
【0051】
このような混合液は、例えば、ホモミキサー等を用いて、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールと、水系溶媒とを撹拌混合することにより得られる(混合工程)。このように予め混合した混合液を用いることにより、最終的に得られる化粧料中の、主としてレシチンと油脂成分とで構成された微粒子の粒径をより好ましいものとすることができる。
【0052】
加圧部12に供給された混合液は、加圧・加速され、分岐部13に搬送される。
分岐部13に搬送された混合液は、2つの流れに分岐される。
【0053】
2つの流れに分けられた各混合液は、合流部14において、衝突・合流する。すなわち、加速された混合液同士が衝突する。このとき、混合液中の前述した粗粒子は、衝突によって生じる剪断力、衝撃力等によってさらに微粒子化(微分散)される(分散工程)。これにより、本発明の化粧料が得られる。
【0054】
このように、混合液同士を、高い圧力により加速して衝突させることにより、より高い剪断力、衝撃力を混合液に与えることができ、その結果、混合液中の粗粒子をより効率よく微粒子化し、油脂成分を水系溶媒中に可溶化(微分散)することができる。これにより、得られる化粧料は、高い透明性、保存安定性を有するものとなる。また、経皮吸収性の高いものとなる。
【0055】
混合液にかける圧力は、21MPa以上であるのが好ましく、21〜172MPaであるのがより好ましく、90〜150MPaであるのがさらに好ましい。これにより、粗粒子をより確実に微分散することができ、より高い保存安定性と、透明性を有する化粧料を得ることができる。また、経皮吸収性をより高いものとすることできる。これに対し、混合液にかける圧力が前記下限値未満であると、配合成分の種類等によっては、十分な保存安定性が得られない場合がある。一方、混合液にかける圧力が前記上限値を超えると、かけた圧力に見合うだけの効果が十分に得られない場合がある。
【0056】
また、混合液同士が衝突する際の圧力、すなわち、合流部14における混合液にかかる圧力は、40MPa以上であるのが好ましく、40〜650MPaであるのがより好ましく、200〜400MPaであるのがさらに好ましい。これにより、粗粒子をより確実に微分散することができ、より高い保存安定性と、透明性を有する化粧料を得ることができる。また、経皮吸収性をより高いものとすることできる。
得られた化粧料は、回収部15に回収される。
【0057】
また、乳化装置1は、図1に示すように、回収部15から混合液供給部11に化粧料を搬送する搬送路16と、搬送路16に設けられた搬送ポンプ161とを有している。これにより、回収部15に一旦回収された化粧料を、再度混合液供給部11に戻すことが可能となる。
【0058】
このように、回収された化粧料に対して、前述したような分散工程を繰り返し行ってもよい。分散工程を繰り返し行うことにより、最終的に得られる化粧料中の、油脂成分とレシチンとで構成される微粒子の大きさをより小さいものとすることができる。その結果、得られる化粧料の透明性をより高いものとすることができる。
【0059】
なお、回収部15に回収された化粧料は、必要に応じて、水等の水系溶媒を用いて希釈してもよい。
以上のようにして、本発明の化粧料が得られる。
【0060】
以上、本発明の化粧料の製造方法および化粧料の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されない。
【0061】
例えば、本発明の化粧料の製造方法に用いられる乳化装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、前述した実施形態では、高い圧力で加速して混合液同士を衝突させて、油脂成分を水系溶媒中に微分散させるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、混合液を高い圧力で加速して壁に衝突させることにより油脂成分を水系溶媒中に微分散させるものであってもよい。
【0062】
また、前述した実施形態では、分散工程の前に、混合工程を有するものとして説明したが、これに限定されず、混合工程はなくてもよい。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例1)
[混合液の調製]
まず、ホスファチジルコリン(PC)を70wt%含有する水素添加大豆リン脂質(HSP) 5.0重量部と、dl−α−トコフェロール(TC) 1.0重量部と、グリセリン 84.0重量部と、精製水10.0重量部とを約80℃で分散した。
【0064】
その後、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製:製品名T.K.ロボミックス)に投入し、ブレードの回転速度5000r.p.m.、10分間運転し、混合液を得た。
【0065】
[分散工程]
得られた混合液同士を、図1に示すような装置を用いて、衝突させ、微分散した(分散工程)。この分散工程を2回繰り返し行った。その後、得られた混合液を精製水で1/10倍量に希釈し調製した。なお、混合液に147MPaの圧力をかけることにより、混合液を加速し衝突させた。
【0066】
以上のようにして、化粧水を得た。
得られた化粧水中における、主としてHSPとTCとで構成される微粒子の平均粒径は、35nmであった。
【0067】
(実施例2)
分散工程を繰り返して行わなかった以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造した。
【0068】
(実施例3)
分散工程において、混合液にかける圧力を98MPaとした以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造した。
【0069】
(実施例4)
分散工程において、混合液にかける圧力を49MPaとした以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造した。
【0070】
(実施例5)
分散工程を3回繰り返し行った以外は、前記実施例4と同様にして化粧水を製造した。
【0071】
(実施例6〜9)
各原料の配合比を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造した。
【0072】
(比較例1)
分散工程を行わず、ホモミキサーの運転時間を60分とした以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造した。
【0073】
(比較例2)
HSPを配合しなかった以外は、前記実施例1と同様にして化粧水を製造したが、油脂成分を分散することができず、油脂成分が分離した。
【0074】
各実施例および各比較例の配合成分、各製造条件、主としてHSPと油脂成分とからなる化粧水中の微粒子の平均粒径を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
<評価>
紫外線可視吸光光度計により、各実施例および比較例で得られた化粧水の、波長550nmの光の透過率を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0077】
◎:透過率が90%以上である。
○:透過率が80%以上で、90%未満である。
△:透過率が70%以上で、80%未満である。
×:透過率が70%未満である。
【0078】
また、各実施例および比較例で得られた化粧水を50℃の環境に1ヶ月放置し、放置後の光の透過率を測定し、前述と同様にして評価した。
以上の評価結果を、表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2から明らかなように、本発明の方法により得られる化粧水(本発明の化粧料)は、保存安定性に優れており、高い透明性を有するものであった。これに対して、比較例の化粧水は、保存安定性、透明性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の化粧料の製造方法に用いられる乳化装置の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0082】
1 装置
11 混合液供給部
12 加圧部
13 分岐部
14 合流部
15 回収部
16 搬送路
161 搬送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、レシチンと、油脂成分と、多価アルコールとを含む混合液を、高い圧力で加速して衝突させることにより、前記油脂成分を水系溶媒中に微分散させる分散工程を有することを特徴とする化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記分散工程を複数回繰り返す請求項1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記化粧料中における、前記レシチンの含有量をA[wt%]、前記油脂成分の含有量をB[wt%]としたとき、0.01≦B/A≦1.0の関係を満足する請求項1または2に記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記レシチンは、ホスファチジルコリンを含むものであり、
前記レシチン中における前記ホスファチジルコリンの含有量は、50〜90wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記油脂成分は、ビタミン類および/またはその誘導体である請求項1ないし4のいずれかに記載の化粧料の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法により製造された化粧料であって、
光の透過率が、80%以上であることを特徴とする化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−290841(P2006−290841A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116972(P2005−116972)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(391066490)日本ゼトック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】