説明

化粧料

【課題】鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜から抽出された成分の新たな用途を提供する。
【解決手段】本発明の化粧料は、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含み、メラニン生成抑制作用を備える。本発明の化粧料によれば、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含むことにより、メラニン生成抑制作用が得られる。従って、皮膚のシミ、ソバカスを薄くする、皮膚のくすみをとる、皮膚の色を白くする等の皮膚の状態を改善する効果を期待することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮭類の卵巣膜または該卵巣膜から抽出された成分を含む化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類の卵巣膜(魚卵外皮)を予めオゾン水で処理した後、その構成タンパク質である筋原線維タンパク質を酵素分解してアミノ酸及びペプチドを抽出する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記アミノ酸及びペプチドは、生理活性物質として、あるいは食品強化剤として用いることができるとされており、さらに詳しくは、ACE阻害活性を備え、血圧上昇抑制剤(降圧剤)として作用するとされている。
【0004】
また、マダラ科、タラ科、ニシン科の魚類の卵巣膜をタンパク分解酵素であるプロテアーゼで処理して得られた成分を化粧品製剤として用いることが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
前記マダラ科、タラ科、ニシン科の魚類の卵巣膜をプロテアーゼで処理して得られた成分は、性ホルモンの作用の活性化及び抑制を行い、性ホルモンのバランスを正常化する作用(性ホルモン修飾作用)を有するとされている。そして、前記化粧品製剤は、前記成分の性ホルモン修飾作用により、皮脂の分泌を抑制し、ニキビ、吹き出物、肌荒れ、しわ等の改善に効果があるとされている。
【0006】
しかしながら、魚類の卵巣膜から抽出された成分には、前記血圧の降圧作用、性ホルモン修飾作用以外の作用は知られておらず、さらに多くの用途の開発が望まれる。
【特許文献1】特開2004−73186号公報
【特許文献2】特開2006−225270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑み、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜から抽出された成分の新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の化粧料は、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含み、メラニン生成抑制作用を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の化粧料によれば、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含むことにより、メラニン生成抑制作用が得られる。従って、本発明の化粧料によれば、皮膚のシミ、ソバカスを薄くする、皮膚のくすみをとる、皮膚の色を白くする等の皮膚の状態を改善する効果を得ることができる。
【0010】
前記タンパク分解酵素は、鮭の卵巣膜を構成する蛋白を分解できるものであればどのようなものであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0012】
本実施形態の化粧料は、鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含むものである。
【0013】
前記鮭類に属する魚類としては、白ザケ、紅ザケ、銀ザケ、ニジマス、サクラマス、マスノスケ等を挙げることができる。前記鮭類の卵巣膜は、前記鮭類に属する魚類の魚卵外皮であり、卵巣から魚卵を採取した後の外皮のみを水洗することにより得ることができる。本実施形態の化粧料は、前記水洗後、前記鮭類の卵巣膜をミキサー、乳鉢、乳化機等で粉砕した物をそのまま用いてもよく、前記卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を用いてもよい。
【0014】
前記卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分(以下、卵巣膜抽出成分と略記する)を用いる場合、卵巣膜抽出成分は、例えば、次のようにして調製することができる。
【0015】
まず、前記のようにして得られた鮭類の卵巣膜を原料とし、該卵巣膜に対して水を卵巣膜:水=1:1〜1:3の重量比で加えて撹拌、混合し、さらにタンパク分解酵素を卵巣膜の全量に対して1〜3重量%の範囲で添加し、45〜55℃の温度で30分間〜5時間、好ましくは2時間加熱する。このようにすると、前記卵巣膜の成分のうち、前記タンパク分解酵素で分解された成分が水中に溶出し、該成分の水溶液が得られる。
【0016】
次に、前記水溶液に含まれている前記タンパク分解酵素を失活する。前記失活は、例えば、前記水溶液を90℃の温度で5分間加熱することにより行うことができる。
【0017】
次に、前記水溶液を30メッシュ程度の金網で簡易濾過し、未分解の卵巣膜等の粗大物を除去する。そして、得られた濾液に活性炭を添加して、該濾液の脱臭、脱色、脱脂を行う。前記濾液の脱臭、脱色、脱脂は、前記原料としての卵巣膜の全量に対して2〜4重量%の範囲の活性炭を該濾液に添加し、例えば60℃の温度で30分間加熱することにより行うことができる。
【0018】
前記活性炭による脱臭、脱色、脱脂処理後、前記濾液を例えばフィルタープレスにより濾過し、得られた濾液を、減圧下、例えば60℃の温度で濃縮した後、例えば80℃の温度に10分間維持して滅菌する。そして、滅菌後の前記濾液をスプレードライにて乾燥させることにより、前記卵巣膜抽出成分を得ることができる。前記卵巣膜抽出成分は、アミノ酸、ペプチド、ビタミン、ミネラル、糖類、酵素、核酸及びその代謝物、各種成長因子、サイトカイン等を含んでいる。
【0019】
本実施形態の化粧料は、前記鮭類の卵巣膜自体または該卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分に、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、増粘剤、保湿剤、副素材、防腐剤、着色料等を所望に従って添加することにより調製することができる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、気泡状、固形状、顆粒状、粉末状等として用いることができ、化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、シート、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等に用いることができる。
【0020】
次に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0021】
北海道産白ザケの卵巣から魚卵を採取した後の卵巣膜をよく水洗したもの100gに、精製水100mlを加え、ミキサー(松下電器産業株式会社製、商品名:MX−X107)を用いて、1分間粉砕する操作を10回行い、粉砕物を得た。次に、前記粉砕物をさらに乳鉢ですり潰し、300メッシュの金網で濾過したものを試料とした。
【0022】
本実施例で得られた試料は、白ザケの卵巣膜の粉砕物である。次に、本実施例で得られた試料を用いて、メラニン生成抑制試験を行った。
【0023】
前記メラニン生成抑制試験では、まず、前記試料を、FBSを10%含有するMEM培地(以下「10%FBS含有MEM培地」という)で稀釈した。100ppmに稀釈したものを試験溶液Aとし、300ppmに稀釈したものを試験溶液Bとした。
【0024】
次に、メラニン生産細胞であるB−16マウスメラノーマ細胞を10%FBS含有MEM培地で培養した。前記培地を用いて1×10セル/mlに調整したB−16マウスメラノーマ細胞を、10個の25mlフラスコに5mlずつ播種した。各前記フラスコに播種されたB−16マウスメラノーマ細胞を、CO濃度が5%に調整されたインキュベータにより37℃で24時間培養した。
【0025】
次に、B−16マウスメラノーマ細胞が各前記フラスコに完全に接着したことを確認した後、各前記フラスコから10%FBS含有MEM培地を除去し、これに代えて、3個の前記フラスコには試験溶液Aを、3個の前記フラスコには試験溶液Bを、3個の前記フラスコにはコントロールとしての10%FBS含有MEM培地を5mlずつ添加し、6日間培養した。培養3日目には、各前記フラスコ内の試験溶液A、試験溶液B、10%FBS含有MEM培地培地を除去し、これに代えて、再び同じものを5ml添加した。
【0026】
次に、培養終了後、トリプシン処理によりB−16マウスメラノーマ細胞を回収した。
【0027】
次に、回収したB−16マウスメラノーマ細胞の白色度を肉眼で観察した。観察結果を表1に示す。表1において、“±”はコントロールと同程度の白色度であることを示す。“+”,“++”,“+++”は、“+”が多くなるほど、より高度に白色化されていることを示す。
【実施例2】
【0028】
実施例1で得られた試料に、精製水300mlを加え、高圧乳化機(みづほ工業株式会社製、商品名:マイクロフルイダイザーM110−E/H)を用いて、処理圧150MPaで粉砕する操作を2回行い、試料を得た。
【0029】
本実施例で得られた試料は、白ザケの卵巣膜の微粉砕物である。次に、本実施例で得られた試料を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、メラニン生成抑制試験を行った。観察結果を表1に示す。
【実施例3】
【0030】
実施例2で得られた試料(水溶液)のpHを7.2〜7.5に調整したのち、タンパク分解酵素としてアクチナーゼE(科研製薬株式会社製)を0.5g添加し、40℃で3時間、撹拌しながら反応させた。
【0031】
次に、前記水溶液に含まれている前記タンパク分解酵素を、90℃の温度で5分間加熱して、前記タンパク分解酵素を失活させた後、30メッシュのフィルターで簡易濾過し、未分解の卵巣膜等の粗大物を除去した。
【0032】
次に、前記簡易濾過で得られた濾液に活性炭500gを添加し、60℃の温度で30分間加熱して、該濾液の脱脂、脱色、脱臭を行った後、前記濾液をフィルタープレスにより濾過し、得られた濾液を、減圧下、濃縮し、滅菌した。そして、滅菌後の前記濾液をスプレードライにて乾燥させることにより、試料を得た。
【0033】
本実施例で得られた試料は、白ザケの卵巣膜抽出成分である。次に、本実施例で得られた試料を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、メラニン生成抑制試験を行った。観察結果を表1に示す。
【0034】
【表1】



【0035】
表1から、実施例1,2の鮭類の卵巣膜、実施例3の鮭類の卵巣膜からタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分によれば、いずれも優れたメラニン生成抑制作用を備えていることが明らかである。従って、鮭類の卵巣膜または鮭類の卵巣膜からタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を用いることにより、メラニン生成抑制作用を備える化粧料を得ることができることが明らかであり、係る化粧料によれば、皮膚のシミ、ソバカスを薄くする、皮膚のくすみをとる、皮膚の色を白くする等の皮膚の状態を改善する効果を期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鮭類の卵巣膜を含み、メラニン生成抑制作用を備えることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
鮭類の卵巣膜をタンパク分解酵素で処理することにより抽出された成分を含み、メラニン生成抑制作用を備えることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2008−156273(P2008−156273A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346553(P2006−346553)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【特許番号】特許第4005113号(P4005113)
【特許公報発行日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(501195223)株式会社日本バリアフリー (26)
【Fターム(参考)】