説明

化粧材及びその製造方法

【課題】 従来、プレコート化粧紙は、トップコート層の耐スクラッチ性が不充分で、傷付き難さにおいて不充分であった。
【解決手段】基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキ層が設けられ、該インキ層上に電離放射線硬化性樹脂から得られるトップコート層が設けられてなることを特徴とする化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレコート化粧紙としては、紙基材の上にアクリル硝化綿を用いたインキ絵柄層を設け、その上に電離放射線硬化性樹脂をトップコート層として設けてなるものが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の化粧紙は、トップコート層の耐スクラッチ性が不充分で傷付き難さにおいて不充分であった。また、絵柄層とトップコート層との密着が不充分で、耐セローテープ試験、スクラッチ試験等によってトップコート層が絵柄層や紙基材から剥離することがあり、耐久性不充分であると共に外観を良好な状態に長期間維持し得ないものであった。
【0004】
本発明は如上の問題に鑑み、上記従来の欠点を解消するためになされたものであり、表面が傷付き難い化粧材を提供すること、及び耐久性を向上して良好な外観を長期間維持できる化粧材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキ層が設けられ、該インキ層上に電離放射線硬化性樹脂から得られるトップコート層が設けられてなることを特徴とする化粧材、(2)基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキベタ層が設けられ、該インキベタ層上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキ柄層が設けられ、更にインキベタ層及びインキ柄層の上に、電離放射線硬化性樹脂から得られるトップコート層が設けられてなることを特徴とする化粧材、(3)トップコート層がマット剤を含有した電離放射線硬化性樹脂から得られることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の化粧材、(4)トップコート層の硬度が鉛筆硬度で4H以上である前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の化粧材、
及び、(5)基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂、を含むインキからなるインキ層を設け、次いで該インキ層上に電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層を設け、次いで電離放射線を照射してトップコート層を硬化させると共に、インキ層を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合を重合反応させてインキ層の硬度を向上させる、ことを特徴とする化粧材の製造方法、(6)基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂を含むインキからなるインキベタ層を設け、次いで該インキベタ層上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂、を含むインキからなるインキ柄層を設け、更にインキベタ層及びインキ柄層の上に、電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層を設け、次いで電離放射線を照射してトップコート層を硬化させると共に、インキ層を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合を重合反応させてインキ層の硬度を向上させる、ことを特徴とする化粧材の製造方法
を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧材は以上のように構成されているので、トップコート層の耐スクラッチ性に優れ、傷付き難い。また、トップコート層とインキ層、又はトップコート層とインキ層及び基材との接着力が強く耐久性に優れ、長期に亘る外観維持性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の化粧材の一例を示す縦断面図である。本発明において、化粧材は、基材1の表面に架橋型系インキからなるインキ層2が設けられ、該インキ層2の表面に、電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層3が設けられて構成されている。
【0008】
基材1としては薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード紙、紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、或いは上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、硝子繊維、石綿、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維等の無機質繊維からなるシート又はフィルム、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布又は不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネート等の樹脂からなるシート又はフィルム、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅等の金属箔等を用いることができる。
【0009】
インキ層2は、架橋性樹脂を主成分とし、それに顔料等の色素を加えて得られるインキ層であり、そこに用いられる架橋性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートの少なくとも1種と硬化剤を用いて架橋反応して得られる樹脂、さらに後述する電離放射線硬化性樹脂をそのまま又は硬化剤を用いて架橋硬化させた樹脂が挙げられる。これらの樹脂から選ばれた少なくとも1種を用いるこができる。これらの樹脂の中で、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートより選ばれたる少なくとも1種と硬化剤と架橋反応して得られる樹脂が好ましい。
【0010】
架橋性樹脂を得るために用いる硬化剤としては、通常イソシアネート類又は有機スルホン酸塩が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂に、アミン類がエポキシ系樹脂に用いられ、更にラジカル重合開始剤として、メチルエチルケトンパーオキサイドやアゾビスイソブチルニトリル等が使用される。
【0011】
イソシアネート類としては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートが使用できるが、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0012】
電離放射線硬化性樹脂としては、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する、紫外線、電子線等の電離放射線により硬化し得る樹脂であって、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物が用いられる。これらの組成物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
前記プレポリマー、オリゴマーの例としては不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等が挙げられる。
【0014】
上記エポキシ樹脂、エポキシ系又はウレタン系の各プレポリマーやオリゴマーを用いる場合には、各々の硬化に用いる硬化剤、アミンやイソシアネートを混合して2液性混合物として使用することができる。
【0015】
また、前記単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコースエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等が挙げられる。
【0016】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記単量体及び/又はポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。
【0017】
単量体の選定に際しては、硬化物の可撓性が要求される場合には塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート系単量体を用い比較的低架橋密度の構造とする。また、硬化物の耐熱性、硬度、耐溶剤性等を要求される場合には塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1、6−ヘキサンジオールアクリレート等が、3官能以上のアクリレート系単量体としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0018】
以上のようにして得られる電離放射線硬化性樹脂を架橋性樹脂に用いる時には、硬化剤と反応する官能基を有するのが好ましく、官能基としてOH基、SH基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。しかしこれらの官能基を有していなくても、重合性不飽和二重結合を有していれば、重合により硬化させて用いることができる。つまり、本願発明の架橋性樹脂は、硬化剤を用いて架橋される樹脂と、硬化剤を用いずにラジカル重合により硬化される樹脂を含んでおり、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレートやアクリルポリオール等を用いる場合には、OH基やエポキシ基は硬化剤による架橋反応を起こして硬化が進み、さらに、アクリル基の二重結合はラジカル重合を起こして各々硬化するのである。従って生成後の架橋性樹脂は、架橋反応生成物と重合生成物が別々に生成している場合もあれば、同一分子中に架橋により生じる構造と重合により生じる構造が存在する場合がある。又架橋反応生成物と重合生成物の各々に重合性二重結合が存在すれば、両反応生成物が重合反応を起こして1分子を形成することもある。
【0019】
インキ層2には、着色顔料等の着色剤が含有される。着色顔料としては、通常使用される有機又は無機系の顔料が使用できる。黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄等の無機顔料が使用できる。赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料、弁柄、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオン等の無機顔料が使用できる。青色顔料としては、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の有機顔料、紺青、群青、コバルトブルー等の無機顔料が使用できる。黒色顔料としては、アニリンブラック等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が使用できる。白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の無機顔料が使用できる。
【0020】
インキ層2を基材1に塗工するにあたっては、上記した架橋性樹脂に用いる官能基又は及び重合性二重結合を有する樹脂、プレポリマー又はオリゴマーを硬化剤又は重合触媒等を混合した混合物として塗布することもできる。また該混合物の硬化が進行して塗布に適宜な粘性に達したのちに塗布することもできる。
【0021】
インキ層2にはトップコート層3として、電離放射線硬化性樹脂を塗布するのであるが、インキ層2を構成する架橋性樹脂は、上記したように電離放射線硬化性樹脂を原料として用いているため、あらゆる物理的及び化学的性状が極めて類似しているので、密着性も良く、殆ど一体的な層を形成していると言える。
【0022】
さらに次いでトップコート層3の上から電離放射線を照射してトップコート層3を硬化させるのであるが、当然電離放射線はインキ層2にも照射され、インキ層2を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合は、活性化されて重合反応を起こす。これにより電離放射線硬化性樹脂を含むインキ層2とトップコート層3は、硬化が進み、インキ層の硬度が向上する共に、両層間及び両層と基材との密着性がさらに向上する。同時に表面硬度も高くなるので、トップコート層3は耐スクラッチ性に優れ、傷つき難くなり、長期にわたる美麗な外観を保持することができるようになる。
【0023】
以上のように硬化された結果、インキ層2は高硬度を有しており、トップコート層3との硬度差も小さくなり、トップコート層3の耐スクラッチ性が更に優れたものとなる。特に、インキ層2とトップコート層3との硬度差がH〜2H(鉛筆硬度)となるように各層を選択すれば、より一層耐スクラッチ性に優れたものとすることができる。ここにおいてトップコート層3の硬度は4H以上、特に7H以上であるのが好ましい。また、インキ層2はトップコート層3に用いる樹脂と共通しており、それと顔料からなるのでトップコート層3との間の密着性に更に優れ、両層間の剥離は起こし難く耐久性に優れている。
【0024】
本発明において、インキ層2としては、図1に示すようなインキベタ層4として構成されたものであっても或いは図2に示すようなインキ柄層5として構成されたものであってもよいが、何れの層も上記した架橋性樹脂により構成されているので、トップコート層3との密着性にすぐれている。
【0025】
上記インキ層2の態様のうち、インキベタ層はインキ柄等の模様のない全面インキからなる層であり、層厚方向任意断面において該層は常に平面方向に連続している。インキ柄層はインキにより線や面やそれらの組み合わせからなる、絵柄や図形、文字等やそれらの組み合わせ等からなる模様を形成した層であり、層厚方向任意断面において該層は平面方向に必ずしも連続していない。
【0026】
インキ層2は、該層2を構成する架橋性樹脂を含むインキを塗工或いは印刷等によって設けた後、乾燥硬化させて形成する。インキ層2をインキベタ層とする場合は塗工や印刷により設けることができる。インキ層2をインキ柄層とする場合は通常、印刷により設ける。インキ層2のインキを塗工するには公知の各種方法、例えばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の方法を用い、乾燥時で通常、1.0〜10.0μm程度の膜厚に塗工する。また、インキ層2のインキを印刷する場合は、クラビア、活版、フレキソ等の凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷等の平版印刷、シルクスクリーン等の孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリント等の公知の各種方法を用いることができる。
【0027】
本発明においては、図3に示すように、基材1の表面に架橋性樹脂を含むインキからなるインキベタ層4を設け、更に該インキベタ層4の表面に架橋性樹脂を含むインキからなるインキ柄層5を設け、インキベタ層4及びインキ柄層5の表面に電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層3を設けて構成することもできる。このように構成すれば、所望の柄を付与して且つトップコート層3とその下層との密着性を向上させることができる。
【0028】
尚、本発明においては、図4に示すように、架橋性樹脂を含むインキからなるインキ層2をインキベタ層4とインキ柄層5とから構成し、且つインキ柄層5を基材1側に設け、インキベタ層4をトップコート層3側に設けるようにすることもできる。この場合、インキベタ層4は、無色でも或いは前記した如き着色剤によって着色されていてもよいが、少なくとも透明性を有している必要がある。
【0029】
トップコート層3は、上述した電離放射線硬化性樹脂組成物をインキ層やインキベタ層の上に塗布した後、電離放射線を照射して硬化せしめてなるものである。トップコート層3の膜厚は、通常8〜15g/m2 になるように塗工する。塗工は上記インキ層2の塗工と同様に行う。
【0030】
トップコート層3にはマット剤が含有させることができ、それにより艶消しの効果が得られる。マット剤としてはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ガラスバルーン、ポリエチレン等の無機又は有機のフィラー乃至微粉末が挙げられる。該マット剤の形状は任意であるが球状又は略球状が好ましい。マット剤の粒径としては0.1〜10μm程度のものを用いることができるが、最大径が9〜10μmのものが好ましい。粒径が9〜10μmの範囲内であると均一に分散して美麗なマット面を形成し得ると共に、トップコート層3表面に目立った凹凸を形成せず比較的表面平滑に形成できる。また、マット剤の含有量は、艶消し効果を充分に発現させるためには5〜20重量%が好ましく、更に、耐スクラッチ性の向上のためには5〜20重量%が好ましい。
【0031】
トップコート層3を、粒径9〜10μmのマット剤を5〜20重量%含有し、膜厚8〜15g/m2 に形成すれば、耐スクラッチ性及び耐マーリング性に優れたものとできる。
【0032】
上述した如き電離放射線硬化性樹脂組成物を、特に紫外線で硬化させる場合には、該電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、及び/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。
【0033】
トップコート層3にマット剤を含有させる場合には、上記した電離放射線硬化性樹脂組成物に前記した如きマット剤を混合して分散させる。
【0034】
トップコート層3は、以上の如き電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工等によって設けた後、電離放射線を照射して硬化させて形成する。電離放射線硬化性組成物は、前記したインキ層2の形成用インキを全面ベタの態様で塗工する場合の方法と同じ方法を用いることができ、乾燥時で通常、0.1〜100μm程度の膜厚に塗工する。
【0035】
前記電離放射線のうちの紫外線の発生源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。また、電子線源としてはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子線を照射する。電子線の照射線量としては通常、0.5〜30Mrad程度である。
【0036】
以上のように、基材1上にインキベタ層4とインキ柄層5を設け、その上にトップコート層3を設けた場合においても、上記した基材1上にインキ層2を設けた場合と同様に、インキベタ層4とインキ柄層5に用いる架橋性樹脂は硬化又は重合により硬化され、更にトップコート層3上より照射する電離放射線によっても硬化されるので、基材1とインキベタ層4とインキ柄層5及びトップコート層3との密着性は向上し、剥離することのない耐久性のある化粧材が得られる。さらに、耐スクラッチ性に優れ、傷付き難いトップコート層が得られる。
【0037】
本発明の化粧材は、家具、壁面などの表面保護性能が必要とされる部材等に好適に使用できる。
【実施例】
【0038】
次に、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
一般紙(三興製紙製:プリント30g/m2 )に、下記の組成からなる樹脂に顔料を加えたインキベタ層をグラビア印刷にて形成し、さらに同組成のインキ絵柄層を該インキベタ層の上に積層した。
インキ層樹脂組成物
ウレタンアクリレート 50重量部
アクリルポリオール 50重量部
ヘキサメチレンジイソシアネート 3重量部
次いでトップコート層としてエポキシアクリレート系樹脂〔ザ・インクテック(株)製:EB40)をロールコートによりコーティングし、電子線(5Mrad)を照射して、インキベタ層、インキ絵柄層及びトップコート層を硬化させた。
【0039】
[比較例]
一般紙(三興製紙製:プリント30g/m2 )に、アクリル硝化綿系インク〔昭和インク(株)製:UE、FW硬化剤6部添加〕よりなるベタ層、該アクリル硝化綿系インクよりなる絵柄層をグラビア印刷により施し、次いでトップコート層としてエポキシアクリレート系樹脂〔ザ・インクテック(株)製:EB40)をロールコートによりコーティングし、電子線(5Mrad)を照射してトップコート層を硬化させた。
【0040】
実施例、比較例で得られた化粧材について、碁盤目セロテープ剥離試験を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

注)比較例はいずれもトップコート層剥離を起こしていた。
【0042】
〔耐スクラッチ性の評価〕
実施例、比較例で得られた化粧材について、鉛筆硬度、ホフマンスクラッチ、テーバースクラッチの測定を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の化粧材の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の化粧材の別の例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の化粧材の更に別の例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の化粧材の更に別の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:基材
2:インキ層
3:トップコート層
4:インキベタ層
5:インキ柄層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキ層が設けられ、該インキ層上に電離放射線硬化性樹脂から得られるトップコート層が設けられてなることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキベタ層が設けられ、該インキベタ層上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とを用いて架橋反応して得られる樹脂、を含むインキからなるインキ柄層が設けられ、更にインキベタ層及びインキ柄層の上に、電離放射線硬化性樹脂から得られるトップコート層が設けられてなることを特徴とする化粧材。
【請求項3】
トップコート層がマット剤を含有した電離放射線硬化性樹脂から得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧材。
【請求項4】
トップコート層の硬度が鉛筆硬度で4H以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項5】
基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂、を含むインキからなるインキ層を設け、次いで該インキ層上に電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層を設け、次いで電離放射線を照射してトップコート層を硬化させると共に、インキ層を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合を重合反応させてインキ層の硬度を向上させる、ことを特徴とする化粧材の製造方法。
【請求項6】
基材上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂を含むインキからなるインキベタ層を設け、次いで該インキベタ層上に、少なくともウレタンアクリレートとアクリルポリオールと硬化剤とから得られる架橋性樹脂、を含むインキからなるインキ柄層を設け、更にインキベタ層及びインキ柄層の上に、電離放射線硬化性樹脂からなるトップコート層を設け、次いで電離放射線を照射してトップコート層を硬化させると共に、インキ層を構成する架橋性樹脂に残存する重合性二重結合を重合反応させてインキ層の硬度を向上させる、ことを特徴とする化粧材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−80804(P2008−80804A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248467(P2007−248467)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【分割の表示】特願平10−54408の分割
【原出願日】平成10年2月19日(1998.2.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】