説明

化粧材

【課題】 表面硬度(鉛筆硬度)が高い化粧材を得る。
【解決手段】 基材にジアリルフタレート系含浸紙を介してコート紙を接着する。基材としては合板、パーティクルボード、MDFなどの木質系基材、珪酸カルシウム板、石膏ボードなどの無機質系基材を用いる。ジアリルフタレート系樹脂はジアリルフタレートモノマーおよび/またはプレポリマーと不飽和ポリエステル樹脂などからなり、配合割合は固形分重量比で80〜10:20〜90、より好ましくは75〜25:25〜75とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材にコート紙を接着した化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,コート紙を合板に接着する際,接着剤として酢酸ビニル樹脂系,エチレン酢ビ樹脂系の接着剤を用いていた。
【特許文献1】特開昭61−219640
【特許文献2】特開平9−193309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら鉛筆硬度が6B程度で傷が付きやすかった。また,水性ビニルウレタン系の接着剤を用いても4B程度であった。更にMDFなど硬度の高い基材を用いても鉛筆硬度は4H程度であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので鉛筆硬度の向上を目的とし,基材にジアリルフタレート系含浸紙を介してコート紙が接着されてなることを特徴とする化粧材である。以下,本発明において採用した特徴的構成について説明する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば,基材の種類によらずジアリルフタレート系含浸紙を接着層に使用することにより接着力が向上し,接着層の硬度が高くなり鉛筆硬度も3Hと向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係わる基材としては、合板、パーティクルボード、MDFなどの木質系基材、珪酸カルシウム板、石膏ボードなどの無機質系基材などが挙げられ特に制約はない。
【0007】
ジアリルフタレート系樹脂含浸紙は、25〜200g/cmの化粧板用の原紙にジアリルフタレート系樹脂を主な成分とする樹脂液を含浸、乾燥したものである。含浸率は数1に示される算出方法で80〜140%とするのが好ましく、下限に満たないと基材、コート紙との密着性が劣りやすく、上限を超えるとコート紙の表面に樹脂のムラが発生する。
【0008】
【数1】

【0009】
ジアリルフタレート系樹脂はジアリルフタレートモノマーおよび/またはプレポリマーと不飽和ポリエステル樹脂からなり、配合割合は固形分重量比で80〜10:20〜90、より好ましくは75〜25:25〜75とするのが望ましい。不飽和ポリエステル樹脂が多いとコーティング紙がベトツキやすく、少ないと塗布量がコントロールできず好ましくない。
【0010】
本発明に係るジアリルフタレートプレポリマーとしては、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマーの単独あるいはそれらの共重合体又はそれらの混合物が挙げられ、ジアリルフタレートモノマーとしては、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレートまたはジアリルテレフタレート、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0011】
不飽和ポリエステル樹脂は不飽和ポリエステルと重合性モノマーなどからなり、不飽和ポリエステルは不飽和二塩基酸及び/又はその酸無水物と必要に応じて用いられるその他の飽和酸及び/又はその酸無水物とを含む酸成分と、多価アルコールとを窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で160〜230℃程度、好ましくは210〜230℃で常法に従い脱水縮合反応させたものが用いられる。
【0012】
不飽和二塩基酸及びその酸無水物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられ、単独で用いても2種以上を併用しても良い。不飽和二塩基酸及びその酸無水物は、酸成分中50〜100mol%使用されることが好ましく、特に60〜100mol%使用されることが好ましい。
【0013】
必要に応じて用いられるその他の飽和酸及び/又はその酸無水物としては、無水フタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、セバチン酸などの飽和二塩基酸などが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。飽和酸の配合量は、酸成分中0〜50mol%、好ましくは0〜40mol%の範囲とされる。
【0014】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、2,3―ブタンジオール、1,5―ペンタジオール、1,6―ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ペンタエリスリトールなどの四価アルコールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。配合量は全酸成分100に対して100〜110molの範囲が良い。
【0015】
重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレンなどの芳香族重合性モノマー類、(メタ)アクリル系モノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート[(メタ)アクリレートはメタクリレート及びアクリレートを示す。以下同じ。]、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性モノマー類などが挙げられる。
【0016】
その他、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジブチルマレエート、ジブチルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネートなどの不飽和二塩基酸塩のジアルキルエステル類、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレートなどの窒素含有重合性モノマー類、酢酸ビニルの如き酢酸エステル、(メタ)アクリロニトリルの如き重合性シアノ化合物なども例示される。
【0017】
樹脂液にはラジカル重合開始剤が配合される。ラジカル重合開始剤として用いる有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、アセト酢酸エステルパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソピルベンゼンパーオキサイドなどハイドロパーオキサイド類、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ラウロイルパ−オキサイド、ベンゾイルパ−オキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレートなどのパーオキシエステル類などの有機過酸化物や、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、1、1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられ、これらは単独、あるいは2種以上の併用が可能である。好ましくは有機過酸化物で硬化促進剤と併用し分解温度が低いものが硬化性の面で都合が良く、具体的には、メチルエチルケトンパ−オキサイド、アセト酢酸エステルパ−オキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドを用いるのが好ましい。
【0018】
コート紙としては,印刷紙の表面に2液硬化型ウレタン樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の架橋硬化物による表面保護層を塗工形成して,耐摩耗性,耐擦傷性等の表面強度を向上させたものが適用できる。以下,本発明を実施例,比較例に基づいてより詳細に説明する。
【0019】
本発明の化粧材は、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF基板)、その他無機質板等の基材にジアリルフタレート系樹脂含浸紙、コート紙を積層し、温度110〜160℃、圧力1〜20kg/cm、時間20秒〜3分で熱圧成形することにより得ることができる。
【実施例1】
【0020】
ジアリルオルソフタレートプレポリマー 70重量部
不飽和ポリエステル 30重量部
(イソフタル酸3モル/フマル酸7モル/プロピレングリコール6モル/エチレングリコール4モル組成)
スチレン 6重量部
ベンゾイルパーオキサイド 3重量部
内部離型剤 0.5重量部
ハイドロキノン 0.05重量部
微粉末シリカ 5重量部
をアセトン、トルエンに溶解して樹脂液を調整し、65g/mのクラフト紙に数1に示される算出方法で含浸率が100%となるように含浸してジアリルフタレート系樹脂含浸紙を得た。
【0021】
厚み2.7mmの合板(3尺×6尺)の上にジアリルフタレート系樹脂含浸紙、電子線硬化性樹脂による表面保護層を形成した坪量80g/m2のコート紙を積層し、130℃、8kg/cm、時間2分で熱圧成形した。
【0022】
比較例1
厚み2.7mmの合板(3尺×6尺)の上に酢酸ビニル樹脂を10g/m塗布し、電子線硬化性樹脂による表面保護層を形成した坪量80g/m2のコート紙を積層し、130℃、8kg/cm、時間2分で熱圧成形した。
【0023】
比較例2
厚み6mmのMDF(3尺×6尺)の上に酢酸ビニル樹脂を10g/m塗布し、電子線硬化性樹脂による表面保護層を形成した坪量80g/m2のコート紙を積層し、130℃、8kg/cm、時間2分で熱圧成形した。
【0024】
比較例3
実施例1において含浸率を70%とした以外は同様に実施したが密着性が悪かった。
【0025】
比較例4
実施例1において含浸率を150%とした以外は同様に実施したがコート紙の表面に樹脂のムラが発生した。
評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
評価方法は以下の通りとした。
鉛筆硬度
(1)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置は、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。
(2)密着性
JIS K 5400に準じ、碁盤目試験により、密着性の評価を行った。
具体的には、表面に1mm角の碁盤目を100個作り、この上にセロハンテープを張り付け、90度の角度で素早く剥がし、残った碁盤目を数え、95/100〜100/100を○、95/100未満を×とした。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にジアリルフタレート系含浸紙を介してコート紙が接着されてなることを特徴とする化粧材。


【公開番号】特開2008−201008(P2008−201008A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40116(P2007−40116)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】