説明

化粧板

【課題】加飾と接着を一工程で行うことができると共に接着剤の使用量を減らす等して、生産コストの低減化を図り得る化粧板を提供する。
【解決手段】基材と、該基材の少なくとも一方の面に接着される透過性のある表面材と、を備え、基材と表面材は、着色接着剤層を介して接着されることにより接着と加飾が同時に行われていることを特徴とする。前記着色接着剤層は、塗布面積が40%〜80%のパターン塗布によって形成され、前記表面材は、厚み0.5mm〜5.0mmの透明または半透明な樹脂シートで形成される。また、前記表面材が複数層に形成され、これらが複数の同一パターンもしくは異なるパターンの着色接着剤層を介して、互いに接着されるかもしくは基材に接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばユニットバス等の壁パネル、冷蔵庫用ドアやファンヒータ外板等の家電機器の外装材として好適に使用可能な化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の化粧板としては、裏面にグラビア印刷を施したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)等のポリエステル系樹脂フィルムと、熱可塑性樹脂フィルム(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂等)との積層フィルムを、接着剤を介して基材である鋼板にラミネートしたものが知られている。また、他の化粧板としては、基材としての鋼板にグラビア印刷を施した後、その上にクリアー塗装を施したもの(特許文献1参照)、あるいは化粧シート表面にアクリル系樹脂を突起状に印刷もしくは塗布して、これを紫外線硬化させて凹凸模様を持たせるもの(特許文献2参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2000−52486号公報
【特許文献1】特開平3−197040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような化粧板にあっては、エンボスロール(以下、凹凸エンボス形状のついたロールをパターンロールという)を印刷等の加飾の目的でのみ使用しており、印刷した化粧シート及びエンボス加工した化粧板を基材に別工程で接着しているため、化粧板の製造工程に接着工程と印刷工程が必要となり、化粧板生産時のリードタイムを短縮させて生産コストを低減させることが困難である。また、接着剤も全面塗布接着が基本であることから、接着剤の使用量が増えて、生産コストの低減化の妨げともなっている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、加飾と接着を一工程で行うことができると共に接着剤の使用量を減らす等して、生産コストの低減化を図り得る化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、基材と、該基材の少なくとも一方の面に接着される透過性のある表面材と、を備え、前記基材と表面材は、着色接着剤層を介して接着されることにより接着と加飾が同時に行われていることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記着色接着剤層の塗布面積が40%〜80%のパターン塗布によって形成されていることを特徴とし、請求項3に記載の発明は、前記表面材が、厚み0.5mm〜5.0mmの透明または半透明な樹脂シートで形成されていることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、前記表面材が複数層に形成され、これらが複数の同一パターンもしくは異なるパターンの着色接着剤層を介して、互いに接着されるかもしくは基材に接着されていることを特徴とする。また、請求項5に記載の発明は、前記基材が複数層に形成され、これらが所定の接着剤を有して接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、基材と表面材が着色接着剤層を介して接着されることにより接着と加飾が同時に行われているため、加飾と接着を一工程で行うことができて、化粧板生産時のリードタイムを短縮させることができたり、着色接着剤の使用量を減らす等して、生産コストの低減化を図ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、着色接着剤層が塗布面積40%〜80%のパターン塗布によって形成されているため、所望の加飾状態を簡単に得ることができると共に着色接着剤の使用量を確実に減らすことができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、表面材が厚み0.5mm〜5.0mmの透明または半透明な樹脂シートで形成されているため、最適厚みの樹脂シートにより着色接着剤層を表面材上から確実に視認させることができて、化粧板に良好な加飾状態を得ることができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし3に記載の発明の効果に加え、表面材が複数層に形成され、これらが複数の同一パターンもしくは異なるパターンの着色接着剤層を介して互いに接着されるかもしくは基材に接着されているため、各種パターンの着色接着材層を選択使用できて、化粧板に所望の加飾を簡単に施すことができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、基材が複数層に形成され、これらが所定の接着剤によって接着されているため、例えば同一ロールで各基材を形成してこれらを接着できる等、各種基材への適用を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に係わる化粧板の第1実施形態を示し、図1が模式的に示した断面図、図2がその製造方法の説明図、図3がパターンロールの要部斜視図である。
【0013】
図1に示すように、化粧板1は、基材2と、この基材2の表面2a側に着色接着剤層4を介してラミネートされた表面材3とで構成されている。前記基材2は、合板、MDF、パーチクルボード、メッキ鋼板、アルミ板、低・高発泡断熱材等が化粧板1の用途等に応じて選択使用される。また、前記表面材3は、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレン(ポリエチレン、ポリオレフィン)、ABS、PET、ポリ塩化ビニル樹脂等の透過性を有する透明もしくは半透明で、表面材としての剛性と材料費の関係から例えば厚みが0.5mm〜5.0mmの樹脂シートによって形成されている。
【0014】
さらに、前記着色接着剤層4は、基剤となる接着剤に顔料や染料を混入させて所定色に着色した着色接着剤4aによって形成され、この時、基材となる接着剤としては、環境、VOC対応の非溶剤系接着剤が使用される。また、接着剤として、顔料や染料で着色した1液湿気硬化型ポリウレタン・ポリエステル系で芳香族系のMDIあるいは脂肪族系のHDIを使用したり、可逆タイプのホットメルト接着剤等、印刷と接着が同時に可能なものを使用することができる。そして、この着色接着剤層4は、後述するように表明材3の裏面3b等にパターン塗布(もしくはパターン印刷塗布)によって形成されている。
【0015】
次に、このような構成の化粧板1の製造方法の一例を、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、化粧板1の製造に使用される接着剤塗布機5を示し、この接着剤塗布機5は、パターンロール6(エンボスロール)と温調付分割ブレード7を有し、温調付分割ブレード7の先端部とパターンロール6との間に接着剤溜まり8が形成されるようになっている。
【0016】
前記パターンロール6は、その表面に、化粧板1の表面に所望の加飾を得るための、例えば図3に示すような格子状の凸条6aとこの凸条6a間に形成された凹部6bを有している。この時、パターンロール6の凹部6bの面積は外周面積の約40%に設定され、凹部6bの深度が0.8mmとなるように設定されている。また、このパターンロール6は、NC等の機械加工もしくはエッチングにより、原型押し込み等の手法によりエンボス処理されると共に、最終仕上げはクロムメッキ処理されることにより形成されている。
【0017】
そして、このようなパターンロール6を回転させつつ被着体である表面材3の裏面3b(もしくは基材2の表面2a)に着色接着剤4aを塗布する。この時、温調付分割ブレード7の先端部とパターンロール6との寸法設定等により、パターンロール6の凸部6aに付着する着色接着剤4aが掻き取られ、凹部6aに残る着色接着剤4aのみが残るようになっている。これにより、パターンロール6により表面材3の裏面3bに塗布される着色接着剤4aは、表面材3の裏面3b全面ではなく、凹部6bに残った着色接着剤4aのみが表面材3の裏面3bに塗布されて、表面材3の裏面3bに凹部6bのパターンに応じた着色接着剤4aによる格子模様が得られることになる。なお、凸部6a上の着色接着剤4aを完全に掻き取ることができず多少残ってしまう場合があるが、所望の加飾を施すことが可能であれば良い。
【0018】
次に、このような着色接着剤4aが塗布された表面材3と基材2とを、例えば同時に加熱加圧すること等により、基材2と表面材3が着色接着剤4aによって接着と加飾が同時に行われ、図1に示すような基材2と着色接着剤層4及び表面材3の積層構造からなる化粧板1が製造される。そして、この化粧板1の表面、すなわち透明もしくは半透明な表面材3の表面3aから、該表面材3を透してその裏面3bに塗布された着色接着剤4の格子模様が加飾として視認されることになる。
【0019】
なお、この第1実施形態の化粧板1において、パターンロール6の凹部6bの面積を40%に設定している理由は、実験により得られた表1に示す凹部面積と接着強度の関係に基づいている。この表1から、凹部面積を40%以上に設定すれば、化粧板1として十分な接着強度(全面接着の場合の60%以上の強度)が得られることが解る。
【0020】
【表1】

【0021】
このように、上記実施形態の化粧板1によれば、基材2と表面材3が着色接着剤層4を介して接着されることにより接着と加飾が同時に行われているため、加飾と接着を従来のように別工程で行う必要がなくなり、化粧板1の生産時のリードタイムを短縮させることができると共に、着色接着剤4aが全面塗布ではなく例えば格子模様に塗布されることから、着色接着剤4a自体の使用量を減らすことができる。特に、着色接着剤4aによる接着面積(凹部面積)を40%に設定しても、化粧板1として十分な接着強度が得られることから、着色接着剤4aの使用量を例えば1/2程度まで減らすことができ、これらのことから、化粧板1の生産コストの低減化を図ることが可能となる。
【0022】
また、表面材3として厚みが0.5mm〜5.0mmの透明・半透明な樹脂シートが使用されているため、化粧板1の表明材3として最適厚みの樹脂シートにより着色接着剤層4を表面材3上から確実に視認させることができて、表面材3の表面3aに良好な加飾状態を得ることができると共に、化粧板1の表面材3として所定の剛性を確保することができたり、表面材3自体の材料費(コスト)の増大を抑えることが可能となる。
【0023】
さらに、着色接着剤4aがパターン塗布やパターン印刷塗布によって塗布されているため、印刷手法等を利用して着色接着剤層4に所望の加飾状態を簡単に得ることができ、各種加飾形態に容易に対応することができる。また、着色接着剤4aとして反応型ホットメルトを使用すれば、湿気硬化の課程で発生する発泡ガスの発泡度合いを接着剤配合や養生条件の調整により従来の印刷インキと風合いが異なる意匠感を得ることができ、化粧板1に従来にない加飾を施すことができる。これらのことから、化粧板1を例えばユニットバスの壁パネルとして好適に使用することが可能となる。
【0024】
図4〜図9は、本発明に係わる化粧板の第2〜第7実施形態を示している。以下、上記第1実施形態と同一部位には、同一符号を付して説明する。先ず、図4に示す第2実施形態の化粧板1の特徴は、着色接着剤層4が、着色接着剤4aの層と全面ベタ印刷塗布層4bの2層構造によって形成されている点にある。この時、着色接着剤4aの層は表面材3の裏面3bに前述したような印刷によって形成され、全面ベタ印刷塗布層4bは基材2の表面2aに塗装や印刷等により形成されている。
【0025】
また、図5に示す第3実施形態の化粧板1の特徴は、2つの基材10、11を有し、各基材10、11の表面に着色接着剤4aをパターン印刷塗布し、一方の基材10に塗布された着色接着剤4a上に他方の基材11の裏面を接着し、この他方の基材11の着色接着剤4a上に表面材3を接着するようにした点にある。この実施形態の場合は、2つの基材10、11を同じパターンロールで作成できると共に、基材全体の厚みを積層される各基材10、11の厚みにより簡単に調整できることになる。
【0026】
さらに、図6に示す第4実施形態の化粧板1の特徴は、2つの基材10、11を有し、一方の基材10の表面に接着剤12を全面塗布し、他方の基材11の表面に着色接着剤4aをパターン印刷塗布し、両方の基材10、11を接着剤12を介して接着させた点ある。この実施形態の場合は、2つの基材10、11を全面塗布の接着剤12により強固に接着できると共に、第3実施形態と同様に、基材全体の厚みを積層される各基材10、11の厚みにより簡単に調整できることになる。
【0027】
また、図7に示す第5実施形態の化粧板1の特徴は、基材2の表裏面2a、2bに透明・半透明な表面材3及び裏面材13を配置した点にある。すなわち、基材2の表面2a側に着色接着剤4aを介して表面材3を接着すると共に、基材2の裏面2b側に着色接着剤4aを介して裏面材13を接着する。この時、表面材3と裏面材13は、同一材質や厚み等を使用することもできるし、材質や厚み等を基材2の表裏面2a、2bで異ならせることもできる。また、基材2の表裏面2a、2bに塗布される着色接着剤4aのパターン(塗布パターン)も同一でも良いし、異なるようにしても良く、化粧板1の用途等に応じて適宜に選択される。
【0028】
さらにまた、図8に示す第6実施形態の化粧板1の特徴は、表面材3を複数層に形成した点にあり、基材2の表面2a側に第1の着色接着剤層4を介して第1の表面材3Bを接着すると共に、この表面材3Aの表面に第2の着色接着剤層4を介して第2の表面材3Aを接着する。この時、各着色接着剤層4のパターンは同一でも良いし異なるようにしても良く、また、第1の表面材3Aと第2の表面材3Bは、同一材質や厚み等を使用することもできるし、材質や厚み等を表裏で異ならせることもできる。
【0029】
また、図9に示す第7実施形態の化粧板1の特徴は、異なるパターンの複数(図では2層)の着色接着剤層4を隣接させた点にある。すなわち、基材2の表面2a側に第1の着色接着剤層4と第2の着色接着剤層4を介して表面材3を接着する。この時、第1の着色接着剤層4と第2の着色接着剤層4のパターンは異なるように設定されており、この2種類(もしくは3種類以上)のパターンにより表面材3の表面3a側から視認した際のパターンを複雑かつ所望に設定できて、化粧板1に従来にない加飾を簡単に施すことが可能となる。
【0030】
このように、本発明に係わる化粧板1は、少なくとも表面材3の裏面3b側に着色接着剤層4を介して基材2を有する各種形態に適用することができる。また、本発明に係わる化粧板1は、上記した各実施形態のそれぞれに限定されるものでもなく、例えば図9に示す実施形態の着色接着剤の構成を他の各実施形態の着色接着剤に適用する等、各実施形態の一部もしくは全部を適宜に組み合わせた構成も包含するものである。
【0031】
なお、上記各実施形態においては、着色接着剤を形成する手段として、パターンロール6による印刷塗布を採用したが、本発明はこれに限定されず、他の適宜の印刷手段や塗布手段を採用することができるし、化粧板1自体の製造も少なくとも基材、着色接着剤層及び表面材の同時ラミネート構造が得られる適宜の方法を採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ユニットバス等の壁パネルへの利用に限らず、例えば冷蔵庫用ドア、ファンヒータ外板等の家電機器外装材等の各種化粧板にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係わる化粧板の第1実施形態を示す断面図
【図2】同その製造方法の説明図
【図3】同パターンロールの要部斜視図
【図4】同第2実施形態を示す図1と同様の断面図
【図5】同第3実施形態を示す図1と同様の断面図
【図6】同第4実施形態を示す図1と同様の断面図
【図7】同第5実施形態を示す図1と同様の断面図
【図8】同第6実施形態を示す図1と同様の断面図
【図9】同第7実施形態を示す図1と同様の断面図
【符号の説明】
【0034】
1・・・化粧板、2・・・基材、2a・・・表面、2b・・・裏面、3、3A、3B・・・表面材、3a・・・表面、3b・・・裏面、4・・・着色接着剤層、4a・・・着色接着剤、4b・・・ベタ印刷塗布層、5・・・接着剤塗布機、6・・・パターンロール、6a・・・凸条、6b・・・凹部、7・・・温調付分割ブレード、8・・・接着剤溜まり、10、11・・・基材、12・・・接着剤、13・・・裏面材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも一方の面に接着される透過性のある表面材と、を備え、前記基材と表面材は、着色接着剤層を介して接着されることにより接着と加飾が同時に行われていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記着色接着剤層は、塗布面積が40%〜80%のパターン塗布によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記表面材は、厚みが0.5mm〜5.0mmの透明または半透明な樹脂シートで形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧板。
【請求項4】
前記表面材が複数層に形成され、これらが複数の同一パターンもしくは異なるパターンの着色接着剤層を介して、互いに接着されるかもしくは基材に接着されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の化粧板。
【請求項5】
前記基材が複数層に形成され、これらが所定の接着剤によって接着されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−125792(P2007−125792A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320468(P2005−320468)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】