説明

化粧液及び化粧液の製造方法

【課題】 防腐剤を使用することなく、保存を容易にするとともに、使用の際にも取り扱いが容易で、しかも保湿機能の高い化粧液及び化粧液の製造方法を提供する。
【解決手段】 ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させるとともに、セラミドを、該セラミドを多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤とともに該多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にする。ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.05〜0.2重量%、セラミドを0.004〜0.04重量%、多価アルコールを99重量%以上含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液に係り、特に、皮膚に対する保湿力に優れ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくする効果のある化粧液及び化粧液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は、皮膚に対する保湿力に優れ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくする効果のあることが知られており、このヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を用いた化粧液が種々開発されている。
従来、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液としては、例えば、ヒアルロン酸化合物としてヒアルロン酸ナトリウムを用い、水に0.1%程度のヒアルロン酸ナトリウムを混合し、微生物の繁殖を防ぐために、防腐剤として例えばフェノキシエタノールやパラべン等の防腐剤を混合したものが普及している。
ところで、この化粧液にあっては、防腐剤が添加されているので、皮膚に対する刺激があり、長期間皮膚に接触した場合、経皮吸収による全身毒性などを誘発することがある等の欠点を有している。
【0003】
これを解決するために、従来においては、例えば、特開2006−182750号公報(特許文献1)に掲載されている技術が知られている。これは、ヒアルロン酸ナトリウム,アスコルビン酸誘導体,コラーゲンを配合した水溶液を凍結乾燥したものであり、出来上がった粉末を容器に入れ、この容器内を窒素ガスで置換した後ゴム栓で容器を封栓することにより、酸素が存在しない状態にして水分の吸収がないように保存している。そして、この乾燥品を使用するときには、水または化粧水などで再溶解させて使用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−182750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来のヒアルロン酸ナトリウムを含む凍結乾燥においては、凍結乾燥化粧品の入った容器内を窒素ガスで置換した後ゴム栓で容器を封栓することにより長期保存が可能であるので、一度開封すると水分の吸収があり長期保存は不可能になる。また、使用時にも逐一粉末を水に溶解しなければならないので、取り扱いが面倒になっているという問題があった。更にまた、使用時に水に溶解するとはいっても、1回当たりの必要量を逐一溶解していたのでは、必要量は極めて少量であることから、例えば1週間分の量の粉末を水に溶解して水溶液とし、容器に入れて冷蔵庫などで保管して用いるようにすることを一般的に行う。しかしながら、このような使用方法では、結果として、水溶液の状態で、ある期間保存することになることから、その期間が短い期間であっても、微生物が繁殖して腐敗してしまうことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、防腐剤を使用することなく、保存を容易にするとともに、使用の際にも取り扱いが容易で、しかも保湿機能の高い化粧液及び化粧液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明の化粧液は、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液において、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にした構成としている。ここで、ヒアルロン酸化合物には、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩がある。その他、アセチル化ヒアルロン酸等のヒアルロン酸の誘導体を用いることもできる。さらにヒアルロン酸のカルボキシル基や水酸基に保護基等が導入されたもの等が挙げられる。本発明において、使用するヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物の分子量は特に限定されない。
これにより、液状になるので、容器に入れて容易に保存しておくことができる。この場合、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくいので、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。また、使用に際しては、周知の手動定量吐出型の容器などにより、所要量を吐出させて、そのまま使用し、あるいは、新鮮な水と混合して用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。更にまた、水を含まないことから、防腐剤の混合が不要になり、そのため、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、皮膚に塗布した状態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上が図られ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜0.5重量%、上記多価アルコールを99重量%以上含有する構成としている。
0.01重量%よりも低いと、保湿効果が発揮されにくくなり、0.5重量%を超えると、分散したヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。
望ましくは、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.05〜0.2重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。また、化粧液として高価なヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を大量に使わなくても多価アルコールとの併用で高い保湿効果が得られるので、消費者にとって大きなメリットがある。
【0009】
そしてまた、必要に応じ、セラミドを、上記多価アルコールに分散させた構成としている。
この場合、セラミドを、該セラミドを上記多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤とともに該多価アルコールに分散させたことが有効である。セラミドの溶解性が向上させられる。溶解助剤としては、例えば、水素添加レシチン,ダイズステロール等を用いることができる。
セラミドは、表皮の角質細胞間脂質の構成成分であり、現在までに7系統のセラミド1〜セラミド7の存在が知られており、上記の7種の化学構造を有していれば、動物または植物由来の天然セラミド、有機合成により得られた活性型セラミドを用いてもよく、それらが糖残基等で各種誘導体となったものを用いてもよい。ここで、セラミドとは、擬似セラミドも含む概念である。また、上記のうち一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。セラミドは、皮膚のバリア機能を改善し、長時間水分保持機能を持続させる機能を有する。また、皮膚の弾力性や細胞間の結合性の改善作用も奏する。
このセラミドの添加により、相乗的に保湿能力を向上させ、より一層、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【0010】
この場合、上記セラミドを0.001〜0.1重量%含有することが有効である。0.001重量%に満たないとその効果が薄く、0.1重量%を超えると、分散したセラミドが多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。 望ましくは、上記セラミドを0.004〜0.04重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。また、化粧液として高価なヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とセラミドを大量に使わなくても多価アルコールとの併用で高い保湿効果が得られるので、消費者にとって大きなメリットがある。
【0011】
また、必要に応じ、上記多価アルコールを、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物で構成している。グリセリンの配合量は、化粧液重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
グリセリンは、皮脂の分解によって生成される天然の皮膚保湿成分でもあり、もっとも古くから用いられてきた保湿剤であり、皮膚に対してうるおいを与え、しっとりとした感触を与える。そのため、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物と相まって、相乗的に保湿能力を向上させ、より一層、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
そしてまた、使用の際、使用する使用化粧液をそのまま用い、あるいは、当該使用化粧液にその自重の0.5〜100倍量の水を混合して用いる構成としている。そのまま使用すると、粘性により使用感が重たく感じるので、水を混合すると良い。水を混合するときは、水を、使用化粧液の自重の0.5〜100倍量、好ましくは、5〜50倍量、より好ましくは、10〜20倍量用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なので、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明の化粧液の製造方法は、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させるとともに、セラミドを、該セラミドを上記多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤とともに該多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にした化粧液を製造する方法であって、
多価アルコールの一部に、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び該セラミドを上記多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤を添加し、常温で撹拌して混合し、次に、多価アルコールの残部を加え、加温しながら撹拌して混合し、その後、ろ過して上記多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドを除去する構成としている。
これにより、先に、多価アルコールの一部にヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び溶解助剤を添加して混合し、次に、多価アルコールの残部を加えて加温しながら混合するので、多価アルコールへの混合工程が、2段階になっており、そのため、確実にヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドを多価アルコールに分散溶解させることができるようになる。また、多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドは、ろ過により除去されるので、品質が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にしたので、液状になることから、容器に入れて容易に保存しておくことができる。この場合、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくいので、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。また、使用に際しては、手動の定量吐出型の容器などにより、所要量を吐出させて、そのまま使用し、あるいは、新鮮な水と混合して用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。更にまた、水を含まないことから、防腐剤の混合が不要になり、そのため、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、皮膚に塗布した状態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上を図ることができ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
また、セラミドを添加すれば、相乗的に保湿能力を向上させ、より一層、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【0014】
更に、本発明の化粧液の製造方法においては、先に、多価アルコールの一部にヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び溶解助剤を添加して混合し、次に、多価アルコールの残部を加えて加温しながら混合するので、多価アルコールへの混合工程が、2段階になっており、そのため、確実にヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドを多価アルコールに分散溶解させることができるようになる。また、多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドは、ろ過により除去されるので、品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る化粧液の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る化粧液の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例1乃至11及び比較例の成分比を、溶解安定性の結果とともに示す表図である。
【図4】実施例2に関し、実際の化粧液の使用方法に従った場合の保湿力を試験した結果を示すグラフ図である。
【図5】実施例2に関し、微生物の発生試験の結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る化粧液及び化粧液の製造方法について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る化粧液は、図1に示すように、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させるとともに、セラミドを、該セラミドを多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤とともに該多価アルコールに分散させて、水を含まない形態にしたものである。
【0017】
ヒアルロン酸化合物には、例えば、ヒアルロン酸塩がある。ヒアルロン酸塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機塩酸;酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩,亜鉛塩,コバルト塩等とすることができる。また、その他ヒアルロン酸の誘導体を用いることもできる。具体的には、アセチル化ヒアルロン酸、ヒアルロン酸メチルエステル等、さらにヒアルロン酸のカルボキシル基や水酸基に保護基等が導入されたもの等が挙げられる。
本発明において、使用するヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物の分子量は特に限定されない。ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物は、皮膚によく吸収されてべとつかず、角質の水分量を高める効果を奏する。また、空気中の湿度に左右されることなく、その保湿性を一定に保つ特性がある。
ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物として、例えば、汎用のヒアルロン酸ナトリウムが知られている。ヒアルロン酸ナトリウムは、鶏の鶏冠、動物の皮膚などの動物組織等から抽出する抽出法あるいは微生物の培養による発酵法で工業的に生産されているが、本発明に用いられるヒアルロン酸ナトリウムは、抽出法あるいは発酵法のいずれの方法で生産されたものでも良い。また、現在工業的に生産されているヒアルロン酸ナトリウムは、分子量5万から300万前後のものまであるが、本発明に用いるヒアルロン酸ナトリウムの分子量は、この範囲のものであれば、いずれのものでも使用できる。
【0018】
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等)、3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価のアルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、5価のアルコール(例えば、キシリトール等);6価のアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等)を一種若しくは二種以上用いることができる。
【0019】
例えば、多価アルコールとして、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物を用いることができる。グリセリンの配合量は、化粧液重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
グリセリンは、皮膚に於いては皮脂の分解によって生成される天然の皮膚保湿成分でもあり、もっとも古くから用いられてきた保湿剤であり、皮膚に対してうるおいを与え、しっとりとした感触を与える。そのため、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物と相まって、相乗的に保湿能力を向上させることができる。
【0020】
セラミドとは、表皮の角質細胞間脂質の構成成分であり、現在までに7系統のセラミド1〜セラミド7の存在が知られており、上記の7種の化学構造を有していれば、動物または植物由来の天然セラミド、有機合成により得られた活性型セラミドを用いてもよく、それらが糖残基等で各種誘導体となったものを用いてもよい。ここで、セラミドとは、擬似セラミドも含む概念である。本発明では、上記のうち一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0021】
セラミドの溶解助剤としては、例えば、水素添加レシチン,ダイズステロール等を用いることができる。予め、セラミドと溶解助剤とを混合しておいてよい。
【0022】
そして、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜0.5重量%、多価アルコールを99重量%以上含有する構成としている。
0.01重量%よりも低いと、保湿効果が発揮されにくくなり、0.5重量%を超えると、分散したヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物が多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。
望ましくは、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.05〜0.2重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。
【0023】
そしてまた、セラミドを0.001〜0.1重量%含有する構成としている。0.001%に満たないとその効果が薄く、0.1重量%を超えると、分散したセラミドが多価アルコールに溶解しきれずに析出しやすくなり、品質の低下を招くおそれがある。
望ましくは、上記セラミドを0.004〜0.04重量%含有することである。この範囲で確実に分散溶解させることができる。
【0024】
次に、本発明の実施の形態に係る化粧液の製造方法について説明する。
図2に示すように、実施の形態では、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物としてヒアルロン酸ナトリウムを用い、多価アルコールをグリセリン単体で構成した。詳しくは、多価アルコール(グリセリン)の一部(約半量)を製造釜に投入し(S1)、これに、ヒアルロン酸ナトリウムの粉末と予め混合しておいたセラミド及び溶解助剤の粉末とを添加し、常温で撹拌して混合した(S2)。次に、多価アルコール(グリセリン)の残部(約半量)を加え、加温(80℃)しながら撹拌して混合し(S3)、更に、ホモミキサーに移してより細かく分散溶解させた(S4)。
この場合、先に、多価アルコール(グリセリン)の一部に粉末状のヒアルロン酸ナトリウム,セラミド及び溶解助剤を添加して混合し、次に、多価アルコール(グリセリン)の残部を加えて加温しながら混合するので、多価アルコールへの混合工程が、2段階になっており、そのため、確実にヒアルロン酸ナトリウム及びセラミドを多価アルコールに分散させることができるようになる。
【0025】
その後、分散状態を確認し(S5)、冷却して40〜30℃にした(S6)。それから、ミキサーから抜きだして(S7)、ろ過し(S8)、多価アルコール(グリセリン)に溶解しないヒアルロン酸ナトリウム及びセラミドを除去した。この場合、多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸ナトリウム及びセラミドは、ろ過により除去されるので、品質を向上させることができる。
そして、容器に充填して製品とした(S9)。これにより、液状になって容器に保存しておくことができるので、化粧液は、水を含まない形態になっているとともに、従来の粉末と異なって液状であることから空気に触れても水分が吸収されにくく、細菌、カビなどの微生物の繁殖が抑止され保存性が極めて良くなる。
【0026】
このようにして製造された化粧液を使用するときは、容器から適量を吐出させ、この使用化粧液を、そのまま皮膚に塗布し、あるいは、新鮮な水と混合して皮膚に塗布する。そのまま使用すると、粘性により使用感が重たく感じるので、一般には水を混合する。水としては、水道水で良いが、好ましくは、浄水器により肌に刺激になる塩素を取り除いた水道水、あるいは、ペットボトルの水を用いると良い。水を混合するときは、水を、例えば、使用化粧液の自重の0.5〜100倍量、好ましくは、5〜50倍量、より好ましくは、10〜20倍量用いる。この場合、従来の粉末と比較して、液状なのでそのまま用いるときは勿論のこと、新鮮な水で薄めて用いる場合にも混合が容易であり、取扱いがきわめて良いものになる。
【0027】
この化粧液を塗布した状態では、化粧液には防腐剤が混合していないことから、防腐剤によって皮膚を刺激する事態がなくなり、皮膚の健康に極めて良いものになる。また、ヒアルロン酸ナトリウムが多価アルコールと共働して保湿機能を発揮し、保湿性の向上が図られ、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。また、セラミドの添加により、ヒアルロン酸ナトリウムと相まって、相乗的に保湿能力を向上させ、より一層、皮膚に弾力性,潤いや張りを与えて皮膚を美しくすることができるようになる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を示す。
実施例においては、ヒアルロン酸ナトリウム(「ヒアルロン酸Na」とも表記)((株)紀文フードケミファ製「ヒアルロン酸FCH200」)を用いた。
セラミドとしては、溶解助剤として水添レシチン及びダイズステロールが混合されたセラミド3(日本精化(株)製「Phytopresome Cera-3」)を用いた。
多価アルコールとして、グリセリン(花王(株)製「化粧品用濃グリセリン」)、1−3ブチレングリコール(「BG」とも表記する)(ダイセル科学工業(株)製「1,3-ブチレングリコール」)、プロピレングリコール(「BG」とも表記する)(アズマ(株)製「プロピレングリコール」)を単独もしくはこれらを組み合わせて用いた。
そして、図3に示すように、各材料の成分比を適宜変えて、上述した製造法(但し、ろ過工程は無し)に従って、実施例1乃至11を作成した。実施例2においては、Ph=7.2,粘度1850cpsであった。
【0029】
この各実施例,比較例1(グリセリンのみ)及び比較例2(実施例2の成分でヒアルロン酸ナトリウムを添加しないもの)について、添加成分の溶解安定性(添加成分の析出がなく良く溶解している状態)について視認した。結果を図3に示す。実施例9,10,11の結果から、ヒアルロン酸ナトリウムは0.2重量%以下の範囲、セラミドは0.04重量%以下の範囲で良好であることが分かった。
【0030】
また、実施例及び比較例に関し、保湿力について検証した。保湿力は、Wave Cyber社の油水分測定機WSK-P500Uを使用した。この測定機は、皮膚の測定部の水分量を0〜99の相対値で表すものである。測定する部位は前腕屈側でおこなった。化粧液を塗布する前はほとんど同じ水分量を表示する部位の皮膚に、水で2倍に溶解した実施例、比較例の化粧液をなじませ水分値を経時的に測定した。
【0031】
この結果から、プロピレングリコールや1−3ブチレングリコールに比べて、グリセリンが最も保湿力が高いことがわかった。また、グリセリンと他の多価アルコールを混合して使用する場合は、グリセリンを全多価アルコールの50%重量以上含むのが、保湿力を出すためには望ましいことがわかった。また、実施例においては、何れも、比較例1,2に比較して、保湿力が向上していることが分かった。
【0032】
更に、実施例2に関し、実際の化粧液の使用方法に従った場合の保湿力を試験した。一般的に実際の化粧水の使用方法は、皮膚に化粧水をなじませた後に乳液やクリーム等の油性成分を塗布することで、化粧水の水分の蒸発を防いでいる。そこで、本試験においては、油性成分として、純スクワランオイルを用い、これを、化粧液の塗布後に塗布した場合についても試験した。
試験においては、比較対象として水のみ(試験例1)、実施例2の化粧液を水で薄め自重の20倍とした化粧液(試験例2)、実施例2の化粧液を水で薄め自重の20倍とした化粧液をなじませた後にスクワランオイル1滴をつけた場合(試験例3)、水とスクワランオイルのみの場合(試験例4)の保湿力を比較した。結果を図4に示す。この結果から、本発明の実際に使う使用方法での保湿力は明らかに高いことが分かった。
【0033】
更にまた、実施例2について、微生物試験を行った。比較例3として、精製水を用意した。また、比較例4として、精製水に、ヒアルロン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製「ヒアルロン酸FCH200」)0.05重量%、グリセリン(花王(株)製「化粧品用濃グリセリン」)5.00重量%、防腐剤としてのメチルパラベン(上野製薬(株)製「メッキンスM」)0.10重量%を混合した化粧水を用意した。これら実施例2,比較例3及び4の各検体を作成後、ビーカーに入れ、蓋をせずに16時間放置(開放放置)して、空気に晒した。その後、各検体を、洗浄滅菌した蓋つきガラス瓶に移し替え、40℃の恒温槽に入れて、培養した。そして、1日,4日,7日の順に、検体を取り出して、検体中の微生物の発生状況を調べた。微生物の発生状況は、ガラス瓶から検体を0.2ml取り出し、蓋付シャーレに設けたトリプトソイ寒天培地に塗布し、このシャーレを蓋をした状態で、上記と同様の恒温槽に入れ、48時間に亘って微生物の発生状況を見た。結果を図5に示す。尚、比較例3の精製水については、何れも、早期に微生物のコロニーの発生が認められたので8時間経過時に試験を中止した。
この結果から、実施例2では、防腐剤を使用していないにも関わらず、微生物の発生が認められず、優れていることが分かった。
【0034】
また、実施例2について、パネラによる使用感テストを行った。パネラとして、市販の化粧水にかぶれたことがある人を含む成人女性25名を抽出し、1週間〜4ヶ月間、実施例2の化粧液を自重の20倍に水で薄めたものを、今までの化粧水に替えて使用してもらい、評価を得た。
1.保湿力について
今まで使用していた化粧水より保湿力高かった 25名/25名 100%
同じ、わからない 0名 0%
保湿力低かった 0名 0%
2.今後使用したいと思うか
とても使用したい 24名/25名 96%
まあ使用したい 1名 4%
どちらでもない 0名 0%
使用したくない 0名 0%
【0035】
尚、本発明の実施の形態においては、多価アルコールに、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び溶解助剤のみを添加したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、多価アルコールに、ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び溶解助剤以外に、水分を含有しないことを条件に、化粧品又は皮膚科学の分野で一般に使用される、防腐殺菌剤以外の他の成分を配合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
成人女性の90%以上が毎日使っている従来の化粧水はほとんどが水であり、これら大量の化粧水が世の中を流通していることを鑑みれば、本発明が提供する化粧液は、水が入ってない状態で消費者の手に渡ることになることから、容器の問題、保存する空間の問題、輸送費の問題等、様々な有利な点が挙げられる。また、化粧液に防腐剤が入ってないことで、皮膚刺激がなくなり、かぶれる人が減り、医療費の軽減につながるなど、有用性がきわめて高くなる。また、化粧液として高価なヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物とセラミドを大量に使わなくても多価アルコールとの併用で高い保湿効果が得られるので、消費者にとって大きなメリットがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を含有する化粧液において、
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を、多価アルコールに分散させ、水を含まない形態にしたことを特徴とする化粧液。
【請求項2】
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.01〜0.5重量%、上記多価アルコールを99重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の化粧液。
【請求項3】
上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物を0.05〜0.2重量%含有することを特徴とする請求項2記載の化粧液。
【請求項4】
セラミドを、上記多価アルコールに分散させたことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の化粧液。
【請求項5】
セラミドを、該セラミドを上記多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤とともに該多価アルコールに分散させたことを特徴とする請求項4記載の化粧液。
【請求項6】
上記セラミドを0.001〜0.1重量%含有することを特徴とする請求項4または5記載の化粧液。
【請求項7】
上記セラミドを0.004〜0.04重量%含有することを特徴とする請求項6記載の化粧液。
【請求項8】
上記多価アルコールを、グリセリン単体若しくはグリセリンと他の多価アルコールとの混合物で構成したことを特徴とする請求項1乃至7記載の化粧液。
【請求項9】
使用の際、使用する使用化粧液をそのまま用い、あるいは、当該使用化粧液にその自重の0.5〜100倍量の水を混合して用いることを特徴とする請求項1乃至8記載の化粧液。
【請求項10】
上記請求項1乃至9記載の化粧液の製造方法において、
多価アルコールの一部に、上記ヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミド及び該セラミドを上記多価アルコールに溶解させるための水を含まない溶解助剤を添加し、常温で撹拌して混合し、次に、多価アルコールの残部を加え、加温しながら撹拌して混合し、その後、ろ過して上記多価アルコールに溶解しないヒアルロン酸及び/またはヒアルロン酸化合物,セラミドを除去することを特徴とする化粧液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−132131(P2011−132131A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290349(P2009−290349)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(509353001)
【Fターム(参考)】