説明

化粧用パックシート

【課題】本発明は、貼付するまでのハンドリング性を高めるとともに、貼付後における肌部との密着性に優れた化粧用パックシートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の化粧用パックシートは、一方の面に離型性を有する基材層と、この基材層の一方の面側に形成されるゲル層とを備え、このゲル層が、融点が15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスと、このマトリックスに含まれる化粧用有効成分とを有する。当該化粧用パックシートにあっては、ゲル層を肌部に貼付し、肌部からの熱によって融解したゲル層に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。当該化粧用パックシートは基材層を有するので肌部への貼付までの間にゲル層が破損することを防止できる。また、肌部への貼付後に基材層を剥離でき、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用有効成分を含有した化粧用パックシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用パックシートは、顔等の肌部に直接貼付させることで化粧用有効成分の浸透等を行うものであり、この種の化粧用パックシートとしては、化粧用有効成分をゲル体に含有させたものが発案されている(特開2009−91342号公報参照)。
【0003】
この特開2009−91342号公報には、ゲル層を補強して当該化粧用パックシートのハンドリング性を向上させるために、ゲル層の支持体層としてのシート状基材を有する化粧用パックシートが開示されている。そして、このシート状基材の例としては、不織布、織布又はプラスチックシートを用いることが開示されている。
【0004】
上記公報所載の化粧用パックシートにあっては、不織布及び織布は一般的に剛軟度が小さい(柔らかい)ので、例えば顔に貼付するまでの取扱いに際しゲル層に亀裂が生ずる等のおそれがあり、ハンドリング性が十分であるとは言えない。
【0005】
また、上記公報所載の化粧用パックシートにあって、シート状基材としてプラスチックシートを用いた場合には、上記不織布に比して化粧用パックシート全体の剛軟度が大きく(硬く)なる。このように剛軟度が大きくなってしまうと、肌部に貼付した際、化粧用パックシートが肌部の形状に沿って変形しにくくなってしまい、ゲル層が肌部に接触しない箇所が生ずるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−91342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような不都合に鑑みてなされたものであり、貼付するまでのハンドリング性を高めるとともに、貼付後における肌部との密着性に優れた化粧用パックシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
一方の面に離型性を有する基材層と、
この基材層の一方の面側に形成されるゲル層とを備え、
このゲル層が、融点が15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスと、このマトリックスに含まれる化粧用有効成分とを有する化粧用パックシートである。
【0009】
当該化粧用パックシートにあっては、ゲル層を肌部に貼付した後に基材層を剥離して用いられる。そして、上記ゲル層が肌部からの熱によって融解し、ゲル層に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。当該化粧用パックシートの貼付時に肌部には弾力を有するゲル層が接触するため、肌部へ密着性が高く、このゲル層が融解する際に肌部から熱を吸収するため、清涼感を使用者に与えることができる。
【0010】
さらに、当該化粧用パックシートは、ゲル層の他方の面側に基材層が配設されているので、肌部への貼付までの間にゲル層が破損することを防止でき、ハンドリング性が高い。また、当該化粧用パックシートにあっては、肌部への貼付後に基材層を剥離することができるので、剛軟度を大きい基材層を有する場合でも、ゲル層の肌部への密着性を損なうことがない。
【0011】
当該化粧用パックシートにあっては、ゲル層と基材層との間に配設される軟質層をさらに備える構成を採用することも可能である。この構成を採用することにより、基材層を剥離すると、上記軟質層がゲル層側に残存し、この残存する軟質層によってゲル層を支持し、融解していくゲル層の形状維持に寄与し得る。
【0012】
上記軟質層としては、種々のものを採用することができるが、軟質層が、主成分としてエラストマー系材料を含むことが好ましい。これにより、ゲル層の肌部への密着性を高めるべくゲル層及び軟質層の積層体の剛軟度を容易かつ的確に調整することができ商品設計の自由度を高めることができる。
【0013】
当該化粧用パックシートにあっては、上記ゲル層の外側面に上記基材層が積層されている構成を採用することも可能である。この構成を採用することにより、肌部に貼付した後基材層を剥離すると、肌部にはゲル層のみが貼付された状態となる。そして、このゲル層が肌部の熱によって融解した後には、不織布等の層状の残存物が肌部に残らず、このため使用後に残存物を肌部から離脱して廃棄する手間を無くすことができる。
【0014】
当該化粧用パックシートは、基材層の剥離強度が、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましい。基材層の剥離強度を上記範囲とすることで、当該化粧用パックシートを肌部に貼付するまでの間に上記基材層が不用意に剥離せず、また肌部に当該化粧用パックシートを貼付後は、上記基材層を手で容易に剥離できる。
【0015】
当該化粧用パックシートは、基材層の透湿度が、1000g/m・24hr以下であることが好ましい。基材層の透湿度を上記上限値以下とすることで、当該化粧用パックシートは、ゲル層に含有される揮発成分が上記基材層側に揮発するのを的確に防止できる。
【0016】
当該化粧用パックシートは、ゲル層の平均厚さが1μm以上100μm以下であることが好ましい。ゲル層の平均厚さを上記範囲とすることで、十分な量の化粧用有効成分を含有させることができ、またゲル層の重量が大きくなり過ぎず、肌部へ貼付した際の違和感が少ない。
【0017】
上記ゲル体のゲル化剤としては、ゼラチンが用いられているとよい。このようにゲル体のゲル化剤として、ゼラチンが用いられていることで、ゲル層の保水性及び生体に対する安全性を高くすることができる。
【0018】
上記ゼラチンの平均分子量としては、5000以上60000以下であることが好ましい。ゼラチンの平均分子量を上記範囲とすることで、ゲル層の融点を15〜40℃の範囲に調節することができ、融解後の成分の肌部への浸透性を高めることができる。
【0019】
上記ゲル層は、複数のマイクロ層からなる積層体であるとよい。このようにゲル層が複数のマイクロ層からなる積層体であることによって、これらの各マイクロ層に任意の化粧用有効成分を含有させることができ、様々な用途に当該化粧用パックシートを用いることができる。
【0020】
上記複数のマイクロ層がそれぞれ異なる化粧用有効成分を含有するとよい。このように複数のマイクロ層がそれぞれ異なる化粧用有効成分を含有することによって、顔等の肌部に当該化粧用パックシートの内面を貼付すると、肌部からの熱によって内側のマイクロ層から順に融解し、それぞれのマイクロ層が含有している化粧用有効成分が肌部に浸透又は付着される。結果として、各マイクロ層に含有される化粧用有効成分を肌部へ順次浸透又は付着させることができ、美容効果を向上させることが可能となる。
【0021】
上記化粧用有効成分として化粧水成分、美容液成分及び乳液成分が用いられ、上記複数のマイクロ層が、化粧水成分、美容液成分及び乳液成分をこの順に内側のマイクロ層から含有するとよい。このように複数のマイクロ層が上記化粧用有効成分を順に含有することで、当該化粧用パックシートの内面を肌部へ貼付することによって、化粧水、美容液、乳液をこの順に肌部に浸透又は付着させ、通常のスキンケアの手順を一度に行うことができ、スキンケアの手間を削減することができる。
【0022】
ここで、「化粧用」とは、文字通りの化粧のほか、美容用途やスキンケア用途、肌を本来の状態に戻す用途等を含む概念である。「融点」とはゲル層が加熱によってゾル化する温度を意味し、JIS K6503に準拠して測定される値である。「一方の面側」とは、当該化粧用パックシートを肌部へ貼付する側を意味する。「剥離強度」とは、基材層を積層面(例えば軟質層又はゲル層)から剥離する際の強度を表し、JIS K6854−2:1999に準拠して剥離速度0.3mm/min、剥離角度180°、測定巾50mmで測定した値を意味する。「透湿度」とは、JIS Z0208カップ法に準拠して温度40℃、相対湿度90%で測定した値を意味する。「平均厚さ」とは、JIS K 7130に準拠して測定される値である。「平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した重量平均分子量を意味する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の化粧用パックシートは、ゲル層の揮発成分の基材層側への揮発を抑制することができ、また貼付されるまでのハンドリング性が高く、さらに貼付後における肌部との密着性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る化粧用パックシートを示す模式的断面図である。
【図2】図1の化粧用パックシートとは異なる形態に係る化粧用パックシートを示す模式的断面図である。
【図3】図1の化粧用パックシートとは異なる形態に係る化粧用パックシートを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説するが、まず本発明の第一実施形態の化粧用パックシートを図1を参酌しつつ説明する。この図1に示す化粧用パックシート1は、内面に離型性を有する基材層3と、この基材層の内面側に積層されるゲル層2とを備えている。本実施形態においては、化粧用パックシート1は、基材層3の内面にゲル層2が積層されている。
【0026】
<ゲル層2>
ゲル層2は、溶媒にゲル化剤及び化粧用有効成分を添加したものをゲル化したゲル体からなるマトリックスと、このマトリックスに含有される化粧用有効成分とを有する。このゲル層2は、肌部からの熱によって融解するため、化粧用パックシート1を肌部に貼付すると、ゲル層2が含有する化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。
【0027】
上記ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン、寒天、アルブミン、カラギーナン、ファーセレラン、タマリンド、ペクチン、マルメロ、澱粉等を用いることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。これらの中でも、弾力性が高く、保水性及び生体への安全性を有するゼラチンが特に好ましい。
【0028】
上記ゼラチンはコラーゲンの加水分解タンパク質であり、牛骨、牛皮、豚皮、魚鱗等を原料とする。これらの中でも、生体への親和性と肌部への有効成分を有する、豚皮由来ゼラチン、魚鱗由来ゼラチンが好ましい。ゼラチンの製造方法については特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、塩酸や硫酸などの無機酸に数十時間浸漬させて前処理した後にゼラチンを抽出する酸処理法、消石灰の懸濁液中に数ヶ月含浸させて前処理した後にゼラチンを抽出するアルカリ処理法等を用いることができる。また、上記酸処理法又はアルカリ処理法で製造したゼラチンを酵素処理によって低分子化したゼラチンを用いることもできる。
【0029】
また上記ゼラチンとしては、ゼラチン誘導体を用いることもできる。このゼラチン誘導体としては、公知の誘導体を使用することができ、例えば、ゼラチンの酸無水物付加体(例えばフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンなど)、ラクトン付加体(グルコノ−δ−ラクトン付加ゼラチンなど)、アシル化ゼラチン(アセチル化ゼラチンなど)、エステル化ゼラチン(メチルエステル化ゼラチンなど)、ゼラチン有機酸塩等(ゼラチン−酢酸塩、ゼラチン−ステアリン酸塩、ゼラチン−安息香酸塩等)を挙げることができる。これらの中でも、生体への親和性の点から、コハク化ゼラチン、フタル化ゼラチン、トリメリット化ゼラチンが好ましい。
【0030】
上記ゲル体は、ゲル化剤として上記ゼラチン又はその誘導体を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、ゼラチンとその誘導体とを混合して用いてもよく、さらにコラーゲンを含有してもよい。
【0031】
上記のようにゼラチン又はその誘導体を用いる場合、ゼラチン又はその誘導体の重量平均分子量の下限としては、5000が好ましく、10000がより好ましく、20000が特に好ましい。他方、重量平均分子量の上限としては、60000が好ましく、50000がより好ましく、40000が特に好ましい。ゼラチン又はその誘導体の重量平均分子量が上記範囲より小さいと、肌部への定着性、強度等が低下する。逆に、重量平均分子量が上記範囲より大きいと、融解したゼラチンの肌部への浸透性が低下し、またゲル層2の強度が高くなって当該化粧用パックシート1の肌部への貼付時の感触が悪化するおそれがある。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値である。
【0032】
上記ゲル層2の平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、5μmがさらに好ましく、10μmが特に好ましい。一方、ゲル層2の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、50μmがさらに好ましく、30μmが特に好ましい。平均厚さが上記範囲より小さいと十分な量の化粧用有効成分を含有させることができないおそれがある。逆に、ゲル層2の平均厚さが上記範囲より大きいと、ゲル層2の重量が増し、当該化粧用パックシート1を肌部へ貼付した際の違和感が大きくなる。
【0033】
上記ゲル体の融点の下限としては、15℃が好ましく、20℃がより好ましく、25℃がさらに好ましく、30℃が特に好ましい。他方、ゲル体の融点の上限としては、40℃が好ましく、35℃がより好ましく、34℃がさらに好ましく、33℃が特に好ましい。ゲル体の融点が上記範囲より低いと、ゲル層2が融解し易くなり、取扱い性が低下する。逆に、ゲル体の融点が上記範囲より高いと、ゲル層2が肌部に接触してもゲル層2が融解せず、含有されている化粧用有効成分を肌部に浸透させることができないおそれがある。なお、ゲル体の融点はゲル化剤の含有量又は2種以上のゲル化剤の混合によって調節することができる。
【0034】
ゲル層2を形成する溶媒に対する上記ゲル化剤の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく0.5質量%がさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。他方、ゲル化剤の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%以下が特に好ましく、30質量%以下が特に好ましい。ゲル化剤の含有量が上記範囲より小さいと、ゲル層2の強度が低くなり、溶媒及び化粧用有効成分を安定に保つことが困難になるおそれがある。逆に、ゲル化剤の含有量が上記範囲より大きいと、ゲル層2の融解時に肌部に浸透せずに付着するゲル化剤の量が増え、肌部からの拭き取りの手間が生じるおそれがある。加えて、ゲル層2が十分な量の化粧用有効成分を含有できなくなるおそれや、ゲル層2の強度が高くなって当該化粧用パックシート1の肌部への貼付時の感触が悪化するおそれがある。
【0035】
ゲル層2には、化粧用有効成分として、例えば肌部に浸透又は付着させることで皮膚を保湿し、滑らかにする働きを奏する化粧水成分を含有することができる。
【0036】
上記ゲル層2に含有される化粧用有効成分としては、特に限定されるものではないが、化粧水成分、乳液成分、美容液成分、薬剤などが挙げられる。
【0037】
上記化粧水成分としては、一般に化粧水に用いられている化粧用有効成分を用いることができる。具体的には、例えば、多価アルコール類(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エチルヘキサン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソトリデカン酸、イソノナン酸、ペンタデカン酸等)、糖類(ヒアルロン酸、マルチトール等)、増粘剤類(アルギン酸塩、セルロース誘導体、クインスシードガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸系ポリマー等)、防腐剤類(パラベン、フェノキシエタノール、サリチル酸、ソルビン酸、イソプロピルメチルフェノール等)、収斂剤類、紫外線吸収剤類、アミノ酸類、グリチルリチン酸誘導体類、植物エキス類、pH調整剤、香料、脂溶性ビタミン等を用いることができる。また、皮膚用外用剤として利用される成分も用いることができ、例えば、美白剤、血行促進剤等をあげることができる。
【0038】
上記pH調整剤としては、例えば、有機酸又はその塩を用いることができる。特に、防腐効果を有する有機酸又はその塩を用いることにより、防腐剤の使用量を低減することができる。
【0039】
上記美容液成分としては、一般に美容液に用いられている化粧用有効成分を用いることができる。具体的には、例えば、コラーゲン、蜂蜜、セラミド、トレハロース、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンK、アルジレリン、リコピン、油溶性肝草エキス、水溶性プラセンタエキス、アラントイン、海草エキス、アシル化ケフィライン水溶液、麦芽エキス、N−アセチル−L−チロシン、カッコン、ヒアルロン酸又はその塩類、トラネキサム酸、アイプライトエキス、ゴールデンシール、ローズ油、アミノ酸類、有機ゲルマニウム、マトリカイン、アロエエキス、ヨーグルトの乳清成分、カフェイン、ハイドロキノン等を用いることができる。また、これ以外の美白剤、血行促進剤、しわ防止剤、肌荒れ防止剤、消炎剤等の成分を含有させることができる。
【0040】
上記美白剤としては、例えば、フェルラ酸、L−アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体(アルブチン等)、コウジ酸及びその誘導体、エラグ酸及びその誘導体、グリチルリチン酸ジカリウム、胎盤抽出物のほか、茶、丁子、営実、地楡、甘草、枇杷、橙皮、高麗人参、芍薬、山査子、麦門冬、生姜、松笠、桑白皮、厚朴、デイオスコレアコンポジタ根、インチンコウ、阿仙薬、黄ゴン、アロエ、アセロラ、アルテア、シモツケ、オランダガラシ、キナ、オリーブ葉、コンフリー、サクラ、ローズマリー、ロート等の植物抽出液等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0041】
上記血行促進剤としては、例えば、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸アミド、米胚芽油、ボダイジュエキス、マロニエエキス、ユズエキス等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0042】
上記しわ防止剤としては、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニル系樹脂等の皮膜剤等を挙げることができる。
【0043】
上記肌荒れ防止剤としては、ヒアルロン酸産生促進、コラーゲン合成促進、グリコサミノグリカン合成促進等の効果を有し、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、レチノール、レチノイン酸、α−ヒドロキシ酸等を挙げることができる。
【0044】
上記消炎剤としては、グリチルリチン酸及びその誘導体(グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸ステアレート等)、グアイアズレン及びその誘導体(グアイアズレンスルホン酸エチル、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等)、酸化亜鉛、植物エキス(シソ、アロエ、コンフリー、ゲンチアナ、カミツレ、ムラサキ、キンギンカ、セージ、バーチ、トウキンセンカ、ニワトコ、ガマ、オトギリソウ等)等を挙げることができ、これらの中から1種もしくは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0045】
上記乳液成分としては、一般に乳液に用いられている化粧用有効成分を用いることができ、例えば、保湿剤、油剤及び非イオン性界面活性剤の組合せからなる成分を用いることができる。
【0046】
上記保湿剤としては、例えば、多価アルコール類(ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、糖及び糖アルコール類(グルコース、果糖、蔗糖、ソルビトール、マンニトール等)、アミノ酸類(アスパラギン酸、アルギニン等)、ムコ多糖類又はその塩(ヒアルロン酸(ナトリウム)、コンドロイチン硫酸(ナトリウム)、デルマタン硫酸(ナトリウム)等)、タンパク質又はその分解物(コラーゲン、エラスチン等)、ピロリドンカルボン酸(ナトリウム)等のほか、天然物として、アロエ、アルニカ、イラクサ、イリス、ウスベニアオイ、オトギリソウ、カミツレ、サルビア、シラカバ、スギナ、セイヨウサンザイシ、セイヨウノコギリソウ、タイム、ニンジン、ハマメリス、パンジー、ヒナゲシ、ラベンダー、ローズマリー、レモン、ユーカリ、ダイズ等の植物抽出エキス、ビフィズス菌等の発酵エキス等を挙げることができる。これらの中でも、しっとり感、エモリエント効果を有する点から、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール等)、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、水溶性コラーゲン、アロエ抽出エキス、ローズマリー抽出エキス等が特に好ましい。これらの保湿剤は、単独で使用してもよいが、しっとり効果を増強するために2種以上を組み合せて用いることが好ましい。
【0047】
上記油剤としては、例えば、炭化水素、油脂、脂肪酸、高級アルコール、合成エステル、シリコーン類等を用いることができる。具体的には、例えば、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オリーブ油、アーモンド油、カカオ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガト油、ヒマワリ油、月見草油、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニル酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデシルアルコール、コレステロール、イソプロピルミリステート、セチルパルミテート、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、コレステリルエステル、ネオペンチルグリコール脂肪酸エステル、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、シクロメチコン等を挙げることができる。これらの中でも、流動パラフィン、オリーブ油、アーモンド油、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ペンタエリスリトールテトラ2−エチルヘキサン酸エステル、ネオペンチルグリコールジカプリル酸エステル、ジメチルポリシロキサン等が特に好ましい。これらの油剤は、単独で使用してもよいが、使用感を向上させるために2種以上を組み合せて用いることが好ましい。
【0048】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル等が特に好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で使用してもよいが、二種以上を組み合わせて使用してもよく、特にソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレン脂肪酸エステルとを組み合わせて使用するのが好ましい。
【0049】
上記乳液成分のpHは、25℃で3.0以上9.0以下が好ましく、5.0以上7.5以下が特に好ましい。pHはクエン酸、乳酸等の有機酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン等の塩基で調整することができる。
【0050】
上記化粧用有効成分はその種類に応じて必要量が異なるため、ゲル層2における化粧用有効成分の含有量は適宜決定することが望ましい。一般的には、例えば、ゲル層2を形成する溶媒に対する化粧用有効成分の含有量の下限としては、0.001質量%が好ましく、0.03質量%がさらに好ましく、0.05質量%が特に好ましい。一方、化粧用有効成分の含有量の上限としては、80質量%が好ましく、50質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましい。化粧用有効成分の含有量が上記範囲より小さいと、十分な効果を奏する量の化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができないおそれがある。逆に、化粧用有効成分の含有量が上記範囲より大きいと、過度の化粧用有効成分が肌部に浸透又は付着するおそれや、ゲル層2の融解時に液だれが生じるおそれがある。
【0051】
ゲル層2を構成する溶媒としては、水、有機溶剤等を用いることができるが、水が特に好ましい。ゲル層2を構成する溶媒が水であることによって、化粧用シート1の肌部への貼付時にゲル層が肌部になじみ易くでき、また、ゲル層2の融解時には肌部へ水分を浸透又は付着させることができる。
【0052】
ゲル層2の形成材料(溶媒、化粧用有効成分及びゲル化剤)に対する上記溶媒の含有量の下限としては、20質量%が好ましく、40質量%がさらに好ましく、50質量%が特に好ましい。一方で、溶媒の含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がさらに好ましく、85質量%が特に好ましい。溶媒の含有量が上記範囲より小さいと、ゲル層2が十分な量の化粧用有効成分を保持できないおそれがある。逆に、溶媒の含有量が上記範囲より大きいと、ゲル層2の強度が低くなり、溶媒及び化粧用有効成分を安定に保つことが困難になるおそれがある。
【0053】
<基材層3>
基材層3は、上述のように内面に離型性を有する層であり、非透湿性を有する無孔プラスチック層を有している。なお、無孔プラスチック層とは、層厚方向に貫通する貫通孔が形成されておらず層厚方向に水蒸気等の揮発成分の透過が抑制される層である。
【0054】
この基材層3は、無孔プラスチック層のみから構成(プラスチックシート単体から構成)することもでき、また無孔プラスチック層と他の層との複層構造から構成することも可能である。つまり、この基材層3としては、プラスチックシート単体の場合のほか、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なシート状体に無孔プラスチック層を積層したものを用いることができる。但し、基材層3としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックシートが好適に用いられる。また、この基材層3の内面(ゲル層2の積層面)には、ゲル層2との良好な剥離性を得るため、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を施すことが好ましく、この中でもシリコーン処理が施されていることが特に好ましい。なお、基材層3の剥離性は、剥離処理に用いる薬剤の種類及び/又はその塗工量等を調節することによって制御することができる。
【0055】
上記基材層3の平均厚さは、特に限定されないが、基材層3の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、15μmがより好ましく、25μmがさらに好ましい。他方、基材層3の平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、300μmがより好ましく、100μmがさらに好ましく、70μmが特に好ましい。基材層3の平均厚さが上記下限値未満であると、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがあるとともに、透湿度が高くなるおそれがあるためである。また、基材層3の平均厚さが上記上限値を超えると、基材層3の剛軟度が大きくなってしまい、剥離作業の困難性をもたらすおれそがあるためである。
【0056】
上記基材層3の透湿度は、1000g/m24hr以下であることが好ましく、100g/m・24hr以下であることがより好ましく、50g/m・24hr以下であることがさらに好ましい。透湿度が上記上限値を超えると、ゲル層2に含有される揮発成分が基材層3側に揮発するのを十分に抑制できないおそれがあるためである。ここで、この透湿度は、JIS Z0208カップ法に準拠して温度40℃、相対湿度90%で測定した測定値である。
【0057】
上記基材層3の上記ゲル層2に対する剥離強度は、0.01N/50mm以上1N/50mm以下であることが好ましく、0.03N/50mm以上0.7N/50mm以下であることがより好ましく、0.05N/50mm以上0.5N/50mm以下であることがさらに好ましく、0.07N/50mm以上0.2N/50mm以下であることが特に好ましい。剥離強度が上記下限値未満であると、ゲル層2と基材層3との接着力が小さ過ぎ、ゲル層2が基材層3から不用意に剥離するおそれがあり、また、剥離強度が上記上限値を超えると、基材層3をゲル層2から剥離する際に要する力が大きくなり、肌部への貼付後に基材層3を容易に剥離できないおそれがあるためである。なお、この基材層3のゲル層2に対する剥離強度は、JIS K6854 2:1999に準拠し、引張試験器を用いて基材層3を剥離速度300mm/min、剥離角度180°、測定巾50mmでゲル層2から剥離して測定した測定値である。
【0058】
上記基材層3の剛軟度の下限としては、20mmが好ましく、40mmがより好ましく、60mmがさらに好ましい。他方、上記基材層3の剛軟度の上限としては、150mmが好ましく、100mmがより好ましく、80mmがさらに好ましい。基材層3の剛軟度が上記下限値未満であると、当該化粧用パックシート1を貼付するまでに、当該化粧パックシート1が撓み過ぎて、基材層3からゲル層2が不用意に剥離したり、ゲル層2が破損するおそれがあり、この貼付の際のハンドリング性が低下するおそれがある。他方、基材層3の剛軟度が上記範囲より大きいと、基材層3の柔軟性が低下し、肌部への貼付後に基材層3を剥離する際に、この基材層3が撓みにくく剥離し難くなるおそれがある。なお、「剛軟度」とは、JIS L 1096 6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定される値である。
【0059】
なお、上記基材層3は、上述したようにプラスチックシート単体からなる場合のほか、無孔プラスチック層と他の層との複層構造から構成することも可能である。この他の層の材料は特に限定されないが、プラスチックシート、ゴムシート、紙、布(例えば不織布)、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当なシート状体から構成することができる。このように基材層3を複層構造とする場合、種々の積層方法を採用でき、例えば無孔プラスチック層と他の層とをドライラミネート法等によって積層させることができる。また、無孔プラスチック層の形成箇所(積層位置)は特に限定されるものではなく、基材層3の外面(ゲル層2の積層面の逆側の面)に配設したり、また基材層3の中間層に配設することも可能である。ただし、無孔プラスチック層は、基材層3の内面(ゲル層2の積層面)に配設されていることが好ましく、これにより無孔プラスチック層によってゲル層2からの揮発成分の揮発をより効果的に抑制することができる。また、上記のように基材層3を複層構造とした場合にあっても、基材層3の内面(ゲル層2の積層面)に剥離処理が施されていることが好ましい、
【0060】
上述した他の層としてのプラスチックシートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0061】
また上述した他の層としての上記不織布の材料としては、種々の繊維、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂からなる繊維、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなる繊維及びこれら樹脂の共重合物、変性物及びこれらの組み合わせからなる繊維等を採用でき、これらのうちの1種を或いは2種以上組み合わせて用いることができる。但し、不織布の材料としては、セルロース系繊維が好適に用いられる。このセルロース系繊維は、綿、パルプ、麻等の他、パルプより得られるビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、溶剤紡糸されたレーヨンであるリオセル等を採用でき、これらのうちの1種を或いは2種以上組み合わせて用いることができる。この繊維の繊度及び繊維長は、特に限定されるものではないが、繊度が0.55デシテックス以上3.3デシテックス以下、繊維長が20mm以上51mm以下のものが好適に用いられる。
【0062】
また、上記不織布としては、例えば外面に占めるセルロース系繊維の含量が40%以上、好ましくは60%以上であり、かつ不織布全体に占めるセルロース系繊維の含量が20%以上70%以下、好ましくは30以上50%以下であるものが好適に用いられる。
【0063】
上記不織布の製造方法としては、水流交絡(スパンレース)法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法等の一般的な方法を採用することができるが、これらの中でも特に水流交絡法が好適である。サーマルボンド法、ケミカルボンド法では不織布を構成する繊維間が接着されるため、繊維の自由度が低減してしまうためである。
【0064】
<化粧用パックシート1>
当該化粧用パックシート1は、上述のように、基材層3の内面にゲル層2が積層された構造から構成されている。当該化粧用パックシート1の平均厚さは、特に限定されるものではないが、11μm以上600μm以下であることが好ましく、20μm以上350μm以下であることがより好ましく、35μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。当該化粧用パックシート1の平均厚さが上記範囲より小さいと、化粧用パックシート1の剛軟度が小さくなり過ぎ肌部への貼付時のハンドリング性が劣るおそれがある。逆に、化粧用パックシート1の平均厚さが上記範囲より大きいと、重量が増すため肌部への貼付時のハンドリング性が劣るおそれがある。
【0065】
<化粧用パックシートの製造方法>
当該化粧用パックシート1の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ゲル層の形成材料をそれぞれ配合する形成材料配合工程と、基材層にゲル層を積層する積層工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0066】
形成材料配合工程は、溶媒にゲル化剤及び化粧用有効成分を添加してゲル層の形成材料を配合する工程である。この形成材料配合工程は、例えば、熱した溶媒に粉末状のゲル化剤及び化粧用有効成分を配合する方法等を用いることができる。
【0067】
積層工程は、形成材料配合工程で化粧用有効成分を配合した形成材料をゲル化させて基材層上に積層する工程である。具体的には、連続的に流される基材層の上にゲル層の形成材料を塗布し、この塗布された形成材料を冷却することでゲル化させてゲル層を形成する方法等を用いることができる。このゲル層の形成材料を塗布する手段としては周知の方法が使用でき、例えば、スリットコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、フローコート法、グラビアコート法、スプレー法、バーコート法等を用いることができる。さらには、ゲル層の形成材料を塗布する手段としては、例えばゲル層の形成材料を充填機から基材層に滴下し、さらにゲル層の形成材料が滴下された基材層を振動させて形成材料を均一な層状に形成することも可能である。
【0068】
<利点>
当該化粧用パックシート1にあっては、ゲル層2の内面を顔等の肌部に接触するように貼付して、その後基材層3を剥離して使用される。上記肌部への貼付作業に際しては、ゲル層2の外側に基材層3が配設されているので、当該化粧用パックシート1の剛軟度が比較的大きく、肌部への貼付までの間にゲル層2が破損することを防止でき、ハンドリング性が高い。
【0069】
また、この基材層3は無孔プラスチック層を有するので、商品包装状態等において無孔プラスチック層によってゲル層3からの揮発成分の基材層3側への揮発を防止することができる。
【0070】
さらに、基材層3は、所定の剛軟度で且つ所定の剥離強度に設けられているので、肌部への貼付後に容易且つ確実に剥離することができる。
【0071】
そして、肌部に貼付されたゲル層2は肌部からの熱によって融解し、ゲル層2に含有される化粧用有効成分を肌部に浸透又は付着させることができる。また、肌部には弾力を有するゲル層2が接触するため、肌部への密着性が高く、このゲル層2が融解する際に肌部から熱を吸収するため、清涼感を使用者に与えることができる。さらに、当該化粧用パックシート1にあっては、肌部への貼付後に上述のように基材層3を剥離するので、剛軟度を大きい基材層3を有する場合でも、ゲル層2の肌部への密着性を損なわない。
【0072】
また、当該化粧用パックシート1は、ゲル層2と基材層3との二層構造であるので、肌部に貼付した後基材層3を剥離すると、肌部にはゲル層2のみが貼付された状態となる。そして、このゲル層2が肌部の熱によって融解した後には、不織布等の層状の残存物が肌部に残らず、このため使用後に残存物を肌部から離脱して廃棄する手間が必要でない
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の化粧用パックシートについて、図2を参酌しつつ以下説明する。
【0074】
図2の化粧用パックシート11は、第一実施形態の化粧用パックシート1と同様にゲル層12と、このゲル層12の外側に剥離可能に積層される基材層13とを有している。そして、第二実施形態の化粧用パックシート11は、上記ゲル層12と基材層13との間に配設され、基材層13を剥離した際にゲル層12側に残存する軟質層14をさらに備えている。これにより、基材層13を剥離した後においても、残存する軟質層14によってゲル層12を支持して、融解していくゲル層12の形状維持に寄与することができるよう構成されている。
【0075】
より具体的に説明すると、第二実施形態の化粧用パックシート11は、ゲル層12の外面に軟質層14が積層され、この軟質層14の外面に基材層13が積層されている。ここで、ゲル層12と軟質層14との接着強度が、軟質層14と基材層13との接着強度よりも大きくなるよう構成されており、このため基材層13を剥離した際に軟質層14がゲル層12側に残存することになる。なお、第二実施形態のゲル層12及び基材層13の具体的構成は、第一実施形態のゲル層2及び基材層3と同様とすることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0076】
上記軟質層14は、種々のものを採用可能であるが、主成分としてエラストマー系材料を含むことが好ましい。なお、この軟質層14は、例えばエラストマー系材料を主成分とする形成材料をシート状に押し出して形成することが可能である。この軟質層14の形成材料としてのエラストマー系材料としては、樹脂やゴムを採用可能である。この樹脂は特に限定されるものではないが、例えばウレタン樹脂を採用可能である。このウレタン樹脂としては、例えば、特公昭42−24194号、特公昭46−7720号、特公昭46−10193号、特公昭49−37839号、特開昭50−123197号、特開昭53−126058号、特開昭54−138098号の各公報に開示されたポリウレタン樹脂またはそれらの誘導体を用いることができる。かかる誘導体としては、例えば、イソシアネート末端を持つウレタンプレポリマーやそれらのブロック体(ブロックイソシアネートと呼ばれることもある)が挙げられる。また、上記エラストマー系材料としてのゴムも特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系ゴムを採用することが可能である。ここで、シリコーン系ゴムは、シリコーンゴム単体であるものの他、シリコーンコンパウンド(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等の樹脂と、シリコーンゴムとをブレンドしたもの)を用いることも可能である。
【0077】
上記軟質層14は上述のように伸縮性を有するが、この軟質層14の50%引張応力が、0.6N/cm以上4.0N/cm以下であることが好ましく、0.7N/cm以上3.0N/cm以下であることがより好ましく、0.8N/cm以上2.5N/cm以下であることがさらに好ましい。なお、この50%引張応力は、JIS−K7115に準拠して測定した値である。
【0078】
上記軟質層14の平均厚さは特に限定されないが、下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。他方、軟質層14の平均厚さの上限としては、100μmが好ましく、80μmがより好ましく、60μmが特に好ましい。軟質層14の平均厚さが上記範囲より小さいと、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがある。逆に、軟質層14の平均厚さが上記範囲より大きいと、当該化粧用パックシート1を肌部へ貼付した際の違和感が大きくなる。
【0079】
上記軟質層13の剛軟度は特に限定されないが、下限としては、10mmが好ましく、15mmがより好ましく、20mmがさらに好ましい。他方、軟質層14の剛軟度の上限としては、100mmが好ましく、70mmがより好ましく、40mmがさらに好ましい。軟質層13の剛軟度が上記範囲より小さいと、製造ライン等において取扱いが困難となるおそれがある。逆に、軟質層13の剛軟度が上記範囲より大きいと、肌部への貼付時において軟質層13とゲル層12との積層体が肌部の形状に沿って変形しにくく、ゲル層12が肌部に接触しない箇所が生ずるおそれがある。なお、「剛軟度」とは、JIS L 1096 6.19.1 A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定される値である。
【0080】
この第二実施形態の化粧用パックシート11の製造方法は、種々の方法を採用可能である。つまり、上記第一実施形態の化粧用パックシート1の製造方法において、予め基材層に軟質層を微接着しておき、この軟質層の上にゲル層を積層する方法を採用することができる。また、軟質層にゲル層を形成し、その後に軟質層と基材層とを積層接着する方法を採用することも可能である。
【0081】
上記構成からなる第二実施形態の化粧用パックシート11は、第一実施形態の化粧用パックシート1と同様の利点を有するとともに、以下の利点を有する。
【0082】
つまり、第二実施形態の化粧用パックシート11は、基材層13を剥離した後においても軟質層14によってゲル層12を支持することができる。このため、肌部からの熱によって融解していくゲル層12が、肌部からの熱量の相違によって他の部分よりも早く薄くなった部位が生じても、この薄くなった部位からゲル層12に亀裂等が生ずることを軟質層14によって抑制することができ、融解していくゲル層12の形状維持に寄与することができる。
【0083】
[第三実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の化粧用パックシートについて、図3を参酌しつつ以下説明する。
【0084】
図3の化粧用パックシート21は、第一実施形態の化粧用パックシート1と同様にゲル層22と、このゲル層22の外側に剥離可能に積層される基材層23とを有している。そして、第三実施形態の化粧用パックシート21にあっては、上記ゲル層22がゲル体からなるマトリックスを有し、具体的にはゲル層21が複数のマイクロ層22a,22b,22cからなる積層体から構成されている。なお、第一実施形態の基材層23の具体的構成は、第一実施形態の基材層3と同様とすることができるため、その詳細な説明は省略する。また、各マイクロ層22a,22b,22cの材料等の具体的構成は、第一実施形態と同様の構成を採用できるため、第一実施形態と異なる構成のみについて以下説明する。
【0085】
上記複数のマイクロ層22a,22b,22cは、それぞれ異なる化粧用有効成分を含有し、具体的には、複数のマイクロ層22a,22b,22cが、化粧水成分、美容液成分及び乳液成分をこの順に内側のマイクロ層22aから含有している。
【0086】
また、複数のマイクロ層22a,22b,22cを構成するマトリックスの融点が、内側のマイクロ層22acから外側のマイクロ層22cに行くに従って高くなるよう設けられている。
【0087】
さらに、各マイクロ層22a,22b,22cの平均厚さは特に限定されるものではないが、平均厚さの下限としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、平均厚さの上限としては、500μmが好ましく、400μmがより好ましく、300μmがさらに好ましい。各マイクロ層22a,22b,22cの平均厚さが上記範囲より小さいと十分な量の化粧用有効成分をマイクロ層22a,22b,22cに含有させることができないおそれがある。逆に、マイクロ層22a,22b,22cの平均厚さが上記範囲より大きいと、融解時に肌部に浸透せずに付着するゲル化剤の量が増え、肌部からの拭き取りの手間が生じるおそれがある。加えて、化粧用パックシート21の重量が増し、化粧用パックシート21を肌部への貼付した際の違和感が大きくなる。
【0088】
上記構成からなる第三実施形態の化粧用パックシート21は、第一実施形態の化粧用パックシート1と同様の利点を有するとともに、以下の利点を有する。
【0089】
つまり、第三実施形態の化粧用パックシート21は、ゲル層22が複数のマイクロ層22a,22b,22cからなる積層体であるため、各マイクロ層22a,22b,22cに任意の化粧用有効成分を含有させることができ、様々な用途に当該化粧用パックシート21を用いることができる。特に、複数のマイクロ層22a,22b,22cがそれぞれ異なる化粧用有効成分を含有することによって、顔等の肌部に当該化粧用パックシート21の内面を貼付すると、肌部からの熱によって内側のマイクロ層22a,22b,22cから順に融解し、それぞれのマイクロ層22a,22b,22cが含有している化粧用有効成分が肌部に浸透又は付着させることができる。しかも、化粧水成分、美容液成分及び乳液成分をこの順に浸透又は付着させるよう構成されているので、当該化粧用パックシート21の内面を肌部へ貼付することによって、化粧水、美容液、乳液をこの順に肌部に浸透又は付着させ、通常のスキンケアの手順を一度に行うことができ、スキンケアの手間を削減することができる。
【0090】
さらに、複数のマイクロ層22a,22b,22cを構成するマトリックスの融点が、内側のマイクロ層22aから外側のマイクロ層22cに行くに従って高くなるよう構成されているので、当該化粧用パックシート21の内面を肌部に貼付した後、内側にあるマイクロ層22aよりも先に外側にあるマイクロ層22cが融解することを防止することができる。
【0091】
[その他の実施形態]
上記した各実施形態は上記構成によって上記利点を奏するものであったが、本発明は上記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内において適宜設計変更可能である。
【0092】
つまり、上記各実施形態においては、ゲル層の内面に他の部材が積層されていないものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばゲル層の内面に配設され、使用時までゲル層の揮発成分の揮発を防止する剥離シートをさらに備えるものも本発明の意図する範囲である。具体的には、例えば図1の化粧用パックシート1において、ゲル層2の内面に積層され剥離可能な剥離シートをさらに有する構成を採用することができる。このように剥離シートを備えている場合は、化粧用パックシートを肌部へ貼付する際にゲル層からこの剥離シートを剥離し、表出するゲル層の内面を肌部へ貼付して使用することができる。なお、剥離シートの具体的構成は、既述の基材層と同様とすることが可能である。
【0093】
また、上記第三実施形態のような複数のマイクロ層からなるゲル層に、上記第二実施形態のような軟質層を積層することも適宜設計変更可能な事項である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明の化粧用パックシートは、化粧用有効成分を肌部に効果的に浸透又は付着させることができる。また、使用者の違和感を軽減し、清涼感を与えることができ、スキンケアに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 化粧用パックシート
2 ゲル層
3 基材層
11 化粧用パックシート
12 ゲル層
13 基材層
14 軟質層
21 化粧用パックシート
22 ゲル層
22a,22b,22c マイクロ層
23 基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に離型性を有する基材層と、
この基材層の一方の面側に形成されるゲル層とを備え、
このゲル層が、融点が15℃以上40℃以下のゲル体からなるマトリックスと、このマトリックスに含まれる化粧用有効成分とを有する化粧用パックシート。
【請求項2】
上記ゲル層と基材層との間に配設される軟質層をさらに備える請求項1に記載の化粧用パックシート。
【請求項3】
上記軟質層が、主成分としてエラストマー系材料を含む請求項2に記載の化粧用パックシート。
【請求項4】
上記基材層の一方の面に上記ゲル層が積層されている請求項1に記載の化粧用パックシート。
【請求項5】
上記基材層の剥離強度が、0.01N/50mm以上1N/50mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧用パックシート。
【請求項6】
上記基材層の透湿度が、1000g/m・24hr以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の化粧用パックシート。
【請求項7】
上記ゲル層の平均厚さが1μm以上100μm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の化粧用パックシート。
【請求項8】
上記ゲル体のゲル化剤として、ゼラチンが用いられている請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧用パックシート。
【請求項9】
上記ゼラチンの平均分子量が5000以上60000以下である請求項8に記載の化粧用パックシート。
【請求項10】
上記ゲル層が複数のマイクロ層からなる積層体である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の化粧用パックシート。
【請求項11】
上記複数のマイクロ層がそれぞれ異なる化粧用有効成分を含有する請求項10に記載の化粧用パックシート。
【請求項12】
上記化粧用有効成分として化粧水成分、美容液成分及び乳液成分が用いられ、
上記複数のマイクロ層が、化粧水成分、美容液成分及び乳液成分を内側のマイクロ層からこの順に含有する請求項11に記載の化粧用パックシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32315(P2013−32315A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169564(P2011−169564)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】