説明

化粧部材固定方法

【課題】難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に、化粧部材を簡易な方法により見栄え良く、かつ強固に固定し得る化粧部材固定方法を提供する。
【解決手段】難接着性の表面処理が施された板状部材1の表面2に化粧部材20を固定する方法であって、前記板状部材の表面に、表面11が易接着性の捨板10を固定止具5で固定し、この捨板の表面に、前記化粧部材を接着固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に、化粧部材を固定する化粧部材固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装建材や家具材などに使用される板状部材の表面には、デザイン性の観点や防汚性の観点等からコーティング処理や化粧樹脂シートの貼着等の表面処理が施されている。
このような板状部材の表面に、立体感(凹凸感)を付与するためや種々の機能性等を付与するために、段部を形成するように化粧部材を固定する場合がある。
例えば、下記特許文献1では、縦框間に、横桟や芯材等を配設し、この縦框間の表面に、化粧面板を接着により取着したフラッシュ構造の扉本体を形成した後、さらに縦框間の化粧面板に、表面飾り部材としての化粧横枠を取着した扉パネルの構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−287361号公報(図1〜図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように化粧面板の表面には、デザイン性の観点や防汚性の観点等から表面処理が施されている場合が多い。このような場合において、板状部材としての化粧面板の表面に、化粧横枠のような化粧部材を、例えば、接着剤や接着テープ(粘着テープ)等により、接着固定する場合、表面処理が施されている結果、化粧面板の表面が難接着性となり、十分な接着強度が得られず接着固定が困難であるという問題があった。
上記のような化粧部材を、難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に、接着固定する方法に代えて、木ねじやタッカー等の固定止具により機械的に固定する方法も考えられるが、固定止具が露出してしまい、見栄えが悪いという問題がある。
または、板状部材の接着面となる表面部位のコーティング層や化粧樹脂シート等を剥離乃至は研磨等することにより除去し、化粧部材を板状部材の表面に接着固定する方法も考えられるが、除去作業の工程が必要となり、接着面の形状に合わせて精度良く除去するのは困難な作業である。
【0005】
一方、上記のような態様に代えて、板状部材の表面に、上述のような表面処理を施す前に、段部を形成する部材を接着固定した後に、その表面全体に表面処理を施す方法も考えられるが、段部における段壁面への塗装が困難であったり、或いは、化粧樹脂シートを貼着する際に段部において浮き等が生じたりする場合もあり、見栄えが悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に、化粧部材を簡易な方法により見栄え良く、かつ強固に固定し得る化粧部材固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る化粧部材固定方法は、難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に化粧部材を固定する方法であって、前記板状部材の表面に、表面が易接着性の捨板を固定止具で固定し、この捨板の表面に、前記化粧部材を接着固定するようにしたことを特徴とする。
【0008】
このような方法によれば、板状部材の表面に、表面が易接着性の捨板を、固定止具により機械的に固定し、その捨板の表面に化粧部材を接着固定することで、簡易な方法により、板状部材の表面に化粧部材を強固に固定することができる。
また、捨板を板状部材の表面に対して固定する固定止具は、その表面に接着固定される化粧部材によって隠蔽されて露出せず、化粧部材固定後の板状部材の見栄えを向上させることができる。
【0009】
本発明においては、前記捨板及び前記化粧部材を、それぞれ略方形状板材とし、この捨板の四辺のうちの少なくとも一辺の端面に、前記化粧部材の対応する端部を折り曲げて接着固定するようにしてもよい。
これによれば、捨板の少なくとも一辺の端面を、化粧部材の端部によって隠蔽することができ、より見栄えを向上させることができる。
【0010】
または、本発明においては、前記捨板及び前記化粧部材を、それぞれ略方形状板材とし、前記板状部材の表面に、前記化粧部材を表裏反転させて載置した状態で、前記捨板の一辺の端面に、該化粧部材の一辺の端面を対面させ、この化粧部材の一辺端部を前記板状部材の表面に固定止具で固定し、次いで、該化粧部材の非固定部位を折り返して、前記捨板の表面に接着固定するようにしてもよい。
これによれば、捨板の一辺端面を、上記同様、化粧部材の一辺端部によって隠蔽することができ、より見栄えを向上させることができる。
また、化粧部材の一辺端部を、固定止具により板状部材の表面に対して強固に固定できるので、その化粧部材の一辺端部と、板状部材の表面との間に隙間や浮き等が生じ難い。従って、板状部材の表面に化粧部材により形成された段部の一端部を、見栄え良く納めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る化粧部材固定方法によれば、上述のような構成としたことで、難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に、化粧部材を簡易な方法により見栄え良く、かつ強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係る化粧部材固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも同固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図3】(a)、(b)は、いずれも本発明の他の実施形態に係る化粧部材固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図4】(a)、(b)は、いずれも本発明の更に他の実施形態に係る化粧部材固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る化粧部材固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図6】(a)、(b)は、いずれも同固定方法について説明するための概念的な説明図である。
【図7】(a)、(b)は、いずれも同固定方法を用いて製造された板状建材を示し、(a)は、概略正面図、(b)は、(a)におけるX部に対応させた一部透過概略拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、第1実施形態に係る化粧部材固定方法を説明するための概念的な説明図である。
本実施形態では、図1に示すように、板状部材1の表面2に、化粧部材20を固定する態様として、捨板10を介在させて固定するようにしている。
【0014】
板状部材1は、内装建材や家具材などに使用される平板状のパネル材であり、木質系材料を基材とし、その表面2には、難接着性の表面処理が施されて、この表面2は、化粧面とされている。
この表面処理としては、防汚性塗料や耐光性塗料、撥水性塗料等の塗布によるコーティング処理が挙げられる。または、防汚性や耐光性、撥水性等を有した合成樹脂化粧シート(フィルム)の貼着による表面処理が挙げられる。
このような表面処理により、板状部材1は、その表面2に、被固定部材を接着剤や両面接着テープ(両面粘着テープ)等の接着手段によって固定する場合、十分な接着強度を得ることが困難な難接着性の表面物性を有したものとなる。
尚、上記コーティング処理は、上記基材の表面に表面化粧層としての突板等を貼着した後、該突板の表面に施すようにしてもよい。
【0015】
この板状部材1を構成する上記基材としては、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系材料を板状に加工したものが挙げられる。
または、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)を板状に加工したものとしてもよい。これらは、適宜、組み合わせて積層し、上記基材を構成するようにしてもよい。
尚、上記基材としては、木質系材料から製されたものに限られず、合成樹脂系材料や金属系材料等から製されたものとしてもよい。
また、板状部材1としては、縦枠や横枠等により枠組みした枠部材の間に、ハニカム状コア材などを配した後、その表面に上記同様の表面処理が施された化粧面材を貼着した、いわゆるフラッシュ構造のパネル材としてもよい。
【0016】
化粧部材20は、板状部材1の表面2に、立体感(凹凸感)を付与するためや種々の機能性等を付与するために、段部を形成するように固定されるもので、本実施形態では、略方形状板材を例示している。
この化粧部材20は、板状部材1と同様、木質系材料から製された基材の表面に、上記同様の表面処理が施され、その表面22は、化粧面とされている。
尚、この化粧部材20の形状は、図例のものに限られず、平面視における形状が、略円形状のものや、その他、多角形状のもの等としてもよい。
また、この化粧部材20の厚さは、板状部材1の表面2に形成したい段部の段差及び捨板10の厚さに応じて、適宜、設定可能である。
さらに、この化粧部材20の裏面21には、上記難接着性となるような表面処理は施されておらず、基材表面が露出乃至は必要により易接着性の表面処理が施されており、この裏面21は、易接着性の表面物性(接着手段による十分な接着強度が得られる物性)を有している。
【0017】
捨板10は、上記同様の木質系材料から製されており、化粧部材20と平面視において略同寸同形状の略方形状板材とされている。
また、この捨板10の表面11には、化粧部材20の裏面21と同様、上記難接着性となるような表面処理は施されておらず、板材素地が露出乃至は必要により易接着性の表面処理が施されており、この表面11は、易接着性の表面物性を有している。
【0018】
次に、本実施形態に係る化粧部材固定方法の一例について説明する。
<捨板固定工程>
まず、図2(a)、(b)に示すように、板状部材1の表面2における段部を形成したい部位に、捨板10を載置し、固定止具5によって、捨板10を板状部材1に対して機械的に固定する。
固定止具5としては、図例では、木ねじを示しているが、その他、釘やタッカー、ステイプル等、捨板10を板状部材1に対して機械的に固定し得るものであれば、どのようなものでもよい。
【0019】
尚、図例では、四本の固定止具5を、捨板10の表面11の四隅部に螺入させた例を示しているが、このような態様に限られず、捨板10を板状部材1に対して強固に固着し得るよう、適宜部位に適宜本数の固定止具5を、螺入乃至は打入等するようにすればよい。
また、この捨板固定工程において、接着剤や両面接着テープ等の接着手段をさらに用いて捨板を板状部材に固着させるようにしてもよい。
【0020】
<化粧部材固定工程>
次いで、図1(a)、(b)に示すように、板状部材1の表面2に固定された捨板10の表面11に、接着手段としての接着剤6を塗布する。この接着剤6としては、各種水性接着剤やエマルション接着剤等としてもよく、例えば、酢酸ビニル系接着剤やゴムラテックス系エマルション接着剤としてもよい。
接着剤6を塗布した後の捨板10の表面11と、化粧部材20の裏面21とを整合させるようにして捨板10の表面11に化粧部材20を載置し、化粧部材20を捨板10に接着固定する。この際、捨板10の四周端面と化粧部材20の四周端面とが一致するように位置決めして接着固定するようにしてもよい。
また、接着剤6を介在させて化粧部材20を捨板10の表面11に載置した後、適宜、プレス(ホットプレス或いは常温プレス)等するようにしてもよい。
上記接着手段としては、接着剤6に代えて、或いは加えて、両面接着テープ(両面粘着テープ)としてもよい。また、捨板10の表面11に接着手段を塗布乃至は取り付ける態様に代えて、或いは加えて、化粧部材20の裏面21に接着手段を塗布乃至は取り付けるようにしてもよい。
【0021】
以上のように、本実施形態に係る化粧部材固定方法によれば、簡易な方法により、板状部材1の表面2に化粧部材20を強固に固定することができる。
また、捨板10を板状部材1の表面2に対して固定する固定止具5は、その表面11に接着固定される化粧部材20によって隠蔽されて露出せず、化粧部材20を固定した後の板状部材1の見栄えを向上させることができる。
さらに、化粧部材20と板状部材1との間に捨板10を介在させることで、捨板10がスペーサーとなり、所望する段部の厚さよりも化粧部材20を薄くすることができ、製造コストを低減させることができる。
【0022】
尚、本実施形態では、板状部材1の平面状とされた表面2に、捨板10及び化粧部材20を固定した例を示しており、これら捨板10及び化粧部材20の四周端面が露出して固定された例を示している。このように捨板10及び化粧部材20の端面の一部(図例では、四周端面全て)が露出する場合には、その露出部位が上記同様の化粧面となるように、該露出部位に表面処理を施すようにしてもよい(以下の各実施形態においても同様にしてもよい)。
【0023】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、第2実施形態に係る化粧部材固定方法を説明するための概念的な説明図である。
尚、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略或いは簡略に説明する。
【0024】
本実施形態では、板状部材1の表面2に固定される化粧部材20Aの構成が、上記第1実施形態とは異なる。
化粧部材20Aの一辺端部23側の裏面21には、図3(a)に示すように、この端部23を板状部材1の表面2に向けて折り曲げるための断面略V字形状の折曲溝24が切欠形成されている。
この化粧部材20Aは、その長さ(端部23に直交する方向の長さ)が、折曲溝24の部位で折り曲げられた端部23の端面23cが、板状部材1の表面2に近接乃至は当接し得るよう、捨板10の厚さに応じた長さとされるとともに、折曲溝24における端部23側とは異なる側の溝縁部が、捨板10の対応する端部の表面縁部に整合するように形成されている。
【0025】
次に、本実施形態に係る化粧部材固定方法の一例について説明する。
まず、上記第1実施形態と同様、図3(a)に示すように、捨板10を板状部材1の表面2に固定止具5で固定し、捨板10の表面11及び一辺端面12に、接着剤6を塗布する。
次いで、化粧部材20Aの裏面21を、捨板10の表面11に整合させて、接着固定する。この際、化粧部材20Aの四周端部のうち、折り曲げられる一辺端部23以外の各端部の端面を、捨板10の対応する各端部の端面に一致させるようにして位置決めし、接着固定する。
そして、図3(b)に示すように、化粧部材20Aの一辺端部23を板状部材1の表面2に向けて折り曲げ、この端部23の裏面23bを、捨板10の一辺端面12に接着固定する。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る化粧部材固定方法によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、捨板10の一辺端面12を、化粧部材20Aの端部23によって隠蔽することができ、より見栄えを向上させることができる。つまり、折り曲げられた化粧部材20Aの端部23の表面23aは、化粧面とされているので、このように固定された化粧部材20Aは、その表面22及び端部23の表面23aが化粧面となり、上記第1実施形態と比べて、より見栄えを向上させることができる。
【0027】
尚、本実施形態では、化粧部材の一辺端部のみを折り曲げて、捨板の一辺端面に接着固定する例を示しているが、化粧部材の二辺以上の端部をそれぞれ折り曲げて、捨板の対応する端面に接着固定するようにしてもよい。これによれば、各端部における見栄えを向上させることができる。
また、図例では、化粧部材の裏面に、一本の折曲溝を設けた例を示しているが、折り曲げられた部位の表面側縁部の形状が、面取り形状(C面形状、R面形状等)となるよう、複数条の折曲溝を、化粧部材の折り曲げ部位の裏面に設けるようにしてもよい。
【0028】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4は、第3実施形態に係る化粧部材固定方法を説明するための概念的な説明図である。
尚、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略或いは簡略に説明する。
【0029】
本実施形態では、板状部材1の表面2に固定される捨板10A及び化粧部材20Bの構成が、上記第1実施形態とは異なる。
捨板10Aの両側端部13,13、及び化粧部材20Bの両側端部25,25には、互いに係合する係合部がそれぞれ設けられている。また、化粧部材20Bの両側端部25,25の端面は、上記同様の化粧面とされている。
【0030】
捨板10Aの係合部は、板状部材1の表面2に固定された状態で側方に向けて開口する凹溝が形成されるように裏面側が切り欠かれて形成された切欠部13aと、この切欠部13aの形成により表面側に形成された突部13bとを有している。
化粧部材20Bの係合部は、捨板10Aの切欠部13aに嵌め入れられる突部25aと、内方に向けて開口し、捨板10Aの突部13bが嵌め込まれる凹溝25bとを有している。
尚、このような捨板10A及び化粧部材20Bの係合部の形状は、互いに係合し得る形状であれば、図例のものには限られない。
【0031】
次に、本実施形態に係る化粧部材固定方法の一例について説明する。
まず、上記第1実施形態と同様、図4(a)に示すように、捨板10Aを板状部材1の表面2に固定止具5で固定し、捨板10Aの表面11及び必要により両側端部13,13に、接着剤6を塗布する。
次いで、化粧部材20Bの両側端部25,25の係合部を、捨板10Aの両側端部13,13の係合部に係合させ、化粧部材20Bを捨板10Aに対して接着固定する。この際、化粧部材20Bをスライドさせて、係合部が設けられた両側端部25,25以外の各端部の端面を、捨板10Aの対応する各端部の端面に一致させるようにして位置決めし、接着固定する。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る化粧部材固定方法によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、捨板10Aの両側端部13,13の端面を、化粧部材20Bの両側端部25,25によって隠蔽することができ、より見栄えを向上させることができる。つまり、係合部が設けられた化粧部材20Bの両側端部25,25の端面は、化粧面とされているので、このように固定された化粧部材20Bは、その表面22及び両側端部25,25の端面が化粧面となり、上記第1実施形態と比べて、より見栄えを向上させることができる。
【0033】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5及び図6は、第4実施形態に係る化粧部材固定方法を説明するための概念的な説明図である。
尚、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略或いは簡略に説明する。
【0034】
本実施形態では、板状部材1の表面2に固定される化粧部材20Cの構成が、上記第1実施形態とは異なる。
化粧部材20Cの一辺端部27側の裏面21には、図5に示すように、この端部27を固定部位として、後記するように固定された後、非固定部位28を捨板10の表面11に向けて折り返すための断面略V字形状とされた二本の折曲溝24,24が切欠形成されている。
この化粧部材20Cは、本実施形態では、その厚さが、捨板10の厚さと同じ厚さに形成されている。また、化粧部材20Cの長さ(端部27に直交する方向の長さ)は、後記するように、折り返された非固定部位28によって、捨板10の表面11の全面を隠蔽し得るとともに、固定部位としての端部27を、固定止具5により板状部材1の表面2に固着し得る長さとされている。
【0035】
次に、本実施形態に係る化粧部材固定方法の一例について説明する。
まず、上記第1実施形態と同様、図5に示すように、捨板10を板状部材1の表面2に固定止具5で固定する。
次いで、化粧部材20Cの折曲溝24,24が形成された側の一辺端面26を、捨板10の一辺端面12に対面させるようにして、化粧部材20Cの表裏を反転させた状態(化粧面である表面22を板状部材1の表面2に向けた状態)で、化粧部材20Cを板状部材1の表面2に載置し、化粧部材20Cの端部27を、板状部材1の表面2に固定止具5によって固定する(図6(a)も参照)。
この際、本実施形態では、捨板10の一辺端面12に、化粧部材20Cの一辺端面26を当接、整合させて位置決めして、化粧部材20Cを板状部材1の表面2に載置するようにしている。
【0036】
次いで、図6(a)に示すように、捨板10の表面11並びに化粧部材20Cの端部27の反固定面(裏面21と同一平面)及び必要により折曲溝24,24に、接着剤6を塗布する。この際、折曲溝24,24の溝長手方向両端部には、折り返された際に接着剤6が食み出さないよう、接着剤6を塗布しないようにしてもよい。
そして、図6(a)の二点鎖線で示すように、化粧部材20Cの非固定部位28を、捨板10の表面11に向けて折り返し、図6(b)に示すように、捨板10の他辺端面14と、化粧部材20Cの他辺端面29とを一致させるようにして、非固定部位28の裏面21を、捨板10の表面11に整合させ、接着固定する。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る化粧部材固定方法によれば、上記第2実施形態と同様、捨板10の一辺端面12を、化粧部材20Cの端部27によって隠蔽することができ、より見栄えを向上させることができる。つまり、折曲溝24,24が裏面側に形成されて折り返された折り返し部位の表面24aは、化粧面とされているので、このように固定された化粧部材20Cは、その表面22及び段部の一端部の端面となる表面24aが化粧面となり、上記第1実施形態と比べて、より見栄えを向上させることができる。
【0038】
また、化粧部材20Cの一辺端部27を、固定止具5により板状部材1の表面2に対して強固に固定できるので、化粧部材20Cの一辺端部27と、板状部材1の表面2との間に隙間や浮き等が生じ難い。従って、板状部材1の表面2に化粧部材20Cにより形成された段部の一端面24aを、上記第2実施形態と比べて、見栄え良く納めることができる。すなわち、上記第2実施形態では、化粧部材の折り曲げられた端部の端面と板状部材の表面とを強固に接着固定することが困難であり、浮きや隙間等が生じる場合があるが、本実施形態によれば、このようなことを防止することができる。
【0039】
尚、本実施形態では、化粧部材の固定部位としての一辺端部の端面と、捨板の一辺端面とを当接させて対面させた例を示しているが、これら端面間に空隙が形成されるように対面させるようにしてもよい。この場合は、非固定部位の長さを上記したように捨板の表面を隠蔽し得るよう、適宜、設定するようにすればよい。
また、図例では、化粧部材の裏面に、折り返し用に二本の折曲溝を設けた例を示しているが、折り返された部位の表面側縁部の形状が、面取り形状(C面形状、R面形状等)となるよう、更に折曲溝を化粧部材の裏面に設けるようにしてもよい。
さらに、本実施形態において説明した化粧部材の他辺端部の裏面に、上記第2実施形態において説明した化粧部材と同様の折曲溝を設け、該他辺端部を板状部材の表面に向けて折り曲げ、捨板の対応する端面にその裏面を接着固定するようにしてもよい。これによれば、捨板の二辺端部を化粧部材によって隠蔽することができる。
【0040】
さらにまた、本実施形態では、捨板と化粧部材とを略同厚さとした例を示しているが、捨板の厚さを化粧部材の厚さよりも大きく形成するようにしてもよい。この場合は、化粧部材の固定部位としての端部の反固定面側に、これらの厚さ寸法差を吸収し得る厚さとされた厚み調整板を介在させて化粧部材の非固定部位を折り返し、捨板の表面に接着固定するようにしてもよい。これによれば、化粧部材を効率的に薄くすることができ、厚くした場合と比べて、化粧部材の折り返し部位が丸まったようにならず、見栄えが良い。このように厚み調整板を介在させる場合は、化粧部材の固定部位としての一辺端部に、厚み調整板を載置して、固定止具により厚み調整板とともに板状部材に対して固定するようにしてもよい。
或いは、上記のように、化粧部材と捨板とを別部材としたものに代えて、化粧部材の固定部位と、非固定部位とを略同寸同形状に形成し、固定部位を捨板として把握するようにしてもよい。
【0041】
次に、上記第4実施形態に係る化粧部材固定方法を用いて製造された板状建材の一例について、図7に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、本例では、板状建材として、四周に框部3,3,30,30を有し、中央に凹部4を有した框状パネル40を例示している。
この框状パネル40は、板状部材を構成する二方框状パネル材1Aと、横框部材30,30とを備えている。
【0042】
二方框状パネル材1Aは、パネルの一方面側の両側端部に手前側に向けて突出するように、かつ上下方向に沿って形成された一対の縦框部3,3を有し、これら縦框部3,3の対向面3a,3a間には、パネルの上下に沿う凹溝状の凹部4が形成されている。
また、この二方框状パネル材1Aの縦框部3,3の各表面及び各対向面3a,3a、並びに凹部底面2Aは、上記同様の化粧面とされている。
この二方框状パネル材1Aの凹部4の上下端部に、横框部材30,30が上記第4実施形態に係る化粧部材固定方法を用いて固定されている。
【0043】
二方框状パネル材1Aの凹部4の上端部に横框部材30を固定する方法について説明すれば、図7(b)に示すように、二方框状パネル材1Aの凹部底面2Aに、捨板10を固定止具5(図5参照)により固定し、この捨板10の一辺端面12に、化粧部材20Cの一辺端面26を当接させ、その一辺端部27を凹部底面2Aに固定止具5により固定する。
次いで、上記同様に、化粧部材20Cの非固定部位28を折り返して捨板10の表面11(図6(a)参照)に接着固定することで、横框部材30を固定するようにしている。
尚、二方框状パネル材1Aの凹部4の下端部への横框部材30の固定についても同様である。また、図例では、意匠性の観点から、上側の横框部材30の上下長さよりも、下側の横框部材30の上下長さが長く形成されたものを示しているが、同長さのものとしてもよく、上側の横框部材30の上下長さを下側よりも長くするようにしてもよい。
【0044】
上記のように固定された状態では、各横框部材30の両側端面には、縦框部3,3の各対向面3a,3aが近接乃至は当接している。
また、上側の横框部材30の上端面29,14は、二方框状パネル材1Aの上端面に一致し、下側の横框部材30の下端面29,14は、二方框状パネル材1Aの下端面に一致した状態である。
また、各横框部材30の折り返し部位の端面24a,24aは、対向配置されて凹部4の内壁上下面を構成している。
このような框状パネル40は、例えば、開閉扉や引戸、折戸等の扉パネルとして施工される場合には、その上下端面は目立たない。従って、上記のように横框部材30,30を固定した場合にも、露出し、目立つ各横框部材30,30の内方側(凹部4側)の各端部は、凹部底面2Aに強固に固定されるとともに、その端面24a,24aが化粧面とされているので、見栄えが良いものとなる。
【0045】
また、上記のように、二方框状パネル材1Aに対して、上下框を構成する横框部材30,30を固定するようにすることで、一対の縦框部を有した二方框状パネル材を製造した後、その縦框部間に横框部材を簡易な方法により強固に取り付けることができる。これによれば、二方框状パネル材と、これに横框部材を取り付けて四周に框部を有した框状パネルとを製造する際に、製造ラインの一部を共通して利用でき、生産性を向上させることができる。
【0046】
尚、本例において、上下の横框部材の間に、更に他の横框部材を固定するようにしてもよい。
また、本例では、上記第4実施形態に係る化粧部材固定方法を用いて、二方框状パネル材に、捨板と化粧部材とからなる横框部材を固定した例を示しているが、上記第1実施形態乃至第3実施形態に係る化粧部材固定方法を用いて、二方框状パネル材に、捨板と化粧部材とからなる横框部材を固定するようにしてもよい。
また、本例では、本発明に係る化粧部材固定方法を用いて、框状パネルを製造した例を示しているが、このような例に限られず、本発明に係る化粧部材固定方法は、その他、各種の内装パネル材や内装造作部材、家具材等の製造に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 板状部材
1A 二方框状パネル材(板状部材)
2 板状部材の表面
2A 凹部底面(二方框状パネル材の表面)
5 固定止具
10,10A 捨板
11 捨板の表面
12 捨板の一辺の端面
20,20A,20B,20C 化粧部材
23 化粧部材の端部
26 化粧部材の一辺の端面
27 化粧部材の一辺端部
28 化粧部材の非固定部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難接着性の表面処理が施された板状部材の表面に化粧部材を固定する方法であって、
前記板状部材の表面に、表面が易接着性の捨板を固定止具で固定し、この捨板の表面に、前記化粧部材を接着固定するようにしたことを特徴とする化粧部材固定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記捨板及び前記化粧部材を、それぞれ略方形状板材とし、この捨板の四辺のうちの少なくとも一辺の端面に、前記化粧部材の対応する端部を折り曲げて接着固定するようにしたことを特徴とする化粧部材固定方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記捨板及び前記化粧部材を、それぞれ略方形状板材とし、
前記板状部材の表面に、前記化粧部材を表裏反転させて載置した状態で、前記捨板の一辺の端面に、該化粧部材の一辺の端面を対面させ、この化粧部材の一辺端部を前記板状部材の表面に固定止具で固定し、
次いで、該化粧部材の非固定部位を折り返して、前記捨板の表面に接着固定するようにしたことを特徴とする化粧部材固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−93100(P2011−93100A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246137(P2009−246137)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000157256)丸玉産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】