説明

医用カラー画像の圧縮方法

【課題】 RGBの色要素ごとの第1差分を符号化するにあたって、より圧縮効率の高い符号化技術を提供する。
【解決手段】 医用に撮影されたデジタルカラー画像を圧縮符号化する医用カラー画像の圧縮方法において、各画素データをRGBに分離する第1のステップと、RGBの各々について隣接する画素の差分データを計算する第2のステップと、RGBの中から任意の1要素を選び、その差分成分と残りの2個の要素の差分成分とを比較して符号化する第3のステップとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科分野において広く用いられるカラー画像を効率よく圧縮する符号化に関するものである。画像圧縮の符号化については復号化時にデータは元に戻る可逆圧縮と戻らない不可逆圧縮があるが、本発明では可逆圧縮として適用させる。
【背景技術】
【0002】
眼表面画像は、白色光による照明によって撮影するか、または染色液で染色した状態を撮影するか、その染色画像に対して特定波長を記録するための光学的なフィルタを通して観察される。眼表面を詳細に観察するために少なくとも角膜部分を1枚の画像中に捉え、また十分な解像度を得るために、一般的には少なくとも縦480画素、横640画素程度の画像が撮影される。これらは、デジタル的に補間するために、データファイル化されてコンピュータの記録媒体上に記録されるか、またはデータベース構造の中に取り込まれて記録されている。カラー画像の場合、1画素がRGBの3原色に分解され、各々が8ビットの表現能力を持ち、1画素あたり24ビットで表現されるのが一般的であるが、眼底画像等においてはより微細な血管を視認するためによりサイズの多い画像が用いられる。
【0003】
これらの大判化した画像記録には、コンピュータのデジタル記録として一般的なJPEGフォーマット等が用いられるが、これらは非可逆圧縮であり、モニタ上で再生するにあたっては撮影時の表現を完全には再現することはできない。この不完全さの影響は、色変化が比較的大きく変化する部分に顕著で合って、均一背景上に広がる血管のような細い線分上の形状を持つ画像中においては、誤認につながる復元によるノイズが発生している。
【0004】
一般的なデジタル画像の可逆圧縮については、ランレングス法がある。これは、同じ輝度が連続して出現する場合に、その輝度値の出現する個数を持って符号化するもので、画像が同一の輝度で表現される箇所が多いほど圧縮効率が高くなる。しかし、一般的な自然の風景や生体を撮影した画像において、1画素に割り当てられるビット長が長くなるほど、一つの輝度で表現される領域が連続することは非常に稀であり、本特許が対象とする画像に対しては有効ではない。
【0005】
また差分方式による圧縮は、一般的な自然の風景や生体を撮影した画像において近傍画素が大きくは異ならないことを利用して、隣接画素との差分を取り、ビット数を減らしていく方法である。さらに差分値の差分を計算して圧縮する方法もある。一般的な画素の取る値は、白黒、またはRGB分離した状態で、0〜255の256階調で考えられる。ここで差分データを用いたとしても、正負の符号付きのデータになるため、符号付き差分データの扱い方によっては圧縮効果が得られるとは限らない。
【0006】
上記の問題を解消するために、特許文献1に示すデータ圧縮プログラムに関する特許出願がある。これは画像を色分解して得られた色要素ごとに差分を取って隣接画素間の変動量を減らして上で、符号化するものである。また、色要素不ごとの第1差分と、それ以外の色要素とのかかわりにおいて第2差分を求める。この差分値を符号化するに当たってエントロピー符号化の手法を用いるものである。よって、この差分値の符号化に関しては新規性を示す部分は限定されている。
【0007】
また、特許文献2に示すカラー画像の圧縮方法に関する出願がある。これは、RGB分割した色要素ごとに第1・第2差分値を求めてランレングス圧縮を行うもので、符号化部分に新規性を見出すものではない。
【0008】
【特許文献1】特開2007−174464号公報
【特許文献2】特開2003−299120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の1次差分、2次差分を用いてデータを符号化していたが、効率のよい手法を適用してはいなかったため、本発明は、RGBの各色要素別の第1差分を符号化するにあたって、より圧縮効率の高い符号化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を備えることを特徴とする。
【0011】
(1) 医用に撮影されたデジタルカラー画像を圧縮符号化する医用カラー画像の圧縮方法において、各画素データをRGBに分離する第1のステップと、RGBの各々について隣接する画素の差分データを計算する第2のステップと、RGBの中から任意の1要素を選び、その差分成分と残りの2個の要素の差分成分とを比較して符号化する第3のステップとを備えることを特徴とする。
(2) (1)の医用カラー画像の圧縮方法において、前記第2のステップにおいて、前記差分データはすべて4ビットで表現され、その数値は符号1ビットとデータ3ビットで構成されるか、または次の4ビットへ情報を振り分けるマーカで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、眼表面のカラー撮影を行った場合のカラー画像をデジタル的にファイル化してコンピュータ上に保存する場合の画像圧縮に用いられる。処理に提供される画像フォーマットは、各画素成分が圧縮処理をされていない色要素ごとに分離されているものであって、圧縮によってその容量が小さくなり、また復号化処理によって可逆的にデータが復元されると、圧縮前と全く変わらない色表現を再現することが可能である。圧縮率は、処理に用いられる画像ごとに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のフローチャートを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1に示すフローチャートに基づいて説明を行なう。対象となるカラー画像はRGB形式で表現されているものとする。また解像度はRGB各々に対しし8ビット(0〜255階調)で表現されているもととする。これ以外のフォーマットのカラー画像であったとしてもRGB化することは一般的に容易である。画像は縦H画素、横W画素で構成されているものとする。
【実施例1】
【0015】
RGB各プレーンにおいて任意の1プレーンをベースとするプレーンとする。ここでは説明のためRをベースプレーンとして説明する。図1の1に示すように、初めにRプレーンのデータを順に走査して隣のデータとの差分テーブルを作成する。走査方向は規定しないが、一般に画像左上から右端まで走査し、1ライン目が終了したところで、2ライン目の左端から右端まで順に計算する。ここで1ライン目から2ライン目に移動することで明らかな不連続点が発生しているが、画像全体ではそれほど多くない点であるためそのまま続ける。また走査方式を変更して、1ライン目の右終端からそのまま2ライン目の右終端に移り、2ライン目では左方向へ走査することも可能である。この説明では、各ライン、左端から右端までの走査を繰り返すものとして説明する。上記の不連続点については特に言及することなく連続データ列として画像右下終端までを扱う。また自然画像では隣同士の画素で極端に大きな変化は発生しないことを利用して1次差分のみで処理して演算量を減らす。
【0016】
G,Bについても同じように差分テーブルを作成する。また、図1の2に示すように、この差分テーブルとは別にG、Bの差分値がRと同じ場合には“1”、異なる場合には“0”を与えるビットテーブルを作成する。このビットテーブルには、G,B各々H×B/8バイトのテーブルを持つことになる。
【0017】
まず初めにR差分テーブルを符号化する。図1の3に示すように、差分値を4ビットごとに符号化し、順番に8ビットデータとしてまとめる。ここで任意の画素データをP、前画素からの差分値をDとする。ただし、第1画素である場合は、Pの値を符号化する。
【0018】
まずに、|D|≦7の場合。符号化データは1バイトで表現される。0≦Dの場合、第1バイトを“D”とする。また、D<0の場合、第1バイトを“8−D”とする。
【0019】
次に、8≦|D|≦119の場合。符号化データは12ビット(3ニブル)で表現される。第1ニブルを“08h”とする。第2ニブルをDに応じて以下のように設定する。“0010b”(8≦D≦23)、“0100b”(24≦D≦39)、“0110b”(40≦D≦55)、“1000b”(56≦D≦71)、“1010b”(72≦D≦87)、“1100b”(88≦D≦103)、“1110b”(104≦D≦119)、“0011b”(−23≦D≦−8)、“0101b”(−39≦D≦−24)、“0111b”(−55≦D≦−45)、“1001b”(−71≦D≦−56)、“1011b”(−87≦D≦−72)、“1101b”(−103≦D≦−88)、“1111b”(−119≦D≦−104)。第3ニブルを“|D|−B”とする。ただし、BはDに応じて以下のように設定する。“8”(8≦D≦23)、“24”(24≦D≦39)、“40”(40≦D≦55)、“56”(56≦D≦71)、“72”(72≦D≦87)、“88”(88≦D≦103)、“104”(104≦D≦119)、“8”(−23≦D≦−8)、“24”(−39≦D≦−24)、“45”(−55≦D≦−45)、“56”(−71≦D≦−56)、“72”(−87≦D≦−72)、“88”(−103≦D≦−88)、“104”(−119≦D≦−104)。
【0020】
次に、120≦|D|の場合。第1バイトを“80h”とする。第2バイトをPとする。
【0021】
同じDがN(5〜255)個続く場合には、各符号化値に続けて、第1バイト“18h”、第2バイトをNとする。
【0022】
図1の4に示すように、Rについてすべて符号化した後で、これらの符号化はニブル値(4ビット)とバイト値(8ビット)が混在しているため、符号化の初めから順番にバイト値化していく。したがってバイトとして符号化されたデータも、偶数番目のニブル値とその次の奇数番目のニブル値として分離され、バイト化される部分も存在する。
【0023】
図1の5に示すように、同じようにG,Bについても符号化していくが、ビットテーブルを見てRと異なる場合のみ符号化していくことが異なる処理となる。RGB各々のデータは、それぞれ可変長のデータで構成される。第1データ、R差分値の符号化データ。第2データ、Gビットテーブル。第3データ、G差分値の符号化データ。第4データ、Bビットテーブル。第5データ、B差分値の符号化データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用に撮影されたデジタルカラー画像を圧縮符号化する医用カラー画像の圧縮方法において、
各画素データをRGBに分離する第1のステップと、
RGBの各々について隣接する画素の差分データを計算する第2のステップと、
RGBの中から任意の1要素を選び、その差分成分と残りの2個の要素の差分成分とを比較して符号化する第3のステップとを備えることを特徴とする医用カラー画像の圧縮方法。
【請求項2】
前記第2のステップにおいて、前記差分データはすべて4ビットで表現され、その数値は符号1ビットとデータ3ビットで構成されるか、または次の4ビットへ情報を振り分けるマーカで構成されていることを特徴とする請求項1に記載された医用カラー画像の圧縮方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−44502(P2012−44502A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184742(P2010−184742)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(501299406)株式会社トーメーコーポレーション (48)
【Fターム(参考)】