説明

医用動画像記録システム及び医用動画像記録方法並びに医用動画像記録プログラム

【課題】 医用動画像の符号化処理において、CPUの負荷率が所定以上となった場合に、符号化処理の負荷を低下させることにより、符号化処理中の他の操作の応答性を向上させる医用動画像記録システム及び医用動画像記録方法並びに医用動画像記録プログラムを提供する。
【解決手段】 医用動画像の符号化処理をリアルタイムで実行するCPUの負荷率を監視し、その負荷率が閾値以上となったことを契機に、前記医用用動画像の情報量を低下させて符号化処理することによって、CPUの負荷を低減するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に収集された複数の医用動画像を符号化する医用動画像記録システム及び医用動画像記録方法並びに医用動画像記録プログラムに関するもので、特に、医用診断装置本体の内部で符号化及び記録を行なう際に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波診断装置等の医用診断装置によって得られる動画としての医用画像(以下、医用動画像と称する)を記録する場合には、ビデオテープカセット等の記録媒体に前記医用動画像を記録するべく、ビデオカセットレコーダ(VCR)等の外部記憶装置を前記医用診断装置に接続したファイリングシステムが一般的に構築されていた。
【0003】
そして近年では、記録する前記医用動画像が膨大な情報量となってきているために、前記記憶手段において占められるデータ量を減らすべく、当該医用動画像を構成する画像情報をディジタル化することによって、リアルタイムで符号化(圧縮)変換する作業が可能かつ重要になってきた。
【0004】
この記録作業は、具体的に、以下のような流れによって行われていた。
(1)医用動画像の記録画質の設定。
(2)医用動画像の記録開始。
(3)観察モードの設定。
(4)撮影を開始する。
(5)画像を見ながら、ゲインやコントラストを調整。
(6)検査に用いる画像を撮影する。
(7)上記(5)〜(6)を繰り返す。
(8)上記(3)〜(7)を繰り返す。
(9)医用動画像の記録終了。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、リアルタイムでの符号化処理は、当該符号化処理を行うCPUへの負荷が非常に高いため、当該符号化処理中に、割り込み操作として、観察モードの決定(上記(3))や、ゲイン又はコントラストの調整(上記(5))を使用者が行った場合、前記CPUは、これらの割り込み操作に対する処理も実行しなければならず、負荷がかかり、結果として符号化処理以外の処理(割り込み処理も含む)の応答性が悪くなるという問題があった。
【0006】
具体的には、図6に示すように、単位時間あたりの負荷率lで符号化処理が行われていた場合(図6(a))に、割り込み操作(t〜t)によって処理する負荷が多くなり、同期間(t〜t)では単位時間あたりの負荷率がl(l>l)で符号化処理が行われることになる(図6(b))。
【0007】
この問題を解決する手法として、医用動画像の記録の開始及び停止を、スイッチ等を操作することにより、手動で行う手順が考えられるが、操作が煩わしくなり、かつ、細切れになった記録を管理する必要が生じてくる。
【0008】
ここで、上記(6)の検査に用いる画像は、高画質で記録される必要があるが、上記(3)や(5)といった、使用者によって記録条件の入力作業が行われている最中の画像は、高画質で記録されるべき重要性が低い。
【0009】
従って、医用動画像の記録を停止することなく、高画質で記録されるシーンでの画質は維持しつつ、CPUの動作領域に余裕を持たせる(負荷を軽くする)ことによって、医用動画像記録システムの応答性を上げることが求められていた。
【0010】
また、前記割り込み操作は、その処理が迅速に行われることが望ましいので、CPUの動作領域に余裕を持たせる(負荷を軽くする)ことによって、医用動画像記録システムの応答性を上げて処理時間を短縮することが求められていた。
【0011】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、医用動画像の符号化処理において、CPUの負荷率が所定以上となった場合に、符号化処理の負荷を低下させることにより、符号化処理中の他の操作の応答性を向上させる医用動画像記録システム及び医用動画像記録方法並びに医用動画像記録プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための、請求項1記載の発明に係る医用動画像記録システムは、医用診断装置と、医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件を使用者が入力するための入力手段と、前記記録条件に基づいて前記医用動画像の処理を行う操作処理手段と、前記医用動画像を符号化する符号化手段と、係る符号化手段によって符号化された医用動画像を記憶する記憶手段と、前記符号化手段及び前記操作処理手段が1つのCPUによって構成され、そのCPUにかかる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となることを検出する負荷検出手段と、前記負荷検出手段によって負荷率が前記閾値以上となったことが検出されたときに、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御する符号化制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するための、請求項2記載の発明に係る医用動画像記録システムは、請求項1に記載の医用動画像記録システムにおいて、前記符号化制御手段が、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御した後に、前記負荷検出手段によって負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、低下させる前の情報量で前記医用動画像を符号化するように前記符号化手段に対して前記符号化制御手段が制御することを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するための、請求項3記載の発明に係る医用動画像記録システムは、請求項1に記載の医用動画像記録システムにおいて、前記符号化制御手段が、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御後、所定時間経過した後に、符号化する情報量を低下させる前の情報量で前記医用動画像を符号化するように前記符号化手段に対する前記符号化制御手段の制御を、所定時間後に実行させる遅延手段が設けられたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するための、請求項4記載の発明に係る医用動画像記録システムは、請求項1〜3の何れかに記載の医用動画像記録システムにおいて、情報量と画質とを関連付けたテーブルが前記記憶手段に記憶され、前記低下させる情報量は、予め設定された最低画質に対応する情報量であることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための、請求項5記載の発明に係る医用動画像記録方法は、医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件を使用者が入力する入力過程と、入力された前記記録条件に応じてCPUにより前記医用動画像の処理を行う入力情報処理過程と、前記医用動画像をCPUにより符号化する第1の符号化処理過程と、符号化された前記医用動画像を記憶する記憶過程と、前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程でCPUに生じる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出過程と、前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程によって生じる負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検知したときに、前記第1の符号化処理過程にかえて前記情報量を低下させて前記医用動画像を符号化する第2の符号化処理過程とを有することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための、請求項6記載の発明に係る医用動画像記録方法は、請求項5に記載の医用動画像記録方法において、負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、前記第2の符号化処理過程から第1の符号化処理過程に移行することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するための、請求項7記載の発明に係る医用動画像記録方法は、請求項5に記載の医用動画像記録方法において、負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、所定の時間経過後に前記第1の符号化処理に移行することを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するための、請求項8記載の発明に係る医用動画像記録方法は、請求項5〜7の何れかに記載の医用動画像記録方法において、前記低下させる情報量を、予め設定された最低画質に対応する情報量としたことを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決するための、請求項9記載の発明に係る医用動画像記録プログラムは、医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件が使用者によって入力されたことに応じてCPUにより処理を行う入力情報処理過程と、前記医用動画像をCPUにより符号化する第1の符号化処理過程と、符号化された前記医用動画像を記憶する記憶過程と、前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程でCPUに生じる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出過程と、前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程によって生じる負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検知したときに、前記第1の符号化処理過程にかえて前記情報量を低下させて前記医用動画像を符号化する第2の符号化処理過程とをコンピュータに機能させることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決するための、請求項10記載の発明に係る医用動画像記録プログラムは、請求項9に記載の医用動画像記録プログラムにおいて、負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、前記第2の符号化処理過程から第1の符号化処理過程に移行することを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決するための、請求項11記載の発明に係る医用動画像記録プログラムは、請求項9に記載の医用動画像記録プログラムにおいて、負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、所定の時間経過後に前記第1の符号化処理に移行することを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するための、請求項12記載の発明に係る医用動画像記録プログラムは、請求項9〜11の何れかに記載の医用動画像記録プログラムにおいて、前記低下させる情報量を、予め設定された最低画質に対応する情報量としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、医用動画像をリアルタイムで符号化処理中に、その符号化処理を実行するCPUの負荷率を監視し、当該負荷率が閾値以上となったことを契機として、符号化処理する医用動画像の情報量を抑えることによってCPUの負荷を低減するようにしたので、高い記録画質が求められる区間での画質を維持しつつ、CPUの応答性を向上させることができる。また、医用画像の記録を停止させたりすることがないため、管理の煩わしさを軽減できる。また、割り込み操作として、例えば、高い記録画質が求められない観察モードや、ゲイン、コントラストの設定に関わる入力操作が行われたことを検知したときに、符号化処理する医用動画像の情報量を抑えることによってCPUの負荷を低減するようにしたので、高い記録画質が求められる区間での画質を維持しつつ、CPUの応答性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る医用動画像記録システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の医用動画像記録システムは、医用動画像を取得する超音波診断装置としての医用診断装置100と、その医用診断装置100から送信される前記医用動画像を符号化処理し、記憶手段3に記憶すると共に、入力手段2を用いて使用者が入力した各種情報を処理するCPU12と、そのCPU12にかかる負荷率を監視し、当該負荷率が、予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出手段11と、CPU12内(後述する符号化手段122)で実行される符号化処理に対して所定の条件下で制御する符号化制御手段13とから構成される。ここで、CPU12は、負荷検出手段11及び符号化制御手段13と別体として例示したが、負荷検出手段11及び/又は符号化制御手段13がCPU12に含まれる構成であってもよい。また、医用診断装置100としては、前述した超音波診断装置のように、記録画像を経時的に取得する必要のある医用診断装置が対象となる。また、本システムは、医用診断装置100に含まれるものであってもよく、その場合、医用診断装置100は、医用動画像を収集する医用動画像収集手段として機能する。
【0028】
CPU12は、入力手段2によって入力された情報に基づいて処理を行う操作処理手段121と、医用診断装置100から送信された医用画像を符号化処理する符号化手段122とを構成し、符号化制御手段13は、符号化手段122が行う符号化処理に対して所定の条件下で制御する。ここで、操作処理手段121は、入力手段2を用いて入力された情報(例えば、ゲインやコントラスト等、医用動画像の記録条件)を元にして、医用動画像収集手段100から送信される医用動画像の画像処理を行う手段である。
【0029】
記憶手段3は、符号化手段13によって符号化された医用動画像を記録する手段であり、他にも、符号化する情報量と画質とを関連付けた情報が「テーブル」として予め記録されている。このテーブルによれば、符号化する情報量をどの程度にすれば、どの位の記録画質で記憶されるかが分かり、逆に、最低限度の記録画質にしたい場合には、それに合わせた符号化の情報量を関連付けられる。
【0030】
負荷検出手段11は、操作処理手段121及び符号化手段122が処理実行することによって生じるCPU12としての負荷量を経時的に監視する手段である。そして、その監視している負荷率(単位時間当たりの負荷量)が、予め設定された閾値を超えたか否か、或いは一度超えたが当該閾値未満になったかを符号化制御手段13に伝達する機能を有している。なお、本発明では、上記負荷率を監視しているとしたが、これは、単位時間当たりの負荷量を検出する方が、前記閾値を超える負荷量が発生する毎に逐一検出するよりも効率的であると判断される場合に採用すればよい。
【0031】
ここで、前記閾値は、入力手段2を用いて使用者が入力することにより、記憶手段3や負荷検出手段11に付随した不揮発性メモリに記憶されてよく、それを負荷検出手段11が参照して符号化制御手段13に伝達するようにされている。
【0032】
また、前記負荷率を監視し、負荷率が前記閾値を超えるか、一度超えたが当該閾値未満になったかを符号化制御手段13に伝達する負荷検出手段11とは別に、入力手段2によって入力作業が行われたことを検知して、それを符号化制御手段13に伝達する操作検知手段を設けてもよい。
【0033】
これは、負荷検出手段11によってCPU12の負荷率を監視しなくても、入力手段2によって入力作業がなされることによりCPU12にかかる負荷率が前記閾値を超えると予想される場合に有効である。また、この操作検知手段と負荷検出手段11とを両方設けてもよい。
【0034】
符号化制御手段13は、超音波診断装置100から入力された医用動画像を所定の条件下で符号化処理するように符号化手段122に指示する手段であるが、前記所定の条件としては、例えば、負荷検出手段11からCPU12の負荷率について何ら情報が送信されない場合には、予め設定された情報量に応じた符号化処理(第1の符号化処理)を行うように符号化手段122に指示する。
【0035】
また、負荷検出手段11からCPU12の負荷率が前記閾値を超えたとの情報が送信された場合には、記憶手段3に記憶されたテーブルを参照して、情報量を低下させて符号化処理(第2の符号化処理)を行うように符号化手段13に指示する。
【0036】
さらに、CPU12の負荷率が前記閾値を超えた後、前記閾値未満に低下したとの情報が送信された場合には、前記第2の符号化処理から前記第1の符号化処理に移行するように符号化手段122に指示するのである。なお、前記予め設定された情報量は、入力手段2を用いて使用者が予め入力しておくことにより、記憶手段3に記憶されたもので、それを符号化制御手段13が参照して符号化手段122に指示するのである。
【0037】
ここで、前記情報量は、符号化手段122によって符号化される医用動画像の情報量であり、「情報量を低下させて符号化」とは、符号化する医用動画像の情報量、すなわち解像度を低下させて符号化することである。
【0038】
図2は、本発明に係る医用動画像記録方法の第1の実施形態における動作を示すフローチャートである。また、図3は、本発明に係る医用動画像記録方法の第1の実施形態における負荷イメージ図である。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、まず、使用者が入力手段2を操作(「モニター開始ボタン」等の押下)することにより、超音波診断装置100からCPU12へ医用動画像情報が連続送信される(S1)。
【0040】
その後、記録画質の設定に関する情報を、使用者が入力手段2を用いて入力する(S2)。
【0041】
そして、使用者が入力手段2を操作(「録画開始ボタン」等の押下)することにより、超音波診断装置100から送信されている医用動画像情報を、前記S2で入力した情報に応じて符号化手段122が符号化処理(第1の符号化処理)する。この処理に伴って、負荷検出手段11は、CPU12の負荷量をリアルタイムに検出する(S3)。このとき、CPU12の負荷率は、図3(a)に示すようにlとなっている。
【0042】
その後、使用者が入力手段2を操作して、観察モードの設定や、ゲイン又はコントラストの調整(以下、入力操作処理とする。)を行う(S4)。
【0043】
そして、負荷率が前記閾値を超えることなく動画像の記録が終了することもあるので、動画像の記録終了の信号が入力手段2によって入力されたか否か判定する(S5)。
【0044】
一方、S4の操作によって、図3(b)に示すように、CPU12の負荷率がlからlに上昇した場合(S6−Yes)、これは、CPU12にかかる負荷率が、予め設定された閾値(l)に達した(超えた)とみなされるので、CPU12の負荷率が前記閾値を超えたという情報を符号化制御手段13に伝達する。
【0045】
符号化制御手段13は、記憶手段3のテーブルを参照して、符号化手段13の負荷率がl(図3(b)参照)となるように情報量を低下させた符号化処理(第2の符号化処理)を行うように、符号化手段122に指示する(S7)。このとき、前記テーブルを参照して得られる情報量は、最低画質として保証される情報量が選択される。画質の高低と、符号化される情報量と、CPUの負荷及びメモリ帯域との間には、正の相関があるため、符号化される情報量が低下することにより、CPU12の負荷率は、lよりも下がる。
【0046】
ここで、符号化制御手段13は、上記の情報量と符号化手段122に指示している情報量とを比較し、制限に達していなければ、符号化手段122に一段階下の情報量を指示する。
【0047】
その後、負荷検出手段11は、CPU12の負荷率が前記閾値を超えたままである場合、続けて符号化制御手段13に伝達する(S8−Yes)。
【0048】
符号化制御手段13は画質の制限に達する(S8−No)まで符号化手段122へ情報量の低下を指示する。
【0049】
次に、CPU12の負荷率が前記閾値を下回ったことを負荷検出手段11が検出した場合、負荷検出手段11は、符号化制御手段13に元々設定していた情報量による符号化処理(すなわち、第1の符号化処理)を実行するように符号化手段4に指示する(S9)。
【0050】
このようにして、リアルタイムでの符号化処理中に他の処理が割り込むことにより、前記符号化処理を実行するCPUの負荷率が上昇したことを検知したときに、符号化処理の情報量を抑えることによってCPUの負荷を低下させるようにしたので、高い記録画質が求められる区間での画質を維持しつつ、CPUの応答性を向上させることができる。また、医用画像の記録を停止させたりすることがないため、管理の煩わしさを軽減できる。特に、高い記録画質が求められない区間(t〜t(図3(b)参照))において、符号化処理の情報量を自発的に低下させるようにしたので、CPUの処理限度内で、前記他の処理(本発明にいう入力操作処理)を可及的速やかに実行終了することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る医用動画像記録システムの第2の実施形態について説明する。図4は、本発明に係る医用動画像記録システムの第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の医用動画像記録システムは、医用動画像を取得する医用診断装置としての超音波診断装置100と、その超音波診断装置100から送信される前記医用動画像を符号化処理し、記憶手段3に記憶すると共に、入力手段2を用いて使用者が入力した各種情報を処理するCPU12と、そのCPU12にかかる負荷率を監視し、当該負荷率が、予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出手段11と、CPU12内(後述する符号化手段122)で実行される符号化処理に対して所定の条件下で制御する符号化制御手段13と、第2の符号化処理から第1の符号化処理に移行する指示を、符号化手段122に対して遅延させる遅延手段14とから構成される。ここで、前述の実施形態と同様、前記医用診断装置としては、前述した超音波診断装置のように、記録画像を経時的に取得する必要のある医用診断装置が対象となる。
【0053】
CPU12は、入力手段2によって入力された情報に基づいて処理を行う操作処理手段121と、超音波診断装置100から送信された医用画像を符号化処理する符号化手段122とから構成され、符号化制御手段13は、符号化手段122が行う符号化処理に対して所定の条件下で制御する。
【0054】
記憶手段3は、符号化手段13によって符号化された医用動画像を記録する手段であり、他にも、符号化する情報量と画質とを関連付けた情報が「テーブル」として予め記録されている。このテーブルによれば、符号化する情報量をどの程度にすれば、どの位の記録画質で記憶されるかが分かり、逆に、最低限度の記録画質にしたい場合には、それに合わせた符号化の情報量を関連付けられる。
【0055】
負荷検出手段11は、操作処理手段121及び符号化手段122が処理実行することによって生じるCPU12としての負荷量を経時的に監視する手段である。そして、その監視している負荷率(単位時間当たりの負荷量)が、予め設定された閾値を超えたか、一度超えたが当該閾値未満になったかを符号化制御手段13に伝達する機能を有している。
【0056】
ここで、前記閾値は、入力手段2を用いて使用者が入力することにより、記憶手段3や負荷検出手段11に付随した不揮発性メモリに記憶されてよく、それを負荷検出手段11が参照して符号化制御手段13に伝達するようにされている。
【0057】
また、前記負荷率を監視し、負荷率が前記閾値を超えるか、一度超えたが当該閾値未満になったかを符号化制御手段13に伝達する負荷検出手段11とは別に、入力手段2によって入力作業が行われたことを検知して、それを符号化制御手段13に伝達する操作検知手段を設けてもよい。
【0058】
これは、負荷検出手段11によってCPU12の負荷率を監視しなくても、入力手段2によって入力作業がなされることによりCPU12にかかる負荷率が前記閾値を超えると予想される場合に有効である。また、この操作検知手段と負荷検出手段11とを両方設けてもよい。
【0059】
符号化制御手段13は、超音波診断装置100から入力された医用動画像を所定の条件下で符号化処理するように、遅延手段14を介して符号化手段122に指示する手段であるが、前記所定の条件としては、例えば、負荷検出手段11からCPU12の負荷率について何ら情報が送信されない場合には、予め設定された情報量に応じた符号化処理(第1の符号化処理)を行うように符号化手段122に指示する。また、負荷検出手段11からCPU12の負荷率が前記閾値を超えたとの情報が送信された場合には、記憶手段3に記憶されたテーブルを参照して、情報量を低下させて符号化処理(第2の符号化処理)を行うように符号化手段13に指示する。さらに、CPU12の負荷率が前記閾値を超えた後、前記閾値未満に低下したとの情報が送信された場合には、前記第2の符号化処理から前記第1の符号化処理に移行するように符号化手段122に指示するのである。なお、前記予め設定された情報量は、入力手段2を用いて使用者が予め入力しておくことにより、記憶手段3に記憶されたもので、それを符号化制御手段13が参照して符号化手段122に間接的に指示するのである。
【0060】
図5(a)〜(c)は、本発明に係る医用動画像記録方法の第2の実施形態における負荷イメージ図である。
【0061】
本実施形態は、入力操作処理が数回にわたって行われた場合に対応するものである。図5(a)に示すように、例えば、入力操作処理が断続的に3回(t〜t,t〜t,t〜t)行われた場合、上述の実施形態によれば、符号化制御手段13は、入力操作処理が行われ、負荷率が前記閾値に達する度に第1の符号化処理と第2の符号化処理とを繰り返すことになる。
【0062】
医用診断装置として、超音波診断装置が採択され、それによって得られる医用動画像を記録する場合では、特に、ゲイン調整操作が多用され、この入力操作は連続操作となる。
【0063】
従って、本実施形態では、入力操作処理が連続操作を伴う可能性が高い場合を想定して、第2の符号化処理から第1の符号化処理に移行する指示を、符号化手段122に対して遅延させる遅延手段14が負荷検出手段11と符号化制御手段13との間に設けられたのである。
【0064】
なお、この遅延手段14は、第2の符号化処理から第1の符号化処理に移行する指示を、符号化手段122に対して遅延させる目的で、符号化制御手段13と符号化手段122との間に設けてもよい。
【0065】
本実施形態の遅延手段14は、CPU12の負荷率が前記閾値を下回ったことを負荷検出手段11が検出した際(上述の実施形態におけるS9)に、その検出信号を遅延手段14が受信し、予め設定された一定期間(例えば、1秒程度;t〜t(図5(b)参照))経過後、符号化制御手段13にCPU12の負荷率が前記閾値を下回ったことを伝達する。
【0066】
これを受けて、符号化制御手段13は、それまで実行されていた第2の符号化処理から第1の符号化処理に移行するように符号化手段122に指示する。その時機が図5(b)におけるtである。この図からもわかるように、符号化処理にかかる負荷は少なくなっている。
【0067】
以上のように、連続操作が想定される入力操作に応じて、第2の符号化処理から第1の符号化処理に移行する指示を遅延手段14によって遅らせることで、図5(c)に示すように3回の連続的な入力操作があった場合、t〜t10間における符号化処理にかかる負荷を少なくすることができる。
【0068】
また、使用者が入力手段2を用いて行う入力操作の中で、例えば、印刷操作は記録画質として重要度が高く、この入力操作処理中に、符号化処理する情報量の低下を符号化手段122に指示させることは好ましくない。
【0069】
従って、本実施形態の他の例として、如何なる入力操作処理が使用者によって選択されたのかを判別する判別手段を入力操作処理手段121に設け、所定の入力操作を判別した場合に限り、入力操作処理手段121が符号化制御手段13に符号化手段122への制御を禁止させるようにしてもよい。
【0070】
ここで、前記所定の入力操作とは、前記した印刷操作など、記録画質の重要性の高い処理を伴う入力操作を指すものである。
【0071】
本発明に係る医用動画像記録プログラムは、以上に説明した医用動画像記録方法の動作をプログラムとして構成したものであり、その実施の形態は、負荷検出手段及び符号化制御手段並びに遅延手段の機能をCPU12に対して実行させるものである。
【0072】
また、以上に説明した医用動画像記録方法の動作がプログラムとして構成されたものを記録媒体に記録し、その記録媒体の内容をCPU12に実行させてもよい。
【0073】
上述の各実施形態は、本発明の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されることはない。また、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る医用動画像記録システムの第1の実施形態における構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る医用動画像記録方法の第1の実施形態における動作を示すフローチャート。
【図3】本発明に係る医用動画像記録方法の第1の実施形態における負荷イメージ図。
【図4】本発明に係る医用動画像記録システムの第2の実施形態における構成を示すブロック図。
【図5】本発明に係る医用動画像記録方法の第2の実施形態における負荷イメージ図。
【図6】医用動画像記録方法の従来の負荷イメージ図。
【符号の説明】
【0075】
1 医用動画像記録システム
2 入力手段
3 記憶手段
11 負荷検出手段
12 CPU
13 符号化制御手段
14 遅延手段
100 医用診断装置
121 操作処理手段
122 符号化手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用診断装置と、
医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件を使用者が入力するための入力手段と、
前記記録条件に基づいて前記医用動画像の処理を行う操作処理手段と、
前記医用動画像を符号化する符号化手段と、
係る符号化手段によって符号化された医用動画像を記憶する記憶手段と、
前記符号化手段及び前記操作処理手段が1つのCPUによって構成され、そのCPUにかかる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となることを検出する負荷検出手段と、
前記負荷検出手段によって負荷率が前記閾値以上となったことが検出されたときに、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御する符号化制御手段とを有することを特徴とする医用動画像記録システム。
【請求項2】
前記符号化制御手段が、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御した後に、前記負荷検出手段によって負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、低下させる前の情報量で前記医用動画像を符号化するように前記符号化手段に対して前記符号化制御手段が制御することを特徴とする請求項1に記載の医用動画像記録システム。
【請求項3】
前記符号化制御手段が、前記医用動画像の情報量を低下させて符号化するように前記符号化手段を制御後、所定時間経過した後に、符号化する情報量を低下させる前の情報量で前記医用動画像を符号化するように前記符号化手段に対する前記符号化制御手段の制御を、所定時間後に実行させる遅延手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の医用動画像記録システム。
【請求項4】
情報量と画質とを関連付けたテーブルが前記記憶手段に記憶され、前記低下させる情報量は、予め設定された最低画質に対応する情報量であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の医用動画像記録システム。
【請求項5】
医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件を使用者が入力する入力過程と、
入力された前記記録条件に応じてCPUにより前記医用動画像の処理を行う入力情報処理過程と、
前記医用動画像をCPUにより符号化する第1の符号化処理過程と、
符号化された前記医用動画像を記憶する記憶過程と、
前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程でCPUに生じる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出過程と、
前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程によって生じる負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検知したときに、前記第1の符号化処理過程にかえて前記情報量を低下させて前記医用動画像を符号化する第2の符号化処理過程とを有することを特徴とする医用動画像記録方法。
【請求項6】
負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、前記第2の符号化処理過程から第1の符号化処理過程に移行することを特徴とする請求項5に記載の医用動画像記録方法。
【請求項7】
負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、所定の時間経過後に前記第1の符号化処理に移行することを特徴とする請求項5に記載の医用動画像記録方法。
【請求項8】
前記低下させる情報量を、予め設定された最低画質に対応する情報量としたことを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の医用動画像記録方法。
【請求項9】
医用診断装置によって取得された医用動画像の記録条件が使用者によって入力されたことに応じてCPUにより処理を行う入力情報処理過程と、
前記医用動画像をCPUにより符号化する第1の符号化処理過程と、
符号化された前記医用動画像を記憶する記憶過程と、
前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程でCPUに生じる負荷率を監視し、負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検出する負荷検出過程と、
前記第1の符号化処理過程及び前記入力情報処理過程によって生じる負荷率が予め設定された閾値以上となったことを検知したときに、前記第1の符号化処理過程にかえて前記情報量を低下させて前記医用動画像を符号化する第2の符号化処理過程とをコンピュータに機能させることを特徴とする医用動画像記録プログラム。
【請求項10】
負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、前記第2の符号化処理過程から第1の符号化処理過程に移行することを特徴とする請求項9に記載の医用動画像記録プログラム。
【請求項11】
負荷率が前記閾値未満となったことが検出されたときに、所定の時間経過後に前記第1の符号化処理に移行することを特徴とする請求項9に記載の医用動画像記録プログラム。
【請求項12】
前記低下させる情報量を、予め設定された最低画質に対応する情報量としたことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の医用動画像記録プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−94913(P2006−94913A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281537(P2004−281537)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】