説明

医用画像システム

【課題】医用画像表示装置から医用画像保管装置に対して表示要求がなされてから、医用画像表示装置において所望の画像が表示されるまでの時間を短縮することができる医用画像システムを提供すること。
【解決手段】画像表示領域の画素数に相当する仮想画面データを表示することが可能な医用画像表示装置と、医用画像データを保管し、この医用画像データから対応する前記仮想画面データを生成可能な医用画像保管装置とを備え、前記医用画像表示装置から所望の医用画像データの表示要求があったとき、この医用画像データから前記医用画像データよりデータ容量の少ない仮想画面データを生成し、前記所望の医用画像データ及び対応する仮想画面データを前記医用画像表示装置にネットワークを介して送信し、前記医用画像表示装置は、前記医用画像表示装置から送信されてきた前記所望の医用画像データを取得するまでは、取得した前記対応する仮想画面データに基づいて対応する仮想画面を表示することを特徴とする医用画像システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の医用画像データを保管する医用画像保管装置と、この医用画像保管装置に保管されている医用画像を表示する医用画像表示装置から成る医用画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等の医療現場ではCT(Computed Tomography)などのモダリティで収集された医用画像データを保管する医用画像保管装置と、この医用画像保管装置に保存されている医用画像を、ネットワークを介して要求し、その医用画像を表示する医用画像表示装置が使用されている。ネットワークの転送効率状況や医師が読影する画像の種類によってはネットワーク負荷を軽減するために、予め医用画像保管装置側で医用画像を圧縮し、医用画像表示装置側ではそれを伸張展開して高速表示する場合がある。
【0003】
乳房画像を撮影する検査装置としてマンモグラフィ装置が知られている。マンモグラフィ装置は、被検者の健康を害しない程度の放射線(例えばX線)を放射線源から被写体(乳房)に向かって照射し、被検体を透過した放射線をデジタル放射線検出器で検出し、画像データを取得するものである。マンモグラフィ装置は非常に微細で被写体コントラストが低い組織を対象とした検査装置である。
【0004】
したがって、乳腺の石灰化や腫瘍化した部分を正確に読影する必要性からマンモグラフィ画像については特に高画質が要求され、10〜100MB程度の非常に大きな画像サイズが必要とされる。通信技術や画像メモリ素子の進歩により、さらに画像サイズが大きくなる傾向にある。したがって医用画像表示装置側で原画像を表示しようとすると、ネットワークからダウンロードするのに時間がかかり、画像が表示されるまで医師が診断を開始できないという問題が発生している。
【0005】
このような問題点を解決するために、上述したように表示速度を優先して高圧縮(画像サイズ小)をした参照用の医用画像と、画質を優先して低圧縮(画像サイズ大)をした読影用の医用画像をそれぞれに保管する方法が行われたり、医用画像データの必要部分だけを取得して表示するなどで表示速度を向上させたりすることが、種々、行われている。
【0006】
例えば、モダリティから受信したDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)ファイル内の医用画像から生成解像度保持部に保持された低解像度に基づく医用画像を生成し、当該医用画像と生成された低解像度の医用画像とをそれぞれ可逆圧縮して当該DICOMファイルのファイル名称に関連するファイル名のDICOMファイルに格納して保持する画像サーバと、表示部の表示サイズに合わせて最適な解像度を有する医用画像を格納するDICOMファイルをこの画像サーバからダウンロードする画像ビューワとを備えた情報処理装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−301965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術では、医用画像保存装置側に予め複数の解像度を持つ医用画像を生成しておき、医用画像表示側の表示部の解像度に合わせて最適な解像度を持つ医用画像をダウンロードするものであるが、予め複数の医用画像を用意するので保存容量が大きくなってしまうという問題点がある。
【0009】
また、マンモグラフィ装置のように画質が特に重要視されるような繊細な医用画像では、ネットワークの負荷を軽くするために画像を圧縮してしまうと所見が失われてしまう可能性があるので医療過誤等の問題が生ずる。したがって最終的には、医用画像(原画像)を取得して読影する必要がある。しかし、原画像をリアルタイムでネットワークから取得しようとすると表示されるまでに時間がかかり、診断時間に無駄が生じることになる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、医用画像表示装置から医用画像保管装置に対して表示要求がなされてから、医用画像表示装置において所望の画像が表示されるまでの時間を短縮することができる医用画像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1によれば、画像表示領域の画素数に相当する仮想画面データを表示することが可能な医用画像表示装置と、医用画像データを保管し、この医用画像データから対応する前記仮想画面データを生成可能な医用画像保管装置とを備え、前記医用画像表示装置から所望の医用画像データの表示要求があったとき、この医用画像データから前記医用画像データよりデータ容量の少ない仮想画面データを生成し、前記所望の医用画像データ及び対応する仮想画面データを前記医用画像表示装置にネットワークを介して送信し、前記医用画像表示装置は、前記医用画像表示装置から送信されてきた前記所望の医用画像データを取得するまでは、取得した前記対応する仮想画面データに基づいて対応する仮想画面を表示することを特徴とする医用画像システムを提供する。
【0012】
また、本発明の請求項3によれば、医用画像保管装置と医用画像表示装置とがネットワークに接続され、前記医用画像保管装置は、医用画像データが保存される画像蓄積部と、前記医用画像表示装置上でユーザが表示されている画像に対して行う画像操作情報、およびこの医用画像表示装置に接続されたモニタ上の画像表示領域の大きさに基づくこの画像表示領域の解像度情報を受信する操作情報受信部と、この画像操作情報で指定された医用画像データを前記画像蓄積部から読み出し、前記画像操作情報で指定されるこの医用画像データの表示領域を前記解像度情報で指定された画像表示領域の画素数に変換した、前記医用画像データよりデータ容量の少ない仮想画面データを生成する仮想画面データ生成部と、この仮想画面データと前記医用画像データを前記医用画像表示装置へ送信する画像送信部と、を有し、前記医用画像表示装置は、前記ユーザによって指定される前記画像操作情報を入力するための操作入力部と、前記画像操作情報および前記解像度情報を保持する操作情報保持部と、前記医用画像保存装置に対して前記画像操作情報と前記解像度情報を送信する操作情報送信部と、前記医用画像保存装置から送信された前記仮想画面データ及び医用画像データを受信する画像受信部と、前記医用画像データを保存する画像保存部と、前記仮想画面データに基づく表示から前記医用画像データに基づく表示に切り替えて前記モニタの画像表示領域部分に画像表示する切替部と、を有することを特徴とする医用画像システムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医用画像表示装置から医用画像保管装置に対して表示要求がなされてから、医用画像表示装置において所望の画像が表示されるまでの時間を短縮することができる医用画像システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像システムの全体構成図である。
【図2】同実施形態に係る医用画像システムの医用画像表示装置上で動作する画像ビューワの説明図である。
【図3】同実施形態に係る医用画像システムの詳細な構成図である。
【図4】同実施形態に係る医用画像表示装置が、医用画像保管装置から医用画像データを取得開始するときの処理フロー図である。
【図5】同実施形態に係る医用画像保管装置が医用画像表示装置から画像表示要求信号を受信したときの処理フロー図である。
【図6】同実施形態に係る医用画像保管装置が作成した仮想画面データを医用画像表示装置の画像ビューワで表示するときの処理フロー図である。
【図7】同実施形態に係る医用画像表示装置の画像ビューワ上で仮想画面データに対して操作をしたときの処理フロー図である。
【図8】同実施形態に係る医用画像保管装置が医用画像表示装置の画像ビューワ上の操作情報を受信したときの処理フロー図である。
【図9】同実施形態に係る医用画像表示装置の画像ビューワが、取得した原画像データに切り替えて表示するときの処理フロー図である。
【図10】同実施形態に係る医用画像表示装置が原画像データと仮想画面データとを取得するまでの時間差を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る医用画像システムのコンピュータシステムの全体構成を示す。
【0016】
コンピュータネットワーク10に、医用画像表示装置11、医用画像保管装置12、マンモグラフィ装置13およびCTあるいはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などその他のモダリティ14が接続されている。マンモグラフィ装置13やその他のモダリティ14で撮影した医用画像データは、DICOM等の通信規格に従って医用画像保管装置12に保存される。医用画像保管装置12にはDICOM等に準ずる画像フォーマットで医用画像データを保管し、要求があれば医用画像表示装置11に医用画像を送信することができる。
【0017】
医用画像表示装置11は、医用画像保管装置12等から事前に医用画像データを受信し、自装置のローカルディスクに保存した医用画像データ、もしくはリアルタイムにネットワーク10を経由して医用画像保管装置12に保存された医用画像データを画像ビューワと呼ばれるアプリケーションソフトウェアにて表示することができる。
【0018】
図2は、医用画像表示装置11のアプリケーションとして動作する画像ビューワの一例を示す図である。この画像ビューワアプリケーションは、医用画像表示装置11の表示画面上に、アプリケーション名を示すアプリケーションタイトルを表示するタイトル領域21、取得した医用画像を表示するための画像表示領域22と、表示された医用画像に対し、拡大/縮小処理、階調変更処理、パンニング処理、区画変更、画像めくりなどの画像操作を実施するためにメニューアイコンなどを配置した画像操作領域23を表示する。
【0019】
医師らは、画像表示領域22に表示する医用画像を見ながら、所見に必要な部位を表示するために画像表示領域23にあるメニューアイコンを操作する。
【0020】
図3は、医用画像表示装置11と医用画像保管装置12とにより構成される医用画像システムの構成図である。
【0021】
医用画像保管装置12は、医用画像表示装置11の画像表示領域22の解像度情報と、医用画像表示装置11の画像ビューワ上で医師らが画像操作を行った画像操作情報とを受信する操作情報受信部31と、この解像度情報と画像操作情報の解析を行う操作情報解析部32と、マンモグラフィ装置13またはその他のモダリティ14の医用画像データが保存された画像蓄積部33と、上記画像操作情報で指定された原画像データを画像蓄積部33から読み出し、この原画像データをもとに画像操作情報により指定された画像表示領域22の解像度情報(画素数)から仮想画面データを生成する仮想画面データ生成部34と、この仮想画面データと原画像データの両方もしくはその一方を医用画像表示装置11へコンピュータネットワーク10を介して送信する画像送信部35から構成される。
【0022】
なお、実施形態の説明においては、医用画像保管装置12に保管されている医用画像データそのものを原画像データと呼び、この原画像データから画像表示領域22に対応する画素数に変換した画像データを仮想画面データと呼び、明確に区別することにする。
【0023】
医用画像保管装置12は一般的なサーバ装置により構成することが可能であり、上述の機能がこのサーバ装置上で動作するアプリケーションとして組み込まれる。
【0024】
一方、医用画像表示装置11は、医師らがマウスやタッチスクリーンなどを用いて、表示したい医用画像を指定しその画像に対して行う拡大/縮小処理、階調変更処理、パンニング処理、区画変更、画像めくりなどの画像操作を入力するための操作入力部41と、この操作入力部41から入力された画像操作情報および医用画像表示装置11の画像表示領域22の解像度情報(画素数)を、操作履歴を含めて保持する操作情報保持部42と、医用画像データを事前またはリアルタイムに保存する画像保存部43と、医用画像保管装置12に対して画像操作情報と画像表示領域22の解像度情報を送信する操作情報送信部44と、医用画像保管装置12の画像送信部35から送信されたデータを受信する画像受信部45と、取得中の原画像データが画像保存部43に全て保存された場合に、モニタ47の表示に使うデータとして仮想画面データと原画像データとを切り替えるデータ切替部46と、モニタ47に画像を表示する画像表示部48から構成される。
【0025】
医用画像表示装置11は、一般的なワークステーション装置でクライアント端末として構成することが可能で、上述の機能がこのワークステーション装置上で動作するアプリケーションとして組み込まれる。画像ビューワは、医用画像表示装置11の操作入力部41及びモニタ47に対応する。
【0026】
以下の図4から図10に示す処理フローを用いて本実施形態の医用画像システムの処理動作を説明する。
【0027】
図4は、医用画像表示装置11が、医用画像保管装置12から所望の医用画像データを取得開始するときの処理フローである。医師らは医用画像表示装置11上で動作する画像ビューワを操作して、表示したい医用画像を指示する(ST401)。医用画像表示装置11の操作情報保持部42では、操作入力部41で表示が指示された医用画像がローカルディスク(画像保存部43)に保存されているかどうか検索する。
【0028】
該当する医用画像が画像保存部43に保存されている場合(ST402:Yes)には、画像保存部43から、指示した医用画像データを取得(ST403)して、画像表示部48に出力し、モニタ47に画像を表示する(ST404)。
【0029】
ローカルディスクに該当する医用画像が保存されていない場合(ST402:No)には、医用画像保管装置12において、データ容量の少ない仮想画面データを作成し、このデータを医用画像表示装置11に送ってこの装置で仮想画面データによる画像の表示を行う(図5に基づいて後述する。ST504,ST505,ST506)。
【0030】
一方、医用画像データ(原画像データ)による画像データの取得及び表示は、ST405〜ST408において行う。
【0031】
まず、医用画像保管装置12に画像一覧表示を要求し(ST405)、医用画像保管装置12から医用画像データの所在情報を取得して(ST406)、その所在の医用画像データの原画像データの取得を開始する(ST407)。そしてST408において、医用画像データにより表示を行う。医用画像データは原画像データであり、仮想画面データに比べて容量が大きい。したがって、医用画像表示装置11においては、医用画像データの取得には非常に時間がかかる。
【0032】
そこで、まず、仮想画面データによる表示が行われ、その後、重ねて医用画像データにより高画質の表示がなされることになる。この点については、図10を用いて後で詳しく述べる。
【0033】
ST405において、医用画像の表示を医用画像保管装置12に要求する際には、患者ID(Identifier)、検査日、モダリティ名、検査UID(Unique Identifier)等の医用画像を一意に識別する情報を医用画像保管装置12に送信することが一般的に行われる。本実施形態ではこれらの情報に加えて、モニタ描画のための低解像度画像(仮想画面データ)を生成するために画像表示領域22の解像度情報(画素数)を合わせて送信する。
【0034】
ST402で、要求された医用画像がローカルディスクに保存されていない場合の、仮想画面データの作成、送信、表示の処理フローを図5に示す。
【0035】
医用画像保管装置12が、医用画像表示装置11から画像表示要求信号を操作情報受信部31において受ける(ST501)と、操作情報解析部32では画像蓄積部33に保管している医用画像の原画像データまたはその原画像データの所在位置情報を医用画像表示装置11に送信を開始する(ST502)。
【0036】
これとともに、医用画像の原画像データを画像蓄積部33から読出して、図示しないメモリに一時的に読み込む(ST503)。医用画像保管装置12はこのメモリに読み込んだ医用画像データと、医用画像表示装置11から送信されてきた画像表示領域22の解像度情報を元に、画像表示領域22に表示すべき仮想画面データを生成(ST504)して、医用画像表示装置11に送信する(ST505)。
【0037】
仮想画面データは医用画像データよりも容量が少ない。この仮想画面データ生成方法は、一時的にメモリに読み込んだ医用画像を、医用画像保管装置12に接続されているモニタ上に表示するためのモニタ描画用のデータの生成方法と同じである。本実施形態では画像を医用画像保管装置12のモニタには描画せず、表示領域の解像度を変換して医用画像表示装置11のモニタ47に表示するようにする。
【0038】
この仮想画面データの具体的な生成方法は、原画像データから画像ビューワの画像表示領域22の画素数になるよう画素をある一定の規則に従って間引いたようなもので、例えばビットマップ等の画像データである。
【0039】
図6は、同実施形態に係る医用画像保管装置12が作成した仮想画面データを、医用画像表示装置11の画像ビューワで表示するときの処理フローである。医用画像表示装置11は生成された仮想画面データを受信(ST601)し、そのデータを画像表示領域22に表示する(ST602)。
【0040】
図7は、同実施形態に係る医用画像表示装置11の画像ビューワ上で仮想画面データに対して操作をしたときの処理フローである。医用画像表示装置11は画像表示領域22に表示している画像に対して操作が行われた場合、その操作を操作情報保持部42に操作履歴として記録し(ST701)、ユーザによってどのような操作が実施されたかの情報を医用画像保管装置12に送信する(ST702)。
【0041】
画像めくりの場合には、次に表示したい画像情報を医用画像保管装置12に送信(ST703)し、画像表示領域22のウインドウサイズを変化させたり、マルチウインドウにするなどの表示領域や表示様式の変更の場合には、これにより変更された画像表示領域22の解像度及び表示している画像情報を送信する(ST704)。また拡大・縮小、階調変更、パンニングの場合には、画像操作の種類、マウス操作の移動量及び表示している画像情報を送信する(ST705)。
【0042】
ステップST706では、医用画像保管装置12から再生成された仮想画面データを受信する。そして次のST707で画像ビューワの画面表示領域22に受信した仮想画面データを埋め込み表示を行う。
【0043】
このように、ユーザは原画像データで行える操作と同一の操作を仮想画面上で行うことができ、しかも画像表示領域22に表示される解像度も同じである。従って医師らは表示されている画像が原画像なのか仮想画面なのか意識をすることなく診断が可能である。
【0044】
図8は、同実施形態に係る医用画像保管装置が医用画像表示装置の画像ビューワ上の操作情報を受信したときの処理フローである。医用画像保管装置12は医用画像表示装置11の画像ビューワからST801で受信した操作情報を元に仮想画面データを再作成し(ST802)、医用画像表示装置11に送信し、画像ビューワで表示する(ST803)。
【0045】
同実施形態に係る医用画像表示装置の画像ビューワが、取得した原画像データに切り替えて表示するときの処理フローを、図9に示す。医用画像表示装置11の画像ビューワでは医用画像データの取得状況を定期的に確認し(ST901)、該当する医用画像データが全て取得された場合(ST901:Yes)、最初に画像を表示してからそれまでに行われた画像に対する画像操作の履歴記録から操作を全て反映させ(ST902)、画像ビューワの画像表示部に医用画像を表示する(ST903)。このとき表示していた仮想画面データによる表示から実際の医用画像データを用いた表示へ表示方法を切り替える。
【0046】
図10は、医用画像表示装置11が医用画像保管装置12へ画像要求信号を送出してから原画像データと仮想画面データを取得するまでの時間差を示すシーケンス図である。図中では、図4から図9で用いたステップ番号を示している。
【0047】
まず、ステップST405、ST501において、医用画像表示装置11から医用画像保管装置12へ画像表示の要求を行う。原画像データの取得シーケンスは、画像蓄積部33上の画像所在位置を受信(ST406)して、原画像データのダウンロードを開始する(ST407)。
【0048】
ダウンロードの開始から原画像データの取得完了までの時間(原画像データ取得時間)をT1とする。例えば、100MBクラスの医用画像データ(原画像データ)を考えると、その画像をダウンロードするのにかかる時間T1は、ネットワークの回線速度にもよるが、通常、数十秒から数分かかる。
【0049】
また仮想画面データの取得シーケンスは、ステップST503において、原画像データを図示しないメモリに読み込む。この読み込み時間は100MBクラスの医用画像データに対して数秒であり、この時間(読み込み時間)をT2とする。読み込みを完了した原画像データから仮想画面データを作成(ST504)した後、医用画像表示装置11へダウンロードを終了するまでの時間(仮想画面データ取得時間)をT3とする。
【0050】
この時間T3は、医用画像表示装置11の画像表示領域22で設定される解像度(画素数)に依存し、例えば、モノクロ画像において1280×1024の解像度では最大2MB程度、2650×2048の解像度では最大10MB程度の画像サイズとなる。したがって、仮想画面データをダウンロードする時間T3は100MBクラスの原画像データについて言えば、T1の10分の1から50分の1となり、数秒でダウンロードが完了することが理解される。
【0051】
ここで述べたT1からT3までの時間以外のステップでかかる処理時間は、ほとんど瞬時に完了するので無視すると、医用画像表示装置11において、原画像データと仮想画面データが表示されるまでの時間差△TはおおよそT1−T2−T3となる。
【0052】
このように、データ容量の少ない仮想画面データを原画像データよりも早く取得することにより、医師らは原画像データのダウンロード完了まで(数十秒から数分)待つことなく、数秒後には診断が可能となる。
【0053】
この時間短縮率は、ほぼ仮想画面データサイズ量と原画像データサイズとの比で決まるため、扱う原画像データのサイズが大きくなればなる程、時間短縮の効果は大きくなるという利点を持つ。
【0054】
以上説明したように、本発明のこの実施形態によれば医用画像表示装置がネットワーク経由で医用画像データを全て取得してから画像表示する必要がないため、最初に医用画像を表示してユーザに見せるまでの時間を大幅に短縮することが可能になる。また、仮想画面データだけでなく非圧縮の原画像データを同時に扱うため、この非圧縮画像データを医用画像表示装置側に表示することができる。従って表示速度を速めるために画質を落とす必要がなくなるという効果を奏する。
【0055】
また、この仮想画面データ上で所望の画像操作が可能であるので、原画像データをダウンロード中であっても、この画像操作情報をもとに医用画像保存装置側で再生成した仮想画面データを再取得して表示することが可能である。これにより、医師らは表示されている画像が仮想画面データなのか原画像データなのかを区別することなく、所望の表示解像度を維持しながら診断が可能である。
【0056】
さらに、本実施形態で使用する仮想画面データは、モニタ用の描画データであるのでネットワーク負荷が低く高速表示が行え、しかも仮想画面データを医用画像保管装置上または医用画像表示装置上に予め蓄積しておく必要もないので、保存容量を低減することができる。
【0057】
尚、上記実施形態では、画質が特に重要視されるマンモグラフィ装置のように、原画像データのファイルサイズが大きい医用画像データを医用画像表示装置で扱う場合について説明した。しかし、すでに医用画像保存装置側に低解像度の圧縮画像が保存されている場合には、この低解像度の画像を先に送ることができ、仮想画面データを生成しないようにすることも可能である。また、原画像データを必要とせず仮想画面データだけで読影可能な場合もあるので、必ずしも原画像データと仮想データの両方を必要としない。
【0058】
本発明においては、所望の本来の医用画像が医用画像表示装置の画面上に表示される前に、医用画像保管装置において生成されネットワークを介して、先に送られてきた仮想画面が表示される。したがって、医用画像表示装置から医用画像保管装置に対して表示要求がなされてから、医用画像表示装置において所望の医用画像に対応する仮想画面の画像が表示されるまでの時間を大幅に短縮することができる
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本発明の技術思想を用いる限りこれらの変形例も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10…コンピュータネットワーク
11…医用画像表示装置
12…医用画像保管装置
13…マンモグラフィ装置
14…モダリティ
21…タイトル領域
22…画像表示領域
23…画像操作領域
31…操作情報受信部
32…操作情報解析部
33…画像蓄積部
34…仮想画面データ作成部
35…画像送信部
41…操作入力部
42…操作情報保持部
43…画像保存部
44…操作情報解析部
45…画像受信部
46…データ切替部
47…モニタ
48…画像表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示領域の画素数に相当する仮想画面データを表示することが可能な医用画像表示装置と、
医用画像データを保管し、この医用画像データから対応する前記仮想画面データを生成可能な医用画像保管装置とを備え、
前記医用画像表示装置から所望の医用画像データの表示要求があったとき、この医用画像データから前記医用画像データよりデータ容量の少ない仮想画面データを生成し、前記所望の医用画像データ及び対応する仮想画面データを前記医用画像表示装置にネットワークを介して送信し、
前記医用画像表示装置は、前記医用画像表示装置から送信されてきた前記所望の医用画像データを取得するまでは、取得した前記対応する仮想画面データに基づいて対応する仮想画面を表示することを特徴とする医用画像システム。
【請求項2】
前記医用画像表示装置は、表示される前記対応する仮想画面に対して行った画像操作情報を前記医用画像保管装置に送信する手段をさらに有し、
前記医用画像保管装置は、前記医用画像表示装置から送られてきた前記画像操作情報に従って前記所望の医用画像を作成した仮想画面のデータを前記医用画像表示装置に送信することを特徴とする請求項1記載の医用画像システム。
【請求項3】
医用画像保管装置と医用画像表示装置とがネットワークに接続され、
前記医用画像保管装置は、医用画像データが保存される画像蓄積部と、
前記医用画像表示装置上でユーザが表示されている画像に対して行う画像操作情報、およびこの医用画像表示装置に接続されたモニタ上の画像表示領域の大きさに基づくこの画像表示領域の解像度情報を受信する操作情報受信部と、
この画像操作情報で指定された医用画像データを前記画像蓄積部から読み出し、前記画像操作情報で指定されるこの医用画像データの表示領域を前記解像度情報で指定された画像表示領域の画素数に変換した、前記医用画像データよりデータ容量の少ない仮想画面データを生成する仮想画面データ生成部と、
この仮想画面データと前記医用画像データを前記医用画像表示装置へ送信する画像送信部と、を有し、
前記医用画像表示装置は、前記ユーザによって指定される前記画像操作情報を入力するための操作入力部と、
前記画像操作情報および前記解像度情報を保持する操作情報保持部と、
前記医用画像保存装置に対して前記画像操作情報と前記解像度情報を送信する操作情報送信部と、
前記医用画像保存装置から送信された前記仮想画面データ及び医用画像データを受信する画像受信部と、
前記医用画像データを保存する画像保存部と、
前記仮想画面データに基づく表示から前記医用画像データに基づく表示に切り替えて前記モニタの画像表示領域部分に画像表示する切替部と、
を有することを特徴とする医用画像システム。
【請求項4】
前記画像操作情報は、前記医用画像表示装置に表示すべき医用画像データの指定操作、前記モニタ上の画像表示領域の指定操作を少なくとも含む画像操作の情報であることを特徴とする請求項3記載の医用画像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−160931(P2011−160931A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25548(P2010−25548)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】