説明

医用画像処理システムおよび画像診断装置

【課題】シンクライアントサーバを用いて患者の医用画像を読影する医用画像処理システムおよび画像診断装置を提供する。
【解決手段】医用画像処理システムは、画像診断装置と、複数のクライアントサーバとがネットワークで接続される医用画像処理システムにおいて、前記画像診断装置は、被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、被検体の医用画像データを再構成する再構成部と、再構成した前記医用画像データを前記複数の部位毎の医用画像データに画像分割する画像分割部と、前記複数の部位毎の医用画像データより所定の部位の医用画像データを選択する画像選択部と、この所定の部位の医用画像データを、前記所定の部位に該当する所定のクライアントサーバにそれぞれ送信する第1の通信部と、を有する。また、前記クライアントサーバは、前記医用画像データを受信する第2の通信部と、画像処理部と、部位画像記憶部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理システムおよび画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年CT装置等の画像診断装置では、機能の向上により、患者の全身画像を一度に取得することができるようになった。取得した医用画像は、部位毎に部位専門医により読影が行われる。
【0003】
一方、シンクライアント型の情報処理システムが近年注目されており、医療においてもシンクライアント型のシステムを導入し始めている。シンクライアント型の医用システムとは、1つのメインサーバおよび複数のクライアント(シンクライアント)が接続する病院内LAN等のネットワークにおいて、メインサーバ側がシンクライアントを制御するものである。シンクライアント端末にはハードディスクを搭載せず、サーバ側にシンクライアント端末を動作させるアプリケーションやデータを格納する。具体的な例として、サーバは、他の画像処理装置で撮像した画像データの格納、画像処理、シンクライアント端末の要求に応じた各種アプリケーションプログラムの起動を行い、シンクライアント端末は、データの表示機能や最低限の入力機能のみを有する。
【0004】
シンクライアント端末は、アプリケーションプログラム、およびデータをシンクライアント端末自身で格納しないため、シンクライアント端末側の処理負荷を低減し、サーバ上でデータを一元的に管理できる。また、ハードディスクを搭載しないためシンクライアント端末自体が安価で済み、より多くのシンクライアント端末を導入してネットワーク上に接続することができる。
【0005】
例えば患者の医用画像について、複数のシンクライアントサーバでそれぞれ特定の部位の読影を行う場合、メインサーバ側は患者の全身医用画像および全身のレポートデータを有し、シンクライアントサーバは、患者の全身医用画像および読影する部位のレポートデータをメインサーバから都度取得して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−360519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来シンクライアント型のシステムを用いて患者の医用画像の読影を行う場合、全身画像を1つのデータとして各シンクライアントサーバにそれぞれ転送しており、データが大きいため処理転送時間が膨大にかかってしまう。また、全身医用画像データの転送が終わるまではシンクライアントサーバ側で読影ができず、例えば患者の頭部から画像が送信された場合、脚部を専門に読影するシンクライアントサーバは最後の方で画像を受信することになり、読影を始めるまでに時間がかかってしまう。また、シンクライアントサーバに転送された全身の医用画像は、部位専門医が所定の部位について読影を行うため、専門外の部位における医用画像は不要であり、無駄となってしまう。
また、全身画像を複数の画像に分割して同時に全シンクライアントサーバに送信した場合でも、通信帯域は同じであるため、結局通信に時間がかかってしまう可能性がある。
【0008】
本実施形態はこのような点を考慮してなされたもので、シンクライアントサーバを用いて患者の医用画像を読影することができる医用画像処理システムおよび画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の医用画像処理システムは、画像診断装置と、複数のクライアントサーバとがネットワークで接続される医用画像処理システムにおいて、前記画像診断装置は、被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、前記被検体の医用画像データを収集するデータ収集部と、前記データ収集部で収集した医用画像データを再構成する再構成部と、前記再構成部で再構成した前記医用画像データを、前記分割位置設定部で設定した位置に基づき前記複数の部位毎の医用画像データに画像分割する画像分割部と、前記画像分割部で分割した前記複数の部位毎の医用画像データを格納する画像データベースと、前記画像データベースに格納した複数の医用画像データより、所定の部位の医用画像データを選択する画像選択部と、前記画像選択部で選択した前記所定の部位の医用画像データを、前記所定の部位に該当する所定のクライアントサーバにそれぞれ送信する第1の通信部と、を有し、前記クライアントサーバは、前記画像診断装置の第1の通信部から送信された、前記所定の部位の医用画像データを受信する第2の通信部と、前記第2の通信部で受信した前記所定の部位の医用画像データを画像処理する画像処理部と、前記画像処理部で画像処理した、前記所定の部位の医用画像データを格納する部位画像記憶部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、実施形態の画像診断装置は、複数のクライアントサーバとネットワークで接続される医用画像処理システムの画像診断装置において、被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、前記被検体の医用画像データを収集するデータ収集部と、前記データ収集部で収集した医用画像データを再構成する再構成部と、前記再構成部で再構成した前記被検体の医用画像を、前記分割位置設定部で設定した位置に基づき前記複数の部位別の医用画像データに画像分割する画像分割部と、前記画像分割部で分割した前記複数の部位毎の医用画像データを格納する画像データベースと、前記画像データベースに格納した複数の医用画像データより、所定の部位の医用画像データを選択する画像選択部と、前記画像選択部で選択した前記所定の部位の医用画像データを、部位に該当する所定のクライアントサーバにそれぞれ送信する第1の通信部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】部位専用シンクライアントサーバの詳細を示すブロック図。
【図3】画像診断装置が部位専用シンクライアントサーバそれぞれに医用画像を送信する基本的な動作を示すフローチャート。
【図4】患者の分割位置の設定方法の一例を示す図。
【図5】部位専用シンクライアントサーバへの送信順を決定し、対応する部位の医用画像を送信する例を示す図。
【図6】読影ジョブ待機数の少ない順に画像の再構成を行って部位専用シンクライアントサーバに医用画像を送信する動作を示すフローチャート。
【図7】全身用クライアントサーバを備えた場合の概念図。
【図8】付帯情報の例を示す図。
【図9】画像サーバが部位専用シンクライアントサーバと直接接続した場合の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る医用画像処理システム800の概略構成を示すブロック図である。医用画像処理システム800は、画像診断装置1、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)、シンクライアント3(31a〜31c、32a〜32b、33a)、画像サーバ5を含む。
【0014】
画像診断装置1と部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)、画像サーバ5は、病院内のLAN(ローカルエリアネットワーク)を介して相互に通信可能に接続される。部位専用シンクライアントサーバ2は、画像診断装置1から対応する部位の医用画像を受信し、またシンクライアント3を動作させるアプリケーションやデータを格納する。
【0015】
シンクライアント31a〜31c、32a〜32b、33aは、部位専用シンクライアントサーバ21、22、23それぞれに接続され、部位専用シンクライアントサーバ2のシンクライアント端末として動作する。つまり、シンクライアント3はデータの表示機能や最低限の入力機能のみを有する。
【0016】
画像サーバ5は、例えばPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管通信システム)に備えられる画像の長期保管用のサーバであり、画像診断装置1で取得した医用画像を記憶する。
【0017】
画像診断装置1はモダリティであり、患者(被検体)の医用画像を撮影して画像診断する。画像診断装置1は、制御部10、表示部12、操作部13、撮像部14、通信部15、記憶部16、情報記憶媒体17、患者情報データベース18、画像データベース19がバスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0018】
表示部12はモニタ等であり、制御部10の制御に基づいて文書データや画像データ等を表示する。操作部13はタッチパネルや操作キー等の入力装置である。撮像部14は、患者の医用画像を撮影する。通信部15は、病院内LANに接続し、部位専用シンクライアントサーバ2および画像サーバ5との通信を行う。
【0019】
記憶部16は、制御部10や通信部15などのワーク領域となるもので、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。記憶部16は、撮像部14で撮影した患者の全身医用画像データおよび付帯情報を一時的に格納する。
【0020】
情報記憶媒体17(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、ハードディスク、或いはメモリ(Flash Memory、ROM:Read Only Memory)などにより実現できる。情報記憶媒体17には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)、複数のアプリケーション等が記憶される。
【0021】
制御部10は、画像診断装置1の総括的な制御を行うとともに、その他の様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御部10の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。制御部10は、情報記憶媒体17に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。
【0022】
制御部10は、データ収集部101、再構成部102、画像分割部103、読影ジョブ待機数取得部104、スケジューリング部105、画像選択部106、分割位置設定部107を含む。
【0023】
分割位置設定部107は、被検体(患者の全身)を複数の部位に分割するための位置を設定する。データ収集部101は、撮像部14で撮像した患者の全身医用画像データを収集する。再構成部102は、データ収集部101で収集した医用画像データに所定の画像処理を行い再構成する。画像分割部103は、再構成部102で再構成した全身の医用画像データを部位別の医用画像データに分割し画像データベース19に格納する。詳細は後述する。
【0024】
読影ジョブ待機数取得部104は、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)の読影ジョブ待機数算出部212で算出した、読影ジョブを待機する医用画像データの値を取得する。スケジューリング部105は、読影ジョブ待機数取得部104で取得した、部位専用シンクライアントサーバ21、22、23における読影ジョブを待機する医用画像データの値に基づき、部位専用シンクライアントサーバ21、22、23に部位別の医用画像データを送信する順番を決定する。
【0025】
画像選択部106は、スケジューリング部105で決定した部位別の医用画像データの送信順に基づき、画像データベース19に格納される医用画像データを選択し、通信部15を介して送信する。
【0026】
患者情報データベース18は、患者の身長、体重等といった身体的特徴をあらかじめ格納する。
画像データベース19は、再構成部102で再構成され画像分割部103で分割された複数の部位別医用画像データ、および部位別医用画像データの付帯情報に含まれる、少なくとも患者ID、検査ID、シリーズID、および各部位に分割したときの分割位置、を格納する。
【0027】
図2は部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)の詳細ブロック図である。部位専用シンクライアントサーバ2は、制御部200、通信部205、記憶部206、情報記憶媒体207、部位画像データベース209を含む。
【0028】
通信部205、記憶部206、情報記憶媒体207は、画像診断装置1内の機能と同様であるので説明を省略する。
部位画像データベース209は、画像診断装置1から送信された、部位専用シンクライアントサーバ2に対応する部位の、再構成された医用画像データを格納する。このとき、少なくとも患者ID、検査ID、シリーズID、および部位を示す分割情報を含む付帯情報も医用画像データに添付される。
【0029】
制御部200は、データ中継部213、読影ジョブ待機数算出部212、画像処理部211を含む。画像処理部211は、画像診断装置1から送信された医用画像を画像処理する。
読影ジョブ待機数算出部212は、読影ジョブを待機している医用画像データの値を算出する。つまり、読影ジョブ待機数算出部212は、部位画像データベース209に格納される医用画像のうち、読影が終わっていない医用画像データの値(例えば医用画像の枚数)を算出する。
データ中継部213は、読影ジョブ待機数算出部212で算出した医用画像データの値に基づき、画像処理部211で画像処理した医用画像を、シンクライアント3や後述する全身用シンクライアントサーバ4に中継送信する。
【0030】
シンクライアント3(31a〜31c、32a〜32b、33a)は端末等であり、部位専用シンクライアントサーバ2に接続される読影端末として機能する。シンクライアント3は読影を行う医用画像を部位専用シンクライアントサーバ2より取得しモニタに表示する。読影医はシンクライアント3のモニタに表示された医用画像を見て読影を行い、読影結果(レポート)を入力する。入力されたレポートは、当該医用画像の付帯情報として、部位画像データベース209に格納される。
【0031】
次に、上記構成の医用画像処理システム800の動作について説明する。
【0032】
<実施例1>
図3に、画像診断装置1が部位専用シンクライアントサーバ2それぞれに医用画像を送信する基本的な動作のフローチャートを示す。
【0033】
画像診断装置1の分割位置設定部107は、患者情報データベース18に格納された患者の身長、体重、身体的特徴より、当該患者全身を各部位に分ける分割位置を設定する(ステップS101)。例えば、頭部、胸部、腹部、脚部1、脚部2といった部位と、その分割位置を設定する。
【0034】
図4に、ステップS101における患者の分割位置の設定方法の一例を示す。CTの場合はスキャナ画像を使って患者の体の横幅の値を取得して体の縦軸方向の位置でプロットした場合に体の幅が急激に変化する部分(図4の(F)を除いた(A)−(E)の部分)を検出して分割する。このとき胸部と腹部のような体の幅の変化が大きくない部分(F)については、(B)、(C)の位置から、前もって定めておいた比率(例:図4の(B)と(C)の7:3の位置)で設定するようにする。なお全身の画像の分割は体軸方向で垂直に分割するものに限らない。
なお、患者の分割位置の設定方法は上記の例に限らない。他の例として、寝台に部位の目印となるマーカーを置き、自動認識させてもよい。
【0035】
次に画像診断装置1の撮像部14は、患者の全身を撮影し、データ収集部101は撮影した医用画像データおよび付帯情報(例えば患者ID、検査ID、シリーズID等)を収集して記憶部16に一時的に格納する(ステップS103)。
【0036】
次に再構成部102は、ステップS103でデータ収集部101が収集した医用画像データを再構成し、通信部15を介して画像サーバ5に送信する(ステップS105)。次に画像分割部103は、ステップS105で再構成した医用画像データを、ステップS101で分割位置設定部107が設定した分割位置で分割し、部位別の医用画像を作成して画像データベース19に格納する(ステップS107)。このとき部位別の医用画像には、ステップS103で収集した、少なくとも患者ID、検査ID、シリーズIDと、分割位置を含む付帯情報が添付され、画像データベース19に格納されている。
【0037】
作成した部位別の医用画像は、対応する部位専用シンクライアントサーバ2に送信される。部位専用シンクライアントサーバ2において、画像処理部211は送信された医用画像の画像処理を行って部位画像データベース209に格納する。
各部位の読影医は、シンクライアント3の端末を用いて医用画像の読影を行うために、シンクライアント3の操作部を介して医用画像を要求する。部位専用シンクライアントサーバ2のデータ中継部213は、部位画像データベース209に格納されている医用画像を少なくとも1つのシンクライアント3に中継送信する。
【0038】
ここで画像処理部211の画像処理速度は、部位によって処理内容や画像の量が異なるため、各部位それぞれ異なると考えられる。例えば、腹部用の部位専用シンクライアントサーバは、医用画像を解析して胃や十二指腸等各臓器を判別する処理が必要となり、他の部位専用シンクライアントサーバよりも画像処理に時間がかかる。そのため、データ中継部213は、医用画像の画像処理が終わらないとシンクライアント3に中継送信ができず、結果として部位専用シンクライアントサーバ2で当該医用画像の読影を待機している状態となる。
また、データ中継部213からシンクライアント3に1度に中継送信された画像の量が多いために、読影医が読影する時間がかかってしまい、次の読影を待機する医用画像が部位専用シンクライアントサーバ2で蓄積されてしまう。
以上のように読影を待機している医用画像のデータ値は、読影ジョブ待機数として、読影ジョブ待機数算出部212で算出される。
【0039】
そこで次に読影ジョブ待機数取得部104は、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)の読影ジョブ待機数算出部212で算出した、読影ジョブを待機する医用画像データの値を取得する(ステップS109)。
【0040】
次にスケジューリング部105は、ステップS109で取得した、読影ジョブを待機する医用画像データの値に基づき、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)へ、対応する部位の医用画像データを送信する順番を決定する(ステップS111)。
【0041】
ステップS109で取得した読影ジョブを待機する医用画像のデータ値は、その値が多いほど、読影作業が進んでいないことを示している。画像選択部106が、読影ジョブを待機している医用画像のデータ値の少ない部位専用シンクライアントサーバ2から順に(待機している医用画像のデータ値が同一の場合は、あらかじめ決められた順に)、対応する部位の医用画像を選択して送信すれば、各部位専用シンクライアントサーバ2に接続されたシンクライアント3でより早く読影開始できる。よってステップS111においてスケジューリング部105が決定する、部位専用シンクライアントサーバ2への送信順は、読影ジョブを待機する医用画像データの少ない順となる。
【0042】
画像選択部106は、ステップS111で決定した部位専用シンクライアントサーバ2への送信順に基づき、部位専用シンクライアントサーバ2に対応する部位の医用画像を画像データベース19から順番に選択し、通信部15を介して送信する(ステップS113)。
【0043】
図5に、部位専用シンクライアントサーバ2への送信順を決定し、対応する部位の医用画像を送信する例を示す。例えば、読影ジョブを待機している医用画像データ数が、頭部専用シンクライアントサーバ21が1個、腹部専用シンクライアントサーバ22が3個、脚部専用シンクライアントサーバ23が2個であるとすると、画像選択部106は、読影ジョブを待機している医用画像データ数の少ない部位専用シンクライアントサーバ2の順、つまり、頭部専用シンクライアントサーバ21、脚部専用シンクライアントサーバ23、腹部専用シンクライアントサーバ22の順に、対応する部位の医用画像を画像データベース19から選択し、通信部15を介して送信する。
【0044】
これにより、患者の医用画像を部位別に分割することにより、無駄な医用画像の送信がなくなる。また読影ジョブを待機している医用画像のデータ値に応じて、各部位の医用画像を順に対応する部位専用シンクライアントサーバに送信することにより、先に読影ジョブの待機数がなくなっている部位専用シンクライアントサーバがあるにも関わらず、読影ジョブの待機数が多い他の部位専用シンクライアントサーバへの送信終了を待ってから、医用画像を受信するということがなくなり、より早く所定部位の医用画像の読影を行うことができる。
【0045】
<実施例2>
図6に、読影ジョブ待機数の少ない部位専用シンクライアントサーバ2の順に画像の再構成を行って部位専用シンクライアントサーバ2それぞれに医用画像を送信する動作のフローチャートを示す。
【0046】
ステップS201における、分割位置設定部107の分割位置の設定は、ステップS101と同様であるので、説明を省略する。次に読影ジョブ待機数取得部104は、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)の読影ジョブ待機数算出部212で算出した、読影ジョブを待機する医用画像データの値を取得する(ステップS203)。次にスケジューリング部105は、ステップS203で取得した、読影ジョブを待機する医用画像データの値に基づき、再構成部102が医用画像データを再構成する部位の順番を決定する(ステップS205)。
【0047】
次に画像診断装置1の撮像部14は患者の全身を撮影し、データ収集部101は医用画像データを収集して記憶部16に一時的に格納する(ステップS207)。収集した医用画像データは、画像サーバ5にも送信される。
【0048】
次に画像分割部103は、ステップS207でデータ収集部101が収集した医用画像データをステップS201で設定した分割位置で分割し、部位別の医用画像データを作成する(ステップS209)。
【0049】
次に再構成部102は、ステップS209で画像分割部103が分割し作成した、部位別の医用画像データを、ステップS205で決定した部位の順番に従って再構成する(ステップS211)。次に画像選択部106は、ステップS211で再構成を行った順に医用画像を選択し、通信部15を介して対応する部位専用シンクライアントサーバ2に送信する(ステップS213)。なお、この送信は全ての部位の再構成の完了を待って行われる必要は無く、再構成が完了した部位については完了次第、他の部位の再構成の完了を待たずに送信を行ってもよい。
【0050】
これにより、患者の全身医用画像データを一度に再構成するのではなく、部位毎に分割した後に、読影を待機しているジョブ数の少ない順に再構成するので、医用画像データの再構成に要する時間が短縮され、より早い読影を行うことができる。
【0051】
<実施例3>
なお、読影医によっては患者の全身医用画像を見て判断する場合があるので、患者の全身医用画像を扱う全身用シンクライアントサーバ4を医用画像処理システム800に備えてもよい。この場合の概念図を図7に示す。全身用シンクライアントサーバ4は、それぞれ部位専用シンクライアントサーバ2(図7では頭部専用シンクライアントサーバ21、腹部専用シンクライアントサーバ22、脚部専用シンクライアントサーバ23)と直接接続される。全身用シンクライアントサーバ4は、複数の部位専用シンクライアントサーバ2とクライアントサーバクラスタを形成する。また全身用シンクライアントサーバ4は、シンクライアント43a、43b…と通信可能に接続し、シンクライアント43a、43b…を動作させるアプリケーションやデータを格納する。
【0052】
全身用シンクライアントサーバ4を備えた場合の、画像診断装置1から部位専用シンクライアントサーバ2に対応する医用画像をそれぞれ送信する動作は、実施例1または2と同様である。
部位専用シンクライアントサーバ2では、画像処理部211が医用画像の画像処理を行い、データ中継部213が、対応する部位の医用画像を全身用シンクライアントサーバ4に送信する。このときデータ中継部213は、全身用シンクライアントサーバ4に付帯情報(患者ID、検査ID、シリーズID、および分割位置の情報)も送信するため、全身用シンクライアントサーバ4上で、付帯情報に基づいて同じ患者の同じ検査、同じシリーズにおける医用画像を集め全身の医用画像を生成することができる。全身用シンクライアントサーバ4は、生成した全身の医用画像に関する各種画像処理を行い、全身用シンクライアントサーバ4に接続されるシンクライアント43a、43b…に中継送信する。
【0053】
ここで、付帯情報の例を図8に示す。図8では患者を3分割した場合であり、分割位置の情報は、「1/3」が頭部、「2/3」が腹部、「3/3」が脚部を示している。この分割位置の情報により、全身用シンクライアントサーバ4は、特定の患者における、同じ検査ID、同じシリーズIDにおいて、その患者の全身医用画像が揃ったかをチェックすることができる。そして、その患者の全身医用画像におけるシンクライアントサーバとして機能することができる。
【0054】
これにより、全身用シンクライアントサーバ4で患者の全身の医用画像を画像処理することができる。また、特定の患者における、同じ検査IDおよび同じシリーズIDにおける各部位の医用画像が、全身分あるかチェックすることができる。
【0055】
<実施例4>
また、画像サーバ5を部位専用シンクライアントサーバ2と直接接続し、特定の患者における各部位の医用画像を、部位専用シンクライアントサーバ2から送信して画像サーバ5に格納してもよい。この場合の概念図を図9に示す。
【0056】
画像サーバ5は、医用画像を長期保存するためのサーバである。一般に画像診断装置1や部位専用シンクライアントサーバ2が保持している画像は格納期間が短期に設定されており、ある一定期間を過ぎると削除されるため、データを長期的に保存する画像サーバ5に医用画像データを保管しておく。実施例1〜3では、画像診断装置1から画像サーバ5に患者の全身医用画像が送信されていたが、本実施例では部位専用シンクライアントサーバ2それぞれから、画像サーバ5に各部位の医用画像を送信して全身医用画像を生成し格納する。
【0057】
画像サーバ5は、部位専用シンクライアントサーバ2(21、22、23)のデータ中継部213から中継送信された、患者の各部位の医用画像を受信する。このとき、図8に示す付帯情報(患者ID、検査ID、シリーズID、および分割位置の情報)も医用画像に添付されて受信する。画像サーバ5は、受信した医用画像の付帯情報より、特定の患者における、同じ検査ID、同じシリーズIDにおいて、その患者の全身医用画像が揃ったかをチェックすることができる。そして、その患者の全身医用画像におけるファイルサーバとして機能することができる。
なお、部位専用シンクライアントサーバ2から画像サーバ5に送信した医用画像データは、部位画像データベース209から削除されてもよい。
【0058】
これにより、画像診断装置1は部位専用シンクライアントサーバ2と画像サーバ5に対して重複して画像データを送信する必要がなくなり、患者を対象とした操作に集中しやすくなる。
【0059】
以上説明した実施例によれば、患者の医用画像を部位別に分割して、各部位専用のクライアントサーバに送信するにあたり、読影を待機しているジョブ数の少ない順で送信することにより、無駄な医用画像の送信がなく、より早く読影を行うことができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…画像診断装置、2(21、22、23)…部位専用シンクライアントサーバ、3(31a〜31c、32a〜32b、33a)…シンクライアント、4…全身用シンクライアントサーバ、5…画像サーバ、10…制御部、12…表示部、13…操作部、14…撮像部、15…通信部、16…記憶部、17…情報記憶媒体、18…患者情報データベース、19…画像データベース、101…データ収集部、102…再構成部、103…画像分割部、104…読影ジョブ待機数取得部、105…スケジューリング部、106…画像選択部、800…医用画像処理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像診断装置と、複数のクライアントサーバとがネットワークで接続される医用画像処理システムにおいて、
前記画像診断装置は、
被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、
前記被検体の医用画像データを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集した医用画像データを再構成する再構成部と、
前記再構成部で再構成した前記医用画像データを、前記分割位置設定部で設定した位置に基づき前記複数の部位毎の医用画像データに画像分割する画像分割部と、
前記画像分割部で分割した前記複数の部位毎の医用画像データを格納する画像データベースと、
前記画像データベースに格納した複数の医用画像データより、所定の部位の医用画像データを選択する画像選択部と、
前記画像選択部で選択した前記所定の部位の医用画像データを、前記所定の部位に該当する所定のクライアントサーバにそれぞれ送信する第1の通信部と、を有し、
前記クライアントサーバは、
前記画像診断装置の第1の通信部から送信された、前記所定の部位の医用画像データを受信する第2の通信部と、
前記第2の通信部で受信した前記所定の部位の医用画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理部で画像処理した、前記所定の部位の医用画像データを格納する部位画像記憶部と、を有する
ことを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項2】
前記クライアントサーバは、
医用画像の読影ジョブを待機するデータ値を算出する読影ジョブ待機数算出部を有し、
前記画像診断装置は、
前記クライアントサーバの読影ジョブ待機数算出部で算出した、読影ジョブを待機するデータ値を取得する読影ジョブ待機数取得部と、
前記読影ジョブ待機数取得部で取得した、各クライアントサーバにおける医用画像の読影ジョブを待機するデータ値に基づいて、クライアントサーバへのデータ送信順を決定するスケジューリング部と、を有し、
前記画像選択部は、前記スケジューリング部で決定したクライアントサーバへのデータ送信順に、前記各クライアントサーバに対応する部位の医用画像データを、画像データベースから選択し、
前記第1の通信部は、前記画像選択部で選択した部位の医用画像データを、前記スケジューリング部で決定したデータ送信順に、対応するクライアントサーバへ送信する、
ことを特徴とする請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記画像診断装置の前記スケジューリング部は、前記読影ジョブ待機数取得部で取得した、読影ジョブを待機するデータの値が小さいクライアントサーバから、データ送信順を決定する、
ことを特徴とする請求項2記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記画像診断装置の前記分割位置設定部は、少なくとも前記被検体の身体的特徴、または前記被検体を載置する寝台にあらかじめ書かれたマーカーのいずれかに基づいて、撮影した前記被検体の画像分割位置を設定する、
ことを特徴とする請求項1記載の医用画像処理システム。
【請求項5】
画像診断装置と、複数のクライアントサーバとがネットワークで接続される医用画像処理システムにおいて、
前記クライアントサーバは、
所定の部位の医用画像データを受信する第2の通信部と、
前記第2の通信部で受信した前記所定の部位の医用画像データを画像処理する画像処理部と、
前記画像処理部で画像処理した前記所定の部位の医用画像データのうち、読影ジョブを待機するデータ値を算出する読影ジョブ待機数算出部と、
を有し、
前記画像診断装置は、
被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、
前記クライアントサーバの読影ジョブ待機数算出部で算出した、読影ジョブを待機するデータの値を取得する読影ジョブ待機数取得部と、
前記読影ジョブ待機数取得部で取得した、各クライアントサーバにおける医用画像の読影ジョブを待機するデータの値に基づいて、各クライアントサーバに対応する部位の医用画像データを再構成する順番を決定するスケジューリング部と、
前記被検体の医用画像データを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集した医用画像データを、前記分割位置設定部で設定した位置に基づき前記複数の部位毎の医用画像データに画像分割する画像分割部と、
前記スケジューリング部で決定した、部位の医用画像データを再構成する順番に基づき、前記画像分割部で画像分割した前記複数の部位の医用画像データを順に再構成する再構成部と、
前記再構成部で再構成した前記複数の部位別の医用画像データを、対応するクライアントサーバへ順に送信する第1の通信部と、を有する
ことを特徴とする医用画像処理システム。
【請求項6】
前記複数のクライアントサーバから各部位の医用画像を受信し、受信した医用画像の付帯情報に基づいて所定の被検体における同じ検査かつ同じシリーズの医用画像を集めて前記所定の被検体の医用画像を生成し、前記被検体の医用画像における画像処理を行うためのクライアントサーバをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【請求項7】
前記複数のクライアントサーバから各部位の医用画像を受信し、受信した医用画像の付帯情報に基づいて所定の被検体における同じ検査かつ同じシリーズの医用画像を集めて前記所定の被検体の医用画像のファイルサーバとして機能する画像サーバをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【請求項8】
複数のクライアントサーバとネットワークで接続される医用画像処理システムの画像診断装置において、
被検体を複数の部位に分割する位置を設定する分割位置設定部と、
前記被検体の医用画像データを収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集した医用画像データを再構成する再構成部と、
前記再構成部で再構成した前記被検体の医用画像を、前記分割位置設定部で設定した位置に基づき前記複数の部位別の医用画像データに画像分割する画像分割部と、
前記画像分割部で分割した前記複数の部位毎の医用画像データを格納する画像データベースと、
前記画像データベースに格納した複数の医用画像データより、所定の部位の医用画像データを選択する画像選択部と、
前記画像選択部で選択した前記所定の部位の医用画像データを、部位に該当する所定のクライアントサーバにそれぞれ送信する第1の通信部と、
を有することを特徴とする画像診断装置。
【請求項9】
前記クライアントサーバで算出した、医用画像の読影ジョブを待機するデータ値を取得する読影ジョブ待機数取得部と、
前記読影ジョブ待機数取得部で取得した、各クライアントサーバにおける医用画像の読影ジョブを待機するデータ値に基づいて、クライアントサーバへのデータ送信順を決定するスケジューリング部と、を有し、
前記画像選択部は、前記スケジューリング部で決定したクライアントサーバへのデータ送信順に、前記各クライアントサーバに対応する部位の医用画像データを、画像データベースから選択し、
前記第1の通信部は、前記画像選択部で選択した部位の医用画像データを、前記スケジューリング部で決定したデータ送信順に、対応するクライアントサーバへ送信する、
ことを特徴とする請求項8記載の画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37453(P2013−37453A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171479(P2011−171479)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】