説明

医用画像処理装置、シェーマの作成方法及びプログラム

【課題】患者の個体差に対応したシェーマを提供する。
【解決手段】医用画像処理装置は、被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体のシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段と、医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し(ステップS2)、特徴点を設定する(ステップS3)制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する(ステップS6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置、シェーマの作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が作成する画像診断のレポートには、シェーマと呼ばれる被写体の概略図が用いられるのが一般的である。シェーマにより、レポートの読者に対し、より理解しやすい形で読影結果を伝達することができる。
近年では、診断レポートのみならず、インフォームドコンセント等における患者への説明にもシェーマが使用されている。
【0003】
レポートを手書きする際には、患者に拘わらず1つの標準的なシェーマが利用されるが、患者によって体格差や臓器のサイズ、形状の違い等、個体差があり、1つのシェーマのみでは個体差を反映することができなかった。そこで、被写体の個体差に対応できるように、コンピュータにより様々なシェーマを作成する方法が提案されている。
【0004】
シェーマを自動作成する方法の1つのとして、血管のシェーマを作成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。これは、複数のポイントが設定された標準的なシェーマのテンプレートを準備し、医師によるポイントの操作に従ってテンプレートを変形してシェーマを作成する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−7387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、患者の体格や臓器の形状等に一致するまで医師がポイント操作を行わなければならない。所望のシェーマに仕上げるまで調整操作することは難しく、煩雑でもある。
【0007】
本発明の課題は、患者の個体差に対応したシェーマを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、
被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体を表すシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段と、
医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、特徴点を設定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する医用画像処理装置が提供される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、
前記テンプレートは、特徴点をパラメータとして被写体の画像が描画されるベクター画像であり、
前記制御手段は、前記医用画像と前記テンプレートの特徴点が対応するように、前記テンプレートのパラメータを変更し、変更されたパラメータにより被写体の画像を改めて描画してテンプレートを修正する請求項1に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、
前記テンプレートは、被写体の構成部分毎の部分画像に特徴点が設定され、
前記制御手段は、前記医用画像から被写体の構成部分を抽出し、当該構成部分毎に特徴点を設定し、
前記構成部分毎に医用画像とテンプレートの特徴点が対応するように、前記部分画像を修正し、修正された部分画像を、各部分画像に設定された特徴点を元に合成してシェーマを作成する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置が提供される。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、被写体の特徴を示す特徴点を設定する工程と、
前記制御手段が、被写体を表すシェーマのテンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法が提供される。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、
コンピュータを、
被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体のシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段、
医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、特徴点を設定し、前記テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、患者の個体差に対応したシェーマを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態における医用画像処理装置の機能的構成を示す図である。
【図2】乳房のシェーマのテンプレート例である。
【図3】医用画像処理装置により実行されるシェーマの作成処理を示すフローチャートである。
【図4】乳房の医用画像の一例を示す図である。
【図5】胸筋ラインの探索開始点を決定するために設定される探索ラインを示す図である。
【図6】胸筋ラインを決定するために設定される探索ラインを示す図である。
【図7】スキンライン上の画素について求められた2次微分値を示す図である。
【図8】(a)乳房の医用画像である。(b)(a)の医用画像に設定された特徴点を示す図である。
【図9】(a)乳房のシェーマのテンプレートである。(b)(a)のテンプレートを修正して作成されたシェーマである。
【図10】乳房の構成部分毎の画像を合成して作成されるシェーマ例を示す。
【図11】(a)肺野のシェーマのテンプレート例である。(b)特徴点が設定された肺野の医用画像である。
【図12】様々な肺野の医用画像と、各医用画像に対応して作成されたシェーマの例を示す。
【図13】様々な表示形態のシェーマのテンプレートと、当該テンプレートが修正されて作成されたシェーマの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における医用画像処理装置1の機能的構成を示す。
図1に示す医用画像処理装置1は、例えばPACS(Picture Archiving and Communication System)に組み込まれ、読影医が読影用に医用画像を表示させ、レポートを作成するために用いられる。
図1に示すように、医用画像処理装置1は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15を備えて構成されている。
【0017】
制御部11は、記憶部15に記憶されているプログラムとの協働により、各種演算を行い、医用画像処理装置1の各部の動作を集中制御して、各種処理を実行する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成されている。
【0018】
例えば、後述するシェーマ作成処理において、制御部11は、医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、被写体の特徴を示す特徴点を設定する制御手段である。制御部11は、被写体を表すシェーマのテンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する。
【0019】
操作部12はキーボードやマウスを備え、これらの操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部13はディスプレイを備え、制御部11の表示制御に従って各種操作画面や医用画像を表示する。例えば、表示部13はビューア画面を表示し、ビューア画面上に読影対象の医用画像を表示する。また、表示部13はレポート作成画面を表示し、レポート作成画面上にシェーマを表示する。
【0020】
通信部14は、通信用のインターフェイスを備え、ネットワーク上の外部装置と通信を行う。例えば、通信部14は医用画像を配信するサーバから読影対象の医用画像を受信する。
【0021】
記憶部15は、制御部11により実行されるプログラム、等がプログラムの実行に用いられるファイルやデータを記憶している。記憶部15としては、ハードディスクを用いることができる。
【0022】
記憶部15は、被写体を表すシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段である。被写体とは患者の撮影部位をいう。テンプレートには、被写体の特徴を示す特徴点が複数設定されている。テンプレートのデータ形式はラスター画像、ベクター画像の何れでもよい。ベクター画像である場合、テンプレートに設定された特徴点を描画パラメータとして被写体の画像を描画することができ、テンプレートの修正が容易である。
【0023】
図2は、テンプレートの一例として、斜位方向の左右の乳房を表すシェーマのテンプレートを示している。乳房は左右の比較読影が行われることが一般的であるため、シェーマも左右の乳房が描画される。テンプレートには、乳房の胸壁〜乳頭の方向をX軸、X軸と垂直な方向をY軸とする位置座標系が設定され、各画素の位置はX、Yの座標値によって示す。
【0024】
図2に示すように、テンプレートには、乳房のスキンラインSL、乳頭NL、胸筋ラインPLといった、乳房の各構成部分が描画されている。スキンラインSLは乳房の輪郭であり、胸筋ラインPLは胸筋の輪郭、つまり乳房と胸筋の境界線である。左右の乳房の画像は胸壁が一致するように配置されている。
【0025】
テンプレートには、図2に示すように乳房の特徴点P1〜P6が設定されている。特徴点P1は乳房の上端の位置に、特徴点P2は乳房の下端の位置に設定される。乳房の上端、下端はスキンラインSlが凹形状となる箇所をいう。また、特徴点P1はスキンラインMlと胸筋ラインPLの交点に位置する。特徴点P3は乳頭の位置に設定される。特徴点P5は胸筋の上端の位置に、特徴点P6は胸筋の下端の位置に設定される。なお、図2においては説明の便宜上、左乳房のみ特徴点P1〜P6を示しているが、右乳房にも同様に特徴点P1〜P6は設定されている。
【0026】
次に、上記医用画像処理装置1の動作について説明する。
図3は、医用画像処理装置1により実行されるシェーマ作成処理を示すフローチャートである。
シェーマ作成処理では、図3に示すように、読影対象の医用画像が医用画像処理装置1に入力されると(ステップS1)、制御部11は医用画像に含まれる被写体の認識処理を実行する(ステップS2)。ここでは、乳房を被写体とする乳房の医用画像が入力され、認識処理により乳房のスキンライン、胸筋ライン、乳頭の各構成部分を認識する例を説明する。
【0027】
(1)スキンラインの認識処理
制御部11は乳房の医用画像にエッジ強調処理を施し、エッジが強調された乳房の医用画像を用いてスキンラインSLを認識する。エッジ強調処理は、例えばPrewittフィルタやSobelフィルタを用いたフィルタ処理である。
図4は、乳房の医用画像の一例を示している。図4において、胸壁〜乳頭の方向をX軸、X軸と垂直な方向をY軸に設定し、乳房の医用画像の各画素の位置を座標(X,Y)により示す。また、座標(X,Y)の位置にある画素の画素値をV(X,Y)により示す。X軸方向の画像端をXmax、Y軸方向の画像端をYmaxにより示す。
【0028】
制御部11は、図4に示す乳房の医用画像の各X座標(0〜Xmax)においてY軸方向に各画素を走査し、その画素値V(X,Y)が最大となる画素の座標S(X,Y)を抽出する。抽出された座標S(X,Y)は、図4に示すように、被写体である乳房の領域Saと、被写体を透過せずにX線が直接照射された乳房外領域Sbとの境界点である。制御部11は、各座標S(X,Y)を結ぶ線をスキンラインSLとして認識する。
【0029】
(2)胸筋ラインの認識処理
制御部11は、乳房の医用画像において胸筋ラインの探索開始点を決定する。
図5に示すように、制御部11はV(0,Y)が最大となる座標S(0,Y)(X座標が0の画像端とスキンラインSLとの交点)より数画素下の座標Aの画素を基準点に設定する。制御部11は基準点を中心として、X軸に対し角度0°〜−30°の範囲内で1°毎に探索ラインla0〜la30を設定する。探索ラインla0〜la30の長さは、乳房の医用画像のX軸方向の幅の1/5である。制御部11は、探索ラインla0〜la30毎に、探索ラインla0〜la30上にある画素の画素値の平均値を算出する。
【0030】
制御部11は座標Aから始めてY軸方向に基準点を1画素ずつずらしながら、上記の平均値を算出する処理を繰り返し行う。制御部11は各基準点において算出された平均値が最大となる探索ラインの基準点を、胸筋ラインの探索開始点Bとして決定する。
なお、胸筋ラインの探索開始点Bが画像下端(Y=Ymaxの画像端)に近い場合、例えば下端から10画素以内の位置にある場合、制御部11は乳房の医用画像に胸筋の領域が無いと判断する。また、各基準点において算出された平均値が予め定められた閾値、例えば300より小さい場合も、制御部11は胸筋の領域が無いと判断する。胸筋の領域が無いと判断された場合はエラーが発生したとして、本処理を終了する。
【0031】
探索開始点Bが決定されると、制御部11は胸筋ラインの探索を行う。
図6は図5に示す乳房の医用画像の胸筋付近を拡大した図である。図6に示すように、制御部11は胸筋ラインの探索開始点Bを起点として、X軸に対し角度±9°の範囲内で1°毎に探索ラインlb0〜lb18を設定する。探索ラインla0〜la18の長さは乳房の医用画像のX軸方向の幅である1/5である。制御部11は探索ラインlb0〜lb18毎に、探索ラインlb0〜lb18上の画素値の平均値を算出し、平均値が最大となる探索ラインlbn(n=0、…、18)を胸筋ラインとして決定する。
【0032】
次いで、制御部11は決定された胸筋ライン上で、探索開始点Bから乳房の医用画像のX軸方向の幅の1/10だけ移動した地点を新たに探索点として、上記と同様の処理により胸筋ラインを決定する。このように、胸筋ラインを決定する毎に前回探索点とした地点から新たに探索点を設定し、胸筋ラインを決定するという処理が、画像端に到達するまで繰り返される。図6に示すように、最終的にそれぞれの探索点で決定された胸筋ラインを結んだ線を胸筋ラインPLとして制御部11は認識する。
【0033】
(3)乳頭の認識処理
制御部11は、スキンラインSL上の画素の画素値に対し2次微分の値を算出する。図7に示すように、2次微分値は乳頭以外では略一定の値となるが、乳頭の領域の境界点において急激に変化する。制御部11は2次微分値の変曲点Q1、Q2を結ぶ直線と、スキンラインSLとで囲まれる領域を乳頭の領域Scとして認識する。
【0034】
このように、乳房の各構成部分が認識されると、制御部11は認識された乳房に特徴点を設定する(ステップS3)。
図8(a)、図8(b)は特徴点の設定例を示している。
図8(a)に示す乳房の医用画像に対し乳房の認識処理が行われた結果、図8(b)に示すようにスキンラインSL、胸筋ラインPL、乳頭NLが認識された場合、制御部11はスキンラインSL上で凹形状となる部分をスキンラインの上端、下端として検出し、当該上端、下端の位置に特徴点P1s、P2sを設定する。また、図8(b)に示すように、制御部11は胸筋ラインPLと画像端との交点を胸筋ラインの上端、下端として検出し、当該上端、下端の位置に特徴点P5s、P6sを設定する。また、乳頭の領域Scの変曲点Q1、Q2(図7参照)の中点の位置に特徴点P3sを設定する。
【0035】
次に、制御部11は乳房のシェーマのテンプレートを記憶部15から取得する。当該テンプレートは、上述したようにベクター画像であれば乳房のスキンラインSL、胸筋ラインPL、乳頭NLを描画する際の描画パラメータとして各特徴点P1〜P6の位置が用いられている。テンプレートがベクター画像である場合(ステップS4;ベクター画像)、制御部11は乳房の医用画像とテンプレートにそれぞれ設定されている特徴点が対応するように、テンプレートの乳房の描画パラメータを変更する(ステップS5)。制御部11は変更された描画パラメータによりテンプレートの乳房の画像、すなわちスキンラインSLや胸筋ラインPL、乳頭NLを改めて描画してテンプレートを修正し、シェーマを作成する(ステップS6)。
【0036】
図9(a)、図9(b)は乳房のシェーマのテンプレートの修正例を示している。図9(a)は修正前のテンプレートであり、図9(b)は修正後のテンプレートである。
図9(a)に示すように、修正前のテンプレートには各特徴点P1〜P6が設定されている。図9(a)に示すテンプレートにおいて、スキンラインSLは特徴点P1、P2、P3をスプライン補間する補間式によって描画される。また、胸筋ラインPLは特徴点P5、P6を結ぶ直線の一次式により描画される。乳頭NLは特徴点P3を中心とする円弧を示す式によって描画される。すなわち、各特徴点P1〜P6の位置座標が、スキンラインSL、胸筋ラインPL、乳頭NLを描画する際に用いられる演算式のパラメータとして用いられている。
【0037】
制御部11は、特徴点P1〜P6の位置座標を、それぞれ特徴点P1s〜P6sの位置座標に変更し、特徴点P1〜P6が図8(b)に示す各特徴点P1s〜P6sと対応させる。変更後の各特徴点P1〜P6の位置座標に基づいて、スキンラインSL、胸筋ラインPL、乳頭NLを制御部11が改めて描画すると、図9(b)に示すシェーマが得られる。図9(b)に示すように、作成されたシェーマは、図8(b)に示す乳房の医用画像に含まれる乳房と形状や大きさが略同一である。
図9(b)は左乳房を表すシェーマだが、制御部11は右乳房についても同様の処理を行って右乳房を表すシェーマを作成し、胸壁を合わせるように左右乳房のシェーマを合成する。
【0038】
一方、テンプレートがラスター画像である場合(ステップS4;ラスター画像)、制御部11は乳房の医用画像の特徴点P1〜P6と、テンプレートの特徴点P1s〜P6sが対応するように、テンプレートの画像変換式を決定する(ステップS7)。制御部11は決定された画像変換式に従ってテンプレートを画像変換してテンプレートを修正し、シェーマを作成する(ステップS8)。画像変換としては、例えばアフィン変換が挙げられる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、記憶部15が被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体のシェーマのテンプレートを記憶する。制御部11は、医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、特徴点を設定する。制御部11は、テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する。
これにより、医用画像に含まれる被写体と特徴が略一致のシェーマを作成することができ、被写体の個体差に対応したシェーマを作成することができる。医用画像に拡大縮小等の画像処理が施された場合でも、画像処理後の被写体に対応したシェーマを容易に作成できる。
【0040】
テンプレートが、特徴点をパラメータとして被写体の画像が描画されるベクター画像である場合、制御部11は、前記医用画像と前記テンプレートの特徴点が対応するように、テンプレートのパラメータを変更し、変更されたパラメータにより被写体の画像を改めて描画してテンプレートを修正する。ベクター画像の場合、特徴点を描画のパラメータとしておくことで、乳房の描画が容易となり、ひいてはテンプレートの修正が容易となる。
【0041】
なお、上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、作成したシェーマに、被写体をいくつかの領域に分類したときの領域の境界線や記号等の補助図形を描画することとしてもよい。
【0042】
また、テンプレートにおける被写体の画像は、被写体の構成部分毎に修正できるように設計し、それぞれ修正した構成部分を最終的に合成することで被写体のシェーマを作成することとしてもよい。これにより、部分的な変形が可能になり、変形方法の選択がより柔軟となる。
図10は、乳房の構成部分毎の画像を合成して作成されるシェーマ例を示している。
図10に示すように、テンプレートには胸筋の画像t1、胸筋を除く乳房の画像t2、乳頭の画像t3が含まれ、各画像t1〜t3には特徴点P1〜P6が設定されている。制御部11は乳房の医用画像に設定された特徴点P1s〜P6sと、各画像t1〜t3の特徴点P1〜P6が対応するように、各画像t1〜t3を修正する。
【0043】
制御部11は修正された各画像t1〜t3を、各特徴点P1〜P6の位置が一致するように合成し、画像Tを得る。例えば、画像t1と画像t2であれば、特徴点P1と特徴点P6が一致するように合成すればよい。右の乳房の医用画像についても同様の処理を行い、左右の乳房の医用画像から得られた画像Tを胸壁が一致するように合成することにより、シェーマを作成することができる。
【0044】
また、乳房のシェーマを作成する例を示したが、他の被写体のシェーマを作成することも可能である。
例えば、肺野のシェーマを作成する場合、図11(a)に示すように、肺野の領域を含む矩形の4つの頂点を特徴点P11〜P14とするテンプレートを用いればよい。矩形の上辺は、左右の肺野の上端のうちY座標値が小さい方を通るX軸に平行な線であり、矩形の下辺は左右の肺野の下端のうちY座標値が小さい方を通るX軸に平行な線である。矩形の左右の辺はそれぞれ左右の肺野の下端を通るY軸に平行な線である。
【0045】
図11(b)に示す肺野の医用画像が入力されると、制御部11は当該医用画像から肺野領域を認識する。肺野領域の認識方法は公知の方法を用いればよい。例えば、X軸方向における画素値のヒストグラムを算出し、ヒストグラムにおいて変曲点を特定する。肺野の医用画像では3つの変曲点が得られるので、各変曲点における濃度値のうちの最小値から5を引いた値を閾値に設定し、ヒストグラムにおいて閾値以下の濃度値を有する画素を肺野領域として求める。求めた左右の肺野領域において、制御部11はY座標値が最小となる上端と、Y座標値が最大となる下端をそれぞれ求め、当該上端及び下端から上記矩形を決定する。制御部11は、図11(b)に示すように矩形の4つの頂点を特徴点P11s〜P14sに設定する。
【0046】
次に、制御部11は、図11(a)に示すテンプレートの特徴点P11〜P14と、図11(b)に示す胸部の医用画像の特徴点P11s〜P14sとが対応するように、図11(a)に示すテンプレートを修正する。この方法により、図12に示すように、医用画像g1からはシェーマc1が、医用画像g2からはシェーマc2が、医用画像g3からはシェーマc3をそれぞれ作成でき、様々な肺野に対応したシェーマを作成することができる。
なお、肺野だけでなく、首、肩、胴にも特徴点を設定し、図12のシェーマc1〜c3に示すように、首、肩、胴の輪郭を、医用画像に含まれる首、肩、胴の輪郭に対応するようテンプレートを修正してシェーマを作成することとしてもよい。
【0047】
シェーマのテンプレートは、図2や図11(a)に示すように被写体の構成部分を描画した簡素な表示形態のシェーマのテンプレートに限らず、様々な表示形態のシェーマのテンプレートを用いることができる。例えば、図13に示すテンプレートt4のように肺野に骨部も加えた表示形態や、テンプレートt5のように胸部の外表を示す表示形態がある。また、テンプレートt6のように胸部だけでなく、全身を示す表示形態でもよい。何れの表示形態であっても、図13に示すテンプレートt4〜t6のように、肺野を含む矩形の頂点を特徴点に設定し、医用画像の特徴点と対応するようにテンプレートt4〜t6を修正することにより、医用画像に含まれる肺野に近い肺野を示すシェーマc4〜c6を作成することができる。
【0048】
また、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0049】
1 医用画像処理装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体を表すシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段と、
医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、特徴点を設定する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記テンプレートは、特徴点をパラメータとして被写体の画像が描画されるベクター画像であり、
前記制御手段は、前記医用画像と前記テンプレートの特徴点が対応するように、前記テンプレートのパラメータを変更し、変更されたパラメータにより被写体の画像を改めて描画してテンプレートを修正する請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記テンプレートは、被写体の構成部分毎の部分画像に特徴点が設定され、
前記制御手段は、前記医用画像から被写体の構成部分を抽出し、当該構成部分毎に特徴点を設定し、
前記構成部分毎に医用画像とテンプレートの特徴点が対応するように、前記部分画像を修正し、修正された部分画像を、各部分画像に設定された特徴点を元に合成してシェーマを作成する請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
医用画像処理装置によるシェーマの作成方法であって、
制御手段が、医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、被写体の特徴を示す特徴点を設定する工程と、
前記制御手段が、被写体を表すシェーマのテンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する工程と、
を含むシェーマの作成方法。
【請求項5】
コンピュータを、
被写体の特徴を示す特徴点が設定された、被写体のシェーマのテンプレートを記憶する記憶手段、
医用画像を画像解析して、医用画像に含まれる被写体を認識し、特徴点を設定し、前記テンプレートに設定された特徴点と、前記医用画像に設定された特徴点とが対応するように、前記テンプレートを修正し、シェーマを作成する制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−246671(P2010−246671A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97796(P2009−97796)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】