説明

医用画像処理装置及び医用画像処理プログラム

【課題】対応する投影データをもたない原画像であっても、コストを嵩ませずに、高い精度で補正を行うことが可能な医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】実施形態の医用画像処理装置は、画像変換手段、補正手段、再構成手段、及び出力手段を有する。画像変換手段は、画像を、回転位置に対応する投影データに変換する。補正手段は、変換された投影データを補正する。再構成手段は、補正された投影データを再構成することにより、原画像を補正した補正画像を作成する。出力手段は、補正画像を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像は、例えば医用診断装置により取得され、病院内の画像統合サーバに記憶され、病院内に構築されたローカルエリアネットワーク(LAN)を通して送信先である例えば読影装置に送信される。
【0003】
例えば、X線CT装置においては、被検体を間にしてX線管とX線検出器とが対向配置され、X線管から被検体にX線を出射することにより投影データが収集される。医用画像は、投影データを再構成することにより取得される。投影データの再構成法として、逐次近似画像構成法が知られている(例えば、特許文献1)。なお、医用画像を原画像または画像データという場合がある。
【0004】
投影データは原画像と関連付けられてサーバに記憶される。しかし、原画像の中には、投影データを記憶させておくにはコストが嵩むことなどの理由から、対応する投影データを記憶させていないものが含まれている。すなわち、原画像は、対応する投影データを持つものと、投影データを持たないものとがある。
【0005】
X線CT装置における従来の画像処理手法として、フィルタリング(平滑化フィルタや鮮鋭化フィルタ)による原画像の補正が知られている。また、CT分野特有のものとして、投影データの補正が存在する。
【0006】
しかし、フィルタリングによる画像データの補正は、投影データを用いない補正であるから、CT画像固有のノイズ分布を考慮しないため、効果が限定的なものになってしまう。
【0007】
投影データの補正を行うためには投影データ自体の存在が不可欠である。なお、投影データの補正を高い精度で行うためには、投影データとX線管及び検出器の位置との関係を参照して行うことが好ましい。
【0008】
対応する投影データを持たない原画像を補正する手法の一例として、原画像を逆フーリエ変換することで投影データに変換し、投影データの補正を行ったのち、フィルタ補正逆投影法(以下、Filtered Back Projection;FBP法という)を用いて画像補正値を算出し、画像処理を行うという方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】2011−2306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、原画像を逆フーリエ変換することで変換された投影データは、X線管及び検出器の位置と関係付けられておらず、投影データの補正を高い精度で行うことができないという問題点があった。
【0011】
さらに、FBP法を用いた画像補正では、その精度が低くなり、ビームハードニングといった限られたアーチファクトにしか適用ができないという問題があった。
【0012】
この発明は、上記の問題を解決するものであり、対応する投影データをもたない原画像であっても、コストを嵩ませずに、高い精度で補正を行うことが可能な医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この実施形態の医用画像処理装置は、X線を出射するX線管と被検体を間にして対向配置され、X線管と共に被検体のまわりを回転するX線検出器により収集された投影データを受け、再構成することにより画像が作成され、画像変換手段、補正手段、再構成手段、及び出力手段とを有する。画像変換手段は、画像を、回転位置に対応する投影データに変換する。補正手段は、変換された投影データを補正する。再構成手段は、補正された投影データを再構成することにより、画像を補正した補正画像を作成する。出力手段は、補正画像を出力する。
また、この実施形態の医用画像処理プログラムは、投影データ変換ステップ、補正ステップ、再構成ステップ、及び画像出力ステップをコンピュータに実行させる。投影データ変換ステップは、画像に関連付けて記憶された前記X線管及び/又はX線検出器の回転位置を参照して、画像を、回転位置に関連付けられた投影データに変換する。補正ステップは、回転位置に関連付けられた投影データを、回転位置の近傍位置に関連付けられた投影データに基づいて補正する。再構成ステップは、補正された投影データを再構成することにより、画像を補正した補正画像を作成する。画像出力ステップは、補正画像を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】X線CT装置の構成を示す図。
【図2】投影データのデータ構造を示す図。
【図3】原画像のデータ構造を示す図。
【図4】医用画像処理装置の機能ブロック図。
【図5】投影データを算出するときの説明図。
【図6】原画像の入力から補正画像の出力までの一連の処理を表すフローチャート。
【図7】逐次近似画像再構成を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
医用画像処理装置の一実施形態について各図を参照して説明する。
【0016】
医用画像処理装置は、X線診断装置により収集された投影データを再構成することにより原画像が作成されるものである。X線診断装置の一例としては、X線コンピュータ断層撮影(CT)装置、及び、X線アンギオグラフィ装置がある。
【0017】
[X線CT装置の基本構成]
X線診断装置を代表して、X線CT装置の基本的な構成について図1を参照して説明する。図1はマルチスライスタイプのX線CT装置の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、X線CT装置は、ガントリ100、非接触データ伝送部105、前処理部106、スリップリング108、高電圧発生部109、システム制御部110、記憶部112、再構成部114、入力部115、及び、表示部116を有している。
【0019】
高電圧発生部109は、管電圧をスリップリング108を介してX線管101に印加し、X線管101にX線を発生させる。X線は、被検体Sに向けて放射される。図1において被検体の断面領域が円で示されている。X線検出器103は、被検体Sを挟んでX線管101に対向する位置に配置され、被検体Sを透過したX線を検出し、検出されたX線に応じた電気信号(電流信号)を発生する。
【0020】
ガントリ100は、側方から示されている。ガントリ100は、X線管101、フレーム102、多列又は2次元アレイタイプのX線検出器103、データ収集システム(DAS)104、回転部107、及び、スリップリング108を有している。
【0021】
X線管101とX線検出器103とは、被検体Sを挟んで対向するように環状のフレーム102に搭載され、回転軸RA回りに回転可能にフレーム102に支持されている。回転部107は、被検体Sが回転軸RAに沿って移動されている間、フレーム102を回転する。例えば、1回転あたりの時間は0.5[sec]であり、1回転あたりk回のX線がX線管101から放射される。X線が最初に放射されてから次々に放射されるときの経過時間を、図2にt0、t1、t2、・・・、t(k−1)で示す。ここで、t0=0[sec]である。回転及びその速度、並びにX線の放射等は、システム制御部110、及び、回転部107により制御される。X線の放射時間とX線管101及び/又はX線検出器103の回転位置は、記憶部112に記憶される。
【0022】
X線検出器103は、m×n行列に配列された複数のX線検出素子を有している。具体的には、X線検出器103は、回転軸RAに沿って複数m個のX線検出素子列を有している。各X線検出素子列は、回転軸RAの直交する弓形の軸に沿って配列された複数n個のX線検出素子を有している。複数mのX線検出素子列の配列軸は、セグメント軸と呼ばれている。各X線検出素子列に含まれる複数nのX線検出素子の配列軸は、チャンネル軸と呼ばれている。
【0023】
DAS104は、X線検出器103により検出された電気信号を処理するためのデータ収集回路であって、複数のX線検出素子からX線検出素子列毎に電気信号を読み出す。すなわち、DAS104は、各チャンネルについて電流信号を電圧信号に変換し、増幅し、デジタル信号に変換する。デジタル信号は、投影生データと呼ばれている。
【0024】
上記の投影生データは、非接触データ伝送部105を介して前処理部106に送信される。前処理部106は、ガントリ100の外部に設けられたコンソール内に搭載される。前処理部106は、投影生データに感度補正等の前補正を施す。
【0025】
記憶部112は、前処理されたデータを記憶する。このデータは、再構成処理の直前段階におけるデータであり、投影データと呼ばれている。記憶部112は、データ/コンソールバスを介して、システム制御部110、再構成部114、入力部115、及び、表示部116に接続されている。なお、投影データは、病院内に構築されたLANを通して画像統合サーバに送信され、記憶されてもよい。
【0026】
図2は投影データのデータ構造を示す図である。図2において、”t0、t1、t2、・・・、t(k−1)”は、X線が放射されたときの経過時間であって(t0=0)、X線管101及び/又はX線検出器103の回転位置を示す。
【0027】
また、”m”はX線検出素子の行番号を示し、”n”はX線検出素子の列番号を示す。さらに、”P”は、X線検出素子に対応する投影データを示す。さらに、”P11、・・・P1n、・・・、Pm1、・・・、Pmn”は、m×nのマトリクスのデータ構造において、1行1列、・・・、1行n列、・・・、m行1列、・・・、m行n列のX線検出素子に対応する投影データとしてのCT値である”P”を示す。
【0028】
再構成部114は、公知の再構成方法を用いて、投影データ”P”に基づいて被検体Sに関する原画像を作成する。再構成部114は、様々なソフトウェアやハードウェア構成機器を含んでいる。画像再構成処理において、再構成部114は投影データに基づいてX線検出素子列毎に(換言すれば、セグメント毎に)原画像を構築する。なお、1回転あたり1〜kの原画像が再構成される。記憶部112は、原画像を記憶する。なお、原画像は、病院内に構築されたLANを通して画像統合サーバに送信され、記憶されてもよい。
【0029】
図3は、原画像のデータ構造を示す図である。図3において、”G1、G2、・・・、Gk”は画像識別番号を示し、”t0、t1、t2、・・・、t(k−1)”は、X線が放射されたときの経過時間であって(t0=0)、X線管101及び/又はX線検出器103の回転位置を示す。すなわち、X線管101及び/又はX線検出器103の回転位置は、原画像に関連付けられて記憶部112または画像統合サーバに記憶される。原画像は、画像CT値(例えば輝度値)をq×rのマトリクス状に配列したデータ構造として記憶される。なお、原画像を”G”として説明する。
【0030】
また、”q”はピクセルの行番号を示し、”r”はピクセルの列番号を示す。さらに、”f11、・・・f1r、・・・、fq1、・・・、fqr”は、q×rのマトリクスのデータ構造において、1行1列、・・・、1行r列、・・・、q行1列、・・・、q行r列のピクセルに対応する画像CT値(例えば、輝度値)を示す。なお、画像CT値を”f”として説明する。
【0031】
[医用画像処理装置の構成]
次に、医用画像処理装置11について図4を参照して説明する。図4は医用画像処理装置11の機能ブロック図である。
【0032】
なお、説明をわかり易くするために、X線検出素子の行番号mとピクセルの行番号qとが対応し、また、X線検出素子の列番号nとピクセルの列番号rとが対応しているものとして、説明する。
【0033】
図4に示すように、医用画像処理装置11は、送信元であるX線CT装置の記憶部112または画像統合サーバから原画像GがLANを通して送信される。
【0034】
以下に、原画像Gを画像処理するものとして医用画像処理装置11を説明するが、ここでの原画像Gは、対応する投影データPを持たないものとして説明する。
【0035】
図4に示すように、医用画像処理装置11は、画像変換手段12、補正手段13、再構成手段14、画像混合手段15、出力手段16、及び、ディスプレイ17を有する。
【0036】
(画像変換手段)
次に、画像変換手段12について図4及び図5を参照して説明する。図5は投影データを算出するときの説明図である。なお、再構成処理を可能にするためには、複数方向からの投影データがあればよいが、ここでは、原画像Gを作成したときの回転位置と同じ回転位置に関連付けられた投影データを算出するものとする。
【0037】
画像変換手段12は、原画像Gに関連付けて記憶されたX線管101及び/又はX線検出器103の回転位置tを参照して、原画像Gを、回転位置tに関連付けられた投影データPに変換する。
【0038】
原画像Gの投影データPへの変換方法を説明する。
X線検出器103で検出したX線の強度と、X線パス上の被検体の吸収係数の関係から、原画像Gの画像CT値f(q,r)と、投影データP(m,n)との関係を、次の式(1)で表わすことができる。
【0039】
P(m,n)=Ref*exp{−∫f(q,r)dS*K} (1)
【0040】
”Ref”は、原画像に付帯する撮影条件から算出される、X線管101から放射されたX線の強度である。また、”K”は、再構成条件を考慮したスケーリング係数である。さらに、”∫f(q,r)dS”は、m行n列のX線検出素子に入射されるX線パス上のCT値の積分値である。m行n列のX線検出素子、及び、CTの積分値を、図5に”m,n”、及び、ハッチング領域で示す。
【0041】
X線の強度Ref及び画像CT値f(q,r)は、記憶部112又は画像統合サーバから医用画像処理装置11に送信される。
【0042】
画像変換手段12は、X線の強度Ref、画像CT値f(q,r)、及び、スケーリング係数Kを、式(1)に代入することで、投影データP(m,n)を算出する。
【0043】
このような算出を、回転位置t毎に行うことにより、回転位置tに関連付けられた投影データP(m,n)を求めることができる。
【0044】
(補正手段)
次に、補正手段13について説明する。補正手段13は、回転位置tに関連付けられた投影データPが、回転位置tに対して近傍の回転位置に対応付けられた投影データPに対して所定範囲外の値であるとき(例えば、極端に落ち込んでいるとき)、その投影データPを補正する。なお、補正された投影データを図4にP’で示す。
【0045】
”th”を回転位置、”ti”を近傍の回転位置、”j”をずれ量とすると、tiは、次の式(2)で表すことができる。
【0046】
t(h−j)≦ti≦t(h+j) (2)
ただし、ti≠th
【0047】
例えば、j=2とすると、近傍の回転位置tiは、”t(h−2)、t(h−1)、t(h+1)、t(h+2)”となる。
【0048】
なお、補正手段13の例としては、投影データPにローパスフィルタリングを行うことによってスムージングされた投影データP’を作成する公知の技術(例えば、特開2009−011810号公報段落[0032]、[0067]等に記載の技術)を用いればよい。
【0049】
これに限らず、次のように投影データPを補正してもよい。補正手段13の他の例としては、投影データのゲイン成分を補正し、さらに、補正され投影データの欠陥点を補正する公知の技術(例えば、特開2007−089922号公報段落[0045]〜[0050]等に記載の技術)、または、投影データのオーバーフロー状態を補正する公知の技術(例えば、特開2006−026410号公報段落[0018]〜[0063]等に記載の技術)を用いればよい。
【0050】
(再構成手段)
次に、再構成手段14について説明する。再構成手段14は、補正された投影データP’を再構成することにより、原画像Gの画像CT値fを補正した補正画像G’の画像CT値f’を作成する。なお、補正画像G’の画像CT値を図4に”f’”で示す。
【0051】
なお、再構成法の一例としてFBP法があるが、FBP法で投影データP’を再構成すると、量子化誤差の蓄積により画質が劣化するおそれがある。
【0052】
そこで、再構成手段14は、逐次近似法を用いて投影データPを再構成する。逐次近似法の一例を簡単に説明すると、初期画像を設定し、実際の投影データと初期画像から変換される投影データ(変換データ)を比較し、両方のデータの差が大きいうちは、画像を反復修正することで再構成を行う手法である。逐次近似法の詳細については後述する。
【0053】
(画像混合手段)
次に、画像混合手段15について説明する。画像混合手段15は、再構成手段14により作成された補正画像G’の画像CT値f’及び原画像Gの画像CT値fを加重平均することにより、補正画像G’’の画像CT値f’’を求める。
【0054】
補正画像G’’の画像CT値f’’は、次の式(3)から求められる。なお、補正画像G’’の画像CT値を図4に”f’’”で示す。
【0055】
f’’=(a*f+b*f’)/(a+b) (3)
【0056】
ここで、f、f’、f’’は、原画像G、補正画像G’、補正画像G’’の各画像CT値とする。a、bは、重み付けの値である。原画像G及び補正画像G’の画像CT値f、f’を加重平均することにより求められた補正画像G’’は、補正画像G’に対して、原画像Gの特徴をより残すことが可能となる。
【0057】
(出力手段)
出力手段16は表示制御部を有する。表示制御部は、補正画像G’’を表示データに変換し、ディスプレイ17に表示させる。
【0058】
[動作]
次に、一連の処理について図6を参照して説明する。図6は、原画像Gの入力から補正画像G’’の出力までの一連の処理を表すフローチャートである。
【0059】
〔原画像の入力:S101〕
図6に示すように、送信先である医用画像処理装置11から、送信元である記憶部112または画像統合サーバに対し、原画像Gの送信要求が出されると、記憶部112等から投影データPが医用画像処理装置11に送信される。
【0060】
〔投影データへの変換:S102〕
画像変換手段12は、原画像Gが入力されると、スキャン条件及びキャリブデータを参照し、原画像Gを投影データPに変換する。
【0061】
ここで、スキャン条件とは、例えば、1回転あたりX線がX線管101から放射される回数k、X線検出素子の行列m、nである。また、キャリブデータとは、投影データPに対して、水を”0”、空気を”−1000”としてCT値を割り当て、その間を所定段階(例えば、1000段階)に分割して割り当てるためのものである。
【0062】
〔投影データの補正:S103〕
補正手段13は、投影データPを受けて、回転位置tに関連付けられた投影データPを、回転位置tに対して近傍の回転位置に対応付けられた投影データPに基づいて補正する。なお、補正手段13による補正は、全部のX線検出素子に対応する投影データPついて、回転位置t毎に行われる。補正された投影データP’は、再構成手段14に出力される。
【0063】
〔再構成:S104〕
再構成手段14は、逐次近似法を用いて、投影データP’に基づき補正画像G’の画像CT値f’を再構成する。なお、逐次近似法の詳細については後述する。
【0064】
〔画像の混合:S105〕
画像混合手段15は、原画像Gの画像CT値f及び補正画像G’の画像CT値f’を受けて、画像CT値f’及び画像CT値fを加重平均する。加重平均された補正画像G’’の画像CT値f’’は、出力手段16に出力される。
【0065】
〔補正画像の出力:S106〕
出力手段16は、補正画像G’’をディスプレイ17に表示させる。それにより、対応する投影データをもたない原画像Gであっても、原画像Gの補正を高い精度で行うことが可能となる。また、投影データを記憶させておく必要がないので、コストが嵩まない。
【0066】
〔逐次近似法:S104〕
次に、逐次近似法について図7を参照して説明する。図7は逐次近似画像再構成を示すフローチャートである。
【0067】
(初期画像の入力:S201)
医用画像処理プログラムを実行すると、初期画像が医用画像処理装置11の内部メモリ(図示省略)に展開される。以下の説明で、初期画像に”G0”の符号を付して説明する。
【0068】
(投影データBへの変換:S202)
再構成手段14は、初期画像G0を投影データBに変換する。投影データBへの変換は、原画像Gを投影データPに変換するときと同様の手法(S102参照)が用いられる。
【0069】
(投影データAの入力:S209)
ステップS103で補正された投影データP’を、ここでは投影データAとして説明する。投影データAが再構成手段14に入力される。
【0070】
(投影データA、Bの比較:S203)
次に、再構成手段14は、逐次近似アルゴリズムに基づき、投影データA、Bを比較する。ここで、逐次近似アルゴリズムには、公知の技術、例えば、ML−EM(maximum likelihood expectation maximization)法、OSEM(ordered subset ML−EM)法、RAMLA(row−action maximization−likelihood)法、及び、DRAMA(dynamic RAMLA)法が用いられる。
【0071】
(投影データBの修正:S204)
次に、再構成手段14は、投影データBを修正する。投影データBの修正においても、上記の逐次近似アルゴリズムに基づき行われる。
【0072】
(投影データBを画像に変更:S205)
次に、再構成手段14は、投影データBを画像G0’に変更する。投影データBから画像G0’への変換は、投影データP’を補正画像G’の画像CT値f’に変換するときと同様の手法(S104参照)が用いられる。
【0073】
(画像の更新量を比較:S206)
次に、再構成手段14は、画像G0’と画像G1との差(更新量)を求める。更新量が所定範囲以下であると(S206;Yes)、画像G0’の出力(S207)に移行する。画像G0’と画像G1との差を求める方法は公知の技術が用いられる。公知技術の一例として、両方の画素値の差(変化量)を順番に求めていき、変化量が所定範囲を超えると、一方の画素値を更新する毎に求める特開2007−014542号公報に記載されたものがある。
【0074】
(画像の出力:S207)
出力手段116は、画像G0’をディスプレイ17に表示させる。
【0075】
(画像の更新:S208)
更新量が所定範囲を超えると(S206;No)、再構成手段14は、画像G0’を更新し、更新された画像G0’が再構成手段14により投影データBに変換されるステップS202に戻る。
【0076】
すなわち、画像G0’と画像G1との差(更新量)が所定範囲以下(S206;Yes)になるまで、再構成手段14は、画像G0’を更新する。
【0077】
以上の逐次近似法によれば、画質の劣化を防止し、アーチファクトを除去するという効果を奏する。
【0078】
なお、前記実施形態では、逐次近似法を用いた再構成手段14を示したが、再構成手段14は、これに限らず、複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、また、コーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法であっても良い。
【0079】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
11 医用画像処理装置
12 画像変換手段
13 補正手段
14 再構成手段
15 画像混合手段
16 出力手段
17 ディスプレイ
100 ガントリ
101 X線管
102 フレーム
103 X線検出器
104 データ収集システム
105 非接触データ伝送部
106 前処理部
107 回転部
108 スリップリング
109 高電圧発生部
112 記憶部
114 再構成部
115 入力部
116 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を出射するX線管と被検体を間にして対向配置され、X線管と共に被検体のまわりを回転するX線検出器により収集された投影データを受け、再構成することにより画像が作成される医用画像処理装置において、
前記画像を、前記回転位置に対応する投影データに変換する画像変換手段と、
前記変換された投影データを補正する補正手段と、
前記補正された投影データを再構成することにより、画像を補正した補正画像を作成する再構成手段と、
前記補正画像を出力する出力手段と、
を有する
ことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、回転位置に関連付けられた投影データを、回転位置に対し近傍の回転位置に関連付けられた投影データに基づいて補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記再構成手段は、逐次近似法を用いて前記投影データを再構成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記再構成手段により作成された前記画像及び前記補正画像を加重平均することで、前記出力手段により出力される前記補正画像を求める画像混合手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
X線を出射するX線管と被検体を間にして対向配置され、X線管と共に被検体のまわりを回転するX線検出器により収集された投影データを受け、再構成することにより画像が作成される医用画像処理プログラムにおいて、
画像に関連付けて記憶された前記X線管及び/又はX線検出器の回転位置を参照して、画像を回転位置に関連付けられた投影データに変換する投影データ変換ステップと、
回転位置に関連付けられた投影データを、回転位置の近傍位置に関連付けられた投影データに基づいて補正する補正ステップと、
前記補正された投影データを再構成することにより、画像を補正した補正画像を作成する再構成ステップと、
前記補正画像を出力する画像出力ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。
【請求項6】
前記再構成ステップは、
前記投影データと、記憶された初期画像から変換される投影データである変換データとを比較し、逐次近似法を用いて投影データを前記変換データに修正する比較ステップと、
前記修正された前記変換データを画像に変換する画像変換ステップと、
前記初期画像と前記変換された画像との差異が所定範囲を超えたとき、前記初期画像を前記変換された画像に更新し、前記比較ステップに戻り、前記初期画像と前記変換された画像との差異が所定範囲以下のとき、前記画像出力ステップに移行する移行ステップと、
を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63138(P2013−63138A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202697(P2011−202697)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】