説明

医用画像処理装置及び医用画像処理方法

【課題】X線透過画像とCT画像との位置合わせを的確に行い、両画像において対応する位置関係を容易に把握し得ること。
【解決手段】CT画像及びX線透過画像を入力する通信部14と、入力されたCT画像に基づいて、入力されたX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成し、当該生成した仮想X線画像とX線透過画像との位置合わせを行う制御部11と、を備える医用画像処理装置10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及び医用画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線透過像撮影装置による検査を行った後又は検査と並行して、CT(Computed Tomography)装置による検査を行う場合がある。これは、検査精度の向上を図るためである。
X線透過像撮影装置によって得られた医用画像(以下、「X線透過画像」という)に表示された病変をCT装置によって得られた医用画像(以下、「CT画像」という)で確認する場合、両画像において対応する位置関係を把握する必要がある。
【0003】
ここで、X線透過画像とCT画像との位置関係を把握することは極めて煩雑な作業を要する。CT画像は膨大な枚数のスライス画像から構成されており、膨大な枚数の中からX線透過画像に対応するスライス画像を取捨選択しなければならないためである。
また、胸部検査の場合、X線透過像撮影装置では立位で撮影し、CT装置では臥位で撮影する。この場合、腕の挙げ降ろしの違いによってX線透過画像で表示された病変をCT画像で確認することは困難である。更に、肺野以外の構造(肋骨の石灰化等)はX線透過画像で表示されるが、CT画像では表示されないため、両画像を比較読影することは難しい。
【0004】
従来、同一被写体について3以上の画像のうち、少なくとも1つを固定的に常時表示しておき、他の画像を順次切り替えて比較読影を容易にする技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、2枚の胸部単純X線画像の位置合わせを行う際、1枚の画像の画素を他方の画像で全く同一の解剖学的な構造に対応する画素から差し引いて位置合わせを行う経時差分処理の技術が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−157667号公報
【特許文献2】特開2005−176402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の技術では、X線透過画像とCT画像との位置合わせを正確に行うことはできない。よって、X線透過画像に表示された病変をCT画像で確認することは困難であり煩雑である。
【0006】
本発明の目的は、X線透過画像とCT画像との位置合わせを的確に行い、両画像において対応する位置関係を容易に把握し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、
CT画像及びX線透過画像を取得する取得手段と、
前記取得されたCT画像に基づいて、前記取得されたX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成し、当該生成した仮想X線画像と前記X線透過画像との位置合わせを行う制御手段と、
を備える医用画像処理装置が提供される。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、
前記取得手段は、複数の撮影方向のX線透過画像を取得し、
前記制御手段は、前記取得された複数の撮影方向のX線透過画像に応じて、複数の撮影方向の仮想X線画像を生成する医用画像処理装置が提供される。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明において、
前記制御手段により位置合わせされた後に、前記X線透過画像上において任意の位置を指定するための指定手段と、
前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上において決定する決定手段と、
前記決定した位置を含むCT画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出したCT画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該抽出したCT画像上で識別して表示する表示手段と、
を備える医用画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明において、
前記指定手段は、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記CT画像において任意の位置を指定し、
前記決定手段は、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上に投影し、当該投影した位置に基づいて前記指定された任意の位置を前記X線透過画像上において決定し、
前記表示手段は、前記X線透過画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該X線透過画像上で識別して表示する医用画像処理装置が提供される。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、
取得手段によって、CT画像及びX線透過画像を取得する工程と、
制御手段によって、前記取得されたCT画像に基づいて、前記取得されたX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成し、当該生成した仮想X線画像と前記X線透過画像との位置合わせを行う工程と、
を含む医用画像処理方法が提供される。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明において、
指定手段によって、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記X線透過画像上において任意の位置を指定する工程と、
決定手段によって、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上において決定する工程と、
抽出手段によって、前記決定した位置を含むCT画像を抽出する工程と、
表示手段によって、前記抽出したCT画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該抽出したCT画像上で識別して表示する工程と、
を含む医用画像処理方法が提供される。
【0013】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は6に記載の発明において、
指定手段によって、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記CT画像において任意の位置を指定する工程と、
決定手段によって、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上に投影し、当該投影した位置に基づいて前記指定された任意の位置をX線透過画像上において決定する工程と、
表示手段によって、前記X線透過画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該X線透過画像上で識別して表示する工程と、
を含む医用画像処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CT画像とX線透過画像とを取得し、CT画像から、X線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成することができる。また、生成した仮想X線画像とX線透過画像との位置合わせを行うことができる。よって、両画像において対応する位置関係を容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る医用画像処理装置、及び医用画像処理方法の最適な実施形態の構成及び動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
まず、構成について説明する。
図1に、本実施形態における医用画像処理装置100の内部構成図を示す。
医用画像処理装置100は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15から構成される。
【0017】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、記憶部15に格納されている所定のプログラムをRAMに展開し、当該プログラムとの協働により処理動作を統括的に制御する。
【0018】
操作部12は、数字キー、文字キー、機能キー等を備えたキーボードや、マウス等を備えて構成され、操作されたキーに対応する操作信号を制御部11に出力する。
【0019】
表示部13は、LCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成され、制御部11の表示制御に従って、医用画像や操作画面等の各種表示情報を表示する。なお、表示部13は、操作部12と一体型のタッチパネルを構成する態様としてもよい。
【0020】
通信部14は、ネットワークインターフェイスカードやモデム等の通信用のインターフェイスを備えて構成される。制御部11は、通信部14を介して、X線透過画像やCT画像を取得する。
【0021】
記憶部15は、システムプログラムの他、制御部11により実行される制御プログラムや画像処理プログラム等の各種プログラムを備える。また、記憶部15は、各プログラムの実行に必要な各種パラメータを記憶し、実行された後に処理されたデータ等を記憶する。
【0022】
次に、動作について説明する。
図2を参照して、医用画像処理装置100による位置合わせ処理について説明する。
制御部11は、通信部14を介して、X線透過画像及びCT画像を入力する(ステップS1、S2)。なお、ここで入力する両画像は、同一患者の同一部位である。
【0023】
制御部11は、ステップS1で入力したCT画像から、ステップS1で入力したX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成する(ステップS3)。
制御部11は、CT画像を構成する複数のスライス画像の画素値を足し合わせることで仮想X線画像を生成する。なお、ステップS1で複数の撮影方向のX線透過画像を入力した場合、制御部11は、対応する複数の撮影方向の仮想X線画像を生成する。
【0024】
制御部11は、アフィン変換を用いて、入力したX線透過画像と、生成した仮想X線画像との位置合わせを行う(ステップS4)。
アフィン変換は、位置合わせを行う2つの画像についてそれぞれ複数の対応点を設定し、この2つの画像において設定された対応点がそれぞれ一致するように一方の画像を剛体変形するものである。
【0025】
制御部11は、X線透過画像を表示部13に表示する(ステップS5)。
操作部12から、X線透過画像上で表示される病変位置が指定されると、制御部11は指定された病変位置を入力する(ステップS6)。
【0026】
制御部11は、入力した病変位置に対応する位置を仮想X線画像上において決定する(ステップS7)。
制御部11は、決定した位置を含むCT画像を抽出する(ステップS8)。つまり、制御部11は、CT画像を構成する複数のスライス画像のうち、病変位置を含むスライス画像を抽出する。
【0027】
制御部11は、抽出したCT画像を表示部13に表示するとともに、ステップS7で決定した位置又は投影範囲を識別表示して(ステップS9)、位置合わせ処理を終了する。
【0028】
次に、図3を参照して、位置合わせ処理の他の例について説明する。
図3に示す他の位置合わせ処理では、CT画像から病変位置を指定し、対応する位置をX線透過画像上に識別して表示する処理が行われる。
【0029】
ステップS11〜S14までは、図2のステップS1〜S4までと同様であるため、ここでの説明は省略する。
制御部11は、CT画像を表示部13に表示する(ステップS15)。
操作部12から、CT画像上で表示される病変位置が指定されると、制御部11は指定された病変位置を入力する(ステップS16)。
【0030】
制御部11は、入力した病変位置を仮想X線画像上に投影する(ステップS17)。制御部11は、投影した病変位置に対応する位置をX線透過画像上において決定する(ステップS18)。
【0031】
制御部11は、X線透過画像を表示部13に表示するとともに、ステップS18で決定した位置又は周辺領域を識別して表示し(ステップS19)、他の位置合わせ処理を終了する。
【0032】
図4A〜図4Dに、位置合わせ処理の概念図を示す。
図4Aに示すX線透過画像G1は、撮影方向が胸部正面のX線透過画像である。
また、CT画像G2は、胸部のCT画像であり、複数のスライス画像から構成される。仮想X線画像G21は、CT画像G2を構成する複数のスライス画像を合成して生成される擬似的なX線透過画像であって、撮影方向が胸部正面の擬似的なX線透過画像である。
【0033】
X線透過画像G1と仮想X線画像G21との位置合わせを行った後、X線透過画像G1に表示されている病変位置をマウス等で指定すると、対応する投影範囲がCT画像G2上で識別表示される。
【0034】
図4Bに示すX線透過画像G11は、撮影方向が胸部側面のX線透過画像である。
また、仮想X線画像G22は、仮想X線画像G21と同様にして生成された擬似的なX線透過画像であって、撮影方向が胸部側面の擬似的なX線透過画像である。
図4Aに示した場合と同様に、X線透過画像G1と仮想X線画像G21とを位置合わせし、更に、X線透過画像G11と仮想X線画像G22とを位置合わせする。その後、X線透過画像G1又はX線透過画像G11に表示されている病変位置をマウス等で指定すると、対応する病変位置がCT画像G2上で識別表示される。
【0035】
図4Cに示すX線透過画像G1、CT画像G2、及び仮想X線画像G21は、図4Aに示した画像と同様である。位置合わせした後、CT画像G2上に表示されている病変位置をマウス等で指定すると、対応する位置がX線透過画像G1上で識別表示される。
【0036】
図4Dに示すX線透過画像G1、G11、CT画像G2、及び仮想X線画像G21、G22は、図4Bに示した画像と同様である。X線透過画像G1と仮想X線画像G21とを位置合わせし、X線透過画像G11と仮想X線画像G22とを位置合わせする。その後、CT画像G2上に表示されている病変位置をマウス等で指定すると、対応する位置がX線透過画像G1又はX線透過画像G11上で識別表示される。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、CT画像G2及びX線透過画像G1を入力し、両画像の位置合わせを行うことができる。よって、容易に比較読影することができる。
【0038】
また、撮影方向の異なるX線透過画像G1(G11)を入力した場合であっても、対応する撮影方向の仮想X線画像G21(G22)を生成して、両画像の位置合わせを行うことができる。
【0039】
また、位置合わせ後に、X線透過画像G1(G11)上に表示された病変位置を指定すると、指定された位置に対応する位置をCT画像G2上に識別して表示することができる。よって、X線透過画像G1(G11)上で確認できる病変をCT画像G2上で容易に確認することができ、比較読影することができる。
【0040】
また、位置合わせ後に、CT画像G2上に表示された病変位置を指定すると、指定された位置に対応する位置をX線透過画像G1(G11)上に識別して表示することができる。よって、CT画像G2上で確認できる病変をX線透過画像G1(G11)上で容易に確認することができ、比較読影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】医用画像処理装置の内部構成図である。
【図2】位置合わせ処理を説明するフロー図である。
【図3】位置合わせ処理の他の例を説明するフロー図である。
【図4A】位置合わせ処理の概念図である。
【図4B】位置合わせ処理の概念図である。
【図4C】位置合わせ処理の概念図である。
【図4D】位置合わせ処理の概念図である。
【符号の説明】
【0042】
100 医用画像処理装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT画像及びX線透過画像を取得する取得手段と、
前記取得されたCT画像に基づいて、前記取得されたX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成し、当該生成した仮想X線画像と前記X線透過画像との位置合わせを行う制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記取得手段は、複数の撮影方向のX線透過画像を取得し、
前記制御手段は、前記取得された複数の撮影方向のX線透過画像に応じて、複数の撮影方向の仮想X線画像を生成する請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段により位置合わせされた後に、前記X線透過画像上において任意の位置を指定するための指定手段と、
前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上において決定する決定手段と、
前記決定した位置を含むCT画像を抽出する抽出手段と、
前記抽出したCT画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該抽出したCT画像上で識別して表示する表示手段と、
を備える請求項1又は2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記指定手段は、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記CT画像において任意の位置を指定し、
前記決定手段は、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上に投影し、当該投影した位置に基づいて前記指定された任意の位置を前記X線透過画像上において決定し、
前記表示手段は、前記X線透過画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該X線透過画像上で識別して表示する請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
取得手段によって、CT画像及びX線透過画像を取得する工程と、
制御手段によって、前記取得されたCT画像に基づいて、前記取得されたX線透過画像と同一撮影方向の仮想X線画像を生成し、当該生成した仮想X線画像と前記X線透過画像との位置合わせを行う工程と、
を含む医用画像処理方法。
【請求項6】
指定手段によって、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記X線透過画像上において任意の位置を指定する工程と、
決定手段によって、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上において決定する工程と、
抽出手段によって、前記決定した位置を含むCT画像を抽出する工程と、
表示手段によって、前記抽出したCT画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該抽出したCT画像上で識別して表示する工程と、
を含む請求項5に記載の医用画像処理方法。
【請求項7】
指定手段によって、前記制御手段により位置合わせされた後に、前記CT画像において任意の位置を指定する工程と、
決定手段によって、前記指定された任意の位置に対応する位置を前記仮想X線画像上に投影し、当該投影した位置に基づいて前記指定された任意の位置をX線透過画像上において決定する工程と、
表示手段によって、前記X線透過画像を表示するとともに、前記決定された位置を当該X線透過画像上で識別して表示する工程と、
を含む請求項5又は6に記載の医用画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2011−239796(P2011−239796A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225785(P2008−225785)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】