説明

医用画像処理装置

【課題】脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができるように操作者を支援する。
【解決手段】腫瘍位置特定部14bが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する。また、腫瘍性質判定部14cが、腫瘍位置特定部14bにより特定された脳腫瘍の位置に基づいて脳腫瘍が悪性であるか否かを判定する。また、機能画像選択部14dが、腫瘍性質判定部14cの判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する。そして、機能画像生成部14eが、機能画像選択部14dにより選択された種類の機能画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳腫瘍の治療では、脳腫瘍によって生じる運動麻痺や言語障害、意識障害などのさまざまな局所症状を改善するため、早期に脳腫瘍を摘出する手術を行うことが求められる。そして、脳腫瘍の手術では、術中に局所症状を悪化させないように、術前に脳腫瘍とその周囲にある脳機能領野との位置関係を明確に把握することが重要である。そのため、例えば、術前に手術計画が検討される際には、脳腫瘍の形態画像と脳の機能画像とを合成して表示する臨床アプリケーションが利用される。
【0003】
かかる臨床アプリケーションとしては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置により生成された形態画像のMPR(Multi Planar Reconstruction)画像とfMRI(Functional MRI)及びワダ・テスト(Wada-test)により得られる機能画像とを合成して表示するものが知られている(非特許文献1参照)。ここで、fMRIとは、MRI装置を利用して、脳の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法である。また、ワダ・テストとは、左右どちらの脳に言語機能があるかを診断する検査法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Christoph Stippich,「クリニカル・ファンクショナル・MRI:プレサージカル・ファンクショナル・ニューロイメージング(Clinical Functional MRI: Presurgical Functional Neuroimaging)」,第1版,(ドイツ),シュプリンガー・フェアラーク(Springer-Verlag),2007年4月4日,p.115−127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、臨床アプリケーションに表示させる機能画像の種類は操作者によって選択されるのが一般的である。そのため、操作者は、術前に脳機能マップや各種の機能画像などを用いて脳腫瘍の位置や性質などを分析したうえで、手術計画の検討に適した機能画像を選択する必要があった。これらの作業は非常に手間のかかるものであり、操作者にとって大きな負担となっていた。その結果、従来の技術では、操作者は、脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができるように操作者を支援することが可能な医用画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、医用画像処理装置が、脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する腫瘍位置特定手段と、前記腫瘍位置特定手段により特定された脳腫瘍の位置に基づいて当該脳腫瘍が悪性であるか否かを判定する腫瘍性質判定手段と、前記腫瘍性質判定手段の判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する機能画像選択手段と、前記機能画像選択手段により選択された種類の機能画像を生成する機能画像生成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の本発明によれば、脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができるように操作者を支援することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施例に係る医用画像処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、腫瘍性質テーブル記憶部により記憶される腫瘍性質テーブルの一例を示す図である。
【図3】図3は、機能画像テーブル記憶部により記憶される機能画像テーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は、画像表示制御部により表示される合成画像の一例を示す図である。
【図5】図5は、本実施例に係る医用画像処理装置により実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る医用画像処理装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例によって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
最初に、本実施例に係る医用画像処理装置の概要について説明する。本実施例に係る医用画像処理装置は、脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する。また、医用画像処理装置は、特定した脳腫瘍の位置に基づいて脳腫瘍が悪性であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する。そして、医用画像処理装置は、選択した種類の機能画像を生成する。
【0012】
すなわち、本実施例に係る医用画像処理装置は、脳の形態画像から脳腫瘍の位置を特定し、特定した脳腫瘍の性質に応じて機能画像の種類を自動的に選択する。したがって、この医用画像処理装置によれば、脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができるように操作者を支援することが可能になる。
【0013】
以下、かかる医用画像処理装置について具体的に説明する。まず、本実施例に係る医用画像処理装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係る医用画像処理装置10の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、医用画像処理装置10は、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。
【0014】
入力部11は、操作者から各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部11は、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、キーボードなどの入力デバイスなどである。
【0015】
表示部12は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。この表示部12は、例えば、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタなどである。
【0016】
記憶部13は、後述する制御部14により実行される各種処理に必要なプログラムやデータなどを記憶する。また、記憶部13は、制御部14により生成される各種画像を記憶する。この記憶部13は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やDVD(Digital Versatile Disk)ドライブ、半導体メモリなどである。
【0017】
かかる記憶部13は、図1に示すように、脳機能マップ記憶部13aと、腫瘍性質テーブル記憶部13bと、機能画像テーブル記憶部13cと、合成画像記憶部13dと、摘出率記憶部13eとを有する。
【0018】
脳機能マップ記憶部13aは、脳の部位を機能ごとに複数の領野(以下、脳機能領野と呼ぶ)に区分けした脳地図に関する情報を記憶する。例えば、脳機能マップ記憶部13aは、ブロードマンの脳地図に関する情報を記憶する。
【0019】
腫瘍性質テーブル記憶部13bは、脳地図により区分けされた脳機能領野と各脳機能領野で発生しうる脳腫瘍の性質とを対応付けた腫瘍性質テーブルを記憶する。図2は、腫瘍性質テーブル記憶部13bにより記憶される腫瘍性質テーブルの一例を示す図である。図2に示すように、腫瘍性質テーブルは、脳機能領野とその脳機能領野で発生しうる脳腫瘍の情報とを対応付けたデータを脳機能領野ごとに保持する。なお、ここでいう脳腫瘍の情報には、脳腫瘍名と、発生頻度と、性質とが含まれる。
【0020】
脳機能領野には、脳機能マップ記憶部13aにより記憶された脳地図において区分けされた各脳機能領野を表す情報が設定される。例えば、脳機能領野には、「中心前回」や「一次運動野」、「体性感覚連合野」などが設定される。脳腫瘍名には、脳腫瘍の名称を表す情報が設定される。例えば、脳腫瘍名には、「グリオーマ」や「悪性リンパ腫」、「胚細胞腫」などが設定される。
【0021】
発生頻度には、脳腫瘍の発生頻度を表す情報が設定される。例えば、発生頻度には、「25%」や「18%」などの発生率を表す数値が設定される。この発生頻度は、例えば、医学団体などにより集計される統計情報に基づいて定期的又は不定期に更新される。性質には、脳腫瘍が悪性か否かを表す情報が設定される。例えば、性質には、「悪性」又は「良性」のいずれかが設定される。
【0022】
図2に示す例は、例えば、中心前回において、グリオーマや悪性リンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫などが発生することを示しており、一次運動野において胚細胞腫や下垂体腺腫などが発生することを示している。また、例えば、中心前回に発生する腫瘍について、グリオーマの発生頻度が25%であり、悪性リンパ腫の発生頻度が3%であることを示している。また、例えば、中心前回に発生する腫瘍について、グリオーマが悪性であり、髄膜腫が良性であることを示している。
【0023】
図1の説明にもどって、機能画像テーブル記憶部13cは、脳腫瘍の性質と脳腫瘍の性質に応じて決められた機能画像の種類とを対応付けた機能画像テーブルを記憶する。図3は、機能画像テーブル記憶部13cにより記憶される機能画像テーブルの一例を示す図である。図3に示すように、機能画像テーブルは、例えば、性質と、症状と、機能画像とを対応付けたデータを性質及び症状ごとに保持する。
【0024】
性質には、腫瘍性質テーブルに設定される性質と同様に、脳腫瘍が悪性か否かを表す情報が設定される。症状には、脳腫瘍によって被検体に生じる局所症状を示す情報が設定される。例えば、症状には、「言語」や「運動」、「視覚」、「なし」などが設定される。ここで、「言語」は言語障害が生じていることを示す。また、「運動」は運動障害を示し、「視覚」は視覚障害が生じていることを示す。そして、「なし」は脳腫瘍による障害が生じていないことを示す。
【0025】
機能画像は、機能画像の種類を示す情報が設定される。例えば、機能画像には、「DTI」や「fMRI」、「MEG」、「EEG」などが設定される。ここで、「DTI」は拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Image:DTI)を示し、「fMRI」はfMRIにより得られる脳機能賦活画像(以下、fMRI画像と呼ぶ)を示す。また、「MEG」は脳磁図(MagnetoEncephaloGram:MEG)を示し、「EEG」は脳電図(ElectroEncephaloGraphy:EEG)を示す。
【0026】
なお、かかる機能画像に設定される機能画像の種類は、あらかじめ脳腫瘍の性質及び症状に応じて決められる。例えば、悪性の脳腫瘍は一般的に脳実質内に存在することが多いが、脳実質内に脳腫瘍が存在する場合は浸潤が生じるため腫瘍と正常組織とを分離することが難しい。そこで、腫瘍が悪性であり、かつ、脳腫瘍による症状がある場合には、例えば、脳機能賦活領域の局在を画像化するfMRI画像及び脳内の神経線維を描出するDITが、それぞれ機能画像に設定される。また、脳腫瘍が悪性であり、かつ、脳腫瘍による症状がない場合には、例えば、fMRI画像のみが機能画像に設定される。
【0027】
一方、良性の脳腫瘍は脳実質外に存在することが多い。そのため、良性の脳腫瘍については、腫瘍と正常組織とを容易に見分けることができる。そこで、例えば、脳腫瘍が良性であり、かつ、脳腫瘍による症状がある場合には、例えば、fMRI画像及びMEGが機能画像に設定される。また、脳腫瘍が良性であり、かつ、脳腫瘍による症状がない場合には、例えば、fMRI画像及びEEGが機能画像に設定される。
【0028】
図1の説明にもどって、合成画像記憶部13dは、後述する画像表示制御部14hにより合成された形態画像及び機能画像の合成画像を記憶する。例えば、合成画像記憶部13dは、脳の形態画像であるT2強調画像と、脳の機能画像であるfMRI画像及びMEGとが合成された合成画像を記憶する。
【0029】
摘出率記憶部13eは、後述する摘出率算出部14kにより算出された腫瘍の摘出率を記憶する。この摘出率記憶部13eにより記憶される摘出率は、例えば術後に参照され、手術を評価するための指標値として用いられる。
【0030】
制御部14は、各種処理を実行することで医用画像処理装置10の全体を制御する。この制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサを有する。
【0031】
かかる制御部14は、図1に示すように、形態画像生成部14aと、腫瘍位置特定部14bと、腫瘍性質判定部14cと、機能画像選択部14dと、機能画像生成部14eと、解析画像生成部14fとを有する。また、制御部14は、画像位置合せ部14gと、画像表示制御部14hと、腫瘍大きさ算出部14iと、摘出部分算出部14jと、摘出率算出部14kとを有する。
【0032】
形態画像生成部14aは、脳の形態画像を生成する。例えば、形態画像生成部14aは、形態画像として、図示していないMRI装置により収集された磁気共鳴データからT2強調画像を生成する。そして、形態画像生成部14aは、生成した形態画像を後述する腫瘍位置特定部14b及び画像位置合せ部14gに送る。
【0033】
腫瘍位置特定部14bは、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する。例えば、腫瘍位置特定部14bは、形態画像生成部14aから送られた形態画像から脳腫瘍の領域を抽出する。ここで、脳腫瘍の領域を抽出する方法としては、一般的に知られた各種の領域抽出方法を用いることができる。さらに、腫瘍位置特定部14bは、脳機能マップ記憶部13aにより記憶された脳地図を参照して、形態画像から抽出した脳腫瘍の領域が位置する脳機能領野を特定する。そして、腫瘍位置特定部14bは、特定した脳機能領野を脳腫瘍の位置を示す情報として後述する腫瘍性質判定部14cに送る。
【0034】
腫瘍性質判定部14cは、腫瘍位置特定部14bにより特定された脳腫瘍の位置に基づいて、脳腫瘍が悪性であるか否かを判定する。例えば、腫瘍性質判定部14cは、腫瘍性質テーブル記憶部13bにより記憶された腫瘍性質テーブルを参照して、腫瘍位置特定部14bから送られた脳機能領野に対応する全ての脳腫瘍の情報を取得する。その後、腫瘍性質判定部14cは、取得した各脳腫瘍の発生頻度を比較し、最も発生頻度が高い脳腫瘍の性質を特定する。そして、腫瘍性質判定部14cは、特定した脳腫瘍の性質を判定結果として後述する機能画像選択部14dに送る。なお、腫瘍性質判定部14cは、特定した脳腫瘍の性質が悪性であった場合には、後述する解析画像生成部14fに対してDTIを生成するよう指示する。
【0035】
機能画像選択部14dは、腫瘍性質判定部14cの判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する。例えば、機能画像選択部14dは、入力部11を介して、被検者の症状に関する情報の入力を操作者から受け付ける。その後、機能画像選択部14dは、機能画像テーブル記憶部13cを参照して、腫瘍性質判定部14cから送られた脳腫瘍の性質の判定結果及び操作者から受け付けた症状に対応する機能画像の種類を取得する。そして、機能画像選択部14dは、取得した機能画像の種類を示す情報を後述する機能画像生成部14eに送る。
【0036】
機能画像生成部14eは、機能画像選択部14dにより選択された種類の機能画像を生成する。例えば、機能画像生成部14eは、機能画像選択部14dから機能画像の種類を示す情報が送られると、その種類の機能画像を生成する。より具体的には、例えば、機能画像生成部14eは、fMRI画像やMEG、EEGなどを生成する。そして、機能画像生成部14eは、生成した機能画像を後述する画像位置合せ部14gに送る。
【0037】
解析画像生成部14fは、腫瘍性質判定部14cの判定結果が悪性であった場合に脳の拡散テンソル画像を生成する。例えば、解析画像生成部14fは、腫瘍性質判定部14cからDTIを生成するよう指示されると、図示していないMRI装置により収集された磁気共鳴データからDTIを生成する。そして、機能画像生成部14eは、生成したDTIを後述する画像位置合せ部14gに送る。
【0038】
画像位置合せ部14gは、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像と機能画像生成部14eにより生成された機能画像とを位置合せする。また、画像位置合せ部14gは、解析画像生成部14fにより生成されたDTIを形態画像及び機能画像にさらに位置合せする。例えば、画像位置合せ部14gは、形態画像生成部14aから形態画像が送られ、かつ、機能画像生成部14eから機能画像が送られると、送られた形態画像及び機能画像を位置合せする。また、画像位置合せ部14gは、解析画像生成部14fからDTIが送られた場合には、送られたDTIを形態画像及び機能画像にさらに位置合せする。ここで、各画像を位置合せする方法としては、一般的に知られた各種の画像位置合せ方法を用いることができる。そして、画像位置合せ部14gは、位置合せした各画像を後述する画像表示制御部14hに送る。
【0039】
画像表示制御部14hは、画像位置合せ部14gにより位置合せされた形態画像及び機能画像を合成して表示部12に表示させる。また、画像表示制御部14hは、解析画像生成部14fにより生成されたDTIを形態画像及び機能画像にさらに合成して表示部12に表示させる。
【0040】
例えば、画像表示制御部14hは、画像位置合せ部14gから形態画像、機能画像及びDITが送られると、各画像を合成した合成画像を生成する。そして、画像表示制御部14hは、生成した合成画像を表示部12に表示させる。図4は、画像表示制御部14hにより表示される合成画像の一例を示す図である。図4に示す左上、右上及び右下の画像は、それぞれMRI装置によって撮像された頭部のT2強調画像である。また、左下の画像は、被検体の頭部を3次元的に描出したレンダリング画像である。
【0041】
図4における右下の画像に示すように、例えば、画像表示制御部14hは、T2強調画像上にfMRI画像、DTI及びMEGをそれぞれ重畳させた合成画像を生成して、生成した合成画像を表示部12に表示させる。これにより、合成画像上では、T2強調画像により描出された脳腫瘍T、fMRI画像により描出された脳機能賦活領域B、DTIにより描出された神経束N、MEGにより描出された脳磁波の結果Mがそれぞれ示される。
【0042】
なお、画像表示制御部14hは、合成画像を表示する際に、脳腫瘍Tの形状に応じて腫瘍表面の表示態様を変化させてもよい。より具体的には、例えば、画像表示制御部14hは、脳腫瘍Tの形状に応じて、腫瘍表面の濃度を変化させたり、色を変化させたりする。
【0043】
腫瘍大きさ算出部14iは、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の大きさを算出する。例えば、腫瘍大きさ算出部14iは、画像表示制御部14hによって合成画像が表示されたのちに、その合成画像に合成されていた形態画像を形態画像生成部14aから取得し、取得した形態画像から脳腫瘍の領域を抽出する。ここで、脳腫瘍の領域を抽出する方法としては、一般的に知られた各種の領域抽出方法を用いることができる。さらに、腫瘍大きさ算出部14iは、抽出した脳腫瘍の大きさを算出する。そして、腫瘍大きさ算出部14iは、算出した脳腫瘍の大きさを後述する摘出率算出部14kに送る。
【0044】
摘出部分算出部14jは、脳腫瘍から摘出される摘出部分の大きさを算出する。例えば、摘出部分算出部14jは、入力部11を介して、表示部12に表示された合成画像上の脳腫瘍に対して、手術時に脳腫瘍から摘出される摘出部分の範囲を指定する操作を操作者から受け付ける。その後、摘出部分算出部14jは、操作者によって合成画像上に指定された範囲に基づいて、摘出部分の大きさを算出する。そして、摘出部分算出部14jは、算出した摘出部分の大きさを後述する摘出率算出部14kに送る。
【0045】
摘出率算出部14kは、腫瘍大きさ算出部14iにより算出された脳腫瘍の大きさ及び摘出部分算出部14jにより算出された摘出部分の大きさから腫瘍の摘出率を算出する。例えば、摘出率算出部14kは、腫瘍大きさ算出部14iから脳腫瘍の大きさが送られ、かつ、摘出部分算出部14jから摘出部分の大きさが送られると、以下に示す式(1)により脳腫瘍の摘出率を算出する。そして、摘出率算出部14kは、算出した摘出率を摘出率記憶部13eに記憶させる。
【0046】
摘出率[%]=(摘出部分の大きさ/脳腫瘍の大きさ)×100 ・・・(1)
【0047】
このように、摘出率算出部14kが腫瘍の摘出率を算出することで、例えば、この摘出率を指標値として術後に手術の評価を行うことができるようになる。
【0048】
次に、本実施例に係る医用画像処理装置100により実行される処理の処理手順について説明する。図5は、本実施例に係る医用画像処理装置100により実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、医用画像処理装置100では、例えば、制御部14が、入力部11を介して処理を開始する指示を操作者から受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、以下の処理を実行する。
【0049】
まず、形態画像生成部14aが、脳の形態画像を生成する(ステップS102)。続いて、腫瘍位置特定部14bが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて、脳腫瘍の位置を特定する(ステップS103)。そして、腫瘍性質判定部14cが、腫瘍位置特定部14bにより特定された脳腫瘍の位置に基づいて、脳腫瘍が悪性か否かを判定する(ステップS104)。
【0050】
続いて、機能画像選択部14dが、腫瘍性質判定部14cの判定結果に基づいて機能画像の種類を選択する(ステップS105)。その後、機能画像生成部14eが、機能画像選択部14dにより選択された種類の機能画像を生成する(ステップS106)。また、腫瘍性質判定部14cによる判定の結果、脳腫瘍が悪性であった場合に(ステップS107,Yes)、解析画像生成部14fが、DTIを生成する(ステップS108)。
【0051】
続いて、画像位置合せ部14gが、生成された各画像(機能画像及び/又はDTI)と形態画像とを位置合せする(ステップS109)。そして、画像表示制御部14hが、画像位置合せ部14gにより位置合せされた各画像を合成して表示部12に表示させる(ステップS110)。また、画像表示制御部14hは、画像表示制御部14hにより表示された合成画像を合成画像記憶部13dに保存する(ステップS111)。
【0052】
続いて、腫瘍大きさ算出部14iが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の大きさを算出する(ステップS112)。また、摘出部分算出部14jが、操作者によって合成画像上に指定された範囲に基づいて、摘出部分の大きさを算出する(ステップS113)。
【0053】
そして、摘出率算出部14kが、腫瘍大きさ算出部14iにより算出された脳腫瘍の大きさ及び摘出部分算出部14jにより算出された摘出部分の大きさから腫瘍の摘出率を算出する(ステップS114)。また、摘出率算出部14kは、算出した摘出率を摘出率記憶部13eに保存する(ステップS115)。
【0054】
上述したように、本実施例では、腫瘍位置特定部14bが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する。また、腫瘍性質判定部14cが、腫瘍位置特定部14bにより特定された脳腫瘍の位置に基づいて脳腫瘍が悪性であるか否かを判定する。また、機能画像選択部14dが、腫瘍性質判定部14cの判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する。そして、機能画像生成部14eが、機能画像選択部14dにより選択された種類の機能画像を生成する。すなわち、本実施例では、手術計画の検討に適した機能画像の種類が自動的に選択される。したがって、本実施例によれば、脳腫瘍の手術計画を容易に立案することができるように操作者を支援することが可能になる。また、術前の手術計画をより短期間で効率よく立案することが可能になる。
【0055】
また、本実施例では、画像位置合せ部14gが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像と機能画像生成部14eにより生成された機能画像とを位置合せする。そして、画像表示制御部14hが、画像位置合せ部14gにより位置合せされた形態画像及び機能画像を合成して表示部12に表示させる。したがって、本実施例によれば、脳の機能領野と腫瘍との位置関係をより正確に同定することができるので、脳腫瘍の手術計画をより正確に立案することが可能になる。これにより、治療効率の向上や術中のリスクの低減を実現することが可能になる。
【0056】
また、本実施例では、解析画像生成部14fが、腫瘍性質判定部14cの判定結果が悪性であった場合に脳のDTIを生成する。そして、画像位置合せ部14gが、解析画像生成部14fにより生成されたDTIを形態画像及び機能画像にさらに位置合せする。そして、画像表示制御部14hが、解析画像生成部14fにより生成されたDTIを形態画像及び機能画像にさらに合成して表示部12に表示させる。したがって、本実施例によれば、操作者が、DTIにより描出される神経束を参考にして、脳腫瘍とその周囲にある脳機能領野との位置関係をより容易に把握できるようになる。
【0057】
また、本実施例では、画像表示制御部14hが、形態画像に描出された脳腫瘍について、その脳腫瘍の形状に応じて腫瘍表面の表示態様を変化させる。したがって、本実施例によれば、操作者が腫瘍の形状を容易に認識できるようになる。
【0058】
また、本実施例では、腫瘍大きさ算出部14iが、形態画像生成部14aにより生成された脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の大きさを算出する。また、摘出部分算出部14jが、脳腫瘍から摘出される摘出部分の大きさを算出する。そして、摘出率算出部14kが、腫瘍大きさ算出部14iにより算出された脳腫瘍の大きさ及び摘出部分算出部14jにより算出された摘出部分の大きさから腫瘍の摘出率を算出する。したがって、本実施例によれば、例えば、術前に算出された摘出率を指標値とし、その指標値と術後に算出された摘出率とを比較することで、術後に実施される手術の評価を適切に行うことが可能になる。
【0059】
なお、本実施例では、T2強調画像やfMRI画像、DTIなど、MRI装置によって得られる画像が用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置やPET(Positron Emission Tomography)装置、超音波診断装置など、他の医用画像診断装置によって得られる画像が用いられる場合でも本発明を同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 医用画像処理装置
14 制御部
14b 腫瘍位置特定部
14c 腫瘍性質判定部
14d 機能画像選択部
14e 機能画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳の形態画像に基づいて脳腫瘍の位置を特定する腫瘍位置特定手段と、
前記腫瘍位置特定手段により特定された脳腫瘍の位置に基づいて当該脳腫瘍が悪性であるか否かを判定する腫瘍性質判定手段と、
前記腫瘍性質判定手段の判定結果に基づいて脳の機能画像の種類を選択する機能画像選択手段と、
前記機能画像選択手段により選択された種類の機能画像を生成する機能画像生成手段と
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記形態画像と前記機能画像生成手段により生成された機能画像とを位置合せする画像位置合せ手段と、
前記画像位置合せ手段により位置合せされた形態画像及び機能画像を合成して表示部に表示させる画像表示制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記腫瘍性質判定手段の判定結果が悪性であった場合に脳の拡散テンソル画像を生成する画像生成手段をさらに備え、
前記画像位置合せ手段は、前記画像生成手段により生成された拡散テンソル画像を前記形態画像及び前記機能画像にさらに位置合せし、
前記画像表示制御手段は、前記画像生成手段により生成された拡散テンソル画像を前記形態画像及び前記機能画像にさらに合成して前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像表示制御手段は、前記形態画像に描出された脳腫瘍について当該脳腫瘍の形状に応じて腫瘍表面の表示態様を変化させることを特徴とする請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記形態画像に基づいて前記脳腫瘍の大きさを算出する腫瘍大きさ算出手段と、
前記脳腫瘍から摘出される摘出部分の大きさを算出する摘出部分算出手段と、
前記腫瘍大きさ算出手段により算出された脳腫瘍の大きさ及び前記摘出部分算出手段により算出された摘出部分の大きさから腫瘍の摘出率を算出する摘出率算出手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143105(P2011−143105A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7189(P2010−7189)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】