説明

医用画像分散処理装置、およびその制御プログラム

【課題】良好な表示応答が得られるように、画像処理を複数の計算機に分散させる。
【解決手段】実施形態の医用画像分散処理装置は、医用画像データの画像処理を、ネットワークに接続された複数の計算機で分散処理させ、分散処理結果を表示端末に表示させる医用画像分散処理装置であって、複数の計算機の計算能力を取得する計算能力取得部14と、医用画像分散処理装置と複数の計算機との間のデータ転送時間、および、複数の計算機と表示端末との間のデータ転送時間を取得するデータ転送時間取得部15と、計算能力取得部14により取得された計算能力、および、データ転送時間取得部15により取得されたデータ転送時間に基づいて、分散処理結果が表示端末に送信されるまでの結果送信時間を算出し、その結果送信時間から、医用画像データの画像処理を、複数の計算機に割り当てる計算割当部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、医用画像分散処理装置、およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの医用画像診断装置で撮影された医用画像データ(ボクセルデータ)を表示端末に表示させる場合、3次元のデータを2次元画像として立体的に表示させる、ボリュームレンダリングという画像処理技術が用いられている。
【0003】
近年、ネットワーク環境および計算機の低価格化・高性能化により、多くの病院に院内ネットワークが普及してきている。また、院内ネットワークに複数台の計算機が設置されている場合も珍しくない。
【0004】
そこで、ボリュームレンダリングのような計算量の大きい画像処理では、ネットワークに接続された複数の計算ノード(計算機)で分散処理させることで、処理を高速化している。つまり、各計算ノードのCPU(Central Processing Unit)使用率やメモリ使用状況を取得し、各計算ノードの計算余力を判断し、計算余力のある計算ノードにデータや計算処理を割り当てるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−233600号公報
【特許文献2】特開2004−215846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、計算余力のある計算ノードに、単純にデータや計算処理を割り当てているだけであり、ネットワーク応答性能が低い場合には、期待する表示応答が得られない課題があった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な表示応答が得られるように、画像処理を複数の計算機に分散させることができるようにした医用画像分散処理装置、およびその制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の医用画像分散処理装置は、医用画像データの画像処理を、ネットワークに接続された複数の計算機で分散処理させ、分散処理結果を表示端末に表示させる医用画像分散処理装置であって、複数の計算機の計算能力を取得する計算能力取得手段と、医用画像分散処理装置と複数の計算機との間のデータ転送時間、および、複数の計算機と表示端末との間のデータ転送時間を取得するデータ転送時間取得手段と、計算能力取得手段により取得された計算能力、および、データ転送時間取得手段により取得されたデータ転送時間に基づいて、分散処理結果が表示端末に送信されるまでの結果送信時間を算出し、その結果送信時間から、医用画像データの画像処理を、複数の計算機に割り当てる計算割当手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の医用画像分散処理システムの構成例を示す図である。
【図2】実施形態のサーバの機能構成例を示すブロック図である。
【図3】実施形態の画像分散処理を説明するフローチャートである。
【図4】実施形態の医用画像データの例を示す図である。
【図5】実施形態の計算能力とデータ転送時間の例を説明する図である。
【図6】実施形態の図3のステップS5における医用画像データの割当処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図7】実施形態の図3のステップS5における医用画像データの割当処理の他の例の詳細を説明するフローチャートである。
【図8】実施形態の医用画像データの再割当処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施形態の急患時の画像分散処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る医用画像分散処理システムの構成例を示す図である。
【0011】
図1に示す医用画像分散処理システムは、サーバ1、医用画像診断装置2−1,2−2、情報管理装置3、表示端末4、計算ノード(計算機)5−1乃至5−5、およびスイッチングハブ6−1乃至6−3が、ルータ7を介して相互に接続されることによってネットワーク構成されている。
【0012】
以下において、医用画像診断装置2−1,2−2を個々に区別する必要がない場合、単に医用画像診断装置2と称し、計算ノード5−1乃至5−5を個々に区別する必要がない場合、単に計算ノード5と称し、スイッチングハブ6−1乃至6−3を個々に区別する必要がない場合、単にスイッチングハブ6と称する。また、医用画像診断装置2、計算ノード5の数は任意であり、図1に示されるような数に限定されるものではない。さらに、ルータ7には、スイッチングハブ6が接続されているが、やはり図1に示されるような数に限定されるものではなく、それ以上増設し、医用画像診断装置2や計算ノード5を増設し、ネットワークを拡大することも可能である。
【0013】
サーバ1は、例えば、PACS(Picture Archiving Communication System)であって、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および大容量のHDD(Hard Disc Drive)などを実装したコンピュータシステムで構成され、医用画像分散処理装置として機能する。
【0014】
サーバ1は、医用画像診断装置2からスイッチングハブ6−1を介して取得した医用画像データを記憶し、管理する。
【0015】
サーバ1は、表示端末4から、ルータ7およびスイッチングハブ6−1を介して指定された所定の医用画像データの画像処理(例えば、ボリュームレンダリング)を実行する。このとき、サーバ1は、各計算ノード5の計算能力、サーバ1と各計算ノード5の間のデータ転送時間、各計算ノード5と表示端末4の間のデータ転送時間を取得するとともに、情報管理装置3で管理されている電子カルテに保存された診断情報などから病変部に相当する優先処理領域の情報を取得する。そして、サーバ1は、取得した計算能力、データ転送時間、および優先処理領域の情報に基づいて、各計算ノード5での画像処理の割り当てを決定する。
【0016】
医用画像診断装置2は、X線CT(Computed Tomography)装置やMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置などの、いわゆる医用モダリティであって、撮影された医用画像データを、スイッチングハブ6−1を介してサーバ1に転送する。
【0017】
情報管理装置3は、例えば、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)で
あって、検査の予約、電子カルテ、会計、および薬の処方などの情報を管理する。
【0018】
表示端末4は、画像の読影を行うためにビューアと呼ばれる機能を用いて、ユーザによって指示された医用画像データの画像処理の実行をサーバ1に対して要求する。表示端末4は、各計算ノード5からルータ7を介して取得した画像処理結果を表示する。
【0019】
計算ノード5は、CPU,ROM,RAM,およびHDDなどを実装したコンピュータシステムで構成され、サーバ1によって要求された画像処理を実行する。計算ノード5は、画像処理専用端末であってもよいし、他の処理機能を実装した端末であってもよい。
【0020】
スイッチングハブ6は、ネットワークにおいてケーブルを流れるデータを中継する機器であって、サーバ1などの端末から送られてきたデータを解析して宛先を検出し、送り先の端末にのみデータを送信する。
【0021】
ルータ7は、ネットワークにおいて、2つ以上の異なるネットワーク間を相互接続する通信機器である。
【0022】
なお、表示端末4に実装されるビューアの機能は、サーバ1、医用画像診断装置2、および計算ノード5にももちろん実装することが可能であり、どの端末からも画像処理の実行を要求したり、画像処理結果(分散処理結果)を表示したりすることができる。また画像処理は、計算ノード5で実行させるだけでなく、ネットワークに接続されたサーバ1、医用画像診断装置2、情報管理装置3、表示端末4、あるいは、図示せぬ他の端末でも、計算余力があれば勿論実行することが可能である。
【0023】
図2は、図1に示したサーバ1の機能構成例を示すブロック図である。
【0024】
要求受付部11は、表示端末4から、ルータ7およびスイッチングハブ6−1を介して送信されてきた、所定の医用画像データの画像処理の実行要求を取得する。この画像処理の実行要求には、表示端末4の識別情報(例えば、IP(
1276663129738_0.html
、および、画像処理の実行が要求された医用画像データを指定する情報が含まれる。要求受付部11は、取得した画像処理の実行要求を計算割当部12に供給する。
【0025】
計算割当部12は、要求受付部11から供給された画像処理の実行要求に含まれる医用画像データを指定する情報に基づいて、医用画像データベース13に記憶されている医用画像データの中から、所定の医用画像データを読み出す。
【0026】
計算割当部12は、画像処理の実行要求を受け付けた場合、計算能力取得部14に対して、各計算ノード5の計算能力を取得するように指示する。また、計算割当部12は、データ転送時間取得部15に対して、サーバ1と各計算ノード5の間のデータ転送時間、および各計算ノード5と表示端末4の間のデータ転送時間を取得するように指示する。さらに、計算割当部12は、優先処理領域情報取得部16に対して、情報管理装置3で管理されている電子カルテなどから優先処理領域(病変部)の情報を取得するように指示する。
【0027】
計算割当部12は、計算能力取得部14から取得した各計算ノード5の計算能力、およびデータ転送時間取得部15から取得したデータ転送時間に基づいて、各計算ノード5に医用画像データが割り当てられ、分散処理が行われ、その分散処理結果が表示端末4に送信されるまでに必要な時間(以下において、結果送信時間と称する)を算出する。
【0028】
計算割当部12は、算出した結果送信時間、および、優先処理領域情報取得部16から取得した優先処理領域の情報に基づいて、優先処理領域データの画像処理を、結果送信時間が最も短い計算ノード5に割り当てる。
【0029】
計算割当部12は、優先処理領域データを割り当てた後、残りの医用画像データを、表示端末4で分散処理結果がほぼ均一に得られるように割り当てる。
【0030】
計算割当部12は、割当結果を割当結果送信部17に供給する。割当結果には、各計算ノード5に割り当てた医用画像データ、画像処理実行要求、および分散処理結果の送信先(表示端末4)の情報などが含まれる。
【0031】
医用画像データベース13は、医用画像診断装置2から取得した医用画像データを記憶し、管理する。
【0032】
計算能力取得部14は、計算割当部12からの指示に基づいて、各計算ノード5の計算能力を取得し、取得結果を計算割当部12に供給する。
【0033】
なお、計算能力の取得処理は、計算割当部12から指示を受けた時に実行するだけでなく、CPUクロックやCPUキャッシュ容量などから予測して保持しておくようにしてもよい。計算能力とは、CPUクロックやCPUキャッシュ容量だけでなく、例えば、CPU未使用率、メ
モリ空き容量、およびメモリクロックなどからその指標を得ることができる。
【0034】
データ転送時間取得部15は、計算割当部12からの指示に基づいて、各計算ノード5の結果送信時間を算出し、算出結果を計算割当部12に供給する。
【0035】
例えば、計算ノード5−1の結果送信時間の算出の場合、サーバ1から、スイッチングハブ6−1、ルータ7、およびスイッチングハブ6−2を介して計算ノード5−1にデータを転送する時間を算出するとともに、計算ノード5−1から、スイッチングハブ6−2およびルータ7を介して表示端末4にデータを転送する時間を算出し、それらの合計時間を算出する。
【0036】
なお、結果送信時間の算出処理は、計算割当部12から指示を受けた時に実行するだけでなく、システムバス帯域やシステムバスクロックなどから予測して保持しておくようにしてもよい。
【0037】
優先処理領域情報取得部16は、計算割当部12からの指示に基づいて、情報管理装置3で管理されている電子カルテなどから、画像処理の実行が要求されている医用画像データの優先処理領域(病変部)の情報を取得し、取得結果を計算割当部12に供給する。
【0038】
割当結果送信部17は、計算割当部12から供給された割当結果を、各計算ノード5に送信する。
【0039】
次に、図3のフローチャートを参照して、サーバ1が実行する画像分散処理について説明する。
【0040】
まず、表示端末4は、ユーザによって図示せぬ入力部が用いられ、所定の医用画像データの画像処理実行の指示を受け付けると、ルータ7およびスイッチングハブ6−1を介してサーバ1に対して、所定の医用画像データの画像処理を要求する。
【0041】
ステップS1において、要求受付部11は、表示端末4から画像処理の実行要求を受け付けたか否かを判定し、画像処理の実行要求を受け付けたと判定するまで待機する。そして、ステップS1において、画像処理の実行要求を受け付けたと判定した場合、要求受付部11は、画像処理の実行要求を計算割当部12に供給し、ステップS2に進む。
【0042】
ステップS2において、計算割当部12は、実行要求に含まれる医用画像データを指定する情報に基づいて、医用画像データベース13に記憶されている医用画像データの中から、所定の医用画像データを読み出す。
【0043】
また計算割当部12は、読み出した医用画像データのデータ量を得る。これにより、例えば、図4に示すように、画像処理のデータ量が40単位であることを得る。
【0044】
単位とは、例えば、図4に示す格子矩形で表わされる横M画素×縦N画素×Lスライス(画像)からなる部分ボリュームデータである。あるいは、このような直方体形状に限らず、例えば、ボクセル数が均等になるように分割するなど、単位の内容を任意に設定することも可能である。
【0045】
画像処理の単位データ(あるいは単位計算量)は、サーバ1によって予め定められているが、処理するデータ量に応じて、あるいは、計算ノード5の処理負荷に応じて、単位データのデータ量を加減するようにしてもよい。
【0046】
さらに、計算割当部12は、画像処理の実行要求に基づいて、計算能力取得部14、データ転送時間取得部15、および優先処理領域情報取得部16に対して、各種処理の実行を指示し、ステップS3−1乃至S3−3に進む。
【0047】
ステップS3−1において、計算能力取得部14は、計算割当部12の指示に応じて、各計算ノード5の計算能力を取得する。
【0048】
ステップS3−2において、データ転送時間取得部15は、計算割当部12の指示に応じて、サーバ1と各計算ノード5の間のデータ転送時間、および各計算ノード5と表示端末4の間のデータ転送時間を取得する。
【0049】
図5は、ステップS3−1,3−2の処理により取得された、単位データ当たりの計算能力(処理時間)、および、データ転送時間の例が示されている。なお、計算ノード5−3,5−4は、説明を簡単にするために、画像処理(分散処理)ができない状態(例えば、CPU使用率が高くデータを割り当てることができない、または電源オフである)とする

【0050】
図5の例では、計算ノード5−1の計算能力が「8秒」、計算ノード5−1とサーバ1との間のデータ転送時間が「1秒」、計算ノード5−1と表示端末4との間のデータ転送時間が「1秒」であることが示され、計算ノード5−2の計算能力が「2秒」、計算ノード5−2とサーバ1との間のデータ転送時間が「2秒」、計算ノード5−2と表示端末4との間のデータ転送時間が「2秒」であることが示され、計算ノード5−3の計算能力が「3秒」、計算ノード5−3とサーバ1との間のデータ転送時間が「6秒」、計算ノード5−3と表示端末4との間のデータ転送時間が「6秒」であることが示されている。
【0051】
図3の説明に戻る。ステップS3−3において、優先処理領域情報取得部16は、計算割当部12の指示に応じて、情報管理装置3で管理されている電子カルテなどから、画像処理を実行する医用画像データの優先処理領域(病変部)の情報を取得する。例えば、図4に示した医用画像データにおいて、P1乃至P4の領域が優先処理領域である場合、画
像処理のデータ量40単位のうち、優先処理領域のデータ量が4単位であることを認識する。
【0052】
ステップS4において、計算割当部12は、ステップS3−1の処理で取得した各計算ノード5の計算能力、および、ステップS3−2の処理で取得したデータ転送時間に基づいて、各計算ノードの結果送信時間を算出する。これにより、図5に示すように、計算ノード5−1は「10秒」(=8秒+1秒+1秒)、計算ノード5−2は「6秒」(=2秒+2秒+2秒)、計算ノード5−3は「15秒」(=3秒+6秒+6秒)が算出される。
【0053】
ステップS5において、計算割当部12は、ステップS4の処理で算出した結果送信時間に基づいて、医用画像データの割当処理を実行する。
【0054】
ここで、図6のフローチャートを参照して、図3のステップS5における、第1の実施の形態での医用画像データの割当処理の詳細について説明する。
【0055】
ステップS11において、計算割当部12は、ステップS4の処理で算出された結果送信時間の最も短い計算ノード5に、ステップS3−3の処理で取得した優先処理領域の医用画像データの画像処理を割り当てる。図5の例では、計算ノード5−2が最も結果送信時間が短いため、優先処理領域の4単位の医用画像データを計算ノード5−2に割り当てる。
【0056】
ステップS12において、計算割当部12は、優先処理領域の4単位の医用画像データ以外の残りの医用画像データを、均等に割り当てるか、あるいは、表示端末4で分散処理結果が最短時間で得られるように各計算ノードに割り当てる。
【0057】
均等に割り当てる場合には、36(=40−4)/3=12単位ずつ各計算ノード5に割り当てる。
【0058】
表示端末4で分散処理結果が最短時間で得られるように割り当てる場合には、以下のようにして決定する。なお、端数(少数点以下)の扱いは、予め計算ノード5に優先順位を付けておき、その優先順位に基づいて、整数に丸める。
【0059】
計算ノード5−1の割当数=36×(1/10)/(1/10+1/6+1/15)≒11単位
計算ノード5−2の割当数=36×(1/6)/(1/10+1/6+1/15)=18単位
計算ノード5−3の割当数=36×(1/15)/(1/10+1/6+1/15)≒7単位
以上のようにして、計算割当部12は、各計算ノード5に医用画像データの画像処理を割り当て、その割当結果を割当結果送信部17に通知する。
【0060】
図3の説明に戻る。ステップS6において、割当結果送信部17は、ステップS5の処理で計算割当部12により割り当てられた割当結果を、各計算ノード5に送信する。これにより、40単位のデータ量の医用画像データのうち、計算ノード5−1には、11単位分の医用画像データの画像処理が割り当てられ、計算ノード5−2には、4単位分の優先処理領域の医用画像データを含む22単位分の医用画像データの画像処理が割り当てられ、計算ノード5−3には、7単位分の医用画像データの画像処理が割り当てられる。
【0061】
なお、割当結果には、医用画像データおよびその画像処理の実行要求が含まれるだけでなく、画像処理結果を表示端末4に転送指示する情報も含まれる。
【0062】
以上のように、第1の実施の形態によれば、ユーザが直ちに画像処理結果を確認したい病変部がある場合でも、良好な表示応答が得られるように、画像処理を分散させることが
可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態においては、医用画像データの画像処理を、表示端末4で分散処理結果がほぼ均一に得られるように割り当てる点に特徴を有するものである。
【0063】
図7は、図3のステップS5における、第2の実施の形態での医用画像データの割当処理の詳細について説明する。
【0064】
ステップS21において、計算割当部12は、ステップS4の処理で算出された結果送信時間に基づいて、医用画像データの画像処理を、表示端末4で分散処理結果がほぼ均一に得られるように各計算ノード5に割り当てる。図5の例では、計算ノード5−1の結果送信時間は「10秒」、計算ノード5−2の結果送信時間は「6秒」、計算ノード5−3の結果送信時間は「15秒」が得られており、表示端末4で分散処理結果がほぼ均一に得られるように割り当てる場合には、以下のようにして決定する。
【0065】
計算ノード5−1の割当数=40×(1/10)/(1/10+1/6+1/15)≒12単位
計算ノード5−2の割当数=40×(1/6)/(1/10+1/6+1/15)=20単位
計算ノード5−3の割当数=40×(1/15)/(1/10+1/6+1/15)≒8単位
以上のように割り当てを決定することで、計算ノード5−1から表示端末4に分散処理結果が表示されるのは、10秒×12単位=120秒後、計算ノード5−2から表示端末4に分散処理結果が表示されるのは、6秒×20単位=120秒後、計算ノード5−3から表示端末4に分散処理結果が表示されるのは、15秒×8単位=120秒後となる。
【0066】
以上のように、第2の実施の形態によれば、一部の分散処理の結果が遅れることなく、良好な表示応答を得ることが可能となる。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態においては、医用画像データの画像処理を各計算ノード5に割り当てた後に、ある計算ノード5でキーボードやマウス等の操作が頻繁にあることを検出した場合、割り当てられた分散処理を中止し、他の計算ノード5に再度割り当てを行う点に特徴を有するものである。
【0067】
図8は、第3の実施の形態での医用画像データの再割当処理を説明するフローチャートである。
【0068】
なお、この処理を開始するにあたり、上述した第1または第2の実施の形態によって、各計算ノード5に医用画像データの画像処理の割り当てが行われており、各計算ノード5で医用画像データの画像処理が実行されようとしている。
【0069】
具体的には、計算ノード5−1では、12単位のデータ量の医用画像データの画像処理が実行されようとしており、計算ノード5−2では、20単位(4単位の優先処理領域を含む)のデータ量の医用画像データの画像処理が実行されようとしており、計算ノード5−3では、8単位のデータ量の医用画像データの画像処理が実行されようとしている。
【0070】
ステップS31において、要求受付部11は、計算ノード5から分散処理の中止が通知されたか否かを判定する。
【0071】
例えば、計算ノード5−2において、ユーザによってキーボードやマウス等の操作(イベント)が頻繁にあると検知された場合、割り当てられた分散処理を中止し、中止した旨を、スイッチングハブ6−2、ルータ7、およびスイッチングハブ6−1を介してサーバ
1に通知する。
【0072】
このように、計算ノード5−2から分散処理の中止が通知されたと判定した場合、要求受付部11は、分散処理の中止を計算割当部12に通知し、ステップS32に進む。
【0073】
ステップS32において、計算割当部12は、分散処理の中止を受け、分散処理が中止された計算ノード5に割り当てられていた医用画像データを、表示端末4で分散処理結果がほぼ均一に得られるように、他の計算ノード5に再度割り当てる。
【0074】
つまり、計算ノード5−2に割り当てられていた20単位のデータ量の医用画像データを、以下のようにして再度割り当てる。
【0075】
計算ノード5−1の割当数=20×(1/10)/(1/10+1/15)≒12単位
計算ノード5−3の割当数=20×(1/15)/(1/10+1/15)≒8単位
以上のようにして、計算割当部12は、各計算ノード5に医用画像データの画像処理を再度割り当て、その再割当結果を割当結果送信部17に通知する。
【0076】
ステップS33において、割当結果送信部17は、ステップS32の処理で計算割当部12により再度割り当てられた再割当結果を、各計算ノード5に送信する。これにより、計算ノード5−2に割り当てられていた20単位のデータ量の医用画像データのうち、計算ノード5−1には、12単位分の医用画像データの画像処理が再度割り当てられ、計算ノード5−3には、8単位分の医用画像データの画像処理が再度割り当てられる。
【0077】
また、計算ノード5−2に割り当てられていた4単位分の優先処理領域の医用画像データのうち、分散処理結果を最短時間で得るようにするには、3単位を計算ノード5−1に、1単位を計算ノード5−3に、あるいは、2単位ずつ計算ノード5−1と計算ノード5−3に再度割り当てるようにすれば良い。
【0078】
ステップS31において、要求受付部11は、計算ノード5から分散処理の中止が通知されていないと判定した場合、ステップS34に進み、画像処理結果が表示端末4に表示されたか否か判定する。つまり、各計算ノード5で行われた画像処理の分散処理結果が表示端末4に転送され、そこに表示されたとき、画像処理結果の表示を示す情報をサーバ1に通知するようになされている。
【0079】
ステップS34において、要求受付部11は、画像処理結果が表示端末4にまだ表示されていないと判定した場合、ステップS31に戻り、上述した処理を繰り返し実行する。そして、ステップS34において、要求受付部11は、画像処理結果が表示端末4に表示されたと判定した場合、処理を終了する。
【0080】
以上のように、第3の実施の形態によれば、イベント検知により分散処理を続行することが困難な場合にも、中断してしまった画像処理を他の計算ノードに再度割り当てることが可能となる。
【0081】
なお、イベントが頻繁にある計算ノード5を予め把握しておき(イベント検知を見込んでおき)、その計算ノード5に優先処理領域の医用画像データが割り当てられた時点で、他の計算ノード5に重複して割り当てるようにしてもよい。
【0082】
例えば、計算ノード5−2に割り当てられた20単位のデータ量のうち、4単位分の優先処理領域の医用画像データを、計算ノード5−1と計算ノード5−3にも割り当てておき、重複した割り当て分の処理順序を後方にしておく。そして、計算ノード5−2でイベ
ントが検知された場合、計算ノード5−1と計算ノード5−3に重複して割り当てられた優先処理領域の医用画像データの画像処理の処理順序を前にして、先に優先処理領域の医用画像データの画像処理を実行させることができる。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態においては、急患の医用画像データの画像処理を、画像処理結果が最短時間で得られるように割り当てる点に特徴を有するものである。
【0083】
図9は、第4の実施の形態での、急患時の画像分散処理を説明するフローチャートである。
【0084】
例えば、急患の医用画像の読影を行うユーザが表示端末4を操作し、急患の医用画像データの画像処理の実行を指示すると、ルータ7およびスイッチングハブ6−1を介してサーバ1に対して、急患の医用画像データの画像処理を要求する。
【0085】
ステップS41において、要求受付部11は、急患が入ったか否か、すなわち、表示端末4から、急患の医用画像データの画像処理の実行要求を受け付けたか否かを判定し、急患が入るまで待機する。なお、通常の医用画像データの画像処理の要求を受け付けた場合には、図3のフローチャートを用いて上述した画像分散処理が行われる。
【0086】
ステップS41において、急患が入ったと判定した場合、要求受付部11は、急患の医用画像データの画像処理の実行要求を計算割当部12に供給し、ステップS42に進む。
【0087】
ステップS42において、計算割当部12は、実行要求に含まれる急患の医用画像データを指定する情報、および、優先処理領域情報取得部16によって取得された優先処理領域(病変部)の情報に基づいて、医用画像データベース13に記憶されている医用画像データの中から、急患の優先処理領域の医用画像データを読み出す。
【0088】
ステップS43において、計算割当部12は、各計算ノード5の結果送信時間に基づいて、画像処理結果が最短時間で得られるように、急患の優先処理領域の医用画像データの画像処理を各計算ノード5に割り当てる。なお、各計算ノードの結果送信時間は、計算能力取得部14によって取得された各計算ノード5の計算能力、および、データ転送時間取得部15によって取得された各端末間のデータ転送時間に基づいて、過去に算出された結果送信時間を用いれば、結果送信時間を実測(算出)する時間を省略することができ、急患の画像処理結果をより早く表示させることができる。
【0089】
ステップS44において、割当結果送信部17は、ステップS43の処理で計算割当部12により割り当てられた割当結果を、各計算ノード5に送信する。
【0090】
以上のように、第4の実施の形態によれば、急患の病変部の画像処理を先に実行することで、ユーザは、直ちに急患の画像処理結果を確認することが可能となる。
[変形例]
1.以上において、例えば、急患が入ったときに他の画像処理を実行していた場合、他の画像処理を中断し、急患の病変部の画像処理を優先させることもできる。この場合、急患の病変部の画像処理終了後、中断していた画像処理を再開させるが、画像処理が中断されることによって、処理結果の信頼性が低いため、中断されたデータ単位の最初から画像処理を再開させるようにする。
【0091】
2.以上においては、画像処理として、ボリュームレンダリングを例として説明したが、CAD(Computer aided diagnosis)、プラーク解析、フライスルー(仮想内視鏡表示機
能)、骨抜き(Caスコアリング)、マルチボリュームレジストレーションなど、計算量の大きい画像処理に適用することも可能である。
【0092】
3.この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせたりすることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0093】
1 サーバ
4 表示端末
5−1乃至5−5 計算ノード
12 計算割当部
14 計算能力取得部
15 データ転送時間取得部
16 優先処理領域情報取得部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像データの画像処理を、ネットワークに接続された複数の計算機で分散処理させ、分散処理結果を表示端末に表示させる医用画像分散処理装置において、
前記複数の計算機の計算能力を取得する計算能力取得手段と、
前記医用画像分散処理装置と前記複数の計算機との間のデータ転送時間、および、前記複数の計算機と前記表示端末との間のデータ転送時間を取得するデータ転送時間取得手段と、
前記計算能力取得手段により取得された前記計算能力、および、前記データ転送時間取得手段により取得された前記データ転送時間に基づいて、前記分散処理結果が前記表示端末に送信されるまでの結果送信時間を算出し、その結果送信時間から、前記医用画像データの画像処理を、前記複数の計算機に割り当てる計算割当手段と
を備えることを特徴とする医用画像分散処理装置。
【請求項2】
前記医用画像データの優先処理領域情報を取得する優先処理領域情報取得手段をさらに備え、
前記計算割当手段は、前記優先処理領域情報取得手段により取得された前記優先処理領域情報に基づいて、前記医用画像データのうち、優先処理領域データの画像処理を、前記結果送信時間が最も短い計算機に割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像分散処理装置。
【請求項3】
前記計算割当手段は、前記表示端末で前記分散処理結果がほぼ均一に得られるように、前記医用画像データの画像処理を、前記複数の計算機に割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像分散処理装置。
【請求項4】
前記計算割当手段は、前記医用画像データの画像処理を、前記複数の計算機に割り当てた後、分散処理が中止された場合、分散処理が中止された計算機に割り当てられていた画像処理を、他の計算機に再度割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像分散処理装置。
【請求項5】
前記計算割当手段は、急患の前記医用画像データの画像処理を、前記表示端末で画像処理結果が最短時間で得られるように、前記複数の計算機に割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像分散処理装置。
【請求項6】
医用画像データの画像処理を、ネットワークに接続された複数の計算機で分散処理させ、分散処理結果を表示端末に表示させる医用画像分散処理装置が備えるコンピュータに実行させる制御プログラムにおいて、
前記複数の計算機の計算能力を取得する計算能力取得ステップと、
前記医用画像分散処理装置と前記複数の計算機との間のデータ転送時間、および、前記複数の計算機と前記表示端末との間のデータ転送時間を取得するデータ転送時間取得ステップと、
前記計算能力取得ステップにより取得された前記計算能力、および、前記データ転送時間取得ステップにより取得された前記データ転送時間に基づいて、前記分散処理結果が前記表示端末に送信されるまでの結果送信時間を算出し、その結果送信時間から、前記医用画像データの画像処理を、前記複数の計算機に割り当てる計算割当ステップと
を含むことを特徴とする制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−223(P2012−223A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137056(P2010−137056)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】