説明

医用画像診断装置

【課題】CT画像と核医学診断画像とをそれぞれに適切な条件で撮影しながら、両画像間の臓器の位置の不一致に起因する減弱補正のエラーを軽減する。
【解決手段】CT画像処理部7aおよびPET画像処理部7bは、肝臓の位置をCT画像およびPET画像のそれぞれに基づいて検出する。CT画像処理部7aは、これら2つの位置のずれ量を算出する。CT画像処理部7aは、CT画像から肝臓の輪郭を抽出し、この抽出した輪郭の内部領域を上記のずれ量を減少するようにCT画像中で移動させてCT画像を修正する。PET画像処理部7bは、上記の修正されたCT画像に基づいて減弱補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマカメラ、SPECT(single photon emission computed tomography)、あるいはPET(positron emission tomography)などの核医学診断装置、またはSPECT/PETと、X線CT(computer tomography)とを組み合わせたSPECT−CTやPET−CTなどの複合型の医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SPECTもしくはPETは、被検体に投与した放射性医薬品の体内分布を断層画像として得る。SPECT/PETの測定対象であるガンマ線は体内でコンプトン散乱、光電効果により減弱される。そのため放射性医薬品の正確な体内分布を測定するためには、この減弱によるガンマ線の減少を補正する必要がある。この補正は、減弱補正と呼ばれる。減弱補正には、同じ測定対象のガンマ線の減弱係数の体内分布が必要である。この減弱係数分布を得る方法の一つとしては、CT画像を利用する方法がある。このCT画像を利用する方法においては、CT画像とSPECT/PET画像との位置が一致していることが必要である。この位置の一致を得るために、同一の装置でSPECT/PET画像とCT画像とを撮影するSPECT−CT装置あるいはPET−CT装置がある。またCT画像とSPECT/PET画像とは別々の装置で撮影し、ソフトウエアにより両画像を位置合せする手法もある。
【0003】
しかし、いずれの方法でも、SPECT/PET画像とCT画像とには、呼吸状態の違いによる臓器位置の不一致が生じることが避けられない。これは、SPECT/PETの撮影は、撮影時間が長く、かつ位置分解能が比較的低いために自由呼吸下で行われるが、CTの撮影は撮影時間が短く、かつ比較的高い位置分解能が得られるために息止めで行われるためである。すなわち、この呼吸状態の違いにより、SPECT/PET画像とCT画像とでは、被検体の同一領域を撮影していても呼吸により移動する臓器の位置は変化する。例えば、呼吸状態による肝臓位置の変化を図6に示す。
【0004】
この問題を解決するために、従来は以下のような手法が取られていた。
【0005】
(1) SPECT/PET画像と同じくCT画像を自由呼吸で撮影する方法。
【0006】
(2) CT画像と同じくSPECT/PET画像を呼吸停止で撮影する方法(特許文献1を参照)。
【0007】
(3) 呼吸同期収集にて撮影する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−195407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の(1)乃至(3)の各方法によれば、いずれもCT画像およびSPECT/PET画像がいずれも同じ呼吸状態で撮影されるため、両画像間での臓器の位置の不一致は生じない。しかしながら、上記(1)の方法ではCT画像の画質が劣化してしまうために診断に使用するに十分なCT画質が得られず、上記(2)の方法ではSPECT/CT画像の撮影が煩雑になり、上記(3)の方法では撮影時間が長くなってしまう。
【0010】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、CT画像と核医学診断画像とをそれぞれに適切な条件で撮影しながら、両画像間の臓器の位置の不一致に起因する減弱補正のエラーを軽減することが可能な医用画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様による医用画像診断装置は、被検体を透過するX線を検出する検出手段と、前記検出手段での前記X線の検出状況に基づいて前記被検体についてのCT画像を再構成する第1の再構成手段と、放射性医薬品が放射する放射線に基づいて前記放射性医薬品の被検体内での分布を測定する測定手段と、前記測定手段で測定された前記分布を表した核医学診断画像を再構成する第2の再構成手段と、前記被検体内での所定の解剖学的部位の位置を前記CT画像および前記核医学診断画像のそれぞれに基づいて判定する判定手段と、前記CT画像および前記核医学診断画像のそれぞれに基づいて前記判定手段により判定された位置どうしのずれ量を算出する算出手段と、前記CT画像から前記解剖学的部位の輪郭を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記輪郭の内部領域を前記ずれ量を減少するように前記CT画像中で移動させて前記CT画像を修正する修正手段と、前記放射線の減少度のばらつきの影響を前記修正手段により修正されたCT画像に基づいて減少するように前記核医学診断画像を補正する補正手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、CT画像と核医学診断画像とをそれぞれに適切な条件で撮影しながら、両画像間の臓器の位置の不一致に起因する減弱補正のエラーを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置の構成を示す図。
【図2】図1中のCT画像処理部およびPET画像処理部の処理手順を示すフローチャート。
【図3】PET画像に肝臓の上縁を表す線を重ねて表した図。
【図4】CT画像に肝臓の上縁を表す線を重ねて表した図。
【図5】CT画像における肝臓の位置を修正する様子を示した図。
【図6】呼吸状態による肝臓位置の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係る医用画像診断装置100の構成を示す図である。
【0016】
医用画像診断装置100は、CT架台1、高電圧発生部2、PET架台3、寝台4、架台移動機構5、機構制御部6、画像生成部7、表示部8、操作部9およびシステム制御部10を含む。
【0017】
CT架台1は、X線管、X線検出器、回転リング、データ収集部、回転機構およびチルト機構などを含んだ周知の内部構造を持つ。またCT架台1は、その中央にほぼ円筒状の開口部(以下、CT開口部と称する)が形成された筐体を有する。X線管およびX線検出器は、CT開口部を挟んで互いに対向する状態で回転リングにより保持されている。X線管は、X線検出器に向けてX線を照射する。X線検出器は、到来したX線を検出し、電気信号に変換する。データ収集部は、X線検出器から出力される電気信号を収集して処理する。回転機構は、回転リングをCT開口部の軸心を回転軸として回転させる。チルト機構は、回転リングの回転軸の向きを変化させる。
【0018】
高電圧発生部2は、高電圧発生器2aおよびX線制御部2bを含む。高電圧発生器2aは、X線管の陰極から発生する熱電子を加速するために陽極と陰極の間に印加するための高電圧を発生する。X線制御部2bは、システム制御部10からの指示信号に従い、X線管における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件を調整するように高電圧発生器2aを制御する。
【0019】
PET架台3は、ガンマ線検出器および信号処理部を含んだ周知の内部構造を持つ。またPET架台3は、その中央にほぼ円筒状の開口部(以下、PET開口部と称する)が形成された筐体を有する。ガンマ線検出器は、PET開口部の外周に配置されたリング上に複数が配列されている。ガンマ線検出器は、被検体の体内に投与されたから放射性医薬品から放出されるガンマ線を光信号に変換し、更にこの光信号を電気信号に変換して出力する。信号処理部は、ガンマ線検出器から出力される電気信号を処理する。
【0020】
なお、CT架台1とPET架台3とは、CT開口部とPET開口部とが同一の直線状に並ぶように配置される。
【0021】
寝台4は、天板4aと天板移動機構とを含む。天板4a上には、被検体が載置される。天板4aは、その長手方向がCT開口部とPET開口部との配列方向に一致する。天板4aの長手方向に直交した断面についての断面形状は、載置された被検体とともにCT開口部とPET開口部の内部に入り込むことが可能な形状となっている。天板移動機構は、天板4aを昇降させる。
【0022】
架台移動機構5は、CT架台1およびPET架台3を天板4aの長手方向に沿った方向に往復移動させる。
【0023】
機構制御部6は、CT架台1の回転機構およびチルト機構、寝台4の天板移動機構、ならびに架台移動機構5の動作を制御する。
【0024】
画像生成部7は、CT画像処理部7a、PET画像処理部7bおよび画像処理部7cを含む。CT画像処理部7aは、CT架台1のデータ収集部で収集されたデータを処理してCT画像を再構成する。CT画像処理部7aは、減弱補正に使用するためのCT画像(以下、補正用CT画像と称する)を生成するための処理機能も備える。PET画像処理部7bは、PET架台3の信号処理部から出力されたデータを処理してPET画像を再構成する。PET画像処理部7bは、PET画像を再構成するための減弱補正を、CT画像処理部7aで生成された補正用CT画像に基づいて行う処理機能も備える。画像処理部7cは、CT画像処理部7aが生成したCT画像にPET画像処理部7bが生成したPET画像を重ね合わせて合成処理を行い、合成画像を生成する。画像生成部7は、CT画像、PET画像および合成画像を表示部8に出力する。
【0025】
CT画像処理部7aは、補正用CT画像を生成するための処理機能として、次の各機能を備える。この機能の1つは、被検体内での肝臓の位置をCT画像およびPET画像のそれぞれに基づいて判定する。上記の機能の1つは、CT画像およびPET画像のそれぞれに基づいて判定した位置どうしのずれ量を算出する。上記の機能の1つは、CT画像から被検体の肝臓の輪郭を抽出する。そして上記の機能のもう1つは、抽出した輪郭の内部領域をずれ量を減少するようにCT画像中で移動させてCT画像を修正することによって補正用CT画像を生成する。
【0026】
表示部8は、液晶やCRT等のモニタを備え、画像生成部7で処理された画像データを表示する。
【0027】
操作部9は、キーボード、トラックボール、ジョイスティック、マウスなどの入力デバイスや表示パネル、更には、各種スイッチ等を備えたインターラクティブなインターフェイスであり、年齢、性別、体格、検査部位、検査方法、過去の診断履歴など被検体情報や撮影対象部位(対象臓器)の入力、CT架台1のチルト、天板4a、PET架台3、または寝台4の移動による撮影位置などの各種撮影条件の設定、各種コマンドの入力を行なう。
【0028】
システム制御部10は、例えば図示しないCPUと記憶回路とを含んで構成される。システム制御部10は、従来よりある同種の装置が備える各種の動作を行うように各部を制御する機能を備える。その機能は例えば、CT画像およびPET画像を得るための周知の制御を行う機能である。
【0029】
次に以上のように構成された医用画像診断装置100の動作について説明する。
【0030】
医用画像診断装置100は、既存のPET/CT装置と同様な動作を行うことが可能である。その他に医用画像診断装置100は、被検体の呼吸により被検体内での位置が変化する解剖学的部位を含む領域を撮影する際に、以下に説明するような特徴的な動作を行う。なお、PETの位置分解能は約1cmであることから、上記の解剖学的部位は、呼吸により位置が大きく変動する部位とする。また、上記の解剖学的部位は、呼吸に伴う位置の変化に伴ってその形は変化しないものと仮定する。さらに、上記の解剖学的部位はPETでも画像化される部位とする。ここでは、上記の解剖学的部位を肝臓とする。
【0031】
まず、CT架台1におけるCT撮影と、PET架台3におけるPET撮影とをそれぞれ行う。なお、このCT撮影およびPET撮影は、いずれが先に行われても良い。かつ、CT撮影は息止めで、またPET撮影は自由呼吸下で行われる。
【0032】
図2は図1中のCT画像処理部7aおよびPET画像処理部7bの処理手順を示すフローチャートである。
【0033】
ステップSa1においてPET画像処理部7bは、PET撮影によって収集されたデータ(以下、PET収集データと称する)をPET架台3から取得する。
【0034】
ステップSa2においてPET画像処理部7bは、上記の取得したPET収集データに基づいてPET画像を再構成する。なお、この再構成処理においては、減弱補正は行わない。
【0035】
ステップSa3においてPET画像処理部7bは、上記の再構成したPET画像に基づいて、肝臓の位置(以下、PET肝臓位置と称する)を検出する。これは、PET画像からしきい値法などの周知の手法を用いてPET画像処理部7bが自動的に行っても良いし、操作者の目視による輪郭描出などに基づいて行っても良い。
【0036】
図3はPET画像21に肝臓の上縁を表す線22を重ねて表した図である。PET肝臓位置は、例えばこのような線22の位置として検出される。
【0037】
ステップSa4においてPET画像処理部7bは、上記の検出したPET肝臓位置をCT画像処理部7aに通知する。
【0038】
一方、ステップSb1においてCT画像処理部7aは、CT撮影によって収集されたデータ(以下、CT収集データと称する)をCT架台1から取得する。
【0039】
ステップSb2においてCT画像処理部7aは、上記の取得したCT収集データに基づいてCT画像を再構成する。
【0040】
ステップSb3においてCT画像処理部7aは、上記の再構成したCT画像に基づいて、肝臓の位置(以下、CT肝臓位置と称する)を検出する。これは、CT画像からしきい値法などの周知の手法を用いてCT画像処理部7aが自動的に行っても良いし、操作者の目視による輪郭描出などに基づいて行っても良い。
【0041】
図4はCT画像31に肝臓の上縁を表す線32を重ねて表した図である。CT肝臓位置は、例えばこのような線32の位置として検出される。
【0042】
ステップSb4においてCT画像処理部7aは、前述したようにPET画像処理部7bから通知されたPET肝臓位置を取得する。
【0043】
ステップSb5のおいてCT画像処理部7aは、CT肝臓位置とPET肝臓位置とのずれ量を算出する。
【0044】
ステップSb6においてCT画像処理部7aは、上記のように算出したずれ量を補償するようにCT画像における肝臓の位置を修正する。すなわちCT画像処理部7aは、CT画像における肝臓の領域を抽出し、当該領域内の画像を上記のずれ量だけCT画像中で移動させる。図5はこの修正の様子を示す図である。
【0045】
ステップSb7においてCT画像処理部7aは、上記の修正がなされた後のCT画像(以下、修正CT画像と称する)を、PET画像処理部7b、画像処理部7cおよび表示部8へと出力する。そしてこれをもって、CT画像処理部7aは図2の処理を終了する。
【0046】
さて、ステップSa4のおいてPET肝臓位置をCT画像処理部7aへと通知したのちにPET画像処理部7bは、上記のようにCT画像処理部7aから修正CT画像が出力されるのを待ち受け、修正CT画像が出力されたならば、これをステップSa5において取得する。
【0047】
ステップSa6においてPET画像処理部7bは、上記の修正CT画像に基づいて、ステップSa2で再構成してあったPET画像についての減弱補正を行う。あるいは、ステップSa1で取得されたPET収集データに対して減弱補正を施した上で、この補正後のデータに基づいてPET画像を改めて再構成する。
【0048】
ステップSa7においてPET画像処理部7bは、上記のように補正が成されたPET画像(補正済みPET画像)を、画像処理部7cおよび表示部8へと出力する。そしてこれをもって、PET画像処理部7bは図2の処理を終了する。
【0049】
かくして本実施形態によれば、呼吸状態の違いによりCT画像とPET画像との間に生じた肝臓の位置のずれを修正したCT画像に基づいてPET画像の減弱補正が行われる。このため、上記の肝臓の位置のずれに起因した補正のエラーが軽減される。
【0050】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0051】
PETに代えてSPECTまたはSPECT/PETを用いる場合にも本発明は同様に適用可能である。
【0052】
CT架台1およびPET架台3を移動させずに寝台4および天板4aを移動させる構成としても良いし、CT架台1およびPET架台3と寝台4および天板4aとの双方を移動させる構成としても良い。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…CT架台、2…高電圧発生部、2a…高電圧発生器、2b…X線制御部、3…PET架台、4…寝台、4a…天板、5…架台移動機構、6…機構制御部、7…画像生成部、7a…CT画像処理部、7b…PET画像処理部、7c…画像処理部、8…表示部、9…操作部、10…システム制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過するX線を検出する検出手段と、
前記検出手段での前記X線の検出状況に基づいて前記被検体についてのCT画像を再構成する第1の再構成手段と、
放射性医薬品が放射する放射線に基づいて前記放射性医薬品の被検体内での分布を測定する測定手段と、
前記測定手段で測定された前記分布を表した核医学診断画像を再構成する第2の再構成手段と、
前記被検体内での所定の解剖学的部位の位置を前記CT画像および前記核医学診断画像のそれぞれに基づいて判定する判定手段と、
前記CT画像および前記核医学診断画像のそれぞれに基づいて前記判定手段により判定された位置どうしのずれ量を算出する算出手段と、
前記CT画像から前記解剖学的部位の輪郭を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記輪郭の内部領域を前記ずれ量を減少するように前記CT画像中で移動させて前記CT画像を修正する修正手段と、
前記放射線の減少度のばらつきの影響を前記修正手段により修正されたCT画像に基づいて減少するように前記核医学診断画像を補正する補正手段とを具備したことを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−183968(P2010−183968A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28763(P2009−28763)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】