説明

医用画像診断装置

【課題】ボリュームデータ内の注目部位の時間的な変位を一画面上で把握できる医用画像診断装置、特にX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線CT装置10a2は、投影データを基に2Dデータを生成する画像再構成部52と、2Dデータを基に3Dの実空間で表されるボリュームデータを生成するボリュームデータ生成部53と、ボリュームデータに対してMPR処理を施したMPRデータを生成して表示する画像処理部54と、ボリュームデータ内における特定線分を設定する線分設定部58と、複数時相の各ボリュームデータから、特定線分上の各データを抽出し、抽出された特定線分上の各データを時間軸に対して並べた線分・時系列データを生成する線分・時系列データ生成部59と、特定線分上の各データを複数時相毎に直線上のデータに変換し時間軸に対して並べた時系列グラフを生成して表示させる時系列グラフ生成部60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者(被検体)に関するスライス毎の2次元(2D:2 dimensional)データを基に3次元(3D:3 dimensional)データを生成して表示する技術に係り、特に、心臓等の動きのある臓器における時間的な変化量を表示する医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像診断技術は、コンピュータ技術の発展に伴って実用化されたX線CT(computerized tomography)装置、超音波診断装置及びMRI(magnetic resonance imaging)装置等によって急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。特に近年のX線CT装置やMRI装置では、生体情報の検出装置や演算処理装置の高速化及び高性能化に伴い、リアルタイムな画像データとしての2Dデータの表示が可能となっている。さらに、2Dデータを基にした3Dデータの表示も比較的容易に行なわれるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、X線CT装置では、X線を照射するX線管と照射されたX線を検出するX線検出器とを患者の周囲に対向して配置し、さらに、X線管及びX線検出器に対して体軸方向(スライス方向)に患者を相対的に移動させることによって、患者の複数スライス断面におけるX線投影データを収集する。そして、X線投影データに基に再構成を行なって生成した2Dデータを基に3Dデータの生成を行なっている。
【0004】
また、患者を体軸方向に連続移動させながらX線投影データの収集を行なう、所謂ヘリカル走査方式を用いることによって3Dデータの生成に要する時間は一段と短縮されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−160503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークステーション等の3D処理装置等では、時系列に複数の3Dデータを読み込んで、MPR(multi−planar reconstruction)処理したMPR画像の表示やボリュームレンダリング処理を施した3Dデータの表示や、それらの4D表示を行なったりすることはできたが、3Dデータに含まれる一部分(注目部位)の時間的な変化を簡便に把握することが難しかった。
【0007】
また、従来の4D表示は、投影表示された物体の全体的な動きを大まかに知ることはできるが、3Dデータに含まれる注目部位の動きを詳細に見たい時は、3Dデータに対するMPR処理やボリュームレンダリング処理等を用いていた。これらの処理による表示によると、前の時相で表示されたデータの前面に次の時相のデータが表示され、適宜画像の表示が更新されていく。よって、画面上の注目部位を時系列で観察する場合、オペレータは、ある時相で表示されたデータで注目部位の位置を記憶しておき、その記憶による注目部位の位置を基に、次の時相で表示されたデータ上で注目部位と思われる位置を捜索するしかなかった。また、時系列で多くのデータ上で注目部位と思われる位置を捜索する作業はオペレータにとって負荷が大きく、また個人差が生じていた。
【0008】
さらに、従来の4D表示によると、画面上で注目部位の時間的な変化量を測定する場合、時系列で更新表示される各データ上で、捜索された注目部位を見ながら目測で変位量を推定するしかなかった。
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、オペレータが、特定部分に係る注目部位の時間的な変位を一画面上で把握することができる医用画像診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る医用画像診断装置は、上述した課題を解決するために請求項1に記載したように、3Dの実空間で表されるボリュームデータに対してMPR処理を施したMPRデータ、又は、前記ボリュームデータに対してボリュームレンダリング処理を行なった3Dデータを生成して表示する画像処理部と、前記ボリュームデータ内における特定線分を設定する線分設定部と、前記ボリュームデータ生成部によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、前記特定線分上の各データをそれぞれ抽出し、抽出された前記特定線分上の各データを時間軸に対して並べた線分・時系列データを生成する線分・時系列データ生成部と、前記特定線分上の各データを複数時相毎に直線上のデータに変換し、複数時相毎の直線上のデータを時間軸に対して並べた時系列グラフを生成して表示させる時系列グラフ生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医用画像診断装置によると、オペレータが、特定部分に係る注目部位の時間的な変位を一画面上で把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る医用画像診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明に係る医用画像診断装置の第1実施形態を示すブロック図。
【図3】断面・時系列ボリュームデータの生成方法を説明するための図。
【図4】断面・時系列ボリュームデータを基にした3Dデータの一例を示す図。
【図5】断面・時系列ボリュームデータを基にしたMPRデータの一例を示す図。
【図6】MPRデータの生成のためのMPR断面の抽出を説明するための図。
【図7】本発明に係る医用画像診断装置の第1実施形態の動作を示すフローチャート。
【図8】本発明に係る医用画像診断装置の第2実施形態を示すブロック図。
【図9】時系列グラフの生成方法を説明するための図。
【図10】本発明に係る医用画像診断装置の第2実施形態の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る医用画像診断装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1は、患者(被検体)Mに関するスライス毎の画像データである2次元(2D:2 dimensional)データを基に、画像データである3次元(3D:3 dimensional)データを生成する医用画像診断装置10を示す。例えば、医用画像診断装置10としては、X線ビームを照射するX線源と体軸方向に多列の検出素子を具備するX線検出器とを回転軸を中心に回転させながら投影データを収集し、X線ビームのコーン角を考慮した逆投影処理を行なってスライス毎に2Dデータを生成し、その2Dデータを基に3Dデータを生成するX線CT装置10aが挙げられる。
【0016】
以下、医用画像診断装置10としてX線CT装置10aを採用した場合について説明するが、医用画像診断装置10は、X線CT装置10aに限定されるものではない。患者に関するスライス毎の2Dデータを基に3Dデータを生成する医用画像診断装置10は、例えば、超音波診断装置及びMRI(magnetic resonance imaging)装置等であってもよい。
【0017】
X線CT装置10aには、患者MをX線でスキャンするための架台(ガントリ)11と、その架台11の空洞部C内を、載置した患者Mを体軸方向(Z軸方向)に搬送するためのテーブル(寝台天板)12と、架台11の動作を制御すると共に架台11から送られたデータに基づいて所望の画像を生成して出力(表示)する操作コンソール13とが備えられる。
【0018】
架台11は、チルト方向(図示しない)に動作することができ、その架台11には、回転部15及び固定部を有する。架台11の回転部15には、X線管21、コリメータ22、開口制御モータ23、X線検出器24及びデータ収集装置25が設けられる。X線管21及びコリメータ22とX線検出器24とは互いに架台11の空洞部Cを挟んで、すなわち、患者Mを挟んで対向する位置に設けられる。回転部15は、その位置関係を維持した状態で空洞部Cの周りを回転するように構成されている。
【0019】
また、架台11の固定部には、メインコントローラ31、IF(interface)32a,32b、X線管コントローラ33、回転モータ35及びテーブルモータ37が設けられる。
【0020】
X線発生源であるX線管21は、X線管コントローラ33によって駆動が制御され、X線管21の管球(図示しない)からX線検出器に向かってX線を照射する。
【0021】
コリメータ22は、開口制御モータドライバによって駆動が制御され、X線管21から照射したX線の照射範囲を制限するための開口を有する。
【0022】
X線検出器24は、コリメータ22及び空洞部Cを経由してきたX線管21からのX線を検出する体軸方向に多列の検出素子(複数の構成(列数及びチャンネル数等)の異なる検出素子でもよい。)を具備する。X線検出器24のスライス方向には、X線検出素子が64列以上、例えば256列並設されている。
【0023】
データ収集装置25は、いわゆるDAS(data acquisition system)であり、X線検出器24から電気信号を投影データ(デジタルデータ)として取出す。この投影データは、X線発生器22とX線検出器24との回転角度(位相)によるビュー毎にX線検出器24のX線検出素子毎に得られる。1つのX線検出素子(1つのチャンネル)のデータについて、投影データを所定ビット幅のバイナリデータとして取得する。
【0024】
メインコントローラ31は、IF32aを介して操作コンソール13から受信した各種コマンドの解析を行ない、それに基づいてX線管コントローラ33、開口制御モータ23、回転モータ35、テーブルモータ37及びデータ収集装置25に対して各種制御信号を出力する。
【0025】
X線管コントローラ33は、X線管21に駆動信号を送信する。その制御信号によってX線管21は、X線を発生する。
【0026】
開口制御モータ23は、メインコントローラ31から開口制御モータドライバを介して駆動信号を受信する。その制御信号によって開口制御モータ23は、コリメータ22の開口幅を調整する。
【0027】
回転モータ35は、メインコントローラ31から回転モータドライバを介して駆動信号を受信する。その駆動信号によって回転モータ35は、回転部15がその位置関係を維持した状態で空洞部Cの周りを回転するように回転部15を回転させる。
【0028】
テーブルモータ37は、メインコントローラ31からテーブルモータドライバを介して駆動信号を受信する。その駆動信号によってテーブルモータ37は、テーブル12をZ軸方向に搬送する。
【0029】
また、データ収集装置25で収集されたデータは、IF32bを介して操作コンソール13に送出される。
【0030】
操作コンソール13は、コンピュータをベースとして構成されている、いわゆるワークステーションであり、病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークNと相互通信可能である。操作コンソール13は、大きくは、CPU(central processing unit)41、メモリ42、HD(hard disc)44、IF45a,45b,45c、入力装置46及び表示装置47等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、操作コンソール13を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、操作コンソール13は、記録媒体ドライブ48を具備する場合もある。
【0031】
CPU41は、オペレータによって入力装置46が操作等されることにより指令が入力されると、メモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HD44に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF45cで受信されてHD44にインストールされたプログラム、又は記録媒体ドライブ48に装着された記録媒体から読み出されてHD44にインストールされたプログラムを、メモリ42にロードして実行する。
【0032】
メモリ42は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備え、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いたりする記憶装置である。
【0033】
HD44は、不揮発性の半導体メモリ等によって構成される。HD44は、操作コンソール13にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、ユーザに対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置46によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0034】
IF45a,45b,45cは、各規格に応じた通信制御を行なう。IF45a,45bは架台11と通信を行なうものであり、架台11のIF32a,32bにそれぞれ接続される。また、IF45cは、電話回線を通じてネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、操作コンソール13は、IF45cからネットワークN網に接続することができる。
【0035】
入力装置46としては、オペレータによって操作が可能なキーボード及びマウス等が挙げられ、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0036】
表示装置47としては、モニタ等が挙げられる。表示しようとするイメージデータを展開するVRAM(video random access memory、図示しない)等のメモリにイメージデータ等を展開することで、画像を表示装置47に表示する。
【0037】
記録媒体ドライブ48は、記録媒体の着脱が可能となっており、記録媒体に記録されたデータ(プログラムを含む)を読み出して、バス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記録媒体に書き込む。このような記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0038】
図2は、本発明に係る医用画像診断装置の第1実施形態を示すブロック図である。
【0039】
図1に示した操作コンソール13のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール13は、医用画像診断装置10、例えばX線CT装置10a1として機能する。X線CT装置10a1には、投影データ収集部51、画像再構成部52、ボリュームデータ生成部53及び画像処理部54、断面設定部55及び断面・時系列ボリュームデータ生成部56が設けられる。加えて、X線CT装置10a1には、変化量測定部57が設けられてもよい。なお、X線CT装置10a1を構成する各構成要素がソフトウェア的に構築される場合について説明するが、その場合に限定されるものではなく、回路等によって各構成要素の全部又は一部がハードウェア的に構築される場合であってもよい。
【0040】
投影データ収集部51は、テーブル12に載置された患者Mに対して、診断又は治療計画の目的でCTモードにてCT撮影を行なうことによって、データ収集装置25からIF32b,45bを介して出力される投影角度毎の投影データを収集する機能を有する。投影データ収集部51はメインコントローラ31を介して、X線管21への高電圧の印加条件として、CT撮影に適した管電圧及び管電流の値、例えば120kV、300mAとなるようにX線管コントローラ33を制御する。また、投影データ収集部51はメインコントローラ31を介して、制御信号によってコリメータ22の開口幅を調整するように開口制御モータ23を制御する。さらに、投影データ収集部51はメインコントローラ31を介して、回転部15を所定方向へ連続的に適正な速度、例えば0.5秒/回転で駆動させるように回転モータ35を制御する。加えて、投影データ収集部51はメインコントローラ31を介して、駆動信号によってテーブル12を所定の速度でZ軸方向に搬送するようにテーブルモータ37を制御する。
【0041】
画像再構成部52は、投影データ収集部51によって収集された投影データを基に、X線ビームのコーン角を考慮した逆投影処理を行なってスライス毎に再構成して、2Dデータ(スライスデータ)を生成する機能を有する。
【0042】
ボリュームデータ生成部53は、画像再構成部52によって生成された2Dデータ間を補間処理することによって、3Dの実空間で表される3Dデータ(ボリュームデータ)を生成する機能を有する。ボリュームデータ生成部53は、投影データの収集順に従って、複数時相のボリュームデータをそれぞれ生成する。
【0043】
画像処理部54は、ボリュームデータ生成部53によって生成されたボリュームデータに対してMPR(multi−planar reconstruction)処理を施し、MPRデータ(アキシャル断面データ、サジタル断面データ及びコロナル断面データ等)を再構成して表示装置47に表示させる機能を有する。また、画像処理部54は、ボリュームデータ生成部53によって生成されたボリュームデータに対して表示条件(表示パラメータ)を基にボリュームレンダリング処理を行なうことによって3Dデータを生成して表示装置47に表示させる機能を有する。また、画像処理部54は、ボリュームデータ生成部53によって時間の経過と共に順次生成されるボリュームデータを基に、表示装置47に空間的時間的な表示としての4D表示(MPR動画表示及び3D動画表示)を行なわせることもできる。ここで、ボリュームレンダリング処理としては、影付けボリュームレンダリング、影なしボリュームレンダリング、最大値投影ボリュームレンダリング、最小値投影ボリュームレンダリング、平均値投影ボリュームレンダリング及び閾値指定による表面表示レンダリング等が挙げられ、オペレータによって任意に選択される。
【0044】
断面設定部55は、ボリュームデータ内における特定部分としての特定断面を設定する機能を有する。以下、ボリュームデータ内に設定される特定断面を特定の直交断面としてのXY断面(Z軸方向の座標)として説明するが、XY断面に限定されるものではない。具体的には、表示装置47への4D表示中にオペレータが入力装置46を用いて、ボリュームデータ内における時系列変化を見たい断面を指定することで、断面設定部55はボリュームデータ内のXY断面を設定する。
【0045】
断面・時系列ボリュームデータ生成部56は、ボリュームデータ生成部53によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、断面設定部55によって設定されたXY断面上の2Dデータをそれぞれ抽出し、抽出されたXY断面上の各2Dデータを時間軸に対して並べた断面・時系列ボリュームデータを生成する機能を有する。すなわち、断面・時系列ボリュームデータ生成部56は、複数時相の各ボリュームデータから、同一断面上の複数時相の2Dデータをそれぞれ抽出する。なお、断面・時系列ボリュームデータ生成部56は、必要に応じて、複数時相の2Dデータ間を補間処理して断面・時系列ボリュームデータを生成する。
【0046】
図3は、断面・時系列ボリュームデータの生成方法を説明するための図である。
【0047】
図3の上段には、複数時相(時相t0,t1,t2)のボリュームデータを並べている。また、図3の下段には、時相t0,t1,t2のボリュームデータから同一のXY断面上の時相t0,t1,t2の2Dデータを時間軸(T軸)に対して並べた断面・時系列ボリュームデータを示している。
【0048】
また、図2に示した画像処理部54は、断面・時系列ボリュームデータ生成部56によって生成された断面・時系列ボリュームデータに対してMPR処理を施し、MPRデータを再構成して表示装置47に表示させる機能を有する。また、画像処理部54は、断面・時系列ボリュームデータ生成部56によって生成された断面・時系列ボリュームデータに対して表示条件を基にボリュームレンダリング処理を行なうことによって3Dデータを生成して表示装置47に表示させる機能を有する。また、画像処理部54は、断面・時系列ボリュームデータ生成部56によって時間の経過と共に順次生成される断面・時系列ボリュームデータを基に、表示装置47に空間的時間的な表示としての4D表示を行なわせることもできる。
【0049】
図4は、断面・時系列ボリュームデータを基にした3Dデータの一例を示す図である。
【0050】
図4は、注目部位の境界の時間的な軌跡を奥行方向にもつ3Dデータを示す。その3Dデータの表示や3D動画表示によって、オペレータは注目部位の時系列的な変化を視認することができる。
【0051】
図5は断面・時系列ボリュームデータを基にしたMPRデータの一例を示す図であり、図6は、MPRデータの生成のためのMPR断面の抽出を説明するための図である。
【0052】
図6には、断面・時系列ボリュームデータ上に、MPR処理するためのMPR断面、例えばMPR断面C1,C2,C3を示している。また、図5は、MPR断面C1,C2,C3を基にしたMPRデータを示している。断面・時系列ボリュームデータをMPR処理するためのMPR断面は、オペレータが指定することで任意に設定することができる。
【0053】
また、図2に示した変化量測定部57は、画像処理部54によって生成されたMPRデータを基に、所要時相間における注目部位の変化量を測定する機能を有する。変化量測定部57によって測定された変化量は、表示装置47に表示される。
【0054】
続いて、本発明に係る医用画像診断装置10の第1実施形態の動作を示すフローチャート。動作について、図7に示したフローチャートを用いて説明する。
【0055】
医用画像診断装置10、例えば、X線CT装置10a1を用いて、テーブル12に載置された患者Mに対して、診断又は治療計画の目的でCTモードにてCT撮影を行なうことによって、データ収集装置25からIF32b,45bを介して出力される投影角度毎の投影データを収集する(ステップS1)。ステップS1ではメインコントローラ31を介して、X線管21への高電圧の印加条件として、CT撮影に適した管電圧及び管電流の値、例えば120kV、300mAとなるようにX線管コントローラ33を制御する。また、メインコントローラ31を介して、制御信号によってコリメータ22の開口幅を調整するように開口制御モータ23を制御する。さらに、メインコントローラ31を介して、回転部15を所定方向へ連続的に適正な速度、例えば0.5秒/回転で駆動させるように回転モータ35を制御する。加えて、メインコントローラ31を介して、駆動信号によってテーブル12を所定の速度でZ軸方向に搬送するようにテーブルモータ37を制御する。
【0056】
次いで、ステップS1によって収集された投影データをデジタル信号に変換してメモリ42又はHD44等の記憶装置に記録する(ステップS2)。そのステップS2によって記録された投影データを基に、X線ビームのコーン角を考慮した逆投影処理を行なってスライス毎に再構成して2Dデータを生成する(ステップS3)。
【0057】
ステップS3によって生成された複数の2Dデータに対して補間処理を行なうことによって、3Dの実空間で表されるボリュームデータを生成する(ステップS4)。ステップS4では、投影データの収集順に従って、複数時相のボリュームデータを生成する。
【0058】
次いで、ステップS4によって生成されたボリュームデータに対してMPR処理を施し、MPRデータを再構成して表示装置47に表示する。また、ステップS4によって生成されたボリュームデータに対して表示条件を基にボリュームレンダリング処理を行なうことによって3Dデータを生成して表示装置47に表示する(ステップS5)。また、ステップS5では、ステップS4によって時間の経過と共に順次生成されるボリュームデータを基に、表示装置47に空間的時間的な表示としての4D表示を行なうこともできる。
【0059】
次いで、ボリュームデータ内の特定断面を設定する(ステップS6)。具体的には、表示装置47への4D表示中にオペレータが入力装置46を用いて、ボリュームデータ内において時系列変化を見たい断面を指定することでボリュームデータ内の特定断面を設定する。例えば、MPR動画表示中に特定の直交断面移動によって所望の直交断面を指定したり、3D動画表示中に断面のグラフィックで指定したり、MPR動画表示中に所望の3D的な曲線を指定してその曲線にそった曲面を指定したりして特定断面を設定する。
【0060】
次いで、ステップS4によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、ステップS6によって設定されたXY断面上の2Dデータをそれぞれ抽出し、抽出された各2Dデータを時間軸に対して並べた断面・時系列ボリュームデータを生成する(ステップS7)。
【0061】
ステップS7によって生成された断面・時系列ボリュームデータに対してMPR処理を施し、MPRデータを再構成して表示装置47に表示する。また、ステップS7によって生成された断面・時系列ボリュームデータに対して表示条件を基にボリュームレンダリング処理を行なうことによって3Dデータを生成して表示装置47に表示する(ステップS8)。また、ステップS8では、ステップS7によって時間の経過と共に順次生成される断面・時系列ボリュームデータを基に、表示装置47に空間的時間的な表示としての4D表示を行なうこともできる。ステップS8による表示によると、ステップS6によって設定された特定断面に係る注目部位の変位を視認することができる。
【0062】
次いで、ステップS8によって抽出されたMPRデータを基に、所要時相間における注目部位の変化量を測定することで、特定断面に係る注目部位の変化量を求めることができ、その特定断面に係る注目部位の変化量を表示装置47に表示する(ステップS9)。
【0063】
本実施形態のX線CT装置10a1によると、4D表示中に設定された特定断面の時間的な変位を示す断面・時系列ボリュームデータを基にMPRデータや3Dデータを生成して表示することで、オペレータは、特定断面に係る注目部位の時間的な変位を一画面上で把握することができる。
【0064】
なお、本実施形態のX線CT装置10a1は、例えば、患者Mの心臓(心筋や弁)等の連続的な動きの時間的な変化量の観察に有効である。
【0065】
図8は、本発明に係る医用画像診断装置の第2実施形態を示すブロック図である。
【0066】
図1に示した操作コンソール13のCPU41がプログラムを実行することによって、操作コンソール13は、医用画像診断装置10、例えばX線CT装置10a2として機能する。X線CT装置10a2には、投影データ収集部51、画像再構成部52、ボリュームデータ生成部53、画像処理部54、線分設定部58、線分・時系列データ生成部59及び時系列グラフ生成部60が設けられる。加えて、X線CT装置10a2には、変化量測定部61が設けられてもよい。なお、X線CT装置10a2を構成する各構成要素がソフトウェア的に構築される場合について説明するが、その場合に限定されるものではなく、回路等によって各構成要素の全部又は一部がハードウェア的に構築される場合であってもよい。また、図8に示した医用画像診断装置10a2において、図2に示した医用画像診断装置10a1に付される部材と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
線分設定部58は、ボリュームデータ内から特定部分としての特定線分を設定する機能を有する。具体的には、表示装置47への4D表示中に、オペレータが入力装置46を用いて、ボリュームデータ内における複数点を指定入力することで、複数点を含む直線又は曲線(スプライン曲線)からなる特定線分(画素列)を設定する。
【0068】
線分・時系列データ生成部59は、ボリュームデータ生成部53によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、線分設定部58によって設定された特定線分上のデータをそれぞれ抽出し、抽出された特定線分上の各データを時間軸に対して並べた線分・時系列データを生成する機能を有する。
【0069】
時系列グラフ生成部60は、線分・時系列データ生成部59によって生成された複数時相毎の特定線分上のデータを複数時相毎に直線上のデータに変換し、複数時相毎の直線上のデータを時間軸に対して並べた時系列グラフを生成して表示装置47に表示させる機能を有する。なお、時系列グラフ生成部60は、必要に応じて、時相間のデータを補間処理して時系列グラフを生成する。
【0070】
図9は、時系列グラフの生成方法を説明するための図である。
【0071】
図9の上から1段目は、ボリュームデータ生成部53によって生成された複数時相(時相t0,t1,t2)のボリュームデータを立体的(X軸−Y軸−Z軸)に示している。時相T=t0,t1,t2のボリュームデータ中に、線分設定部58によって複数点を基に設定された特定線分(図中の端点“○”から端点“□”まで)を示している。特定線分は、端点のみによって端点をスプライン曲線等で結ぶことで設定されるものであってもよい。また、端点と途中点(図中の“△”)とによって各点をスプライン曲線等で結ぶことで設定されるものであってもよい。なお、図9の上から2段目は、ボリュームデータ生成部53によって生成された時相t0,t1,t2のボリュームデータを平面的(Y軸−Z軸)に示している。
【0072】
図9の上から3段目は、線分・時系列データ生成部59によって生成された複数時相毎の特定線分上のデータを変換した複数時相毎の直線上のデータを示している。図9の上から4段目は、複数時相毎の直線上のデータを時間軸に対して並べ、時相間のデータを補間処理した時系列グラフを示す。
【0073】
また、図8に示した変化量測定部61は、時系列グラフの動画表示上で、複数時相毎の直線上のデータを基に、所要時相間における注目部位の変化量を測定する機能を有する。変化量測定部61によって測定された変化量は、表示装置47に表示される。
【0074】
続いて、本発明に係る医用画像診断装置10の第2実施形態の動作について、図10に示したフローチャートを用いて説明する。
【0075】
医用画像診断装置10、例えば、X線CT装置10a2を用いて、テーブル12に載置された患者Mに対して、診断又は治療計画の目的でCTモードにてCT撮影を行なうことによって、データ収集装置25からIF32b,45bを介して出力される投影角度毎の投影データを収集する(ステップS11)。ステップS11ではメインコントローラ31を介して、X線管21への高電圧の印加条件として、CT撮影に適した管電圧及び管電流の値、例えば120kV、300mAとなるようにX線管コントローラ33を制御する。また、メインコントローラ31を介して、制御信号によってコリメータ22の開口幅を調整するように開口制御モータ23を制御する。さらに、メインコントローラ31を介して、回転部15を所定方向へ連続的に適正な速度、例えば0.5秒/回転で駆動させるように回転モータ35を制御する。加えて、メインコントローラ31を介して、駆動信号によってテーブル12を所定の速度でZ軸方向に搬送するようにテーブルモータ37を制御する。
【0076】
次いで、ステップS11によって収集された投影データをデジタル信号に変換してメモリ42又はHD44等の記憶装置に記録する(ステップS12)。そのステップS12によって記録された投影データを基に、X線ビームのコーン角を考慮した逆投影処理を行なってスライス毎に再構成して2Dデータを生成する(ステップS13)。
【0077】
ステップS13によって生成された複数の2Dデータに対して補間処理を行なうことによって、3Dの実空間で表されるボリュームデータを生成する(ステップS14)。ステップS14では、投影データの収集順に従って、複数時相のボリュームデータを生成する。
【0078】
次いで、ステップS14によって生成されたボリュームデータに対してMPR処理を施し、MPRデータを再構成して表示装置47に表示する。また、ステップS14によって生成されたボリュームデータに対して表示条件を基にボリュームレンダリング処理を行なうことによって3Dデータを生成して表示装置47に表示する(ステップS15)。また、ステップS15では、ステップS14によって時間の経過と共に順次生成されるボリュームデータを基に、表示装置47に空間的時間的な表示としての4D表示を行なうこともできる。
【0079】
次いで、ボリュームデータ内の特定線分を設定する(ステップS16)。具体的には、表示装置47への4D表示中にオペレータが入力装置46を用いて、ボリュームデータ内において複数点を指定入力することでボリュームデータ内の特定線分を設定する。
【0080】
次いで、ステップS14によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、ステップS16によって設定された特定線分上のデータをそれぞれ抽出し、抽出された各データを時間軸に対して並べた線分・時系列データを生成する(ステップS17)。
【0081】
次いで、ステップS17によって生成された線分・時系列データを構成する特定線分上の各データを複数時相毎に直線上のデータに変換する(ステップS18)。次いで、複数時相毎の直線上のデータを時間軸に対して並べた時系列グラフを生成して表示装置47に表示する(ステップS19)。ステップS19による表示中に、時間の経過と共にオペレータが時系列グラフを横スクロールすることで、ステップS16によって設定された特定線分に係る注目部位の変位を視認することができる。
【0082】
次いで、時系列グラフの動画表示上で、複数時相毎の直線上のデータを基に、所要時相間における注目部位の変化量を測定することで、特定線分に係る注目部位の変化量を求めることができ、その特定線分に係る注目部位の変化量を表示装置47に表示する(ステップS20)。
【0083】
本実施形態のX線CT装置10a2によると、4D表示中に設定された特定線分の時間的な変位を示す線分・時系列データを基にMPRデータや3Dデータを生成して表示することで、オペレータは、特定線分に係る注目部位の時間的な変位を一画面上で把握することができる。
【0084】
なお、本実施形態のX線CT装置10a2は、例えば、患者Mの心臓等の連続的な動きの時間的な変化量の観察に有効である。
【符号の説明】
【0085】
10 医用画像診断装置
10a,10a1,10a2 X線CT装置
11 架台
13 操作コンソール
46 入力装置
47 表示装置
51 投影データ収集部
52 画像再構成部
53 ボリュームデータ生成部
54 画像処理部
55 断面設定部
56 画像処理部
57 変化量測定部
58 線分設定部
59 線分・時系列データ生成部
60 時系列グラフ生成部
61 変化量測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dの実空間で表されるボリュームデータに対してMPR処理を施したMPRデータ、又は、前記ボリュームデータに対してボリュームレンダリング処理を行なった3Dデータを生成して表示する画像処理部と、
前記ボリュームデータ内における特定線分を設定する線分設定部と、
前記ボリュームデータ生成部によって生成された複数時相の各ボリュームデータから、前記特定線分上の各データをそれぞれ抽出し、抽出された前記特定線分上の各データを時間軸に対して並べた線分・時系列データを生成する線分・時系列データ生成部と、
前記特定線分上の各データを複数時相毎に直線上のデータに変換し、複数時相毎の直線上のデータを時間軸に対して並べた時系列グラフを生成して表示させる時系列グラフ生成部と、
を有することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記ボリュームレンダリング処理は、影付けボリュームレンダリング、影なしボリュームレンダリング、最大値投影ボリュームレンダリング、最小値投影ボリュームレンダリング、平均値投影ボリュームレンダリング及び閾値指定による表面表示レンダリングのうちの1つとすることを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記MPRデータを基に、注目部位の変化量を測定する変化量測定部を有することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記ボリュームデータ上で前記特定線分を設定するための複数点を指定入力する入力装置を有することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記ボリュームデータを基に、空間的時間的な表示としての4D表示を行なわせる表示処理部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96055(P2012−96055A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2517(P2012−2517)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2006−338577(P2006−338577)の分割
【原出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】