説明

医療器具を含む包装体のような製品の放射による除染のための方法および装置

製品の放射による除染のための方法。方法は、製品の少なくとも第一部分が第一放射レベルにさらされ、および、製品の少なくとも第二部分が第二放射レベルにさらされる少なくとも一つの暴露段階を含む。発明は、また、そのような方法に適した装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品、特に、医療器具を含む包装体の放射による除染のための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途を対象とした品目または器具の扱いまたは輸送のある段階が実行されるべき滅菌の条件は、特に、医薬産業においては、極めて厳格である。それゆえ、そのような要求に適合する包装体を製造することは極めて重要である。
【0003】
本出願において、放射スクリーンとの表現は、電子ビームからの電子の全ての運動エネルギーを実質的に反射または吸収でき、それゆえ、これらの電子が、当該スクリーンを通過することを阻止できるスクリーンであると理解されるべきである。
【0004】
本出願において、半透過性の放射スクリーンとの表現は、電子ビームからの電子の運動エネルギーを部分的に反射または吸収でき、それゆえ、これらの電子の制限された割合のみが、当該スクリーンを通過することができるスクリーンであると理解されるべきである。
【0005】
本出願において、選択的に不浸透性の材料との表現は、材料が、構造に関して、包装体の内部とその外部環境との間のいかなる変更をも制御するように設計されている材料であるという意味として理解されるべきである。このことは、とりわけ、包装体が取り扱われている間に、包装体と接触しそうな、微生物、バクテリアおよび/または生物学的に活性な材料による汚染に対して不浸透性であること、他方、同時に、例えばETO(エチレンオキサイド)型の殺菌または除染ガスに対して透過可能性を残していることを意味する。
【0006】
殺菌ガスによって殺菌されるか、またはされるであろう品目の包装体は知られている。注射器のような医療品目の場合、これらの包装体は、普通、選択的に不浸透性の材料からなる被覆シートでシールされたタブを含む。そのような包装体の一例が、図1および図2に示される。図1は、タブ2と、通常は選択的に不浸透性の材料からなる被覆シート3を含み、被覆シート3がタブ2を不浸透性にシールするためにタブ2にシールされている包装体1である製品の断面図である。タブ2は、注射器本体4という形で複数の医療品目を含む。示された例において、注射器本体4は、タブ2内に配置され、タブ2の内部壁に設けられたリムに載るプレートに設けられた孔に受容される。
【0007】
図1の包装体1の平面図である図2から明らかにわかるように、被覆シート3は、おおよそ注射器本体4上に配置され、点線で示される中央領域5と、この中央領域5を囲む周囲の輪郭6を画定する。周囲の輪郭6は、おおよそ、タブ2上における被覆シート3のシール部分に相当する。
【0008】
通常、そのような包装体1に含まれる品目4の殺菌を進めるため、例えばエチレンオキサイド型の殺菌ガスが、選択的に不浸透性の材料の被覆シート3を通してタブ2に入る。殺菌される品目4を含むタブ2は、それから、タブ2が輸送され得るように、保護袋内に置かれる。その後の取り扱い段階、例えば、注射器本体4の充填を進めるために、保護袋は開封される必要がある。それから汚染されるかもしれない包装体1は、例えば、殺菌ルームに入れられる前に除染される必要がある。
【0009】
そのような除染は、被覆シートを通ったとき、例えば、25kGyの放射線量を供給する、十分なエネルギーを生み出す電子ビームによる多方向放射によって達成される。このことは、選択的に不浸透性の材料が、その厚みを通して、特に、タブ2と材料との間の接触面で、被覆シート3の周囲の輪郭6に位置づけられたシール部分で除染されることが、必要とされ得ることを意味する。実際には、被覆シート3の中央領域5の下面5aとは異なり、その下面6a(図1参照)が、タブ2の内部のシールされた雰囲気と接触していない、被覆シート3の周囲の領域6が全体的に除染されることが重要である。タブ2の残部、すなわち、底壁および側壁に関する限り、タブ2の密度および厚みの複合はこれらの電子を阻止するようなものである。
【0010】
このタイプの除染は、しかしながら、包装体で輸送される全ての型の製品に対して適していない。これは、選択的に不浸透性の材料を通過する電子ビームが、タブ内に置かれた注射器または製品が形成されている材料、例えば、ガラスを変更し、またはそれに悪影響を与える危険を伴うからである。電子ビームは、また、タブ内に含まれる空気中の酸素からオゾンを発生させる。発生したオゾンは、雰囲気を汚染し、および、注射器に充填するために用いられる活性物質、および/または、例えば、注射器に装架される針のキャップのようなタブ中に存在するゴム組成物に悪影響を与える危険を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえに、製品の型にかかわらず、製品の周囲の輪郭の十分な除染が可能であり、他方、製品または製品の内部に貯蔵された品目の品質を保持する、製品、特に、上述のような医療機器を含む包装体の殺菌方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの具体例によれば、本発明は、製品の放射による除染のための方法を提供することによってこの必要性を満たすことを目的としており、製品の少なくとも第一部分を第一放射レベルに、製品の少なくとも第二部分を第二放射レベルにさらすために少なくとも一つの放射線発生装置が用いられる少なくとも一つの暴露段階を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の具体例の方法は、製品および/または包装体の型にかかわらず、包装体に含まれる製品の品質を変更することなく、包装体の周囲の輪郭のような製品の第一部分、および周囲の輪郭によって画定される中央領域のような製品の第二部分の十分な除染を可能にする。除染されるべき製品は、また、包装体とは異なり得る。それは、電子放射が到達することを阻止することにより内部の品質が維持されるべき製品であり得る。
【0014】
本発明の方法の具体例において、暴露段階中、第一部分および第二部分は、引き続いて、上述の第一および第二の放射レベルにさらされる。
【0015】
本出願において、高、低、より高、より低という用語は、放射強度に応じて、それぞれ、受け取られ、放射される、放射線発生装置によって放射され、または、製品によって受け取られる放射レベルを比較するために用いられる。
【0016】
本発明の方法の具体例において、暴露段階中、上述の第一部分および第二部分は、第一および第二放射レベルに同時にさらされる。
【0017】
本発明の方法の具体例において、製品の少なくとも一側部は、中央領域および周囲の輪郭を含み、製品の第一部分は、少なくとも周囲の輪郭を含み、製品の第二部分は、少なくとも中央領域を含み、第一放射レベルは、第二放射レベルよりも高い。
【0018】
本発明の方法の具体例において、第一および第二放射レベルは、それぞれ、高および低放射レベルを放射する、高放射線発生装置および低放射線発生装置を用いることで達成される。
【0019】
本発明の方法の具体例において、第一および第二放射レベルは、それぞれ、製品の第一および第二部分に対する少なくとも長い放射線暴露期間および短い放射線暴露期間を用いることにより達成される。
【0020】
本発明の方法の具体例において、長短の放射線暴露期間は、放射線発生装置に対する製品の二つの異なった配置速度を用いることによって達成される。
【0021】
本発明の方法の具体例において、第一および第二放射レベルは、製品の第一部分に向けて第一放射レベルを放射し、製品の第二部分に向けて第二放射レベルを放射するために設定された、少なくとも一つの可変放射線発生装置を用いることによって達成される。
【0022】
本発明の方法の具体例において、第一および/または第二放射レベルは、製品の第一および/または第二部分にほぼ類似する形を有する放射線発生装置を用いることによって達成される。
【0023】
本発明の方法の他の具体例において、第一および第二放射レベルは、製品に向けて高放射レベルを放射するための少なくとも高放射線発生装置を用い、高放射線発生装置と製品の第二部分との間に、放射スクリーンまたは半透過性の放射スクリーンを置くことによって達成される。
【0024】
放射スクリーンまたは半透過性の放射スクリーンは、製品の第二部分に対して固定される。
【0025】
代わって、高放射線発生装置は製品に対して可動であり、放射スクリーンまたは半透過性の放射スクリーンは、放射線発生装置に取り外し可能に固定される。
【0026】
本発明の方法の他の具体例において、第一および第二放射レベルは、それぞれ、製品の第一および第二部分に対して、所定の角度位置に、少なくとも第一および第二放射線発生装置を置くことにより達成される。
【0027】
本発明の他の側面は、製品の放射除染のための装置であり、装置は、製品に向けて予め定めた期間、予め定めた量の放射線を放射する少なくとも一つの放射線発生装置を含み、装置が、さらに、製品の第一部分によって受容される少なくとも第一放射レベルと、製品の第二部分によって受容される第二放射レベルを設定するための放射線設定手段を含むことを特徴とする。
【0028】
放射線設定手段は、放射線発生装置と製品の第二部分との間に配置された放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンを含む。
【0029】
放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンは、製品の第二部分に対して固定される。
【0030】
本発明の具体例において、装置は、それぞれ、第一放射レベルおよび第二放射レベルを放射する高放射線発生装置および低放射線発生装置を含む。
【0031】
本発明の具体例において、装置は、発生装置に対する製品の配置手段を含み、配置手段は、第一または第二部分の一方の放射に対して低速を有し、他の部分の放射に対して高速を有するように調節可能である。
【0032】
本発明の他の具体例において、装置は、製品の第一部分に向けて第一放射レベルを、製品の第二部分に向けて第二放射レベルを放射するために設置された可変放射線発生装置を含む。
【0033】
本発明の他の具体例において、装置は、製品の第一および/または第二部分にほぼ類似した形を有する、少なくとも一つの放射線発生装置を含む。
【0034】
本発明の他の具体例において、装置は、それぞれ、製品の第一および第二部分に対して所定の角度位置に配置された第一および第二放射線発生装置を含む。
【0035】
他の特徴および利点は、ここにおいて、添付された図面を参照した例によって与えられる詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の除染方法を受けようとする包装体の断面図である。
【図2】図1の包装体の平面図である。
【図3】本発明の方法の第一段階の平面図である。
【図4】本発明の方法の第二段階の平面図である。
【図5】本発明の方法の第三段階の平面図である。
【図6】本発明の方法の第四段階の平面図である。
【図7】本発明の方法の第二具体例の放射段階の平面図である。
【図8】本発明の方法の第三具体例の放射段階の模式的側面図である。
【図9】本発明の方法の第四具体例の放射段階の平面図である。
【図10】本発明の方法の第五具体例の放射段階の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2は、すでに上述されている。続く図3ないし図10の説明において、本発明の方法の異なる具体例によって殺菌される製品1は、図1および図2による包装体である。その結果、図1および図2の包装体1の異なる要素を示すために用いられる参照は、図3ないし図10の説明においても維持される。示される例において、包装体1の被覆シート3は、デュポン社により、「TYVEK」(登録商標)として販売されている製品のような、熱および圧力によって結合された高密度ポリエチレンのフィラメント層のような選択的に不浸透性の材料から製造される。示された例において、注射器本体4は、ガラスで製造される。
【0038】
図3ないし図6を参照すると、包装体1は、本発明による機器100を用いる方法の第一具体例により殺菌されるべきものである。図3に示されるように、機器100は、高放射線発生装置10である第一放射線発生装置と、低放射線発生装置11である第二放射線発生装置とを含む。特に、高放射線発生装置10は、高放射線レベル、例えば、25kGyから50kGyの範囲である、例えば、高エネルギーの電子ビーム、を放射することができる。本発明に好適な高放射線発生装置10は、例えば、ラ・カレーヌ社により供給され、150〜250キロボルトの範囲である発生装置「Kevac」である。低放射線発生装置11は、低放射線レベル、例えば、10kGyから30kGyの範囲である、例えば、低エネルギーの電子ビーム、を放射することができる。本発明に好適な低放射線発生装置10は、例えば、ラ・カレーヌ社により供給され、80〜150キロボルトの範囲である発生装置「Kevac」である。
【0039】
本発明の具体例において、包装体1は、コンベヤ(非図示)上に置かれ、静止している高および低放射線発生装置に対して動かされる。本発明の方法の代替具体例において、包装体1は固定され、高および低放射線発生装置(10、11)が、包装体1に対して移動する。
【0040】
図3〜図6に示された例において、高および低放射線発生装置(10、11)は固定され、包装体1が、図の右方から左方へ移動する。
【0041】
図3において、本発明の方法の開始時に、低放射線発生装置11は、注射器本体上に位置づけられ、点線で示された、包装体1の中央領域5、および周囲の輪郭6の一部に向かい合う。低放射線発生装置11は、中央領域5および周囲の輪郭6の部分に向け、例えば、それらが、25kGyの放射線レベルを受けるように、低放射線レベルを放射する。そのような低レベルの放射線は、包装体1内に含まれる注射器本体4の品質を変更しない。同時に、低放射線発生装置11から離れた高放射線発生装置10が、タブ2とのシールゾーンにおいて、被覆シート3の周囲の輪郭6の頂部、内部および下部(現れない)を除染するために、高放射線レベルが必要とされる、被覆シート3の周囲の輪郭6の一部と向かい合う。本発明の方法のこの段階において、高放射線発生装置10は、周囲の輪郭6の一部が、例えば、40kGyの放射線レベルを受けるように、高放射線レベルを放射する。
【0042】
図4は、包装体1が少し前方に移動した時点での本発明の装置100および包装体1を示す。本発明の方法のこの段階において、低放射線発生装置11は、中央領域5および周囲の輪郭6のさらに進んだ部分と向かい合い、中央領域5および周囲の輪郭6の部分が、25kGyの放射線レベルを受けるように低放射線レベルを放射する。高放射線発生装置10は、今、また、被覆シート3の中央領域5の一部および周囲の輪郭6の一部と向かい合う。放射スクリーン12が、今、高放射線発生装置10と中央領域5の間に用意され、高放射線発生装置10により放射される高放射線レベルが、被覆シート3の中央領域5の下方に位置づけられる注射器本体4に損傷を与えるのを防止する。放射スクリーン12は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、厚いプラスチック板からなる群の中で選択される。そのような放射スクリーン12は、高放射線発生装置10によって放射される高放射レベルの電子ビームから電子の全ての運動エネルギーを反射しまたは吸収し、それゆえ、これらの電子がそこを通過するのを妨げる。例において、放射スクリーン12は、高放射線発生装置10に結合され、中央領域が高レベルの放射を受ける前に、高放射線発生装置10と包装体1との間に配置されるように折り畳み可能である。図示されない他の例において、放射スクリーンは可動式であり得、高および低放射線発生装置に対して、包装体に沿って動く。図4および図5に明確に現れるように、放射スクリーン12は、中央領域5のみに対するような、および、被覆シート3の側方の周囲の輪郭6がいずれのスクリーンからも影響を受けないような大きさとされ、その結果、周囲の輪郭6は、高放射線発生装置10によって放射される高放射線レベルを受けることができる。
【0043】
図5は、図4に対して、包装体1が少し前方に移動したときの本発明の装置100および包装体1を示す。低放射線発生装置11が、今、被覆シート3の周囲の輪郭6と向かい合い、一方、高放射線発生装置10は、依然として、放射スクリーン12によって高放射線発生装置10により放射される高放射線レベルから保護されている中央領域5と向かい合う。
【0044】
図6は、包装体1が、前方に移動し、その結果、高放射線発生装置10が再び被覆シート3の周囲の輪郭6に向かい合ったときの本発明の装置100および包装体1を示す。本発明の方法のこの段階において、高放射線発生装置10に除去可能に取付けられた放射スクリーン12は除去される。周囲の輪郭6は、その結果、高放射線発生装置10により放射される高放射レベルを受けることができる。
【0045】
図に示されないが、製品の側面および下面もまた、付加的な放射線発生装置により放射される放射レベル、例えば、25kGyの低放射レベルを受ける。
【0046】
図3〜図6に示された本発明の方法でもって、製品1の中央領域5は、25kGyの低放射レベルのみを受ける。製品1の周囲の輪郭6は、40kGyの高放射レベルを受ける。それゆえ、包装体1は、それが包含する注射器本体4を変更することなしに除染される。特に、周囲の輪郭6、および特にそのような周囲の輪郭の下方6a(図1参照)が、完全に除染されることが明らかにされる。
【0047】
本発明の他の具体例において、周囲の輪郭6および中央領域5は、同レベルの放射線放射であるが、例えば、包装体に関して放射線発生装置のみの変位の速度を変更することによる異なる時間の放射を受ける。この場合、二側方の周囲の輪郭6が放射を受けるときは、速度がより低くに選択され、中央領域5が放射を受けるときは、速度がより高くに選択される。製品は、周囲の輪郭の他の二側方を放射の間小さな速度にさらすために、90度回転された後、放射線発生装置下における第二の通過を有する。速度差および放射強度は、例えば、中央領域5によって受けられる25kGyの放射レベルと周囲の輪郭によって受けられる40kGyの放射レベルに達するように、定式にしたがって選択される。
【0048】
図示されていない本発明の具体例において、製品1の中央領域5は、半透過性の放射スクリーンで保護される。その結果、高放射線発生装置10が中央領域5と向かい合うとき、電子ビームのある率は、半透過性の放射スクリーンを通過でき、被覆シート3の中央領域5の除染を実現する。例えば、半透過性の放射スクリーンは、電子ビームの60%の電子がそこを通過するのを許容する。例えば、上述の高放射線発生装置10により放射される当初の電子ビームに対して、中央領域5は、25kGyの放射レベルのみを受け、一方、周囲の輪郭6は、40kGyの最初の高放射レベルを依然として受ける。半透過性の放射スクリーンは、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、薄いプラスチック板、チタニウムを含む群の中で選択される。そのような具体例において、低放射線発生装置11は、もはや必要でなく、除去される。
【0049】
本発明の方法は、その中央領域5だけでなく、タブ2とシールされ、その下面6aがタブ2内部のシールされた雰囲気と接しない周囲の輪郭6において、被覆シート3の全体的な除染を可能にする。
【0050】
図7は、本発明の方法の第二の具体例を示し、本発明の装置100は、可変の放射線発生装置である単一の放射線発生装置を含む。本発明に好適な可変の放射線発生装置は、調節手段を備えた、ラ・カレーヌ社により供給される発生装置「Kevac」である。そのような場合、二つの異なった放射ゾーン、高放射ゾーン13および低放射ゾーン14が画定され、放射される放射レベルは、一つの放射ゾーンから他にわたって可変である。放射レベルの変更は、発生装置からの電子ビームのパラメータを、次の式にしたがって変更することによって設定される。
D=k・i・E/(S・W)
ここで、
kは、乗数、
Dは、kGyで表される滅菌線量、
iは、mA(マイクロアンペア)で表される電流の強さ、
Eは、KeV(キロ電子ボルト)で表される電子のエネルギー、
Sは、m/minで表される放射からの放射線の速度、
Wは、cmで表される放射線の幅である。
【0051】
除染線量は、したがって、放射線の速度または電子のエネルギーまたは電流の強さを変えることによって調整される。
【0052】
同様の結果は、高および低放射線発生装置の結合(不図示)によっても得られる。この場合、高放射線発生装置は、高放射ゾーン13に放射線を放射し、低放射ゾーン14には、放射しないか、ごくわずかしか放射しない。低放射線発生装置は、少なくとも低放射ゾーン14に放射線を放射するために配置される。
【0053】
図8は、模式的な方法で、本発明の方法の他の具体例を示しており、周囲の輪郭6および中央領域5に対する特定の角度位置で第一および第二の放射線発生装置を配置することによって、第一および第二の放射レベルが達せられる。被覆シート3の周囲の輪郭6の下面6aは、第一放射線発生装置(不図示)から来る水平の放射線15によって除染され、他方、中央領域5は、第二放射線発生装置(不図示)から来る斜めの放射線16によって除染される。例えば、図8に示された具体例において、斜めの放射線16は、中央領域の表面と1〜45度、好ましくは、1〜10度の角度αを形成する。タブ2の側壁は、タブ2に含まれる注射器本体(不図示)を、水平および斜めの放射線(15、16)によって変更されることから保護する。
【0054】
図9は、本発明の方法の他の具体例を示しており、高放射レベルは、周囲の輪郭6に大体類似した形状を有し、周囲の輪郭6に沿って高放射レベルのフラッシュを放射する、第一放射線発生装置19を用いて達せられる。低放射レベルは、図3〜図6の低放射線発生装置11に類似する第二放射線発生装置18を用いて達せられる。示されたこの例において、被覆シート3の全ての中央領域5を実質的に覆う大きさの放射スクリーンの使用は任意である。放射スクリーン17は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、厚いプラスチック板を含む群から選択される。本発明の装置100は、低放射線発生装置として作動し、被覆シート3の中央領域5を除染するための低エネルギーの電子ビームのような低放射レベルを作り出す、連続する電気ストランド18を備える。装置100は、また、周囲の輪郭に沿って続き、長方形を形成し、そして、被覆シート3の周囲の輪郭6を除染するために高エネルギーの電子ビームのような高放射レベルを作り出すことによって高放射線発生装置として作動する、フラッシュ電気ストランド19を備える。フラッシュ電気ストランド19による高放射レベルの放射中、中央領域5は、放射スクリーン17によって保護され、包装体1内に包含される注射器本体は変更されない。
【0055】
図10は、図9に示された本発明の具体例の変更例を示す。この具体例において、図9の装置100の長方形のフラッシュ電気ストランドは、低放射線レベルを放射する線状の低電気ストランド18によって潜在的に結合されまたは分離されて、高放射レベルを放射する線状の高電気ストランドによって置換される。装置100は、さらに、図9の具体例におけるような低放射レベルを作り出す連続的な電気ストランド20を含む。周囲の輪郭6の側方部は、したがって、線状の高電気ストランド21からの高放射レベルを受け、外郭6の先端部は、線状の低電気ストランド18により放射される低放射レベルと連続的な電気ストランド20により放射される低放射レベルの付加によって達せられる高放射レベルを受ける。中央領域は、連続的な電気ストランド20により放射される低放射レベルを受ける。
【0056】
本発明の方法と本発明の装置は、医療品目の包装体のような製品の第一の部分の、および当該製品の第二の部分の十分な除染を、医療品目のような製品の中味の品質を変更することなく、製品および/または包装体の型にかかわらず、可能にする。それらは、また、他の部分よりも一部を低放射レベルにさらすことが求められる、どのような他の製品でも、十分に除染することができる。
【0057】
したがって、本発明の基本的な新規の態様が好ましい具体例として示され、説明され、指摘されたが、説明された装置の形状および細部における、およびその作動における、種々の省略、置換および変更が、本発明の精神から離れることなく当業者によってなされることが理解される。例えば、同一の効果を達成するために実質的に同じ方法において実質的に同じ作用を実現する、要素および/または方法の段階の全ての結合は、本発明の範囲内であることが、明確に意図される。さらに、本発明のいずれの開示された形状または具体例と一緒に示され、および/または、記述された、構造および/または要素および/または方法の段階は、一般的な設計事項として、いずれか他の開示された、または、記述された、または、示唆された、形状または具体例に組み込まれる。したがって、ここに添付された特許請求の範囲の範囲によって示されたとおりに限定されることが意図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の放射による除染のための方法であって、少なくとも一つの放射線発生装置が、当該製品の少なくとも第一部分を第一放射レベルに、当該製品の少なくとも第二部分を第二放射レベルにさらすために使用される少なくとも一つの暴露段階を含み、当該製品の一側部が、中央領域および周辺の輪郭を含み、当該製品の当該第一部分が、少なくとも当該周辺の輪郭を含み、当該製品の当該第二部分が少なくとも当該中央領域を含み、当該第一放射レベルが、当該第二放射レベルより高いことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、当該暴露段階中に、当該第一部分および第二部分が、引き続いて、当該第一および第二放射レベルにさらされることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、当該暴露段階中に、当該第一および第二部分が、同時に、当該第一および第二放射レベルにさらされることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、当該第一および第二放射レベルが、高放射レベルを放射する少なくとも高放射線発生装置、および、低放射レベルを放射する低放射線発生装置を用いることにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、当該第一および第二放射レベルが、それぞれ、当該製品の当該第一および第二部分に向かって、少なくとも長い放射暴露期間および短い放射暴露期間を用いることにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5の方法であって、当該短いおよび長い放射暴露期間は、当該製品の当該放射線発生装置に対する二つの異なった配置速度を用いることによって達成されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、当該第一および第二放射レベルは、当該製品の当該第一部分に向って第一放射レベルを、当該製品の当該第二部分に向って第二放射レベルを放射するように設置された一つの可変放射線発生装置を用いることにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、当該第一および/または第二放射レベルは、当該製品の当該第一および/または第二部分にほぼ類似する形を有する放射線発生装置を用いることにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1の方法であって、当該第一および第二放射レベルは、当該高放射線発生装置と当該製品の当該第二部分との間に放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンを置いて当該製品に向けて高放射レベルを放射する、少なくとも高放射線発生装置を用いることにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9の方法であって、当該放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンは、当該製品の当該第二部分に対して固定されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9の方法であって、当該高放射線発生装置は、当該製品に対して可動であり、当該放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンは、当該高放射線発生装置に取り外しできるように固定されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1の方法であって、当該第一および第二放射レベルは、当該製品の当該第一および第二部分に対して所定の角度位置で、少なくとも第一放射線発生装置および第二放射線発生装置を配置することにより達成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
中央領域および周辺の輪郭を備える少なくとも一側部を有する製品の放射徐染のための装置であって、装置は、当該製品に向って予め定められた期間、予め定められた量の放射線を放射することができる少なくとも一つの放射線発生装置、および、当該製品の当該周辺の輪郭によって受容される少なくとも第一放射レベルおよび当該製品の中央領域によって受容される第二放射レベルを設定し、当該第一放射レベルが、当該第二放射レベルより高い、放射線設定手段を含むことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13の装置であって、当該放射線設定手段は、当該放射線発生装置および当該製品の当該中央領域の間に配置された放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンを含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14の装置であって、当該放射スクリーンまたは半透過性放射スクリーンは、当該製品の当該中央領域に対して固定されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項13の装置であって、それぞれ、当該第一放射レベルおよび当該第二放射レベルを放射する、高放射線発生装置および低放射線発生装置をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項13の装置であって、当該発生装置に対して当該製品の配置手段をさらに含み、当該配置手段は、当該周囲の輪郭または中央領域の一つの放射のために低速を有し、他の部分の放射のために高速を有するように調整されることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項13の装置であって、当該製品の当該周囲の輪郭に向けて第一放射レベルを放射し、当該製品の当該中央領域に向けて第二放射レベルを放射する可変放射線発生装置をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項13の装置であって、高または低放射線発生装置の少なくとも一つが、当該製品の当該中央領域および/または当該周囲の輪郭にほぼ類似した形を有することを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項13の装置であって、当該第一および第二放射線発生装置が、それぞれ、当該製品の当該中央領域および当該周囲の輪郭に対して所定の角度位置で配置されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−515531(P2010−515531A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545582(P2009−545582)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/000256
【国際公開番号】WO2008/085970
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】