説明

医療情報転送管理システム

【課題】ネットワークの稼働率を向上でき、かつ必要なタイミングで確実に医療情報を転送可能な医療情報転送管理システムを提供すること。
【解決手段】HIS又はRIS103において管理されている予約受付情報及び当日検査受付情報から、各モダリティ101a〜101cの稼動状況を判断し、ネットワーク102の空き時間の管理表を医療情報転送管理システム104において作成する。モダリティから医療情報転送の可否の問合せがなされた場合には、空き時間の管理表から転送空き時間の割り当てを行い、その情報をモダリティに通知する。通知がなされたモダリティは転送空き時間に医療情報の転送を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報の転送を管理する医療情報転送管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などの医療機関においては、X線撮影装置や、CT装置、MRI装置などの医療機器(モダリティ)で取得された医療情報(例えば、画像データ)を、ネットワークを介して接続された画像サーバーに転送することが行われている。このような医療情報の転送は、従来は医療機器の稼働率が低くネットワークのトラフィック量も少ない夜間に行われていた。
【0003】
これに対し、特許文献1の手法では、ネットワークのトラフィック量を検出してトラフィック量の少ない時点で医療情報の転送を行うことにより、昼間などでも医療情報の転送を行うことができ、ネットワークの稼動率を向上させることが可能である。
【特許文献1】特開2002−185468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手法は、ネットワークのトラフィック量のみに応じて医療情報の転送を制御している。この手法の場合、例えば緊急で医療情報を転送しなければならないような場合であっても、そのときのネットワークのトラフィック量が大きければ転送を行うことができない。つまり、医療情報の転送をネットワークのトラフィック量のみに応じて管理するだけでは不十分な場合がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ネットワークの稼働率を向上でき、かつ必要なタイミングで確実に医療情報を転送可能な医療情報転送管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1による医療情報転送管理システムは、ネットワークを介して接続された医療機器からの医療情報の転送を管理する医療情報転送管理システムにおいて、前記医療機器に対応する検査受付情報を取得する受付情報取得手段と、
前記取得した検査受付情報から前記医療機器が前記医療情報を転送可能な時間をスケジュール化する管理手段とを有することを特徴とする。
【0007】
この請求項1の医療情報転送管理システムによれば、受付情報取得手段によって取得した検査受付情報から、各医療機器が医療情報を転送可能な時間がスケジュール化される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ネットワークの稼働率を向上でき、かつ必要なタイミングで確実に医療情報を転送可能な医療情報転送管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る医療情報転送管理システムを含む医療情報転送システムの構成図である。図1に示す医療情報転送システムは、ネットワーク102に、モダリティ101a、101b、101cと、病院情報システム(HIS)又は放射線科情報システム(RIS)103と、医療情報転送管理システム104と、画像サーバー106とが接続されて構成されている。また、医療情報転送管理システム104にはデータベース105が接続されている。
【0010】
モダリティ101a〜101cは、患者の検査を行って所定の医療情報を取得し、取得した医療情報を、ネットワーク102を介して画像サーバー106に転送する。ここで、モダリティ101a〜101cは、例えば超音波診断装置、内視鏡装置、X線撮影装置、CT装置、MRI装置、超音波診断装置等の患者の体内等を撮影して医療画像データを取得する医療機器である。なお、図1では、モダリティが3つ示されているが、モダリティの数が特に限定されるものではない。
【0011】
ネットワーク102は、例えば病院内のLANであり、図1に示す医療情報転送システムの各機器やシステムを互いにデータ通信可能に接続する。HIS又はRIS103は、病院内又は放射線科内の各種情報の管理を行う。例えば、病院内又は放射線科内での当日検査受付や予約検査受付の管理、及びこれらの検査受付情報に基づくモダリティ毎の検査の実施時間や検査内容、モダリティ毎で取得される医療情報(医療画像データ)の撮影時間等の管理を行う。なお、HIS又はRIS103において管理される各種の情報は、データベース105に記憶される。
【0012】
医療情報転送管理システム104は、HIS又はRIS103から検査受付情報を取得し、この検査受付情報から、医療情報の転送を行うのに好適な時間帯(転送空き時間)のスケジュール化を行う。そして、スケジュール化によって得られた転送空き時間の管理表を作成してデータベース105に格納する。更に、医療情報転送管理システム104は、モダリティ101a〜101cから医療情報の転送の可否の問い合わせがなされたときに、データベース105に格納された管理表と医療情報の情報量とに応じて、転送空き時間の割り当てを行い、割り当てた転送空き時間を、要求を行ったモダリティに通知する。つまり、医療情報転送管理システム104は、図1に示す医療情報転送システムの医療情報の転送をスケジュール化して管理する機能を有する。
【0013】
以下、本一実施形態の要部に係る医療情報転送管理システム104の詳しい動作について説明する。図2は、図1に示す医療情報転送システムの通常時の動作の流れについて示すフローチャートである。
【0014】
まず、医療情報転送管理システム104は、HIS又はRIS103に対して当日検査受付情報及び予約受付情報(以下、これらをまとめて検査受付情報と称する)の取得要求を行う(ステップS101)。要求を受けたHIS又はRIS103は医療情報転送管理システム104に検査受付情報を送信する(ステップS201)。これにより、医療情報転送管理システム104は検査受付情報を取得する(ステップS102)。
【0015】
医療情報転送管理システム104は、取得した検査受付情報に基づいて、ネットワーク102の空き時間(転送空き時間)をスケジュール化し、転送空き時間の管理表を作成する(ステップS103)。そして、この管理表をデータベース105に格納する。つまり、予約受付情報には、各モダリティにおける検査実施時間や医療情報の取得時間(医療画像の撮影時間)の情報が含まれているため、この情報から各モダリティの稼動状況が分かる。つまり、検査が行われていない時間帯はモダリティにおいて医療情報が取得されることがなく、医療情報の転送要求が行われる可能性も低い。そこで、本一実施形態では、検査が行われていない時間帯を医療情報の転送に好適な転送空き時間とする。
【0016】
ステップS103の処理の後、モダリティ101a〜101cからの転送空き時間の問合わせがなされるまで待機する(ステップS104)。なお、ステップS101〜ステップS104までの処理は所定時間毎に行って、その都度、転送空き時間をスケジュール化することが好ましい。また、医療情報転送管理システム104から検査受付情報の取得要求を行わず、HIS又はRIS103において管理する予約受付情報に変更が生じた場合に、その予約受付情報を医療情報転送管理システム104に送信し、それを受けて転送空き時間のスケジュール化を行うようにしても良い。
【0017】
これらの動作とは関係なく、各モダリティ101a〜101cでは、それぞれに割り当てられた検査時間になると検査が実施され、医療情報(医療画像データ)が取得される(ステップS301)。医療画像データが取得されると、そのモダリティは、医療情報転送管理システム104に、医療画像データの転送の可否の問合わせを行う(ステップS302)。この際、モダリティは、転送を行う医療画像データのデータ量に関する情報(つまり、画像データのサイズ及び枚数)も合わせて医療情報転送管理システム104に送信する。
【0018】
モダリティからの問合せを受けて、医療情報転送管理システム104は、問合せを行ったモダリティに対して転送空き時間の割り当てを行う(ステップS105)。具体的には、データベース105の管理表を検索して、モダリティから要求された医療画像データを転送可能な時間を判断する。この際、1回の転送空き時間内に全ての医療画像データを送信できない場合には、転送要求のあった医療画像データを複数回に分けて転送させるようにする。このような転送空き時間の割り当て後、転送空き時間及び転送方法(一括転送か分割転送か)の情報を問合せを行ったモダリティに通知する。
【0019】
転送空き時間及び転送方法の情報を受けたモダリティは、その情報をバックグラウンドキュー等に登録する(ステップS303)。そして、転送空き時間になったら医療画像データをバックグラウンド転送により画像サーバー106に転送する(ステップS304)。このステップS304の転送は、バックグラウンド転送であるので、検査中であっても行うことができる。
【0020】
以上説明したように、図2の処理によれば、各モダリティの稼動状況に基づいて医療情報の転送のための空き時間をスケジュール化し、また、モダリティからの問合わせがなされた場合に、その情報量に応じた空き時間の割り当てを行うので、モダリティ毎に医療情報の転送時間が管理され、一度に複数のモダリティから医療情報の転送が行われることがない。したがって、ネットワークのトラフィック量を低く保つことが可能である。
【0021】
更に、問合せがなされたモダリティに転送空き時間を通知することにより、モダリティのバックグラウンド転送機能を有効に利用することができる。また、バックグラウンド転送であるので、各モダリティが検査中であっても転送を行うことができる。
【0022】
図3は、図1に示す医療情報転送システムの緊急時の動作の流れについて示すフローチャートである。この図3の処理は、モダリティにおいて1回の検査で大量の医療情報(医療画像データ)が発生し、モダリティ内でその情報を保持しきれない場合等に行われる。
【0023】
各モダリティ101a〜101cはそれぞれ割り当てられた検査時間に検査が実施され、医療情報(画像データ)が取得される(ステップS401)。この際、大量の医療画像データが取得されると、モダリティは、医療情報転送管理システム104に対し、ネットワークの占有依頼を行う(ステップS402)。モダリティからのネットワークの占有依頼を受けた医療情報転送管理システム104は、その時点でネットワークの占有依頼が行われたモダリティ以外の全てのモダリティに対し、転送の中断を要求する(ステップS501)。その後、各モダリティにおいて医療画像データの転送の中断の確認がなされたことを確認し(例えば、各モダリティからの応答信号を受信することで確認する)、その旨を緊急の転送依頼を行ったモダリティに通知する(ステップS502)。
【0024】
その後、モダリティは、その時点で行っている検査を中断して、医療画像データのフォアグラウンド転送を行う(ステップS403)。つまり、緊急の場合には、現在行っている検査を中断し、医療画像データの転送のみを行うことで医療画像データの転送時間を短くする。転送が終了した後、モダリティは転送が完了した旨を医療情報転送管理システム104に通知する(ステップS404)。
【0025】
緊急の転送が完了した後、医療情報転送管理システム104は、ステップS501において、転送の中断を要求した各モダリティに医療情報の転送を再開させるために、再び転送空き時間のスケジュール化を行う(ステップS503)。以後は、図2に示す通常の動作に移行する。
【0026】
以上説明したように、図3の処理によれば、緊急の転送時には、管理表の状況によらずに転送を行うことができる。このため、緊急の転送時に転送が行えないなどの不具合が生じることがない。また、緊急の転送時には、その他のモダリティの転送を中断してネットワークのトラフィック量を低下させると共に、フォアグラウンド転送を行うようにすることで、転送時間を短くすることができる。
【0027】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。例えば、図1において、医療情報転送管理システム104は、各システム及び装置と独立に設けられているが、HIS又はRIS103内若しくは画像サーバー105内に設けるようにしても良い。
【0028】
また、上述した実施形態において医療情報を画像データとしているが、必ずしも画像データに限るものではない。
【0029】
更に、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療情報転送管理システムを含む医療情報転送システムの構成図である。
【図2】図1に示す医療情報転送システムの通常時の動作の流れについて示すフローチャートである。
【図3】図1に示す医療情報転送システムの緊急時の動作の流れについて示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
101a〜101c…モダリティ、102…ネットワーク、103…HIS又はRIS、104…医療情報転送管理システム、105…データベース、106…画像サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された医療機器からの医療情報の転送を管理する医療情報転送管理システムにおいて、
前記医療機器に対応する検査受付情報を取得する受付情報取得手段と、
前記取得した検査受付情報から前記医療機器が前記医療情報を転送可能な時間をスケジュール化する管理手段と、
を有することを特徴とする医療情報転送管理システム。
【請求項2】
前記管理手段は、前記医療機器から、前記医療情報の転送要求がなされたときに、前記医療機器に前記医療情報を転送可能な時間を通知し、
前記医療機器は、前記医療情報を転送可能な時間になったときに前記医療情報の転送を行うことを特徴とする請求項1に記載の医療情報転送管理システム。
【請求項3】
前記ネットワークには複数の前記医療機器が接続され、
前記管理手段は、何れかの前記医療機器から、緊急の医療情報の転送を行う旨の要求がなされたときに、他の医療機器による前記医療情報の転送を中断させ、
前記緊急の医療情報の転送を行う医療機器は、現在実行中の検査を中断してから前記医療情報の転送を行うことを特徴とする請求項1に記載の医療情報転送管理システム。
【請求項4】
前記管理手段は、前記緊急の医療情報の転送が終了した時点で前記スケジュール化を再度行うことを特徴とする請求項3に記載の医療情報転送管理システム。
【請求項5】
前記管理手段は、前記医療情報の容量に応じて前記医療情報を分割して転送させる旨を、前記医療情報を転送可能な時間と共に通知し、
前記医療機器は、前記転送可能な時間になったときに前記医療情報を分割して転送することを特徴とする請求項1に記載の医療情報転送管理システム。
【請求項6】
前記医療情報は、前記医療機器で取得される医療画像データを含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載の医療情報転送管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−275184(P2007−275184A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103216(P2006−103216)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】