説明

医療用ゴム栓およびその製造方法

【課題】 本発明の課題は、輸液バッグに使用するゴム栓等医療用ゴム栓に優れた性能を付与することにある。
【解決手段】 スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対して、軟化剤160〜200質量部、ポリプロピレン15〜40質量部を配合した組成物からなる医療用ゴム栓を提供する。上記組成物からなる医療用ゴム栓は、成形性が良く、針が容易に刺通され、また針をゴム栓から抜いた時に液漏れせず、更にゴム栓に刺した針が容易に抜けないような優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば輸液バッグに用いられる医療用ゴム栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のゴム栓としては、成形性が良いこと、輸液バッグに輸液を注入あるいは取出すための注射針が容易に刺通せること(針刺し性)、針をゴム栓から引き抜いた時に輸液が針穴から漏れないこと、ゴム栓に刺通した針が簡単に抜けないこと(針保持性)が要求される。
【0003】
従来、医療用ゴム栓の組成物としてはスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、メルトインデックス23以上のポリプロピレン・パラフィンオイルからなり、JISK−6301(現JIS K 6253)に規定する硬さが28のものが提供されている(例えば特許文献1)。
更にスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、ポリオレフィン系樹脂、非芳香族系ゴム用軟化剤からなり、JISK−6301(現JIS K 6253)に規定する硬さが5以上30未満である組成物も提供されている(例えば特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−601号公報
【特許文献2】特開平7−228749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記組成物は、成形性、針刺し性および液漏れ性を確保するために、硬さを30未満に設定している。しかし硬さが30以下になると針保持性が悪くなって針が抜け易くなるし、また液漏れ性も実用的に満足するには至っていない、と云う問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対して、軟化剤160〜200質量部、ポリプロピレン15〜40質量部を配合した組成物からなる医療用ゴム栓を提供するものである。
上記スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は質量平均分子量が30万〜50万であり、上記ポリプロピレンの230℃/2.16kgfの条件におけるメルトインデックスは10g/10min以下であり、上記組成物のJIS K 6253に規定する硬さが30〜50であることが望ましい。
本発明にあっては、更に上記組成物を射出成形することによってゴム栓を製造する医療用ゴム栓の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
〔作用〕
本発明では、エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)を使用するから、良好な針保持性を確保するために、硬度を30以上にしても、良好な針刺し性と成形性が得られる。これはブチレンブロック鎖の良好な可撓性によるものと思われる。
しかし硬さが50を越えると、ゴム栓の弾性復元力が不足し、ゴム栓から針を抜いた時、針穴が塞がらず、液漏れが発生する。
上記SEBSの質量平均分子量が30万〜50万の範囲にあると、上記SEBSの特徴が更に顕著に発揮される。そしてポリプロピレン(PP)は組成物の硬さを高める成分であるが、PPのメルトインデックス(MFR)が230℃/2.16kgfの条件下において10g/10min以下であると、成形性に悪影響が及ぼされない。
【0008】
〔効果〕
本発明の組成物を使用すれば、成形性、特に射出成形性が良好で、かつ針刺し性に優れ、ゴム栓から針を抜いた時に針穴が速やかに弾性復元力によって塞がれることによって液漏れがなく、更に針保持性が良いゴム栓が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明に使用するスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)は、質量平均分子量が30万〜50万の範囲にあることが望ましい。質量平均分子量が30万未満の場合には得られるゴム栓の弾性復元力が充分でなく、針を抜いた時に液漏れのおそれがある。しかし50万を越えると、成形性や針刺し性が悪化する。
【0010】
本発明に使用する軟化剤としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、プロセスオイル、エキステンダー、高級脂肪酸、松根油等が例示されるが、SEBS等他の成分との相溶性を考慮すれば、パラフィン系オイルが望ましい。
【0011】
上記軟化剤は、上記SEBS100質量部に対して160〜200質量部添加される。軟化剤の添加量が160質量部未満の場合には弾性復元力が乏しくかつJIS K 6253Aに規定する硬さが50を超え、針を抜いた時に液漏れのおそれがあり、また針刺し性が悪化する。軟化剤の添加量が200質量部を越えると、ゴム栓の針保持性が悪化する。
【0012】
本発明に使用するポリプロピレン(PP)はMFRが230℃/2.16kgfの条件下において10g/10min以下のものであることが望ましい。MFRが10g/10minを越えると、組成物の成形性や針刺し性の悪化、弾性復元力の不足による液漏れのおそれ等の不具合が生ずる。
【0013】
また上記PPの添加量はSEBS100質量部に対して15〜40質量部の範囲とされる。PPの添加量が15質量部未満の場合には、組成物の硬さが不足し、ゴム栓の針保持性が悪化し、また40質量部を越えると、組成物の成形性が悪化する。
【0014】
上記成分以外、充填材、顔料、染料、老化防止剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0015】
以下に本発明の実施例および比較例によって更に具体的に説明する。
〔実施例および比較例〕
表1に示す材料を使用して表2に示す組成のペレットを作成し、該ペレットを射出成形機にて所定形状の試料を射出成形した。
【0016】
【表1】

【0017】
<射出条件>
射出成形条件は、温度170〜180℃、射出速度20%、射出圧力40%、射出保圧30%、射出時間10秒、冷却時間60秒、金型温度40℃に設定した。
【0018】
<試験方法>
硬さ:厚さ6mmの試験片を用い、JIS K 6253Aに準拠して測定した。
液漏れ性・針刺し性・針保持力:上記射出成形で得られた肉厚6mmの成形試料(ゴム栓)を115℃のオーブンに1時間入れて疑似滅菌を行ない、その後直径4mmのプラスチック針(テルモ製TC−00503K)を刺して4時間放置する。4時間放置後、針を刺した状態のゴム栓を疑似医療用輸液バッグに取り付けてゴム栓装着側を下にして針を抜き、その時の液漏れの状態、針の刺し込み易さ、針保持性を観察した。液漏れ性については針を抜いた時に液漏れしない場合を合格、液漏れした場合を不合格とした。
結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
本発明の実施例はいずれも、硬さが30〜50の範囲にあり、液漏れ性は全くなく、針保持性、針刺し性ともに良好(◎〜○)であった。一方SEBSの質量平均分子量が30万に満たない比較例1では若干の液漏れがみられ(2/10)、SEBSに代えてSEPSを使用した比較例2,3では顕著な液漏れがみられ(7/10,5/10)、パラフィン系オイルが200質量部を越えて含有される比較例4は針保持性が悪く、パラフィン系オイルが160質量部未満の比較例5は100%液漏れが生じ、また針刺し性も良くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の組成物は、成形性、針刺し性、針保持性が良好でかつ液漏れしないゴム栓を提供し、該ゴム栓は輸液バッグ用等医療用に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対して、軟化剤160〜200質量部、ポリプロピレン15〜40質量部を配合した組成物からなることを特徴とする医療用ゴム栓。
【請求項2】
上記スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体は質量平均分子量が30万〜50万であり、上記ポリプロピレンの230℃/2.16kgfの条件におけるメルトインデックスは10g/10min以下であり、上記組成物のJIS K 6253に規定する硬さが30〜50である請求項1に記載の医療用ゴム栓。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の組成物を射出成形することによってゴム栓を製造することを特徴とする請求項1に記載の医療用ゴム栓の製造方法。


【公開番号】特開2011−136211(P2011−136211A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55820(P2011−55820)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2005−238059(P2005−238059)の分割
【原出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】