説明

医療用デバイス

【課題】最先端部の滑りを防止して正確かつ安全に穿孔でき、なおかつ、過剰挿入による穿孔部位の損傷を防止できる医療用デバイスを提供する。
【解決手段】医療用デバイス1の最先端部10におけるコアシャフト3及びシース体5の外表面に、第1摩擦抵抗部21を設け、該最先端部10から基端方向に離間した前記シース体5の外表面に、第2摩擦抵抗部22を設け、該第1摩擦抵抗部21、及び第2摩擦抵抗部22における僧帽弁の穿孔部位に対する摩擦抵抗を、該第1摩擦抵抗部21以外の部位、及び該第2摩擦抵抗部22以外の部位における該穿孔部位に対する摩擦抵抗より高いものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、僧帽弁などの心臓の弁が狭窄又は閉鎖不全となる弁膜症を治療するために前記僧帽弁などの穿刺対象部に穿刺される医療用デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無傷の心房中隔、および卵円孔開存(PFO)を有する心房中隔の両方を術者が安全に穿刺するために用いられる医療用デバイスは、既に開示されている(特許文献1参照)。かかる構成は、鈍い外側針と、この外側針の内腔を通して長軸方向に配置される内側針とを備えており、また内側針は可撓性であり、例えば、その先端に可撓性部分及び/又はベンドあるいは他の非外傷性の構造物を有している。
【0003】
また、血管等の内壁に対する摩擦抵抗を低く維持することができ、術者が最先端部の抵抗を感知することができるガイドワイヤは、既に開示されている(特許文献2参照)。かかる構成は、芯材の本体部の外表面に、芯材よりも潤滑性が高い被覆層が被覆されており、また、コイルにおける最先端部の基端に隣接して潤滑部が形成されており、前記最先端部は前記潤滑部よりも潤滑性が低くなっている。
【0004】
さらに、バルーンカテーテルのバルーン拡張時に、バルーンの滑りを容易かつ確実に防止しようとする医療用ワイヤは、既に開示されている(特許文献3参照)。かかる構成は、ワイヤ部における被覆層の外表面の所定部位に、親水性材料により構成され、湿潤により滑性を発揮する滑性層と、該滑性層の一部が欠損してなる欠損部とが形成されている。この欠損部は、前記滑性層のある部分に比べてバルーンとの摩擦抵抗が大きいため、バルーンの固定をより確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−510458号公報
【特許文献2】特開2002−17863号公報
【特許文献3】特開2005−185376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内科的な弁膜症の治療は、心臓が拍動した状態で治療が行われ、さらに僧帽弁などの弁は、それ自身も開閉しているため、医療用デバイスを僧帽弁などの弁に安全に穿刺することが困難であった。このため、医療用デバイスを穿刺する際に該医療用デバイスの最先端部の滑りを防止して正確かつ安全に穿孔でき、なおかつ、該医療用デバイスの過剰挿入による穿孔部位周辺の損傷を防止できる構成はいまだ提供されていない。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、術者が僧帽弁などの穿刺対象部へ医療用デバイスを穿刺して貫通させる際に、該医療用デバイスの最先端部の位置を把握しやすくし、かつ穿孔時あるいは穿孔後に過剰な挿入を抑止して穿孔部位周辺の損傷を防ぐことができる医療用デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、穿刺対象部に穿刺される医療用デバイスであって、コアシャフトと、前記コアシャフトが挿通される中空部を有し、前記中空部において前記コアシャフトが長軸方向に移動自在とされているシース体とを備え、前記医療用デバイスの最先端部を構成する前記コアシャフトあるいは前記シース体の少なくともいずれか一方の外表面に、第1の摩擦抵抗部が設けられていると共に、前記最先端部から基端方向に離間した前記シース体の外表面に、第2の摩擦抵抗部が設けられており、前記第1の摩擦抵抗部、及び第2の摩擦抵抗部における前記穿刺対象部の穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記医療用デバイスの前記第1の摩擦抵抗部以外の部位及び前記第2の摩擦抵抗部以外の部位における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗より高いことを特徴とする医療用デバイスである。
【0009】
上記構成にあって、医療用デバイスの最先端部に第1の摩擦抵抗部が形成されていると、該最先端部の穿刺対象部に対する滑りが抑えられるため、術者にとっては該最先端部の抵抗を容易に感知することが可能となる。このため、術者は該最先端部の位置を的確に把握しつつ該最先端部を所望の穿孔部位に安全かつ正確に誘導して穿刺することが可能となる。また、該医療用デバイスが穿孔部位に対して適切に貫通された状態において該穿孔部位に接触するシース体の外表面にあらかじめ第2の摩擦抵抗部を設けておくことにより、術者は、第2の摩擦抵抗部による抵抗を感知するところまで該医療用デバイスを挿入すれば、該医療用デバイスが穿孔部位に対して適切に配置されたことを容易に認識することができる。そして、該医療用デバイスのシース体は、該第2の摩擦抵抗部と穿孔部位との間に生ずる摩擦抵抗により該穿孔部位に係止されて留め置かれやすくなることとなるため、該シース体が過剰に挿入されることで該医療用デバイスの先端が例えば心臓などの内部組織を傷つけてしまう、ことが抑止される。
【0010】
上記構成にあっては、前記第2の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記第1の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗よりも高い構成としてもよい。
【0011】
かかる構成とすることで、術者にとっては第1の摩擦抵抗部よりも第2の摩擦抵抗部による抵抗を感知しやすくなる。これにより、術者は、医療用デバイスが穿孔部位に対して適切に配置されたことをより一層容易に認識することができる。
【0012】
また、前記シース体は、その先端が先細り形状に形成され、前記第1の摩擦抵抗部は、少なくとも前記シース体の先細り形状となった先端に形成されている構成としてもよい。
【0013】
かかる構成とすることにより、医療用デバイスの穿孔部位に対する挿入性が向上する。また、前記シース体の先細り形状となった先端に第1の摩擦抵抗部が形成されるため、術者は該先端の位置を容易に把握することができる。したがって、術者は、穿孔部位に対して医療用デバイスを安全かつ的確に挿入することができる。
【0014】
また、前記第2の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さは、前記第1の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さよりも長い構成が提案される。
【0015】
かかる構成とすることにより、該医療用デバイスを穿孔していく過程で、術者は、第1の摩擦抵抗部が穿孔部位に対して接触したことよりも、第2の摩擦抵抗部が穿孔部位と接触したことの方が容易に感知できる。このため、術者は、医療用デバイスが適切に配置されたことを確実に把握することが可能となる。
【0016】
ところで、第2の摩擦抵抗部が穿孔部位に到達した位置からさらにシース体を先端方向へ挿入することが求められるときには、該第2の摩擦抵抗部は該穿孔部位を通過することになる。また、新しい他のデバイスを、穿孔部位に挿入されているシース体に伝わせながら該穿孔部位に挿入していく場合に、該他のデバイスの挿入に伴い該シース体が先端方向へ押し出されてしまうときにも、該第2の摩擦抵抗部が該穿孔部位を通過してしまう場合がある。
【0017】
そこで、前記シース体の外表面において前記第2の摩擦抵抗部よりも基端側に、第3の摩擦抵抗部が設けられており、前記第3の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記医療用デバイスの前記第1の摩擦抵抗部以外の部位及び前記第2の摩擦抵抗部以外の部位における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗より高い構成が提案される。
【0018】
上記構成とすると、上記のように第2の摩擦抵抗部が穿孔部位を通過した場合であっても、補償的に、前記第3の摩擦抵抗部が穿孔部位に到達したところで該シース体の過剰な挿入を抑止することができる。
【0019】
ここで、前記第3の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記第2の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗よりも高い構成としてもよい。
【0020】
かかる構成とすることにより、上記のように第2の摩擦抵抗部が穿孔部位を通過した場合であっても、第3の摩擦抵抗部により確実にシース体の移動を防止して、該シース体の過剰挿入による穿孔部位周辺の損傷を防ぐことができる。
【0021】
また、前記第3の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さは、前記第2の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さと同じであるかあるいはこれよりも長い構成が提案される。
【0022】
かかる構成とすることにより、該医療用デバイスを穿孔部位に対して穿孔していく過程で、術者は、第2の摩擦抵抗部が穿孔部位に対して接触したことと同等、あるいはそれ以上に、第3の摩擦抵抗部が穿孔部位と接触したことを容易に感知できる。このため、術者は、該シース体の過剰挿入によって穿孔部位周辺を損傷してしまうことなく、安全に医療用デバイスを適切な位置に配置することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、術者が最先端部の位置を容易に把握することができるため、該最先端部を安全かつ正確に穿孔部位へ誘導することができると共に、該医療用デバイスが穿孔部位に過剰に挿入されることがないため、穿孔部位周辺の損傷を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】医療用デバイスを示す説明図
【図2】図1の部分拡大図
【図3】第3摩擦抵抗部を有する医療用デバイスを示す説明図
【図4】第1摩擦抵抗部が穿孔部位に当接した医療用デバイスを示す説明図
【図5】第2摩擦抵抗部が穿孔部位に到達した医療用デバイスを示す説明図
【図6】第3摩擦抵抗部が穿孔部位に到達した医療用デバイスを示す説明図
【図7】他の形態の摩擦抵抗部を示す説明図
【図8】他の形態の医療用デバイスの最先端部を示す説明図
【図9】他の形態の医療用デバイスの最先端部を示す説明図
【図10】他の形態の医療用デバイスの最先端部を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の医療用デバイスの実施例を添付図面に従って説明する。なお、本実施例においては、弁膜症の僧帽弁(穿刺対象部)を左心室から左心房へ向けて貫通させる医療用デバイスを例にして説明する。
【0026】
図1に示すように、医療用デバイス1は、コアシャフト3と、該コアシャフト3を覆うシース体5とを備えている。
【0027】
前記コアシャフト3は、全体としてほぼ丸棒形状をなし、その先端部30は穿通力向上の目的で先細り形状となっている。また、該コアシャフト3において、その基端からやや先端側に位置した所定部位には、術者が該コアシャフト3を操作するためのストッパー部13が取り付けられている。
【0028】
一方、前記シース体5は、複数のコイル素線が撚られた多条コイルで構成されている。そして、該シース体5の中空部6に、前記コアシャフト3の前記ストッパー部13より先端側が挿入されている。かかる構成にあっては、該シース体5に対して該コアシャフト3は長軸方向に移動自在、及び軸周りに回転自在となっている。また、視認性確保のため、該シース体5の先端部15には、X線不透過材料のAu−Sn合金からなる先端側ロウ付け部7Aが形成され、該シース体5の基端部には同様の材料からなる基端側ロウ付け部7Bが形成されている。なお、該ロウ付け部7A,7Bは、X線不透過材料のAu−Sn合金で形成することが好ましいが、他の公知材料を用いた公知技術(例えば、接着剤、ロウ接、又は溶接)により形成するようにしてもよい。
【0029】
また、図1に示すように、医療用デバイス1の外表面には、第1摩擦抵抗部(第1の摩擦抵抗部)21、及び第2摩擦抵抗部(第2の摩擦抵抗部)22が形成されており、該第1摩擦抵抗部21以外の部位、及び該第2摩擦抵抗部22以外の部位には、それぞれ非摩擦抵抗部20が形成されている。具体的には、該医療用デバイス1の最先端部10に、第1摩擦抵抗部21が形成され、該第1摩擦抵抗部21から基端方向に離間した前記シース体5の外表面に、第2摩擦抵抗部22が形成されている。
【0030】
さらに詳述すると、図2に示すように、前記シース体5の主要部の外表面には、親水性高分子材料層が形成されており、該親水性高分子材料層により非摩擦抵抗部20が構成されている。この非摩擦抵抗部20の親水性高分子材料層は、体内で血液等の体液と接触することにより、僧帽弁50の穿孔部位51に対するシース体5の通過性を向上させる(図4参照)。これに対し、医療用デバイス1の最先端部10を構成する該シース体5の先端部15の外表面、及び医療用デバイス1の最先端部10を構成するコアシャフト3の先端部30の外表面には、前記親水性高分子材料層が形成されず、それぞれ前記シース体5の外表面及び前記コアシャフト3の外表面が露出した部位が設けられている。そして、かかる露出した部位により、前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗が前記非摩擦抵抗部20における前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗より高い第1摩擦抵抗部21が構成されている。また、同様に、前記シース体5の先端部15から基端側に、前記親水性高分子材料層が形成されずに該シース体5の外表面が露出している部位が配置されており、かかる部位により、前記第2摩擦抵抗部22が構成されている。
【0031】
なお、前記非摩擦抵抗部20は、公知技術の採用により好適に形成することができる。例えば、前記親水性高分子材料としては、ポリビニルピロリドンが好ましい。そのほか、該非摩擦抵抗部20を形成するための材料として、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリレート)、ヒアルロン酸等を用いることができる。
【0032】
また、図3に示すように、シース体5において、前記第2摩擦抵抗部22からさらに基端方向に離間した位置に、該第2摩擦抵抗部22と同様な構成の第3摩擦抵抗部23(第3の摩擦抵抗部)が形成されていてもよい。なお、医療用デバイス1における摩擦抵抗部21〜23の数は上記実施例に限定されず、4箇所以上設けられていてもよい。
【0033】
次に、第1から第3の摩擦抵抗部21〜23を備えた医療用デバイス1の使用態様を概説する。
まず、図4に示すように、左心室52に挿入した医療用デバイス1の最先端部10を、コアシャフト3の先端部30の位置とシース体5の先端部15の位置とを一致させて穿通力を確保した上で、僧帽弁50に当接させる。このとき、該医療用デバイス1の最先端部10に形成されている第1摩擦抵抗部21が該僧帽弁50に接触するため、術者は該最先端部10の抵抗を容易に感知することができ、最先端部10の位置を正確に把握しつつ該最先端部10を安全に所望の位置まで誘導することができる。
【0034】
次に、図5に示すように、該医療用デバイス1を穿刺して該僧帽弁50を貫通させ、該医療用デバイス1を左心房54へ向けて挿入していく。このとき、術者は、シース体5に形成された第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51に到達したことを感知するまで該医療用デバイス1を挿入する。そして、該第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51に到達したところで、コアシャフト3を所定長さ分だけ引き込み、シース体5の先端部15を柔軟な状態として垂れ下げた状態(図6参照)とする。なお、図5に示すように、前記シース体5は、第2摩擦抵抗部22と穿孔部位51との間で生ずる摩擦抵抗により適切に穿孔部位51に係止されて留め置かれるため、過剰な挿入による穿孔部位51周辺(例えば、左心房54の内壁)の損傷が防止される。
【0035】
ところで、図6に示すように、他のデバイスXをシース体5に伝わせながら左心房54へ挿入する場合、該シース体5が他のデバイスXと共に先端方向に位置ずれして前記第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51を通過してしまうことがある。このとき、シース体5は、該第2摩擦抵抗部22より基端側に配置された第3摩擦抵抗部23と穿孔部位51との摩擦抵抗により、過剰な挿入が抑止され、該穿孔部位51周辺の損傷が防止される。
【0036】
ここで、医療用デバイス1において、前記第2摩擦抵抗部22における前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗を、前記第1摩擦抵抗部21における前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗よりも高くすると、術者にとっては第1摩擦抵抗部21よりも第2摩擦抵抗部22による抵抗を感知しやすくなり、術者は、医療用デバイス1が穿孔部位51に対して適切に配置されたことをより一層容易に認識することが可能となる。
【0037】
また、前記第3摩擦抵抗部23における前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗を、前記第2摩擦抵抗部22における前記穿孔部位51に対する摩擦抵抗よりも高くすると、図6に示すように第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51を通過した場合であっても、第3摩擦抵抗部23により確実にシース体5の移動を防止して、該シース体5の過剰挿入による穿孔部位51の周辺の損傷を防ぐことができる。
【0038】
また、図3〜図6に示すように、前記第2摩擦抵抗部22における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さを、前記第1摩擦抵抗部21における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さよりも長くすると、該医療用デバイス1を穿孔していく過程で、術者は、第1摩擦抵抗部21が穿孔部位51に対して接触したことよりも、第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51と接触したことの方が容易に感知できることになり、術者は、医療用デバイス1が適切に配置されたことを確実に把握することが可能となる。
【0039】
また、図3〜図6に示すように、前記第3摩擦抵抗部23における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さを、前記第2摩擦抵抗部22における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さよりも長い構成とすると、該医療用デバイス1を穿孔していく過程で、術者は、第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51に対して接触したことより、第3摩擦抵抗部23が穿孔部位51と接触したことの方が容易に感知できる。このため、術者は、該シース体5の過剰挿入によって穿孔部位51の周辺を損傷してしまうことなく、安全に医療用デバイス1を適切な位置に配置することができる。なお、前記第3摩擦抵抗部23における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さを、前記第2摩擦抵抗部22における前記コアシャフト3の長軸方向に沿う長さと同じにしてもよい。この場合、術者は、第2摩擦抵抗部22が穿孔部位51に対して接触した際の感触と同等に、第3摩擦抵抗部23が穿孔部位51と接触したことを感知できる。
【0040】
上記医療用デバイス1にあっては、以下のような変形例が提案される。なお、上記実施例と共通する部分については説明を省略し、図中では同じ符号を付すこととする。
【0041】
図7aに示すように、穿孔部位51(生体組織)に対する摩擦抵抗の高い材料からなる摩擦抵抗層をシース体5の外表面に形成して摩擦抵抗部211を形成し、一方、該摩擦抵抗層が形成されない部位を非摩擦抵抗部201とするようにしてもよい。なお、摩擦抵抗層を構成する材料としては、シリコンゴム、アクリルゴム等のゴム、又はポリウレタン系、ポリアミド系等のエラストマーが例示される。また、前記非摩擦抵抗部201は、前述したような親水性高分子材料層を形成して構成するようにしてもよい。
【0042】
また、図7bに示すように、シース体5のコイル素線の表面に、公知技術の表面処理を施して該シース体5の外表面に表面処理層213を形成し、これにより所要の摩擦抵抗が得られる摩擦抵抗部212を構成するようにしてもよい。そして、表面処理されない部分を非摩擦抵抗部202としてもよいし、前述したような親水性高分子材料層を形成して非摩擦抵抗部202としてもよい。例えば、前記摩擦抵抗部212は、シース体5の外表面に凹凸を形成する表面処理を施し、該外表面部分の表面粗さを調整することにより形成してもよい。このような表面処理方法としては、スパッタリング方法、ブラスト法、又は切削法等がある。また、逆に公知技術の表面処理を施すことにより非摩擦抵抗部202を形成し、表面処理されない部分を摩擦抵抗部212としてもよい。例えば、非摩擦抵抗部202は、シース体5の外表面に平滑面又は潤滑面を形成する表面処理を施すことにより形成してもよい。このような表面処理方法としては、上記親水性高分子材料層を形成する方法以外に、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂層を形成する方法、シリコンオイル等のオイル層を形成する方法、又は鏡面処理を施す方法等がある。
【0043】
また、図8に示すように、コイル体5の先端部15の表面に親水性高分子材料層を形成して非摩擦抵抗部203を形成し、コアシャフト3の先端部30の表面のみ露出させて該露出部分を第1摩擦抵抗部214としてもよい。要は、医療用デバイス1の最先端部10を構成する前記コアシャフト3の先端部30あるいは前記シース体5の先端部15の少なくともいずれか一方の外表面に、第1摩擦抵抗部214が設けられていればよい。
【0044】
また、これまでに述べたシース体5に代えて、図9に示すように、先端が先細り形状となっており、該先細りした先端部15に前記第1摩擦抵抗部21が形成されているシース体55であってもよい。該シース体55の先端部15は、シース体55の外径が先端に向かうに従い減少するように、研削機等によって研削されることより作製可能である。このように、シース体55の先端部15が先細り形状となると、穿孔部位51に対する挿入性が向上することとなる。なお、該シース体55の先端部15に第1摩擦抵抗部21を形成する際には、該シース体55の先細り形状となっている部位のうち少なくとも先端寄りに該第1摩擦抵抗部21を配置することが好ましい。かかる構成とすると、穿孔の際に第1摩擦抵抗部21が僧帽弁50に当接することになり、術者は医療用デバイス1の先端部10の抵抗を容易に感知することができる。したがって、術者は、穿孔部位51に対して医療用デバイス1を安全かつ的確に挿入することができる。
【0045】
また、医療用デバイス1の最先端部10においては、これまでに述べた実施例のようにシース体5の中空部6が先端方向に開放されていてもよいし、図10に示すように、シース体5の先端に遮蔽用ロウ付け部71Aが形成されることにより、中空部6の先端が遮蔽されていてもよい。かかる構成とすることにより、コアシャフト3の先端部30がシース体5の先端部15から突き出すことが抑止される。
【0046】
本発明は、上述した実施例に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更を行ったり、組み合わせ態様を適宜変更したりすることは勿論可能である。例えば、前記シース体5,55は、多条コイルに限定されず、単コイルであってもよく、あるいは筒形状をなし、コアシャフト3が移動自在に挿通される中空部を有する金属パイプ、又は樹脂チューブ等の構造体でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 医療用デバイス
3 コアシャフト
5,55 シース体
6 中空部
10 最先端部
21〜23,211,212 摩擦抵抗部
50 僧帽弁(穿刺対象部)
51 穿孔部位



【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺対象部に穿刺される医療用デバイスであって、
コアシャフトと、
前記コアシャフトが挿通される中空部を有し、前記中空部において前記コアシャフトが長軸方向に移動自在とされているシース体と
を備え、
前記医療用デバイスの最先端部を構成する前記コアシャフトあるいは前記シース体の少なくともいずれか一方の外表面に、第1の摩擦抵抗部が設けられていると共に、前記最先端部から基端方向に離間した前記シース体の外表面に、第2の摩擦抵抗部が設けられており、
前記第1の摩擦抵抗部、及び第2の摩擦抵抗部における前記穿刺対象部の穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記医療用デバイスの前記第1の摩擦抵抗部以外の部位及び前記第2の摩擦抵抗部以外の部位における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗より高い
ことを特徴とする医療用デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用デバイスにおいて、
前記第2の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記第1の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗よりも高い
医療用デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の医療用デバイスにおいて、
前記シース体は、その先端が先細り形状に形成され、
前記第1の摩擦抵抗部は、少なくとも前記シース体の先細り形状となった先端に形成されている
医療用デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の医療用デバイスにおいて、
前記第2の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さは、前記第1の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さよりも長い
医療用デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の医療用デバイスにおいて、
前記シース体の外表面において前記第2の摩擦抵抗部よりも基端側に、第3の摩擦抵抗部が設けられており、
前記第3の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記医療用デバイスの前記第1の摩擦抵抗部以外の部位及び前記第2の摩擦抵抗部以外の部位における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗より高い
医療用デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用デバイスにおいて、
前記第3の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗が、前記第2の摩擦抵抗部における前記穿孔部位に対する摩擦抵抗よりも高い
医療用デバイス。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の医療用デバイスにおいて、
前記第3の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さは、前記第2の摩擦抵抗部における前記コアシャフトの長軸方向に沿う長さと同じであるかあるいはこれよりも長い
医療用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−223337(P2012−223337A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92932(P2011−92932)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】