医療用ペースト注入器
【課題】粘性が高い医療用ペーストであっても、容易に収容かつ吐出することを目的とする。
【解決手段】両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路11を有するシリンダ10を備え、シリンダ10が、軸方向の少なくとも一部に、軸方向に沿う分割面14a,14bによって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部16を備え、分割面14a,14bの少なくとも1つに、内部管路11の一部を構成する溝15a,15bが設けられている。
【解決手段】両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路11を有するシリンダ10を備え、シリンダ10が、軸方向の少なくとも一部に、軸方向に沿う分割面14a,14bによって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部16を備え、分割面14a,14bの少なくとも1つに、内部管路11の一部を構成する溝15a,15bが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨欠損部や骨折部に対してペースト状の人工骨補填材などの医療用ペーストを注入するための医療用ペースト注入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症による骨折や骨腫瘍等により生じた骨欠損部や骨折部に対して、その補修又は固定等のために、リン酸カルシウム系粉体を主成分とするペースト状の人工骨補填材(以下、単に「骨補填材」という)を注入する治療方法が知られている。
骨欠損部や骨折部に骨補填材を注入する際に用いる医療用ペースト注入器として、一端に開口部を有し骨補填材を収容する筒型のシリンダと、シリンダの他端に設けられシリンダよりも小径の注入管と、シリンダの内周面に嵌合するプランジャと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。このような医療用ペースト注入器では、シリンダの開口部からシリンダ内に骨補填材を収容し、シリンダ内でプランジャを開口部側から注入管側に移動させることにより、シリンダ内に収容された骨補填材を注入管の先端から吐出させて、骨欠損部や骨折部に注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−118436号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2007年10月1日改訂(第5版)D5 医療機器許可番号13B1X00310100001 器58整形用器具器械 一般用医療機器 手動式整形外科用セメントディスペンサ 35809001 バイオペックス(登録商標)専用ガン 取扱説明書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような医療用ペースト注入器では、骨補填材などの医療用ペーストの粘性が高い場合には、シリンダ内に医療用ペーストを収容することが困難となるという問題がある。また、注入管の径がシリンダの径よりも小径であることから、シリンダ内の医療用ペーストを注入管から吐出させる際に、シリンダと注入管との境界部が抵抗となって、プランジャを移動させるために多大な力を要するという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、粘性が高い医療用ペーストであっても、容易に収容かつ吐出することができる医療用ペースト注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路を有するシリンダを備え、前記シリンダが、前記軸方向の少なくとも一部に、該軸方向に沿う分割面によって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部を備え、前記分割面の少なくとも1つに、前記内部管路の一部を構成する溝が設けられている医療用ペースト注入器である。
【0008】
本発明によれば、シリンダに医療用ペーストを収容する場合に、シリンダに設けられた開閉構造部を分割面によって分割して開状態とし、分割面に設けられた溝に医療用ペーストを充填する。溝に医療用ペーストを充填することは、内部管路の軸方向への医療用ペーストの押し出しを伴わないので、医療用ペーストの粘性が高い場合や内部管路の径が極めて小径の場合であっても容易に行うことができる。そして、開閉構造部を閉状態とすることにより、医療用ペーストが充填された溝が閉じられて、内部管路が構成される。すなわち、溝に医療用ペーストを充填させた後に開閉構造部を閉状態とすることで内部管路に医療用ペーストを容易に充填することができる。また、内部管路は、全長にわたって略一定の横断面形状且つ略直線状であることから、プランジャを用いて内部管路内の医療用ペーストを押し出す際に、抵抗となる部分がなく、医療用ペーストの粘性が高い場合であっても、容易に医療用ペーストを押し出すことができる。
【0009】
上記した態様においては、前記内部管路の先端部を構成する管状のノズルを有する注入器本体を備え、該注入器本体に、前記開閉構造部が着脱可能に設けられていることが好ましい。
このようにすることで、注入器本体から開閉構造部を取り外した状態で医療用ペーストの充填作業を行うことができる。また、注入器本体と開閉構造部とを分離した状態で洗浄や滅菌を容易に行うことができる。また、開閉構造部をシリンダの軸方向全長とすることができ、この場合には、開閉構造部の溝に医療用ペーストを充填することがより容易となる。さらに、シリンダとノズルとを異なる素材で形成することができるため、例えば、ノズルにのみ可撓性を持たせることができる。
【0010】
上記した態様においては、前記注入器本体と前記開閉構造部との間に、両者に設けられた部分的な前記内部管路どうしが一致するように、両者を位置決めする位置決め手段を備えることが好ましい。
このようにすることで、位置決め手段によってシリンダの内部管路と注入器の内部管路が略直線上に位置決めされるので、注入器本体に対する開閉構造部の取り付けを容易にすることができる。
【0011】
上記した態様においては、前記開閉構造部に、前記内部管路の一部を構成する内部管路部が、一方向に間隔をあけて複数並列して設けられるとともに、該開閉構造部が、前記注入器本体に対して、前記内部管路部の並列方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
このようにすることで、予め複数の溝の全てに医療用ペーストを充填させることが出来るので、充分な量の医療用ペーストをシリンダに収容することができる。また、開閉構造部を内部管路の並列方向に移動させることにより、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘性が高い医療用ペーストであっても、容易に収容かつ吐出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例にかかる医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の他の例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る医療用ペースト注入器は、図1に示すように、リン酸カルシウム系粉体を主成分とするペースト状人工骨補填材(以下、「骨補填材」という)などの医療用ペーストを収容するシリンダ10と、シリンダ10の収容物である医療用ペーストを押し出すプランジャ13とを備えている。
【0015】
図1に示すように、シリンダ10は、両端が開口した略円筒形状をなしており、軸方向の全長にわたって一定の円形状断面の内部管路11を有している。シリンダ10の基端側には、フランジ12が設けられている。
【0016】
シリンダ10の軸方向の一部には、開閉構造部16が設けられている。開閉構造部16は、軸方向に沿う分割面14a,14bによって軸方向に分割されており、分割面14a,14bによって分割された一方(図1における上部)が、他方に対して図示しない蝶番により開閉可能に設けられている。何れの分割面14a,14bにも断面半円形状の溝15a,15bが夫々設けられている。開閉構造部16の閉状態において、分割面14aと分割面14bとを密着させると、溝15a,15bにより内部管路11の一部が構成されるようになっている。
プランジャ13は、フランジ12側の開口から内部管路11に挿入され先端側の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0017】
このように構成された本実施形態にかかる医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合には、まず、骨補填材をシリンダ10の内部管路11に収容する。このとき、開閉構造部16を開状態として溝15a,15bを露出させ、溝15a,15bに骨補填材を充填する。溝15a,15bに骨補填材が充填された状態で、開閉構造部16を閉状態として、分割面14a,14bを密着させる。これにより、溝15aと溝15bとにより構成される内部管路11の一部に骨補填材が充填されることとなる。
【0018】
次いで、内部管路11内に、フランジ12が設けられた開口側からプランジャ13を挿入し、プランジャ13を先端側に移動させることにより、先端側の開口から骨補填材を押し出す。このようにすることで、内部管路11の先端側が、骨欠損部や骨折部に対する注入用のノズルとして機能する。
【0019】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、開閉構造部16を開いた状態で、溝15a,15bは、軸方向に直交する方向に開口されているため、狭い内部管路11に対して骨補填材を軸方向に押し入れる作業を行うことなく、溝に対して容易に骨補填材を充填することができる。さらに、開閉構造部16を閉状態とすることで、溝15aと溝15bとが一体化し内部管路11が形成されるため、溝15a,15bに骨補填材が充填された状態で開閉構造部16を閉状態とすることにより内部管路11に骨補填材が充填されたこととなる。即ち、内部管路11に容易に骨補填材を収容することができる。
また、内部管路11が略直線形状となっていることから、内部管路11内に、プランジャを内部管路11内で先端側に移動させる際に、抵抗となる箇所がなく、容易に先端側の開口から骨補填材を吐出させることができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、シリンダ10として、略円筒形状を有するものを例示したが、これに限定されるものではなく、図2に示されるように、長手方向の一部に断面形状の異なる部分を有するシリンダ20を採用してもよい。
【0021】
すなわち、このシリンダ20は、基端側に設けられた四角柱形状のシリンダ本体部20aと、先端側に設けられたノズル部20bとを備えている。シリンダ本体部20a及びノズル部20bは、夫々軸方向に一定の円形状断面の管路を有している。シリンダ本体部20aの管路とノズル部20bの管路とは、同一の内径を有し、両者が直線上に位置することで、シリンダ本体部20a及びノズル部20bの軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路21を構成している。シリンダ本体部20aの基端側には、フランジ22が設けられている。
【0022】
このようにすることで、シリンダ本体部20aの外径を、ノズル部20bに比して大きくできるほか、シリンダ本体部20aに剛性を持たせることができ、使用者が把持しやすく骨補填材の注入をより容易に行うことができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図面を参照して説明する。図3〜図11に示すように、本実施形態に係る医療用ペースト注入器は、医療用ペーストが収容されるシリンダ部材(シリンダ)30、シリンダ部材30の医療用ペーストを吐出させるための管状のノズルを有する注入器本体50とを備えている。
【0024】
シリンダ部材30は、図3〜図5に示すように、直方体形状をなし、それ自体が開閉構造部となっている。すなわち、シリンダ部材30は、その長辺に沿う分割面31a,31bにより分割された2つの直方体から構成され、分割面31a,31bによって分割された一方の直方体32a(図3、図4中の上部)が、他方の直方体32bに対して蝶番33により開閉可能となっている。
【0025】
シリンダ部材30には、該シリンダ部材30を閉状態に維持するように直方体32a,32bを固定する錠35が設けられている。錠35は、直方体32a側に設けられた突起35aと直方体32b側に設けられたリング35bを備え、シリンダ部材30の閉状態において、リング35bを突起35aに引っ掛けることで、直方体32a,32bが密着し固定されるようになっている。
【0026】
各分割面31a,31bには、短辺方向に等間隔で長辺方向に沿って断面半円形状の溝41a,42a,43a,41b,42b,43bが夫々3本ずつ並列して設けられている。開閉構造部、すなわち、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bが、夫々略一定の横断面円形状かつ略直線状の内部管路部41,42,43を形成するようになっている。
【0027】
直方体32aの上面及び直方体32bの下面には、夫々後述する注入器本体50のノズル51と、内部管路部41,42,43とを位置決めするための、位置決め用溝38a,38b及び位置決め用穴39a,39bが設けられている。なお、位置決め用穴39a,39bは、夫々内部管路部41,42,43の数と同数設けられることが好ましく、本実施形態においては、夫々3つ設けられている。
【0028】
注入器本体50は、図6〜図8に示すように、本体部52、ノズル51及び把持部53を備えている。
本体部52は、シリンダ部材30の厚さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部52a,52bと、これら平板部52a,52bを連結する連結板部52cとから、図6の矢印の方向から見て略U字形状に形成され、シリンダ部材30を挿入することができるようになっている。
【0029】
ノズル51は、本体部52の連結板部52cの略中央部に、連結板部52cに直交する方向に突出するように設けられている。ノズル51は、一定の円形状断面の管路を有し、該管路は連結板部52cを厚さ方向に貫通して本体部52の内面側に開口している。シリンダ部材30の各内部管路部41,42,43とノズル51及び連結板部52cの管路とは、同一の内径を有し、両者が直線上に位置することで、シリンダ部材30及びノズル51の軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路を構成するようになっている。
【0030】
本体部52の平板部52a,52bの内面には、図9に示されるように、夫々位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bが出没可能に設けられている。これらの位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bはバネ58によって平板部52a,52bの内面から突出する方向に付勢されている。各位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bは、平板部52a,52bの内面から、シリンダ部材30の注入器本体50への挿入方向(図6の矢印の方向)に従って突出するように傾斜する斜面を有している。
【0031】
把持部53は、使用者が使用時に注入器本体50を把持できるように、注入器本体50に設けられている。
プランジャ59は、シリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入され、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合は、まず、骨補填材をシリンダ部材30の内部管路41,42,43に収容する。このとき、開閉構造部としてのシリンダ部材30を図5に示されるような開状態として溝41a,42a,43a,41b,42b,43bを露出させ、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材を充填する。溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態で、図3に示されるようにシリンダ部材30を閉状態として、突起35aにリング35bを引っ掛けることでシリンダ部材30を固定し、分割面31a,31bを密着させる。これにより、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bにより構成される内部管路部41,42,43に骨補填材が充填されることとなる。
【0033】
次いで、シリンダ部材30を注入器本体50に図6及び図10の矢印の方向から挿入する。このとき、位置決め用突起55aが位置決め用溝38aを、位置決め用突起55bが位置決め用溝38bを夫々スライドする。そして、図7及び図11に示すように、まず、各平板部52a,52bの夫々2つの位置決め用突起57a,56a及び位置決め用突起57b,56bが2つの位置決め用穴39a,39bに挿入されたときに、内部管路部43がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。
内部管路部43とノズル51とが位置決めされた状態で、内部管路部43内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。そして、内部管路43内の骨補填材の押し出しが終了した時点で、プランジャ50を内部管路43内から抜き出す。
【0034】
次にシリンダ部材30を図6及び図10の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起55aが位置決め用溝38aを、位置決め用突起55bが位置決め用溝38bを夫々スライドする。図8及び図9に示すように、全ての位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bが全ての位置決め用穴39a,39bに挿入されたときに、内部管路部42がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部42内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出し、その後プランジャ50を内部管路42から抜き出す。
【0035】
同様に、再びシリンダ部材30を図6及び図10の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起55a,56a,及び位置決め用突起55b,56bが位置決め用穴39a,39bに挿入される。このとき、内部管路部41がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。
このようにすることで、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
【0036】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bは、溝の軸方向に直交する方向に開口されているため、軸方向に押し入れる作業を行うことなく、溝に対して容易に骨補填材を充填することができる。さらに、開閉構造部としてのシリンダ部材30を閉状態とすることで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bとが一体化し内部管路部41,42,43が形成されるため、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態でシリンダ部材30を閉状態とすることにより内部管路41,42,43に骨補填材が充填されたこととなる。即ち、内部管路部41,42,43に容易に骨補填材を収容することができる。
【0037】
また、シリンダ部材30が、内部管路部41,42,43を複数有していることから、充分な量の医療用ペーストをシリンダに収容することができる。内部管路部41,42,43が、同一方向に並列して設けられており、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めされるため、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【0038】
さらに、内部管路部41,42,43とノズル51の管路とが略同径であることに加え、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが直線上に位置するように位置決めされるため、プランジャ59を内部管路部内部41,42,43からノズル51側に移動させる際に、抵抗となる箇所がなく、容易に先端側の開口から骨補填材を吐出させることができる。
【0039】
なお、上記した例では、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めしていたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、図12に示すような構成としてもよい。
【0040】
図12に示す例では、シリンダ部材30の直方体32bの下面に、注入器本体50のノズル51と、内部管路部41,42,43とを位置決めするための位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eが、内部管路部41,42,43の並列方向と同方向に同一間隔で並列して設けられている。位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eは断面円形状の湾曲面を有する溝となっている。
本体部52の平板部52bの内部には、位置決め用突起63が出没可能に設けられ、バネ62によって平板部52bの表面から突出する方向に付勢されている。位置決め用突起63は、位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eの湾曲面と合致する形状に形成されている。
【0041】
シリンダ部材30を注入器本体50に図12の矢印方向に挿入すると、まず位置決め用突起63が位置決め用溝60eに挿入され、さらにシリンダ部材30を矢印方向に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60dに挿入され、図12に示すように、内部管路部43がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。また、シリンダ部材30を矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60cに挿入され内部管路部42がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。同様に、再びシリンダ部材30を矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60bに挿入され、内部管路部41がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。これにより上記と同様にして、内部管路部41,42,43内の医療用ペーストを順次ノズル51の管路内に押し出すことができる。
【0042】
(第2の実施形態の変形例)
本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器について、図13及び図14を参照して説明する。
本変形例の上記した第2の実施形態との相違点は、内部管路部41,42,43とノズル51とを位置決めするための構成であるため、以下、この点について説明し、第2の実施形態と同一の構成については同符号を付すと共にその説明を省略する。
【0043】
図13に示すように、シリンダ部材30の直方体32aの内部管路部41,42,43の両端側の両側面には、夫々注入器本体50のノズル51と内部管路部41,42,43とを位置決めするための位置決め用突起63が設けられている。また、直方体32bの注入器本体50と対向することとなる面には、磁石66が設けられている。
【0044】
注入器本体50の本体部52は、シリンダ部材30の高さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部64a,64bと、これら平板部64a,64bを連結する連結板部64cとから形成され、シリンダ部材30を挿入することができるようになっている。シリンダ部材30の直方体32bと対向することとなる連結板部64cの表面には、シリンダ部材30の磁石66と対向することとなる位置に、磁石66との間に磁気吸引力を発生する磁石67が設けられている。平板部64a,64bの対向面には、シリンダ部材30に設けられた位置決め用突起63が挿入される位置決め用凹部68a,68b,68cが設けられたスライド溝69が夫々形成されている。
【0045】
位置決め用凹部68a,68b,68cは、スライド溝69の連結板部64c側の溝壁を凹ませることにより、スライド溝69の長手方向に並んで設けられている。位置決め用凹部68a,68b,68cは、内部管路部41,42,43と同一ピッチで形成されている。
【0046】
平板部64bの略中央部には、連結板部64cと平行に突出するようにノズル51が設けられている。平板部64aの略中央部には、プランジャ挿入孔65が設けられ、プランジャ挿入孔65を介してプランジャ59をシリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入することで、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。把持部53は、連結板部64cから外側に突出するように設けられている。
【0047】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器において、プランジャ挿入孔65、シリンダ部材30の内部管路部41,42,43及びノズル51を位置決めする場合は、シリンダ部材30を注入器本体50に図13の矢印の方向から挿入する。このとき、シリンダ部材の磁石66と注入器本体50の磁石67とが離れた状態で、位置決め用突起63がスライド溝69をスライドする。
【0048】
そして、位置決め用突起63が位置決め用凹部68aの位置に配置されたときに、シリンダ部材30が注入器本体50に対して、磁石66と磁石67との間の磁気吸引力により、両磁石66,67が近接する方向に移動させられて、位置決め用突起63が位置決め用凹部68aに収容される。これにより、シリンダ部材30が注入器本体50に対して固定されるとともに、プランジャ挿入孔65、内部管路部43及びノズル51の管路が同一直線上に位置するように位置決めされる。
【0049】
内部管路43内の骨補填材の押し出しが終了した後に、シリンダ部材30を磁石66,67間の磁気吸引力に抗して注入器本体50の連結板部64cから離れる方向に移動させて、位置決め用突起63と位置決め用凹部68aとの係合状態を解除し、シリンダ部材30を図13の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63がスライド溝69をスライドする。以下同様にして、位置決め用突起63を位置決め用凹部68b、68cに順次収容させて、プランジャ挿入孔65、内部管路部42及びノズル51の管路を同一直線上に位置決めすることができる。そして、これにより、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
なお、磁石66又は磁石67は、何れか一方が磁石66又は磁石67の磁気吸引力により引き寄せられる磁性体とすることもできる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図15及び図16を参照して説明する。本実施形態のシリンダ部材30は、図15及び図16に示すように、分割面31a,31bにより分割された2つの円板部材70a,70bからなり、それ自体が開閉構造部となっている。
【0051】
各分割面31a,31bには、直径方向に断面半円形状の溝41a,42a,43a,41b,42b,43bが3本ずつ夫々が中心で交差するように設けられている。開閉構造部、すなわち、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bが、夫々略一定の横断面円形状かつ略直線状の内部管路部41,42,43を形成するようになっている。
【0052】
また、各分割面31a,31bには、夫々の円周側に等間隔に夫々6つの位置決め用凹部72a,72bが形成されており、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、位置決め用凹部72aと位置決め用凹部72bとにより、位置決め用穴72を構成するようになっている。
円板部材70a,70bの溝41a〜43bが形成されている面とは反対側の面の中心には、後述する注入器本体50の軸受け(図示せず)に挿入される回転軸71が夫々設けられている。
【0053】
図16に示すように、注入器本体50には、使用者が使用時に注入器本体50を把持できるように把持部53が設けられている。注入器本体50の把持部53の上方には、本体部52が設けられている。本体部52は、シリンダ部材30の厚さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部(図示せず)を備えている。各平板部は、互いに向かい合う面にシリンダ部材30の回転軸71を回転可能に保持する軸受(図示せず)及び、回転軸71をスライドさせてシリンダ部材30を移動させ、回転軸71を軸受に挿入させるための軸受溝(図示せず)を夫々備えている。
【0054】
シリンダ部材30は、本体部52に挿入されたときに、その回転軸71が軸受け溝をスライドすることで所望の位置まで移動し、回転軸71が軸受けに挿入された状態で、軸受け及び回転軸70を介して注入器本体50に回転可能に保持されるようになっている。また、本体部52には、バネ73を介して、位置決め用突起74が設けられている。
【0055】
位置決め用突起74は、バネ73により、本体部52の内側に突出するように付勢され、本体部52の表面から出没可能となっている。位置決め用突起74は、シリンダ部材30の回転方向に沿って傾斜する斜面を有している。位置決め用突起74には、本体部52の外側に突出するように摘み部75が設けられ、摘み部75を本体部52の外側に引くことで、バネ73を収縮させて位置決め用突起74を本体部52に収容するようになっている。
【0056】
本体部52と把持部53との間には、把持部53と直交する方向に突出するようにノズル51が設けられている。ノズル51は、一定の円形状断面の管路を有し、この管路が注入器本体50を厚さ方向に貫通して本体部52の内面側に開口することで、シリンダ部材30の各内部管路部41,42,43とノズル51とが直線上に位置し、シリンダ部材30及びノズル51の軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路を構成するようになっている。
【0057】
プランジャ59は、シリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入され、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0058】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合は、まず、骨補填材をシリンダ部材30の内部管路41,42,43に収容する。すなわち、円板部材70a,70bを開状態として溝41a,42a,43a,41b,42b,43bを露出させ、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材を充填する。溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態で、円板部材70a,70bを密着させる。これにより、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bにより構成される内部管路部41,42,43に骨補填材が充填されることとなる。
【0059】
次いで、摘み部75を外側に引いて、位置決め用突起74を本体部52に収容した状態で、シリンダ部材30を注入器本体50に図16の矢印Aの方向から挿入する。このとき、回転軸71が図示しない軸受け溝をスライドすることでシリンダ部材30が移動し、回転軸71が軸受けに挿入されると、シリンダ部材30が軸受け及び回転軸70を介して注入器本体50に回転可能に保持される。
【0060】
骨欠損部や骨折部への骨補填材の注入は、何れかの位置決め用穴72に位置決め用突起74が挿入される状態まで、シリンダ部材30を図16の矢印B方向に回転させる。図16の例では、内部管路41がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされた状態を示している。内部管路部41とノズル51とが位置決めされた状態で、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。そして、内部管路41内の骨補填材の押し出しが終了した時点で、プランジャ50を内部管路43内から抜き出す。
【0061】
次にシリンダ部材30を図16の矢印Bの方向に更に回転させると、他の位置決め用突起74が他の位置決め用穴72に挿入され、内部管路部42がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部42内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出し、その後プランジャ50を内部管路42から抜き出す。
【0062】
同様に、再びシリンダ部材30を図16の矢印Bの方向に更に回転させると、更に他の位置決め用突起74が更に他の位置決め用穴72に挿入され、内部管路部43がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。
このようにすることで、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
【0063】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、シリンダ部材30が、円形状をなしていることから、シリンダ部材30を回転させることで、位置決め用突起74及び位置決め用穴72により内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めされるため、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【0064】
上記した各実施形態において、溝の形状を断面半円形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、断面四角形状などであってもよい。また、内部管路部の数は、必要とされる医療用ペーストの量によって適宜変更可能である。
また、溝は分割面のいずれか一方のみに形成されていてもよく、その場合には、溝の断面形状とプランジャの断面形状とが略一致すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 シリンダ
11 内部管路
14a,14b 分割面
15a,15b 溝
16 開閉構造部
20 シリンダ
20a シリンダ本体部(注入器本体)
20b ノズル部(ノズル)
21 内部管路
30 シリンダ部材(シリンダ)
31a,31b 分割面
38a,38b 位置決め用溝(位置決め手段)
39a,39b 位置決め用穴(位置決め手段)
41,42,43 内部管路部
41a,42a,43a,41b,42b,43b 溝
50 注入器本体
51 ノズル
55a,56a,57a,55b,56b,57b 位置決め用突起(位置決め手段)
60a,60b,60c,60d,60e 位置決め用溝(位置決め手段)
63 位置決め用突起(位置決め手段)
68a,68b,68c 位置決め用凹部(位置決め手段)
72 位置決め用穴(位置決め手段)
72a,72b 位置決め用凹部(位置決め手段)
74 位置決め用突起(位置決め手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨欠損部や骨折部に対してペースト状の人工骨補填材などの医療用ペーストを注入するための医療用ペースト注入器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症による骨折や骨腫瘍等により生じた骨欠損部や骨折部に対して、その補修又は固定等のために、リン酸カルシウム系粉体を主成分とするペースト状の人工骨補填材(以下、単に「骨補填材」という)を注入する治療方法が知られている。
骨欠損部や骨折部に骨補填材を注入する際に用いる医療用ペースト注入器として、一端に開口部を有し骨補填材を収容する筒型のシリンダと、シリンダの他端に設けられシリンダよりも小径の注入管と、シリンダの内周面に嵌合するプランジャと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。このような医療用ペースト注入器では、シリンダの開口部からシリンダ内に骨補填材を収容し、シリンダ内でプランジャを開口部側から注入管側に移動させることにより、シリンダ内に収容された骨補填材を注入管の先端から吐出させて、骨欠損部や骨折部に注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−118436号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2007年10月1日改訂(第5版)D5 医療機器許可番号13B1X00310100001 器58整形用器具器械 一般用医療機器 手動式整形外科用セメントディスペンサ 35809001 バイオペックス(登録商標)専用ガン 取扱説明書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような医療用ペースト注入器では、骨補填材などの医療用ペーストの粘性が高い場合には、シリンダ内に医療用ペーストを収容することが困難となるという問題がある。また、注入管の径がシリンダの径よりも小径であることから、シリンダ内の医療用ペーストを注入管から吐出させる際に、シリンダと注入管との境界部が抵抗となって、プランジャを移動させるために多大な力を要するという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、粘性が高い医療用ペーストであっても、容易に収容かつ吐出することができる医療用ペースト注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路を有するシリンダを備え、前記シリンダが、前記軸方向の少なくとも一部に、該軸方向に沿う分割面によって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部を備え、前記分割面の少なくとも1つに、前記内部管路の一部を構成する溝が設けられている医療用ペースト注入器である。
【0008】
本発明によれば、シリンダに医療用ペーストを収容する場合に、シリンダに設けられた開閉構造部を分割面によって分割して開状態とし、分割面に設けられた溝に医療用ペーストを充填する。溝に医療用ペーストを充填することは、内部管路の軸方向への医療用ペーストの押し出しを伴わないので、医療用ペーストの粘性が高い場合や内部管路の径が極めて小径の場合であっても容易に行うことができる。そして、開閉構造部を閉状態とすることにより、医療用ペーストが充填された溝が閉じられて、内部管路が構成される。すなわち、溝に医療用ペーストを充填させた後に開閉構造部を閉状態とすることで内部管路に医療用ペーストを容易に充填することができる。また、内部管路は、全長にわたって略一定の横断面形状且つ略直線状であることから、プランジャを用いて内部管路内の医療用ペーストを押し出す際に、抵抗となる部分がなく、医療用ペーストの粘性が高い場合であっても、容易に医療用ペーストを押し出すことができる。
【0009】
上記した態様においては、前記内部管路の先端部を構成する管状のノズルを有する注入器本体を備え、該注入器本体に、前記開閉構造部が着脱可能に設けられていることが好ましい。
このようにすることで、注入器本体から開閉構造部を取り外した状態で医療用ペーストの充填作業を行うことができる。また、注入器本体と開閉構造部とを分離した状態で洗浄や滅菌を容易に行うことができる。また、開閉構造部をシリンダの軸方向全長とすることができ、この場合には、開閉構造部の溝に医療用ペーストを充填することがより容易となる。さらに、シリンダとノズルとを異なる素材で形成することができるため、例えば、ノズルにのみ可撓性を持たせることができる。
【0010】
上記した態様においては、前記注入器本体と前記開閉構造部との間に、両者に設けられた部分的な前記内部管路どうしが一致するように、両者を位置決めする位置決め手段を備えることが好ましい。
このようにすることで、位置決め手段によってシリンダの内部管路と注入器の内部管路が略直線上に位置決めされるので、注入器本体に対する開閉構造部の取り付けを容易にすることができる。
【0011】
上記した態様においては、前記開閉構造部に、前記内部管路の一部を構成する内部管路部が、一方向に間隔をあけて複数並列して設けられるとともに、該開閉構造部が、前記注入器本体に対して、前記内部管路部の並列方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
このようにすることで、予め複数の溝の全てに医療用ペーストを充填させることが出来るので、充分な量の医療用ペーストをシリンダに収容することができる。また、開閉構造部を内部管路の並列方向に移動させることにより、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、粘性が高い医療用ペーストであっても、容易に収容かつ吐出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例にかかる医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器のシリンダを示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の他の例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る医療用ペースト注入器は、図1に示すように、リン酸カルシウム系粉体を主成分とするペースト状人工骨補填材(以下、「骨補填材」という)などの医療用ペーストを収容するシリンダ10と、シリンダ10の収容物である医療用ペーストを押し出すプランジャ13とを備えている。
【0015】
図1に示すように、シリンダ10は、両端が開口した略円筒形状をなしており、軸方向の全長にわたって一定の円形状断面の内部管路11を有している。シリンダ10の基端側には、フランジ12が設けられている。
【0016】
シリンダ10の軸方向の一部には、開閉構造部16が設けられている。開閉構造部16は、軸方向に沿う分割面14a,14bによって軸方向に分割されており、分割面14a,14bによって分割された一方(図1における上部)が、他方に対して図示しない蝶番により開閉可能に設けられている。何れの分割面14a,14bにも断面半円形状の溝15a,15bが夫々設けられている。開閉構造部16の閉状態において、分割面14aと分割面14bとを密着させると、溝15a,15bにより内部管路11の一部が構成されるようになっている。
プランジャ13は、フランジ12側の開口から内部管路11に挿入され先端側の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0017】
このように構成された本実施形態にかかる医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合には、まず、骨補填材をシリンダ10の内部管路11に収容する。このとき、開閉構造部16を開状態として溝15a,15bを露出させ、溝15a,15bに骨補填材を充填する。溝15a,15bに骨補填材が充填された状態で、開閉構造部16を閉状態として、分割面14a,14bを密着させる。これにより、溝15aと溝15bとにより構成される内部管路11の一部に骨補填材が充填されることとなる。
【0018】
次いで、内部管路11内に、フランジ12が設けられた開口側からプランジャ13を挿入し、プランジャ13を先端側に移動させることにより、先端側の開口から骨補填材を押し出す。このようにすることで、内部管路11の先端側が、骨欠損部や骨折部に対する注入用のノズルとして機能する。
【0019】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、開閉構造部16を開いた状態で、溝15a,15bは、軸方向に直交する方向に開口されているため、狭い内部管路11に対して骨補填材を軸方向に押し入れる作業を行うことなく、溝に対して容易に骨補填材を充填することができる。さらに、開閉構造部16を閉状態とすることで、溝15aと溝15bとが一体化し内部管路11が形成されるため、溝15a,15bに骨補填材が充填された状態で開閉構造部16を閉状態とすることにより内部管路11に骨補填材が充填されたこととなる。即ち、内部管路11に容易に骨補填材を収容することができる。
また、内部管路11が略直線形状となっていることから、内部管路11内に、プランジャを内部管路11内で先端側に移動させる際に、抵抗となる箇所がなく、容易に先端側の開口から骨補填材を吐出させることができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、シリンダ10として、略円筒形状を有するものを例示したが、これに限定されるものではなく、図2に示されるように、長手方向の一部に断面形状の異なる部分を有するシリンダ20を採用してもよい。
【0021】
すなわち、このシリンダ20は、基端側に設けられた四角柱形状のシリンダ本体部20aと、先端側に設けられたノズル部20bとを備えている。シリンダ本体部20a及びノズル部20bは、夫々軸方向に一定の円形状断面の管路を有している。シリンダ本体部20aの管路とノズル部20bの管路とは、同一の内径を有し、両者が直線上に位置することで、シリンダ本体部20a及びノズル部20bの軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路21を構成している。シリンダ本体部20aの基端側には、フランジ22が設けられている。
【0022】
このようにすることで、シリンダ本体部20aの外径を、ノズル部20bに比して大きくできるほか、シリンダ本体部20aに剛性を持たせることができ、使用者が把持しやすく骨補填材の注入をより容易に行うことができる。
【0023】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図面を参照して説明する。図3〜図11に示すように、本実施形態に係る医療用ペースト注入器は、医療用ペーストが収容されるシリンダ部材(シリンダ)30、シリンダ部材30の医療用ペーストを吐出させるための管状のノズルを有する注入器本体50とを備えている。
【0024】
シリンダ部材30は、図3〜図5に示すように、直方体形状をなし、それ自体が開閉構造部となっている。すなわち、シリンダ部材30は、その長辺に沿う分割面31a,31bにより分割された2つの直方体から構成され、分割面31a,31bによって分割された一方の直方体32a(図3、図4中の上部)が、他方の直方体32bに対して蝶番33により開閉可能となっている。
【0025】
シリンダ部材30には、該シリンダ部材30を閉状態に維持するように直方体32a,32bを固定する錠35が設けられている。錠35は、直方体32a側に設けられた突起35aと直方体32b側に設けられたリング35bを備え、シリンダ部材30の閉状態において、リング35bを突起35aに引っ掛けることで、直方体32a,32bが密着し固定されるようになっている。
【0026】
各分割面31a,31bには、短辺方向に等間隔で長辺方向に沿って断面半円形状の溝41a,42a,43a,41b,42b,43bが夫々3本ずつ並列して設けられている。開閉構造部、すなわち、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bが、夫々略一定の横断面円形状かつ略直線状の内部管路部41,42,43を形成するようになっている。
【0027】
直方体32aの上面及び直方体32bの下面には、夫々後述する注入器本体50のノズル51と、内部管路部41,42,43とを位置決めするための、位置決め用溝38a,38b及び位置決め用穴39a,39bが設けられている。なお、位置決め用穴39a,39bは、夫々内部管路部41,42,43の数と同数設けられることが好ましく、本実施形態においては、夫々3つ設けられている。
【0028】
注入器本体50は、図6〜図8に示すように、本体部52、ノズル51及び把持部53を備えている。
本体部52は、シリンダ部材30の厚さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部52a,52bと、これら平板部52a,52bを連結する連結板部52cとから、図6の矢印の方向から見て略U字形状に形成され、シリンダ部材30を挿入することができるようになっている。
【0029】
ノズル51は、本体部52の連結板部52cの略中央部に、連結板部52cに直交する方向に突出するように設けられている。ノズル51は、一定の円形状断面の管路を有し、該管路は連結板部52cを厚さ方向に貫通して本体部52の内面側に開口している。シリンダ部材30の各内部管路部41,42,43とノズル51及び連結板部52cの管路とは、同一の内径を有し、両者が直線上に位置することで、シリンダ部材30及びノズル51の軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路を構成するようになっている。
【0030】
本体部52の平板部52a,52bの内面には、図9に示されるように、夫々位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bが出没可能に設けられている。これらの位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bはバネ58によって平板部52a,52bの内面から突出する方向に付勢されている。各位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bは、平板部52a,52bの内面から、シリンダ部材30の注入器本体50への挿入方向(図6の矢印の方向)に従って突出するように傾斜する斜面を有している。
【0031】
把持部53は、使用者が使用時に注入器本体50を把持できるように、注入器本体50に設けられている。
プランジャ59は、シリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入され、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合は、まず、骨補填材をシリンダ部材30の内部管路41,42,43に収容する。このとき、開閉構造部としてのシリンダ部材30を図5に示されるような開状態として溝41a,42a,43a,41b,42b,43bを露出させ、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材を充填する。溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態で、図3に示されるようにシリンダ部材30を閉状態として、突起35aにリング35bを引っ掛けることでシリンダ部材30を固定し、分割面31a,31bを密着させる。これにより、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bにより構成される内部管路部41,42,43に骨補填材が充填されることとなる。
【0033】
次いで、シリンダ部材30を注入器本体50に図6及び図10の矢印の方向から挿入する。このとき、位置決め用突起55aが位置決め用溝38aを、位置決め用突起55bが位置決め用溝38bを夫々スライドする。そして、図7及び図11に示すように、まず、各平板部52a,52bの夫々2つの位置決め用突起57a,56a及び位置決め用突起57b,56bが2つの位置決め用穴39a,39bに挿入されたときに、内部管路部43がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。
内部管路部43とノズル51とが位置決めされた状態で、内部管路部43内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。そして、内部管路43内の骨補填材の押し出しが終了した時点で、プランジャ50を内部管路43内から抜き出す。
【0034】
次にシリンダ部材30を図6及び図10の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起55aが位置決め用溝38aを、位置決め用突起55bが位置決め用溝38bを夫々スライドする。図8及び図9に示すように、全ての位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57bが全ての位置決め用穴39a,39bに挿入されたときに、内部管路部42がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部42内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出し、その後プランジャ50を内部管路42から抜き出す。
【0035】
同様に、再びシリンダ部材30を図6及び図10の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起55a,56a,及び位置決め用突起55b,56bが位置決め用穴39a,39bに挿入される。このとき、内部管路部41がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。
このようにすることで、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
【0036】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bは、溝の軸方向に直交する方向に開口されているため、軸方向に押し入れる作業を行うことなく、溝に対して容易に骨補填材を充填することができる。さらに、開閉構造部としてのシリンダ部材30を閉状態とすることで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bとが一体化し内部管路部41,42,43が形成されるため、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態でシリンダ部材30を閉状態とすることにより内部管路41,42,43に骨補填材が充填されたこととなる。即ち、内部管路部41,42,43に容易に骨補填材を収容することができる。
【0037】
また、シリンダ部材30が、内部管路部41,42,43を複数有していることから、充分な量の医療用ペーストをシリンダに収容することができる。内部管路部41,42,43が、同一方向に並列して設けられており、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めされるため、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【0038】
さらに、内部管路部41,42,43とノズル51の管路とが略同径であることに加え、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが直線上に位置するように位置決めされるため、プランジャ59を内部管路部内部41,42,43からノズル51側に移動させる際に、抵抗となる箇所がなく、容易に先端側の開口から骨補填材を吐出させることができる。
【0039】
なお、上記した例では、位置決め用突起55a,56a,57a,55b,56b,57b及び位置決め用穴39a,39bによって内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めしていたが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、図12に示すような構成としてもよい。
【0040】
図12に示す例では、シリンダ部材30の直方体32bの下面に、注入器本体50のノズル51と、内部管路部41,42,43とを位置決めするための位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eが、内部管路部41,42,43の並列方向と同方向に同一間隔で並列して設けられている。位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eは断面円形状の湾曲面を有する溝となっている。
本体部52の平板部52bの内部には、位置決め用突起63が出没可能に設けられ、バネ62によって平板部52bの表面から突出する方向に付勢されている。位置決め用突起63は、位置決め用溝60a,60b,60c,60d,60eの湾曲面と合致する形状に形成されている。
【0041】
シリンダ部材30を注入器本体50に図12の矢印方向に挿入すると、まず位置決め用突起63が位置決め用溝60eに挿入され、さらにシリンダ部材30を矢印方向に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60dに挿入され、図12に示すように、内部管路部43がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。また、シリンダ部材30を矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60cに挿入され内部管路部42がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。同様に、再びシリンダ部材30を矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63が位置決め用溝60bに挿入され、内部管路部41がノズル51の管路と同一直線上に並んで位置するように位置決めされる。これにより上記と同様にして、内部管路部41,42,43内の医療用ペーストを順次ノズル51の管路内に押し出すことができる。
【0042】
(第2の実施形態の変形例)
本発明の第2の実施形態の変形例に係る医療用ペースト注入器について、図13及び図14を参照して説明する。
本変形例の上記した第2の実施形態との相違点は、内部管路部41,42,43とノズル51とを位置決めするための構成であるため、以下、この点について説明し、第2の実施形態と同一の構成については同符号を付すと共にその説明を省略する。
【0043】
図13に示すように、シリンダ部材30の直方体32aの内部管路部41,42,43の両端側の両側面には、夫々注入器本体50のノズル51と内部管路部41,42,43とを位置決めするための位置決め用突起63が設けられている。また、直方体32bの注入器本体50と対向することとなる面には、磁石66が設けられている。
【0044】
注入器本体50の本体部52は、シリンダ部材30の高さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部64a,64bと、これら平板部64a,64bを連結する連結板部64cとから形成され、シリンダ部材30を挿入することができるようになっている。シリンダ部材30の直方体32bと対向することとなる連結板部64cの表面には、シリンダ部材30の磁石66と対向することとなる位置に、磁石66との間に磁気吸引力を発生する磁石67が設けられている。平板部64a,64bの対向面には、シリンダ部材30に設けられた位置決め用突起63が挿入される位置決め用凹部68a,68b,68cが設けられたスライド溝69が夫々形成されている。
【0045】
位置決め用凹部68a,68b,68cは、スライド溝69の連結板部64c側の溝壁を凹ませることにより、スライド溝69の長手方向に並んで設けられている。位置決め用凹部68a,68b,68cは、内部管路部41,42,43と同一ピッチで形成されている。
【0046】
平板部64bの略中央部には、連結板部64cと平行に突出するようにノズル51が設けられている。平板部64aの略中央部には、プランジャ挿入孔65が設けられ、プランジャ挿入孔65を介してプランジャ59をシリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入することで、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。把持部53は、連結板部64cから外側に突出するように設けられている。
【0047】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器において、プランジャ挿入孔65、シリンダ部材30の内部管路部41,42,43及びノズル51を位置決めする場合は、シリンダ部材30を注入器本体50に図13の矢印の方向から挿入する。このとき、シリンダ部材の磁石66と注入器本体50の磁石67とが離れた状態で、位置決め用突起63がスライド溝69をスライドする。
【0048】
そして、位置決め用突起63が位置決め用凹部68aの位置に配置されたときに、シリンダ部材30が注入器本体50に対して、磁石66と磁石67との間の磁気吸引力により、両磁石66,67が近接する方向に移動させられて、位置決め用突起63が位置決め用凹部68aに収容される。これにより、シリンダ部材30が注入器本体50に対して固定されるとともに、プランジャ挿入孔65、内部管路部43及びノズル51の管路が同一直線上に位置するように位置決めされる。
【0049】
内部管路43内の骨補填材の押し出しが終了した後に、シリンダ部材30を磁石66,67間の磁気吸引力に抗して注入器本体50の連結板部64cから離れる方向に移動させて、位置決め用突起63と位置決め用凹部68aとの係合状態を解除し、シリンダ部材30を図13の矢印の方向に更に移動させると、位置決め用突起63がスライド溝69をスライドする。以下同様にして、位置決め用突起63を位置決め用凹部68b、68cに順次収容させて、プランジャ挿入孔65、内部管路部42及びノズル51の管路を同一直線上に位置決めすることができる。そして、これにより、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
なお、磁石66又は磁石67は、何れか一方が磁石66又は磁石67の磁気吸引力により引き寄せられる磁性体とすることもできる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る医療用ペースト注入器について、図15及び図16を参照して説明する。本実施形態のシリンダ部材30は、図15及び図16に示すように、分割面31a,31bにより分割された2つの円板部材70a,70bからなり、それ自体が開閉構造部となっている。
【0051】
各分割面31a,31bには、直径方向に断面半円形状の溝41a,42a,43a,41b,42b,43bが3本ずつ夫々が中心で交差するように設けられている。開閉構造部、すなわち、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bが、夫々略一定の横断面円形状かつ略直線状の内部管路部41,42,43を形成するようになっている。
【0052】
また、各分割面31a,31bには、夫々の円周側に等間隔に夫々6つの位置決め用凹部72a,72bが形成されており、シリンダ部材30の閉状態において、分割面31a,31bが密着することで、位置決め用凹部72aと位置決め用凹部72bとにより、位置決め用穴72を構成するようになっている。
円板部材70a,70bの溝41a〜43bが形成されている面とは反対側の面の中心には、後述する注入器本体50の軸受け(図示せず)に挿入される回転軸71が夫々設けられている。
【0053】
図16に示すように、注入器本体50には、使用者が使用時に注入器本体50を把持できるように把持部53が設けられている。注入器本体50の把持部53の上方には、本体部52が設けられている。本体部52は、シリンダ部材30の厚さ寸法より若干大きな平行間隔をあけて配置された2つの平板部(図示せず)を備えている。各平板部は、互いに向かい合う面にシリンダ部材30の回転軸71を回転可能に保持する軸受(図示せず)及び、回転軸71をスライドさせてシリンダ部材30を移動させ、回転軸71を軸受に挿入させるための軸受溝(図示せず)を夫々備えている。
【0054】
シリンダ部材30は、本体部52に挿入されたときに、その回転軸71が軸受け溝をスライドすることで所望の位置まで移動し、回転軸71が軸受けに挿入された状態で、軸受け及び回転軸70を介して注入器本体50に回転可能に保持されるようになっている。また、本体部52には、バネ73を介して、位置決め用突起74が設けられている。
【0055】
位置決め用突起74は、バネ73により、本体部52の内側に突出するように付勢され、本体部52の表面から出没可能となっている。位置決め用突起74は、シリンダ部材30の回転方向に沿って傾斜する斜面を有している。位置決め用突起74には、本体部52の外側に突出するように摘み部75が設けられ、摘み部75を本体部52の外側に引くことで、バネ73を収縮させて位置決め用突起74を本体部52に収容するようになっている。
【0056】
本体部52と把持部53との間には、把持部53と直交する方向に突出するようにノズル51が設けられている。ノズル51は、一定の円形状断面の管路を有し、この管路が注入器本体50を厚さ方向に貫通して本体部52の内面側に開口することで、シリンダ部材30の各内部管路部41,42,43とノズル51とが直線上に位置し、シリンダ部材30及びノズル51の軸方向の全長にわたって一定の円形状断面である1つの内部管路を構成するようになっている。
【0057】
プランジャ59は、シリンダ部材30の開口から内部管路部41,42,43のいずれかに挿入され、ノズル51の開口から収容物を押し出すようになっている。
【0058】
このように構成された本実施形態に係る医療用ペースト注入器の作用を説明する。本実施形態に係る医療用ペースト注入器を用いて、例えば、骨補填材を骨欠損部や骨折部に注入する場合は、まず、骨補填材をシリンダ部材30の内部管路41,42,43に収容する。すなわち、円板部材70a,70bを開状態として溝41a,42a,43a,41b,42b,43bを露出させ、溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材を充填する。溝41a,42a,43a,41b,42b,43bに骨補填材が充填された状態で、円板部材70a,70bを密着させる。これにより、溝41aと溝41b、溝42aと溝42b及び溝43aと溝43bにより構成される内部管路部41,42,43に骨補填材が充填されることとなる。
【0059】
次いで、摘み部75を外側に引いて、位置決め用突起74を本体部52に収容した状態で、シリンダ部材30を注入器本体50に図16の矢印Aの方向から挿入する。このとき、回転軸71が図示しない軸受け溝をスライドすることでシリンダ部材30が移動し、回転軸71が軸受けに挿入されると、シリンダ部材30が軸受け及び回転軸70を介して注入器本体50に回転可能に保持される。
【0060】
骨欠損部や骨折部への骨補填材の注入は、何れかの位置決め用穴72に位置決め用突起74が挿入される状態まで、シリンダ部材30を図16の矢印B方向に回転させる。図16の例では、内部管路41がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされた状態を示している。内部管路部41とノズル51とが位置決めされた状態で、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。そして、内部管路41内の骨補填材の押し出しが終了した時点で、プランジャ50を内部管路43内から抜き出す。
【0061】
次にシリンダ部材30を図16の矢印Bの方向に更に回転させると、他の位置決め用突起74が他の位置決め用穴72に挿入され、内部管路部42がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部42内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出し、その後プランジャ50を内部管路42から抜き出す。
【0062】
同様に、再びシリンダ部材30を図16の矢印Bの方向に更に回転させると、更に他の位置決め用突起74が更に他の位置決め用穴72に挿入され、内部管路部43がノズル51の管路と直線上に位置するように位置決めされる。ここで、内部管路部41内に、プランジャ59を挿入し、プランジャ59をノズル51側に移動させることにより、ノズル51の開口から骨補填材を押し出す。
このようにすることで、内部管路部43,42,41からノズル51を介して、骨欠損部や骨折部に対して医療用ペーストを連続的に注入することができる。
【0063】
このように構成された医療用ペースト注入器によれば、シリンダ部材30が、円形状をなしていることから、シリンダ部材30を回転させることで、位置決め用突起74及び位置決め用穴72により内部管路部41,42,43とノズル51とが順次直線上に位置するように位置決めされるため、複数の溝に収容された医療用ペーストを連続的に押し出すことができる。
【0064】
上記した各実施形態において、溝の形状を断面半円形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、断面四角形状などであってもよい。また、内部管路部の数は、必要とされる医療用ペーストの量によって適宜変更可能である。
また、溝は分割面のいずれか一方のみに形成されていてもよく、その場合には、溝の断面形状とプランジャの断面形状とが略一致すればよい。
【符号の説明】
【0065】
10 シリンダ
11 内部管路
14a,14b 分割面
15a,15b 溝
16 開閉構造部
20 シリンダ
20a シリンダ本体部(注入器本体)
20b ノズル部(ノズル)
21 内部管路
30 シリンダ部材(シリンダ)
31a,31b 分割面
38a,38b 位置決め用溝(位置決め手段)
39a,39b 位置決め用穴(位置決め手段)
41,42,43 内部管路部
41a,42a,43a,41b,42b,43b 溝
50 注入器本体
51 ノズル
55a,56a,57a,55b,56b,57b 位置決め用突起(位置決め手段)
60a,60b,60c,60d,60e 位置決め用溝(位置決め手段)
63 位置決め用突起(位置決め手段)
68a,68b,68c 位置決め用凹部(位置決め手段)
72 位置決め用穴(位置決め手段)
72a,72b 位置決め用凹部(位置決め手段)
74 位置決め用突起(位置決め手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路を有するシリンダを備え、
前記シリンダが、前記軸方向の少なくとも一部に、該軸方向に沿う分割面によって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部を備え、
前記分割面の少なくとも1つに、前記内部管路の一部を構成する溝が設けられている医療用ペースト注入器。
【請求項2】
前記内部管路の先端部を構成する管状のノズルを有する注入器本体を備え、
該注入器本体に、前記開閉構造部が着脱可能に設けられている請求項1に記載の医療用ペースト注入器。
【請求項3】
前記注入器本体と前記開閉構造部との間に、両者に設けられた部分的な前記内部管路どうしが一致するように、両者を位置決めする位置決め手段を備える請求項2に記載の医療用ペースト注入器。
【請求項4】
前記開閉構造部に、前記内部管路の一部を構成する内部管路部が、一方向に間隔をあけて複数並列して設けられるとともに、
該開閉構造部が、前記注入器本体に対して、前記内部管路部の並列方向に移動可能に設けられている請求項3に記載の医療用ペースト注入器。
【請求項1】
両端に開口し軸方向の全長にわたって略一定の横断面形状を有する略直線状の内部管路を有するシリンダを備え、
前記シリンダが、前記軸方向の少なくとも一部に、該軸方向に沿う分割面によって分割され、開閉可能に設けられた開閉構造部を備え、
前記分割面の少なくとも1つに、前記内部管路の一部を構成する溝が設けられている医療用ペースト注入器。
【請求項2】
前記内部管路の先端部を構成する管状のノズルを有する注入器本体を備え、
該注入器本体に、前記開閉構造部が着脱可能に設けられている請求項1に記載の医療用ペースト注入器。
【請求項3】
前記注入器本体と前記開閉構造部との間に、両者に設けられた部分的な前記内部管路どうしが一致するように、両者を位置決めする位置決め手段を備える請求項2に記載の医療用ペースト注入器。
【請求項4】
前記開閉構造部に、前記内部管路の一部を構成する内部管路部が、一方向に間隔をあけて複数並列して設けられるとともに、
該開閉構造部が、前記注入器本体に対して、前記内部管路部の並列方向に移動可能に設けられている請求項3に記載の医療用ペースト注入器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−120682(P2011−120682A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279514(P2009−279514)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(304050912)オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(304050912)オリンパステルモバイオマテリアル株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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