説明

医療用モニタのセンサコード巻き取り機構および医療用モニタ

【課題】センサコードの長さ調整が容易にできる医療用モニタのセンサコード巻き取り機構および医療用モニタを提供する。
【解決手段】この巻き取り機構100は、筺体と、筺体に対して回転自在に支持されるリールと、このリールの回転に伴って引き出され又は巻き取られるセンサコード200とを有する。例えば、このリールは、センサコード200の引き出し側が巻き付けられる第一リールと、センサコード200の非引き出し側が巻き付けられ、第一リールと同期して回転される第二リールと、センサコード200の引き出し側と非引き出し側との境界部を係止する係止部とを有する構成とする。この構成により、コード200を引き出す際の張力が直接モニタ本体900に作用することを防止し、コード200の損傷やモニタ本体900の損傷を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用モニタのセンサコード巻き取り機構および医療用モニタに関するものである。特に、血中の酸素分圧や二酸化炭素分圧などを皮膚の表面から計測する経皮血中ガスセンサのセンサコードの巻き取りに好適なセンサコード巻き取り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新生児や人工呼吸を必要とする重症患者の呼吸管理のために、血中の酸素分圧や二酸化炭素分圧を計測する技術として、経皮血液ガスモニタが用いられている。このモニタは、モニタ本体と、その本体に対してコネクタを介して接続されるセンサコードを有し、センサコードの先端にはセンサが設けられている。通常、このセンサは、ガス透過性のメンブレンと、メンブレンを透過したガスが溶存される電解液と、電解液に浸漬された電極とを有する。ガス分圧測定時、センサ外部のガス分圧に比例した量のガスがセンサのメンブレンを通じて電解液中に溶け込み、この溶存ガス量が電極に生じる電流値や電位に相関することを利用してガス分圧を計測する。
【0003】
このようなセンサコードは、例えば非特許文献1に示すように、筒状の巻き胴と、巻き胴の両端部から径方向に突出するつば部とを有するボビンに巻き付けられ、モニタ本体に設けたボビン置き枠に載せられている。
【0004】
【非特許文献1】住友電工ハイテックス株式会社 経皮血液ガスモニタPO-850Aのカタログ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の技術では、次のような問題があった。
【0006】
(1)センサコードの長さ調整が容易に行えない。
従来のガスモニタでは、センサコードは単にボビンに巻き付けてボビン置き枠に載せられているだけである。そのため、センサコードの引き出しを行う場合、ボビン置き枠からボビンを取り上げ、そのボビンに巻かれたセンサコードを手で巻き胴から巻きほどく必要がある。逆にセンサコードをボビンに巻き付ける場合は、やはりボビンを取り上げて巻き胴にセンサコードを巻き付けてゆく必要がある。
【0007】
ところで、上記のガスモニタでは、測定精度を確保するために一定間隔(通常1〜4時間)ごとにセンサの較正を行う必要がある。較正時、コードの先端に設けられたセンサをモニタ本体に設けられた、或いは付属の専用装置に設けられた較正スポットにセットしなければならない。一方で、ガス分圧の測定時には、センサをモニタ本体から離れた患者の位置まで引き出す必要がある。そのため、頻繁にセンサを患者とモニタ本体との間で移動させなければならず、その度にセンサコードの長さ調整をする必要があり、手でボビンからセンサコードを巻きほどいたり、ボビンにセンサコードを巻き付けたりすることは非常に煩雑である。
【0008】
(2)センサコードを引っ掛けたりして損傷させる虞がある。
センサコードの長さ調整が容易に行えないため、常にセンサコードをボビンから外し、たるみの大きい状態でガスモニタを使用することが多い。その結果、センサコードが床を這って引き回されることがあり、院内カートや病院職員がセンサコードを引っ掛けることがある。その場合、センサコードの断線や損傷を生じやすく、最悪の場合、モニタを引き倒すなどしてモニタ本体にも損傷が及ぶことが考えられる。さらに、医療機器のセンサコードが床を這っていることは、衛生上の点からも好ましいことではない。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その主目的は、センサコードの長さ調整が容易にできる医療用モニタのセンサコード巻き取り機構を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記巻き取り機構を有する医療用モニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明医療用モニタのセンサコード巻き取り機構は、筺体と、筺体に対して回転自在に支持されるリールと、このリールの回転に伴って引き出され又は巻き取られるセンサコードとを有することを特徴とする。
【0012】
この巻き取り機構によれば、センサコードを引けばリールが回転され、必要な長さのセンサコードを引き出すことができる。このコード引き出し時と逆方向にリールを回転させれば、リールにコードを巻き付けることができる。そのため、センサコードの長さ調整を容易に行うことができる。
【0013】
本発明巻き取り機構は、医療用モニタのセンサコードの巻き取りに利用される。医療用モニタは、診断などのために人体における特定の物理量を測定するための装置である。本発明の巻き取り機構は、センサコードを持ったあらゆる医療用モニタに適用できる。
【0014】
この巻き取り機構は筺体を有する。筺体は、代表的には、リールを覆うケースとして構成される。この筺体は、モニタと一体に構成されていてもよいし、モニタと取り外し自在に構成されていてもよい。
【0015】
リールは、センサコードが巻き付けられる箇所である。このリールは、円筒面を有して筺体に対して回転自在であればよい。特に、リールの幅、つまりリールの回転軸に沿った方向の長さを小さくしてセンサコード1本分の巻き取り幅となるようなリールが好ましい。この構成により、リールの回転軸に沿った方向に巻き取ったコードの各ターンが隣接されるのではなく、渦巻状にコードが巻き取られることになる。そのため、リールの径は大きくなるが、リールの幅を小さくすることができる。さらに、この構成によれば、コードがリールの軸方向に多層に巻かれないため、リール回転時にコードが筐体内でからむことを抑制できる。
【0016】
センサコードは、一端にモニタ本体に接続されるコネクタを有し、他端にセンサを有している。センサには、モニタでの測定対象に応じて種々の構成が利用できる。通常、医療用モニタに用いられるセンサコードは、その取り回しに広範な自由度が求められるため、柔軟性に富むセンサコードが利用されることが多い。
【0017】
この巻き取り機構は、医療用モニタへ着脱自在に装着するための取付機構を有することが好ましい。医療用モニタと一体化した巻き取り機構としてもよいが、着脱自在に構成することで、既存の医療用モニタに対して、巻き取り機構だけを付加することができ、巻き取り機構が一体化された医療用モニタに買い替える必要がない。この取付機構は、巻き取り機構を医療用モニタに装着できればどのような構成でもよい。特に、従来の医療用モニタにおいて用いられていたボビンの置き枠に対して装着可能な取付機構が好ましい。具体的には、金属棒で形成されている置き枠を挟み込む締付金具を巻き取り機構の側面に設ける構成が挙げられる。
【0018】
また、この巻き取り機構は、センサコードの途中に接続箇所を有しない無接点方式であることが望ましい。センサコードが途中で分断され、コネクタを介して接続する有接点方式の場合、通常、このコネクタが巻き取り機構に設けられる。巻き取り機構のような可動機構に接点を設けると、その接点箇所での接触不良を招く虞があるため、このような接点のない無接点方式の巻き取り機構が好ましい。
【0019】
このような無接点方式のリールの代表例としては、センサコードの引き出し側が巻き付けられる第一リールと、センサコードの非引き出し側が巻き付けられ、第一リールと同期して回転される第二リールと、センサコードの引き出し側と非引き出し側との境界部をリールに係止する係止部とを有するリールが挙げられる。通常、センサコードのセンサ側が引き出し側となり、モニタ本体に接続されるコネクタ側が非引き出し側となる。また、第一リールと第二リールにおける各コードの巻き付け方向は同じとしておく。この構成によれば、引き出し側のコードを引っ張れば第一リールの回転に伴って、非引き出し側のコードが第二リールから巻き付けが緩み、逆に引き出し側のコードを第一リールに巻き取れば、非引き出し側のコードが第二リールに巻き付けられることになる。そのため、コードを引き出す際の張力が直接モニタ本体とモニタコードとをつなぐコネクタに作用することがなく、コードの損傷やモニタ本体の損傷を回避することができる。
【0020】
特に、第一リールの外径よりも第二リールの外径を小さくすれば、第一リールに巻き取られる引き出し側のコードに比べて第二リールに巻き取られる非引き出し側のコードの長さを短くすることができる。
【0021】
さらに、本発明巻き取り機構は、リールを回転操作するためのハンドルを有することが望ましい。巻き取り機構にハンドルを設けることで、容易にリールを回転させることができ、巻き取り機構の操作性を向上させることができる。ハンドルは、例えば、リールと同軸で、その筺体から突出するつまみ状のものが好ましい。
【0022】
その他、ハンドルの操作によるリールの回転方向を一方向に規制する逆回転防止機構を有することが好ましい。通常、コードの引き出しは、その引出し側を引っ張ることでリールを一方向に従動回転させ、コードの巻き取りは、ハンドルを操作してリールをコードの引き出し時と逆方向に回転させることにより行う。その際、例えば、ハンドル操作によるリールの回転方向はコードの巻取り方向に限定し、コードを巻きほどく際のリール回転方向にハンドルを操作すると、ハンドルが空転してリールは回転しないように構成する。ハンドルによりリールの回転を行う際、コードがリールからほどかれる方向にリールが回転できると、リールに巻かれているコードがほどかれ、筺体内でもつれたりすることによりリールの回転が阻害される可能性がある。そのため、巻き取り機構にはハンドルの操作によるリールの回転方向を規制する逆回転防止機構を設けることが好ましい。この逆回転防止機構の具体例としては、リールとハンドルの連結機構にラチェット機構を設けることが考えられる。
【0023】
また、筺体とリールとの間に円滑部材を設けることが好ましい。円滑部材は、筺体とリールとが接触する面の摩擦あるいはリールに巻かれたコードと、そのコードが接する筺体面との摩擦を低減して、リールの回転を円滑にするためのものである。例えば、センサコードと筺体との間および筺体とリールとの間にフィルム状の円滑部材を介在させることはもちろん、センサコードに面する筺体やリールの表面に摩擦係数の小さい塗料を塗布しておくことでもよい。その他、センサコードとリールとの間に円滑部材を配置してもよい。円滑部材の具体的な材質としては、ポリエステルやフッ素樹脂などが挙げられる。特に、ポリエステルフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルムなどが好適に利用できる。
【0024】
さらに、センサコードに、同コードの剛性を高める補助部材を設けることも好ましい。例えば、コードの引き出し側を引き出すと、第一リールの回転に同期して第二リールも回転され、非引き出し側のコードが第二リールから径方向に広がってほぐれることになる。その際、非引き出し側のコードが速やかに径方向に広がらないと、センサコードの非引き出し側を円滑に第二リールから巻きほぐすことができない。そのため、特にセンサコードが柔軟な場合には、補助部材を用いてセンサコードの剛性を高めることで、上記非引き出し側の径方向への広がりを円滑に行なうことができる。この補助部材としてはセンサコードの剛性を高めて、曲げ状態から直線状に復帰しようとするばね作用をセンサコードに付与できる種々の構成が利用できる。例えば、センサコードに金属線を沿わせ、その外周を熱収縮チューブで覆うことが考えられる。その他、上記金属線を用いず、センサコードを熱収縮チューブで覆うだけでもよい。その場合、熱収縮チューブは剛性の高い硬質のものが好ましい。
【0025】
そして、この巻き取り機構には、引き出されたセンサコードを巻き戻す方向にリールを付勢する弾性手段を有することも好ましい。この弾性手段を設けることで、センサコードを引き出した後、その引き出す力を緩めると、弾性手段の作用により自動的にセンサコードを巻き取ることができる。弾性手段としては、渦巻きばねやねじりばねなどが好適に利用できる。
【0026】
一方、本発明医療用モニタは、上記のセンサコード巻き取り機構を有することを特徴とする。
【0027】
この医療用モニタは、上述したセンサコードの巻き取り機構を備えているため、センサコードの長さ調整を容易に行うことができる。
【0028】
医療用モニタの具体例としては、経皮血液ガスモニタ、心電計、血圧計、パルスオキシメータなどが挙げられる。特に、本発明巻き取り機構は、モニタ本体と患者との間でセンサのやり取りの頻度が多い経皮血液ガスモニタに対して好適に利用できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明巻き取り機構および医療用モニタによれば、次の効果を奏することができる。
【0030】
(1)筺体に対して回転自在のリールを用いることで、センサコードの巻き取り・引き出しを容易に行うことができる。そのため、センサコードの長さ調整を容易に行うことができる。
【0031】
(2)センサコードの長さ調整が容易にできるため、医療用モニタの使用時にセンサコードが床に垂れ下がった状態となることもなく、医師・看護士や他の医療機器がセンサコードに引っ掛かることを防止できる。それに伴い、センサコードの損傷・断線、ひいては医療用モニタの損傷も抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、血中のO2とCO2の分圧を計測するための経皮血液ガスモニタを例として説明する。このガスモニタは、モニタ本体と、この本体に接続されるセンサコードとを有している。
【0033】
(実施例1)
まず、センサコードの巻き取り機構をモニタ本体に一体化した経皮血液ガスモニタについて図1〜図4に基づいて説明する。
【0034】
<全体構成>
このモニタは、モニタ本体900と、その本体900に対してコネクタ220を介して接続されるセンサコード200を有する。モニタ本体900は直方体状のケース910を有し、その正面に操作パネル兼表示パネルを備え、その右側面にセンサコード200の巻き取り機構100が設けられている。巻き取り機構100はモニタ本体900のケース910と一体のハウジング920内に収納されている。ハウジング920には、センサコード200の両端部を引き出す取り出し口921(図2)が各々形成されている。
【0035】
また、モニタ本体900の正面には、較正スポット930が設けられている。センサの較正時、後述するセンサコード200の先端に設けたセンサ210(図3)を、この較正スポット930にセットして、センサ210の較正を行う。そして、ガス分圧の測定時には、巻き取り機構100からセンサコード200を引き出し、同コード先端のセンサ210を用いて、患者の血中のO2とCO2の分圧を皮膚の表面から計測する。
【0036】
《センサコード》
センサコード200は、一端にセンサ210が設けられ、他端にモニタ本体900に接続するためのコネクタ220が設けられている。センサ210は、従来から用いられている経皮血液ガスモニタの公知の構成を用いればよい。このセンサ210からの電気信号は、センサコード200をつたってモニタ本体900に伝送される。
【0037】
通常、この種のセンサコードは非常に可撓性に富むコードが用いられるが、本例では、従来から用いられている可撓性に富むコードに補助部材となる鋼線(図示せず)を沿わせ、コードと鋼線とを一括して熱収縮チューブ(図示せず)で覆っている。この鋼線を用いることで、曲げに対して直線状に復帰しようとするばね作用をセンサコード200により付与することができ、後述するリールに対する巻き付け・巻きほどき動作を円滑に行わせることができる。
【0038】
また、このセンサコード200は、途中に接続箇所がなく、センサ210からコネクタ220までが一連長のコードとして構成されている。そのため、リールに巻き取られるコード200に接続箇所がないため、その接続箇所での接触不良などの問題を回避することができる。
【0039】
《筺体》
この巻き取り機構100は、後述するリールを回転自在に支持して収納する筺体110を有する。筺体110は、図4に示すように薄い円盤状に構成され、表面側・裏面側の両カバープレート111と、両カバープレート111の間を保持するスペーサ112と、筺体110の外周面を覆う外周プレート113とを備えている。以下の説明では、図2または図4(B)におけるハンドル側を巻き取り機構の表とし、その反対側を裏として説明を行う。
【0040】
各カバープレート111は、その中心に後述するリールの軸部が貫通する軸孔111Aを有し、外周側の複数箇所には、両カバープレート111をスペーサ112を介して固定するねじ孔111Bが形成されたアクリル板である。このカバープレート111の表面側には、センサコード200を巻き取る際のリール120の巻き取り方向を示す表示を行うことが好ましい。この巻き取り方向表示により、誤って逆方向にリール120を回転させてセンサコード200が筺体110内でもつれることなどを回避できる。
【0041】
スペーサ112は、これら両カバープレート111の間隔を保持する筒状体である。このスペーサ112は上記ねじ孔111Bに位置合わせして両カバープレート111の間に介在され、そのねじ孔111Bとスペーサ112にねじを螺合することで両カバープレート111を一体化する。
【0042】
また、上記各カバープレート111の対向面側には円弧状のガイド溝111Cが形成されている。このガイド溝111Cには、外周プレート113がはめ込まれることで筺体110の外周壁を構成する。外周プレート113の材質にはPETフィルムを用いた。本例では、このガイド溝111Cを、各カバープレート111の全周に設けるのではなく、2箇所の離れた位置に切れ目が形成されるように設けている。この切れ目の箇所には外周プレート113がはめ込まれないため、その外周プレート113のない箇所がコード200の各引き出し口114となる。
【0043】
このコード200の引き出し口114の一方にはコード固定ゴム115を取り付けている。これはネオプレンゴム製のブロック材で、コネクタ側のコード200を筺体の引き出し口114に固定して、リール回転時のコード200の張力がコネクタ220あるいはモニタ本体900に作用しないようにするためのものである。本例で用いたコード固定ゴム115は、直方体状のブロック材であり、2つのスペーサ112が貫通配置するスペーサ貫通孔と、スペーサ貫通孔に直交し、コード200が貫通配置されるコード貫通孔とを具える。また、コード200をコード貫通孔に配置しやすいように、ゴム115には、その表面からコード貫通孔に達する切込みを設け、コード200をコード貫通孔に配置する際、切込みを開くことで容易にコード200を配置することができる。
【0044】
この筺体110は、後述するように表面側にハンドル140が突出されているが、裏面側の回転軸付近には、その箇所を覆うセンターカバー130が設けられている。このセンターカバー130はカバープレート111の中心部を覆う大きさのアクリル板であり、接着により裏面側カバープレート111に固定されている。
【0045】
《リール》
上記の筺体110内にはリール120が回転自在に支持されている(図4)。このリール120は、ポリアセタール製の成形体で、その中心に軸部121と、軸部121から径方向に広がる第一リール122および第二リール123を備えている。
【0046】
軸部121は、第二リール123の外径にほぼ等しい外径を有し、後述する回転軸121Cがはめ込まれる貫通孔121Aを有する。本例では、第一リール122の表面側に環状の突起を設け、この環状突起121Bが表面側カバープレート111の軸孔111Aに嵌合し、第二リール123が裏面側カバープレート111の軸孔111Aに嵌合させている。
【0047】
そして、この軸部121の貫通孔121Aには回転軸121Cが装着されている。この回転軸121Cは、リール120と後述するハンドル140とを連結するための部材である。
【0048】
第一リール122は、コード200の引き出し側、つまりセンサ側が巻き付けられる太径のリールである。この第一リール122は、コード200の外径よりもわずかに大きい幅の巻き胴部122Aと、巻き胴部122Aの一端側(表面側)に径方向に広がるつば部122Bとを有している。巻き胴部122Aの他端側(裏面側)につば部はない。この巻き胴部122Aの外周に引き出し側コード200が渦巻状に巻き付けられる。ここでは、図4(C)の右回りにコード200を巻き付けている。巻き胴部122Aの裏面には第一リール122の外周から中心にコード200を導く第一ガイド溝122Cが形成されている。第一リール122の巻き胴部122Aの外周からガイド溝122Cへの導入部は丸みを取って形成し、コード200に無理な曲げが加わらないようにしている。この第一リール122の巻き胴部122Aの外周から第一ガイド溝122Cを通ったコード200は、軸部121の貫通孔121Aに引き出される。
【0049】
一方、第二リール123は、コード200の非引き出し側、つまりコネクタ側が巻き付けられる小径のリールである。この第二リール123は第一リール122の裏面側に同軸状に一体化されている。第二リール123は巻き胴部のみを有し、つば部に相当するものは設けられていない。ただし、後述するように、境界プレート124と裏面側カバープレート111が実質的に第二リール123のつば部の機能を果たす。
【0050】
また、第二リール123の裏面側には、第一ガイド溝122Cを通ってきたコード200を第二リール123の中心から外周に導く第二ガイド溝123Aが形成されている。つまり、軸部121の貫通孔121Aに引き出されたコード200は、この第二ガイド溝123Aを通って第二リール123の外周側に導かれる。この第二ガイド溝123Aの第二リール外周側への引き出し部にも丸みが形成され、コード200に無理な曲げが加わらないように構成されている。
【0051】
さらに、この第二ガイド溝123Aは、図4(C)に示すように、第一ガイド溝122Cの延長線上に形成される。そして、第二リール123にも非引き出し側コード200を第一リール122に巻かれる引き出し側コード200と同じ方向に渦巻状に巻き付けられる。そのため、第一ガイド溝122Cの上端では右回りに引き出し側コード200が引き出され、第二ガイド溝123Aの下端でも右回りに非引き出し側コード200が引き出される。そのため、第一ガイド溝122C、軸部121の貫通孔121A、第二ガイド溝123Aを通過する過程でコード200はS字状に屈曲され、引き出し側コードと非引き出し側コードの境界部がリール120に係止されることになる。
【0052】
これら第一リール122と第二リール123の軸方向の空間は境界プレート124により仕切られている。境界プレート124は、第一リール122のつば部のない面にねじ止めにより固定され、第一リール122のつば部122Bと境界プレート124との間に引き出し側コード200が巻き取られる空間を形成し、裏面側カバープレート111と境界プレート124との間に非引き出し側コード200が巻き取られる空間を形成している。いずれも引き出し側コードが巻き取られる空間と、非引き出し側コードが巻き取られる空間の幅は各々コード200が1本はめ込まれる幅しかない。また、この境界プレート124により、第一リール122の第一ガイド溝122Cが覆われる。
【0053】
なお、本例では、第一リール122から第二リール123へコード200を移行する際、コード200をリール120の軸部121を径方向に通過させているが、第一ガイド溝122Cを通ってきたコード200をリール120の軸部121の径方向に通過させることなく、直接第二リール123に巻き付けてもよい。その場合、第一ガイド溝122Cを通ってきたコード200が境界プレート124を貫通できるように、境界プレート124にコード200の挿通孔を形成しておけばよい。
【0054】
《スラストシート》
さらに、本例の巻き取り機構では、表面側カバープレート111と、第一リール122のつば部122Bとの間、ならびに裏面側カバープレート111と第二リール123に巻き付けられるコード200との間に円滑部材であるスラストシート150を介在させている。このスラストシート150は、回転軸121Cの貫通孔を有し、リール120の外径にほぼ等しい外径を有するポリエチレンフィルムである。このスラストシート150を設けることで、筺体110とリール120との摩擦あるいはコード200と筺体110との摩擦を低減して、円滑にリール120を回転させることができる。
【0055】
《ハンドル》
その他、本例の巻き取り機構では、回転軸121Cにハンドル140を同軸状に固定し、そのハンドル140を表面側カバープレート111側に突出させている。このハンドル140は、回転軸121Cよりも径の大きな薄い円筒状のプラスチック製つまみである。より具体的には、小径部と大径部とを有し、大径部の外周には軸方向に沿った多数の溝が形成されて、ハンドル140をつかんで回す際に手が滑らないように構成されている。
【0056】
また、このハンドル140は、回転軸121Cが挿通される軸方向沿いの挿入孔と、挿入孔と直交するキー孔が形成されている。一方、回転軸121Cには、その外周にキー溝が形成されており、ハンドル140の挿入孔に回転軸121Cを差し込み、キー孔とキー溝を位置合わせして、これらにキーをはめ込むことで回転軸121Cとハンドル140を一体化している。
【0057】
<利用手順と動作>
以上の構成の巻き取り機構は、次の手順で利用する。
【0058】
センサコード200のコネクタ220をモニタ本体900に差し込んでおく(図1,3)。
【0059】
その状態で、リール120に巻き取られたコード200の引き出し側、つまりセンサ側を引き出す(図4)。
【0060】
このコード200の引き出しにより、第一リール122および第二リール123が同期して図4(C)の右方向に回転される。その際、第一リール122に巻き取られている引き出し側コード200は徐々に巻きほぐされてセンサ210を巻き取り機構100から離れた位置に引き出すことができる。
【0061】
一方、第二リール123も回転し、それに伴って第二リール123に巻き取られている非引き出し側コード200は徐々に巻きほぐされることになる。その際、非引き出し側コード200は一端がリール120の第二ガイド溝123Aに係止され、他端がコード固定ゴム115により位置決めされている。そのため、筺体110内で非引き出し側コード200は径方向に広がるように巻きほぐされることになる。この非引き出し側コード200の巻きほぐれにより、引き出し側コード200の引き出しを円滑に行わせ、かつ引き出し側コード200の引き出し時の張力がコネクタ側に作用しないようにすることができる。
【0062】
逆に、コード200を巻き戻す場合は、ハンドル140を手で回す。その際、ハンドル140の回転方向を間違わないように、図4(C)の左方向に回転する。ハンドル140の回転により、第一リール122の巻き胴部122Aに引き出し側コード200が徐々に巻き付けられていく。
【0063】
それと同時に第二リール123の外周に広がっていた非引き出し側コード200も徐々に第二リール123に巻き付けられていく。
【0064】
このように、本発明巻き取り機構を用いれば、センサコードの長さ調整を容易に行うことができ、センサを患者側と較正スポットとの間で行き来させることが多い場合であっても、センサコードを床面に這わせるようなことを回避できる。そのため、センサコードを引っ掛けることによる同コードの損傷やモニタ本体の引き倒しといった事故を抑制できる。
【0065】
(実施例2)
次に、センサコードの巻き取り機構をモニタ本体に着脱自在に構成した経皮血液ガスモニタについて図5〜図8に基づいて説明する。これらの各図において、実施例1と共通する部材には同一の符号を付している。ここでは、実施例1と共通する構成の説明は省略し、主として相違点について以下の説明を行う。このガスモニタに用いた巻き取り機構は、第一リール、第二リールを有する点や、そのリールが円盤状の筺体に回転自在に支持されている点は実施例1と同様で、さらにその動作も実施例1と基本的に同様である。ただし、この筺体には、モニタ本体に巻き取り機構を安定して保持するための切欠が形成され、さらにモニタ本体に固定するための締付金具が取り付けられている点が異なる。
【0066】
まず、モニタ本体900の側面には、巻き取り機構の固定枠940が取り付けられている。この固定枠940は、一対の平行な短辺と、両短辺をつなぐ長辺からなる[形の金属棒で構成され、図6,図7に示すように、モニタ本体900の正面側が低く、背面側が高くなるように傾斜してモニタ本体900に固定されている。
【0067】
この固定枠940に巻き取り機構100を着脱自在にできるように、巻き取り機構100には、2箇所に切欠111Dが設けられている。この切欠111Dは、筺体110を構成する表裏のカバープレート111(図8)の外周側に設けられた扇形の切欠である。このうちの一方の切欠111Dに固定枠940の一方の短辺が、他方の切欠111Dに固定枠940の他方の短辺がはめ込まれるように巻き取り機構100を固定枠940上に配置する。両切欠111Dに固定枠940がはめ込まれることで、安定して固定枠940上に巻き取り機構100を保持することができる。
【0068】
また、筺体110を構成するカバープレート111の一方には、締付金具116が取り付けられている(図7、図8)。この締付金具116は、ベース金具116Aと押え金具116Bの組み合わせにより構成され、両者の間に固定枠940の長辺を挟み込む。ベース金具116Aは、カバープレート111の外形に沿った円弧と、その円弧に対向する弦と、弦の両端から円弧に向かって伸びる側辺とを有する金属板である。このベース金具116Aは、両側辺を丁度カバープレート111の切欠111Dと位置合わせしてボルト116Cによりカバープレート111上に取り付けられている。また、このベース金具116Aのほぼ中央における円弧側には押え金具116Bの取付孔が形成されている。押え金具116Bは、途中で屈曲した断面が浅いV型の金属片で、その一端側には長孔が形成されている。この長孔とベース金具116Aの取付孔を位置合わせして、両孔にボルト116Cを挿通して締め付ける。その際、押え金具116Bの他端側はベース金具116Aとの間に固定枠940の長辺を挟みこむことで巻き取り機構を固定枠940に固定することができる(図8)。
【0069】
さらに、本例の巻き取り機構100では、他方のカバープレート111(裏面側カバープレート)に脚部117を設けている(図5〜図8)。この脚部117は、回転軸121Cを中心として均等な位置に配された3つの半球状のものである(図7)。固定枠940に巻き取り機構100を設置した際、この脚部117が他方のカバープレート111とモニタ本体900の側面との間の隙間に介在されることで、より安定して巻き取り機構100を固定枠940上に保持することができる。また、巻き取り機構100を固定枠940から取り外した際には、この脚部117が机上などに巻き取り機構100を載せる際の脚として機能する。
【0070】
このように、巻き取り機構をモニタ本体の固定枠に着脱自在に構成することで、容易に巻き取り機構を取り外して保管や持ち運びできる。その上、従来のモニタ本体に設けられていたボビンの置き枠をそのまま巻き取り機構の固定枠として利用することができる。そのため、実施例1のように巻き取り機構が一体化されたガスモニタを新たに購入しなくても、本例の巻き取り機構のみを購入すれば、センサコードの長さ調整が容易なガスモニタとすることができる。
【0071】
(実施例3)
次に、ハンドル操作によるリールの回転方向を一方向に規制する逆回転防止機構を設けた巻き取り機構の構成について図9に基づいて説明する。ここでは、逆回転防止機構を中心に説明し、他の構成は上述した実施例1や実施例2と基本的に共通するため、その説明を省略する。
【0072】
上記実施例1や2では、回転軸121Cがリール120に対して固定されていたが、本例では、リール120と回転軸121Cを係合により組み合わせており、その係合箇所にラチェット機構を用いている。
【0073】
つまり、リール120は、その中央部に回転軸121Cの貫通孔121Aを有すると共に、その表面(ハンドル140が設けられる側の面)に円盤状の切欠122Dが設けられている(図9A、図9B)。また、この切欠122Dの内側には、一対の爪125が突出されている。ここでは、爪125として細長い金属片を用い、その金属片が図9(B)の水平(左右)方向に沿うように配置している。より詳しくは、各爪125の一端をリール120における切欠122Dのない箇所にはめ込んで固定し、他端が他の爪125と回転軸121Cを挟んで対向するように配置している。
【0074】
一方、回転軸121Cは、その途中につば上に突出する鋸歯状のラチェット部121Dを有している。このラチェット部121Dの外周には、ほぼ三角形状の切欠121Eが多数形成され、その切欠121Eにより径方向に沿った係合面と、係合面と交差する傾斜面が形成されている。回転軸121Cは、そのリールの貫通孔121Aにはめ込まれると共に、ラチェット部121Dが上記切欠122Dにはめ込まれるように配置される。その際、爪125の先端がラチェット部121Dの外周に設けられたほぼ三角形状の切欠に係合する。その際、爪125は傾斜面に沿って当接され、係合面に突き当たるように位置される。そして、回転軸121Cに貫通されると共に、ラチェット部121Dの表面を覆うカバーディスク126がリール120にねじ止めされている。このカバーディスク126は、表面側のカバープレート111の軸孔に係合される環状突起を中央部に有している。
【0075】
この構成によれば、ハンドルを図9(B)の右方向に回転する際には、ラチェット部121Dの係合面が爪125を押圧してリール120を回転することができるが、左方向に回転する際には爪125が傾斜面の上を滑って次の切欠121Eの傾斜面に移行し、ラチェット部121Dがリール200に対して空転する。そのため、ハンドル140を操作する場合は、センサコード200を巻き取る方向のみにリール120を回転させることができ、誤って巻きほぐす方向にリール120を回転させることを防止できる。その結果、筺体110内でセンサコード200がもつれるなどしてリール120の回転が阻害されることを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明巻き取り機構および医療用モニタは、センサコードを備える種々の医療機器に利用することができる。特に、皮膚の上から血中の酸素分圧や二酸化炭素分圧を計測する経皮血液ガスモニタに対して好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1の本発明モニタの平面図である。
【図2】実施例1の本発明モニタの正面図である。
【図3】実施例1の本発明モニタの右側面図である。
【図4】(A)は実施例1のモニタに用いた巻き取り機構の表面側内部構成図、図(B)は同縦断面図、(C)は同裏面側内部構成図である。
【図5】実施例2の本発明モニタの平面図である。
【図6】実施例2の本発明モニタの正面図である。
【図7】実施例2の本発明モニタの右側面図である。
【図8】実施例2のモニタに用いた巻き取り機構の着脱用締付金具の説明図である。
【図9】(A)は実施例3の巻き取り機構の縦断面図、図(B)は同表面側内部構成図である。
【符号の説明】
【0078】
100 巻き取り機構
110 筺体 111 カバープレート 111A 軸孔 111B ねじ孔
111C ガイド溝 111D 切欠 112 スペーサ 113 外周プレート
114 引き出し口 115 コード固定ゴム 116 締付金具 116A ベース金具
116B 押え金具 116C ボルト 117 脚部
120 リール 121 軸部 121A 貫通孔 121B 環状突起 121C 回転軸
121D ラチェット部 121E 切欠 122 第一リール
122A 巻き胴部 122B つば部 122C 第一ガイド溝 122D 切欠
123 第二リール 123A 第二ガイド溝 124 境界プレート
125 爪 126 カバーディスク 130 センターカバー
140 ハンドル 150 スラストシート
200 センサコード 210 センサ 220 コネクタ
900 モニタ本体 910 ケース 920 ハウジング
921 取り出し口 930 較正スポット 940 固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体と、
筺体に対して回転自在に支持されるリールと、
このリールの回転に伴って引き出され又は巻き取られるセンサコードとを有することを特徴とする医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項2】
さらに、前記巻き取り機構を医療用モニタへ着脱自在に装着するための取付機構を有することを特徴とする請求項1に記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項3】
前記巻き取り機構は、センサコードの途中に接続箇所を有しない無接点方式であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項4】
前記リールは、
センサコードの引き出し側が巻き付けられる第一リールと、
センサコードの非引き出し側が巻き付けられ、第一リールと同期して回転される第二リールと、
センサコードの引き出し側と非引き出し側との境界部をリールに係止する係止部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項5】
さらに、前記リールを回転操作するためのハンドルを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項6】
前記ハンドルの操作によるリールの回転方向を一方向に規制する逆回転防止機構を有することを特徴とする請求項5に記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項7】
前記筺体とリールとの間にリールの回転を円滑にする円滑部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項8】
前記センサコードに、同コードの剛性を高める補助部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の医療用モニタのセンサコード巻き取り機構。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のセンサコード巻き取り機構を有することを特徴とする医療用モニタ。
【請求項10】
医療用モニタが経皮血液ガスモニタであることを特徴とする請求項9に記載の医療用モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−223404(P2006−223404A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38465(P2005−38465)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(592212858)住友電工ハイテックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】