説明

医療用器具

体表部と内部組織とを縫合糸により縫合する際の作業性および安全性を向上できる医療用器具を提供する。本体(2)と、本体(2)に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針(3)と、糸挿入用穿刺針(3)に近接して設けられた縫合糸牽引具が挿入可能な糸把持用穿刺針(4)とを有し、体表部と内部組織とを縫合するために用いる医療用器具であって、糸挿入用穿刺針(3)と糸把持用穿刺針(4)とは、本体(2)に着脱手段により着脱可能に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、医療用器具に関する。
【背景技術】
口から栄養を摂取できない患者に対する栄養投与として、経静脈的栄養投与、鼻からチューブを胃等に挿入して行う経胃管的な栄養投与および胃瘻からの経腸的な栄養投与の3通りが行われている。
近年では、経腸栄養剤と、その投与法の発達とにより、経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)による経腸栄養管理が頻繁に行われるようになってきた。PEGは外科的開腹胃瘻造設術に比べ、瘻孔を小手術にて造設するため侵襲が小さく、医療費を圧倒的に減らすことができるため、欧米では胃瘻造設術の標準的術式となっている。
PEGでは、胃瘻の造設に先立って患者の腹壁と胃壁とを貫通する貫通孔が形成される。その貫通孔の形成に先立ち、動き易い胃壁を一時的に固定するため、それら腹壁と胃壁とを縫合糸により縫合するのが一般的である。
このような縫合を行うための医療用器具としては、たとえば縫合糸挿入用穿刺針と、それと平行に配置される縫合糸把持用穿刺針と、その縫合糸把持用穿刺針内に摺動可能に挿入されるスタイレットと、縫合糸挿入用穿刺針と縫合糸把持用穿刺針とをそれぞれの基端部において固定する固定部材とからなり、スタイレットにより前記縫合糸を把持するもの等が開示されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の医療用器具は、(a)縫合糸が挿入される内部通路を有する中空の縫合糸挿入用穿刺針と、(b)それと平行に配置され、縫合糸を把持するために使用される中空の縫合糸把持用穿刺針と、(c)その縫合糸把持用穿刺針内に摺動可能に挿入されるスタイレットと、(d)縫合糸挿入用穿刺針と縫合糸把持用穿刺針とをそれぞれの基端部において固定する固定部材とからなる。このスタイレットはそれの先端に、縫合糸把持用穿刺針の内部通路に収納可能な弾性材料製の環状部材を有しているとともに、その環状部材はそれが縫合糸把持用穿刺針の先端から突出された状態において、縫合糸挿入用穿刺針の中心軸またはその延長線が、環状部材の内部を通過するように縫合糸挿入用穿刺針に向かって伸びるように構成されている。
特許文献1によれば、この医療用器具は次のようにして使用される。まず、縫合糸挿入用穿刺針と縫合糸把持用穿刺針とにより生体が穿刺される。続いて、スタイレットが縫合糸把持用穿刺針内にその後端から挿入され、環状部材が縫合糸把持用穿刺針の先端から突出する。次に、縫合糸が縫合糸挿入用穿刺針の後端から挿入され、結果、縫合糸が縫合糸挿入用穿刺針の先端から露出する。この状態で、縫合糸把持用穿刺針内のスタイレットを後退することにより、縫合糸が環状部材により把持される。最後に、縫合糸挿入用穿刺針と縫合糸把持用穿刺針とスタイレットとが一体的に生体から後退させられることより、縫合糸の一端が縫合糸挿入用穿刺針側、もう一端が縫合糸把持用穿刺針側から引き出される。
ところが、上記特許文献1に記載の医療用器具を使用する際に、縫合糸は縫合糸把持用穿刺針の先端にて環状部材により捕捉される。この先端は鋭利であるため、スタイレットの後退の際に、縫合糸と縫合糸把持用穿刺針先端の接触が必要以上に大きな力で行われると、縫合糸が切断されてしまう可能性がある。
また、上記特許文献1に記載の医療用器具では、2本の穿刺針を同時に穿刺しなければならなかった。このため、1本づつ針を穿刺する操作に比べ、より高度な技術が必要であった。
また、これらの医療用器具を用いて腹壁と胃壁とを確実に固定するには、同じ縫合作業を2回繰り返す必要があり、患者の負担が大きかった。
そこで、この不都合を防止するための生体用縫合具が特許文献2に記載されている。この生体用縫合具は、(a)縫合糸が挿入される内部通路を有し、先端が鋭利な中空の固定穿刺針と、(b)それと平行に配置され、縫合糸が挿通される内部通路を有し、先端が鋭利でない中空の外筒と、(c)その外筒の内部通路内に選択的に抜去可能で、鋭利な先端を有する可動穿刺針、および縫合糸牽引具と、(d)固定穿刺針と外筒とを互いに平行に、かつ、それぞれの一つの位置において保持するホルダとを含むように構成されている。
特許文献2によれば、この生体用縫合具は上述した不都合を改善している。まず固定穿刺針と外筒内に挿通された可動穿刺針とにより生体が穿刺される。続いて、可動穿刺針が外筒から引き抜かれ縫合糸牽引具が外筒内にその後端から挿入され、スネアが外筒の先端から突出する。次に、縫合糸が固定穿刺針の後端から挿入され、結果、縫合糸が固定穿刺針の先端から露出する。この状態で、外筒内の縫合糸牽引具を後退させることにより、縫合糸がスネアにより把持されたまま、外筒の鋭利でない先端を通って外筒内から体外へ引き出される。このとき、縫合糸は鋭利な部分を通過せずに済むため、切断が防止されるとされている。
ところが、特許文献2に記載の生体用縫合具は、縫合糸牽引具が縫合糸を把持したまま外筒内を通過するため、外筒の径は太くなってしまう。また、可動穿刺針が鋭利であっても、その可動穿刺針と外筒との段差部分の影響で穿刺性が低下する可能性がある。
また、特許文献2に記載の生体用縫合具は2本の針の同時穿刺ではないものの、2本の針を同時に操作しなければならなかった。このため、1本づつ針を穿刺する操作に比べ、より高度な技術が必要であった。
また、これら特許文献1の医療用器具の縫合糸挿入用穿刺針と縫合糸把持用穿刺針と、特許文献2の生体用縫合具の固定穿刺針はともに中空針であるため、先端が貫通していない針に比べ穿刺性が低下する傾向にあった。
特許文献1 特開平4−226643号公報
特許文献2 特開2003−225240号公報
【発明の開示】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、体表部と内部組織とを縫合糸により縫合する際の作業性および安全性を向上できる医療用器具を提供することにある。
本発明によれば、(a)鋭利な先端を有し、前記先端が貫通していない中空の穿刺針であって、先端部付近に横穴を有し、その中空部に縫合糸が挿通されて使用される糸挿入用穿刺針、
(b)前記糸挿入用穿刺針の横方向に略平行に並び、鋭利な先端を有し、前記先端が貫通していない中空の穿刺針であって、先端部付近に横穴を有し、その中空部に前記縫合糸が挿通されて使用される糸把持用穿刺針、
(c)前記糸把持用穿刺針の中空部に摺動可能に挿入された縫合糸牽引具、
(d)前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針の先端位置を相対的に決める固定部材、および
(e)前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を支持する支持し、被縫合物に当接する当接部材、
を有することを特徴とする医療用器具が提供される。
また、本発明によれば、体表部と内部組織とを縫合するために用いられる医療用器具であって、本体と、前記本体に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針と、前記糸挿入用穿刺針に近接して設けられ、縫合糸牽引具を挿入可能な糸把持用穿刺針とを有し、前記糸把持用穿刺針は、鋭利な先端と、前記先端よりも基端側に設けられた開口部と、を有し、前記開口部から前記糸把持用穿刺針の外部へ前記縫合糸牽引具を導出可能に構成されたことを特徴とする医療用器具が提供される。
本発明の医療用器具は、穿刺針の先端が貫通していないため、その穿刺性を向上させることができる。また、穿刺針の中空部が先端付近の横穴または開口部で外部に連通する。このため、縫合糸および縫合糸牽引具を横穴から所定の方向に確実に導出することができる。よって、操作性がよく安全な縫合操作が可能となる。また、糸挿入用穿刺針および糸把持用穿刺針が当接部材により支持されるとともに、この当接部材が体表部等の被縫合物に当接するため、縫合を確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記縫合糸牽引具は、その先端が弾性変形可能な材料にて形成されたスネアを有し、自由状態では前記糸挿入用穿刺針の延長線が前記スネアの内部を通過するように延びるとともに、弾性変形状態では前記糸把持用穿刺針の前記中空部に収納可能であってもよい。こうすることにより、縫合糸を確実に把持することができる。このため、縫合を確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記当接部材が、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を互いに略平行に支持するものであってもよい。こうすることにより、縫合を安定的に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記固定部材は、前記糸把持用穿刺針に設けられ、前記糸把持用穿刺針の先端位置に対する前記糸挿入用穿刺針の先端位置を任意の位置に決めることができるように構成されてもよい。こうすることにより、縫合時の操作性をさらに向上させることができる。
本発明の医療用器具において、前記当接部材および前記固定部材から前記縫合糸を取り外せるように構成された切欠部が前記当接部材および前記固定部材に設けられた構成とすることができる。こうすることにより、前記糸把持用穿刺針を穿刺した状態で、当接部材および固定部材から縫合糸を確実に取り外すことができる。このため、簡便な操作で縫合を確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針の前記横穴のエッジおよび前記糸把持用穿刺針の前記横穴のエッジが、C面取りまたはR面取りされたものであってもよい。こうすることにより、縫合糸の破損を抑制することができる。このため、縫合をさらに確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針と前記糸把持用穿刺針のうちの少なくとも一方は、前記当接部材に着脱可能に支持されていることができる。こうすれば、縫合操作をさらに簡便なものとすることができる。
本発明の医療用器具において、複数の前記糸挿入用穿刺針を有し、前記糸把持用穿刺針は、複数の前記糸挿入用穿刺針のそれぞれに近接して設けられた構成とすることができる。こうすることにより、複数箇所を縫合する際に、前記糸挿入用穿刺針の除去の操作と、当接部材の回転操作を省略することができる。このため、簡便な操作で複数箇所での縫合をより一層確安定的に行うことができる。
本発明によれば、体表部と内部組織とを縫合するために用いられる医療用器具であって、本体と、前記本体に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針と、前記糸挿入用穿刺針に近接して設けられ、縫合糸牽引具を挿入可能な糸把持用穿刺針と、を有し、前記糸挿入用穿刺針と前記糸把持用穿刺針のうち少なくとも一方は、前記本体に対し着脱可能に装着されたことを特徴とする医療用器具が提供される。
本発明の医療用器具では、糸挿入用穿刺針と糸把持用穿刺針のうち少なくとも一方が前記本体に対し着脱可能に装着されるため、操作性がよく安全な縫合操作を可能とする。
本発明の医療用器具において、前記本体は、前記糸挿入用穿刺針の先端または前記糸把持用穿刺針の先端を所定の位置に固定する固定部材と、前記固定部材を支持する支持部材と、を有してもよい。こうすることにより、縫合を安定的に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記本体は、さらに前記支持部材の先端側に前記体表部と当接し、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を支持する当接部材を有してもよい。こうすることにより、縫合時に当接部材にて医療用器具を体表部に当接させることができる。このため、縫合をさらに安定的に行うことができる。また、本発明の医療用器具において、前記支持部材が前記固定部材および前記当接部材を支持する構成とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針および糸把持用穿刺針を、当接部材を介して支持部材で支持することができる。このため、これらの穿刺針をさらに確実に支持し、医療用器具の使用時の安定性をさらに向上させることができる。
本発明の医療用器具において、前記糸把持用穿刺針は、さらにガイドワイヤーを挿入可能に構成されてもよい。こうすることにより、医療用器具の適用範囲を拡大することができる。たとえば、ガイドワイヤーを使用した場合、カテーテルの挿入経路の適切化が可能であり、安全かつ確実にカテーテルを挿入することができる。さらに、ガイドワイヤーを使用した場合、体表部と内部組織との縫合と同時にガイドワイヤーの挿入を実現できる。そのため、縫合後にカテーテルの挿入経路の適切化が可能であり、安全かつ確実にカテーテルを挿入することができる。さらに、カテーテル挿入までの穿刺針の穿刺回数を減少することができ、患者への侵襲も非常に少なく、患者に与える負担も少ないため、患者の早期社会復帰、医療経費が削減できる。
本発明の医療用器具において、前記ガイドワイヤーの外径が0.1mm以上0.8mm以下であってもよい。
本発明の医療用器具において、前記固定部材は、前記糸挿入用穿刺針または前記糸把持用穿刺針を前記本体から着脱可能とする切欠部を有する構成とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針または糸把持用穿刺針の着脱を確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記当接部材は、前記糸挿入用穿刺針または前記糸把持用穿刺針を前記本体から着脱可能とする切欠部を有する構成とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針または糸把持用穿刺針の着脱を簡便で確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針は、独立に穿刺可能に構成されてもよい。こうすれば、2本の穿刺針の同時穿刺または同時操作をすることがなく、2本の穿刺針をそれぞれ1本ずつ操作することができる。このため、操作性がよく安全な操作が可能となる。また、術者のストレス軽減や、手術時間の短縮が可能となる。よって、体表部と内部組織とを縫合糸により縫合する際の作業性および安全性を向上させることができる。
本発明の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針が穿刺され、かつ前記本体が前記体表部に当接した状態で、前記糸挿入用穿刺針を単独で除去できるように構成されてもよい。こうすることにより、縫合糸を糸把持用穿刺針で把持しつつ、糸挿入用穿刺針を除去することができる。このため、一連の操作で複数箇所の縫合を行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記糸把持用穿刺針を回転軸として前記本体が回転可能に構成されてもよい。こうすることにより、複数箇所での縫合を確実に行うことができる。
本発明の医療用器具において、前記複数の前記糸挿入用穿刺針を有し、前記糸把持用穿刺針は、複数の前記糸挿入用穿刺針のそれぞれに近接して設けられた構成とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針の単独除去の操作と、本体の回転操作を省略することができる。このため、簡便な操作で複数箇所での縫合をより一層確安定的に行うことができる。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、以下のステップを含む医療用器具を用いた縫合方法が提供される。
(i)体表部と内部組織に糸把持用穿刺針を貫通させるステップ
(ii)縫合糸牽引具を糸把持用穿刺針の中空部に挿入し、糸把持用穿刺針の外部に縫合糸牽引具を導出させるステップ
(iii)体表部と内部組織に糸挿入用穿刺針を貫通させるステップ
(iv)縫合糸を糸挿入用穿刺針の中空部に挿入し、糸挿入用穿刺針の外部に縫合糸を導出させるステップ
(v)導出した縫合糸を、糸把持用穿刺針の外部に導出された縫合糸牽引具により把持するステップ
(vi)縫合糸を把持した状態で縫合糸牽引具を牽引し、糸把持用穿刺針に縫合糸を引き寄せ、糸把持用穿刺針の近傍に縫合糸を保持するステップ
(vii)縫合糸を糸把持用穿刺針の近傍に保持しつつ、糸把持用穿刺針とともに縫合糸を体表部および内部組織の外部へ引き抜くステップ。
本発明の縫合方法によれば、簡便な操作で体表部と内部組織とを確実に縫合することができる。
上記縫合方法において、(vii)のステップにおいて、縫合糸牽引具を先に外部に引き抜いた後、糸把持用穿刺針を引き抜くこともできる。
本発明の縫合方法において、糸把持用穿刺針の近傍に縫合糸を保持するステップの後、体表部と内部組織に糸把持用穿刺針を貫通させた状態で、糸挿入用穿刺針を引き抜いてから、糸把持用穿刺針を軸として本体を回転させるステップを含んでもよい。また、本発明の縫合方法において、本体を回転させる前記ステップの後、再度体表部と内部組織に糸挿入用穿刺針を貫通させるステップを含んでもよい。
こうすることにより、糸把持用穿刺針を回転軸として、同心円上の複数箇所に糸挿入用穿刺針を穿刺することができる。このため、複数箇所において縫合を確実に行うことができる。また、互いに分離した複数の予定縫合部位の縫合からカテーテル挿入までの穿刺針の穿刺回数を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
図1は、本実施形態に係る医療用器具を示す正面断面図である。
図2aは、本実施形態に係る医療用器具の糸把持用穿刺針の構成を示す正面断面図である。
図2bは、本実施形態に係る医療用器具の縫合糸牽引具の構成を示す断面図である。
図2cは、図2aと図2bを組み合わせた構成を示す正面断面図である。
図3は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針の正面断面図である。
図4は、本実施形態に係る医療用器具の糸把持用穿刺針の針先端部を示す正面断面図である。
図5は、本実施形態に係る医療用器具の当接部材の正面および平面を示す図である。
図6は、本実施形態に係る医療用器具の使用手順を説明する図である。
図7は、図6の医療用器具の使用方法のステップ1を示す正面断面図である。
図8は、図6の医療用器具の使用方法のステップ2を示す正面断面図である。
図9は、図6の医療用器具の使用方法のステップ3を示す正面断面図である。
図10は、図6の医療用器具の使用方法のステップ4を示す正面断面図である。
図11は、図6の医療用器具の使用方法のステップ5を示す正面断面図である。
図12は、図6の医療用器具の使用方法のステップ6を示す正面断面図である。
図13は、図6の医療用器具の使用方法のステップ7を示す正面断面図である。
図14は、図6の医療用器具の使用方法のステップ8を示す正面断面図である。
図15は、図6の医療用器具の使用方法のステップ9を示す正面断面図である。
図16は、図6の医療用器具の使用方法のステップ10を示す正面断面図である。
図17は、本実施形態に係る医療用器具の構成を示す斜視図である。
図18は、本実施形態に係る医療用器具の本体の構成を示す正面図である。
図19は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針の正面および断面を示す図である。
図20は、本実施形態に係る医療用器具の糸把持用穿刺針の正面および断面を示す図である。
図21は、本実施形態に係る医療用器具の縫合糸牽引具を示す正面図である。
図22は、本実施形態に係る医療用器具の当接部材を腹壁に当接させて、糸把持用穿刺針に垂直に穿刺した状態を示す正面断面図である。
図23は、本実施形態に係る医療用器具の縫合糸牽引具を糸把持用穿刺針に挿入した状態を示す正面断面図である。
図24は、本実施形態に係る医療用器具の縫合糸牽引具の環状部の内側に糸挿入用穿刺針を穿刺した状態を示す正面断面図である。
図25は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針の先端から縫合糸を突出させた状態を示す正面断面図である。
図26は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針を引き抜いた状態を示す正面断面図である。
図27は、本実施形態に係る医療用器具の糸把持用穿刺針を回転軸として略180°本体を回転させた状態を示す正面断面図である。
図28は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針を再度穿刺し、縫合糸を挿入した状態を示す正面断面図である。
図29は、本実施形態に係る医療用器具の縫合糸牽引具を引き上げ、環状部で縫合糸を把持している状態を示す正面断面図である。
図30は、本実施形態に係る医療用器具のガイドワイヤーを挿入した状態を示す正面断面図である。
図31は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針を穿刺した2箇所の位置から挿入された縫合糸が腹壁から胃壁内を通り、糸把持用穿刺針を穿刺した位置から突出した状態を示す正面断面図である。
図32は、本実施形態に係る医療用器具の構成を示す斜視図である。
図33は、本実施形態に係る医療用器具の本体の構成を示す正面図である。
図34は、本実施形態に係る医療用器具の糸挿入用穿刺針の正面および断面を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に説明する医療用器具は、体表部と内部組織とを縫合するために使用される医療用縫合固定具である。この医療用縫合固定具は、具体的には、たとえば、栄養剤の補給、体液の排出等の目的で行われる経皮内視鏡下胃瘻造設術の際に、カテーテル挿入を容易にするために行われる腹壁と胃壁との固定に使用される。なお、図1〜図5および図7〜図34においては、図の上方を針の基端(後端)側とし、図の下方を針の先端側とした。
(第一の実施形態)
図1は、本実施形態に係る医療用器具の構成を示す断面図である。図1に示した医療用器具は、糸把持用穿刺針701と、ガイド材706と、固定部材708と、縫合糸牽引具710と、糸挿入用穿刺針715と、当接部材722とを組み合わせた構成である。この医療用器具は、たとえば、胃壁腹壁固定具として用いることができる。
図2a〜図2cは、糸把持用穿刺針701およびその周辺部材の構成を示す図である。図2aは、糸把持用穿刺針701をガイド材706および固定部材708と組み合わせた状態を示す断面図である。また、図2bは縫合糸牽引具710の構成を示す断面図である。また、図2cは、図2aと図2bを組み合わせた状態を示す断面図である。
図2a〜図2cに示したように、縫合糸牽引具710のロッド711およびスネア712は、糸把持用穿刺針701の中空部703に収容可能に構成されている。スライド材713をガイド材706に沿ってスライドさせることにより、中空部703内で縫合糸牽引具710が摺動し、縫合糸牽引具710の先端に設けられたスネア712を糸把持用穿刺針701の横穴704から中空部703の外部に導出させることができる。
図4は、糸把持用穿刺針701の針先端部断面を拡大した図である。糸把持用穿刺針701は金属により形成された中空の針状部材であり、鋭利な先端702を有する。鋭利な先端702を有するため、皮膚への穿刺が容易に行える。また、糸把持用穿刺針701は、その内部に形成された中空部703が先端702を貫通しない構成である。中空部703は、先端702付近に付設された横穴704にて外部に連通する構造を有している。この中空部703内で、縫合糸牽引具710が摺動可能である。糸把持用穿刺針701の外径は、具体的には、たとえば、12G以上22G以下、好ましくは19G以上21G以下とすることができる。また、中空部703にガイドワイヤーを挿入する場合、糸把持用穿刺針701の外径を、たとえば16G以上18G以下とすることができる。こうすることにより、糸把持用穿刺針701に縫合糸牽引具とガイドワイヤーを同時に容易に挿入することができ、縫合糸とともに、ガイドワイヤーの生体への挿入を好適に行うことができる。
また、糸把持用穿刺針701の全長は、特に限定されないが、たとえば、20mm以上200mm以下、好ましくは80mm以上100mm以下とすることができる。全長が短すぎると、患者の腹壁に糸把持用穿刺針701が埋もれてしまう可能性があり、長すぎると、医療用器具の操作性が低下する場合がある。
糸把持用穿刺針701において、縫合の際に縫合糸と接触する可能性のある部位は鋭利でない構成とすることができる。特に、後述するように、縫合糸が縫合糸牽引具710により把持され、糸把持用穿刺針701に引き寄せられ、保持される際に縫合糸が接触しうる横穴704は、鋭利でないように構成されている。具体的には、たとえば、横穴704のエッジにC面またはR面の面取り加工を施すことができる。
さらに、糸把持用穿刺針701の後端から横穴704へと続く中空部703には段差を有しない構成とすることができる。こうすることにより、その中空部703に縫合糸牽引具710を摺動する際、スネア712が引っ掛かりなく滑らかに摺動できる。具体的には、たとえば、中空部703の横穴704へと続く部分において、糸把持用穿刺針701の中心軸に対し、横穴704の中心軸が120〜150度の傾斜を持つ構成とすることができる。
ガイド材706は、糸把持用穿刺針701の後端に、糸把持用穿刺針701の延在方向と反対の方向に取り付けられている。ガイド材706は、後に述べる縫合糸牽引具710の後端に取り付けられたスライド材713と摺動可能に嵌合される。ガイド材706は、その肩面707にスライド材713の肩面714が当接されることにより、縫合糸牽引具710が糸把持用穿刺針701の中空部703内を摺動し、前進限度に達したことを案内する機能を有する。
さらに、このガイド材706とスライド材713は、一方向にのみ嵌合させられるため、縫合糸牽引具710が糸把持用穿刺針701の中空部703内を摺動し前進限度に達した場合、縫合糸牽引具710のスネア712を糸挿入用穿刺針715の方向に確実に広げることができる。
固定部材708は、糸把持用穿刺針701の後端に取り付けられている。固定部材708は、その肩面709が後に述べる糸挿入用穿刺針715のストッパー(不図示)の肩面に、相対回転不能に一定の方向にのみ嵌合する形状となっている。これにより、糸挿入用穿刺針715の横穴(不図示)を糸把持用穿刺針701の側に確実に配置させることができる。また、この嵌合により、糸挿入用穿刺針715の先端(不図示)を糸把持用穿刺針701の先端702の位置に対して、前方にただ一つの位置に決めることができる。
縫合糸牽引具710は、ロッド711と、それの先端に取り付けられたスネア712と、後端に取り付けられたスライド材713とを含む。ロッド711は金属製とすることができる。また、スネア712は弾性変形可能な材料にて形成される。
スネア712は、自由状態では環状であり、糸把持用穿刺針701の中空部703に収納された場合には、直線状に弾性変形する。これにより、スネア712は、横穴704から糸把持用穿刺針701の外部に押し出された際に環状体となるので、縫合糸(不図示)の糸挿入用穿刺針715の先端側から露出した部分を容易に捕捉することができる。
縫合糸牽引具710の後端に取り付けられたスライド材713は、上述したように、糸把持用穿刺針701の後端に取り付けられたガイド材706と摺動可能に嵌合し、ガイド材706の肩面707にスライド材713の肩面714を当接させることにより、縫合糸牽引具710が糸把持用穿刺針701の中空部703内の前進限度に達したことを案内する機能を有する。
図3は、糸挿入用穿刺針715の構成を示す断面図である。糸挿入用穿刺針715の形状は、図4に示した糸把持用穿刺針701と同様の形状とすることができる。糸挿入用穿刺針715は金属により形成された中空状のものであり、鋭利な先端716を有する。鋭利な先端716を有するため、皮膚への穿刺が容易に行える。また、糸挿入用穿刺針715の内部に形成された中空部717が先端716を貫通しない構成である。中空部717は、先端716付近に付設された横穴718にて外部に連通する構造を有している。この中空部717内に縫合糸を挿通させることができる。
糸挿入用穿刺針715の外径は、具体的には、たとえば、15G以上25G以下、好ましくは19G以上21G以下とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針715の穿刺抵抗を小さくすることができ、体内への穿刺が容易である。
また、糸挿入用穿刺針715の全長は、特に限定されないが、たとえば20mm以上200mm以下、好ましくは80mm以上100mm以下とすることができる。全長が短すぎると患者の腹壁に埋もれてしまう可能性があり、長すぎると医療用器具の操作性が低下する場合がある。
糸挿入用穿刺針715において、縫合糸と接触する可能性のある部位は、鋭利でない構成とすることができる。特に、縫合糸が縫合糸牽引具710により把持され、糸把持用穿刺針701に引き寄せられる際に接触するであろう糸挿入用穿刺針715の横穴718は鋭利でないようにされている。具体的には、たとえば、横穴718のエッジにC面またはR面の面取り加工を施すことができる。
さらに、糸挿入用穿刺針715の後端から横穴718へと続く中空部717は、段差がなく滑らかに縫合糸を挿入できることが好ましい。具体的には、中空部717の横穴718へと続く部分において、糸挿入用穿刺針715の中心軸に対し、横穴718の中心軸が120〜150度の傾斜を持つ構成とすることができる。
また、糸挿入用穿刺針715の後端にはストッパー719が取り付けられている。このストッパー719は、上述したように、その肩面720が糸把持用穿刺針701の後端に取り付けられた固定部材708の肩面709、相対回転不能に一方向にのみ嵌合させられる。これにより、糸挿入用穿刺針715の横穴718が糸把持用穿刺針701の方向に確実に向くようにすることができ、また、この嵌合により、糸挿入用穿刺針715の先端716を前記糸把持用穿刺針701の先端702の位置に対して、前方にただ一つの位置に決めることができる。
ストッパー719には、縫合糸を挿入するためのテーパ孔721が開けられている。このテーパ孔721の大径側は、糸挿入用穿刺針715の内径よりも大径であり、糸挿入用穿刺針715に向かうにつれて小径化し、テーパ孔721の小径側は実質的に糸挿入用穿刺針715の内径と等しくされている。これにより、このテーパ孔721と糸挿入用穿刺針715の内側との間に段差を有しない構成とすることができる。このため、糸挿入用穿刺針715の後端から、滑らかな縫合糸(不図示)の挿入を行うことが可能となる。
図5は、当接部材722の正面および平面を示す図である。当接部材722は、糸把持用穿刺針701と糸挿入用穿刺針715とを、それらの間隔を一定に保持するとともに、互いに平行となるように保持するホルダである。また、後述するように、当接部材722は、縫合時に体表部等の被縫合物に当接する。このため、縫合時に被縫合物上に医療用器具を保持することができる。よって、縫合を確実に行うことができる。糸把持用穿刺針701および糸挿入用穿刺針715は、当接部材722内を互いに独立に摺動可能である。
当接部材722の糸挿入用穿刺針715が位置される側には、切欠部723が付設されている。この切欠部723の糸挿入用穿刺針715と接する部分の幅は、たとえばφ0.25〜0.5mm程度とする。こうすることにより、糸挿入用穿刺針715を当接部材722から取り外した状態で、切欠部723からの縫合糸705を取り外し、糸把持用穿刺針701を回転軸として、容易に当接部材722を回転させることができる。また、このような構成とすることにより、後述するように、予定縫合部位を糸把持用穿刺針701の穿刺位置を一端として、これを中心に前記糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を複数個同心円状に並べることが可能となる。
この当接部材722の材料は、たとえば、透明性の高い合成樹脂材料性とすることができる。当接部材722は、後に述べるその使用方法上、腹部にメスで小切開を加えた部位の上に設置されるため、透明材料とすることにより、縫合操作をさらに確実に行うことができる。
以上のように、本実施形態では、穿刺性の高い糸挿入用穿刺針715と糸把持用穿刺針701と、これらの穿刺針を同時に穿刺することなく、使い勝手を向上させた当接部材722を提供し、さらに同心円状に複数の縫合部位を並べられる医療用器具を安定的に提供することができる。このため、経皮的内視鏡下胃瘻造設術において腹壁と胃壁とを縫合糸により縫合するための医療用器具の性能向上が可能となる。
次に、本発明による医療用器具の実際の使用方法について説明し、本発明の効果を明確にする。
図6は、本実施形態の医療用器具の使用方法をフローチャートとして示す図である。また、図7〜図16は、図6に示したステップ1〜ステップ10の各手順をそれぞれ説明する図である。
本実施形態に係る医療用器具は、生体において互いに分離した複数の予定縫合部位を縫合糸により縫合するために使用される。なお、本実施形態に係る医療用器具を使用する前に、まず患者の胃内に内視鏡を挿入し、送気を十分行い、腹部内側と胃の外壁とを密着させる。次に、内視鏡からの透過光により胃の位置を確認し、腹部皮膚を消毒、局所麻酔を行う。続いて、その部位にメスで小切開を加えておく。
まず、ステップ1において、腹壁100の小切開部位の上に本発明の当接部材722を設置する(図7)。
次に、ステップ2において、本発明の糸把持用穿刺針701を、当接部材722を通して患者の腹壁100、胃壁101に垂直に穿刺する(図8)。この時、縫合糸牽引具710は、既に糸把持用穿刺針701の中空部703内に収納され、スネア712は直線状に弾性変形した状態である。
続いて、ステップ3において、糸把持用穿刺針701の後端に取り付けられたスライド材713の肩面714を、糸把持用穿刺針701のガイド材706の肩面707に当接するまでスライドする(図9)。これにより、縫合糸牽引具710のスネア712が横穴704から糸把持用穿刺針701が穿刺されうる方向に向かって突出し、自由状態の環を形成する。
続いて、ステップ4において、糸把持用穿刺針701と同様に、当接部材722を通して患者の腹壁100および胃壁101に垂直に糸挿入用穿刺針715を穿刺する(図10)。この時、縫合糸牽引具710の環状のスネア712の内側を糸挿入用穿刺針715が通過している状態であることを内視鏡により確認する。
本実施形態においては、糸把持用穿刺針701と糸挿入用穿刺針715は、ともに、先端が貫通していない鋭利な先端を有する穿刺針である。このため、中空針や、カニューラ、外筒等の段差のある穿刺針を用いる場合に比べて、穿刺性が非常に高く、容易に生体を穿刺することができる。さらに、本実施形態においては、糸把持用穿刺針701と糸挿入用穿刺針715をそれぞれ1本ずつ操作するため、糸把持用穿刺針701と糸挿入用穿刺針715の2本同時穿刺、または2本同時操作に比べ、力、または経験、技術を必要とせず、容易に生体を穿刺する機能が果たされる。
続いて、ステップ5において、糸挿入用穿刺針715の後端から縫合糸705を押し込み、糸挿入用穿刺針715の横穴718から縫合糸705の端部を露出させる(図11)。この状態において、糸挿入用穿刺針715自体が縫合糸牽引具710の環状を形成したスネア712の内側を通過しているため、糸挿入用穿刺針715から導出された縫合糸705もスネア712の内側を通過している。
続いて、ステップ6において、縫合糸705だけをそのまま残し、糸挿入用穿刺針715のみを、生体および当接部材722から抜去する(図12)。これにより、縫合糸705がスネア712の内側を通過している状態となる。この時、一度スネア712により、縫合糸705をキャッチしてもよい。
この時点から、術者の判断により、予定縫合部位を一つのみで終了する場合にはステップ7へ進む。また、予定縫合部位を糸把持用穿刺針701の穿刺位置を一端として、これを中心に糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を複数個同心円状に並べる場合には、ステップ9に進む。
まず、予定縫合部位が一つのみであり、一箇所で縫合を終了する場合は、ステップ7において、縫合糸牽引具710のスライド材713を糸把持用穿刺針701のガイド材706に沿って、上に向かってスライドさせて、縫合糸牽引具710のスネア712を糸把持用穿刺針701の横穴704から中空部703に挿入する(図13)。これに伴い、環状を形成していたスネア712は弾性変形し、徐々に直線化され、縫合糸705が糸把持用穿刺針701の横穴704部分にて、スネア712により把持された状態になる。
この状態において、横穴704のエッジは、C面またはR面で面取り加工が施されているため、スネア712により把持された縫合糸705の糸把持用穿刺針701の横穴704との接触が必要以上に大きな力で行われることによる縫合糸705の切断が防止される。
続いて、ステップ8において、糸把持用穿刺針701、縫合糸牽引具710を含む当接部材722が、患者の腹部から離間する方向に引っ張られる(図14)。これに伴い、縫合糸牽引具710のスネア712に把持されていた縫合糸705も体外に引き出される。これにより、縫合糸705が糸挿入用穿刺針715の穿刺されていた位置から体内に侵入し、胃内部を通り、糸把持用穿刺針701の穿刺されていた位置から体外に露出された状態となる。
その後、結紮具を用いて、露出した縫合糸705のそれぞれの端部を結紮すれば、縫合糸705により胃壁101と腹壁100が固定されることとなる。
また、予定縫合部位を糸把持用穿刺針701の穿刺位置を一端として、これを中心に糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を複数個同心円状に並べる場合は、ステップ5からステップ9に進む。
ステップ9において、体内部で、縫合糸705がスネア712の内側を通過している状態を維持しつつ、体外部にある当接部材722の切欠部723より縫合糸705を当接部材722から外す(図15)。当接部材722に切欠部723が設けられているため、糸把持用穿刺針701を当接部材722に固定した状態で、縫合糸705を当接部材722から確実に除去することができる。
続いて、ステップ10において、当接部材722を糸把持用穿刺針701の穿刺位置を中心に、次の糸挿入用穿刺針715の予定穿刺位置に向かい回転させる(図16)。この回転は360度可能である。
続いて、ステップ11として、予定縫合部位を一つのみで終了する場合と同様に、当接部材722を通して糸挿入用穿刺針715を患者の腹壁100、胃壁101に垂直に穿刺するステップ4からステップ6までを、予定縫合数分繰り返す。
最後に、ステップ12として、予定縫合部位を一つのみで終了する場合と同様に、縫合糸705が糸把持用穿刺針701の横穴704部分にて、スネア712により把持された状態になるステップ7、そしてステップ8を行う。
こうすることにより、予定縫合部位を糸把持用穿刺針701の穿刺位置を一端として、これを中心に糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を複数個同心円状に並べることが実現し、複数の縫合糸705により胃壁101と腹壁100が固定されることとなる。
糸把持用穿刺針701を穿刺した状態で当接部材722を回動させることにより、糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を調節することができる。このため、簡便な操作で糸把持用穿刺針701を中心とした円弧上の複数箇所における胃壁101と腹壁100の固定化を確実に行うことができる。
以上で、本実施形態に係る医療用器具を用いた一連の縫合操作が終了する。
本実施形態では、糸把持用穿刺針701および糸挿入用穿刺針715として、先端が貫通していない鋭利な先端を有する穿刺針を用いる。このため、中空針や、カニューラ、外筒等の段差のある穿刺針を用いる場合に比べ、穿刺性は非常に高く、容易に生体を穿刺することができる。
また、糸把持用穿刺針701と糸挿入用穿刺針715をそれぞれ1本ずつ操作する。このため、糸把持用穿刺針と糸挿入用穿刺針の2本同時穿刺、または2本同時操作が必要となる従来の方法に比べ、力、または経験、技術を必要とせず、術者のストレス軽減、手術時間の短縮が可能となる。
また、糸把持用穿刺針701の穿刺位置を一端として、これを中心に予定縫合部位を糸挿入用穿刺針715の穿刺位置を複数個同心円状に並べることが可能である。このため、安全かつ確実に予定縫合部位を固定することができる。さらに、この固定に伴う患者への侵襲も非常に少なく、患者に与える負担も少ないため、患者の早期社会復帰や医療費の削減が可能となる。
以下の実施形態に示す医療用器具は、糸挿入用穿刺針(第1の穿刺針)3および糸把持用穿刺針(第2の穿刺針)4を用いた構成である。
(第二の実施形態)
図17は、本実施形態に係る医療用器具の構成を示す斜視図である。
図17に示した医療用器具1は、本体2と、本体2に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針3と、糸挿入用穿刺針3に近接して設けられた縫合糸牽引具が挿入可能な糸把持用穿刺針4とで構成されている。糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とは本体2に着脱手段により着脱可能に装着されている。
なお、本実施形態および第三の実施形態において、糸挿入用穿刺針3は第一の実施形態に記載の医療用器具(図1)における糸挿入用穿刺針715に対応する。また、糸把持用穿刺針4は、第一の実施形態に記載の医療用器具(図1)における糸把持用穿刺針701に対応する。
以下、各構成要素について説明する。
図18は、医療用器具1の本体2の構成を示す正面図である。本体2は、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とを支持する機能を有している。
本体2は、支持部材21と、支持部材21の基端側(図17の上側)に設けられた固定部材22と、先端(図17の下側)に設けられた当接部材23とを有している。
なお、本実施形態および第三の実施形態において、当接部材23は、第一の実施形態に記載の医療用器具(図1)における当接部材722に対応する。また、固定部材22は、第一の実施形態に記載の医療用器具(図1)における固定部材708に対応する。
支持部材21は、U字形状をなしており、固定部材22および当接部材23を支持する。糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4は、当接部材23を介して支持部材21に支持される。支持部材21を構成する材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等や、ステンレス鋼等の金属等の材料が挙げられる。
固定部材22は、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とを固定する機能を有している。図18に示すように、固定部材22は、それぞれ糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4を固定する第1の固定部221および第2の固定部222と、板状体223とを有し、これらが一体に形成されている。
第1の固定部221と、第2の固定部222とは、板状体223の基端側(図18の上側)の面に設けられている。また、第1の固定部221と、第2の固定部222とは、支持部材21を基準に対称となるように設けられている。
第1の固定部221および第2の固定部222は、ほぼ同じ構造を有し、それぞれの形状はほぼ直方体である。また、第1の固定部221の高さは、第2の固定部222のそれよりも高くなっている。これにより、使用者が視覚上第1の固定部221と第2の固定部222とを容易に識別できる。なお、本実施形態では、第1の固定部221と、第2の固定部222との高さが異なっているが、これらの高さが同じであってもよい。
第1の固定部221には、糸挿入用穿刺針3を挿入可能な第1の凹部224が設けられている。
第1の凹部224には、糸挿入用穿刺針3に設けられた後述する第1のハブ31の第1のフランジ(図17および図18では不図示)と係合可能な第1のフランジ係合部225が形成されている。
第1の凹部224は、円柱状にくり抜かれており、第1のフランジ係合部225を境に先端側の直径が小さく、基端側の直径が大きくなっている。
第1の凹部224は、第1の固定部221の正面側に開放されており、後述する糸挿入用穿刺針3の第1のハブ31が正面側部から挿入可能となっている。
第1のフランジ係合部225には、第1のフランジ(図17および図18では不図示)が係合することができる。第1のフランジ係合部225に、第1のフランジ(図17および図18では不図示)が係合した状態では、糸挿入用穿刺針3は、回転することも上下に動くこともない。
また、第1のフランジ係合部225に、第1のフランジ(図17および図18では不図示)を係合させずに、第1の凹部224に糸挿入用穿刺針3を基端側から挿入することもできる。この場合も、第1のフランジ(図17および図18では不図示)の外周が第1の凹部224に嵌り、固定されることにより、回転も上下に動くこともない。
また、第2の固定部222には、糸把持用穿刺針4を挿入可能な第2の凹部226が設けられている。
第2の凹部226には、糸把持用穿刺針4に設けられた後述する第2のハブ41の第2のフランジ(図17および図18では不図示)と係合可能な第2のフランジ係合部227が形成されている。
第2の凹部226は、円柱状にくり抜かれており、第2のフランジ係合部227を境に先端側の直径が小さく、基端側の直径が大きくなっている。
第2の凹部226は、第2の固定部222の正面側に開放されており、後述する糸把持用穿刺針4の第2のハブ41が正面側部から挿入可能となっている。
第1の固定部221および第2の固定部222には、糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4が着脱可能なようにそれぞれ第1の切欠き2213および第2の切欠き2223が形成されている。これにより、糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4を着脱可能にすることができる。よって、作業性を向上し、縫合を簡便な操作で確実に行うことができる。
第1の切欠き2213および第2の切欠き2223は、それぞれ固定部材22の正面側縁部から第1の固定部221および第2の固定部222を介して第1の凹部224および第2の凹部226の内部まで形成されている。
固定部材22には、支持部材21に対して固定部材22を摺動可能とする摺動部229が設けられている。これにより、支持部材21に対して固定部材22が進退自在となり、糸挿入用穿刺針3と糸把持用穿刺針4による穿刺が容易となる。
固定部材22は、後述する使用方法上、たとえば腹部等の体表部にメスで小切開を加えた部位の上に設置するため、透明性の高い樹脂材料製であることが好ましい。
当接部材23は、体表部と当接して医療用器具1を使用する際の安定性を向上する機能を有している。
図17および図18に示すように、当接部材23は、平板状であり、基端側の面には、糸挿入用穿刺針3が挿入可能な内腔を有する第1の円柱部231と、糸把持用穿刺針4が挿入可能な内腔を有する第2の円柱部232とが設けられている。
第1の円柱部231と、第2の円柱部232とは、それぞれ糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4を穿刺する際の安定性を向上させる機能を有している。
当接部材23には、糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4が当接部材23に対して着脱可能となるように、着脱手段として第1の切欠き233および第2の切欠き234が設けられている。これにより、当接部材23は糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とを着脱可能に保持することができる。よって作業性を向上することができる。
第1の切欠き233および第2の切欠き234は、それぞれ当接部材23の淵部から第1の円柱部231および第2の円柱部232を介して、円柱の内部まで形成されている。これにより、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とは、当接部材23に対して着脱可能になっている。
また、当接部材23には、支持部材21の一端が挿入可能である凹部を中央に有する凸部235が2つ設けられている。凸部235の凹部には、支持部材21の一端が挿入されている。
図19は、糸挿入用穿刺針3の正面よおび断面を示す図である。糸挿入用穿刺針3は、内部組織に縫合糸を挿入する機能を有している。
図19に示すように、糸挿入用穿刺針3は、基端側(図19の上側)に設けられた第1のハブ31と、先端側に設けられた第1の針部32とを有している。第1のハブ31および第1の針部32は、中空部33を有しており、縫合糸の通路として用いられている。
なお、本実施形態および第三の実施形態において、第1のハブ31は、第一の実施形態に記載の医療用器具におけるストッパー719(図3)に対応する。
第1のハブ31は、ほぼ円柱状であり、その先端側に第1のフランジ係合部225と係合可能な第1のフランジ311を有している。また、第1のハブ31内の中空部33は、基端側から先端側に向けて内径が漸減するようになっている。
第1の針部32は、先端側(図19の下側)に中空部33に連通する開口部を有している。第1の針部32は、基端から先端付近まで一定の外径を維持しており、その先に鋭利な針先が形成されている。
本実施形態および第三の実施形態において、第1の針部32の形状は、たとえば第一の実施形態における糸挿入用穿刺針715の形状(図4)とすることができる。こうすることにより、第1の針部32において、外部に連通する横穴が第2の針部42の方を確実に向く構成とすることができる。また、縫合糸の挿入を円滑に行うことができる。
第1の針部32の外径は、特に限定されないが、たとえば15G以上25G以下、好ましくは19G以上21G以下とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針3の穿刺抵抗を小さくすることができ、体内への穿刺が容易である。
第1の針部32の全長は、特に限定されないが、たとえば20mm以上200mm以下、好ましくは80mm以上100mm以下とすることができる。全長が短すぎると患者の腹壁に埋もれてしまう可能性があり、長すぎると医療用器具の操作性が低下する場合がある。
図20は、糸把持用穿刺針4の正面よおび断面を示す図である。糸把持用穿刺針4は、内部組織に縫合糸牽引具を挿入する機能を有している。さらに、ガイドワイヤーを挿入できる空間を形成することにより、縫合糸とともに、ガイドワイヤーの生体への挿入も可能となる。ガイドワイヤーを挿入した位置は、カテーテル挿入位置として機能することができる。
図20に示すように、糸把持用穿刺針4は、基端側(図20の上側)に設けられた第2のハブ41と、先端側に設けられた第2の針部42とを有している。第2のハブ41および第2の針部42は、中空部43を有しており、縫合糸牽引具の通路として用いられている。さらに、後述するガイドワイヤーの通路として用いることもできる。
第2のハブ41は、ほぼ円柱状であり、その先端側に第2のフランジ係合部227と係合する第2のフランジ411と、基端側に縫合糸牽引具5のハンドル部51が当接する当接部412とを有している。第2のハブ41内の中空部43は、基端側から先端側に向けて内径が漸減するようになっている。
第2のハブ41の側部には、ガイドワイヤーが挿入可能な側口413が設けられている。前記ガイドワイヤーの外径は、特に限定されないが、たとえば、0.1mm以上0.8mm以下、好ましくは0.4mm以上0.6mm以下とすることができる。外径が小さすぎるとガイドワイヤーのコシが少なく、ガイドワイヤーの操作性が低くなるおそれがある。また、外径が大きすぎると、ガイドワイヤーにより、胃内部を傷つけてしまうおそれがある。
第2の針部42は、先端側(図20の下側)に、中空部43に連通する開口部を有している。
第2の針部42の外径は、基端から先端付近まで一定の外径を維持しており、その先には鋭利な刃先が形成されている。第2の針部42の形状は、たとえば第一の実施形態における糸把持用穿刺針701の形状(図4)とすることができる。こうすることにより、第2の針部42において、外部に連通する横穴が第1の針部32の方を確実に向く構成とすることができる。また、中空部43から第2の針部42の外部にかけて縫合糸牽引具およびガイドワイヤーを円滑に摺動させることができる。
第2の針部42の外径は、特に限定されないが、たとえば、12G以上22G以下、好ましくは16G以上18G以下とすることができる。こうすることにより、糸把持用穿刺針4に縫合糸牽引具とガイドワイヤーを同時に容易に挿入することができ、縫合糸とともに、ガイドワイヤーの生体への挿入が可能となる。
第2の針部42の全長は、特に限定されないが、たとえば、20mm以上200mm、好ましくは80mm以上100mm以下とすることができる。全長が短すぎると、患者の腹壁に埋もれてしまうおそれがある。また、全長が長すぎると、医療用器具の操作性が低下する場合がある。
図21は、縫合糸牽引具5の構成を示す正面図である。図21に示すように、縫合糸牽引具5は、棒状部52と、棒状部52の基端側(図21の上側)に設けられたハンドル部51と、先端側に設けられた環状部53とを有している。縫合糸牽引具5は、糸挿入用穿刺針3から挿入された縫合糸を内部組織内で把持して、体表部まで牽引する機能を有する。これにより、容易に体表部と内部組織とを縫合することができる。
なお、本実施形態および第三の実施形態縫合糸牽引具5は、第一の実施形態に記載の医療用器具における縫合糸牽引具710(図1)に対応する。また、管状部53は、第一の実施形態に記載の医療用器具におけるスネア712(図2b)に対応する。
ハンドル部51は、ほぼ直方体であり、その内面はほぼ円柱状にくり抜かれている。ハンドル部51は、糸把持用穿刺針4の第2のハブ41の当接部412の基端面に当接できるようになっている。
棒状部52の外径は、糸把持用穿刺針4の内径よりも小さく構成される。棒状部52の外径は、特に限定されないが、たとえば、0.3mm以上0.8mm以下、好ましくは0.5mm以上0.6mm以下とすることができる。外径が小さすぎると、縫合糸牽引具5の強度が充分に確保されない場合がある。また、外径が大きすぎると、ガイドワイヤーを挿入するのが困難となる場合がある。
棒状部52の長さは、特に限定されないが、たとえば、45mm以上225mm以下、好ましくは、105mm以上125mm以下とすることができる。長さが短すぎると、環状部53が糸把持用穿刺針4の針部42の先端側(図20の下側)から充分に突出されず、環状部53による縫合糸の把持ができない恐れがある。また、長すぎると、糸挿入用穿刺針3の第1の針部32の先端側(図19の下側)から出てくる縫合糸が縫合糸牽引具5の環状部53内に確実に挿通されなくなる可能性がある。
なお、糸把持用穿刺針4に縫合糸牽引具5とガイドワイヤーを同時に挿入した場合の操作性は、棒状部52の外径およびガイドワイヤーの外径と、糸把持用穿刺針4の内径とのクリアランス(間隙距離)によるが、前記クリアランスを、たとえば0.05mm以上0.30mm以下になるように糸把持用穿刺針4の内径と、縫合糸牽引具5の棒状部52の外径およびガイドワイヤーの外径とを組み合わせることができる。こうすることにより、操作性を確実に向上させることができる。
環状部53は、糸把持用穿刺針4内では変形してほぼ直線状となり、糸把持用穿刺針4から突出した状態では環状となる。これにより、縫合糸の把持を容易に行うことができる。したがって、環状部53を形成する材料は、後述するような弾性を有するものとすることが好ましい。
図17および図21に示したように、医療用器具は、糸把持用穿刺針4より突出した状態において、糸挿入用穿刺針3の中心軸またはその延長線が、環状部53の内部を貫通するように形成されている。これにより、縫合糸を確実に把持することができる。
環状部53の直径は、特に限定されないが、糸挿入用穿刺針3と糸把持用穿刺針4の間隔をL(mm)とした場合、環状部53の直径が、たとえば、1.5L以上3.0L以下(mm)となるように形成することができる。こうすることにより、縫合糸をさらに確実に把持しておくことができる。
環状部53の線径は、特に限定されないが、たとえば、0.1mm以上0.3mm以下、好ましくは、0.14mm以上0.24mm以下とすることができる。線径が小さすぎると、粘性の高い体液が環状部53に付着した場合、変形状態(直線状態)と環状状態への変形が困難となる場合がある。また、線径が大きすぎると、糸把持用穿刺針4内への縫合糸牽引具5とガイドワイヤーの同時挿入ができなくなるおそれがある。
次に、医療用器具1の使用方法の一例について図22〜図31に基づいて説明する。図22〜図31は、医療用器具1の使用方法を説明する正面断面図である。医療用器具1は、下記[1]〜[11]の手順に従って使用することができる。
[1]医療用器具1を使用する前に、まず患者の胃内に内視鏡を挿入し、送気を十分行い、腹壁100と胃壁101とを密着させる。次に、内視鏡からの透過光により胃の位置を確認し、腹部皮膚を消毒、局所麻酔を行う。続いて、その部位にメスで小切開を加えておく。
[2]本体2の当接部材23を腹壁100に当接させて、糸把持用穿刺針4を小切開部位から患者の腹壁100および胃壁101にほぼ垂直に穿刺する(図22)。
[3]縫合糸牽引具5のハンドル部51を操作し、ハンドル部51の下端が第2のハブ41に当接するまで、縫合糸牽引具5を、糸把持用穿刺針4の中空部43に挿入する。これにより、縫合糸牽引具5の環状部53が糸把持用穿刺針4の先端から突出し、環状に広がる(図23)。なお、縫合糸牽引具5を糸把持用穿刺針4に挿入するにあたっては、縫合糸牽引具5を予め糸把持用穿刺針4の内部に収納しておいて上記[2]の操作を行ってもよい。
[4]次に、糸挿入用穿刺針3を、固定部材22、当接部材23を通して患者の腹壁および胃壁にほぼ垂直に穿刺する。この際、縫合糸牽引具5の環状部53の内側を、糸挿入用穿刺針3が通過するようにする(図24)。
本使用方法では、糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4を同時に穿刺する必要がない。穿刺針を別々に穿刺できるので、2本同時に穿刺する場合と比較して容易に穿刺できる。
[5]糸挿入用穿刺針3の中空部33に縫合糸102を挿入し、糸挿入用穿刺針3の先端から縫合糸102を突出させる(図25)。この際、糸挿入用穿刺針3は、環状部53の内部を通過しているので、縫合糸102も環状部53の内部を通過するようになる。
[6]次に、本体2および糸把持用穿刺針4をそのままの状態に維持しつつ、糸挿入用穿刺針3のみを、固定部材22から基端側(図26の上側)に引き抜く(図26)。この際、縫合糸102の突出部を長くしておくことができる。こうすれば、縫合糸102が引き抜かれないようにすることができる。また、縫合糸102を送り込みながら糸挿入用穿刺針3を引き抜くこともできる。これにより、縫合糸102が環状部53の内側を通過している状態となる。この際、縫合糸牽引具5を引き上げ、縫合糸102が把持されるのを確認することができる。
[7]糸把持用穿刺針4を回転軸として、本体2をほぼ180°回転させる(図27)。これにより、固定部材22の第1の切欠き2223を通って縫合糸102が固定部材22および当接部材23の外に外れる。なお、縫合糸102が、環状部53の内側から抜けないように注意する。
[8]回転後、再度糸挿入用穿刺針3を、固定部材22、当接部材23を通して患者の腹壁および胃壁にほぼ垂直に穿刺する。この際、図25の作業と同様に縫合糸牽引具5の環状部53の内側を、糸挿入用穿刺針3が通過するようにする。そして、糸挿入用穿刺針3の中空部33に縫合糸102を挿入し、糸挿入用穿刺針3の先端から縫合糸102を突出させる(図28)。これにより、2本の縫合糸102が環状部53の内側に配置された状態になる。
[9]次に、縫合糸牽引具5を上方に少し引き上げる。この際、2本の縫合糸102は環状部53の内側に配置されているので、縫合糸牽引具5を引き上げることにより、糸把持用穿刺針4の内腔に環状部53が入り込んで2本の縫合糸102が把持される(図29)。
[10]そして、糸把持用穿刺針4のハブ41の側口413から、ガイドワイヤー103を挿入する(図30)。なお、ガイドワイヤーを挿入する操作は、糸把持用穿刺針4を穿刺した後であればその順序は特に限定されない。
[11]縫合糸牽引具5で2本の縫合糸102を把持し、糸挿入用穿刺針3を本体2に付けた状態のまま、本体2を腹壁100から引き上げる。これらの操作により、糸挿入用穿刺針3を挿入した2箇所の穿刺位置から挿入された縫合糸102が腹壁100から胃壁101内を通り、糸把持用穿刺針4を穿刺した位置から突出した状態となる(図31)。さらに、糸把持用穿刺針4を穿刺した位置にはガイドワイヤー103が挿入された状態となる。そして、縫合糸102の端部を結紮して腹壁100と胃壁101とを固定する。
以上のように、医療用器具1は、糸挿入用穿刺針3および糸把持用穿刺針4が本体2に対して着脱可能であるため、これを使用することにより、簡便な操作で腹壁100と胃壁101とを2本の縫合糸102で確実に縫合することが可能となる。
なお、以上においては、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4とを別々に穿刺する場合について説明したが、医療用器具1の使用方法はこれに限定されず、穿刺針2本を同時に穿刺することもできる。その場合、糸挿入用穿刺針3の第1のフランジ311と、第1の固定部221の第1のフランジ係合部225とを係合し、糸把持用穿刺針4の第2のフランジ411と、第2の固定部222の第2のフランジ係合部227とを係合して用いることができる。
(第三の実施形態)
第一または第二の実施形態に記載の医療用器具は、糸挿入用穿刺針を複数有する構成とすることもできる。以下、第二の実施形態に記載の医療用器具が2本の穿刺針を有する場合を例に、説明する。
図32は、本実施形態に係る医療用器具11の構成を示す斜視図である。図32に示すように、本体2と、本体2に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針3および糸挿入用穿刺針(第3の穿刺針)6と、糸挿入用穿刺針3および糸挿入用穿刺針6に近接して設けられ、縫合糸牽引具が挿入可能な糸把持用穿刺針4とで構成されている。糸挿入用穿刺針3および糸挿入用穿刺針6と、糸把持用穿刺針4とは本体2に着脱手段により着脱可能に装着されている。
この医療用器具11は、第二の実施形態に記載の医療用器具1(図17)の本体2に、さらに糸挿入用穿刺針6が着脱できるようなっている構成である。それ以外の各構成要素については、たとえば上述した医療用器具1のものをそのまま適用することができる。
以下、医療用器具11の各構成要素について、第二の実施形態に記載の医療用器具1と異なる点を中心に説明する。
図33は、医療用器具11の本体2の構成を示す正面図である。本体2は、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4と、糸挿入用穿刺針6を支持する機能を有している。
本体2は、支持部材21と、支持部材21の基端側(図33の上側)に設けられた固定部材22と、先端(図33の下側)に設けられた当接部材23とを有している。
固定部材22は、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4と、糸挿入用穿刺針6を固定する機能を有している。
図33に示すように、固定部材22は、糸挿入用穿刺針3、糸把持用穿刺針4および糸挿入用穿刺針6を固定する第1の固定部221、第2の固定部222および第3の固定部2231と、板状体223とを有し、これらが一体に形成されている。
第1の固定部221と、第2の固定部222と、第3の固定部2231とは、板状体223の基端側(図33の上側)の面にほぼ一直線上に設けられている。
第1の固定部221、第2の固定部222および第3の固定部2231は、ほぼ同じ構造を有し、それぞれの形状は、ほぼ直方体である。また、第1の固定部221と第3の固定部2231の高さは、第2の固定部222のそれよりも高くなっている。これにより、視覚上各固定部を容易に識別することができる。なお、本実施形態では、第1の固定部221および第3の固定部2231の高さと第2の固定部222の高さとが異なっているが、同じ高さとしてもよい。
第3の固定部2231には、糸挿入用穿刺針6を挿入可能な第3の凹部2234が設けられている。
第3の凹部2234には、糸挿入用穿刺針6に設けられた後述する第3のハブ61の第3のフランジ(図32および図33では不図示)と係合可能な第3のフランジ係合部2232が形成されている。
第3の凹部2234は、円柱状にくり抜かれており、第3のフランジ係合部2232を境に先端側の直径が小さく、基端側の直径が大きくなっている。第3の凹部2234は、第3の固定部2231の正面側に開放されており、後述する糸挿入用穿刺針6の第3のハブ61が正面側部から挿入可能となっている。
第3のフランジ係合部2232には、図34を用いて後述する第3のフランジ611が係合することができる。第3のフランジ係合部2232に、第3のフランジ611が係合した状態では、糸挿入用穿刺針6は、回転することも上下に動くこともない。
また、第3のフランジ係合部2232に、第3のフランジ611を係合させずに、第3の凹部2234に糸挿入用穿刺針6を基端側から挿入することもできる。この場合も、第3のフランジ611の外周が第3の凹部2234に嵌り、規制されることにより、回転も上下に動くこともない。
第3の固定部2231には、糸挿入用穿刺針6が着脱可能なように第3の切欠き2233が形成されている。これにより、糸挿入用穿刺針6を着脱可能することができる。このため、作業性を向上することができる。第3の切欠き2233は、固定部材22の正面側淵部から第3の固定部2231を介して第3の凹部2234の内部まで形成されている。
図32および図33に示したように、当接部材23は平板状であり、基端側の面に、糸挿入用穿刺針3が挿入可能な内腔を有する第1の円柱部231と、糸把持用穿刺針4が挿入可能な内腔を有する第2の円柱部232と、糸挿入用穿刺針6が挿入可能な内腔を有する第3の円柱部2335とが設けられている。当接部材23は、体表部と当接して医療用器具11を使用する際の安定性を向上する機能を有している。
第1の円柱部231と、第2の円柱部232と、第3の円柱部2335とは、それぞれ糸挿入用穿刺針3、糸把持用穿刺針4および糸挿入用穿刺針6を穿刺する際の安定性を向上させる機能を有している。
糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4と、糸挿入用穿刺針6とが当接部材23に対して着脱可能となるように、当接部材23には、着脱手段として第1の切欠き233、第2の切欠き234および第3の切欠き236が設けられている。これにより、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4と、糸挿入用穿刺針6とを着脱可能することができ、それによって作業性を向上することができる。
第1の切欠き233、第2の切欠き234および第3の切欠き236は、それぞれ当接部材23の淵部から第1の円柱部231、第2の円柱部232および第3の円柱部2335を介して、円柱の内部まで形成されている。これにより、糸挿入用穿刺針3と、糸把持用穿刺針4と、糸挿入用穿刺針6とは、当接部材23に対して着脱可能になっている。
図34は、糸挿入用穿刺針6の正面および断面を示す図である。図34に示すように、糸挿入用穿刺針6は、基端側(図34の上側)に設けられた第3のハブ61と、先端側に設けられた第3の針部62とを有している。糸挿入用穿刺針6は、糸挿入用穿刺針3と同様に内部組織に縫合糸を挿入する機能を有している。
第3のハブ61および第3の針部62は、中空部63を有しており、縫合糸の通路として用いられている。第3のハブ61内の中空部63は、基端側から先端側に向けて内径が漸減するようになっている。
なお、本実施形態において、第3のハブ61は、第1の実施形態に記載の医療用器具におけるストッパー719(図3)に対応する。
第3のハブ61は、ほぼ円柱状であり、その先端側に第3のフランジ係合、部2232と係合可能な第3のフランジ611を有している。
第3の針部62は、先端側(図34の下側)に中空部63に連通する開口部を有している。また、第3の針部62は、基端から先端付近まで一定の外径を維持しており、その先に鋭利な針先が形成されている。
第3の針部62の構成には、第1の針部32の構成を適用することができる。また、第3の針部62の形状は、たとえば第一の実施形態における糸挿入用穿刺針715の形状(図4)とすることができる。こうすることにより、第3の針部62において、外部に連通する横穴が第2の針部42の方を確実に向く構成とすることができる。また、縫合糸の挿入を円滑に行うことができる。
第3の針部62の外径は、特に限定されないが、たとえば、15G以上25G以下、好ましくは19G以上21G以下とすることができる。こうすることにより、糸挿入用穿刺針6の穿刺抵抗を小さくすることができる。このため、体内への穿刺が容易である。
第3の針部62の全長は、特に限定されないが、たとえば、20mm以上200mm以下、好ましくは80mm以上100mm以下とすることができる。全長が長すぎると、患者の腹壁に埋もれてしまう可能性がある、また、全長が長すぎると、医療用器具11の操作性が低下する場合がある。
次に、医療用器具11による他の使用方法について説明する。上述したように、医療用器具11は、基本的には医療用器具1の各構成要素がそのまま適用されており、医療用器具1の本体2に、さらに糸挿入用穿刺針6が着脱できるように構成されている。このため、医療用器具11を使用する際には、医療用器具1の使用手順をとり入れることができる。そこで、以下、上記[1]〜[11]で説明した手順と異なる点を中心に説明する。
[12]まず、上述した医療用器具1による[1]〜[5]までの操作を同様に実施する。
[13]次に、本体2と糸挿入用穿刺針3と糸把持用穿刺針4とは、そのままの状態で、縫合糸牽引具5のハンドル部51を操作し、縫合糸牽引具5を180°回転する。なお、縫合糸102が、環状部53の内側から抜けないように注意する。この際、縫合糸102が引き抜かれないようにするために、縫合糸102の突出部を長くしておくことができる。
[14]次に、糸挿入用穿刺針6を、固定部22、当接部23を通して患者の患者の腹壁および胃壁にほぼ垂直に穿刺する。この際、図25の作業と同様に、縫合糸牽引具5の環状部53の内側を、糸挿入用穿刺針6が通過するようにする。そして、糸挿入用穿刺針6の中空部63に縫合糸102を挿入し、糸挿入用穿刺針6の先端から縫合糸102を突出させる。これにより、2本の縫合糸102が環状部53の内側に配置された状態になる。
本使用方法でも、糸挿入用穿刺針3、糸把持用穿刺針4および糸挿入用穿刺針6を同時に穿刺する必要がない。すなわち、穿刺針を別々に穿刺できるので、2本同時に穿刺する場合と比較して容易に穿刺できる。
[15]次に、縫合糸牽引具5を上方に少し引き上げる。この際、2本の縫合糸102は環状部53の内側に配置されていたので、縫合糸牽引具5を引き上げることにより、糸把持用穿刺針4の内腔に環状部53が入り込んで2本の縫合糸102が把持される。
[16]そして、糸把持用穿刺針4のハブ41の側口413から、ガイドワイヤー103を挿入する。なお、ガイドワイヤーを挿入する操作は、糸把持用穿刺針4を穿刺した後であればその順序は特に限定されない。
[17]縫合糸牽引具5で2本の縫合糸102を把持し、糸挿入用穿刺針3と糸挿入用穿刺針6を本体2に付けた状態のまま、本体2を腹壁100から引き上げる。これらの操作により、糸挿入用穿刺針3と糸挿入用穿刺針6を挿入した2箇所の穿刺位置から挿入された縫合糸102が腹壁100から胃壁101内を通り、糸把持用穿刺針4を穿刺した位置から突出した状態となる。さらに、糸把持用穿刺針4を穿刺した位置にはガイドワイヤー103が挿入された状態となる。そして、縫合糸102の端部を結紮して腹壁100と胃壁101とを固定する。
以上のように、医療用器具11を使用することにより、腹壁100と胃壁101とを2本の縫合糸102でより一層確実に縫合することが可能となる。
以上、本発明の医療用器具を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
たとえば、本体の支持部材、固定部材、当接部材等の形状、着脱手段の構造、各穿刺針のハブの形状等については、上述した実施形態と異なるものであってもよい。具体的には、たとえば、ハンドル部51の上面に、前記ガイドワイヤー103が挿入可能な孔が設けられていてもよい。前記孔が、第2のハブ41内の中空部43に連通していれば、糸把持用穿刺針4への縫合糸牽引具5とガイドワイヤー103とを同時に容易に挿入することができる。なお、ハンドル部51に設けられるガイドワイヤー103が挿入可能な孔は、ハンドル部51のどの部分に形成されていてもよい。
また、糸把持用穿刺針4または糸把持用穿刺針701は、2つ以上のルーメンを有するものでもよく、この場合、縫合糸牽引具5とガイドワイヤー103を糸把持用穿刺針4への同時挿入を容易に達成できる。
また、生体への使用箇所も腹壁と胃壁とに限定されず、たとえば、各内蔵壁、血管、神経等の腹壁への吊上げ等にも用いることができる。
【図1】




【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鋭利な先端を有し、前記先端が貫通していない中空の穿刺針であって、先端部付近に横穴を有し、その中空部に縫合糸が挿通されて使用される糸挿入用穿刺針、
(b)前記糸挿入用穿刺針の横方向に略平行に並び、鋭利な先端を有し、前記先端が貫通していない中空の穿刺針であって、先端部付近に横穴を有し、
その中空部に前記縫合糸が挿通されて使用される糸把持用穿刺針、
(c)前記糸把持用穿刺針の前記中空部に摺動可能に挿入された縫合糸牽引具、
(d)前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針の先端位置を相対的に決める固定部材、および
(e)前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を支持し、被縫合物に当接する当接部材、
を有することを特徴とする医療用器具。
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記縫合糸牽引具は、その先端が弾性変形可能な材料にて形成されたスネアを有し、自由状態では前記糸挿入用穿刺針の延長線が前記スネアの内部を通過するように延びるとともに、弾性変形状態では前記糸把持用穿刺針の前記中空部に収納可能であることを特徴とする医療用器具。
【請求項3】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記当接部材が、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を互いに略平行に支持するものであることを特徴とする医療用器具。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記固定部材は、前記糸把持用穿刺針に設けられ、前記糸把持用穿刺針の先端位置に対する前記糸挿入用穿刺針の先端位置を任意の位置に決めることができるように構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記当接部材および前記固定部材から前記縫合糸を取り外せるように構成された切欠部が前記当接部材および前記固定部材に設けられたことを特徴とする医療用器具。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針の前記横穴のエッジおよび前記糸把持用穿刺針の前記横穴のエッジが、C面取りまたはR面取りされたものであることを特徴とする医療用器具。
【請求項7】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針と前記糸把持用穿刺針のうちの少なくとも一方は、前記当接部材に着脱可能に支持されていることを特徴とする医療用器具。
【請求項8】
請求の範囲第1項に記載の医療用器具において、複数の前記糸挿入用穿刺針を有し、前記糸把持用穿刺針は、複数の前記糸挿入用穿刺針のそれぞれに近接して設けられたことを特徴とする医療用器具。
【請求項9】
体表部と内部組織とを縫合するために用いられる医療用器具であって、
本体と、
前記本体に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針と、
前記糸挿入用穿刺針に近接して設けられ、縫合糸牽引具を挿入可能な糸把持用穿刺針と、
を有し、
前記糸把持用穿刺針は、鋭利な先端と、前記先端よりも基端側に設けられた開口部と、を有し、前記開口部から前記糸把持用穿刺針の外部へ前記縫合糸牽引具を導出可能に構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項10】
体表部と内部組織とを縫合するために用いられる医療用器具であって、
本体と、
前記本体に支持され、縫合糸を挿入可能な糸挿入用穿刺針と、
前記糸挿入用穿刺針に近接して設けられ、縫合糸牽引具を挿入可能な糸把持用穿刺針と、
を有し、
前記糸挿入用穿刺針と前記糸把持用穿刺針のうち少なくとも一方は、前記本体に対し着脱可能に装着されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項11】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記本体は、前記糸挿入用穿刺針の先端または前記糸把持用穿刺針の先端を所定の位置に固定する固定部材と、前記固定部材を支持する支持部材と、を有することを特徴とする医療用器具。
【請求項12】
請求の範囲第11項に記載の医療用器具において、前記本体は、さらに前記支持部材の先端側に、前記体表部と当接し、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針を支持する当接部材を有することを特徴とする医療用器具。
【請求項13】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記糸把持用穿刺針は、さらにガイドワイヤーを挿入可能に構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項14】
請求の範囲第13項に記載の医療用器具において、前記ガイドワイヤーの外径が0.1mm以上0.8mm以下であることを特徴とする医療用器具。
【請求項15】
請求の範囲第11項に記載の医療用器具において、前記固定部材は、前記糸挿入用穿刺針または前記糸把持用穿刺針を前記本体から着脱可能とする切欠部を有することを特徴とする医療用器具。
【請求項16】
請求の範囲第12項に記載の医療用器具において、前記当接部材は、前記糸挿入用穿刺針または前記糸把持用穿刺針を前記本体から着脱可能とする切欠部を有することを特徴とする医療用器具。
【請求項17】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針は、独立に穿刺可能に構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項18】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記糸挿入用穿刺針および前記糸把持用穿刺針が穿刺され、かつ前記本体が前記体表部に当接した状態で、前記糸挿入用穿刺針を単独で除去できるように構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項19】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記糸把持用穿刺針を回転軸として前記本体が回転可能に構成されたことを特徴とする医療用器具。
【請求項20】
請求の範囲第10項に記載の医療用器具において、前記複数の前記糸挿入用穿刺針を有し、前記糸把持用穿刺針は、複数の前記糸挿入用穿刺針のそれぞれに近接して設けられたことを特徴とする医療用器具。

【国際公開番号】WO2004/075761
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502918(P2005−502918)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002253
【国際出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(598111216)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】