説明

医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法及び医療用薬液ポンプ

【課題】使用する薬液や液体流路に対して制御用の閉塞圧を個別に設定して、閉塞圧を精度高く管理することができるとともに、安全性を確保できる医療用薬液ポンプの閉塞圧較正方法を提供する。
【解決手段】薬液ポンプから患者に到る薬液流路を設定する流路設定行程S102と、薬液を患者に投与する前に、薬液を所定の流量で薬液流路に流動させる薬液流動行程S108と、薬液流動行程中に、薬液の流動圧力を計測する流動圧力計測行程S109と、流動圧力計測行程において得られた流動圧力と、あらかじめ設定された圧力値とを加えて制御用閉塞圧力を設定する制御用閉塞圧力設定行程S112とを含み、制御用閉塞圧力を設定した後に、患者に対する薬液の投与を開始するとともに、薬液投与中に計測された流動圧力が、制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、医療用薬液ポンプの閉塞圧較正方法に関する。詳しくは、薬液投与前に薬液流路等の閉塞圧を精度高く設定して薬液投与の安全性を高めることができる医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法及び医療用薬液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を精度高く患者に投与するために、医療用薬液ポンプが用いられることが多い。医療用薬液ポンプとして、薬液チューブを軸方向に順次押圧して薬液を流動させる輸液ポンプや、シリンジ内に薬液を収容し、押し子を押動させることにより薬液を流動させるシリンジポンプが知られている。上記シリンジポンプは、シリンジ外筒をシリンジポンプの所定位置に固定するとともに、押し子を、スライダを介して上記シリンジ外筒に押し込むように押動させることにより、シリンジ外筒内の薬液を、輸液チューブ等の薬液流路内で流動させるように構成されている。
【0003】
上記医療用薬液ポンプにおいては、薬液の吐出量を精度高く管理することが求められるばかりでなく、吐出圧力を管理する必要がある。
【0004】
すなわち、上記薬液流路の途中で閉塞が生じて薬液が投与できなかったり、患者に対する注入圧力が高すぎると、患者に障害を与える等の重大な事態が生じることになる。このため、上記薬液流路等の圧力を検出して、所定の値を越えた場合に、警報を発生させたり、ポンプを停止させたりするシステムが採用されることが多い。
【0005】
また、シリンジポンプにおいては、シリンジ外筒内の圧力を直接検出することは困難である。このため、上記押し子の押動力をバネや圧力歪計等を用いて計測し、上記シリンジ内の圧力を間接的に監視して、輸液流路の閉塞等を検出するように構成されている。そして、押し子を押動させる押動力が所定範囲を越えた場合に、警報を出力したり、シリンジポンプの作動を停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開平7−289638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許公報に記載されている発明においては、シリンジ内の圧力が所定の値のときの押し子に対する押圧力を計測してスケール係数を求め、このスケール係数から閉塞圧を求めるように構成されている。上記スケール係数は、使用されるシリンジの形式によって異なるため、シリンジポンプの制御装置のメモリ内にシリンジの形式によって変わるパラメータを記憶しておき、上記パラメータを用いて種々の形式のシリンジに対応した閉塞圧を設定できるように構成している。
【0008】
ところが、押し子のシリンジ外筒に対する上記押動力は、シリンジの大きさやメーカによって異なるばかりでなく、シリンジ外筒内に充填された薬液の種類や押し子の押動速度によっても異なる。また、薬液が充填されたシリンジにおいては、保存温度や保存期間によって、ガスケットとシリンジ外筒との摺動抵抗(摩擦力)が変化し、押し子の押動力の値が変わる。したがって、種々のシリンジや薬液に対応した押動力をテーブル化して適用しても、シリンジ外筒内の圧力を精度高く制御することはできない。
【0009】
また、薬液流路を構成する輸液チューブを蠕動運動機構やローラ等によって軸方向に順次押圧することにより薬液を流動させる輸液ポンプにおいても、輸液ポンプの吐出口から患者に到る薬液流路の長さがまちまちであり、途中に設けられる括栓の種類や数も異なる。また、薬液の粘度等によって流動抵抗も大きく変化する。このため、輸液ポンプにおける従来の閉塞圧計測方法では、正確な閉塞圧を求めるのは困難である。
【0010】
警報を発し、ポンプを停止させる閉塞圧として設定される圧力が高いと、異常警報が出力されるまでに長時間が経過して、その間薬液を投与できなかったり、多量の薬液が高圧で患者に投与されてしまうことも考えられる。このため、安全性を高めるために制御閉塞圧を低めに設定することが多かった。ところが、制御閉塞圧を低く設定すると、液体流路や薬液の種類によっては、警報が発せられたりポンプが停止したりする頻度が高くなり、かえって患者に負担を強いることになる。
【0011】
本願発明は、上記従来の問題を解決するために案出されたものであり、患者に薬液を投与する直前に、使用する薬液や液体流路に対して制御用の閉塞圧を個別に設定して、閉塞圧を精度高く管理することができるとともに、安全性を確保できる医療用薬液ポンプの閉塞圧較正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に記載した発明は、患者に薬液を投与するための医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法であって、上記薬液ポンプから患者に到る薬液流路を設定する流路設定行程と、上記薬液を患者に投与する前に、上記薬液を所定の流量で上記薬液流路に流動させる薬液流動行程と、上記薬液流動行程中に、上記薬液の流動圧力を計測する流動圧力計測行程と、上記流動圧力計測行程において得られた流動圧力と、あらかじめ設定された圧力値とを加えて制御用閉塞圧力を設定する制御用閉塞圧力設定行程とを含み、上記制御用閉塞圧力を設定した後に、患者に対する上記薬液の投与を開始するとともに、薬液投与中に計測された流動圧力が、上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させるように構成されたものである。
【0013】
本願発明が適用される医療用薬液ポンプの種類は特に限定されることはなく、輸液チューブ等の種々の薬液流路を介して患者に薬液を投与する種々の医療用薬液ポンプに適用することができる。たとえば、蠕動機構等によって樹脂性のチューブを軸方向に順次押圧することにより、薬液を流動させる輸液ポンプや、シリンジの押し子を押動させることにより、薬液を流動させるシリンジポンプに本願発明を適用できる。本願発明に係る閉塞圧較正方法は、実際に使用される輸液チューブやシリンジ等に対して、薬液を患者に投与する直前に行うことができる。
【0014】
上記流路設定行程は、輸液ポンプの吐出口から患者までの実際の薬液流路を設けることにより行われる。具体的には、括栓等を備える輸液チューブをセットすることにより行われる。
【0015】
本願発明では、上記薬液を患者に投与する前に、上記薬液を所定の流量で上記薬液流路に流動させる薬液流動行程が行われる。
【0016】
通常、薬液投与前に、上記薬液を輸液チューブ等から構成される薬液流路に満たすためのプライミング操作が行われる。請求項2に記載した発明のように、上記流動圧力計測行程を、上記薬液を上記薬液流路に満たすプライミング操作時に行うように構成するのが望ましい。
【0017】
通常、プライミング操作は、薬液を早送りすることにより行われる。しかしながら、上記流動圧力計測行程を上記プライミング操作時に行う場合は、請求項3に記載した発明のように、上記流動圧力計測行程を、患者に薬液を投与するのと同じ速度で上記薬液を流動させることにより行うのが好ましい。これにより、患者に薬液を投与する場合と同じ条件で閉塞圧を設定することが可能となり、制御される閉塞圧を精度高く管理することが可能となる。
【0018】
なお、実際の薬液投与速度でプライミングを行うのは流動圧力を計測する間のみで足りる。流動圧力を計測していない時は、従来と同様に、早送りモードでプライミングを行うことができる。
【0019】
また、請求項4に記載した発明のように、上記流動圧力計測行程において、薬液の異なる流速に対する流動圧力を計測することができる。これにより、一度の薬液投与において複数の薬液投与速度を用いる場合等に対応することができる。
【0020】
請求項5に記載した発明のように、上記流動圧力計測行程において、薬液の流動開始から所定時間経過した後、又は所定流量を流動させた後に上記流動圧力を計測するのが好ましい。
【0021】
薬液ポンプ始動開始時には、薬液が薬液流路の全域に満たされておらず、また、ポンプ等の機械的抵抗等が定常時より大きくなる傾向がある。特に、シリンジポンプにおいては、押し子の押動開始時の押動力は、一定速度で押動する定常時と大きくなる。上記流動圧力の計測を、薬液の流動開始から所定時間経過した後、又は所定流量を流動させた後に行うことにより、実際に薬液を投与する際の流動圧力を精度高く計測することができる。
【0022】
また、請求項6に記載した発明のように、上記薬液が薬液流路の先端部から流出した以降の流動圧力を計測するのが好ましい。すなわち、薬液流路の先端部から薬液が吐出されるのを確認した後に流動圧力を計測するのである。これにより、薬液を薬液流路の全域を流動させた状態で流動圧力を計測することが可能となり、流動圧力の計測精度を高めることができる。
【0023】
計測された流動圧力に、薬液の種類や流動速度等を勘案して制御用の流動圧力が設定される。すなわち、上記流動圧力計測行程において得られた流動圧力と、あらかじめ設定された圧力値とを加えて制御用閉塞圧力が設定される。上記加算される流動圧力は、薬液の流動速度(投与速度)、薬液の種類、薬液流路の長さ等に応じてあらかじめテーブル化して記憶手段内に格納しておき、制御用閉塞圧を設定する際に読み出して用いるように構成するのが望ましい。
【0024】
上記制御用閉塞圧力を設定した後に、輸液チューブ等の先端を患者に接続して、上記薬液の投与が開始される。上記薬液の投与中は、閉塞圧の較正の際と同様に薬液の流動圧力が計測される。そして、薬液投与中に計測された流動圧力が、上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させるように構成される。これにより、閉塞等が生じたことを迅速に検出して警報を発することが可能となる。
【0025】
請求項7に記載した発明は、上記流動圧力計測行程において検出された流動圧力が、使用される薬液流路及び/又は薬液に応じてあらかじめ設定された適正流動圧力範囲内であるかどうかを判断する流路異常検出行程を含み、計測された上記流動圧力が上記適正流動圧力範囲外である場合に、流路異常警報を出力するように構成されたものである。
【0026】
上述したように、本願発明は、実際の薬液流路における薬液の流動圧力を精度高く検出し、閉塞圧力を精度高く設定することを目的としている。上記薬液の流動圧力は、薬液の種類、上記薬液流路の長さや途中の配管部材の種類等によって異なるものの、ある一定の範囲内にある。したがって、本願発明に係る流動圧力計測行程中に計測された流動抵抗が上記適正な流動圧力の範囲外となる場合、薬液流路に何らかの異常があることになる。請求項7に記載した発明は、本願発明における流動圧力計測行程を利用して、薬液流路の異常を検出するものである。
【0027】
上記適正流動圧力の範囲は、配管の長さ等に応じて記憶装置内に記憶させておき、上記流路異常検出行程において読み出して用いるように構成するのが望ましい。上記流路異常検出行程によって、患者に薬液を投与する前に、薬液流路の異常を検出することが可能となり、薬液投与の安全性を高めることができる。
【0028】
請求項8に記載した発明は、本願発明をシリンジポンプに適用したものである。すなわち、上記薬液ポンプは、シリンジの押し子を押動させることによりシリンジ外筒内の薬液を吐出させて上記薬液流路内を流動させるとともに、上記押し子の押動力を検出することにより、上記薬液の閉塞圧を検出するように構成された医療用シリンジポンプにおいて、薬液が充填されたシリンジを上記シリンジポンプの所定位置に装着するとともに、上記シリンジから患者に到る上記薬液流路を設定する流路設定行程と、上記薬液を患者に投与する前に、上記押し子を所定の速度で押動させて上記薬液を上記薬液流路内で流動させる薬液流動行程と、上記薬液流動行程中に、上記押し子と上記シリンジ外筒との間の摺動抵抗を含む押動力を計測することにより流動圧力を求める流動圧力計測行程を備えて構成される。
【0029】
シリンジポンプは、上記押し子の押動力を検出することにより、上記薬液の吐出圧力を制御するように構成される。上記押動力は、薬液の流動圧力と、上記押し子のガスケットがシリンジ外筒内を摺動する抵抗とを加えた値として検出される。これまで、上記ガスケットの摺動抵抗は、シリンジの大きさ等に応じて固定された値が設定されていた。一方、上記摺動抵抗は、温度や薬液の種類等に応じて変化する。したがって、従来の較正手法では、制御用閉塞圧を精度高く設定するのは困難であった。一方、本願発明に係る閉塞圧の較正方法は、薬液が充填されて実際に使用されるシリンジ各々について、薬液を患者に投与する前に行われるため、閉塞圧を精度高く管理することが可能となる。
【0030】
シリンジポンプにおける上記流路設定行程は、シリンジ外筒をシリンジポンプの所定位置に固定するとともに、押し子のフランジ部を押動手段(スライダ)に連結し、さらに、輸液チューブ等の薬液流路を上記シリンジに接続することにより行われる。なお、薬液を投与する輸液チューブや途中に設けられる括栓等を接続した状態のシリンジをポンプに装着することにより、上記流路設定行程を行うのが好ましい。これにより、種々の配管部材をを含む薬液流路の流動圧力を正確に計測することが可能となる。
【0031】
薬液投与の際の押し子の押動力を精度高く計測するため、上記流動圧力計測行程は、上記シリンジに接続した輸液チューブに、患者に薬液を投与するのと同じ速度で上記薬液を流動させるように、上記押し子を移動させて行うのが好ましい。また、薬液が薬液流路の先端から吐出された後の押動力を計測するのが好ましい。
【0032】
また、上記流路設定行程において、装着されたシリンジの容量等の特性を識別するように構成できる。すなわち、請求項9に記載した発明のように、上記流路設定行程において、装着された上記シリンジをシリンジ識別手段によって識別するとともに、上記制御用閉塞圧力設定行程において、記憶手段に記憶されたシリンジ特性テーブルから、上記流路設定行程において設定された上記薬液流路及び/又は上記シリンジに対応する特性情報を読み出して、上記制御用閉塞圧力の設定に用いることができる。
【0033】
多くのシリンジメーカでは、シリンジ外筒の外径が判明すると、シリンジの寸法を特定できる。また、シリンジ容量等の他の特性も判明する。たとえば、シリンジ外径を計測することにより、上記シリンジ外筒の内径、断面積等が特定され、押し子の押動力からシリンジ内の薬液の流動圧力を求めることができる。上記シリンジ識別手段は、特に限定されることはない。たとえば、シリンジ外筒を押圧するようにして固定するロック機構のアーム部に回転角度変位を検出できるセンサーを設けておき、シリンジを保持する上記アーム部の回動位置を検出して、シリンジ外筒の外径を検出することができる。
【0034】
また、上記流動圧力を容易に求めるため、各種シリンジのデータをテーブル化した、シリンジ特定テーブルを記憶手段に記憶させておき、計測された押動力に、特定されたシリンジに対応する加算データ等を読み出して、制御用の閉塞圧(押動力)を設定できる。また、シリンジサイズに応じたガスケットの摺動抵抗を含む押動力の適正範囲のテーブルを設けておき、薬液投与前に計測された流動抵抗が上記抵抗値の範囲から外れた場合に警報を発するように構成することもできる。
【0035】
上記ガスケットの摺動抵抗は、薬液の流動抵抗と同様に押し子の押動速度によって変化する。したがって、上記流動圧力計測行程は、上記シリンジに接続した輸液チューブに、患者に薬液を投与するのと同じ速度で上記薬液を流動させるように押し子を押動させて行うのが好ましい。また、押動力を正確に計測するために、輸液チューブの先端は、患者に接続する高さに設定するとともに、輸液チューブの全域に薬液を満たした状態で押動力の計測を行うのが好ましい。
【0036】
また、請求項4に記載した発明と同様に、押し子の異なる押動速度に対する押動力を計測して薬液の流動圧力を求め、連続する薬液投与において、複数の輸液速度が用いられる場合等に対応することができる。
【0037】
さらに、押し子の押動速度を連続的に変化させて、押し子の異なる押動速度における薬液の流動圧力を求めることもできる。たとえば、押し子の押動速度を、プライミングを行う早送りモードの輸液速度まで次第に増加させ、あるいは早送りモードの輸液速度から次第に輸液速度を低下させることにより、この間の押動力の変化を連続的に計測して記憶させておき、薬液投与を行う所要の輸液速度における薬液流動圧力を上記計測値から求めることができる。
【0038】
また、上記押動力を計測する手法も特に限定されることはない。複数回計測を行って平均値を求めるように構成することができる。また、押し子を押動している時の押動力を連続的に記録しておき、これら記録された押動力の平均値を求めることもできる。
【0039】
また、シリンジポンプにおいては、押し子の押動開始時の押動力は、一定速度で押動する場合と大きくなる。このため、上記流動圧力計測行程において、押し子の押動開始時から所定距離押動させた以降の押動力/又は押し子押動開始時から所定時間押動させた以降の押動力を計測するように構成するのが好ましい。
【0040】
上記制御用閉塞圧力は、計測された流動圧力(押動力)に所定の値を加算して決定される。シリンジポンプにおいては、上記制御用閉塞圧力にガスケットの摺動抵抗を加えたものが押動力として計測される。したがって、シリンジポンプにおいては、制御用の閉塞圧力を、上記押動力によって設定し、薬液投与中の流動圧力も上記押動力を用いて管理することができる。このため、精度高く閉塞圧を管理することが可能となる。
【0041】
シリンジ外筒や押し子先端部に装着されるガスケットが不良品である場合、押し子の押動力を用いて閉塞圧を管理するのは困難である。また、このような不良品では、押し子の押動力が異常に大きくなることが多い。このため、上記押動力計測行程において、上記押動力の異常値を検出して、上記不良品を検出することが可能となる。
【0042】
すなわち、請求項10に記載した発明のように、上記流動圧力計測行程において検出された押動力が、使用されるシリンジ及び/又は薬液流路に応じてあらかじめ設定された適正範囲内にあるかどうかを判断する流路異常検出行程を含み、計測された上記押動力が上記適正範囲外である場合に、流路異常警報を出力するように構成するのが好ましい。
【0043】
押動力の適正範囲は、多数のシリンジの押動力を計測して、統計処理することにより求めることができる。上記シリンジ異常検出行程によって、各々のシリンジがシリンジポンプに適用できるか否かを、薬液投与前に検出することが可能となり、薬液投与の安全性を高めることができる。
【0044】
請求項11に記載した発明は、薬液流路内で薬液を流動させるポンプ機構と、上記薬液流路を流動する薬液の流動圧力を計測できる流動圧力計測装置と、上記ポンプ機構及び上記流動圧力計測装置を制御する制御装置とを備えるとともに、設定された薬液流路を介して患者に薬液を投与する医療用薬液ポンプであって、上記制御装置は、上記薬液を患者に投与する前に、上記薬液を所定の流量で上記薬液流路に流動させるとともに、上記流動圧力計測装置に上記薬液の流動圧力を計測させ、計測された流動圧力に基づいて制御用閉塞圧力を設定する閉塞圧設定手段と、上記制御用閉塞圧力を設定した後に、患者に対する上記薬液の投与を開始するとともに、薬液投与中に計測された流動圧力が、上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させる流路異常検出手段とを備えて構成される。
【0045】
請求項12に記載した発明は、上記医療用薬液ポンプが、シリンジ外筒を保持するシリンジ保持手段と、上記シリンジ保持手段に保持された上記シリンジ外筒内に押し子を押し込むスライダとを備え、上記シリンジ外筒内の薬液を、輸液チューブを介して患者に投与する医療用シリンジポンプであって、上記シリンジの大きさ及び種類を検出するシリンジ検出手段と、使用されるシリンジ及び液体流路に応じた所定の特性値を記憶させた記憶手段と、上記押し子の押動力を計測する押動力検出手段と、上記押動力検出手段によって計測された押動力及び上記特性値から、上記制御用閉塞圧力を設定する、閉塞圧設定手段と、薬液投与中に計測された押動力が上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報を出力し及び/又はシリンジポンプを停止させる流路異常検出手段を備えて構成される。
【0046】
請求項13に記載された発明は、薬液を患者に投与する前に検出された上記押動力が、使用するシリンジ及び液体流路に対応して上記記憶手段に記憶された所定の押動力の範囲を越えた場合に流路異常警報を出力する流路異常検出手段を備て構成される。
【発明の効果】
【0047】
シリンジポンプにおける閉塞圧を精度高く検出して、薬液投与の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本願発明が適用されるシリンジポンプの正面図である。
【図2】図1に示すシリンジポンプの平面図である。
【図3】押動力を計測している状態を示す図である。
【図4】患者に対する薬液の投与を行っている図である。
【図5】本願発明に係る較正方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】本願発明に係る較正方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】シリンジの形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本願発明の実施形態を、図に基づいて具体的に説明する。
【0050】
本願発明に係るシリンジ2は、薬液を収容する外筒3と、上記外筒3の基端部において半径方向外方へ延出形成された小判状のフランジ部5と、上記基端部から上記外筒内部へ挿入された押し子4とを備えて構成されている。上記シリンジ2は、全体が樹脂成形によって形成されている。上記外筒3の先端部には、輸液チューブ21が接続される吐出口3aが形成されている。また、図7(b)に示すように、上記押し子4の先端部には、上記外筒3の内面との間を封止するガスケット4aが設けられているとともに、押し子基端部には、押し子フランジ部13が設けられている。
【0051】
本実施形態に係る上記シリンジ2には、シリンジを押動させて較正用の押動力を計測するための較正用押動領域Hが設けられている。上記較正用押動領域Hは、少なくとも上記シリンジ2に接続される薬液流路に薬液を満たした状態で押動力を計測することができるように設定すれば良い。従来のシリンジにおいては、プライミング操作を行うことができる量の薬液が余分に充填されているため、上記プライミング操作を行う際に押動力を計測することができるが、薬液流路の長さが長い場合には、上記較正用押動領域を大きく設定する必要がある。
【0052】
シリンジとして、外筒内に薬液を充填した使い捨てタイプのシリンジ2が用いられることが多く、図7(a)に示すように、上記吐出口3aにキャップ20が装着されるとともに、上記押し子のガスケット4aが、押し子の押動開始位置まで挿入されて、外筒3内に薬液が封止されている。
【0053】
上記シリンジポンプ1には、シリンジ2の外筒3を保持するシリンジ外筒保持手段6.9,12と、上記押し子4の基端部に設けられたフランジ部13を保持するとともに押動させて、上記薬液を吐出させる押動手段10が設けられている。
【0054】
本実施形態に係る上記シリンジ外筒保持手段は、シリンジポンプのハウジング上面にシリンジ外筒3の外面を載置できる略円筒内面状の載置面6aを設けて構成される外筒保持部6と、上記外筒保持部6の基端側に設けられた立壁部7及び8の間に形成されて上記フランジ部5を挿入掛止できるフランジ保持溝9と、上記シリンジ外筒3を上記載置面6aとの間で挟圧保持できる挟圧ロック機構12とを備えて構成されている。
【0055】
上記押動手段10は、図示しない駆動ネジをモータによって回転させることにより、軸方向に移動できるように構成されたスライダ10aを備えて構成されている。上記スライダ10aは、押し子4のフランジ部13を保持するとともに軸方向に押動させて、シリンジ外筒3内に収容された薬液を吐出口3aから吐出させる。
【0056】
上記挟圧ロック機構12は、シリンジ外筒3を上記載置面6aとの間で挟圧保持するアーム部12aを備えて構成されている。上記アーム部12aは、弾性的にシリンジ外筒3を挟圧できるように構成されている。また、本実施形態では、上記挟圧ロック機構12は、上記アーム部12aの回動角度を検出することによって、シリンジ2の大きさを検出できるシリンジ検出手段を構成している。
【0057】
上記シリンジ検出手段は、上記アーム部12aの回動角度に対応して抵抗変化する図示しない可変抵抗器と、上記可変抵抗器の検出抵抗に対応したシリンジデータテーブルを備えて構成されている。上記可変抵抗器の検出抵抗によってシリンジ外筒の外径が計測され、この外径に対応したシリンジの容量や内径等を上記シリンジデータテーブルから読み出すことができるように構成されている。
【0058】
また、上記スライダ10aを駆動する図示しない駆動機構の適部には、上記押し子4の押動力を計測できる図示しない押動力検出手段が設けられている。上記押動力検出手段として、たとえば、押し子からの押動力が作用して弾性変形させられる図示しない弾性片と、この弾性片に貼着された抵抗歪計を備えて構成することができる。上記抵抗歪計からの出力を用いて、上記押し子の押動力を検出することができる。なお、上記押動力検出手段として、種々の形態の歪計を採用することができる。
【0059】
以下、本実施形態に係る閉塞圧の較正方法を図3から図6に基づいて説明する。
【0060】
シリンジポンプのスイッチがONされた後(S101)、薬液が充填されたシリンジ2を、シリンジポンプ1等を装着する流路設定行程(S102)が行われる。上記流路設定行程(S102)は、図7(a)に示すシリンジ2に、チューブ21等を接続して、患者40に到る薬液流路を設定する行程である。本実施形態では、上記シリンジ外筒保持手段6.9,12によって、シリンジ外筒3をシリンジポンプ1の上面に固定するとともに、上記チューブ21の適部に3方括栓23や他連括栓24を設けることにより行われる。
【0061】
上記流路設定行程は、患者40までの流路を設定するものであるが、上記流路を患者に接続することなく、以下に説明する閉塞圧の較正を行う。
【0062】
流路設定行程を終えた後に、上記シリンジ2が適正に装着されたか否かが判断される(104)。シリンジ2の装着が適正に行われていない場合には、警報が出力されて(S103)、シリンジの再装着を行う必要がある。たとえば、シリンジが傾いた状態で装着されたような場合には上記警報が発せられて、次の行程を行うことができないように較正されている。
【0063】
シリンジの装着が適正に行われたことが確認された後(S104でYES)、上記シリンジ検出手段によって、装着されたシリンジ2の種類が識別される。具体的には、上述したように、シリンジ外筒3の外径からシリンジのサイズを特定し、上述した特性テーブルからシリンジデータが読み込まれる(S106)。上記シリンジデータは、表示部に表示され、シリンジが誤認されていないかどうかを確認することができる。また、上記シリンジデータには、装着されたシリンジ外筒の内径やガスケットの標準的な摺動抵抗が含まれており、以下に説明する以下の行程において利用される。
【0064】
その後、投与される薬液や、シリンジの容量等に応じて、薬液吐出速度(投与速度)や投与時間等が設定される(S107)。
【0065】
上記薬液吐出速度・投与時間が設定された後に、プライミング操作が開始される(S108)。上記プライミング操作は、輸液チューブ21に薬液を満たして空気を排除するために行われる。
【0066】
本実施形態では、上記プライミング操作を行う際に、装着したシリンジ2の押し子4の押動力を計測するように構成されている。
【0067】
押し子の押動力は、押し子のガスケットと外筒内壁の摺動抵抗(摩擦力)と、薬液の輸液チューブ内の流動抵抗を加えたものである。実際の薬液投与時の押動力を精度高く計測するために、流路や投与速度は、患者に薬液を投与するのと同様の構成及び条件で行うのが好ましい。
【0068】
すなわち、図3に示すように、輸液チューブ21の先端部を、患者の投与部位に対応する高さに保持して押動力を計測するが望ましい。上記高さが異なると、薬液に重力が作用して、押動力を正確に計測することができない。
【0069】
また、実際に薬液を投与する際の押動力を計測する必要がある。従来のプライミング操作は、輸液チューブ内に薬液を満たして空気を追い出すために行われるものであり、薬液の流動速度が大きい早送りモードで行われる場合が多かった。本実施形態では、少なくとも、押動力を計測する間は、薬液を実際に投与する押動速度で上記押し子4を押動させる。なお、押動力は、短時間で計測できるものであり、プライミング操作に要する時間が大きく増加することもない。
【0070】
上記押動力の計測は、上記押し子4の押動開始時から所定時間経過した後、又は押動開始時から所定距離押動した後に計測するのが望ましい(S109,S110)。押し子の押動開始時の押動力は、ガスケットと外筒内面との間の摩擦力が大きくなるため、実際の薬液投与時の押動力を正確に検出できない恐れがあるからである。
【0071】
さらに、図3に示すように、薬液が流路の先端部から滴下した後に計測した押動力を採用するのがより好ましい。これより、流路の全域に薬液を流動させた場合の押動力を計測することが可能となり、閉塞圧の較正精度が高まる。なお、上記流路に薬液が満たされる過程においては、押動力は比例的に増加するため、流路の長さ等が判明している場合には、上記流路先端から薬液が滴下する前に押動力を計測することもできる。
【0072】
また、上記押動力を計測する態様も特に限定されることはない。たとえば、押し子押動中に複数回の押動力を計測して平均値を求め制御用閉塞圧設定のデータとして利用することができる。また、押し子の押動開始時からの押動力の変化を検出して、押動力が安定した領域における押動力を採用することもできる。
【0073】
次に、計測された上記押動力が、シリンジ特性テーブルから読み出される適正範囲にあるかどうかを判断す流路異常検出行程が行われる(S111)。計測された押動力が、異常に大きい場合や異常に小さい場合は、シリンジ2や流路に設置した部材に異常がある場合が多い。また、シリンジポンプ1の押動手段に異常が生じている場合も考えられる。上記流路異常検出行程を行うことにより、装着されたシリンジやシリンジポンプに異常があるかどうかを検出することが可能となる。
【0074】
流路異常検出行程(S111)において異常が検出されると(S111でYES)、警報が出力され、装置が停止する。これにより、患者に薬液を投与する前に、シリンジや輸液チューブ等を交換することが可能となり、安全性を高めることができる。
【0075】
一方、シリンジに異常がない場合(S111でNO)、シリンジ特性テーブルから、装着した種々のシリンジに対応してあらかじめ設定された押動力(所定の流動圧力値とシリンジ断面積とを掛け合わせたもの)が読み出されるとともに、計測された上記押動力に加算する制御用閉塞圧力設定行程が行われる。本実施形態に係る上記制御用閉塞圧力は、薬液投与を停止すべき閉塞圧に対応した押し子の押動力として取り扱われる。これにより、閉塞圧の較正が終了する(S116)。上記制御用閉塞圧力は、シリンジポンプ1の制御メモリに記憶されて、次に行われる薬液投与時の制御に用いられる。
【0076】
上記閉塞圧の較正が終了した後、患者40に対する薬液の投与が開始される(S117)。図4に示すように、薬液の投与は、輸液チューブ21の先端部22を、患者40の所定部位に接続した後、所定の開始ボタン等を押圧することにより行われる。
【0077】
上記薬液投与中、上記押し子4の押動力が継続的に計測される。上記押動力が上述した制御用閉塞圧力(押動力)を越えた場合、警報が出力され(S119)、装置が停止される(S120)。
【0078】
一方、上記押動力が上記制御閉塞抵抗以下である場合は、薬液の投与が継続されて、設定された所定の投与時間が経過し、あるいは設定された量の薬液が投与されて、薬液の投与が終了する。
【0079】
本実施形態では、患者に投与する薬液が充填された各々のシリンジの押動力を、薬液投与の直前に計測することができる。このため、各シリンジに対応した閉塞圧を精度高く設定することが可能となる。
【0080】
また、薬液を投与する前に、シリンジの押動力が異常であるかどうかを識別することが可能となる。これにより、シリンジやシリンジポンプの異常をチェックすることが可能となり、薬液投与の安全性が格段に高まる。
【0081】
上述した実施形態は、本願発明をシリンジポンプに適用したものであるが、輸液チューブを蠕動機構あるいはローラ等によって軸方向に順次押圧変形させて薬液を流動させる薬液ポンプに適用することもできる。
【0082】
上記形態の薬液ポンプにおいては、薬液の流動圧力が薬液流路の途中で計測されるように較正される場合が多い。したがって、上記薬液の実際の流動圧力を基準として閉塞圧を較正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
医療用薬液ポンプにおける薬液投与の安全性を格段に高めることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 シリンジポンプ(医療用薬液ポンプ)

2 シリンジ
4 押し子
3 シリンジ外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に薬液を投与するための医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法であって、
上記薬液ポンプから患者に到る薬液流路を設定する流路設定行程と、
上記薬液を患者に投与する前に、上記薬液を所定の流量で上記薬液流路に流動させる薬液流動行程と、
上記薬液流動行程中に、上記薬液の流動圧力を計測する流動圧力計測行程と、
上記流動圧力計測行程において得られた流動圧力と、あらかじめ設定された圧力値とを加えて制御用閉塞圧力を設定する制御用閉塞圧力設定行程とを含み、
上記制御用閉塞圧力を設定した後に、患者に対する上記薬液の投与を開始するとともに、薬液投与中に計測された流動圧力が、上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させるように構成された、医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項2】
上記流動圧力計測行程は、上記薬液を上記薬液流路に満たすプライミング操作時に行うように構成された、請求項1に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項3】
上記流動圧力計測行程は、上記薬液流路に、患者に薬液を投与するのと同じ速度で上記薬液を流動させることにより行われる、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項4】
上記流動圧力計測行程において、薬液の異なる流速に対する流動圧力を計測する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項5】
上記流動圧力計測行程において、薬液の流動開始から所定時間経過した後、又は所定流量を流動させた後に上記流動圧力を計測する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項6】
上記薬液が薬液流路の先端部から流出した以降の流動圧力を計測する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の医療薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項7】
上記流動圧力計測行程において検出された流動圧力が、使用される薬液流路及び/又は薬液に応じてあらかじめ設定された適正流動圧力範囲内であるかどうかを判断する流路異常検出行程を含み、
計測された上記流動圧力が上記適正流動圧力範囲外である場合に、流路異常警報を出力するように構成された、請求項1から請求項6のいずれかに記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項8】
上記薬液ポンプが、シリンジの押し子を押動させることによりシリンジ外筒内の薬液を吐出させて上記薬液流路内を流動させるとともに、上記押し子の押動力を検出することにより、上記薬液の閉塞圧を検出するように構成された医療用シリンジポンプであり、
薬液が充填されたシリンジを上記シリンジポンプの所定位置に装着するとともに、上記シリンジから患者に到る薬液流路を設定する流路設定行程と、
上記薬液を患者に投与する前に、上記押し子を所定の速度で押動させて上記薬液を上記薬液流路内で流動させる薬液流動行程と、
上記薬液流動行程中に、上記押し子と上記シリンジ外筒との間の摺動抵抗を含む押動力を計測することにより流動圧力を求める流動圧力計測行程を備える、請求項1から請求項7のいずか1項に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧計測方法。
【請求項9】
上記流路設定行程において、装着された上記シリンジをシリンジ識別手段によって識別するとともに、
上記制御用閉塞圧力設定行程において、記憶手段に記憶されたシリンジ特性テーブルから、上記流路設定行程において設定された上記薬液流路及び/又は上記シリンジに対応する特性情報を読み出して、上記制御用閉塞圧力の設定に用いる、請求項8に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧計測方法。
【請求項10】
上記流動圧力計測行程において検出された押動力が、使用されるシリンジ及び/又は薬液流路に応じてあらかじめ設定された範囲内にあるかどうかを判断する流路異常検出行程を含み、
計測された上記押動力が上記範囲外である場合に、流路異常警報を出力するように構成された、請求項9に記載の医療用薬液ポンプにおける閉塞圧較正方法。
【請求項11】
薬液流路内で薬液を流動させるポンプ機構と、
上記薬液流路を流動する薬液の流動圧力を計測できる流動圧力計測装置と、
上記ポンプ機構及び上記流動圧力計測装置を制御する制御装置とを備えるとともに、設定された薬液流路を介して患者に薬液を投与する医療用薬液ポンプであって、
上記制御装置は、
上記薬液を患者に投与する前に、上記薬液を所定の流量で上記薬液流路に流動させるとともに、上記流動圧力計測装置に上記薬液の流動圧力を計測させ、計測された流動圧力に基づいて制御用閉塞圧力を設定する閉塞圧設定手段と、
上記制御用閉塞圧力を設定した後に、患者に対する上記薬液の投与を開始するとともに、薬液投与中に計測された流動圧力が、上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報出力を発生させ及び/又は薬液ポンプを停止させる流路異常検出手段とを備える、医療用薬液ポンプ。
【請求項12】
上記医療用薬液ポンプが、シリンジ外筒を保持するシリンジ保持手段と、上記シリンジ保持手段に保持された上記シリンジ外筒内に押し子を押し込むスライダとを備え、上記シリンジ外筒内の薬液を、薬液流路を介して患者に投与する医療用シリンジポンプであって、
上記シリンジの大きさ及び種類を検出するシリンジ検出手段と、
使用されるシリンジ及び液体流路に応じた所定の特性値を記憶させた記憶手段と、
上記押し子の押動力を計測する押動力検出手段と、
上記押動力検出手段によって計測された押動力及び上記特性値から、上記制御用閉塞圧力を設定する、閉塞圧設定手段と、
薬液投与中に計測された押動力が上記制御用閉塞圧力を越えた場合に、警報を出力し及び/又はシリンジポンプを停止させる流路異常検出手段を備える、請求項11に記載の医療用薬液ポンプ。
【請求項13】
薬液を患者に投与する前に検出された上記押動力が、使用するシリンジ及び液体流路に対応して上記記憶手段に記憶された所定の押動力の範囲を越えた場合に異常警報を出力する流路異常検出手段を備える、請求項12に記載の医療用薬液ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−34820(P2012−34820A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177246(P2010−177246)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(591156618)株式会社テクトロン (13)
【Fターム(参考)】